JP2004218139A - 複合仮撚加工糸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルキルチタネート等のチタン化合物と燐酸モノまたはジエステル等のリン化合物との反応生成物を重縮合触媒とするポリエステルを、紡糸ドラフト差1万〜10万で紡糸した2種類の未延伸マルチフィラメント糸を混繊処理して得た、複屈折率差が0.02〜0.05、伸度差が70〜200%である紡糸混繊糸を、仮撚の熱セットヒーターが非接触式である仮撚加工機を用い、仮撚加撚張力を0.177〜0.353cN/dtex、仮撚数を(15000〜30000)/D1/2回/m、仮撚ヒータ温度を200〜400℃として延伸同時仮撚加工する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発色性(濃染性)、ソフト感に優れ、カスリ斑がなく、且つ、滑らかな表面タッチの風合を呈する新規で高品質の複合仮撚加工糸を安定に製造することができる方法に関するものである。さらに詳しくは、フィラメントの長手方向に沿って、芯部糸に鞘部糸が巻き付いた二層構造の複合仮撚加工糸の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、伸度差を有する2種以上のフィラメント糸を引き揃えて交絡し、引き続いて仮撚加工することにより、嵩高でウオーム感に優れた二層構造の複合仮撚加工糸を得る方法が知られている(例えば特公昭60―11130号公報、特公昭61―19733号公報など)。しかしながら、これらの二層構造糸は、スパン感、嵩高性には優れているものの、仮撚による捲縮発現が強く、断面変形による粗硬感が強く、また特有のヌメリ感を呈するものであるため、盛夏用外衣等のレーヨン調風合、サラットした清涼感が要求される用途には十分対応しきれないという問題があった。さらに、上記の従来方法では、通常繊度の異なる糸を別々に紡糸したものを引き揃えて交絡した後に仮撚加工するため、生産性が低いほか、不均一な混繊によりカスリ斑が発生しやすく、また風合も十分に満足できるものではないという欠点もあった。
【0003】
一方、近年、2種以上のフィラメント糸を紡糸工程で混繊交絡処理する技術の適用が試みられてきた。例えば、口金面深度を異ならしめて冷却差を利用する方法(特開昭60−252711号公報)、断面積が連続的に拡大する吐出孔をもつ紡糸口金を用い、高ドラフトを作用させる方法(特開平4−194007号公報)、上記を組み合わせた冷却差と高ドラフトを利用した方法(特開平4−194010号公報)などの方法が提案されている。しかし、これらの紡糸混繊交絡糸に通常の仮撚加工を施しても、嵩高感が不十分で、加工毛羽も発生しやすく、織物にしたときのソフト感が未だ不十分であるという問題があった。
【0004】
このような問題を解消するため、特開2000−136455号公報には、ドラフト差を利用した紡糸混繊糸を特定の条件下で延伸仮撚加工する複合仮撚加工糸の製造方法が提案されている。確かにこの方法によれば、ソフト感に優れ、カスリ斑等の染色斑が発生し難く、且つ滑らかな表面タッチの風合を呈する二層構造の複合仮撚加工糸が得られるものの、通常のポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートを紡糸混繊する際、ポリエステル中に存在するアンチモン系触媒に起因して、紡糸時間の経過と共に紡糸口金吐出孔周辺に異物(口金異物と称することがある)が付着堆積し、安定に紡糸することができなくなるだけでなく、最終的に得られる複合仮撚加工糸の品質も低下するという問題があった。
【0005】
かかるアンチモン化合物に起因する問題は、チタンテトラブトキシドのようなチタン化合物を用いれば減少するものの、ポリエステル自身の黄色味が強くなるため、得られる複合仮撚加工糸は発色性が低下して衣料用途には使用できなくなるという問題がある。
【0006】
【特許文献1】
特公昭60―11130号公報
【0007】
【特許文献2】
特公昭61―19733号公報
【0008】
【特許文献3】
特開昭60−252711号公報
【0009】
【特許文献4】
特開平4−194007号公報
【0010】
【特許文献5】
特開平4−194010号公報
【0011】
【特許文献6】
特開2000−136455号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術を背景になされたもので、その目的は、発色性、嵩高感、ソフト感に優れ、カスリ斑がなく、且つ、滑らかな表面タッチの風合を呈する新規で高品質な複合仮撚加工糸を安定に製造することができる方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らの研究によれば、上記本発明の目的は、下記式(I)で表されるチタン化合物と下記式(II)で表されるリン化合物との反応生成物からなる触媒の存在下に重縮合して得られるポリエステルを、
【0014】
【化4】
【0015】
(R1、R2、R3、R4は、それぞれ同一もしくは異なって、アルキル基またはフェニル基であり、kは1〜4の整数である。なお、kが2〜4の場合には、複数のR1及びR3は、それぞれ同一であっても異なっていてもどちらでもよい。)
【0016】
【化5】
【0017】
(R5は、炭素原子数1〜20個のアルキル基または炭素原子数6〜20個のアリール基であり、nは1または2である。)
単一の紡糸口金または異なる紡糸口金から紡糸ドラフト差1万〜10万で紡糸された2種類の未延伸ポリエステルマルチフィラメント糸を混繊処理して得た、下記(イ)および(ロ)を同時に満足する紡糸混繊糸を、仮撚の熱セットヒーターが非接触式である仮撚加工機を用いて、下記(ハ)〜(ホ)を同時に満足する条件で延伸同時仮撚加工することを特徴とする複合仮撚加工糸の製造方法により達成できることが見いだされた。
