JP2004222672A - 植栽基盤及びその施工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】貯水容量が大きく給水回数が少なくすることが可能であり、客土層の陥没や捲れ、ズレも防止することが可能な植栽基盤を提供する。
【解決手段】不透水性の遮水層4と、遮水層4の上面に敷設されており、互いに連通する多数の連続空隙を内部に有するスチレン系樹脂発泡体により構成された貯水層5と、貯水層5の上面に敷設されており、鉋屑が混合された客土からなる客土層7とを有することとした。このように、客土層7に鉋屑を混合し、貯水層5をスチレン系樹脂発泡体で構成するため、軽量である。そして、客土層7中に多くの空隙ができ保水性がよい。更に、植物の根が貯水層5の内部に張ると客土層が捲れあがることが防止される。
【選択図】 図1
【解決手段】不透水性の遮水層4と、遮水層4の上面に敷設されており、互いに連通する多数の連続空隙を内部に有するスチレン系樹脂発泡体により構成された貯水層5と、貯水層5の上面に敷設されており、鉋屑が混合された客土からなる客土層7とを有することとした。このように、客土層7に鉋屑を混合し、貯水層5をスチレン系樹脂発泡体で構成するため、軽量である。そして、客土層7中に多くの空隙ができ保水性がよい。更に、植物の根が貯水層5の内部に張ると客土層が捲れあがることが防止される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、屋上、バルコニー、ベランダ等の緑化のために使用される植栽基盤及びその施工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、建築物の内部や軒下を涼しく保つとともに都市の緑化を行うため、建築物の屋上やベランダ、バルコニー等に植栽を行うための植栽基盤が研究・開発されている(例えば、特許文献1〜6参照)。
【0003】
特許文献1,3に記載の植栽基盤においては、最下部に波板をおいて貯水層を形成し、その上部に保水性の客土層を敷設した構成を有している。そして、この客土層上に芝等の植物が植栽される。この場合、植栽客土が貯水層内に崩れ落ちないように、客土層をバインダーで固化させたり(特許文献1参照)、貯水層の上面に網や不織布等の土受けを設けたりするように構成されている(特許文献3参照)。
【0004】
また、特許文献2,4に記載の植栽基盤においては、最下部に波板をおいて貯水層を形成し、貯水層内にパーライト等の吸水材を充填するとともに、その上部に保水性の客土層を敷設した構成を有している。そして、この客土層上に芝等の植物が植栽される。
【0005】
また、特許文献5,6に記載の植栽基盤においては、最下部に不透水性の遮水シートを敷設し、その上部に繊維マットからなる保水層を敷設するとともに、この保水層の上部に客土層を形成した構成を有している。そして、この客土層上に芝等の植物が植栽される。
【0006】
一方、客土層に使用される客土としては、通常多用されるピートモス、黒土、バンブ砂等の軽量土の他、ポリウレタンと籾殻、米糠等をバインダーにより固化した人工土壌(特許文献1参照)、乾燥汚泥と木材チップの混合物に団粒化剤を添加して保水性を高めた培土(特許文献7参照)等が知られている。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−238349号公報
【特許文献2】
特開2002−17155号公報
【特許文献3】
特開2002−17161号公報
【特許文献4】
特開2001−16982号公報
【特許文献5】
特開2000−139200号公報
【特許文献6】
特開平11−332372号公報
【特許文献7】
特開2002−186351号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1,3に記載の植栽基盤においては、上部から大きな外力が加わった場合に、客土層が貯水層内に崩れ落ちて客土層が陥没するというような事態が想定される。これを防止するため、客土層をバインダーで固化したり、客土層の厚さを厚くすることが考えられる。しかし、客土層を固化した場合には(例えば、特許文献1参照)、客土層の保水性が低下するとともに、植物が客土層内に根を張りにくくなり、植物が乾燥したり、生育が不良となるという問題がある。一方、客土層の厚みを厚くすると、植栽基盤全体の厚みが厚くなるとともに植栽基盤全体の重量が増大する。そのため、植栽基盤を屋上やベランダ、バルコニー等の床面に設置した際に、植栽基盤の厚みが目立ったり、床面に加わる重量負荷が大きくなるという問題がある。
【0009】
また、人が植栽基盤上を歩いた場合などにおいて、客土層と貯水層との間に剪断力が加わると、客土層がずれたり捲れあがりやすいという問題がある。
【0010】
また、特許文献2,4に記載の植栽基盤においては、貯水層内にパーライト等の吸水材を充填することによって、客土層が貯水層内に陥没することは防止される。そのため、客土層を薄くすることが可能である。しかし、貯水層内にパーライト等の吸水材は粒状であるため、客土層と貯水層との間に剪断力が働くと、粒状の吸水材の転がりや移動によって横ずれが生じやすい。これを防止するため、貯水層を区画して粒状の吸水材を充填すること(例えば、特許文献2,4参照)が考えられるが、貯水層を区画すると、貯水層内の水の自由な移動が阻害されるため、区画ごとに給水を行う必要が生じてくる。また、区画の境界板の厚みによっては、貯水層の貯水容量も減少するため、貯水層内の水が蒸発によって失われるまでの間隔が短くなる。そのため、給水を頻繁に行う必要が生じるという問題がある。
【0011】
また、特許文献5,6に記載の植栽基盤においては、客土層の下部に繊維マットからなる保水層を敷設した構成とされているが、繊維マットは保型性が小さく、外部からの圧力により容易に圧縮され、内部の空隙率が減少する。従って、保水層の上部に客土層を敷設して、その上に植物を植栽することで、保水層の繊維マットは圧縮されて保水容量は減少する。そのため、一般に、大きな保水容量を持たせることは困難である。そのため、客土層が乾燥しやすく、給水を頻繁に行う必要が生じるという問題がある。
【0012】
また、客土層として特許文献7では、客土層に、乾燥汚泥と木材チップを混合した混合物に団粒化剤を添加した客土が記載されている。この客土は、木材チップにより保水性が高められる上に、団粒化剤によって乾燥汚泥が網目状の団粒構造となり、空隙率が大きく保水性が極めて良好となる。従って、植栽基盤に使用するには優れた客土であると考えられる。しかし、一般に、木材チップは、一般の軽量土に比べて価格が高く、木材チップを使用すると、植栽基盤の施工費用が高くならざるを得ないという問題がある。
【0013】
そこで、本発明の目的は、貯水容量が大きく給水回数が少なくすることが可能であり、客土層の陥没や捲れ、ズレも防止することが可能な植栽基盤を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る植栽基盤は、不透水性の遮水層と、前記遮水層の上面に敷設されており、互いに連通する多数の連続空隙を内部に有するスチレン系樹脂発泡体により構成された貯水層と、前記貯水層の上面に敷設されており、鉋屑が混合された客土からなる客土層と、を有することを特徴とする。
【0015】
この構成により、客土層には鉋屑が混合されているため軽量である。また、貯水層もスチレン系樹脂発泡体により構成されているため、極めて軽量である。そのため、植栽基盤を敷設する屋上、バルコニー、ベランダ等の床面に加わる重量負荷を軽減することができる。また、鉋屑は、客土層中に多くの空隙を作ると共に、鉋屑自体も水をよく吸収し保持するため、客土層の保水性がよい。
【0016】
