JP2004221318A - 有機薄膜トランジスタ素子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】有機半導体前駆体層への光照射を行う工程を経て有機半導体層が形成された有機薄膜トランジスタ素子。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は有機薄膜トランジスタ素子に関し、詳しくは作製が容易で動作性に優れる有機薄膜トランジスタ素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
情報端末の普及に伴い、コンピュータ用のディスプレイとしてフラットパネルディスプレイに対するニーズが高まっている。またさらに情報化の進展に伴い、従来紙媒体で提供されていた情報が電子化されて提供される機会が増え、薄くて軽い、手軽に持ち運びが可能なモバイル用表示媒体として、電子ペーパーあるいはデジタルペーパーへのニーズも高まりつつある。
【0003】
一般に平板型のディスプレイ装置においては液晶、有機EL、電気泳動などを利用した素子を用いて表示媒体を形成している。またこうした表示媒体では画面輝度の均一性や画面書き換え速度などを確保するために、画像駆動素子として薄膜トランジスタ(TFT)により構成されたアクティブ駆動素子を用いる技術が主流になっている。
【0004】
ここでTFT素子は、通常、ガラス基板上に、主にa−Si(アモルファスシリコン)、p−Si(ポリシリコン)などの半導体薄膜や、ソース、ドレイン、ゲート電極などの金属薄膜を基板上に順次形成していくことで製造される。このTFTを用いるフラットパネルディスプレイの製造には通常、CVD、スパッタリングなどの真空系設備や高温処理工程を要する薄膜形成工程に加え、精度の高いフォトリソグラフ工程が必要とされ、設備コスト、ランニングコストの負荷が非常に大きい。さらに、近年のディスプレイの大画面化のニーズに伴い、それらのコストは非常に膨大なものとなっている。
【0005】
近年、従来のTFT素子のデメリットを補う技術として、有機半導体材料を用いた有機TFT素子の研究開発が盛んに進められている(特許文献1、非特許文献1等参照)。この有機TFT素子は低温プロセスで製造可能であるため、軽く、割れにくい樹脂基板を用いることができ、さらに、樹脂フィルムを支持体として用いたフレキシブルなディスプレイが実現できると言われている(非特許文献2参照)。また、大気圧下で、印刷や塗布などのウェットプロセスで製造できる有機半導体材料を用いることで、生産性に優れ、非常に低コストのディスプレイが実現できる。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−190001号公報
【0007】
【特許文献2】
特開平9−232589号公報
【0008】
【特許文献3】
国際公開公報00/79617
【0009】
【非特許文献1】
Advanced Material誌 2002年 第2号 99頁(レビュー)
【0010】
【非特許文献2】
SID‘02 Digest p57
【0011】
【非特許文献3】
Advanced Materials,1999,vol.11,No.6,p480〜483
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
有機TFT技術における重要な要件に、有機半導体チャネルの高精度パターニングがある。即ち、TFTシートを製造する場合、同一のゲートバスライン上のTFTに、各々ソースバスラインから独立した信号を入力するために、活性層はTFT素子ごとに独立するべく、パターニングが必要である。活性層のパターニングはプロセスの工程数を大幅に増すこととなり、したがってローコスト化の障害となる。
【0013】
上記非特許文献3には有機半導体であるペンタセンの薄膜は蒸着等のドライプロセスでしか形成できないところ、その前駆体が溶媒に可溶であることを利用して、塗布により形成した該前駆体の膜を熱処理することにより、前駆体を分解しペンタセンの薄膜を形成する技術が提案されている。しかしながら、前駆体の熱処理温度が高いうえに熱処理に時間がかかるため、雰囲気中の酸素などの影響でOFF電流が増し、トランジスタ素子としてのスイッチング特性(ON/OFF比)が低下する問題や生産性が低下する問題がある。
【0014】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、非常に簡便で実質的な有機半導体チャネルのパターニングが可能で、性能が安定な有機TFT素子の製造方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、
1) 有機半導体前駆体層への光照射を行う工程を経て有機半導体層が形成された有機薄膜トランジスタ素子、
2) 前記有機半導体がアセン系化合物である有機薄膜トランジスタ素子、
3) 前記有機半導体がペンタセンである2)の有機薄膜トランジスタ素子、
4) ペンタセン前駆体がアゾ結合を有する3)の有機薄膜トランジスタ素子、
によって達成される。
【0016】
即ち本発明者は、有機半導体チャネルの形成をその前駆体を用いて行うにあたり、チャネル形成部分への光照射で有機半導体に変化する前駆体を用いれば、精度のよいパターニングが可能と考え、本発明に至った。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、実施形態により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0018】