(イ)2種類の未延伸ポリエステルマルチフィラメント糸の複屈折率差(Δn):0.02≦Δn≦0.05
(ロ)2種類の未延伸ポリエステルマルチフィラメント糸の伸度差(ΔL):70%≦ΔL≦200%
(ハ)仮撚加撚張力(T1):0.177cN/dtex≦T1≦0.353cN/dtex
(ニ)仮撚数(K):15000/D1/2回/m≦K≦30000)/D1/2回/m(ただし、Dは複合仮撚加工糸の繊度(dtex))
(ホ)仮撚ヒータ温度(HA):200℃≦HA≦400℃
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明で用いられるポリエステルの重縮合用触媒としては、上記式(I)で表されるチタン化合物と上記式(II)で表されるリン化合物との反応生成物を用いる。
【0019】
該チタン化合物としては、具体的には、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトラエトキシドに例示されるチタンテトラアルコキシド、オクタアルキルトリチタネート、ヘキサアルキルジチタネートなどのアルキルチタネートを挙げることができるが、なかでも本発明において使用されるリン化合物との反応性の良好なチタンテトラアルコキシドを用いることが好ましく、特にチタンテトラブトキシドを用いることが好ましい。
【0020】
一方、該リン化合物としては、具体的には、モノメチルホスフェート、モノエチルホスフェート、モノ−n−プロピルホスフェート、モノ−n−ブチルホスフェート、モノヘキシルホスフェート、モノヘプチルホスフェート、モノオクチルホスフェート、モノノニルホスフェート、モノデシルホスフェート、モノドデシルホスフェート、モノラウリルホスフェート、モノオレイルホスフェート、モノテトラコシルホスフェート、モノフェニルホスフェート、モノベンジルホスフェート、モノ(4−メチルフェニル)ホスフェート、モノ(4−エチルフェニル)ホスフェート、モノ(4−プロピルフェニル)ホスフェート、モノ(4−ドデシルフェニル)ホスフェート、モノトリルホスフェート、モノキシリルホスフェート、モノビフェニルホスフェート、モノナフチルホスフェートおよびモノアントリルホスフェートなどのモノアルキルホスフェートまたはモノアリールホスフェート、並びに、ジエチルホスフェート、ジプロピルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジヘキシルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジデシルホスフェート、ジラウリルホスフェート、ジオレイルホスフェート、ジテトラコシルホスフェート、ジフェニルホスフェートなどのジアルキルホスフェートまたはジアリールホスフェートを例示することができる。なかでも、上記式(II)においてnが1であるモノアルキルホスフェートまたはモノアリールホスフェートが好ましい。
【0021】
これらのリン化合物は、混合物として用いてもよく、例えばモノアルキルホスフェートとジアルキルホスフェートの混合物、モノフェニルホスフェートとジノフェニルホスフェートの混合物を、好ましい組み合わせとして挙げることができる。特に混合物中、モノアルキルホスフェートが全混合物量を基準として50%以上、特に90%以上を占めるような組成とするのが好ましい。
【0022】
上記式(I)のチタン化合物と上記式(II)のリン化合物との反応生成物の調整方法は特に限定されず、例えば、グリコール中で加熱することにより製造することができる。すなわち、該チタン化合物と該リン化合物とを含有するグリコール溶液を加熱すると、グリコール溶液が白濁して析出物が発生する。この析出物をポリエステル製造用の触媒として用いればよい。
【0023】
ここで用いることのできるグリコールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等を例示することができるが、得られた触媒を用いて製造するポリエステルを構成するグリコール成分と同じものを使用することが好ましい。例えば、ポリエステルがポリエチレンテレフタレートである場合にはエチレングリコール、ポリトリメチレンテレフタレートである場合には1,3−プロパンジオール、ポリテトラメチレンテレフタレートである場合にはテトラメチレングリコールをそれぞれ用いることが好ましい。
【0024】
なお、前記触媒は式(I)のチタン化合物、式(II)のリン化合物及びグリコールの3者を同時に混合し、加熱する方法によっても製造することができる。しかし、加熱により式(I)のチタン化合物と式(II)のリン化合物とが反応してグリコールに不溶の析出物が反応生成物として析出するので、この析出までの反応は均一な反応であることが好ましい。したがって、効率よく反応析出物を得るためには、式(I)のチタン化合物と式(II)のリン化合物とのそれぞれについて予めグリコール溶液を調整し、その後、これらの溶液を混合し加熱する方法により製造することが好ましい。
【0025】
また、加熱時の温度は、反応温度が余りに低すぎると、反応が不十分となったり反応に過大な時間を要したりするので、均一な反応により効率よく反応析出物を得るには、50℃〜200℃の温度で反応させることが好ましく、反応時間は1分間〜4時間が好ましい。なかでも、グリコールとしてエチレングリコールを用いる場合には50℃〜150℃、ヘキサメチレングリコールを用いる場合には100℃〜200℃の範囲がより好ましい温度であり、また、反応時間は30分間〜2時間がより好ましい範囲である。
【0026】
グリコール中で加熱する式(I)のチタン化合物と式(II)のリン化合物との配合割合は、チタン原子を基準として、リン原子のモル比率(P/Ti)として1.0〜3.0の範囲にあることが好ましく、さらに1.5〜2.5であることが好ましい。該範囲内にある場合には、リン化合物とチタン化合物とがほぼ完全に反応して未完全な反応物が存在しなくなるので、該反応生成物をそのまま使用しても得られるポリエステルの色相改善効果は良好であり、また、過剰な未反応のリン化合物もほとんど存在しないので、ポリエステル重合反応性を阻害することがなく生産性も高いものとなる。