また、鉋屑は、大鋸屑に比べて一個体あたりの体積が大きいため、腐朽するまでの期間が長く、長期にわたって保水性を持続させることができる。
【0017】
客土層に散水された場合に、客土層で保水しきれない水は、重力水として客土層を通過して貯水層に侵入する。貯水層の下面には、不透水性の遮水層が敷設されているため、この水は貯水層に貯水される。一方、晴天時には、客土層に保水された水は蒸発するが、毛管現象によって貯水層から客土層に水が供給されるため、長期間にわたって水の補給がされなかった場合でも、客土層が乾燥することが防止される。特に、鉋屑は水の吸収性がよく、本発明では客土層に鉋屑を入れることで、貯水層に溜まった水を効率よく客土層に吸い上げて保水させることができる。そして、このように常に保水状態であるため、夏は屋内の温度を低減させ、冬は屋内を保温する作用が大きい。
【0018】
また、貯水層に使用する部材として、互いに連通する多数の連続空隙を内部に有するスチレン系樹脂発泡体を使用することにより、貯水層の厚みや形を、施工現場の状況に合わせて自由に変えることができる。なお、スチレン系樹脂発泡体内の空隙は互いに連通する連続空隙であるため、水はこれらの空隙内を自由に移動でき、この空隙内に貯水される。
【0019】
また、スチレン系樹脂発泡体は、適度の保形性を有しており、マットのように外部からの重量負荷によって内部の空隙が潰れる度合いが少ない。従って、上部から客土層や植物等の重量負荷が加わっても、保水層内部の空隙率はさほど減少せず、高い保水容量に保たれる。
【0020】
更に、スチレン系樹脂発泡体は、スチレン系樹脂の間に細かい空隙が多数形成された構造を有する。そのため、波板で空間を形成して貯水層とした場合のように、客土層に植えられた植物の根が、貯水層内に宙吊り状に垂れ下がって成長するのではなく、植物の根がスチレン系樹脂に支えられて空隙に沿って成長し、植物が貯水層内部に根を張りやすい。そのため、植物への水の供給が効率よく行われる。また、植物の根が貯水層の内部に張るため、その上部の客土層を薄くすることができる。従って、客土層の軽量化が可能となる。また、植物の育ちもよくなる。更に、植物の根が貯水層の内部に張ると客土層が捲れあがることが防止される。例えば、芝マットを使用した場合には、芝の根張りにより捲れ上がりが防止される。
【0021】
また、植物の根がスチレン系樹脂の空隙内に張ることにより、植物の根によって客土層と貯水層とが強固に結合されることとなる。そのため、客土層の上を人が歩いたとき等に客土層と貯水層との間に外部から剪断力が働いた場合でも、客土層と貯水層とがズレを起したり、客土層が捲れあがったりすることが防止される。
【0022】
また、スチレン系樹脂発泡体を使用しているため、波板で空間を形成して貯水層とした場合のように、上部から大きな外力が加わった場合に、客土層が貯水層内に崩れ落ちて客土層が陥没するというような事態が防止される。
【0023】
また、貯水層に水を貯水することで、長期にわたり、水の蒸発潜熱の吸収による植栽基盤の保冷を持続されるという作用もある。
【0024】
ここで、客土層に使用する客土は土壌、無機質客土、又は有機質客土を使用することができる。
【0025】
また、客土層に使用する客土としては、軽量土を使用することができる。これにより、植栽基盤の重量を軽量化し、植栽基盤を敷設する屋上、バルコニー、ベランダ等の床面に加わる負荷を小さくすることができる。具体的には、軽量土として、マサ土、砂壌土、埴壌土、黒ぼく土、黒土、赤土、粒状炭化物、腐植土、木質炭、樽前土、バーク、クン炭、赤玉土、火山性土、ハイフミン等を使用することができる。但し、スチレン系樹脂発泡体の空隙内に客土が容易に侵入しないように、当該空隙のサイズよりも大きい粒状の客土を主成分とするものを使用することが好ましい。
【0026】
また、前記客土は、パーライト、バーミキュライト(蛭石)、フェノールスポンジ、吸水繊維、高吸水性樹脂、ベントナイト、珪藻土、バーク、ピートモス、水苔、パルプ、ロックウール、グラスウール、ゼオライト(沸石)等の保水材を含有するものとすることができる。これにより、客土の保水性が更に向上する。
【0027】
また、貯水層に使用するスチレン系樹脂発泡体の空隙率は10〜50容量%とすることができる。空隙率が10容量%よりも小さくなると保水量が少なくなるため、植栽基盤が乾燥するまでの時間が短くなり、必要とされる給水の頻度が多くなる傾向がある。また、空隙率が50容量%よりも大きいと、スチレン系樹脂発泡体の強度が低下し、重量により空隙が押しつぶされ、かえって保水量が低下する傾向がある。更に、保水量と強度のバランスが最適であるという点で、空隙率を20〜30容量%とするのが好適である。
【0028】
また、前記貯水層に使用するスチレン系樹脂発泡体は、ブロック状のスチレン系樹脂発泡体を組み合わせたものとすることができる。これにより、施工が簡単となる。
【0029】
また、前記貯水層の上面に、所定の間隔で複数列の溝が形成された構成とすることができる。このように、溝を形成することによって、施工時に貯水層の上面に客土を敷きつめる際に、土ずれが防止される。すなわち、スチレン系樹脂発泡体の表面は滑りやすく、客土を敷きつめる際には、客土がスチレン系樹脂発泡体からなる貯水層の表面を滑って、貯水層の表面が露出しやすい。また、客土層を一定の厚みで敷きつめることも難しい。そこで、貯水層の上面に、所定の間隔で複数列の溝を形成することで、敷きつめた客土が溝に引っかかって、滑りにくくなる。そのため、客土層を一定の厚みで敷きつめる作業が容易となる。更に、施工後も客土層が滑って貯水層が露出するという事態が生じることを防止できる。
【0030】
また、前記貯水層の上面に、所定の間隔で複数の凸起が形成された構成とすることができる。このような構成とすると、凸起によって客土層が貯水層の上面を滑ることが防止されるため、人が客土層の上面を歩いた場合等に客土層と貯水層の境界面に剪断力が働いた場合でも、客土層がズレを起こすことが防止される。
【0031】
また、前記遮水層としては、遮水シートを使用することができる。遮水シートを使用することで、遮水層を薄く形成することができ、植栽基盤の厚みを薄くできるとともに、軽量化することができる。また、遮水シートは自由に変形・切断が可能であるため施工性も改善させる。尚、遮水シートとしては、施工性が良好な、ポリエチレンフィルム、ゴムシート等を使用することができる。
【0032】
また、本発明に係る植栽基盤においては、前記客土層は、鉋屑が混合された客土に団粒化剤を添加して混練した団粒化土を用いることができる。
【0033】
このように、客土層を、団粒化剤を添加して混合された客土に鉋屑を混合した団粒化土により構成することで、客土層の客土の粒子どうしが団粒化剤により結合し網目構造を形成し、客土の粒子間に多数の空隙が形成されるため、この空隙に毛管水若しくは結合水として水が保水され、客土層の保水性を更に向上させることができる。
【0034】
また、団粒化によって客土層内に多くの空隙が形成されるため、客土層を軽量化することができる。また、客土層の通気性も向上する。
【0035】
更に、客土層を団粒化することで、客土層から濁水が出にくくなる。すなわち、客土層に通常の土を使用したのでは、水をまいたときに客土層から濁水が出やすい。この濁水は、屋上やベランダ等の排水溝や樋等を詰まらせるため、雨漏りの原因ともなる。しかし、客土層に団粒化土を使用して濁水を出にくくすることで、これらの問題点を解消することができる。同様に、客土を団粒化することで、風が吹いたときにも飛散しにくいため、土埃が排水溝や樋等を詰まらせることもない。
【0036】
