JP2004222824A - 超音波診断装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】超音波探触子10は、直線周波数変調した送信波形の超音波ビームを被検体内に繰り返し送信する。これに対するエコーの受信信号を基本波成分処理部20及び第2高調波成分処理部30で並列的に処理する。基本波成分処理部20では、受信信号をパルス圧縮して送信超音波の中心周波数の基本波成分を抽出し、これに対して所定の重み係数を乗じる。第2高調波成分処理部30では、受信信号をパルス圧縮して送信超音波の中心周波数の2倍の周波数の第2高調波成分を抽出し、これに対して所定の重み係数を乗じる。そして、これら両者の重み付け結果を加算器40で加算し、この加算結果に基づき画像構成器44で診断画像を構成する。ここで、第2高調波成分のパワーが低下する送信フォーカス点以遠で、基本波成分の重み係数を増大させることで、深部での画質劣化を緩和する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エコーの受信信号から抽出した高調波成分を用いて診断画像を形成する超音波診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コントラストハーモニック法や組織ハーモニック法など、受信信号に含まれる第2高調波成分を用いて診断画像を構成する超音波診断装置が普及しつつある。
【0003】
高調波は、送信超音波の正圧波形が負圧波形よりも速く進行することにより生成され、超音波が被検体内を進むにつれて成長していく。したがって、超音波探触子直下から深さ数cmの領域では、高調波成分のパワーがきわめて小さい。このため、高調波成分から診断画像を構成した場合、浅部の様子が分かりにくい画像となってしまう。
【0004】
そこで特許文献1に示される装置では、受信ビームフォーマの出力信号から基本波エコー成分と第2高調波エコー成分を取り出し、それら両成分をそれぞれ個別のゲインで増幅した上で加算し、この加算結果の信号から画像を形成している。この装置では、浅部では基本波成分のゲインを大きく第2高調波成分のゲインを小さくすることで第2高調波成分だけを用いた場合よりも品質のよい画像を提供し、数cm以遠の深部では基本波成分のゲインを小さく第2高調波成分のゲインを大きくすることで、従来のハーモニック法と同等の画像を提供している。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−166919公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
送信超音波ビームは、送信フォーカス点以遠では、媒体による減衰やビーム自体の広がりにより、単位体積当たりの音響パワーが減少していく。このため、超音波ビームが進行するにつれて成長していった高調波成分も、送信フォーカス点を越えるとビームの音響パワー低減により減衰に転じる。
【0007】
図9は、基本波成分及び高調波成分の受信エコーのパワーが、診断深さ(すなわち、超音波探触子から超音波反射点までの距離)に応じてどのように変化するかを模式的に示した図である。この図に示すように、一般に高調波成分は基本波成分よりもパワーが大幅に小さく(ただしコントラスト剤を用いた場合はこの限りではない)、送信フォーカス点までは基本波成分の単位体積当たりの音響パワーの増大に追従して高調波成分のパワーも増大していくが、送信フォーカス点以遠では高調波成分のパワーが低下する。このため、ある程度以上深い範囲では、高調波成分では十分なS/N比が得られず、品質のよい画像が得られないという問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、ハーモニック法により画像を構成する超音波診断装置において、深部の画質を改善することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る装置は、被検体内に超音波を送信する送信手段と、前記送信手段から送信された超音波に対する被検体内からのエコーを受信し、受信信号を生成する受信手段と、前記受信信号から基本波成分と高調波成分とを抽出する信号成分抽出手段と、前記基本波成分と前記高調波成分の少なくとも一方を用いて前記被検体内の画像を構成する手段であって、診断深さが所定深さより深い範囲では、前記基本波成分を前記所定深さにおける混合割合よりも高い混合割合で前記高調波成分に混合し、その混合結果の信号に基づき前記被検体内の画像を構成する画像構成手段と、を備える。
【0010】
ここで、診断深さとは、超音波探触子から超音波反射点までの距離のことであり、リニア走査探触子の場合は被検体体表からの深さとほぼ等しいが、セクタ走査やコンベックス走査の探触子の場合は被検体体表からの深さとは異なる。