【0027】
上記の触媒においては、前記式(I)(但し、k=1)のチタン化合物と、式(II)のリン化合物成分との反応生成物は、下記(IV)により表される化合物を含有するものが好ましい。
【0028】
【化6】
【0029】
(ただし、式(IV)中のR6およびR7基は、それぞれ独立に、前記チタン化合物のR1、R2、R3、R4および前記リン化合物のR5のいずれか1つ以上に由来する2〜10個の炭素原子を有するアルキル基、または、6〜12個の炭素原子を有するアリール基である。)
式(IV)で表されるチタン化合物とリン化合物との反応生成物は、高い触媒活性を有しているので、これを用いて得られるポリエステルは、良好な色調(低いb値)を有し、実用上十分に低いアセトアルデヒド、残留金属および環状三量体の含有量を有し、かつ実用上十分なポリマー性能を有する。なお、該式(IV)で表される反応生成物は50質量%以上含まれていることが好ましく、70質量%以上含まれることがより好ましい。
【0030】
本発明においては、チタン化合物を予め下記一般式(III)で表される多価カルボン酸および/またはその酸無水物と反応モル比(2:1)〜(2:5)の範囲で反応させた後、リン化合物と反応させた反応生成物を用いることがより好ましい。
【0031】
【化7】
【0032】
(ただし、mは2〜4の整数である。)
かかる多価カルボン酸およびその無水物としては、フタル酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの無水物を好ましく、特にチタン化合物との反応性がよく、また得られる反応生成物とポリエステルとの親和性が高いことから、トリメリット酸無水物が好ましい。
【0033】
該チタン化合物と多価カルボン酸またはその無水物との反応は、前記多価カルボン酸またはその無水物を溶媒に混合してその一部または全部を溶媒中に溶解し、この混合液にチタン化合物を滴下し、0℃〜200℃の温度で少なくとも30分間、好ましくは30〜150℃の温度で40〜90分間行われる。この際の反応圧力には特に制限はなく、常圧で充分である。なお、このときの溶媒としては、多価カルボン酸またはその無水物の一部または全部を溶解し得るものから適宜選択すればよい。なかでも、エタノール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ベンゼン、キシレンなどが好ましく使用される。
【0034】
この反応におけるチタン化合物と式(III)の化合物またはその無水物とのモル比は適宜に選択することができるが、チタン化合物の割合が多すぎると、得られるポリエステルの色調が悪化したり軟化点が低下したりする傾向があり、逆にチタン化合物の量が少なすぎると重縮合反応が進みにくくなる傾向があるため、チタン化合物と多価カルボン酸化合物またはその無水物との反応モル比は、(2:1)〜(2:5)とすることが好ましい。
【0035】
この反応によって得られる反応生成物は、そのまま前述のリン化合物との反応に供してもよく、あるいはこれをアセトン、メチルアルコールおよび/または酢酸エチルなどで再結晶して精製した後にリン化合物と反応させてもよい。
【0036】
本発明において、上記反応生成物の存在下にポリエステルを重縮合するにあたっては、上記のようにして得た析出物を含むグリコール液は、析出物とグリコールとを分離することなくそのままポリエステル製造用触媒として用いてもよく、遠心沈降処理または濾過などの手段により析出物を分離した後、該析出物を再結晶剤、例えばアセトン、メチルアルコールおよび/または水などにより再結晶して精製した後、この精製物を該触媒として用いてもよい。なお、該触媒は、固体NMRおよびXMAの金属定量分析で、その構造を確認することできる。
【0037】
本発明にかかるポリエステルを重縮合するに際しては、上記析出物等の反応生成物からなる触媒を重縮合反応時に反応系内に存在させればよい。このため該触媒の添加は、原料スラリー調製工程、エステル化工程、液相重縮合工程等のいずれの工程で行ってもよい。また、触媒全量を一括添加しても、複数回に分けて添加してもよい。
【0038】
また、重縮合反応では、必要に応じてトリメチルホスフェートなどのリン安定剤をポリエステル製造における任意の段階で加えてもよく、さらに酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、蛍光増白剤、艶消剤、整色剤、消泡剤その他の添加剤などを配合してもよい。
【0039】
さらに、得られるポリエステルの色相の改善補助をするために、ポリエステルの製造段階において、アゾ系、トリフェニルメタン系、キノリン系、アントラキノン系、フタロシアニン系等の有機青色顔料等、無機系以外の整色剤を添加することもできる。
【0040】
次に、前記の触媒を用いて、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、脂肪族グリコールとを重縮合させてポリエステルを製造する方法について説明する。
【0041】
ポリエステルの出発原料となる芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を用いることができる。
【0042】
もう一方の出発原料となる脂肪族グリコール(アルキレングリコール)としては、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンメチレングリコール、ドデカメチレングリコールを用いることができる。
【0043】
