JP2004216222A - ジョークラッシャの歯板 - Google Patents
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Abstract
【課題】固定歯板と可動歯板と少なくとも一方の歯部に耐摩耗性材料を合理的に付加することで被処理物を確実に捉えて破砕機能を高めかつ寿命の延長を図ったジョークラッシャの歯板を提供する。
【解決手段】ジョークラッシャの歯板において、破砕面の上下方向に形成される少なくとも固定歯板10における歯部13の山に、上下方向の中間部所要区間L’で歯筋に沿って断続的に適宜長さで硬質耐摩耗材(硬化肉盛層15)を一体に配置されて、破砕時における被処理物の滑りを防止する。
【選択図】 図2
【解決手段】ジョークラッシャの歯板において、破砕面の上下方向に形成される少なくとも固定歯板10における歯部13の山に、上下方向の中間部所要区間L’で歯筋に沿って断続的に適宜長さで硬質耐摩耗材(硬化肉盛層15)を一体に配置されて、破砕時における被処理物の滑りを防止する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、破砕時における処理物の滑りを抑止して破砕効率の向上と、歯板における山部の摩耗を抑制する機能を備え寿命の延長とを図ったジョークラッシャの歯板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、岩石やコンクリート塊などを破砕するのに用いられているジョークラッシャは、上部を偏芯回転軸によって回転自在に支持されて下端部の背面側でトグルプレートの一端によって支持され揺動するようにされるスイングジョーの前面に取付く可動歯板と、この可動歯板に対向するようにして上方を開いた状態で機体に固定される固定歯板とで断面V状の破砕空間が形成されている。被破砕物(岩石・コンクリート塊など)は、その破砕空間に上方から投入されてスイングジョーの揺動によって可動歯板と固定歯板とで挟み付けるようにして、上方から下方に至る間で次第に細かく破砕して下方に排出される構造になっている。
【0003】
前記可動歯板は、被処理物破砕の過程で固定歯板に対して斜め楕円形状の軌跡を描いて作動する。その可動歯板は下方に行くほど長楕円となり、楕円の短軸は短くなり長軸は長くなる運動をする。このような挙動を示す可動歯板と対峙する固定歯板は、破砕空間において上方(歯板中央部)で大きく砕かれた被破砕物が順次下方に落ちていくに従って細かく破砕されるので、歯板下部においてその処理物と接触する頻度も高くなる。また、可動歯板下部の軌跡は前述のように斜め長楕円の軌跡を取ることから、岩塊を挟んだとき固定歯板には法線方向と水平方向の力が作用することになる。この水平方向の力が固定歯板と岩石との滑りを生じさせ摩耗を促進させる。
【0004】
このように可動歯板は斜め方向に揺動するため、破砕空間を降下してくる処理物を受け止めて固定歯板に擦り付けるように作動して破砕が行われる。そのために、固定歯板の方が可動歯板よりも処理物との滑りが激しくて、摩耗が早くなる。このようなことから、固定歯板100における歯部101は出口部(歯板の端部102)の摩耗が早くなって、図5に例示されるように、原形(二点鎖線で表わされている)のものが、中央部103に較べて端部102の摩耗が大きくなる偏摩耗が生じる。このようなことから、この固定歯板100は上下向きを変えて使用するようにされているが、両端部102の摩耗が進むと中央部103を使い切る前に交換している。
【0005】
また、歯部の摩耗が進行すると山の頂部が丸くなることから扁平に破砕された砕石が多くなって破砕品質が低下する。すなわち、岩石やコンクリート塊を破砕して生産される砕石は、粒形の立方形体のものが求められており、扁平な石では製品として好ましくない。
【0006】
そこで、寿命の延長を図ることを主眼とした構成の歯板については、特許文献1または特許文献2によって、また砕製品の品質向上を図るための構成の歯板について特許文献3または特許文献4によって既に開示されたものがある。
【0007】
【特許文献1】
特公昭55−16703号公報
【特許文献2】
特公昭57−23542号公報
【特許文献3】
特開平6−79187号公報
【特許文献4】
特開平9−38511号公報
【0008】
