JP2004217807A - 低温安定性良好な塩素化ポリオレフィン系樹脂溶液 - Google Patents

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晃二 増本
Naosuke Takamoto
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隆行 廣瀬
Hidetoshi Yoshioka
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Abstract

【課題】低塩素含有の酸変性塩素化ポリオレフィン類または塩素化ポリオレフィン類の低温における経時安定性を損なうことなく、ポリオレフィンに対して良好で且つ耐溶剤性に優れる塗料、プライマー、印刷インキあるいは接着剤用のバインダー樹脂溶液を提供する。
【解決手段】プロピレン成分を93〜98モル%含有するプロピレン−α−オレフィン共重合物を原料とした塩素含有率が15〜35重量%である酸変性塩素化ポリオレフィン類または塩素化ポリオレフィン類であって、それら樹脂の示差走査熱量計の熱分析に基づく結晶融解熱量が0〜2J/gであり、且つ樹脂溶液の固形分濃度が10〜40重量%であることを特徴とする低温安定性良好な塩素化ポリオレフィン系バインダー溶液。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はポリオレフィン系樹脂、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合物、エチレン−プロピレン−ジエン共重合物などのポリオレフィン系樹脂の成型品またはフィルム等に対するプライマーや接着剤として使用される低温流動性及び低温安定性の良好な塩素化ポリオレフィンまたは酸変性塩素化ポリオレフィンのバインダー樹脂溶液に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチックは、高生産性でデザインの自由度が広く、軽量、防錆、耐衝撃性など多くの利点があるため、近年、自動車部品、電気部品、建築資材、食品包装用フィルム等の材料として多く用いられてきている。とりわけポリオレフィン系樹脂は、安価で成形性、耐薬品性、耐熱性、耐水性、良好な電気特性など多くの優れた性質を有するため、工業材料として広範囲に使用されており、将来その需要の伸びが最も期待されている材料の一つである。
しかしながらポリオレフィン系樹脂は、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂等、極性を有する合成樹脂と異なり、非極性で且つ結晶性のため、塗装や接着が困難であるという欠点を有する。
【0003】
【特許文献1】特公昭46−27489号公報
【特許文献2】特公昭50−35445号公報
【特許文献3】特公昭50−37688号公報
【特許文献4】特開昭57−36128号公報
【特許文献5】特公昭63−50381号公報
【特許文献6】特開昭59−166534号公報
【特許文献7】特公昭63−36624号公報
【特許文献8】特開平10−168123号公報
【特許文献9】特許2596884号公報
【特許文献10】特開2002−80666号公報
【0004】
この様な難付着性なポリオレフィン系樹脂の塗装や接着には、ポリオレフィン系樹脂に対して強い付着力を有する低塩素化ポリオレフィンが従来よりバインダー樹脂として使用されている。例えば、20〜40重量%まで塩素化した塩素化アイソタクチックポリプロピレンがポリプロピレンフィルムの印刷インキ用バインダー樹脂(【特許文献1】)や、20〜40重量%まで塩素化した塩素化プロピレン−エチレン共重合体が、ポリオレフィンに対する印刷インキや接着剤用のバインダー樹脂(【特許文献2】、【特許文献3】)として提案されている。またカルボン酸及び/またはカルボン酸無水物を含有する低塩素化ポリプロピレンあるいは低塩素化プロピレン−α−オレフィン共重合体が、ポリオレフィン系成型品の塗装用プライマーやコーティング用のバインダー樹脂(【特許文献4】、【特許文献5】、【特許文献6】、【特許文献7】、【特許文献8】)として提案されている。