また、ジカルボン酸成分として、芳香族ジカルボン酸とともに、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸等またはそのエステル形成性誘導体を原料として使用することができ、ジオール成分としても脂肪族ジオールとともに、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式グリコール、ビスフェノール、ハイドロキノン、2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン類などの芳香族ジオールなどを原料として使用することができる。
【0044】
さらに、トリメシン酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールメタン、ペンタエリスリトールなどの多官能性化合物を原料として使用することができる。
【0045】
上記の芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とアルキレングリコールとを反応させて、先ず芳香族ジカルボン酸のアルキレングリコールエステルおよび/またはその低重合体となすが、その方法は特に限定されず、いかなる方法によってもよい。通常、該芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とアルキレングリコールとを加熱反応させることによって製造される。
【0046】
例えば、ポリエチレンテレフタレートの原料であるテレフタル酸のエチレングリコールエステルおよび/またはその低重合体について説明すると、テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか、またはテレフタル酸にエチレンオキサイドを付加反応させる方法が一般に採用される。
【0047】
次に、本発明におけるチタン化合物とリン化合物との反応生成物からなる重縮合触媒の存在下に、上記で得られたアルキレングリコールエステルまたはその低重合体を、減圧下で、ポリエステルポリマーの融点以上分解点未満の温度(通常240℃〜280℃)に加熱することにより重縮合させる。この重縮合反応では、未反応のアルキレングリコールおよび重縮合で発生するアルキレングリコールを反応系外に留去させながら行うことが望ましい。
【0048】
重縮合反応は、1槽で行ってもよく、複数の槽に分けて行ってもよい。例えば、重縮合反応が2段階で行われる場合には、第1槽目の重縮合反応は、反応温度が245〜290℃、好ましくは260〜280℃、圧力が100〜1kPa、好ましくは50〜2kPaの条件下で行われ、最終第2槽での重縮合反応は、反応温度が265〜300℃、好ましくは270〜290℃、反応圧力は通常10〜1000Paで、好ましくは30〜500Paの条件下で行われる。
【0049】
本発明で用いられるポリエステルは、上記のようにして製造することができるが、得られたポリエステルは、通常、粒状(チップ状)にされる。なお、得られるポリエステルの固有粘度は0.40〜0.80、好ましくは0.50〜0.70であることが望ましい。所望により、固相重縮合によりさらに固有粘度をあげても構わない。
【0050】
該固相重縮合工程に供給される粒状ポリエステルは、予め、固相重縮合を行う場合の温度より低い温度に加熱して予備結晶化を行った後、固相重縮合工程に供給してもよい。
【0051】
なお、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体は、使用する芳香族ジカルボン酸成分を基準として80モル%以上、好ましくは90モル%以上を占めるような量で用いられ、エチレングリコールまたはそのエステル形成性誘導体は脂肪族グリコールを基準として80モル%以上、好ましくは90モル%以上を占める量で用いられることが好ましい。
【0052】
本発明においては、上記のポリエステルを、単一のまたは異なる紡糸口金を用いて、紡糸ドラフト差が1万〜10万の範囲内で紡糸された下記(イ)および(ロ)を同時に満足する2種類の配向差を有する未延伸ポリエステルマルチフィラメント糸を得、これを混繊処理、好ましくは混繊交絡処理して得た紡糸混繊糸を、延伸同時仮撚加工に供する必要が有る。
(イ)2種類の未延伸ポリエステルマルチフィラメント糸の複屈折率差(Δn):0.02≦Δn≦0.05、好ましくは0.025≦Δn≦0.045
(ロ)2種類の未延伸ポリエステルマルチフィラメント糸の伸度差(ΔL):70%≦ΔL≦200%、好ましくは90%≦ΔL≦180%
【0053】
ここで、紡糸ドラフト差が1万未満の場合には、未延伸マルチフィラメント糸間の伸度差(ΔL)が小さくなって得られる仮撚捲縮加工糸はバラケ気味になり、バルキ−不足となって目標とする加工糸の風合が得られない。一方、紡糸ドラフト差が10万を越える場合には、高紡糸ドラフト成分の紡糸性が悪化するだけでなく、仮撚加工時に断糸や毛羽の発生が多くなるので好ましくない。
【0054】
また、上記紡糸ドラフト差を有する2種類の未延伸ポリエステルマルチフィラメント糸は、その伸度差(ΔL)が上記の範囲となるように紡糸ドラフト差をさらに調整設定することが大切で、この伸度差が70%未満では得られる加工糸の嵩高性が不十分となり、一方200%を越える場合には、カスリ斑が発生しやすくなるので好ましくない。
【0055】
また、2種類の未延伸ポリエステルマルチフィラメント糸の複屈折率差(Δn)は上記の範囲内であることが、仮撚加工時の加撚張力を適正化してサージング発生を防止する上で大切で、この複屈折率差が0.02未満ではサージング発生による熱セット斑に起因して染斑が大きくなる。一方、0.05を越える場合には、繊維断面形状の不均一化、断糸、毛羽などが多くなるので好ましくない。
【0056】