ここで、団粒化剤としては、アクリル系、ポリアミン系、ジシアンジアミド系、ポリアクリルアミド系、ポリメタクリル酸エステル系、ポリアミンサルホン系、又はジアミン系の高分子からなる高分子凝集剤であって、油中水型エマルジョン又は塩水溶液中分散液の形態をとるものを用いることができる。また、この高分子凝集剤は、アニオン性、カチオン性、又はノニオン性の何れをも使用することができる。アニオン性高分子凝集剤としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、ビニルスルフォン酸、スチレンスルフォン酸、アクリルアミド2−メチルプロパンスルフォン酸等の単独重合体若しくはアクリルアミドとの共重合体などを使用することができる。カチオン性高分子凝集剤としては、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタアクリル酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタアクリルアミド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、メタアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、メタアクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、アクリロイル2−ヒドロキシプロピルリド、メタアクリロ2−ヒドロキシプロピルリド等の単独重合体若しくはアクリルアミドとの共重合体などを使用することができる。また、ノニオン性高分子凝集剤としては、ポリアクリルアミド等を使用することができる。
【0037】
特に、団粒の大きさと空隙率のバランスがとれて、団粒化土に極めて高い保水性を与えることができるという点で、団粒化剤としては、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子凝集剤を使用するのが好適である。このような高分子凝集剤として、例えば、有限会社グローバル研究所製の商品名「GB−2000」を使用することができる。
【0038】
また、鉋屑を混合した客土に団粒化剤を添加して混練したものを使用せず、団粒化剤を添加して混練された客土に鉋屑を混合した団粒化土を使用することとしたのは、以下のような理由による。すなわち、最初に鉋屑を混ぜた客土に団粒化剤を添加すると、鉋屑が団粒化剤を吸収するため、客土が十分に団粒化されない。そのため、客土層の保水性を十分に高めることができない。一方、団粒化剤を添加して混練して十分に団粒化された客土に鉋屑を混合すれば、保水性は飛躍的に大きくなる。従って、後者の団粒化度を使用することとしたものである。
【0039】
また、客土層の厚さは特に特定するものではないが、ベランダやバルコニーに植栽基盤を敷設する場合には、3〜10cmの厚さに敷設することが好ましい。通常、ベランダやバルコニーに植栽基盤を敷設する場合には、人が歩きやすくする必要があることから、客土層には芝等の地被類を植栽するが、これらの地被類は、客土層の厚さが3cmから植栽が可能である。客土層の厚さが3cmよりも小さいと、地被類の根付きは悪くなる傾向がある。一方、客土層の厚さが10cmよりも大きくなると、客土層の重量が増して、建築物にかかる荷重が大きくなるため、一般的には好ましくない。勿論、建築物の荷重制限がなければ、客土層の厚さを15〜20cmとしてもよい。これにより、ツツジ等の低木の植栽も可能となる。
【0040】
本発明に係る植栽基盤の施工方法は、屋上又はベランダ若しくはバルコニーの床面上に不透水性の遮水層を敷設する工程と、前記遮水層の上面に、互いに連通する多数の連続空隙を内部に有するスチレン系樹脂発泡体により構成された貯水層を敷設する工程と、前記貯水層の上面に、団粒化剤を添加して混練された客土に鉋屑を混合した団粒化土を敷きつめて客土層を形成する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0041】
これにより、屋上又はベランダ若しくはバルコニーに、上述したような機能を有する植栽基盤を敷設することができる。
【0042】
また、従来のように貯水層にパーライト等を使用した場合には、施工時にパーライトが風によって飛散するため、施工環境が悪い。また、パーライトは比重が大きいために重いため、運搬に労力がかかる。それに対して、貯水層に上記スチレン系樹脂発泡体を使用することで、重量が軽く形状も安定しているため、運搬が容易であり、エレベータ等を使用して運び上げることができる。また、風による飛散もないため、施工環境が良好である。そして、施工現場の形に合わせて加工がしやすい。従って、通常のマンションのベランダ等であれば、1日あれば施工を完了することができる。
【0043】
ここで、客土層は、まず団粒化剤を客土に添加して混練した後に、鉋屑を混合することとしたのは、上で述べた理由による。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施形態に係る植栽基盤の要部断面図である。
【0045】
図1において、本実施形態に係る植栽基盤1は、ベランダ2の床面2aに敷設されている。ベランダ2の床面2a上には、植栽基盤1の周囲を取り囲んで断面形状がL字型の外枠3が設置されており、この外枠3内部の床面2a上には、ポリエチレンシートからなる遮水層4が敷設されている。この外枠3及び遮水層4は、防水用両面粘着テープによりベランダ2の床面2a上に貼着され固定されている。
【0046】
尚、遮水層4は、外枠3に接する端部4aが、L字状の外枠3の内面に沿って上方に折り曲げられている。このため、遮水層4全体でプールが形成され、遮水層4の内部に水を溜めることが可能である。
【0047】
遮水層4の上面には、外枠3の内部を充填するように、発泡ポリスチレンからなる貯水層5が形成されている。この貯水層5に使用されている発泡ポリスチレンは、互いに連通する多数の連続空隙を内部に有しており、この空隙間を水は自由に通過することが可能な構成とされている。このような発泡ポリスチレンとしては、三菱化学フォームプラスティック株式会社製の「チップドレン」(商品名)を使用することができる。この「チップドレン」(商品名)を使用した場合、空隙率は30容量%であり、大きな貯水容量を確保することができ、圧縮強度は、5%圧縮で100〜120kPaであり、保型性にも優れている。従って、大きな圧力が加わっても貯水容量はさほど変化しないため、貯水層の厚さを、約2〜5cm程度に薄くすることができる。
【0048】
また、この貯水層5は、ブロック状の発泡ポリスチレンを組み合わせて構成されている。これにより、施工場所の広さに応じて貯水層5の大きさを自由に調節できるため、貯水層5の施工が容易となる。また、発泡ポリスチレンブロックの高さは均一であるため、貯水層5を正確に水平にすることができる。
【0049】
貯水層5の上面には、鉋屑が混合された客土からなる客土層6が3〜10cmの厚さに形成されている。この客土層6に使用される客土としては、団粒化したマサ土等の軽量土が使用される。更に、客土層6の上面には芝マット7が敷きつめられている。
【0050】
ここで、貯水層5の上面には、所定の間隔で複数列の溝5aが形成されている。この溝5aの深さは1〜1.5cmとされる。このように溝5aを形成しておくことで、芝マット7の芝が貯水層5内まで根を張っていないときでも、客土層6と貯水層5との間に滑りが生じることを防止できる。
【0051】
また、外枠3の垂直板部分には、貯水層5の上面の高さの部分に、排水孔3aが穿孔されている。この排水孔3aによって、過剰な水は外枠3aの外部に排水され、ベランダ2の床面2aの端に形成された排水溝2bに排水される。
【0052】
以上のように構成された本実施形態に係る植栽基盤について、以下その施工方法を説明する。
【0053】
図2は植栽基盤を施工する前のベランダを表す図、図3は植栽基盤の外枠を設置した状態の一例を表す図、図4は貯水層を敷設した状態の一例を表す図、図5は客土層を敷設した状態の一例を表す図、図6は植栽基盤が完成した状態を表す図である。尚、各図における符号は図1と同様のものを表す。