前記特許文献1によれば、固定歯板の偏摩耗を防止し寿命の延長を図る対策として、歯底の厚みを摩耗の早い上下両端部で厚くして山の断面積を谷の断面積より大きくして山部の摩耗代を増やすことで寿命を延長させる。そして、歯板の谷を小さくすることで谷の中を滑る処理物が減り歯板の山の偏摩耗を防止する、という構成のものが開示されている。また、特許文献2によれば、歯形の山の部分に高Cr鋳鉄のブロックを埋め込んで歯の耐摩耗性向上を図り破砕効率を維持させるものが開示されている。
【0009】
また、前記特許文献3によれば、砕製品の品質向上を図るために、可動歯板と固定歯板の双方またはいずれか一方の有効肉厚部に、母材より耐摩耗性の低い材料からなる有孔プレートが埋設された構成にしてその有孔プレートが優先的に摩耗して凹凸が形成され、被処理物と歯板との接触が点状になり、破砕効率が良好になる旨記載されている。さらに、前記特許文献4によれば、可動歯板と固定歯板との歯の頂部(凸部分)に超硬合金からなる圧砕チップを埋め込まれた構成にすることで、被処理物にクラックを発生させて破砕効率を向上させることが記載されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特許文献1によって知られる先行技術では、摩耗の激しい破砕空間の出口部となる個所(上下両端部)ほど肉厚を大きくして(肉厚を厚くして)、谷の底部から山の峰までの高さが長手方向中央部よりも低く、山の断面積が谷の断面積よりも大きい構造とされ、摩耗時間を延ばすことと偏摩耗を防ぐことが記載されているが、出口部の山形状がなだらかにされていることと、山高さが低くされていることから2つの課題がある。その一つは、山形状が急峻である方が破砕効率も高いが、初期からなだらかな形状にされているので、山頂部の摩耗が進行するに従い早期に破砕効率も低下すること。もう一つは、山谷差が存在することによって破砕効率が維持されるが、初期から山高さが低くされているので山谷差がなくなるまでの時間、すなわち実質的に有効に破砕作業が行える時間も必然的に短くなる。すなわち、このような構成では摩耗の進行とともに山部が摩滅すると、大きく砕かれた処理物が出口部に達して可動歯板との挟圧でさらに細かく破砕する破砕のメカニズムを充分に発揮することができない。言換えると最も重要な破砕の効果を低減させることになる。その結果、固定歯板の耐久性が高まる反面、細かく破砕する機能が低下して作業能率を高められないことになる、という問題点がある。
【0011】
また、前記特許文献2によれば、山部に埋め込まれる高Cr鋳鉄は硬度が高く摩耗面が平滑なため処理物の滑りが生じやすく、被処理物に玉石が混在する場合には、両方の歯板で被処理物(玉石)を把持されず、跳ね上げてしまい破砕の効率が著しく低下する。また、なだらかな山形状では摩耗が進行するため、破砕効率が低下しやすく、通常の岩石でも扁平破砕が生じ易くなるので、扁平に破砕された石が多くなると破砕品の品質が低下する。このほかに、使用済みとなった処分品は高Mn鋼(低合金鋼)と高Cr鋳鉄が合体したスクラップとなるので、再生する処理が困難である、などの問題がある。
【0012】
さらに、前記特許文献3による歯板では、破砕面に優先的に摩耗させる有孔プレートを配して、その有孔プレートと母材との硬度差を利用することで表面に凹凸を形成させて破砕効率を高めようとするもので、破砕面の全面的に凹凸を形成できれば処理物の扁平破砕や滑りの防止に役立て得ることになるが、有孔プレート(軟鋼からなる耐摩耗性の低い材料)が早期に摩滅するため、それに伴って母材も摩耗が進行し、全体として早期に摩耗が進行して歯板の寿命を長めることは困難であるという問題がある。また、前記特許文献4による歯板では、歯部に植設された超硬チップ(圧砕チップ)を点在させることで被処理物に対する挟圧力を局部的に付加できることから扁平破砕を阻止できるが、その超硬チップに集中的な負荷が作用するので破損し易い。また、超硬チップの周りの母材が摩滅するとその保持能力が失われて、超硬チップが脱落するという問題がある。これらいずれの先行技術でも、破砕時における玉石のような滑りを起こしやすい被処理物を効率よく破砕することに関してはなんらの対策も見出せていない。
【0013】
本発明は、このような問題点を解消するためになされたもので、固定歯板と可動歯板と少なくとも一方の歯部に耐摩耗性材料を合理的に付加することで被処理物を確実に捉えて破砕機能を高めかつ寿命の延長を図ったジョークラッシャの歯板を提供することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段および作用・効果】
