JP2004221691A - スピーカーおよびスピーカーの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ドーム振動板を備えた小口径のスピーカーおよびマイクロスピーカーについて、小型化にあたってスピーカの全高を低く抑え、同時に、周波数特性および耐入力特性に優れ、大入力時に異音が発生する等のスピーカー不良が生じないスピーカーを提供する。
【解決手段】本発明のスピーカーは、ドーム振動板と、ボイスコイルボビンと、ダンパーと、磁気回路とを備え、ドーム振動板が、ドーム部の外周端からボイスコイルボビンの円筒内面に沿って延設された第1固定部と、第1固定部の外周端から略直角に延設された第2固定部を有し、ダンパーが、ボイスコイルボビンが規定する空間の内部に配され、ダンパーの内周端が、磁気回路に固定され、ダンパーの外周端が、ドーム部の外周端およびボイスコイルボビンの円筒内面に接合される。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明のスピーカーは、ドーム振動板と、ボイスコイルボビンと、ダンパーと、磁気回路とを備え、ドーム振動板が、ドーム部の外周端からボイスコイルボビンの円筒内面に沿って延設された第1固定部と、第1固定部の外周端から略直角に延設された第2固定部を有し、ダンパーが、ボイスコイルボビンが規定する空間の内部に配され、ダンパーの内周端が、磁気回路に固定され、ダンパーの外周端が、ドーム部の外周端およびボイスコイルボビンの円筒内面に接合される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、音響再生のためのスピーカー、特に小口径のスピーカーおよびマイクロスピーカー、およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
音響再生のためのスピーカーにおいて、特に、小口径のスピーカーおよびマイクロスピーカーにおいては、耐入力特性の問題から、その口径に対してボイスコイル径が比較的大きく設定される。その結果、これらのスピーカーでは、ボイスコイルボビンの円筒上端にドーム振動板を設け、ボイスコイルボビンをダンパーおよびエッジにより振動可能に支持する構造が多く採用される。しかしながら、小型化にあたってスピーカの全高を低く抑え、同時に周波数特性および耐入力特性等を確保することは、設計上の制約から非常に困難である。
【0003】
図2は、従来のドーム振動板を有する小型スピーカーについて説明する部分断面図である。小型スピーカーの全高H2は、ドーム振動板1の頂点と磁気回路4の底面により規定される。ドーム振動板1は、ボイスコイルボビン2aの円筒上端に接合される。ボイスコイルボビン2aは、その円筒外面にボイスコイル2bが巻線される。ボイスコイルボビン2aは、ボイスコイル2bが磁気回路4の空隙に適切に位置し、かつ、良好に振動可能なように、ダンパー3およびエッジ5により支持される。ボイスコイル2bに電気的に接続される錦糸線6は、振動した場合であってもダンパー3およびエッジ5と接触して異音を生じることの無いように、ダンパー3およびエッジ5により規定される空間に必要な高さ寸法を取って配線される。従って、小型スピーカーの全高H2は、高さ方向の必要寸法の積み上げによって、高くなるという問題がある。
【0004】
図3は、別形態の従来のドーム振動板を有する小型スピーカーについて説明する部分断面図である。図3の形態の小型スピーカーは、上記の図2の形態の小型スピーカーに対して、ボイスコイルボビン2aの円筒外側に位置したダンパー3を取り除いているので、その全高H3を図2の形態の小型スピーカーの全高H2よりも低くすることができる。しかしながら、このようにダンパー3を取り除いた場合には、耐入力特性および信頼性に問題が生じ、大入力時に異音が発生する等のスピーカー不良となる場合がある。
【0005】
また、従来には、一般にボイスコイルボビンの円筒外側に位置するダンパーに加えて、ボイスコイルボビンの円筒内側に内側ダンパーを設けたスピーカーがある(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
実開昭48−90633号公報 (第2頁、第2図)
【0007】