【0011】
本発明の好適な態様では、前記所定深さは、前記送信手段により送信される超音波のフォーカス深さである。
【0012】
また別の好適な態様では、前記画像構成手段は、診断深さが前記所定深さより深い範囲では、診断深さに応じて前記基本波成分の前記混合割合を上昇させる。
【0013】
更に別の好適な態様では、前記送信手段はパルス圧縮方式のために変調された超音波を送信し、前記信号成分抽出手段は、前記受信信号をパルス圧縮し、このパルス圧縮結果から基本波成分及び高調波成分を抽出する。
【0014】
更に別の好適な態様では、前記高調波成分は、第2高調波成分であることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)について、図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る超音波診断装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【0017】
超音波探触子10は、所定パターンに従って配列された複数の振動素子からなるアレイを備え、電気的な駆動信号に応じてこれら振動素子から超音波を送信するとともに、この送信超音波に対する被検体内からのエコーを受信して、電気的な受信信号に変換する。
【0018】
送信器12は、超音波ビーム送信のために、超音波探触子10の各振動素子に対して駆動信号を供給する。本実施形態では、超音波送受信にパルス圧縮法を利用するので、送信器12はパルス圧縮用の所定の波形の駆動信号を生成する。パルス圧縮法はレーダ分野で周知の技術であり、その送信波形には周波数変調方式や符号変調変調方式がある。以下では、一例として直線周波数変調方式で送信波形を変調する場合を例にとって説明するが、本実施形態装置にはこれ以外の方式も適用可能である。
【0019】
図2は、送信器12が有する1チャンネル(一般に振動素子1個に対応)の駆動回路の構成例を示す図である。送信器12は、チャンネル数に応じた数だけこのような駆動回路を備える。ただし、波形発生器52は各チャンネルごとに設けなくてもよく、複数チャンネルで共用することができる。
【0020】
波形発生器52は、所定の送信波形を持った信号を発生させる回路である。例えば直線周波数変調方式を用いる場合は、送信周波数を時間経過に従って周波数が直線的に変化する単位波形の信号を生成する。波形発生器52は、このような単位波形を所定周期で繰り返し出力する。波形発生器52としては、例えば波形をデジタル情報として記憶したメモリを用いることができる。この場合、波形発生器52からは、送信波形を表現したデジタル信号が出力されることになる。遅延生成器54は、波形発生器52から出力された信号に対して、送信ビームのフォーカシング等のために必要な時間遅延を与えるための回路である。D/A変換器56は、遅延生成器54で遅延されたデジタル信号をアナログ信号に変換する。このアナログ信号が、増幅器58により所望のレベルまで線形増幅され、対応する振動素子に供給される。
【0021】
受信アンプ14は、超音波探触子10の各振動素子が生成した受信信号をそれぞれ線形増幅する。受信ビームフォーマ16は、それら増幅された各振動素子の受信信号を整相加算することにより、所望の受信ビームを形成する。受信ビームフォーマ16からは、形成した受信ビームごとに、そのビームに対応する1つの受信信号が出力される。以下では、特に断りなく単に受信信号という場合は、受信ビームフォーマ16で生成された1つの受信ビームに対応する受信信号のことをいうものとする。受信ビームフォーマ16は、同時複数音線受信方式により同時に複数の受信ビームを形成することも可能であるが、以下では説明を簡潔にするため、同時に1つの受信ビームのみを形成する場合を例にとって説明する。なお、同時に複数の受信ビームを形成する場合は、以下に説明する回路構成をそのビーム数分だけ並列に設けるか、時分割処理等によりビーム数分の並列処理を行うか、すればよい。
【0022】
受信ビームフォーマ16から出力された受信信号は、基本波成分処理部20と第2高調波成分処理部30にそれぞれ入力される。
【0023】
基本波成分処理部20は、受信信号に含まれる基本波成分の検波のための回路である。基本波成分は、送信器12により生成される送信超音波の中心周波数と同じ周波数をもつ信号成分である。基本波成分処理部20は、パルス圧縮演算器22,検波器24,振幅演算器26,重み付け演算器28を含んでいる。
【0024】