本発明は、有機半導体そのものは溶媒に不溶な場合、該有機半導体の溶媒に可溶な前駆体を含む層をウェットプロセスで形成し、該層に光照射して有機半導体層に変化させることを特徴とする。従って有機半導体材料としては、有機半導体そのものは溶媒に不溶であるが、光照射でその構造に変化し得る、溶媒に可溶な前駆体を有するものならば特に制限なく用い得る。半導体性能からはアセン系化合物が好ましく、特に好ましくはペンタセンであり、更にはその前駆体がアゾ結合を有するものである。
【0019】
ペンタセンの前駆体として好ましい化合物を以下に挙げる。
【0020】
【化1】
【0021】
(化合物Cの合成)
【0022】
【化2】
【0023】
ペンタセン1gをトルエン300mlに加えた懸濁液にジエチルアゾジカルボキシレート0.62g(1等量)を加え、24時間加熱還流した。反応混合物を濃縮し、得られた不溶物を濾取して、その後トルエンで洗浄し化合物Aを得た。
【0024】
化合物A1gをエーテル100mlに加え、更に2M水酸化ナトリウム水溶液を300ml加え、窒素雰囲気下、25℃で20時間攪拌した。反応混合物より減圧下にてエーテルを除去した後、水で希釈し、更に塩酸を加え酸性にした後不溶物を濾過する。濾液に水酸化ナトリウム水溶液を加え、得られた沈殿物を濾取し、水で洗浄後、化合物Bを得た(収率78%)。
【0025】
化合物B0.5gをトルエン20mlに加え、更に10%の水酸化ナトリウム水溶液15mlを除々に加える。室温で10時間攪拌した後、不溶物を濾過する。濾液にベンゼンを加え有機層を分離し、これを濃縮して固体を析出させ濾取した。得られた固体をトルエンで洗浄し化合物Cを得た。
【0026】
有機薄膜トランジスタは、支持体上に有機半導体チャネルで連結されたソース電極とドレイン電極を有し、その上にゲート絶縁層を介してゲート電極を有するトップゲート型と、支持体上にまずゲート電極を有し、ゲート絶縁層を介して有機半導体チャネルで連結されたソース電極とドレイン電極を有するボトムゲート型に大別される。
【0027】
本発明おいて、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を形成する材料は導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン,タングステン,酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペーストおよびカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられるが、特に、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、ITOおよび炭素が好ましい。あるいはドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマー、例えば導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体なども好適に用いられる。中でも半導体層との接触面において電気抵抗が少ないものが好ましい。
【0028】
電極の形成方法としては、上記を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅などの金属箔上に熱転写、インクジェット等によるレジストを用いてエッチングする方法がある。また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液,導電性微粒子分散液を直接インクジェットによりパターニングしてもよいし、塗工膜からリソグラフやレーザアブレーションなどにより形成してもよい。さらに導電性ポリマーや導電性微粒子を含むインク、導電性ペーストなどを凸版、凹版、平版、スクリーン印刷などの印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
【0029】
ゲート絶縁層としては種々の絶縁膜を用いることができるが、特に、比誘電率の高い無機酸化物皮膜が好ましい。無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム,ジルコニウム酸チタン酸バリウム,ジルコニウム酸チタン酸鉛,チタン酸鉛ランタン,チタン酸ストロンチウム,チタン酸バリウム,フッ化バリウムマグネシウム,チタン酸ビスマス,チタン酸ストロンチウムビスマス,タンタル酸ストロンチウムビスマス,タンタル酸ニオブ酸ビスマス,トリオキサイドイットリウムなどが挙げられる。それらのうち好ましいのは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンである。窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の無機窒化物も好適に用いることができる。
【0030】
上記皮膜の形成方法としては、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法などのドライプロセスや、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、デイップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法などの塗布による方法、印刷やインクジェットなどのパターニングによる方法などのウェットプロセスが挙げられ、材料に応じて使用できる。
【0031】
ウェットプロセスは、無機酸化物の微粒子を、任意の有機溶剤あるいは水に必要に応じて界面活性剤などの分散補助剤を用いて分散した液を塗布、乾燥する方法や、酸化物前駆体、例えばアルコキシド体の溶液を塗布、乾燥する、いわゆるゾルゲル法が用いられる。
【0032】
これらのうち好ましいのは、大気圧プラズマ法である。
