JP2004217381A - 構造物の浮上量制御方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】複数の流体浮上装置を用いて構造物を浮上させて搬送するときの構造物の浮上量制御方法であって、前記各流体浮上装置の浮上量を測定する浮上量測定工程と、該測定された各流体浮上装置の浮上量の平均値からの偏差に基づいて、各流体浮上装置に供給する流体供給量を調整する流体供給量補正工程とを有し、該流体供給量補正工程は、前記測定された各々の浮上量の平均値からの偏差が一定値を超えるときに、前記各流体浮上装置に供給する流体供給量を調整する調整弁の開閉速度を増加または減少させることを特徴とする構造物の浮上量制御方法。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の流体浮上装置を用いて構造物を浮上させて搬送するときの構造物の浮上量制御方法に関する。
具体的には、例えば、圧縮空気などの流体をトーラスバッグに供給することによって構造物を浮上搬送する流体浮上装置を用いた構造物の浮上量制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
圧縮空気などの流体をトーラスバッグに供給することによって構造物を浮上搬送する流体浮上装置に関しては、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特開2001−2400号公報には、複数のトーラスバッグを備えた流体キャスターを、底板下面の周囲部と中央部に、トーラスバッグが基礎(定盤)や床面に接触するように配置し、このトーラスバッグへの流体供給圧を制御可能にして周辺部と中央部での支持バランスを制御し、底板及び底板上の構造物に反り、曲り等の変形を与えないように所要揚程で浮上させ、流体キャスターを牽引して横移動する大型構造物の流体浮上輸送方法が開示されている。
【0003】
しかし、この従来技術は、トーラスバッグ内の流体の圧力を制御することにより構造物の浮上量を制御する方法であるため、下記のような問題点があった。
まず、トーラスバッグの抵抗(弾力性)には固有値があり、一定の圧力でも同じ浮上量とならなかった。その理由は、トーラスバッグは、例えば、樹脂やゴムで作られており、流体を繰り返し供給することによる馴染みなどによって弾力性が変化するうえ、トーラスバッグの抵抗(弾力性)が、流体温度や外気温、湿度などによって変化するためであると考えられる。
また、流体浮上装置のベースとなるレールの表面粗さ(粗度)は均一ではないうえ、レール面には微妙な傾斜や凹凸があるため、トーラスバッグ内の圧力を一定にしても、レールとの微小な隙間から流出する流体量(空気量)に差が生じるので、浮上量は一定にならなかった。
さらに、流体浮上装置のトーラスバッグ内圧による浮上力と構造物の重量が釣り合った以降に、トーラスバッグの内圧を微小加圧すると、浮上が急激に進むため、微小な加圧速度に対する浮上量の制御は、圧力制御スパンが極めて狭いので、トーラスバッグの内圧による浮上量の制御は極めて困難であった。
【0004】
【特許文献1】特開2001−2400号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述のような従来技術の問題点を解決し、複数の流体浮上装置を用いて構造物を浮上させて搬送する際に、構造物に反り、曲りなどの変形を与えないように構造物を傾斜させないで浮上搬送することができる構造物の浮上量制御方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前述の課題を解決するために鋭意検討の結果なされたものであり、複数の流体浮上装置を用いて構造物を浮上させて搬送する際に、各流体浮上装置の浮上量の偏差に基づいて、各流体浮上装置に供給する流体量を調整することにより、構造物に反り、曲りなどの変形を与えないように構造物を傾斜させないで浮上搬送することができる構造物の浮上量制御方法を提供するものであり、その要旨とするところは特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である。
【0007】
(1)複数の流体浮上装置を用いて構造物を浮上させて搬送するときの構造物の浮上量制御方法であって、
前記各流体浮上装置の浮上量を測定する浮上量測定工程と、
該測定された各流体浮上装置の浮上量の平均値からの偏差に基づいて、各流体浮上装置に供給する流体供給量を調整する流体供給量補正工程とを有し、
該流体供給量補正工程は、前記測定された各々の浮上量の平均値からの偏差が一定値を超えるときに、前記各流体浮上装置に供給する流体供給量を調整する調整弁の開閉速度を増加または減少させることを特徴とする構造物の浮上量制御方法。
(2)前記流体供給量補正工程は、前記測定された浮上量の平均値からの偏差量に応じて、前記流体供給量を調整する調整弁の開閉速度を複数の段階に増加または減少させることを特徴とする(1)に記載の構造物の浮上量制御方法。