【0054】
まず、図2に示したベランダ2の床面2aに、図3に示すように、植栽基盤1の外枠3を設置する。このとき、外枠3は、ベランダ2の床面2aに防水用両面粘着テープで貼着して固定する。
【0055】
次に、敷設した外枠3の枠内に、ポリエチレンシートを敷設し遮水層4を形成する。このポリエチレンシートも、ベランダ2の床面2aに防水用両面粘着テープで貼着することにより固定する。このとき、ポリエチレンシートの端部4aは、L字状の外枠3の内面に沿って上方に折り曲げる。そして、ポリエチレンシートの側辺上端は、外枠3の排水孔3aの高さとなるようにする。
【0056】
次に、外枠3の枠内の遮水層4の上面に、発泡ポリスチレンブロックを敷きつめて貯水層5を形成する。このとき、各発泡ポリスチレンブロックの上面に形成された溝5aは互いに連通するように配置する。
【0057】
次に、マサ土に団粒化剤を添加して混練して団粒化し、その土と鉋屑を、体積比で約1:1の割合で混合し客土を生成する。ここで、団粒化剤としては有限会社グローバル研究所製の商品名「GB−2000」を使用する。そして、図5に示すように、貯水層5の上面に客土を一様に敷きつめて、客土層6を形成する。
【0058】
尚、客土については、植栽基盤1の施工現場で生成するのではなく、あらかじめ施工前に生成しておいてもよい。
【0059】
最後に、図6に示すように、客土の上に芝マット7を敷きつめて、植栽基盤1の施工が完了する。
【0060】
以上のように施工が完了すると、植栽基盤1の上面に水をまき、貯水層5に水を満たす。このように貯水しておくことで、芝生に水が供給され、芝生が生育する。そして、芝生は成長すると客土層6及び貯水層5に根を張り、これら各層が強固に固定されるため、各層がずれたり捲れあがることが防止される。
また、保水性のある客土層6と貯水層5を備えているために、散水回数を減らすことができる。
【0061】
【実施例】
最後に、上記植栽基盤1を屋上に設置して、実際の温度低減効果を実験したので、その結果について説明する。
【0062】
図7及び図8は植栽基盤1を屋上に設置した場合と設置しない場合における屋上及び天井裏の温度の時間変化を表すグラフである。図7は夏期における実験結果を表し、図8は冬季における実験結果を表している。
【0063】
図7,8において、○で示した点が屋上気温、×で示した点が植栽基盤1を設置しない場合の屋上の床面の温度、△で示した点が植栽基盤1を設置した場合の植栽基盤1の芝面の温度を表す。また、*で示した点が植栽基盤1を設置していない部分(非緑化面)の天井裏の温度、◆で示した点が植栽基盤1を設置した部分(緑化面)の天井裏の温度を表す。
【0064】
この実験においては、貯水層5の厚さは3cm、客土層6の厚さは2.5cm、植栽基盤1のトータルの厚さを7cmとした。
【0065】
図7より、植栽基盤1を屋上に設置することで、日中の正午付近で、屋上の表面温度が約19℃低下することが見られた。また、天井裏の温度は、植栽基盤1を屋上に設置することで約2.8℃低下することが見られた。
【0066】
このことから、植栽基盤1を建築物の屋上に設置することにより、大きな温度上昇抑制効果があることが実証された。
【0067】
また、図8より、夏の天井裏の温度は非緑化面より緑化面が温度が低かったのに対して、冬は緑化面の天井裏のほうが温度が高くなっている。このことから、緑化することにより天井裏は夏場は涼しく、冬場には暖かいため冷暖房費が節約できることがわかる。また、屋上躯体の温度変化が小さいため躯体コンクリートへの負荷が小さいと考えられる。
【0068】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る植栽基盤によれば、客土層に鉋屑を混合したことで軽量化することができるため、屋上、バルコニー、ベランダ等の床面に加わる重量負荷を軽減することができ、施工するにあたり、床面の強度補強等の工事を不要とすることができる。
【0069】
また、客土層に鉋屑を混合したことで客土層の保水性が改善されるため、日当たりのよい屋上、ベランダ等に植栽基盤を敷設した場合でも、客土層に植栽される植物が乾燥によって枯死することを防止することができる。また、植物への散水回数も少なくてよいこととなり、管理が容易となる。同時に、屋上、ベランダ等の床面の温度上昇を抑制し、夏でも屋内やベランダ等の軒下を涼しく保つことが可能となる。
【0070】
また、鉋屑は腐朽しにくいため、客土層の客土を新たなものに取り替える頻度を少なくすることができる。
【0071】
更に、鉋屑は、木材を加工する際に廃材として生じるものであり、現在は産業廃棄物として処理されている。従って、鉋屑を客土中に使用することで、木材の有効利用が可能となる。特に、鉋屑は、大鋸屑等に比べてリサイクルの用途が少ないため、新たな廃材のリサイクル利用の道を開くという観点からの用途開拓の効果は大きい。加えて、鉋屑は、現在のところ、廃材として廃棄されていたものであるため、極めて安価に入手することができ、植栽基盤を低廉な費用で施工することが可能である。従って、一般家庭における屋上、バルコニー、ベランダ等の緑化に使用するのに最適である。
【0072】
また、客土層を、鉋屑が混合された客土に団粒化剤を添加して混練した団粒化土により構成することで、客土層内の客土に多くの空隙を形成させて、客土層の保水性を更に向上させることができる。
【0073】
また、貯水層を設けることで、長期間にわたって水の補給がされなかった場合でも、客土層が乾燥することが防止されるため、植栽基盤への給水に雨水を使用すれば、給水を殆ど行う必要がなくなる。従って、水資源を有効に利用できる。また、植栽基盤により、植栽基盤を設置した屋上、ベランダ、バルコニー等の床面が冷却されるため、日射が強い季節でも屋内や軒下の気温を低く保持することができる。
【0074】
本発明に係る植栽基盤の施工方法によれば、屋上又はベランダ若しくはバルコニーに、上述したような効果を奏する植栽基盤を敷設することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る植栽基盤の要部断面図である。
【図2】植栽基盤を施工する前のベランダを表す図である。
【図3】植栽基盤の外枠を設置した状態の一例を表す図である。
【図4】貯水層を敷設した状態の一例を表す図である。
【図5】客土層を敷設した状態の一例を表す図である。
【図6】植栽基盤が完成した状態を表す図である。
【図7】夏期における植栽基盤1を屋上に設置した場合と設置しない場合における屋上及び天井裏の温度の時間変化を表すグラフである。
【図8】冬期における植栽基盤1を屋上に設置した場合と設置しない場合における屋上及び天井裏の温度の時間変化を表すグラフである。
【符号の説明】
1 植栽基盤
2 ベランダ
2a 床面
2b 排水溝
3 外枠
3a 排水孔
4 遮水層
4a 端部
5 貯水層
5a 溝
6 客土層
7 芝マット
【発明の属する技術分野】
本発明は、屋上、バルコニー、ベランダ等の緑化のために使用される植栽基盤及びその施工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、建築物の内部や軒下を涼しく保つとともに都市の緑化を行うため、建築物の屋上やベランダ、バルコニー等に植栽を行うための植栽基盤が研究・開発されている(例えば、特許文献1〜6参照)。
【0003】
特許文献1,3に記載の植栽基盤においては、最下部に波板をおいて貯水層を形成し、その上部に保水性の客土層を敷設した構成を有している。そして、この客土層上に芝等の植物が植栽される。この場合、植栽客土が貯水層内に崩れ落ちないように、客土層をバインダーで固化させたり(特許文献1参照)、貯水層の上面に網や不織布等の土受けを設けたりするように構成されている(特許文献3参照)。