なお、これら未延伸ポリエステルマルチフィラメント糸のトータル繊度比は、5:5〜3:7(芯部:鞘部)と鞘部になる部分が多いほうが好ましく、トータル繊度は仮撚加工後の繊度で75〜330dtexの範囲が好ましい。また、夫々の単糸繊度は、仮撚加工後で、芯糸となる高ドラフト側が30〜130dtex、鞘糸になる低ドラフト側が40〜200dtexとなるようにするのが好ましい。
【0057】
このようなドラフト差を有する未延伸糸は、孔径差を適当な値に設定した異なる2種の吐出孔群からポリエステルを溶融吐出し、これを例えば800〜4000m/分、好ましくは1000〜2000m/分、特に好ましくは1000〜1500m/分の速度で引取ることにより容易に得ることができる。
【0058】
上記の未延伸糸の混繊処理は、引取りローラーの前の段階で行っても、引取りローラーを通過した後の段階で行ってもよい。混繊処理方法は特に限定されず、従来公知の方法を適宜選定すればよいが、例えばインターレースノズルを用いて圧空処理して混繊交絡させる方法が好ましい。この際の交絡数は、多すぎると毛羽が多くなる傾向があり、一方少なすぎると混繊不良に起因してカスリ斑になる傾向があるので10〜70個/mの範囲が適当である。
【0059】
本発明においては、上述の要件を満足する紡糸混繊糸を、仮撚の熱セットヒーターが非接触式である仮撚加工機を用い、下記(ハ)〜(ホ)を同時に満足するよう延伸倍率等の仮撚加工条件を設定して延伸同時仮撚加工する必要がある。
(ハ)仮撚加撚張力(T1):0.177cN/dtex≦T1≦0.353cN/dtex、好ましくは0.221cN/dtex≦T1≦0.309cN/dtex
(ニ)仮撚数(K):15000/D1/2回/m≦K≦30000)/D1/2回/m(ただし、Dは複合仮撚加工糸の繊度(dtex))、好ましくは20000/D1/2回/m≦K≦25000)/D1/2回/m
(ホ)仮撚ヒータ温度(HA):200℃≦HA≦400℃、250℃≦HA≦350℃
ここで、加撚張力が上記範囲未満の場合には、サージングが発生しやすくなって染め斑が増大するので好ましくなく、一方、該範囲を越える場合には、毛羽の発生が増大し、また断糸も発生しやすくなるので好ましくない。なお、解撚張力は、低すぎると染斑不良(スポット未解撚状)になりやすく、一方高すぎると毛羽が多発しやすいので、0.088〜0.265cN/dtexの範囲とするのが望ましい。
【0060】
次に、仮撚数(回/m)が15000/D1/2回/m未満の場合には、風合が硬く、フラットヤーンライクとなるので好ましくなく、一方、30000/D1/2回/mを超える場合には、断糸や毛羽が急激に発生しやすくなるので好ましくない。
【0061】
また、仮撚ヒータ温度(HA(HA:熱セットヒーター温度)が200℃未満の場合には、得られる複合加工糸の鞘部に配される糸の糸条長手方向における斑(熱セット不足による染斑)が発生しやすく、また嵩高性も不足して、本発明の目的を達成することができない。一方、400℃を越える場合には、ソフト感が不十分となって、やはり本発明の目的を達成することができない。
【0062】
なお仮撚加工後に再熱処理する場合においては、糸のオーバーフィード率は0〜8%の範囲が好ましく、0%未満(すなわち伸長)では得られる複合仮撚加工糸のバルキー性が低下する傾向にあり、一方8%を越える場合では得られる複合仮撚加工糸のループが大きくなって品位が低下する傾向にある。
【0063】
次に、図1は上記本発明の製造方法における一実施態様を示す概略工程図である。図1において、予め紡糸混繊交絡処理されたドラフト差を有する2種の未延伸ポリエステルマルチフィラメント糸は、ガイド2を経てフィードローラー3により延伸同時仮撚域に供給される。次いで、フィードローラー3と第1デリベリーローラー8との間で延伸されながらフリクションディスク7により加撚・解撚され、その際第1仮撚熱セットヒーター5で熱固定される。仮撚加工された糸条は、必要に応じて第1デリベリーローラー8と第2デリベリーローラー10との間で再熱処理ヒーター9で再熱処理され、次いで巻取ローラー11でパッケージ12として巻き取られる。
【0064】
【作用】
以上に詳述した本発明の複合仮撚加工糸の製造方法では、特定のチタン化合物とリン化合物との反応生成物を触媒として得られるポリエステルを用い、紡糸ドラフト差を与えて溶融紡糸した2種の未延伸糸からなる紡糸混繊糸を用いているので、発色性、嵩高感、ソフト感に優れ、カスリ斑がなく、且つ、滑らかな表面タッチの風合を呈する新規で高品質の複合仮撚加工糸が、長期にわたり連続的に安定して生産することができる。
【0065】
【実施例】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例、比較例における各特性値の測定は下記方法により行った。
【0066】
(1)固有粘度
オルソクロロフェノールを溶媒とし、常法にしたがい温度35℃で測定した。
【0067】
(2)金属含有濃度
反応生成物(触媒)中のチタン、リン原子濃度は、乾燥したサンプルを走査電子顕微鏡(SEM、日立計測機器サービスS570型)にセットし、それに連結したエネルギー分散型X線マイクロアナライザー(XMA、堀場EMAX−7000)にて定量分析した。また、ポリエステル中の金属濃度は、粒状のサンプルをアルミ板上で加熱溶融した後、圧縮プレス機で平面を有する成形体を作成し、蛍光X線装置(理学電機工業3270E型)にて、定量分析した。
【0068】
(3)色相(カラーL値/カラーb値)
粒状のポリマーサンプルを160℃×90分乾燥機中で熱処理し、結晶化させた後、カラーマシン社製CM−7500型カラーマシンで測定した。
【0069】
(4)複屈折率
常法にしたがい、光学顕微鏡とコンペンセーターを用いて、繊維の表面に観察される偏光のリターデーションから求めた。
【0070】
(5)口金異物高さ