しかし、上記の内側ダンパーを設けたスピーカーにおいては、内側ダンパーの採用はスピーカーの小型化に貢献せず、スピーカーの全高を低く抑えることはできていない。
【0008】
また、内側ダンパーを設けた従来のスピーカーの製造方法においては、内側ダンパーの外周端をボイスコイルボビンの円筒内側に接着する接着工程と、その後にドーム振動板をボイスコイルボビンの円筒上端に接着する別の接着工程を要していた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の従来の技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、ドーム振動板を備えた小口径のスピーカーおよびマイクロスピーカーについて、小型化にあたってスピーカの全高を低く抑え、同時に、周波数特性および耐入力特性に優れ、大入力時に異音が発生する等の不良が生じないスピーカーを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0011】
本発明のスピーカーは、ドーム振動板と、ボイスコイルボビンおよびボイスコイルと、ダンパーと、磁気回路とを備え、ドーム振動板が、ドーム部の外周端からボイスコイルボビンの円筒内面に沿って延設された第1固定部と、第1固定部の外周端から略直角に延設された第2固定部を有し、ダンパーが、ボイスコイルボビンが規定する空間の内部に配され、ダンパーの内周端が、磁気回路に固定され、ダンパーの外周端が、ドーム部の外周端およびボイスコイルボビンの円筒内面に接合される。
【0012】
好ましい実施形態においては、本発明のスピーカーは、上記のスピーカーであって、ドーム振動板の第1固定部の高さが、ドーム部の高さの0.5〜1.0倍である。
【0013】
さらに、本発明のスピーカーの製造方法においては、ドーム部の外周端と、ドーム部の外周端からボイスコイルボビンの円筒内面に沿って延設された第1固定部と、第1固定部の外周端から略直角に延設された第2固定部と、ボイスコイルボビンと、ダンパーの外周端部との接合を、同一の接着工程により行う。
【0014】
以下、本発明の作用について説明する。
【0015】
本発明のスピーカーは、ドーム振動板と、ボイスコイルボビンとを備え、ドーム振動板が、ドーム部の外周端からボイスコイルボビンの円筒内面に沿って延設された第1固定部と、第1固定部の外周端から略直角に延設された第2固定部を有する。つまり、ドーム振動板の第1固定部は、ボイスコイルボビンの円筒内面に沿った形状であり、ドーム振動板の第2固定部は、ボイスコイルボビンの円筒上端に接合可能な形状である。さらに、本発明のスピーカーは、ボイスコイルボビンが規定する空間の内部に配されるダンパーと、磁気回路とを備え、ダンパーの内周端が、磁気回路に固定され、ダンパーの外周端が、ドーム部の外周端およびボイスコイルボビンの円筒内面に接合される。つまり、本発明のスピーカーは、一般にボイスコイルボビンの円筒外側に位置するダンパーに代えて、ボイスコイルボビンが規定する空間の内部にダンパーを配している。
【0016】
従って、本発明のスピーカーは、ドーム振動板の第2固定部をボイスコイルボビンの円筒上端に接合すれば、スピーカーの全高におけるドーム部の突出を第1固定部の高さだけ低く抑えることができ、そのうえ、ダンパーがボイスコイルボビンの内側に配されるので、円筒外側に位置するダンパーを設ける場合に比べて、スピーカーの全高を低く抑えることができる。さらに、ダンパーを取り除いた場合に比べても、耐入力特性および信頼性に問題を生じることがない。
【0017】
好ましくは、本発明のスピーカーのドーム振動板の第1固定部の高さが、ドーム部の高さの0.5〜1.0倍である場合には、スピーカーの全高におけるドーム部の突出の寸法が小さくなるので、スピーカーの全高を低く抑えることができる。さらに、ボイスコイルボビンの円筒内面に接合された第1固定部は、ドーム部を外周端において補強するリブとして作用するので、ボイスコイルボビン内面に接着固定されることにより、振動系全体の強度を向上させることができる。その結果、特に高域限界周波数の改善を図ることができ、周波数特性に優れたスピーカーを得ることができる。
【0018】