【0004】
また、特許文献2,4に記載の植栽基盤においては、最下部に波板をおいて貯水層を形成し、貯水層内にパーライト等の吸水材を充填するとともに、その上部に保水性の客土層を敷設した構成を有している。そして、この客土層上に芝等の植物が植栽される。
【0005】
また、特許文献5,6に記載の植栽基盤においては、最下部に不透水性の遮水シートを敷設し、その上部に繊維マットからなる保水層を敷設するとともに、この保水層の上部に客土層を形成した構成を有している。そして、この客土層上に芝等の植物が植栽される。
【0006】
一方、客土層に使用される客土としては、通常多用されるピートモス、黒土、バンブ砂等の軽量土の他、ポリウレタンと籾殻、米糠等をバインダーにより固化した人工土壌(特許文献1参照)、乾燥汚泥と木材チップの混合物に団粒化剤を添加して保水性を高めた培土(特許文献7参照)等が知られている。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−238349号公報
【特許文献2】
特開2002−17155号公報
【特許文献3】
特開2002−17161号公報
【特許文献4】
特開2001−16982号公報
【特許文献5】
特開2000−139200号公報
【特許文献6】
特開平11−332372号公報
【特許文献7】
特開2002−186351号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1,3に記載の植栽基盤においては、上部から大きな外力が加わった場合に、客土層が貯水層内に崩れ落ちて客土層が陥没するというような事態が想定される。これを防止するため、客土層をバインダーで固化したり、客土層の厚さを厚くすることが考えられる。しかし、客土層を固化した場合には(例えば、特許文献1参照)、客土層の保水性が低下するとともに、植物が客土層内に根を張りにくくなり、植物が乾燥したり、生育が不良となるという問題がある。一方、客土層の厚みを厚くすると、植栽基盤全体の厚みが厚くなるとともに植栽基盤全体の重量が増大する。そのため、植栽基盤を屋上やベランダ、バルコニー等の床面に設置した際に、植栽基盤の厚みが目立ったり、床面に加わる重量負荷が大きくなるという問題がある。
【0009】
また、人が植栽基盤上を歩いた場合などにおいて、客土層と貯水層との間に剪断力が加わると、客土層がずれたり捲れあがりやすいという問題がある。
【0010】
また、特許文献2,4に記載の植栽基盤においては、貯水層内にパーライト等の吸水材を充填することによって、客土層が貯水層内に陥没することは防止される。そのため、客土層を薄くすることが可能である。しかし、貯水層内にパーライト等の吸水材は粒状であるため、客土層と貯水層との間に剪断力が働くと、粒状の吸水材の転がりや移動によって横ずれが生じやすい。これを防止するため、貯水層を区画して粒状の吸水材を充填すること(例えば、特許文献2,4参照)が考えられるが、貯水層を区画すると、貯水層内の水の自由な移動が阻害されるため、区画ごとに給水を行う必要が生じてくる。また、区画の境界板の厚みによっては、貯水層の貯水容量も減少するため、貯水層内の水が蒸発によって失われるまでの間隔が短くなる。そのため、給水を頻繁に行う必要が生じるという問題がある。
【0011】
また、特許文献5,6に記載の植栽基盤においては、客土層の下部に繊維マットからなる保水層を敷設した構成とされているが、繊維マットは保型性が小さく、外部からの圧力により容易に圧縮され、内部の空隙率が減少する。従って、保水層の上部に客土層を敷設して、その上に植物を植栽することで、保水層の繊維マットは圧縮されて保水容量は減少する。そのため、一般に、大きな保水容量を持たせることは困難である。そのため、客土層が乾燥しやすく、給水を頻繁に行う必要が生じるという問題がある。
【0012】
また、客土層として特許文献7では、客土層に、乾燥汚泥と木材チップを混合した混合物に団粒化剤を添加した客土が記載されている。この客土は、木材チップにより保水性が高められる上に、団粒化剤によって乾燥汚泥が網目状の団粒構造となり、空隙率が大きく保水性が極めて良好となる。従って、植栽基盤に使用するには優れた客土であると考えられる。しかし、一般に、木材チップは、一般の軽量土に比べて価格が高く、木材チップを使用すると、植栽基盤の施工費用が高くならざるを得ないという問題がある。
【0013】
そこで、本発明の目的は、貯水容量が大きく給水回数が少なくすることが可能であり、客土層の陥没や捲れ、ズレも防止することが可能な植栽基盤を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る植栽基盤は、不透水性の遮水層と、前記遮水層の上面に敷設されており、互いに連通する多数の連続空隙を内部に有するスチレン系樹脂発泡体により構成された貯水層と、前記貯水層の上面に敷設されており、鉋屑が混合された客土からなる客土層と、を有することを特徴とする。
【0015】
この構成により、客土層には鉋屑が混合されているため軽量である。また、貯水層もスチレン系樹脂発泡体により構成されているため、極めて軽量である。そのため、植栽基盤を敷設する屋上、バルコニー、ベランダ等の床面に加わる重量負荷を軽減することができる。また、鉋屑は、客土層中に多くの空隙を作ると共に、鉋屑自体も水をよく吸収し保持するため、客土層の保水性がよい。
【0016】
また、鉋屑は、大鋸屑に比べて一個体あたりの体積が大きいため、腐朽するまでの期間が長く、長期にわたって保水性を持続させることができる。
【0017】
客土層に散水された場合に、客土層で保水しきれない水は、重力水として客土層を通過して貯水層に侵入する。貯水層の下面には、不透水性の遮水層が敷設されているため、この水は貯水層に貯水される。一方、晴天時には、客土層に保水された水は蒸発するが、毛管現象によって貯水層から客土層に水が供給されるため、長期間にわたって水の補給がされなかった場合でも、客土層が乾燥することが防止される。特に、鉋屑は水の吸収性がよく、本発明では客土層に鉋屑を入れることで、貯水層に溜まった水を効率よく客土層に吸い上げて保水させることができる。そして、このように常に保水状態であるため、夏は屋内の温度を低減させ、冬は屋内を保温する作用が大きい。
【0018】
また、貯水層に使用する部材として、互いに連通する多数の連続空隙を内部に有するスチレン系樹脂発泡体を使用することにより、貯水層の厚みや形を、施工現場の状況に合わせて自由に変えることができる。なお、スチレン系樹脂発泡体内の空隙は互いに連通する連続空隙であるため、水はこれらの空隙内を自由に移動でき、この空隙内に貯水される。
【0019】
また、スチレン系樹脂発泡体は、適度の保形性を有しており、マットのように外部からの重量負荷によって内部の空隙が潰れる度合いが少ない。従って、上部から客土層や植物等の重量負荷が加わっても、保水層内部の空隙率はさほど減少せず、高い保水容量に保たれる。
【0020】
更に、スチレン系樹脂発泡体は、スチレン系樹脂の間に細かい空隙が多数形成された構造を有する。そのため、波板で空間を形成して貯水層とした場合のように、客土層に植えられた植物の根が、貯水層内に宙吊り状に垂れ下がって成長するのではなく、植物の根がスチレン系樹脂に支えられて空隙に沿って成長し、植物が貯水層内部に根を張りやすい。そのため、植物への水の供給が効率よく行われる。また、植物の根が貯水層の内部に張るため、その上部の客土層を薄くすることができる。従って、客土層の軽量化が可能となる。また、植物の育ちもよくなる。更に、植物の根が貯水層の内部に張ると客土層が捲れあがることが防止される。例えば、芝マットを使用した場合には、芝の根張りにより捲れ上がりが防止される。
【0021】