パルス圧縮演算器22は、受信信号に対してパルス圧縮演算を行う回路である。図3にこのパルス圧縮演算器22の内部構成の一例を示す。この構成では、パルス圧縮演算器22は、FFT演算器62,係数テーブル64,複素乗算器66,及び逆FFT演算器68を含む。受信ビームフォーマ16から発せられた受信信号は、まずFFT演算器62で高速フーリエ変換アルゴリズムによる変換処理を受け、受信信号が含む各周波数成分が求められる。係数テーブル64には、パルス圧縮のために各周波数成分に乗じるべき係数が記憶されている。複素乗算器66は、FFT演算器62で求められた受信信号の各周波数成分に対し、係数テーブル64に記憶された対応する係数を乗算する。この乗算処理は複素空間で行われる。これにより、周波数領域においてパルス圧縮がなされることになる。逆FFT演算器68は、複素乗算器66の出力信号を逆FFT処理することにより、時間領域の信号に戻す。これにより、所望の特性に応じてパルス圧縮された受信信号が得られる。
【0025】
このパルス圧縮演算器22の作用を数式を用いて説明すると次のようになる。
【0026】
本実施形態で用いる直線周波数変調された送信波形xT(t)は、次式(1)で表される。
【0027】
【数1】
この送信波形の信号に対する受信信号xR(t)は、次式(2)で表すことができる。ここでtは時間を示し、ω0は送信超音波の中心周波数を示す。
【0028】
【数2】
この受信信号xR(t)のフーリエ変換をXR(ω)とする。すなわち、XR(ω)=F[xR(t)](Fはフーリエ変換を示す)である。
【0029】
受信信号xR(t)の基本波成分、すなわち式(2)の右辺第1項に対するパルス圧縮演算器22の伝達関数HF(ω)が、次式(3)で表されるとする。なお、XT(ω)は、時間領域の信号xT(t)のフーリエ変換である。
【0030】
【数3】
この伝達関数HF(ω)は、係数テーブル64に記憶されており、パルス圧縮演算時の参照符号として用いられる。この伝達関数HF(ω)は、式(1)及び(3)から分かるように、ω0を中心周波数として直線周波数変調された送信波形に対応して定められたものである。このように送信波形に対応した伝達関数HF(ω)を用いることで、受信信号に含まれる基本波成分に対して適切なパルス圧縮が行える。
【0031】
上述の式(2)、(3)により、基本波成分に対するパルス圧縮演算器22の出力信号yF(t)は、次式(4)の形となる。
【0032】
【数4】
すなわち、式(4)の右辺のXR(ω)がFFT演算器62で計算され、これとパルス圧縮のための係数HF(ω)との積(すなわち右辺[]内)が複素乗算器66で計算され、この積の逆フーリエ変換F−1が逆FFT演算器68で計算されることにより、パルス圧縮された受信信号yF(t)が求められる。
【0033】
この例では、以上のように周波数領域でパルス圧縮を行ったが、これはあくまで一例であり、時間領域の信号のままでトランスバーサルフィルタを用いてパルス圧縮することももちろん可能である。
【0034】
検波器24は、このパルス圧縮された受信信号yF(t)の、中心周波数ω0周りの信号を対象として検波を行う。この検波処理により、受信信号から基本波成分が抽出される。図4は、この検波器24の一例の内部構成を示す図である。この例は直交検波を行う回路構成であり、パルス圧縮された受信信号が、乗算器72a及び72bにて、送信超音波の中心周波数ω0に対応した周波数を持つ参照信号と乗算される。各乗算器72a,72bには、この乗算のために、位相移相器74にて位相を互いに90°異ならせた参照信号が供給される。乗算結果の信号は、それぞれローパスフィルタ(LPF)76a,76bによりベースバンド成分のみが抽出され、これにより検波結果である解析信号のI,Q各成分の信号I(t),Q(t)が求められる。
【0035】
振幅演算器26は、検波器24が出力するI,Q信号に基づき、検波結果の振幅を表す信号z(t)を求める。すなわちz(t)=[[I(t)]2+[Q(t)]2]1/2である。
【0036】
重み付け演算器28は、振幅を示す信号z(t)に対して、対応する重み係数を乗算する。図5は、この重み付け演算器28の構成例を示す図である。この例では、重み付け演算器28は重み係数テーブル82と乗算器84を含んでいる。重み係数テーブル82には、信号z(t)に乗じるべき重み係数が登録されている。
本実施形態では、診断深さに応じて重み係数の値を変化させることができる。この場合、重み係数テーブル82は、各診断深さに対応した重み係数を示す情報を記憶しており、図示しない制御部から入力される診断深さ(1音線ごとの、送信開始タイミングからの経過時間など)を示す制御信号に基づき、この診断深さに対応した重み係数を出力する。乗算器84は、入力される信号z(t)に対して、重み係数テーブル82から出力される重み係数を乗じる。この乗算結果の信号は加算器40に入力される。
【0037】