また、本発明のスピーカーの製造方法は、ドーム部の外周端と、ドーム部の外周端からボイスコイルボビンの円筒内面に沿って延設された第1固定部と、第1固定部の外周端から略直角に延設された第2固定部と、ボイスコイルボビンと、ダンパーの外周端部との接合を、同一の接着工程により行う。つまり、ダンパーの外周端部と、ドーム部の外周端と、ボイスコイルボビンの円筒内面とが、断面図における一カ所で接着固定され、その接合位置は、ドーム振動板のドーム部の外周端および第1固定部および第2固定部によって規定される。本発明のスピーカーの製造方法においては、ドーム振動板の第2固定部をボイスコイルボビンの円筒上端に接合することにより、ドーム部の外周端および第1固定部の位置は定まるので、同一の接着工程によりボイスコイルボビンにドーム振動板を接着することにより、同時にダンパーの外周端部をも接合することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態によるスピーカーについて説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0020】
図1は、本発明のスピーカーの好ましい実施形態について説明する部分断面図である。図1のスピーカーは、ドーム振動板を備える小型スピーカーである。スピーカーの口径は任意であるが、代表的には3cmである。図1のスピーカーは、ドーム振動板1と、ボイスコイルボビン2aおよびボイスコイル2bと、ボイスコイルボビン2aが規定する空間の内部に配されるダンパー3と、磁気回路4と、ボイスコイルボビン2aの円筒外面に接合するエッジ5と、ボイスコイル2bに電気的に接続される錦糸線6と、エッジ5の外周端部を固定するフレーム7と、錦糸線6と電気的に接続される端子8を備えている。
【0021】
ドーム振動板を備えた小口径のスピーカーおよびマイクロスピーカーでは、小型化にあたってスピーカの全高を低く抑えることが必要とされ、本発明のスピーカーの全高H1は、ドーム部1aの頂点と磁気回路4の底面により規定される。
【0022】
本発明のドーム振動板1は、ドーム部1aと、ドーム部1aの外周端からボイスコイルボビン2aの円筒内面に沿って延設された第1固定部1bと、第1固定部1bの外周端から略直角に延設された第2固定部1cを有する。ドーム振動板1の第1固定部1bは、ボイスコイルボビン2aの円筒内面に沿った形状であり、ドーム振動板1の第2固定部1cは、ボイスコイルボビン2aの円筒上端に係止可能な形状である。従って、本発明のスピーカーは、その全高H1を、ドーム部1aの突出を第1固定部1bの高さだけ低く抑えることができる。
【0023】
ドーム振動板1において、第1固定部1bの高さHbが高ければ、ドーム部1aの突出の寸法が小さくなるので、スピーカーの全高H1を低く抑えることができる。第1固定部1bの高さHbは、ドーム部1aの音響放射特性に悪影響を与えない程度にまでは、高くしても良い。好ましくは、第1固定部1bの高さHbがドーム部1aの高さHaの0.5〜1.0倍である場合には、ドーム部1aの高さ方向の突出が少なくなるので、スピーカーの全高H1を低くするのに効果的である。
【0024】
さらに、ボイスコイルボビン2aの円筒内面に接合された第1固定部1bは、ドーム部1aを外周端において補強するリブとして作用する。従って、第1固定部1bがボイスコイルボビン2aの内面に接着固定されることにより、ドーム振動板1およびボイスコイルボビン2aを含む振動系全体の強度を向上させることができる。特に、ドーム振動板1の強度を向上させることができるので、周波数特性における高域限界周波数の改善を図ることができる。
【0025】
ドーム振動板1は、代表的には、樹脂又は金属材料のシート又は板をプレス加工することにより得られる。ドーム振動板1の材料は上記に限られず、音響再生に適した材料特性を有する紙材料でもよく、またはソフトドーム振動板等に用いられる樹脂をコーティング等された不織布または織布でもよい。また、ドーム振動板1の加工方法も、プレス加工に限られず、樹脂材料の場合には、射出成形によってもよい。
【0026】
さらに、本発明のスピーカーにおいては、ダンパー3は、エッジ5とともに、ボイスコイル2bを磁気回路4の空隙に適切に位置し、かつ、振動系が良好に振動可能なようにボイスコイルボビン2aを支持する。そのために、ダンパー3は、その内周端が磁気回路4に固定され、その外周端がドーム部1aの外周端およびボイスコイルボビン2aの円筒内面に接合されている。