(3)前記浮上量測定工程は、前記複数の浮上搬送装置各々に設置されたプリズムまたは鏡を有するレーザ変位計を用いることを特徴とする(1)または(2)に記載の構造物の浮上量制御方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態について、図1乃至図4を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明における構造物の浮上量制御方法のフロー図である。
図1において、まず、各流体浮上装置の浮上量を測定する。
構造物を圧縮空気などの流体により浮上させて搬送するためには、構造物の底板の周辺部および中央部をバランスよく支持する必要がある。
そこで、複数の流体浮上装置を用いることによって構造物の底板の周辺部および中央部を支持するとともに、各流体浮上装置の浮上量を測定する。
本発明においては、浮上量の測定方法は問わないが、測定精度および設置環境の観点から、後述のプリズムまたは鏡を有するレーザ変位計が好ましい。
次に、測定された各々の浮上量の平均値からの偏差を求め、この偏差が一定値(X)を超えるかどうか判断し、Yesの場合には、当該流体浮上装置に供給する流体供給量を調整する調整弁の開閉速度を増加または減少させる。
【0009】
構造物が浮上を開始した後、浮上が完了するまでの流体を供給するトーラスバッグの内圧は殆ど差がないが、浮上開始後、浮上完了までの流体流量は、コントロールするに十分な流量差があるので、調節弁の開閉速度を調整して流体供給量を増減(調節)することにより、浮上量をコントロールすることができる。
さらに、測定された各々の浮上量の平均値からの偏差を求め、この偏差が一定値(Y)を超えるかどうか判断し、Yesの場合には、当該流体浮上装置に供給する流体供給量を調整する調整弁の開閉速度を増加または減少させる。
この、一定値X,Yの値は、X<Yの範囲で構造物のサイズに応じて適宜選択すればよい。
また、上記偏差が一定値(X、Y)を超えない場合には、調節弁の開閉速度は変更しないで指定開閉速度を維持する。
【0010】
このように、複数の流体浮上装置における浮上量の偏差に基づいて、流体供給量を調節する調節弁の開閉速度を段階的に増加または減少させることによって、構造物の浮上量を正確に制御することができ、構造物に反り、曲りなどの変形を与えないように構造物を傾斜させないで浮上搬送することができる。
図2は、本発明における構造物の浮上量制御方法の制御ブロック図である。
図2において、コンプレッサー(乾燥機付き)から供給される圧縮空気は、エアフィルターにより異物が取り除かれた後、調整弁を介して、複数の流体浮上装置(エアーキャスター)に供給される。
各流体浮上装置には、圧力発信機およびレーザ変位計が設けられており、各流体浮上装置(エアーキャスター)のトーラスバッグの圧力および浮上量を測定することができる。
【0011】
本発明の実施形態における流体浮上装置(エアーキャスター)を用いた構造物の浮上量制御手順を以下に示す。
まず、流体浮上装置(エアーキャスター)と構造物とが接触するまでは、一定の速度で調節弁を開く。
この段階では構造物は浮上しないため前記トーラスバッグの圧力による制御を行うことができる。
一方、流体浮上装置(エアーキャスター)と構造物とが接触した後は、流体の流量制御を下記要領で行う。
まず、流体の流量制御開始時点は、各々の流量調節弁の開度を一定の速度で開く。
次に、複数のレーザ変位計から送られてきた浮上量と平均値との偏差に基づいて、調節弁の開閉速度を調節する。
例えば、浮上量が遅れている流体浮上装置(エアーキャスター)に流体を供給するラインの調節弁の開速度を速くし、逆に浮上量が進んでいる流体浮上装置(エアーキャスター)に流体を供給するラインの調節弁の開速度を遅くする、若しくは、指定速度で閉める。
そして、浮上量が所定の値になった時点で、流量調節弁の開度を固定する。
以上の動作を図2に示す制御盤が自動的に行うことによって、
構造物に反り、曲りなどの変形を与えないように構造物を傾斜させないで浮上搬送することができる構造物の浮上量制御を実現することができる。
【0012】
なお、本実施形態においては、各流体浮上装置にレーザ変位計を設置しているが、流体浮上装置の台数が非常に多い場合には、流体浮上装置の設置エリアを適当数のブロックに分け、各ブロックの代表位置にレーザ変位計を設置して、この代表値に基づいて本発明の構造物の浮上制御を行ってもよい。
図3は、本発明に使用する浮上量測定装置を示す図である。
図3において、センサヘッドから一定の角度で発せられた発信光は、プリズムまたは鏡によって方向転換し、窓を介して測定対象物に衝突し、反射光が反送されてセンサヘッドに戻った距離を計測することによって、対処物の距離を測定することができる。
一般に、流体浮上装置の浮上量は50mm〜150mmの範囲であり、また、流体浮上装置に取り付けた距離計で浮上量を測定するために必要な検出スパンは通常200mm以内であることから、できる限りコンパクトな測定装置とする必要がある。
また、流体浮上装置に取り付ける距離計は、浮上後移動するため、非接触式とする必要があるのでレーザ変位計が適しているが、検出するスパンが200mmの場合の必要基準距離は300mmであるので、通常のレーザ変位計は使用できない。
【0013】
そこで、レーザ変位計の検出距離を確保するためにプリズムまたは鏡を利用し、レーザを屈曲させることで検出スパンを満足する測定距離と測定精度を確保することができる。