一般に、上記したような低塩素化ポリオレフィン類は塩素含有率が高くなるほどポリオレフィンに対する付着性や耐溶剤性が悪くなる傾向にあるため、塩素含有率は可能な限り低く設定するのが望ましい。しかしながら、塩素含有率が低すぎると溶液状態が悪くなり、保存中増粘したりゲル化が起こるため、塗工やスプレー塗装等の作業性が悪くなる。また、低塩素化ポリオレフィンの塩素含有率を、塗工やスプレー塗装等の作業性が悪くならない範囲に設定したとしても、低温で保存した場合溶液の流動性が悪くなり、冬季の低温時における取り扱い作業に大きな制限が加わる。低塩素化ポリオレフィンの溶液濃度を低くすれば低温流動性を改善することは可能であるが、濃度が低いとインキや塗料に加工する際、顔料分散が困難になったり、輸送コストが高くなる等の問題を生ずる。
【0005】
これらの問題に対して、塩素化ポリオレフィンを溶解する溶剤組成として芳香族炭化水素と脂環式炭化水素、及び/または極性溶剤を混合して用いることにより改善すること(【特許文献9】、【特許文献10】)が提案されている。また塩素化工程でのポリオレフィン類溶解工程を高温で行うことにより改善すること(【特許文献8】)が提案されている。しかしこれらの方法も、経時的な粘度の上昇や経時的に数ミクロンから数十ミクロンの塩素化ポリオレフィン類または酸変性塩素化ポリオレフィン類由来の結晶物が生成するなどの問題があり、満足できるとは言い難いものであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した問題を解決し、塩素含有率の低い塩素化ポリオレフィン類または酸変性塩素化ポリオレフィン類の低温流動性や作業性を損なうことなく、経時的にも安定した溶液性状を有し、ポリオレフィンに対して付着性が良好で且つ耐溶剤性に優れる塗料、プライマー、ヒートシール剤、印刷インキ、あるいは接着剤用のバインダー樹脂溶液を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、プロピレン成分を93〜98モル%含有するプロピレン−α−オレフィン共重合物を原料として、これを15〜35重量%まで塩素化するか、またはα、β−不飽和カルボン酸またはその誘導体を0〜10重量%グラフト重合した後、塩素含有量を10〜35重量%まで塩素化することによって、示差走査熱量計の熱分析に基づくそれら塩素化ポリオレフィンまたは酸変性塩素化ポリオレフィンの結晶融解熱量を0〜2J/gに抑えることで、10〜40重量%の固形分濃度に溶解させることにより得られるバインダー樹脂溶液が良好な低温流動性や作業性および経時的に安定した溶液性状を示し、且つポリオレフィンに対して優れた耐溶剤性を有することを見出し、本発明を成すに至った。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の原料にはプロピレン成分を93〜98モル%含有するプロピレン−α−オレフィン共重合物が使用できる。プロピレン−α−オレフィン共重合物とは、プロピレンを主体としてこれにα−オレフィンを共重合したものであり、ブロック共重合物でもランダム共重合物の何れでも使用できる。α−オレフィン成分としては、例えばエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等を例示することができる。プロピレン成分の含有量は93〜98モル%が最適で、93モル%未満であると低塩素含有率で容易に示差走査熱量計の熱分析に基づく結晶融解熱量は2J/g以下まで抑えられるが、α−オレフィン成分が7モル%を越えると塗膜にべとつきが生じたり、タック性が増すなど塗膜に弊害が生じる。またプロピレン成分の含有量が98モル%を越えると逆に結晶融解熱量を2J/g以下まで抑えるためには塩素含有率を高くする必要があり、それによる極性増加に伴い十分な付着性が得られない。尚、プロピレン成分量は、核磁気共鳴(NMR)スペクトル分析等により測定できる。
【0009】
本発明の酸変性塩素化ポリオレフィンは上記ポリオレフィン樹脂にα、β−不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体、および塩素を導入することにより得られるが、その製造は次に挙げる方法により製造可能である。