【0027】
つまり、本発明のスピーカーは、一般にボイスコイルボビン2aの円筒外側に位置するダンパーに代えて、ボイスコイルボビン2aが規定する空間の内部にダンパー3を配している。従って、ボイスコイルボビン2の円筒外側に接合されるエッジ5と、錦糸線6の高さ方向での接合位置を、ダンパーを除去した分だけ、それぞれに低い位置に設定することができ、その結果、ボイスコイルボビン2の長さを短くすることができる。ボイスコイルボビン2の長さが短くなることにより、ボイスコイルボビン2の円筒上端により位置が定まるドーム振動板1のドーム部1aの頂点が低くなるので、スピーカーの全高H1を低く抑えることができる。しかも、スピーカーの全高を低く抑えるためにダンパーを省略した場合に比べ、ダンパー3をボイスコイルボビン2aが規定する空間の内部に設けているので、耐入力特性および信頼性に問題を生じることがない。
【0028】
ダンパー3は、フェノール等の熱効果性樹脂を含浸した織布等をプレス成形するなどして得られる。ダンパー3の材料は上記に限られず、他の樹脂材料などにより、形成してもよい。
【0029】
次に、図1を参照して、本発明の好ましい実施態様によるスピーカーの製造方法について説明する。
【0030】
本発明のスピーカーの製造方法においては、ドーム部1aの外周端と、ドーム部1aの外周端からボイスコイルボビン2aの円筒内面に沿って延設された第1固定部1bと、第1固定部1bの外周端から略直角に延設された第2固定部1cと、ボイスコイルボビン2bと、ダンパー3の外周端部との接合を、同一の接着工程により行う。つまり、ドーム振動板1の第2固定部1cをボイスコイルボビン2aの円筒上端に接合し、同時に、ドーム部1aの外周端および第1固定部1bおよびボイスコイルボビン2aの円筒内面を同一の接着工程で接着する。
【0031】
その結果、ダンパー3の外周端部と、ドーム部1aの外周端と、ボイスコイルボビン2aの円筒内面とが、一カ所(図1のポイントA)で接合される。その接合位置は、ドーム振動板1のドーム部1aの外周端および第1固定部1bおよび第2固定部1cによって規定される。ドーム振動板1の第2固定部1cをボイスコイルボビン2aの円筒上端に接合することにより、ドーム部1aの外周端および第1固定部1bの位置は定まるので、同一の接着工程によりボイスコイルボビン2aにドーム振動板1を接着することにより、同時にダンパー3の外周端部をも接合することができる。
【0032】
本発明のスピーカーの製造方法は、ダンパーをボイスコイルボビンの円筒内側に設けた従来のスピーカーの製造方法に比べ、接着剤を塗布する接着工程を削減できる。つまり、従来のダンパーの外周端とボイスコイルボビンの円筒内側を接着する接着工程と、その後にドーム振動板とボイスコイルボビンの円筒上端を接着する別の接着工程を、同一の接着工程に簡略化できるので、製造コストの削減が可能である。
【0033】
【発明の効果】
本発明のスピーカーは、特に、ドーム振動板を備えた小口径のスピーカーおよびマイクロスピーカーについて、小型化にあたってスピーカの全高を低く抑えることができ、同時に、周波数特性および耐入力特性に優れ、大入力時に異音が発生する等のスピーカー不良が生じない。
【0034】
さらに、ドーム振動板の第1固定部がボイスコイルボビンの内面に接着固定されることにより、ドーム振動板およびボイスコイルボビンを含む振動系全体の強度を向上させることができる。その結果、ドーム振動板の強度を向上させることができるので、音響再生における高域限界周波数の改善をも図ることができる。
【0035】
さらに、本発明のスピーカーの製造方法は、接着工程を簡略化できるので、製造コストの削減が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスピーカーの好ましい実施形態について説明する部分断面図である。
【図2】従来のドーム振動板を有する小型スピーカーについて説明する部分断面図である。
【図3】従来のドーム振動板を有する小型スピーカーについて説明する部分断面図である。
【符号の説明】
1 ドーム振動板
1a ドーム部
1b 第1固定部
1c 第2固定部
2a ボイスコイルボビン