以上、基本波成分処理部20の構成と処理内容を説明した。次に、第2高調波成分処理部30について説明する。第2高調波成分処理部30は、対象とする周波数成分が送信超音波の中心周波数ω0の2倍の周波数である点を除けば、基本波成分処理部20と同様の構成でよいので、基本波成分処理部20との重複説明を避けて簡単に説明する。
【0038】
第2高調波成分処理部30は、パルス圧縮演算器32、検波器34,振幅演算器36,重み付け演算器38を含んでいる。これら各回路32,34,36,38は、基本波成分20内の同名の回路と同じ内部構成のものを、送信超音波の中心周波数ω0の2倍の周波数に対応するために係数テーブル64及び82の係数や検波器の参照信号の周波数を変更した上で、用いることができる。
【0039】
第2高調波成分、すなわち上記式(2)の右辺第2項に対するパルス圧縮は、実際に用いた送信超音波の2倍の周波数の送信波形を用いた場合の、基本波成分に対応するパルス圧縮と等価である。この場合、実際に対して2倍の周波数の送信波形は、次式(5)で表すことができる。
【0040】
【数5】
この場合、パルス圧縮演算器32において用いる伝達関数HS(ω)は次式(6)に示す形となる。
【0041】
【数6】
この伝達関数HS(ω)は、式(5)及び(6)から分かるように、送信波形xT(t)の2倍の周波数の波形xS(t)に対応したものである。したがってこの伝達関数HS(ω)を用いることで、受信信号に含まれる第2高調波成分に対して適切なパルス圧縮が行える。
【0042】
これら式(2)及び(6)から、パルス圧縮演算器32の出力信号yS(t)は、次式(7)の形となる。
【0043】
【数7】
検波器34は、パルス圧縮演算器32の出力信号yS(t)の周波数2ω0周りの信号を対象として検波を行う。すなわち、周波数2ω0の信号を参照信号として用い、検波を行う。振幅演算器36は、この検波結果のI,Q成分から振幅の信号を求める。重み付け演算器38は振幅演算器36の出力信号に対して、重み係数を乗じる。この重み係数は、診断深さに応じて変化させることができる。重み付け演算器38の出力は、加算器40に入力される。
【0044】
以上、第2高調波成分処理部30について説明した。
【0045】
加算器40は、基本波成分処理部20の重み付け演算器28の出力信号と、第2高調波成分処理部30の重み付け演算器38の出力信号とを加算する。基本波成分及び高周波成分は、重み付け演算器28及び38でそれぞれ重み付けされているので、この加算器40での加算により基本波成分と第2高調波成分の重み付け加算が実現されることになる。
【0046】
対数演算器42は、加算器40の出力信号を、対数増幅して表示に適した信号を生成する。画像構成器44は、対数演算器42の出力信号に基づき被検体内の画像を構成する。表示器46は、画像構成器44が構成した画像を表示する。
【0047】
以上説明した本実施形態の装置では、基本波成分と高調波成分とを各々の重み係数で重み付けして加算した信号から診断画像を構成する。重み付け演算器28及び38で用いる重み係数を調整することで、加算結果における基本波成分と高周波成分の混合割合を変えることができる。したがって、深部では基本波成分の混合割合を高めることにより、深部での画質劣化を解消又は緩和することができる。
【0048】
このような深部での画質劣化の緩和は、重み付け演算器28及び38の重み係数テーブル82に、例えば図6に示すような重み係数のパターンを登録することで実現できる。この図は、診断深さに対する重み係数の変化をグラフとして表したものである。この図では、実線が第2高調波成分のグラフを示し、波線が基本波成分のグラフを示す。
【0049】
図6に示すパターンは、診断深さが浅い範囲では、基本波成分の重み係数を0、第2高調波成分の重み係数を1とする。そして、診断深さが所定の閾値深さAを越えると、第2高調波成分の重み係数はそのままで、基本波成分の重み係数を直線的に増加させている。すなわち、このパターンでは、浅部では振幅演算器36から出力される第2高調波成分の信号のみをそのままの信号レベルで用いて画像を形成し、深部ではその第2高調波成分に対して基本波成分を混合し、その混合割合を診断深さの増大に応じて高めている。基本波成分の重み係数を増大させはじめる閾値深さAは、第2高調波成分のみで画像を構成すると所望の画質を満足できなくなるような診断深さを設定すればよい。このような基準で閾値深さAを決める場合、送受信系、信号処理系、画像処理系等のファクタの組合せにより、超音波診断装置の機種や使用条件、要求される画質などに応じて閾値深さAは変わってくるものと考えられる。この場合、閾値深さAは実験等により決定すればよい。
【0050】