まずポリオレフィン樹脂にα、β−不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体をグラフト共重合するが、その方法は、ラジカル発生剤の存在下で該ポリオレフィンを融点以上に加熱融解して反応させる方法(溶融法)、該ポリオレフィンを有機溶剤に溶解させた後ラジカル発生剤の存在下に加熱撹拌して反応させる方法(溶液法)等、公知の方法によって行うことができる。溶融法の場合には、バンバリーミキサー、ニーダー、押し出し機等を使用し融点以上300℃以下の温度で加熱溶融して反応させるので操作が簡単である上、短時間で反応できるという利点がある。一方、溶液法に置いては反応溶剤としてトルエン、キシレン等の芳香族系溶剤を使うことが好ましい。反応温度は100〜180℃であり、副反応が少なく均一なグラフト重合物を得ることができるという特徴がある。
α、β−不飽和カルボン酸無水物のグラフト反応に使用する上記有機過酸化物系化合物としては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエート等があげられる。
【0010】
また上記ポリオレフィン樹脂にグラフト共重合するα、β−不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体としては、例えばマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、無水ハイミック酸等を例示できるが、ポリオレフィン樹脂へのグラフト性を考慮すると無水マレイン酸が最も適している。また、α、β−不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体をグラフト共重合によって導入する量は、0〜10重量%が最適であり、10重量%を越えると塩素化の途中でゲル化する。
【0011】
上記酸変性後に行う、または先に示したポリオレフィン樹脂に酸変性を行わずに行う塩素化反応は、それら酸変性ポリオレフィン樹脂またはポリオレフィン樹脂をクロロホルム等の塩素系溶媒に溶解した後に紫外線の照射下、もしくは触媒の存在下、もしくは不存在下で、常圧もしくは加圧下で50〜140℃の温度範囲で塩素ガスを吹き込むことにより行われる。また塩素化反応により導入する塩素含有率は15〜35重量%が最適である。15重量%より少ない場合は溶剤溶解性が極端に悪くなり、35重量%を越えると極性が高くなり十分な付着性が得られない。
【0012】
また、上記塩素化ポリオレフィンまたは酸変性塩素化ポリオレフィンにおける示差走査熱量計(DSC)の熱分析に基づく結晶融解熱量は、以下に示す測定条件にて0〜2J/gであるのが好ましい。熱量が2J/gを越えると、結晶性が強くなり、低温保存中に結晶物の生成またはゲル化が起こる。
【0013】
〔DSC測定条件〕
プレ加熱;30℃(0min)→(30℃/min)→150℃(0min)
冷 却;150℃(0min)→(−20℃/min:液体窒素)→−30℃(5mins)
本 測 定;−30℃(0min)→(10℃/min)→150℃(0min)
【0014】
本発明のバインダー樹脂溶液を製造する場合、上記した塩素化ポリオレフィン類または酸変性塩素化ポリオレフィン類を固形化した後、芳香族炭化水素、または芳香族炭化水素および脂環式炭化水素、または芳香族炭化水素および脂環式炭化水素及び極性溶剤等の混合溶剤に溶解しても良いが、塩素化反応が終了した後、クロロホルム等の塩素系溶媒を留去し、上記溶剤と置換しても良い。
また、該バインダー樹脂溶液の固形分濃度は10〜40重量%が好ましい。10重量%未満であるとインキや塗料に加工する際、顔料分散が困難になったり、輸送コストが高くなる等の問題が生ずる。40重量%を越えると低温流動性が悪くなり、冬季の低温時における取り扱い作業に大きな制限が加えられるため好ましくない。
【0015】
本発明のバインダー樹脂溶液はポリオレフィンフィルムやシートおよび成型物等の塗料やインキ、接着剤およびヒートシール剤等のバインダー樹脂として使用できる。また、本発明の酸変性塩素化ポリオレフィンはポリオレフィン系のバンパー塗装用プライマーとしても使用できる。
本発明のバインダー樹脂溶液は、そのままコーティングして用いても良いが、顔料、溶剤、その他の添加剤を加え、混練、分散し塗料やインキとして用いることができる。また該バインダー樹脂はそれだけでバランスのとれた塗膜物性を示すが、必要であればアルキッド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリルポリオール、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリオール、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリオレフィン等を更に添加して用いても差し支えない。これらの添加量は目的に応じて適宜求められるが、本願発明のバインダー樹脂溶液は、上記各用途において30重量%以上含まれていれば、その効果が発揮される。