2b ボイスコイル
3 ダンパー
4 磁気回路
5 エッジ
6 錦糸線
7 フレーム
8 端子
【発明の属する技術分野】
本発明は、音響再生のためのスピーカー、特に小口径のスピーカーおよびマイクロスピーカー、およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
音響再生のためのスピーカーにおいて、特に、小口径のスピーカーおよびマイクロスピーカーにおいては、耐入力特性の問題から、その口径に対してボイスコイル径が比較的大きく設定される。その結果、これらのスピーカーでは、ボイスコイルボビンの円筒上端にドーム振動板を設け、ボイスコイルボビンをダンパーおよびエッジにより振動可能に支持する構造が多く採用される。しかしながら、小型化にあたってスピーカの全高を低く抑え、同時に周波数特性および耐入力特性等を確保することは、設計上の制約から非常に困難である。
【0003】
図2は、従来のドーム振動板を有する小型スピーカーについて説明する部分断面図である。小型スピーカーの全高H2は、ドーム振動板1の頂点と磁気回路4の底面により規定される。ドーム振動板1は、ボイスコイルボビン2aの円筒上端に接合される。ボイスコイルボビン2aは、その円筒外面にボイスコイル2bが巻線される。ボイスコイルボビン2aは、ボイスコイル2bが磁気回路4の空隙に適切に位置し、かつ、良好に振動可能なように、ダンパー3およびエッジ5により支持される。ボイスコイル2bに電気的に接続される錦糸線6は、振動した場合であってもダンパー3およびエッジ5と接触して異音を生じることの無いように、ダンパー3およびエッジ5により規定される空間に必要な高さ寸法を取って配線される。従って、小型スピーカーの全高H2は、高さ方向の必要寸法の積み上げによって、高くなるという問題がある。
【0004】
図3は、別形態の従来のドーム振動板を有する小型スピーカーについて説明する部分断面図である。図3の形態の小型スピーカーは、上記の図2の形態の小型スピーカーに対して、ボイスコイルボビン2aの円筒外側に位置したダンパー3を取り除いているので、その全高H3を図2の形態の小型スピーカーの全高H2よりも低くすることができる。しかしながら、このようにダンパー3を取り除いた場合には、耐入力特性および信頼性に問題が生じ、大入力時に異音が発生する等のスピーカー不良となる場合がある。
【0005】
また、従来には、一般にボイスコイルボビンの円筒外側に位置するダンパーに加えて、ボイスコイルボビンの円筒内側に内側ダンパーを設けたスピーカーがある(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
実開昭48−90633号公報 (第2頁、第2図)
【0007】
しかし、上記の内側ダンパーを設けたスピーカーにおいては、内側ダンパーの採用はスピーカーの小型化に貢献せず、スピーカーの全高を低く抑えることはできていない。
【0008】
また、内側ダンパーを設けた従来のスピーカーの製造方法においては、内側ダンパーの外周端をボイスコイルボビンの円筒内側に接着する接着工程と、その後にドーム振動板をボイスコイルボビンの円筒上端に接着する別の接着工程を要していた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の従来の技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、ドーム振動板を備えた小口径のスピーカーおよびマイクロスピーカーについて、小型化にあたってスピーカの全高を低く抑え、同時に、周波数特性および耐入力特性に優れ、大入力時に異音が発生する等の不良が生じないスピーカーを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0011】
本発明のスピーカーは、ドーム振動板と、ボイスコイルボビンおよびボイスコイルと、ダンパーと、磁気回路とを備え、ドーム振動板が、ドーム部の外周端からボイスコイルボビンの円筒内面に沿って延設された第1固定部と、第1固定部の外周端から略直角に延設された第2固定部を有し、ダンパーが、ボイスコイルボビンが規定する空間の内部に配され、ダンパーの内周端が、磁気回路に固定され、ダンパーの外周端が、ドーム部の外周端およびボイスコイルボビンの円筒内面に接合される。