各実施例に示す方法、条件で溶融紡糸を行い、3、6、9日後に紡糸口金表面に離型剤を吹き付けて、吐出ポリマーが付着しないようにして紡糸口金を取り外し、顕微鏡にて吐出孔周辺に付着・堆積した口金異物の高さを測定した。全ての吐出孔について口金異物の高さを測定し、それらの平均値で表した。
【0071】
(6)紡糸断糸率
人為的または機械的要因に起因する断糸を除き、紡糸機運転中に発生した紡糸断糸回数を記録し下記式で紡糸断糸率(%)を計算した。
紡糸断糸率(%)=[断糸回数/(稼動ワインダー数×ドッフ数)]×100
ここで、ドッフ数とは未延伸糸パッケージを既定量(10kg)まで捲き取った回数をいう。
【0072】
(7)毛羽個数
東レ(株)製DT−104型毛羽カウンター装置を用いて、延伸仮撚加工糸を500m/minの速度で20分間連続測定して発生毛羽数(個/104m)をカウントした。
【0073】
(8)延伸仮撚断糸率
人為的または機械的要因に起因する断糸を除き、延伸仮撚機運転中に発生した断糸回数を記録し下記式で延伸仮撚断糸率(%)を計算した。
延伸仮撚断糸率(%)=[断糸回数/(稼動錘数×ドッフ数)]×100
ここで、ドッフ数とは仮撚加工糸パッケージを既定量(2.5kg)まで捲き取った回数をいう。
【0074】
(9)強度・伸度
JIS−L1013に準拠して測定した。
【0075】
(10)<紡糸ドラフト>
引取速度(S)とポリマーの吐出線速度(T)の比(S/T)を算出した。
【0076】
(11)未延伸ポリエステルマルチフィラメントの切断伸度
JIS L―1013―75に準じて測定した。
【0077】
(12)捲縮率(TC)
複合仮撚加工糸に0.044cN/dtexの張力を掛けてカセ枠に巻き取り、約3300dtexのカセを作る。カセ作成後、カセの一端に0.00177cN/dtex+0.177cN/dtexの荷重を負荷し、1分間経過後の長さL0(cm)を測定する。次いで、0.177cN/dtexの荷重を除去した状態で、100℃の沸水中にて20分間処理する。沸水処理後0.00177cN/dtexの荷重を除去し、24時間自由な状態で自然乾燥する。自然乾燥した試料に、再び0.00177cN/dtex+0.177cN/dtexの荷重を負荷し、1分間経過後の長さL1(cm)を測定する。次いで、0.177cN/dtexの荷重を除去し、1分間経過後の長さL2を測定し、次の算式で捲縮率を算出した。この測定を10回実施し、その平均値で表した。
TC(%)=[(L1−L2)/L0]×100
【0078】
(13)複合仮撚加工糸の風合
得られた複合仮撚加工糸を筒編機にて編立て、常法にしたがって精練、染色、ファイナルセットした後の編地の風合(ソフト感)及び表面タッチを総合して、熟練者5人により官能判定した。判定は1(不良)×〜3○(極めて良好)の3段階で表し、2以上を合格レベルとした。
【0079】
(14)嵩高性
複合仮撚加工糸を綛(周長1.25m)に320回転とり、2つ折りにしたサンプルの一端に5.88cN(6.0g)の荷重を吊るし、乾熱180℃下で5分間熱処理し、冷却後一定の重量(Wg)の体積(Vcm3)を6.4gの荷重下で測定し以下の式で算出した。
嵩高性(cm3/g)=V/W
【0080】
(15)沸水収縮率(BWS)
約3300dtexの複合仮撚加工糸のカセを作り、これに0.0883cN/dtexの荷重をかけて原長L0(cm)を測定し、次にカセの荷重を0.00177cN/dtexに変え、これを沸水中で30分間熱処理し、次いで室温で乾燥させた後、荷重を0.0883cN/dtexに変えてその長さL1(cm)を測定し、次の算式で算出し、10回測定してその平均値を求めた。
沸水収縮率(BWS)=(L0−L1)/L0×100
【0081】
[実施例1]
チタン化合物の調製:
内容物を混合撹拌できる機能を備え付けた2Lの三口フラスコを準備し、その中にエチレングリコール919gと酢酸10gを入れて混合撹拌した中に、チタンテトラブトキシド71gをゆっくり徐々に添加し、チタン化合物のエチレングリコール溶液(透明)を得た。以下、この溶液を「TB溶液」と略記する。本溶液のチタン原子濃度は1.02%であった。
【0082】
リン化合物の調製:
内容物を加熱し、混合撹拌できる機能を備え付けた2Lの三口フラスコを準備し、その中にエチレングリコール656gを入れて撹拌しながら100℃まで加熱した。その温度に達した時点で、モノラウリルホスフェートを34.5g添加し、加熱混合撹拌して溶解し、透明な溶液を得た。以下、この溶液を「P1溶液」と略記する。
【0083】
触媒の調製:
引き続き、100℃に加熱コントロールした上記のP1溶液(約690g)の撹拌状態の中に、先に準備したTB溶液310gをゆっくり徐々に添加し、全量を添加した後、100℃の温度で1時間撹拌保持し、チタン化合物とリン化合物との反応を完結させた。この時のTB溶液とP1溶液との配合量比は、チタン原子を基準として、リン原子のモル比率が2.0に調整されたものとなっていた。この反応によって得られた生成物は、エチレングリコールに不溶であったため、白濁状態で微細な析出物として存在した。以下、この溶液を「TP1−2.0触媒」と略記する。
【0084】
得られた反応析出物を分析するため、一部の反応溶液を目開き5μのフィルターでろ過し、その析出反応物を固体として採取した後、水洗、乾燥した。得られた析出反応物をXMA分析法で、元素濃度の分析を行った結果、チタン12.0%、リン16.4%であり、チタン原子を基準として、リン原子のモル比率は、2.1であった。さらに、固体NMR分析を行ったところ、次のような結果を得た。C−13 CP/MAS(周波数75.5Hz)測定法で、チタンテトラブトキシドのブトキシド由来のケミカルシフト14ppm、20ppm、36ppmピークの消失が認められ、また、P−31 DD/MAS(周波数121.5Hz)測定法で、従来モノラウリルホスフェートでは存在しない新たなケミカルシフトピーク−22ppmを確認した。これらより、本条件で得られた析出物は、明らかにチタン化合物とリン化合物とが反応して新たな化合物となっていることを示す。