また、閾値深さAのもっと簡便な決定基準としては、送信超音波のフォーカス点の深さを閾値深さAとするという基準を用いることができる。上述のように、送信超音波のフォーカス点を越えた深さでは、深くなるほど高調波成分が減少し、高調波成分のS/N比が劣化していくので、基本波成分による補助を始める起点(すなわち閾値深さA)として、そのフォーカス点を用いることは、比較的簡便に実現でき、かつ効果のある方式といえる。
【0051】
そして、図6のパターンでは、閾値深さAより深い場所では、深さに応じて基本波成分の重み係数を増加させることで、深くなるほどパワーが減少していく第2高調波成分を補っている。
【0052】
このように図6のパターンを用いた場合、診断深さが比較的浅い範囲では、第2高調波成分で画像を構成することで、サイドローブ低減などのハーモニック法の効果が得られるとともに、閾値深さAよりも深い範囲では、第2高調波成分のパワー低下を基本波成分で補うことで画質劣化を解消又は緩和できる。
【0053】
なお、図6の例では、閾値深さAより深い範囲での基本波成分の重み係数を直線的に増大させたが、増大のパターンは直線的に限らず、曲線的であってもよい。
【0054】
診断深さに応じた重み係数のパターンとしては、図7に示すようなものも考えられる。このパターンでは、高調波成分が十分発生していない探触子直下では成基本波成分の重み係数を1に近く、第2高調波成分の重み係数を0に近くし、その後徐々に前者を0まで減少させ後者を1まで増大させ、そして、高調波成分のS/N比が劣化する閾値深さA以遠では、基本波成分の重み係数を増大方向に、第2高調波成分の重み係数を減少方向に転じる。このような重み係数制御によれば、ある程度強い高調波成分が得られる深さ範囲ではハーモニック法の利点が得られるとともに、高調波成分の成長が十分でない探触子近傍と高調波成分が減少する深部での画質劣化については、基本波成分を補うことで解消乃至緩和が見込める。
【0055】
以上では、深部における高調波成分のS/N比劣化に着目して本実施形態の装置の利点を説明したが、別の観点から見れば次のような効果を得ることもできる。すなわち、基本波成分と高調波成分とを混合する範囲(図6では深部、図7では探触子近傍と深部)では、混合により両者のスペックルパターン同士を打ち消し、スペックルの少ない画像を得ることができる。これは、スペックルが主として波の干渉を原因とし、基本波成分と第2高調波成分では超音波の波長が異なるため、基本波成分でパルス圧縮及び検波が行われた振幅情報と、第2高調波成分でパルス圧縮及び検波が行われた振幅情報ではスペックルパターンが大きく異なってくるからである。
【0056】
このようなスペックルの低減効果に着目した場合、重み係数の制御パターンとして図8に示すようなものを用いることも考えられる。
【0057】
図8のパターン(a)では、診断深さが浅い範囲では、基本波成分及び第2高調波成分の重み係数をともに0.5とし、診断深さが閾値深さAを越えると、第2高調波成分の重み係数はそのままで、基本波成分の重み係数を徐々に増大させている。すなわち、このパターンによれば、閾値深さAを越えた範囲で図6のパターンと同様の効果が得られるとともに、それより浅い範囲でも、基本波成分と第2高調波成分との混合によりスペックル低減の効果を得ることができる。
【0058】
図8のパターン(b)では、浅部では基本波成分の重み係数を0.2、第2高調波成分の重み係数を0.8とし、閾値深さAを越えると、(a)と同様第2高調波成分の重み係数はそのままで、基本波成分の重み係数を直線的に増加させている。これは、(a)のパターンで基本波成分の割合を低くしたものに相当する。このパターンでは、浅部では、(a)よりも第2高調波成分の重みを大きくすることでハーモニック法の効果を高めつつ、両成分の混合によりスペックルを低減させることができる。
【0059】
なお、スペックルの低減効果をねらうだけなら、基本波成分と第2高調波成分とを診断深さによらず一定の割合(例えば1対1)で混合する構成でもよい。
【0060】
以上説明したように、本実施形態の装置によれば、高調波成分のS/N比が劣化する深部では、基本波成分の信号を補って画像を構成することで、深部での画質劣化を解消又は緩和できる。更に、本実施形態では、閾値深さAより深い範囲では、深さに応じて信号全体に対する基本波成分の混合割合を増大させることで、深くなるほどパワーが低下する第2高調波成分を効果的に補うことができる。
また、本実施形態では、パルス圧縮法を用いているので、単純なパルス波を用いる場合よりもS/N比、特に高調波成分のS/N比を向上させることができるので、単純なパルス波を用いる場合より深い範囲まで高調波成分による画像構成が可能になる。また本実施形態では、基本波成分と第2高調波成分とを混合した範囲では、スペックル低減の効果が得られる。このスペックル低減効果を積極的に得るために、浅部でも高調波成分に基本波成分を加えることも好適である。