【0012】
好ましい実施形態においては、本発明のスピーカーは、上記のスピーカーであって、ドーム振動板の第1固定部の高さが、ドーム部の高さの0.5〜1.0倍である。
【0013】
さらに、本発明のスピーカーの製造方法においては、ドーム部の外周端と、ドーム部の外周端からボイスコイルボビンの円筒内面に沿って延設された第1固定部と、第1固定部の外周端から略直角に延設された第2固定部と、ボイスコイルボビンと、ダンパーの外周端部との接合を、同一の接着工程により行う。
【0014】
以下、本発明の作用について説明する。
【0015】
本発明のスピーカーは、ドーム振動板と、ボイスコイルボビンとを備え、ドーム振動板が、ドーム部の外周端からボイスコイルボビンの円筒内面に沿って延設された第1固定部と、第1固定部の外周端から略直角に延設された第2固定部を有する。つまり、ドーム振動板の第1固定部は、ボイスコイルボビンの円筒内面に沿った形状であり、ドーム振動板の第2固定部は、ボイスコイルボビンの円筒上端に接合可能な形状である。さらに、本発明のスピーカーは、ボイスコイルボビンが規定する空間の内部に配されるダンパーと、磁気回路とを備え、ダンパーの内周端が、磁気回路に固定され、ダンパーの外周端が、ドーム部の外周端およびボイスコイルボビンの円筒内面に接合される。つまり、本発明のスピーカーは、一般にボイスコイルボビンの円筒外側に位置するダンパーに代えて、ボイスコイルボビンが規定する空間の内部にダンパーを配している。
【0016】
従って、本発明のスピーカーは、ドーム振動板の第2固定部をボイスコイルボビンの円筒上端に接合すれば、スピーカーの全高におけるドーム部の突出を第1固定部の高さだけ低く抑えることができ、そのうえ、ダンパーがボイスコイルボビンの内側に配されるので、円筒外側に位置するダンパーを設ける場合に比べて、スピーカーの全高を低く抑えることができる。さらに、ダンパーを取り除いた場合に比べても、耐入力特性および信頼性に問題を生じることがない。
【0017】
好ましくは、本発明のスピーカーのドーム振動板の第1固定部の高さが、ドーム部の高さの0.5〜1.0倍である場合には、スピーカーの全高におけるドーム部の突出の寸法が小さくなるので、スピーカーの全高を低く抑えることができる。さらに、ボイスコイルボビンの円筒内面に接合された第1固定部は、ドーム部を外周端において補強するリブとして作用するので、ボイスコイルボビン内面に接着固定されることにより、振動系全体の強度を向上させることができる。その結果、特に高域限界周波数の改善を図ることができ、周波数特性に優れたスピーカーを得ることができる。
【0018】
また、本発明のスピーカーの製造方法は、ドーム部の外周端と、ドーム部の外周端からボイスコイルボビンの円筒内面に沿って延設された第1固定部と、第1固定部の外周端から略直角に延設された第2固定部と、ボイスコイルボビンと、ダンパーの外周端部との接合を、同一の接着工程により行う。つまり、ダンパーの外周端部と、ドーム部の外周端と、ボイスコイルボビンの円筒内面とが、断面図における一カ所で接着固定され、その接合位置は、ドーム振動板のドーム部の外周端および第1固定部および第2固定部によって規定される。本発明のスピーカーの製造方法においては、ドーム振動板の第2固定部をボイスコイルボビンの円筒上端に接合することにより、ドーム部の外周端および第1固定部の位置は定まるので、同一の接着工程によりボイスコイルボビンにドーム振動板を接着することにより、同時にダンパーの外周端部をも接合することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態によるスピーカーについて説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0020】
図1は、本発明のスピーカーの好ましい実施形態について説明する部分断面図である。図1のスピーカーは、ドーム振動板を備える小型スピーカーである。スピーカーの口径は任意であるが、代表的には3cmである。図1のスピーカーは、ドーム振動板1と、ボイスコイルボビン2aおよびボイスコイル2bと、ボイスコイルボビン2aが規定する空間の内部に配されるダンパー3と、磁気回路4と、ボイスコイルボビン2aの円筒外面に接合するエッジ5と、ボイスコイル2bに電気的に接続される錦糸線6と、エッジ5の外周端部を固定するフレーム7と、錦糸線6と電気的に接続される端子8を備えている。