【0016】
【作用】
本発明の特徴とするところは、ポリオレフィン類の成型物またはフィルムに対して付着性が良好な、塩素含有率の低い低温安定化塩素化ポリオレフィン類または酸変性塩素化ポリオレフィン類の性質を更に向上させることにある。即ち、塩素化ポリオレフィン類または酸変性塩素化ポリオレフィン類は塩素含有率が低くなるほど被塗物であるポリオレフィン系樹脂との極性差がなくなり、ポリオレフィン系樹脂に対する付着性が良好になるが、ワニスや塗料に使用される有機溶剤との極性の差が大きく、溶解状態が劣るので常温でも溶液流動性が悪くなり保存中に増粘またはゲル化するなど低温での流動性が悪くなる。このため作業性が著しく悪くなり、冬期の低温時における取り扱い作業が大きく制限されるが、本発明であるプロピレン成分を93〜98モル%含有するプロピレン−α−オレフィン共重合物を原料とした塩素化ポリオレフィン類または酸変性塩素化ポリオレフィン類の示差走査熱量計の熱分析に基づく結晶融解熱量を0〜2J/gに抑えることにより、低温における溶液流動性と共にそれら樹脂の結晶性に由来する数〜数十ミクロンの結晶物の発生を抑え、しかもポリオレフィンに対する付着性が良好なバインダー樹脂溶液が得られるのである。
【0017】
結晶性が低いほど低温流動性が向上するのは、以下のように説明できる。結晶性を残した塩素化ポリオレフィン類または酸変性塩素化ポリオレフィン類を溶解したバインダー樹脂では、低温になるに従い分子運動が低下するため、結晶化部位での凝集が進みやすくなる。このように高分子同士が自身の凝集力により互いに引き合い、分子レベルの絡み合いが増すことになり、結果として結晶物が生成される。次にこの結晶物が核となり、次第に周囲の溶解している樹脂全体に影響を及ぼすこととなる。このため樹脂の運動性が束縛されることとなり、結果的に増粘あるいはゲル化が生じるものと考えられる。そこで、先の結晶性を低下させることにより、核となる結晶物の生成を防止することになり、低温における流動性が良好なバインダー樹脂溶液が得られたものと考えられる。
【0018】
【実施例】
次に本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
[製造例1]
重量平均分子量が50,000であり、エチレン含有量5モル%のエチレン−プロピレン共重合物5kgを、攪拌機と滴下ロートとモノマーを還流するための冷却管を取り付けた三ツ口フラスコ中に入れ、180℃で一定に保たれた油浴中で完全に溶融した。フラスコ内の窒素置換を約10分間行った後、撹拌を行いながら無水マレイン酸200gを約5分間かけて投入し、次にジ−tert−ブチルパーオキサイド20gを50mlのヘプタンに溶解し滴下ロートより約30分間かけて投入した。このとき、系内は180℃に保たれ、更に1時間反応を継続した後、アスピレーターでフラスコ内を減圧しながら約1時間かけて未反応の無水マレイン酸を取り除いた。
次にこの生成物3kgをグラスライニングされた反応釜に投入し、40Lのクロロホルムを加え、3kg/cmの圧力の下、温度110℃で充分に溶解させた後、アゾビスブチロニトリル30gを加え、上記釜内圧力を3kg/cmに制御しながら塩素ガスを吹き込んだ。塩素含有率の異なる2種類の反応液を抜き取り、反応溶媒であるクロロホルムを減圧乾燥にて取り除き、安定剤としてtert−ブチルフェニルグリシジルエーテルを固形分に対し4%添加された塩素含有率が16重量%と26重量%の無水マレイン酸変性塩素化エチレン−プロピレン共重合物の固形物を得た。またこれらの熱分析に基づく結晶融解熱量を示差走査熱量計(DSC;セイコー製DSC6200)にて測定したところ、それぞれ1.9J/g、0.4J/gであった。
【0020】
[製造例2]
重量平均分子量が35,000であり、エチレン含有量3モル%のエチレン−プロピレン共重合体5kg、無水マレイン酸300g、ジ−tert−ブチルパーオキサイド25gを採取する以外は、製造例1と全く同様な方法で無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合物を得た。