前述された目的を達成するために、本発明によるジョークラッシャの歯板は、ジョークラッシャの歯板において、破砕面の上下方向に形成される少なくとも固定歯板における歯部の山に、上下方向の中間部分で歯筋に沿って断続的に適宜長さで硬質耐摩耗材を一体に配置されていることを特徴とするものである(第1発明)。
【0015】
本発明によれば、相対向して被処理物を挟み付けて圧壊する可動歯板と固定歯板との両破砕面の少なくとも固定歯板の上下方向に形成される歯部に、その中間部分で歯筋に沿って断続的に硬質耐摩耗材を配置することにより、被処理物が最初に挟み付けられる個所にて接触抵抗が大きくなる構成とされるので、玉石のように表面が丸くて平滑な被処理物であっても滑ることなく捕捉されて破砕できるので、以後の破砕操作に無理なく移行させることができ、破砕効率を向上させ得る。なお、可動歯板の歯部にも固定歯板と同様の断続的な耐摩耗材を配置するようにすれば、より効果的である。
【0016】
前記発明において、固定歯板は破砕面が上下方向に円弧状にされているのがよい(第2発明)。こうすると、固定歯板の破砕面が上下方向で平面状の歯板と比較して、歯板中央より下方の範囲では固定歯板と可動歯板との成す角度が小さくなり、被処理物の滑りが少なくなって摩耗を抑制することができる。ただし、固定歯板の中央部の上方範囲では逆に固定歯板と可動歯板の成す角度が大きくなり、被処理物が滑って跳ね上がり易くなるため、硬質耐摩耗材を断続的に配置しておくことによって、跳ね上がりを抑制することができる。
【0017】
前記発明において、固定歯板の歯部は、上下方向に前記断続的に硬質耐摩耗材を配置した個所よりも端部側での山の高さを高くするとともに、その山を高くした範囲で歯部の少なくとも峰部を含む部分に硬質耐摩耗材を一体に配置されるのがよい(第3発明)。こうすると、特に摩耗の早い歯板端部側で山部の摩耗代を多くすることができ、さらに硬質耐摩耗材の配置により山部の摩耗進行が抑制されて、長時間破砕効率のよい山形状を維持することができる。したがって、歯板中央部で被処理物の滑りを抑制して岩を効率的に粗破砕し、次いで歯板端部側でも良好な山形状で破砕ができるため、扁平破砕が防止でき、良質の破砕製品が生産できる。
【0018】
前記第1発明,第2発明および第3発明において、前記歯部に配置される硬質耐摩耗材は、硬質粒子分散材による硬化肉盛層で覆うようにされるのがよい(第4発明)。また、前記歯部に配置される硬質耐摩耗材は、歯筋に沿って形成される溝に硬質粒子分散材を含む耐摩耗硬質材を埋設して、その一部が峰部分を形成するようにされるのがよい(第5発明)。こうすると、特に断続的に硬質耐摩耗材を配置される個所では、破砕に伴う摩耗に際してその耐摩耗材に混在させた硬質粒子が露出して処理物との接触抵抗が維持され、被処理物の滑りを阻止する機能が維持できる。併せて山の摩耗を抑制し、谷部の摩耗の促進により山谷の差が維持されて破砕効率の向上を図ることができる。
【0019】
前記第4発明において、硬化肉盛層を溶着する歯部は、その山の峰から裾部にかけての肉盛層形成部端までの部分で表面を通常表面からやや彫り込んだ形状にして、その彫り込まれた表面に硬質粒子分散材を溶着して硬化肉盛されているのがよい(第6発明)。このようにすることで、硬質粒子分散材の欠損を防止する効果がある。また、溶接肉盛操作の始点を容易に決定できるので、自動肉盛作業が円滑に実施でき、断続的に形成するにも無理なく肉盛加工が行えるという利点がある。なお、前記硬化肉盛層形成のための彫り込み個所は、歯板が鋳造されるときに同時成形することで、特別な加工を施すことがなく、したがって、コストアップを招くことはない。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、本発明によるジョークラッシャの歯板の具体的な実施の形態につき、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1には本発明の歯板が装着使用されるジョークラッシャの断面概要図が示されている。図2には本発明にかかる固定歯板の一実施形態を表わす縦断面図(a)とそのa−a視断面図(b)およびb−b視断面図(c)が、図3には歯部の摩耗態様を表わす断面図が、それぞれ示されている。
【0022】