【0085】
ポリエステルの調整:
予め225部のオリゴマーが滞留する反応器内に、撹拌下、窒素雰囲気で255℃、常圧下に維持された条件下に、179部の高純度テレフタル酸と95部のエチレングリコールとを混合して調製されたスラリーを一定速度供給し、反応で発生する水とエチレングリコールを系外に留去ながら、エステル化反応を4時間し反応を完結させた。この時のエステル化率は、98%以上で、生成されたオリゴマーの重合度は、約5〜7であった。
【0086】
このエステル化反応で得られたオリゴマー225部を重縮合反応槽に移し、重縮合触媒として、上記で作成した「TP1−2.0触媒」を3.34部投入した。引き続き系内の反応温度を255から280℃、また、反応圧力を大気圧から60Paにそれぞれ段階的に上昇及び減圧し、反応で発生する水、エチレングリコールを系外に除去しながら重縮合反応を行った。
【0087】
重縮合反応の進行度合いを、系内の撹拌翼への負荷をモニターしなから確認し、所望の重合度に達した時点で、反応を終了した。その後、系内の反応物を吐出部からストランド状に連続的に押し出し、冷却、カッティングして、約3mm程度の粒状ペレットを得た。得られたポリエチレンテレフタレートの品質を表1に示した。
【0088】
得られたポリエチレンテレフタレートペレットを150℃で5時間乾燥した後、スクリュウー式押出機を装備した溶融紡糸設備にて溶融し、295℃のスピンブロックに導入し、紡糸口金からドラフト差7.7万で吐出し、ポリマー流をクロスフロー式の送風筒から噴出される空気流で冷却・固化しつつ、紡糸口金から80cm下方に設置された計量ノズル式給油装置で、給油しながら集束し、エアーノズルで交絡処理を施した後に1300m/分の速度で引き取り、300dtex/72fil(高紡糸ドラフト成分:120dtex/24fil、低紡糸ドラフト成分:180d/48filで、複屈折率差0.025、切断伸度差150%、交絡数25個/m)の未延伸混繊糸として、10kgをパッケージ状に巻き取った。上記溶融紡糸操作は9日間連続して行った。
【0089】
次に、得られたポリエステル未延伸混繊糸パッケージを、図1に示した装置で延伸同時仮撚加工を行った。すなわち、直径58mmのウレタンディスクを仮撚具として装備した帝人製機株式会社製HTS−1500型延伸仮撚加工機にて、延伸倍率1.80、仮撚ヒーター前半部温度400℃、後半部温度200℃、延伸仮撚速度700m/minの延伸仮撚条件で延伸仮撚加工を行い170dtex/72filの複合仮撚加工糸を得た。なお、10kg捲の未延伸パッケージから2.5kg捲の仮撚加工糸パッケージを4個作成する方法で延伸仮撚加工を行った。
【0090】
その際の加撚張力(T1)は49cN(0.256cN/dtex)、解撚張力(T2)は37.2cNとし、700m/分の速度で加工した。得られた複合仮撚加工糸は、嵩高性は38cm3/gと極めて嵩高性の大きいものであった。
【0091】
得られた複合仮撚加工糸を筒編に編立て、常法にしたがって染色、仕上げした編地は、サラットした滑らかな表面タッチで且つソフトな風合を呈するものであった。またこの仮撚加工糸に1800T/mの撚糸を施し、経密度が176本/3.79cm、緯密度が106本/3.79cmの綾組織に織成し、常法にしたがって、リラックス(温度120℃、20分間)、プレセット(温度180℃、45秒)、アルカリ減量処理(減量率17%)、染色加工(温度130℃、45分間)、およびファイナルセット(温度160℃、45秒間)の工程をとおして織物を得た。得られた織物は、滑らかな表面タッチと優れたドレープ性を呈した優れた織物であった。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0092】
[実施例2]
実施例1において、モノラウリルホスフェートをモノブチルホスフェートに変え、添加量および条件下記のとおり変更する以外は同様に行った。
【0093】
エチレングリコール537gにモノブチルホスフェート28.3gを加熱溶解し(これを「P2溶液」と略記する。)、その中にTB溶液435gを入れて反応物を得た。この時のTB溶液とP2溶液との配合量比は、チタン原子を基準としてリン原子のモル比率として2.0に調整されたものとなっている。以下これを「TP2−2.0触媒」と略す。この時の加熱温度は70℃、反応時間は1時間とした。
【0094】
本反応析出物を分析するため、一部の反応溶液を5μのフィルターでろ過し、その析出反応物を固体として採取し、その後、水洗、乾燥した。得られた析出反応物の元素濃度分析を実施例1と同様に行った結果、チタン17.0%,リン21.2%で、チタン原子を基準としてリン原子のモル比率は、1.9であった。本触媒を用い、実施例1と同様にしてポリエステル繊維の製造を行った。結果を表1に示す。
【0095】
[実施例3]
実施例1において、TP1溶液の調整量およびTB溶液添加量を下記のとおり変更した以外は、同様の操作を行った。
エチレングリコール594gにモノラウリルホスフェート31.3gを加熱溶解し(以下、「P3溶液」と略記する。)、その中にTB溶液375gを入れ反応物を得た。この時のTB溶液とP3溶液との配合量比は、チタン原子を基準として、リン原子のモル比率が1.5に調整されたものとなっている。以下、これを「TP3−1.5触媒」と略す。この触媒を用いて実施例1と同様にポリエステル繊維の製造を行った。結果を表1に示す。
【0096】
[実施例4]
実施例2において、TP2溶液の調整量およびTB溶液添加量を下記のとおり変更した以外は、同様の操作を行った。
エチレングリコール627gにモノブチルホスフェート33.0gを加熱溶解し(以下、「P4溶液」と略記する。)、その中にTB溶液340gを入れ反応物を得た。この時のTB溶液とP4溶液の配合量比は、チタン原子を基準として、リン原子のモル比率が3.0に調整されたものとなっている。以下、これを「TP4−3.0触媒」と略す。この触媒を用いて実施例1と同様にポリエステル繊維の製造を行った。結果を表1に示す。