レーザ変位計による測定精度は、レーザを反射する流体浮上装置のレール面の状態やレーザが通過する大気状態によって影響されるため、検出精度向上のため次の処置が好ましい。
1)対象物の表面が、例えば、ケレン処理面のような、レーザの反射精度を高くする滑らかな表面であること。
2)対象物の表面が、例えば、光沢のない白色や灰色のようなレーザの反射精度を高める色であること。
3)レーザが通過する大気が、例えば、ダストや湿気のない、レーザの直進性を妨げないこと。
【0014】
【実施例】
本発明における構造物の浮上量制御方法の実施例を以下に示す。
流体浮上装置(エアーキャスター)および浮上量測定装置の実施条件は以下の通りである。
<流体浮上装置>
・エアーキャスター設置台数:5台
・エアー元圧:6kg/cm2
・エアーキャスター内圧:3kg/cm2
・構造物の重量:230ton
<浮上量測定装置>
・浮上量測定方式:可視光レーザ変位計
・屈折方式:プリズム
・基準距離:300mm
・測定範囲:±100mm
・電源:AC100〜240V,約15VA
【0015】
図4は、本発明の実施例を示す図である。
図4の上側の図において、横軸は時間、縦軸は流体浮上装置の変位を示し、図4の下側の図において、横軸は時間、縦軸は調整弁の弁開度示す。
本実施例においては、浮上量が一定の値(X=0.1mm)を超える場合と、浮上量が一定の値(Y=0.5mm)を超える場合の2段階で調整弁の開閉速度を変更し、図4の上側のAの領域がX=0.1mmの範囲内の場合、B、Cの領域がX=0.1mmを超える場合、D、Eの領域がY=0.5mmを超える場合を示している。
【0016】
また、B,C,D,Eそれぞれの領域に対応する調整弁の開度を図4の下側の図に示しており、最初は調整弁の開度を0.3%/minの速度で徐序に開けていき、bの領域ではX=0.1mmを上側に超えたので、調整弁の開閉速度を0%/minとする一方、cの領域ではX=0.1mmを下側に超えたので、調整弁の開閉速度を0.6%/minとした。
また、dの領域ではY=0.5mmを上側に超えたので、調整弁の開閉速度を−0.3%/minとし、eの領域ではY=0.5mmを下側に超えたので、調整弁の開閉速度を0.9%/minとした。
このように、各流体浮上装置の浮上量の平均値との偏差に応じて、各浮上装置に供給する流体の調整弁の開閉速度を調整することによって、浮上量の最大偏差が±2mmの範囲内で構造物の浮上量制御を行うことができた。
【0017】
例えば、本発明を、高炉炉底マンテルの内部に煉瓦などの耐火物をオフラインで艤装したマンテルブロックを基礎上に浮上搬送する場合に適用する場合には、耐火物に変形や応力を発生させないために流体浮上装置(エアーキャスター)の浮上量を管理しながら水平に浮上、下架させる必要があり、本発明を適用することによってマンテルブロックの品質確保が可能となる。
また、複数の流体浮上装置(エアーキャスター)を用いて、高炉炉底マンテルなど底板を持つ構造物を基礎上に搬送する場合は、中央に配置したエアーキャスターに人が近寄れないため浮上確認ができないが、本発明を適用することによって確実な浮上確認と浮上量のコントロールが可能になる。
【0018】
【発明の効果】
本発明によれば、複数の流体浮上装置を用いて構造物を浮上させて搬送する際に、各流体浮上装置の浮上量の偏差に基づいて、各流体浮上装置に供給する流体量を調整することにより、構造物に反り、曲りなどの変形を与えないように構造物を傾斜させないで浮上搬送することができる構造物の浮上量制御方法を提供することができ、産業上有用な著しい効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における構造物の浮上量制御方法のフロー図である。
【図2】本発明における構造物の浮上量制御方法の制御ブロック図である。
【図3】本発明に使用する浮上量測定装置を示す図である。
【図4】本発明の実施例を示す図である。
Claims (3)
- 複数の流体浮上装置を用いて構造物を浮上させて搬送するときの構造物の浮上量制御方法であって、
前記各流体浮上装置の浮上量を測定する浮上量測定工程と、
該測定された各流体浮上装置の浮上量の平均値からの偏差に基づいて、各流体浮上装置に供給する流体供給量を調整する流体供給量補正工程とを有し、
該流体供給量補正工程は、前記測定された各々の浮上量の平均値からの偏差
が一定値を超えるときに、前記各流体浮上装置に供給する流体供給量を調整する調整弁の開閉速度を増加または減少させることを特徴とする構造物の浮上量制御方法。 - 前記流体供給量補正工程は、前記測定された浮上量の平均値からの偏差量に応じて、前記流体供給量を調整する調整弁の開閉速度を複数の段階に増加または減少させることを特徴とする請求項1に記載の構造物の浮上量制御方法。
- 前記浮上量測定工程は、前記複数の浮上搬送装置各々に設置されたプリズムまたは鏡を有するレーザ変位計を用いることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の構造物の浮上量制御方法。
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