【0021】
ドーム振動板を備えた小口径のスピーカーおよびマイクロスピーカーでは、小型化にあたってスピーカの全高を低く抑えることが必要とされ、本発明のスピーカーの全高H1は、ドーム部1aの頂点と磁気回路4の底面により規定される。
【0022】
本発明のドーム振動板1は、ドーム部1aと、ドーム部1aの外周端からボイスコイルボビン2aの円筒内面に沿って延設された第1固定部1bと、第1固定部1bの外周端から略直角に延設された第2固定部1cを有する。ドーム振動板1の第1固定部1bは、ボイスコイルボビン2aの円筒内面に沿った形状であり、ドーム振動板1の第2固定部1cは、ボイスコイルボビン2aの円筒上端に係止可能な形状である。従って、本発明のスピーカーは、その全高H1を、ドーム部1aの突出を第1固定部1bの高さだけ低く抑えることができる。
【0023】
ドーム振動板1において、第1固定部1bの高さHbが高ければ、ドーム部1aの突出の寸法が小さくなるので、スピーカーの全高H1を低く抑えることができる。第1固定部1bの高さHbは、ドーム部1aの音響放射特性に悪影響を与えない程度にまでは、高くしても良い。好ましくは、第1固定部1bの高さHbがドーム部1aの高さHaの0.5〜1.0倍である場合には、ドーム部1aの高さ方向の突出が少なくなるので、スピーカーの全高H1を低くするのに効果的である。
【0024】
さらに、ボイスコイルボビン2aの円筒内面に接合された第1固定部1bは、ドーム部1aを外周端において補強するリブとして作用する。従って、第1固定部1bがボイスコイルボビン2aの内面に接着固定されることにより、ドーム振動板1およびボイスコイルボビン2aを含む振動系全体の強度を向上させることができる。特に、ドーム振動板1の強度を向上させることができるので、周波数特性における高域限界周波数の改善を図ることができる。
【0025】
ドーム振動板1は、代表的には、樹脂又は金属材料のシート又は板をプレス加工することにより得られる。ドーム振動板1の材料は上記に限られず、音響再生に適した材料特性を有する紙材料でもよく、またはソフトドーム振動板等に用いられる樹脂をコーティング等された不織布または織布でもよい。また、ドーム振動板1の加工方法も、プレス加工に限られず、樹脂材料の場合には、射出成形によってもよい。
【0026】
さらに、本発明のスピーカーにおいては、ダンパー3は、エッジ5とともに、ボイスコイル2bを磁気回路4の空隙に適切に位置し、かつ、振動系が良好に振動可能なようにボイスコイルボビン2aを支持する。そのために、ダンパー3は、その内周端が磁気回路4に固定され、その外周端がドーム部1aの外周端およびボイスコイルボビン2aの円筒内面に接合されている。
【0027】
つまり、本発明のスピーカーは、一般にボイスコイルボビン2aの円筒外側に位置するダンパーに代えて、ボイスコイルボビン2aが規定する空間の内部にダンパー3を配している。従って、ボイスコイルボビン2の円筒外側に接合されるエッジ5と、錦糸線6の高さ方向での接合位置を、ダンパーを除去した分だけ、それぞれに低い位置に設定することができ、その結果、ボイスコイルボビン2の長さを短くすることができる。ボイスコイルボビン2の長さが短くなることにより、ボイスコイルボビン2の円筒上端により位置が定まるドーム振動板1のドーム部1aの頂点が低くなるので、スピーカーの全高H1を低く抑えることができる。しかも、スピーカーの全高を低く抑えるためにダンパーを省略した場合に比べ、ダンパー3をボイスコイルボビン2aが規定する空間の内部に設けているので、耐入力特性および信頼性に問題を生じることがない。
【0028】
ダンパー3は、フェノール等の熱効果性樹脂を含浸した織布等をプレス成形するなどして得られる。ダンパー3の材料は上記に限られず、他の樹脂材料などにより、形成してもよい。
【0029】
次に、図1を参照して、本発明の好ましい実施態様によるスピーカーの製造方法について説明する。
【0030】