次にこの生成物3kg、クロロホルム35lを採取する以外は製造例1と同様な方法で塩素化し、塩素含有率が13重量%と21重量%の無水マレイン酸変性塩素化エチレン−プロピレン共重合物の固形物を得た。これらの結晶融解熱量をDSCにて測定したところ、それぞれ2.7J/g、1.8J/gであった。
【0021】
[製造例3]
重量平均分子量が45,000である結晶性ポリプロピレン5kg、無水マレイン酸300g、ジ−tert−ブチルパーオキサイド20gを採取する以外は、製造例1と全く同様の方法で無水マレイン酸変性ポリプロピレンを得た。
次にこの生成物3kg、クロロホルム40lを採取する以外は製造例1と同様な方法で塩素化し、塩素含有率15重量%と28重量%の無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレンの固形物を得た。これらの結晶融解熱量をDSCにて測定したところ、それぞれ4.1J/g、1.9J/gであった。
【0022】
[製造例4]
重量平均分子量が40,000であり、エチレン含有量4モル%のエチレン−プロピレン共重合物3kg、クロロホルム50Lを採取する以外は製造法1の塩素化方法に準じて塩素化を行い、塩素含有率が17重量%と22重量%の塩素化エチレン−プロピレン共重合物の固形物を得た。またこれらの結晶融解熱量をDSCにて測定したところ、それぞれ2.5J/g、1.4J/gであった。
【0023】
[実施例1〜4及び比較例1〜4]
製造例1〜4で得た酸変性塩素化ポリオレフィン及び塩素化ポリオレフィンの内容を表1に示した。α−オレフィン含有量及び結晶融解熱量に基づき実施例1〜4及び比較例1〜4とした。
【0024】
【表1】
Figure 2004217807
【0025】
製造例1〜4で得た酸変性塩素化ポリオレフィンおよび塩素化ポリオレフィンを、トルエン、及びトルエン/シクロヘキサン(70/30;重量比)、及びトルエン/シクロヘキサン/酢酸エチル(60/30/10;重量比)に固形分濃度が20重量%及び35重量%となるように溶解した。これを20℃、−5℃、−10℃の雰囲気に保存した時の、各溶液の溶液状態(低温安定性)を表2に示した。
【0026】
【表2】
Figure 2004217807
【0027】
Figure 2004217807
【0028】
Figure 2004217807
【0029】
[実施例3及び比較例3]
実施例3の酸変性塩素化ポリオレフィン(塩素含有率:21重量%、結晶融解熱量:1.8J/g)のトルエン/シクロヘキサン(70/30:重量比)溶液と比較例3の酸変性塩素化ポリオレフィン(塩素含有率:28重量%、結晶融解熱量:1.9J/g)のトルエン/シクロヘキサン(70/30:重量比)溶液を、コーティングロッド#4で未処理ポリプロピレンフィルムにそれぞれ塗工し、24時間室温で乾燥後、ヒートシール強度試験を行った。ヒートシール強度試験は、塗工面を重ね合わせて、120℃−1kg/cmで1秒間の圧着条件でヒートシールを行い、24時間後テンシロンにて180度剥離強度試験を行った(引っ張り速度:50mm/min)。結果を表3に示した。
次に上記実施例3及び比較例3各138gにそれぞれ安定剤としてエピコート828(エポキシ樹脂、エポキシ当量:184〜194、シェル化学社製)を1.0g、顔料として二酸化チタン10g及びカーボンブラック0.2gを混合し、サンドミルにて1時間顔料を分散させた後、フォードカップ#4で13〜14秒/20℃になるようトルエンで粘度調製を行い、水で洗浄したポリプロピレン板(TX−933A、三菱油化(株)製)に膜厚が約10μmになるようスプレー塗装した。数分後2液硬化型ウレタン塗料を膜厚が30〜40μmになるようスプレー塗装し、約15分間室温で乾燥した後、80℃で30分間強制乾燥を行い、更に24時間室温で静置後、塗膜試験を行った。結果を表4に示した。
【0030】
【表3】
Figure 2004217807
【0031】
塗膜試験方法
付着性:塗面上に2mm間隔で素地に達する碁盤目を作り、その上にセロファン粘着テープを密着させて180度方向に引き剥がし、残存する碁盤目の数を調べた。
耐ガソリン性:塗面上に素地に達するスクラッチを入れ、25℃においてレギュラーガソリンに2時間浸漬し、塗膜の状態を調べた。
耐水性:40℃の温水に240時間浸漬し塗膜の状態を調べた。
耐湿性:50℃で相対湿度98%の雰囲気下に240時間放置し、塗膜の状態を調べた。
【0032】
【表4】
Figure 2004217807
【0033】
【発明の効果】