また、植物の根がスチレン系樹脂の空隙内に張ることにより、植物の根によって客土層と貯水層とが強固に結合されることとなる。そのため、客土層の上を人が歩いたとき等に客土層と貯水層との間に外部から剪断力が働いた場合でも、客土層と貯水層とがズレを起したり、客土層が捲れあがったりすることが防止される。
【0022】
また、スチレン系樹脂発泡体を使用しているため、波板で空間を形成して貯水層とした場合のように、上部から大きな外力が加わった場合に、客土層が貯水層内に崩れ落ちて客土層が陥没するというような事態が防止される。
【0023】
また、貯水層に水を貯水することで、長期にわたり、水の蒸発潜熱の吸収による植栽基盤の保冷を持続されるという作用もある。
【0024】
ここで、客土層に使用する客土は土壌、無機質客土、又は有機質客土を使用することができる。
【0025】
また、客土層に使用する客土としては、軽量土を使用することができる。これにより、植栽基盤の重量を軽量化し、植栽基盤を敷設する屋上、バルコニー、ベランダ等の床面に加わる負荷を小さくすることができる。具体的には、軽量土として、マサ土、砂壌土、埴壌土、黒ぼく土、黒土、赤土、粒状炭化物、腐植土、木質炭、樽前土、バーク、クン炭、赤玉土、火山性土、ハイフミン等を使用することができる。但し、スチレン系樹脂発泡体の空隙内に客土が容易に侵入しないように、当該空隙のサイズよりも大きい粒状の客土を主成分とするものを使用することが好ましい。
【0026】
また、前記客土は、パーライト、バーミキュライト(蛭石)、フェノールスポンジ、吸水繊維、高吸水性樹脂、ベントナイト、珪藻土、バーク、ピートモス、水苔、パルプ、ロックウール、グラスウール、ゼオライト(沸石)等の保水材を含有するものとすることができる。これにより、客土の保水性が更に向上する。
【0027】
また、貯水層に使用するスチレン系樹脂発泡体の空隙率は10〜50容量%とすることができる。空隙率が10容量%よりも小さくなると保水量が少なくなるため、植栽基盤が乾燥するまでの時間が短くなり、必要とされる給水の頻度が多くなる傾向がある。また、空隙率が50容量%よりも大きいと、スチレン系樹脂発泡体の強度が低下し、重量により空隙が押しつぶされ、かえって保水量が低下する傾向がある。更に、保水量と強度のバランスが最適であるという点で、空隙率を20〜30容量%とするのが好適である。
【0028】
また、前記貯水層に使用するスチレン系樹脂発泡体は、ブロック状のスチレン系樹脂発泡体を組み合わせたものとすることができる。これにより、施工が簡単となる。
【0029】
また、前記貯水層の上面に、所定の間隔で複数列の溝が形成された構成とすることができる。このように、溝を形成することによって、施工時に貯水層の上面に客土を敷きつめる際に、土ずれが防止される。すなわち、スチレン系樹脂発泡体の表面は滑りやすく、客土を敷きつめる際には、客土がスチレン系樹脂発泡体からなる貯水層の表面を滑って、貯水層の表面が露出しやすい。また、客土層を一定の厚みで敷きつめることも難しい。そこで、貯水層の上面に、所定の間隔で複数列の溝を形成することで、敷きつめた客土が溝に引っかかって、滑りにくくなる。そのため、客土層を一定の厚みで敷きつめる作業が容易となる。更に、施工後も客土層が滑って貯水層が露出するという事態が生じることを防止できる。
【0030】
また、前記貯水層の上面に、所定の間隔で複数の凸起が形成された構成とすることができる。このような構成とすると、凸起によって客土層が貯水層の上面を滑ることが防止されるため、人が客土層の上面を歩いた場合等に客土層と貯水層の境界面に剪断力が働いた場合でも、客土層がズレを起こすことが防止される。
【0031】
また、前記遮水層としては、遮水シートを使用することができる。遮水シートを使用することで、遮水層を薄く形成することができ、植栽基盤の厚みを薄くできるとともに、軽量化することができる。また、遮水シートは自由に変形・切断が可能であるため施工性も改善させる。尚、遮水シートとしては、施工性が良好な、ポリエチレンフィルム、ゴムシート等を使用することができる。
【0032】
また、本発明に係る植栽基盤においては、前記客土層は、鉋屑が混合された客土に団粒化剤を添加して混練した団粒化土を用いることができる。
【0033】
このように、客土層を、団粒化剤を添加して混合された客土に鉋屑を混合した団粒化土により構成することで、客土層の客土の粒子どうしが団粒化剤により結合し網目構造を形成し、客土の粒子間に多数の空隙が形成されるため、この空隙に毛管水若しくは結合水として水が保水され、客土層の保水性を更に向上させることができる。
【0034】
また、団粒化によって客土層内に多くの空隙が形成されるため、客土層を軽量化することができる。また、客土層の通気性も向上する。
【0035】
更に、客土層を団粒化することで、客土層から濁水が出にくくなる。すなわち、客土層に通常の土を使用したのでは、水をまいたときに客土層から濁水が出やすい。この濁水は、屋上やベランダ等の排水溝や樋等を詰まらせるため、雨漏りの原因ともなる。しかし、客土層に団粒化土を使用して濁水を出にくくすることで、これらの問題点を解消することができる。同様に、客土を団粒化することで、風が吹いたときにも飛散しにくいため、土埃が排水溝や樋等を詰まらせることもない。
【0036】
ここで、団粒化剤としては、アクリル系、ポリアミン系、ジシアンジアミド系、ポリアクリルアミド系、ポリメタクリル酸エステル系、ポリアミンサルホン系、又はジアミン系の高分子からなる高分子凝集剤であって、油中水型エマルジョン又は塩水溶液中分散液の形態をとるものを用いることができる。また、この高分子凝集剤は、アニオン性、カチオン性、又はノニオン性の何れをも使用することができる。アニオン性高分子凝集剤としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、ビニルスルフォン酸、スチレンスルフォン酸、アクリルアミド2−メチルプロパンスルフォン酸等の単独重合体若しくはアクリルアミドとの共重合体などを使用することができる。カチオン性高分子凝集剤としては、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタアクリル酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタアクリルアミド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、メタアクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、メタアクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、アクリロイル2−ヒドロキシプロピルリド、メタアクリロ2−ヒドロキシプロピルリド等の単独重合体若しくはアクリルアミドとの共重合体などを使用することができる。また、ノニオン性高分子凝集剤としては、ポリアクリルアミド等を使用することができる。
【0037】
特に、団粒の大きさと空隙率のバランスがとれて、団粒化土に極めて高い保水性を与えることができるという点で、団粒化剤としては、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子凝集剤を使用するのが好適である。このような高分子凝集剤として、例えば、有限会社グローバル研究所製の商品名「GB−2000」を使用することができる。
【0038】
また、鉋屑を混合した客土に団粒化剤を添加して混練したものを使用せず、団粒化剤を添加して混練された客土に鉋屑を混合した団粒化土を使用することとしたのは、以下のような理由による。すなわち、最初に鉋屑を混ぜた客土に団粒化剤を添加すると、鉋屑が団粒化剤を吸収するため、客土が十分に団粒化されない。そのため、客土層の保水性を十分に高めることができない。一方、団粒化剤を添加して混練して十分に団粒化された客土に鉋屑を混合すれば、保水性は飛躍的に大きくなる。従って、後者の団粒化度を使用することとしたものである。