【0097】
[比較例1]
実施例1のポリエステルの調整において、重縮合触媒を、三酸化アンチモンの1.3%濃度エチレングリコール溶液に変更し、その投入量を4.83部とし、さらに安定剤としてトリメチルホスフェートの25%エチレングリコール溶液0.121部を投入したこと以外は同様の操作を行い、固有粘度0.630のポリエチレンテレフタレートを得た。
【0098】
得られたポリエチレンテレフタレートをペレット状となし、実施例1と同様にして溶融紡糸を行い、300dtex/72filのポリエステル未延伸混繊糸を製造したが、紡糸時間の経過にともない口金異物が急速に成長し、吐出糸条の屈曲、ピクツキおよび旋回が増加して、紡糸断糸の急激な増加が認められた。なお、紡糸3日経過後は、紡糸断糸が多発し、正常な紡糸操作が困難となり、運転を中止した。
【0099】
得られたポリエステル未延伸混繊糸パッケージを、実施例1と同じ方法、条件で延伸仮撚加工を行い170dtex/72filの複合仮撚加工糸を得た。なお、紡糸3日経過後の紡糸混繊糸では、延伸仮撚時に毛羽や断糸の発生が極めて多かった。また、得られた複合仮撚加工糸の(L)値も80未満であり、色調も不十分であった。結果を表1に示す。
【0100】
[比較例2]
実施例1のポリエステルの調整において、重縮合触媒として、実施例1で調製したTB溶液のみを使用し、その投入量を1.03部とした以外は同様の操作を行った。この時の重縮合反応時間は、95分であった。結果を表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
[比較例3]
実施例1で得たポリエチレンテレフタレートを、紡糸ドラフト156、紡糸速度1300m/分で紡糸して伸度360%、複屈折率0.015、167dtex/48フィラメントの低配向未延伸ポリエステルマルチフィラメントを得た。また別に、紡糸ドラフト188、紡糸速度3200m/分で紡糸して伸度125%、複屈折率0.045、138dtex/24フィラメントの高配向未延伸ポリエステルフィラメントを得た。
【0103】
両フィラメントを引き揃え、混繊交絡処理(交絡数50個/m)した後に、延伸倍率1.63、仮撚温度200℃の下、仮撚具として三軸フリクションディスクを用い、加撚張力(T1)73.5cN(0.389cN/dtex)、解撚張力(T2)49cNとして400m/分の速度で加工し、189dtex/72filの複合仮撚加工糸を得た。得られた仮撚加工糸の嵩高性は20cm3/gと低いものであった。
【0104】
この複合仮撚加工糸を、実施例1と同様に処理して織物となしたところ、得られた織物は表面タッチがザラザラとしていて、風合が劣ったものであった。
【0105】
[実施例5〜15、比較例4〜11]
実施例1において、紡糸ドラフト差、複屈折率差および伸度差を表2に記載のとおり変更した以外は同様にして複合仮撚加工糸を得た。結果をまとめて表2に示す。また、比較例3も合わせて示す。
【0106】
また、実施例1において、仮撚条件を表3または4に記載のとおり変更した以外は、実施例1と同様にして複合仮撚加工糸を得た。これらの結果はそれぞれ表3および4に示す。
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
【表4】
【0110】
【発明の効果】
本発明によれば、発色性、嵩高感、ソフト感に優れ、しかもカスリ斑等の染色斑が発生し難く、且つ滑らかな表面タッチの風合を呈する二層構造の複合仮撚加工糸を長期間安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で使用した複合仮撚加工糸を製造する装置の概略図である。
【符号の説明】
1 ポリエステル混繊糸
2 ガイド
3 フィードローラー
4 インターレースノズル
5 熱セットヒーター(仮撚温度)
6 冷却プレート
7 撚掛装置(仮撚ディスク)
8 第1デリベリーローラー
9 再熱処理ヒーター(再熱処理温度)
10 第2デリベリーローラー
11 巻取ローラー
12 パッケージ
Claims (4)
- 下記式(I)で表されるチタン化合物と下記式(II)で表されるリン化合物との反応生成物からなる触媒の存在下に重縮合して得られるポリエステルを、
単一の紡糸口金または異なる紡糸口金から紡糸ドラフト差1万〜10万で紡糸された2種類の未延伸ポリエステルマルチフィラメント糸を混繊処理して得た、下記(イ)および(ロ)を同時に満足する紡糸混繊糸を、仮撚の熱セットヒーターが非接触式である仮撚加工機を用いて、下記(ハ)〜(ホ)を同時に満足する条件で延伸同時仮撚加工することを特徴とする複合仮撚加工糸の製造方法。
(イ)2種類の未延伸ポリエステルマルチフィラメント糸の複屈折率差(Δn):0.02≦Δn≦0.05
(ロ)2種類の未延伸ポリエステルマルチフィラメント糸の伸度差(ΔL):70%≦ΔL≦200%
(ハ)仮撚加撚張力(T1):0.177cN/dtex≦T1≦0.353cN/dtex
(ニ)仮撚数(K):15000/D1/2回/m≦K≦30000)/D1/2回/m(ただし、Dは複合仮撚加工糸の繊度(dtex))
(ホ)仮撚ヒータ温度(HA):200℃≦HA≦400℃ - チタン化合物とリン化合物との反応割合が、チタン原子を基準としてリン原子のモル比率(P/Ti)で1.0〜3.0の範囲内である請求項1記載の複合仮撚加工糸の製造方法。
- 紡糸混繊糸の紡糸速度が1000〜1500m/分である請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合仮撚加工糸の製造方法。
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