(表2の結果より)実施例1〜4は、プロピレン成分を93〜98モル%含有するプロピレン−α−オレフィン共重合物を原料とし、且つ示差走査熱量計の熱分析に基づく結晶融解熱量を2J/g以下までに抑えた酸変性塩素化ポリオレフィン及び塩素化ポリオレフィンを芳香族炭化水素であるトルエン、または芳香族炭化水素および脂環式炭化水素の混合溶剤であるトルエン/シクロヘキサン混合溶剤、または芳香族炭化水素、脂環式炭化水素および極性溶剤の混合溶剤であるトルエン/シクロヘキサン/酢酸エチル混合溶剤に溶解させた後の低温流動性を示しているが、いかなる溶剤に溶解させた系においても、低温における流動性及び安定性は良好である。一方、比較例1〜2、及び4はプロピレン成分を93〜98モル%含有するプロピレン−α−オレフィン共重合物を原料とし、且つ結晶融解熱量が2J/gを越える酸変性塩素化ポリオレフィン及び塩素化ポリオレフィンを、また比較例3はα−オレフィンを含まない結晶性ポリプロピレンを原料とし、且つ結晶融解熱量を2J/g以下まで抑えた酸変性塩素化ポリプロピレンを上記溶剤に溶解させた後の低温流動性を示しているが、保存温度が低いほど流動性が低下し、また結晶物の生成が多い。比較例3は比較的低温での流動性が安定しているが、発底の原料樹脂が持つ結晶性の強さにより、結晶融解熱量を2J/g以下に抑える程度では、実施例のように完全には良好にはならない。このことより、プロピレン成分を93〜98モル%含有するプロピレン−α−オレフィン共重合物を原料とし、且つ結晶融解熱量を2J/g以下に抑えることにより、低温流動性を著しく改善していることが分かる。
【0034】
(表3及び表4の結果より)ほぼ同じ結晶融解熱量を持つが塩素含有率の異なる実施例3と比較例3の物性比較を行ったものである。比較例3は結晶性ポリプロピレンを原料としているため、実施例3と同等の結晶融解熱量に抑えるためには塩素含有率を高めにする必要があった。しかし塩素含有率は高くなるに従い極性が高くなるため付着性は低下していることが分かる。即ちこの結果は、本発明の酸変性塩素化ポリオレフィン溶液及び塩素化ポリオレフィン溶液が、ヒートシール強度、付着性、耐ガソリン性等が優れていることを示している。
【0035】
即ち、本発明は、本来低温流動性が悪く作業性が著しく劣り、更に経時的に粘度の上昇及び結晶物の生成を伴うため使用困難であった、プロピレン成分を93〜98モル%含有するプロピレン−α−オレフィン共重合物を原料とした低塩素含有率の酸変性塩素化ポリオレフィン及び塩素化ポリオレフィンの結晶融解熱量を2J/g以下に抑えることにより、低温安定性を改良でき、さらに良好な物性も有することを示している。

Claims (7)

  1. プロピレン成分を93〜98モル%含有するプロピレン−α−オレフィン共重合物を原料とした塩素含有率が15〜35重量%である塩素化ポリオレフィンであって、それら樹脂の示差走査熱量計の熱分析に基づく結晶融解熱量が0〜2J/gであり、且つ樹脂溶液の固形分濃度が10〜40重量%であることを特徴とする低温安定性良好な塩素化ポリオレフィン系バインダー樹脂溶液。
  2. 塩素化ポリオレフィンが、α、β―不飽和カルボン酸及び/またはその誘導体を0〜10重量%グラフト重合した後、塩素含有率を10〜35重量%まで塩素化した酸変性塩素化ポリオレフィンである請求項1記載の低温安定性良好な塩素化ポリオレフィン系バインダー樹脂溶液。
  3. 請求項1から2のいずれか1項に記載の低温安定性良好な塩素化ポリオレフィン系バインダー樹脂溶液を有効成分とするポリオレフィンフィルム、シート、成型物用塗料。
  4. 請求項1から2のいずれか1項に記載の低温安定性良好な塩素化ポリオレフィン系バインダー樹脂溶液を有効成分とするポリオレフィンフィルム、シート、成型物用インキ。
  5. 請求項1から2のいずれか1項に記載の低温安定性良好な塩素化ポリオレフィン系バインダー樹脂溶液を有効成分とするポリオレフィンフィルム、シート、成型物用接着剤。
  6. 請求項1から2のいずれか1項に記載の低温安定性良好な塩素化ポリオレフィン系バインダー樹脂溶液を有効成分とするポリオレフィンフィルム、シート、成型物用ヒートシール剤。
  7. 請求項1から2のいずれか1項に記載の低温安定性良好な塩素化ポリオレフィン系バインダー樹脂溶液を有効成分とするポリオレフィンフィルム系樹脂塗装用プライマー。
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