【0039】
また、客土層の厚さは特に特定するものではないが、ベランダやバルコニーに植栽基盤を敷設する場合には、3〜10cmの厚さに敷設することが好ましい。通常、ベランダやバルコニーに植栽基盤を敷設する場合には、人が歩きやすくする必要があることから、客土層には芝等の地被類を植栽するが、これらの地被類は、客土層の厚さが3cmから植栽が可能である。客土層の厚さが3cmよりも小さいと、地被類の根付きは悪くなる傾向がある。一方、客土層の厚さが10cmよりも大きくなると、客土層の重量が増して、建築物にかかる荷重が大きくなるため、一般的には好ましくない。勿論、建築物の荷重制限がなければ、客土層の厚さを15〜20cmとしてもよい。これにより、ツツジ等の低木の植栽も可能となる。
【0040】
本発明に係る植栽基盤の施工方法は、屋上又はベランダ若しくはバルコニーの床面上に不透水性の遮水層を敷設する工程と、前記遮水層の上面に、互いに連通する多数の連続空隙を内部に有するスチレン系樹脂発泡体により構成された貯水層を敷設する工程と、前記貯水層の上面に、団粒化剤を添加して混練された客土に鉋屑を混合した団粒化土を敷きつめて客土層を形成する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0041】
これにより、屋上又はベランダ若しくはバルコニーに、上述したような機能を有する植栽基盤を敷設することができる。
【0042】
また、従来のように貯水層にパーライト等を使用した場合には、施工時にパーライトが風によって飛散するため、施工環境が悪い。また、パーライトは比重が大きいために重いため、運搬に労力がかかる。それに対して、貯水層に上記スチレン系樹脂発泡体を使用することで、重量が軽く形状も安定しているため、運搬が容易であり、エレベータ等を使用して運び上げることができる。また、風による飛散もないため、施工環境が良好である。そして、施工現場の形に合わせて加工がしやすい。従って、通常のマンションのベランダ等であれば、1日あれば施工を完了することができる。
【0043】
ここで、客土層は、まず団粒化剤を客土に添加して混練した後に、鉋屑を混合することとしたのは、上で述べた理由による。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施形態に係る植栽基盤の要部断面図である。
【0045】
図1において、本実施形態に係る植栽基盤1は、ベランダ2の床面2aに敷設されている。ベランダ2の床面2a上には、植栽基盤1の周囲を取り囲んで断面形状がL字型の外枠3が設置されており、この外枠3内部の床面2a上には、ポリエチレンシートからなる遮水層4が敷設されている。この外枠3及び遮水層4は、防水用両面粘着テープによりベランダ2の床面2a上に貼着され固定されている。
【0046】
尚、遮水層4は、外枠3に接する端部4aが、L字状の外枠3の内面に沿って上方に折り曲げられている。このため、遮水層4全体でプールが形成され、遮水層4の内部に水を溜めることが可能である。
【0047】
遮水層4の上面には、外枠3の内部を充填するように、発泡ポリスチレンからなる貯水層5が形成されている。この貯水層5に使用されている発泡ポリスチレンは、互いに連通する多数の連続空隙を内部に有しており、この空隙間を水は自由に通過することが可能な構成とされている。このような発泡ポリスチレンとしては、三菱化学フォームプラスティック株式会社製の「チップドレン」(商品名)を使用することができる。この「チップドレン」(商品名)を使用した場合、空隙率は30容量%であり、大きな貯水容量を確保することができ、圧縮強度は、5%圧縮で100〜120kPaであり、保型性にも優れている。従って、大きな圧力が加わっても貯水容量はさほど変化しないため、貯水層の厚さを、約2〜5cm程度に薄くすることができる。
【0048】
また、この貯水層5は、ブロック状の発泡ポリスチレンを組み合わせて構成されている。これにより、施工場所の広さに応じて貯水層5の大きさを自由に調節できるため、貯水層5の施工が容易となる。また、発泡ポリスチレンブロックの高さは均一であるため、貯水層5を正確に水平にすることができる。
【0049】
貯水層5の上面には、鉋屑が混合された客土からなる客土層6が3〜10cmの厚さに形成されている。この客土層6に使用される客土としては、団粒化したマサ土等の軽量土が使用される。更に、客土層6の上面には芝マット7が敷きつめられている。
【0050】
ここで、貯水層5の上面には、所定の間隔で複数列の溝5aが形成されている。この溝5aの深さは1〜1.5cmとされる。このように溝5aを形成しておくことで、芝マット7の芝が貯水層5内まで根を張っていないときでも、客土層6と貯水層5との間に滑りが生じることを防止できる。
【0051】
また、外枠3の垂直板部分には、貯水層5の上面の高さの部分に、排水孔3aが穿孔されている。この排水孔3aによって、過剰な水は外枠3aの外部に排水され、ベランダ2の床面2aの端に形成された排水溝2bに排水される。
【0052】
以上のように構成された本実施形態に係る植栽基盤について、以下その施工方法を説明する。
【0053】
図2は植栽基盤を施工する前のベランダを表す図、図3は植栽基盤の外枠を設置した状態の一例を表す図、図4は貯水層を敷設した状態の一例を表す図、図5は客土層を敷設した状態の一例を表す図、図6は植栽基盤が完成した状態を表す図である。尚、各図における符号は図1と同様のものを表す。
【0054】
まず、図2に示したベランダ2の床面2aに、図3に示すように、植栽基盤1の外枠3を設置する。このとき、外枠3は、ベランダ2の床面2aに防水用両面粘着テープで貼着して固定する。
【0055】
次に、敷設した外枠3の枠内に、ポリエチレンシートを敷設し遮水層4を形成する。このポリエチレンシートも、ベランダ2の床面2aに防水用両面粘着テープで貼着することにより固定する。このとき、ポリエチレンシートの端部4aは、L字状の外枠3の内面に沿って上方に折り曲げる。そして、ポリエチレンシートの側辺上端は、外枠3の排水孔3aの高さとなるようにする。
【0056】
次に、外枠3の枠内の遮水層4の上面に、発泡ポリスチレンブロックを敷きつめて貯水層5を形成する。このとき、各発泡ポリスチレンブロックの上面に形成された溝5aは互いに連通するように配置する。
【0057】
次に、マサ土に団粒化剤を添加して混練して団粒化し、その土と鉋屑を、体積比で約1:1の割合で混合し客土を生成する。ここで、団粒化剤としては有限会社グローバル研究所製の商品名「GB−2000」を使用する。そして、図5に示すように、貯水層5の上面に客土を一様に敷きつめて、客土層6を形成する。
【0058】
尚、客土については、植栽基盤1の施工現場で生成するのではなく、あらかじめ施工前に生成しておいてもよい。
【0059】
最後に、図6に示すように、客土の上に芝マット7を敷きつめて、植栽基盤1の施工が完了する。
【0060】
以上のように施工が完了すると、植栽基盤1の上面に水をまき、貯水層5に水を満たす。このように貯水しておくことで、芝生に水が供給され、芝生が生育する。そして、芝生は成長すると客土層6及び貯水層5に根を張り、これら各層が強固に固定されるため、各層がずれたり捲れあがることが防止される。
また、保水性のある客土層6と貯水層5を備えているために、散水回数を減らすことができる。
【0061】
【実施例】
最後に、上記植栽基盤1を屋上に設置して、実際の温度低減効果を実験したので、その結果について説明する。
【0062】
図7及び図8は植栽基盤1を屋上に設置した場合と設置しない場合における屋上及び天井裏の温度の時間変化を表すグラフである。図7は夏期における実験結果を表し、図8は冬季における実験結果を表している。