本発明のスピーカーの製造方法においては、ドーム部1aの外周端と、ドーム部1aの外周端からボイスコイルボビン2aの円筒内面に沿って延設された第1固定部1bと、第1固定部1bの外周端から略直角に延設された第2固定部1cと、ボイスコイルボビン2bと、ダンパー3の外周端部との接合を、同一の接着工程により行う。つまり、ドーム振動板1の第2固定部1cをボイスコイルボビン2aの円筒上端に接合し、同時に、ドーム部1aの外周端および第1固定部1bおよびボイスコイルボビン2aの円筒内面を同一の接着工程で接着する。
【0031】
その結果、ダンパー3の外周端部と、ドーム部1aの外周端と、ボイスコイルボビン2aの円筒内面とが、一カ所(図1のポイントA)で接合される。その接合位置は、ドーム振動板1のドーム部1aの外周端および第1固定部1bおよび第2固定部1cによって規定される。ドーム振動板1の第2固定部1cをボイスコイルボビン2aの円筒上端に接合することにより、ドーム部1aの外周端および第1固定部1bの位置は定まるので、同一の接着工程によりボイスコイルボビン2aにドーム振動板1を接着することにより、同時にダンパー3の外周端部をも接合することができる。
【0032】
本発明のスピーカーの製造方法は、ダンパーをボイスコイルボビンの円筒内側に設けた従来のスピーカーの製造方法に比べ、接着剤を塗布する接着工程を削減できる。つまり、従来のダンパーの外周端とボイスコイルボビンの円筒内側を接着する接着工程と、その後にドーム振動板とボイスコイルボビンの円筒上端を接着する別の接着工程を、同一の接着工程に簡略化できるので、製造コストの削減が可能である。
【0033】
【発明の効果】
本発明のスピーカーは、特に、ドーム振動板を備えた小口径のスピーカーおよびマイクロスピーカーについて、小型化にあたってスピーカの全高を低く抑えることができ、同時に、周波数特性および耐入力特性に優れ、大入力時に異音が発生する等のスピーカー不良が生じない。
【0034】
さらに、ドーム振動板の第1固定部がボイスコイルボビンの内面に接着固定されることにより、ドーム振動板およびボイスコイルボビンを含む振動系全体の強度を向上させることができる。その結果、ドーム振動板の強度を向上させることができるので、音響再生における高域限界周波数の改善をも図ることができる。
【0035】
さらに、本発明のスピーカーの製造方法は、接着工程を簡略化できるので、製造コストの削減が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスピーカーの好ましい実施形態について説明する部分断面図である。
【図2】従来のドーム振動板を有する小型スピーカーについて説明する部分断面図である。
【図3】従来のドーム振動板を有する小型スピーカーについて説明する部分断面図である。
【符号の説明】
1 ドーム振動板
1a ドーム部
1b 第1固定部
1c 第2固定部
2a ボイスコイルボビン
2b ボイスコイル
3 ダンパー
4 磁気回路
5 エッジ
6 錦糸線
7 フレーム
8 端子
Claims (3)
- ドーム振動板と、ボイスコイルボビンと、ダンパーと、磁気回路とを備えるスピーカーであって、
該ドーム振動板が、ドーム部の外周端から該ボイスコイルボビンの円筒内面に沿って延設された第1固定部と、該第1固定部の外周端から略直角に延設された第2固定部を有し、
該ダンパーが、該ボイスコイルボビンが規定する空間の内部に配され、該ダンパーの内周端が、該磁気回路に固定され、該ダンパーの外周端が、該ドーム部の外周端および該ボイスコイルボビンの円筒内面に接合されるスピーカー。 - 前記ドーム振動板の前記第1固定部の高さが、前記ドーム部の高さの0.5〜1.0倍である請求項1に記載のスピーカー。
- ドーム部の外周端と、該ドーム部の外周端からボイスコイルボビンの円筒内面に沿って延設された第1固定部と、該第1固定部の外周端から略直角に延設された第2固定部と、ボイスコイルボビンと、ダンパーの外周端部との接合を、同一の接着工程により行うスピーカーの製造方法。
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2003
- 2003-01-09 JP JP2003003721A patent/JP2004221691A/ja active Pending
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