大気圧下でのプラズマ製膜処理による絶縁膜の形成方法は、大気圧または大気圧近傍の圧力下で放電し、反応性ガスをプラズマ励起し、基材上に薄膜を形成する処理で、その方法については特開平11−61406、同11−133205、特開2000−121804、同2000−147209、同2000−185362等に記載されている(以下、大気圧プラズマ法とも称する)。これによって高機能性の薄膜を、生産性高く形成することができる。
【0033】
また有機化合物皮膜としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、およびシアノエチルプルラン等を用いることもできる。
【0034】
有機化合物皮膜の形成法としては、前記ウェットプロセスが好ましい。
無機酸化物皮膜と有機酸化物皮膜は積層して併用することができる。またこれら絶縁膜の膜厚としては、一般に50nm〜3μm、好ましくは、100nm〜1μmである。
【0035】
また支持体はガラスやフレキシブルな樹脂製シートで構成され、例えばプラスチックフィルムをシートとして用いることができる。前記プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。このように、プラスチックフィルムを用いることで、ガラス基板を用いる場合に比べて軽量化を図ることができ、可搬性を高めることができるとともに、衝撃に対する耐性を向上できる。
【0036】
また配向膜に隣接させて有機半導体層が形成されることも好ましい。配向膜に隣接させることで、分子整合が促進され、有機半導体チャネルの移動度がより向上して好ましい。
【0037】
配向膜としては、液晶ディスプレイなどに用いられる公知の技術、例えば特開平9−194725、同9−258229に記載される技術を用いることができる。配向膜の材料にはポリイミド、過フルオロポリマー、液晶ポリマー等が用いられ、膜形成後にラビング処理を行うことが好ましい。米国特許第5,468,519号等に記載された電磁場中で配向させる方法を利用してもよい。
【0038】
好ましくは、光配向させた配向膜であり、特開平8−286180、同8−313910、同9−80440等に記載された配向膜である。
【0039】
配向膜の厚みは1nm〜5μm程度、好ましくは5〜100nmである。
光照射に用いる光源としては高照度光が用いられ、特に制限はなく、好ましくはレーザ光が用いられるが、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀ランプなどによるフラッシュ露光を、マスクを介して行っても良い。レーザ光の場合は、ビーム状に絞り、目的に応じた走査露光を行うことが可能であり、さらに、露光面積を微小サイズに絞ることが容易なことから、好適に用いることができる。
【0040】
なお、レーザ光による露光で、高解像度を得るためには、エネルギー印加面積が絞り込める電磁波、特に波長が1nm〜1mmの紫外線、可視光線、赤外線が好ましく、このようなレーザ光源としては、一般によく知られている、ルビーレーザ、YAGレーザ、ガラスレーザ等の固体レーザ;He−Neレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、CO2レーザ、COレーザ、He−Cdレーザ、N2レーザ、エキシマーレーザ等の気体レーザ;InGaPレーザ、AlGaAsレーザ、GaAsPレーザ、InGaAsレーザ、InAsPレーザ、CdSnP2レーザ、GaSbレーザ等の半導体レーザ;化学レーザ、色素レーザ等を挙げることができる。
【0041】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0042】
実施例1
比抵抗0.01Ω・cmのSiウェハーに厚さ2000Åの熱酸化膜を形成した後、よく精製された化合物Aのクロロホルム溶液を、アプリケーターを用いて塗布し乾燥し、キャスト膜(厚さ50nm)を形成した。窒素ガス雰囲気中、60W/cmの高圧水銀灯光を10秒間照射したところ、ペンタセンの薄膜が形成された。
【0043】
この膜の表面に、マスクを用いて金を蒸着し、ソース、ドレイン電極を形成し、チャネル幅W=3mm、チャネル長L=20μmの本発明の有機TFT素子1を作製した。
【0044】
この有機薄膜トランジスタ素子は、pチャネルエンハンスメント型FETの良好な動作特性を示した。飽和領域における移動度、およびゲートバイアス電圧0Vおよび−50Vの時のON/OFF比を測定した。
【0045】
下記比較化合物のクロロホルム溶液を、アプリケーターを用いて塗布し自然乾燥してキャスト膜(厚さ50nm)を形成した。さらに窒素置換雰囲気下で200℃、10分間の熱処理を施し、有機半導体材料のキャスト膜(厚さ50nm)を形成した以外は、有機TFT素子1と同様にして比較有機TFT素子1を作製し、上記と同様に評価した。
【0046】
【化3】
【0047】
結果は次の通りであった。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、動作性に優れる有機TFT素子を容易に作製できる。
Claims (4)
- 有機半導体前駆体層への光照射を行う工程を経て有機半導体層が形成されたことを特徴とする有機薄膜トランジスタ素子。
- 前記有機半導体がアセン系化合物であることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜トランジスタ素子。
- 前記有機半導体がペンタセンであることを特徴とする請求項2に記載の有機薄膜トランジスタ素子。
- ペンタセン前駆体がアゾ結合を有することを特徴とする請求項3に記載の有機薄膜トランジスタ素子。
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