【0063】
図7,8において、○で示した点が屋上気温、×で示した点が植栽基盤1を設置しない場合の屋上の床面の温度、△で示した点が植栽基盤1を設置した場合の植栽基盤1の芝面の温度を表す。また、*で示した点が植栽基盤1を設置していない部分(非緑化面)の天井裏の温度、◆で示した点が植栽基盤1を設置した部分(緑化面)の天井裏の温度を表す。
【0064】
この実験においては、貯水層5の厚さは3cm、客土層6の厚さは2.5cm、植栽基盤1のトータルの厚さを7cmとした。
【0065】
図7より、植栽基盤1を屋上に設置することで、日中の正午付近で、屋上の表面温度が約19℃低下することが見られた。また、天井裏の温度は、植栽基盤1を屋上に設置することで約2.8℃低下することが見られた。
【0066】
このことから、植栽基盤1を建築物の屋上に設置することにより、大きな温度上昇抑制効果があることが実証された。
【0067】
また、図8より、夏の天井裏の温度は非緑化面より緑化面が温度が低かったのに対して、冬は緑化面の天井裏のほうが温度が高くなっている。このことから、緑化することにより天井裏は夏場は涼しく、冬場には暖かいため冷暖房費が節約できることがわかる。また、屋上躯体の温度変化が小さいため躯体コンクリートへの負荷が小さいと考えられる。
【0068】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る植栽基盤によれば、客土層に鉋屑を混合したことで軽量化することができるため、屋上、バルコニー、ベランダ等の床面に加わる重量負荷を軽減することができ、施工するにあたり、床面の強度補強等の工事を不要とすることができる。
【0069】
また、客土層に鉋屑を混合したことで客土層の保水性が改善されるため、日当たりのよい屋上、ベランダ等に植栽基盤を敷設した場合でも、客土層に植栽される植物が乾燥によって枯死することを防止することができる。また、植物への散水回数も少なくてよいこととなり、管理が容易となる。同時に、屋上、ベランダ等の床面の温度上昇を抑制し、夏でも屋内やベランダ等の軒下を涼しく保つことが可能となる。
【0070】
また、鉋屑は腐朽しにくいため、客土層の客土を新たなものに取り替える頻度を少なくすることができる。
【0071】
更に、鉋屑は、木材を加工する際に廃材として生じるものであり、現在は産業廃棄物として処理されている。従って、鉋屑を客土中に使用することで、木材の有効利用が可能となる。特に、鉋屑は、大鋸屑等に比べてリサイクルの用途が少ないため、新たな廃材のリサイクル利用の道を開くという観点からの用途開拓の効果は大きい。加えて、鉋屑は、現在のところ、廃材として廃棄されていたものであるため、極めて安価に入手することができ、植栽基盤を低廉な費用で施工することが可能である。従って、一般家庭における屋上、バルコニー、ベランダ等の緑化に使用するのに最適である。
【0072】
また、客土層を、鉋屑が混合された客土に団粒化剤を添加して混練した団粒化土により構成することで、客土層内の客土に多くの空隙を形成させて、客土層の保水性を更に向上させることができる。
【0073】
また、貯水層を設けることで、長期間にわたって水の補給がされなかった場合でも、客土層が乾燥することが防止されるため、植栽基盤への給水に雨水を使用すれば、給水を殆ど行う必要がなくなる。従って、水資源を有効に利用できる。また、植栽基盤により、植栽基盤を設置した屋上、ベランダ、バルコニー等の床面が冷却されるため、日射が強い季節でも屋内や軒下の気温を低く保持することができる。
【0074】
本発明に係る植栽基盤の施工方法によれば、屋上又はベランダ若しくはバルコニーに、上述したような効果を奏する植栽基盤を敷設することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る植栽基盤の要部断面図である。
【図2】植栽基盤を施工する前のベランダを表す図である。
【図3】植栽基盤の外枠を設置した状態の一例を表す図である。
【図4】貯水層を敷設した状態の一例を表す図である。
【図5】客土層を敷設した状態の一例を表す図である。
【図6】植栽基盤が完成した状態を表す図である。
【図7】夏期における植栽基盤1を屋上に設置した場合と設置しない場合における屋上及び天井裏の温度の時間変化を表すグラフである。
【図8】冬期における植栽基盤1を屋上に設置した場合と設置しない場合における屋上及び天井裏の温度の時間変化を表すグラフである。
【符号の説明】
1 植栽基盤
2 ベランダ
2a 床面
2b 排水溝
3 外枠
3a 排水孔
4 遮水層
4a 端部
5 貯水層
5a 溝
6 客土層
7 芝マット
Claims (3)
- 不透水性の遮水層と、
前記遮水層の上面に敷設されており、互いに連通する多数の連続空隙を内部に有するスチレン系樹脂発泡体により構成された貯水層と、
前記貯水層の上面に敷設されており、鉋屑が混合された客土からなる客土層と、
を有することを特徴とする植栽基盤。 - 前記客土層は、団粒化剤を添加して混練された客土に鉋屑を混合した団粒化土からなることを特徴とする請求項1記載の植栽基盤。
- 屋上又はベランダ若しくはバルコニーの床面上に不透水性の遮水層を敷設する工程と、
前記遮水層の上面に、互いに連通する多数の連続空隙を内部に有するスチレン系樹脂発泡体により構成された貯水層を敷設する工程と、
前記貯水層の上面に、団粒化剤を添加して混練された客土に鉋屑を混合した団粒化土を敷きつめて客土層を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする植栽基盤の施工方法。
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---|---|---|---|
JP2003017706A JP2004222672A (ja) | 2003-01-27 | 2003-01-27 | 植栽基盤及びその施工方法 |
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JP2003017706A JP2004222672A (ja) | 2003-01-27 | 2003-01-27 | 植栽基盤及びその施工方法 |
Publications (1)
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ID=32904795
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JP2003017706A Pending JP2004222672A (ja) | 2003-01-27 | 2003-01-27 | 植栽基盤及びその施工方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2007135452A (ja) * | 2005-11-17 | 2007-06-07 | Smc Concrete Kk | 埋設型植栽装置 |
JP2009000069A (ja) * | 2007-06-22 | 2009-01-08 | Shozo Furusawa | 芝の成長を抑制する植生工法及びその組成混合物 |
CN111990005A (zh) * | 2020-08-05 | 2020-11-27 | 贺勇衡 | 一种土质丘陵山地垦造水田的方法 |
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2003
- 2003-01-27 JP JP2003017706A patent/JP2004222672A/ja active Pending
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