【0061】
以上では、パルス圧縮法を用いた構成を例示したが、閾値深さAより深い範囲で基本波成分の重みを増大させるという手法は、パルス圧縮法の利用しない構成にも適用することができ、同様の効果を奏する。
【0062】
また、以上では、基本波成分と第2高調波成分を用いて診断画像を構成する場合を例示したが、基本波成分と第3高調波成分以上の高次の高調波成分を用いる場合にも、同様の手法を用いることができる。
【0063】
また、図1の装置構成では、基本波成分と高調波成分のそれぞれにパルス圧縮演算器22及び32を設けたが、1つのパルス圧縮演算器の出力からそれら両成分を抽出する構成も可能である。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、所定深さより深い範囲では、基本波成分を前記所定深さにおける混合割合よりも高い混合割合で前記高調波成分に混合し、その混合結果の信号に基づき前記被検体内の画像を構成するので、高調波成分で画像を形成した場合における深部での画質劣化を基本波成分により補うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の一例を示す機能ブロック図である。
【図2】送信器の内部構成の一例を示す図である。
【図3】パルス圧縮演算器の内部構成の一例を示す図である。
【図4】検波器の内部構成の一例を示す図である。
【図5】重み付け演算器の内部構成の一例を示す図である。
【図6】基本波成分及び高調波成分に対する重み係数の診断深さに応じた変化パターンの一例を示す図である。
【図7】基本波成分及び高調波成分に対する重み係数の診断深さに応じた変化パターンの別の一例を示す図である。
【図8】基本波成分及び高調波成分に対する重み係数の診断深さに応じた変化パターンの別の一例を示す図である。
【図9】基本波成分と高調波成分のエコー強度の診断深さによる変化を説明するための図である。
【符号の説明】
10 超音波探触子、12 送信器、14 受信アンプ、16 受信ビームフォーマ、20 基本波成分処理部、22,32 パルス圧縮演算器、24,34検波器、26,36 振幅演算器、28,38 重み付け演算器、40 加算器、42 対数演算器、44 画像構成器、46 表示器。
Claims (7)
- 被検体内に超音波を送信する送信手段と、
前記送信手段から送信された超音波に対する被検体内からのエコーを受信し、受信信号を生成する受信手段と、
前記受信信号から基本波成分と高調波成分とを抽出する信号成分抽出手段と、前記基本波成分と前記高調波成分の少なくとも一方を用いて前記被検体内の画像を構成する手段であって、診断深さが所定深さより深い範囲では、前記基本波成分を前記所定深さにおける混合割合よりも高い混合割合で前記高調波成分に混合し、その混合結果の信号に基づき前記被検体内の画像を構成する画像構成手段と、を備える超音波診断装置。 - 請求項1記載の超音波診断装置であって、
前記所定深さは、前記送信手段により送信される超音波のフォーカス深さであることを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項1記載の超音波診断装置であって、
前記画像構成手段は、診断深さが前記所定深さより深い範囲では、診断深さに応じて前記基本波成分の前記混合割合を上昇させることを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項1記載の超音波診断装置であって、
前記送信手段はパルス圧縮方式のために変調された超音波を送信し、
前記信号成分抽出手段は、前記受信信号をパルス圧縮し、このパルス圧縮結果から基本波成分及び高調波成分を抽出する、ことを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項4記載の超音波診断装置であって、
前記信号抽出手段は、前記受信信号を基本波成分用のパルス圧縮器と高調波成分用のパルス圧縮器で個別にパルス圧縮し、それぞれのパルス圧縮結果から基本波成分及び高調波成分を抽出する、ことを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項5記載の超音波診断装置であって、
前記基本波成分用のパルス圧縮器と前記高調波成分用のパルス圧縮器とは、相異なる参照符号を用いてパルス圧縮を行う、ことを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の超音波診断装置であって、
前記高調波成分は、第2高調波成分であることを特徴とする超音波診断装置。
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