この実施形態の固定歯板が装着使用されるジョークラッシャ1は、図1に示されるように、所要の間隔で配置される左右一対の機体フレーム2(縦断面図で示されているので片側のみ表わされている)上部で軸支されて図示されない駆動機により回転駆動される偏芯回転軸3に、スイングジョー4の上部が支持されている。このスイングジョー4の下部背面側はトグルプレート5の一端によって支持されている。そのトグルプレート5は、スイングジョー4のほぼ幅方向全体に接続されて他端を機体フレーム2に設けられるブロック6に当接支持されている。前記偏芯回転軸3の両端部にはフライホイール7が取付けられて回転力を維持させるようになっており、その偏芯回転軸3の回転でスイングジョー4が揺動するようにされており、このスイングジョー4の前面に可動歯板8が取付けられている。
【0023】
前記スイングジョー4は、前述のように偏芯回転軸3により上部を支持されて、下部を背面部でトグルプレート5の一端と連結されて前面に取付く可動歯板8が、その上部を後方に傾けて全体が傾斜する状態に配置されている。このような可動歯板8(スイングジョー)に対向するようにして固定歯板10が背後を機体フレーム2に取付く取付支持部9に受支されて着脱可能に装着され、この固定歯板10と前記可動歯板8とによって両者の前に断面V字状の破砕空間(破砕室30)が形成されている。なお、前記固定歯板10は、その幅方向(図面上の紙面に直交する方向)の両側部でチークプレート31と称される楔形状にされたプレートによって取付支持部9に押付けられて固定されるとともに、前記破砕室30の側部を囲うようにされている。
【0024】
本実施形態の固定歯板10は、図2によって示されるように、破砕操作が行われる表面(本発明の破砕面)を上下方向に中央部11が上下両端部12,12より高くなる円弧状にされるとともに、その幅方向に所要のピッチで多数条の歯部13が上下方向に形成されている。また、その歯部13は、中央部11から上下両端部12,12に至るまでの中間位置より端までの区間、言換えると摩耗の激しい所要区間Lにおける山の高さを、中央部11における山の高さよりも高い寸法に形成されている。なお、この固定歯板10は、従来品と同様に高マンガン鋳鋼によって形成されている。
【0025】
一方、可動歯板8は、その破砕面をほぼ平坦にして前記固定歯板10における幅方向に設けられた多数条の歯部13の間に形成される谷部14に対向するようにして上下方向に多数条の歯部8’(図1参照)が設けられている。
【0026】
前記固定歯板10における歯部8には、図2(a)によって示されるように、両端部の山を高く形成された区間L以外の範囲、言換えると中央部の区間L’において所要の間隔で断続的に山の峰部分13aに、図2(b)で示されるように硬質粒子分散材を溶接肉盛して硬化肉盛層15が設けられている。この硬化肉盛層15の肉盛部は、予め峰部分13aから少し両側に下がった部分までを溶接肉盛が容易なように本来の歯部形成面から少し彫り込んだ状態に形成され、この彫り込まれた部分13bに硬質粒子分散材を溶接肉盛して形成されている。
【0027】
前記断続的に硬化肉盛層15を配置される範囲では、その硬化肉盛層15の配置間隔を例えば硬化肉盛層形成長さ約90mmに対して肉盛されない部分16の長さを35mm程度で複数個所に設けられている。なお、前記数値については限定されるものではない。
【0028】
また、両端部12の山の高さを高くした部分(区間L)においては、図2(c)に示されるように、山の裾部13cから峰部分13aまで前記硬化肉盛層15の形成部と同様に通常の歯部表面より少し彫り込んだ状態に形成され、この彫り込まれた部分13b’に硬質粒子分散材を溶接肉盛して硬化肉盛層15’が設けられている。なお、固定歯板10は鋳造されるので、その鋳造時に予め前記各硬化肉盛層形成のための彫り込み部分13b,13b’を成形しておけば、後加工を必要とせずに、溶接肉盛作業の開始端位置の設定が容易となり円滑に肉盛を実施できる。特に自動肉盛作業を行わせるに有効である。
【0029】
このように構成する固定歯板10を用いて破砕操作を行えば、クラッシャにおける破砕室30に被処理物を投入して破砕操作を行わせる際に、玉石のような丸くて表面が平滑な石が投入されても、その破砕初期段階である可動歯板8と固定歯板10との両歯板の中央部によって挟圧されるとき、可動歯板8(スイングジョー)の揺動による斜め上向きの長楕円運動で、挟まれた玉石が固定歯板10の破砕面に沿って滑り転がろうとするのを、その固定歯板10の歯部13に断続的に複数個所に配置される硬化肉盛層15によって阻止され、挟圧されて破砕されることになる。すなわち、固定歯板10の歯部13に設けられている硬化肉盛層15は、その表面が粗面で、かつ断続的に配置されているので摩擦抵抗が大きくて、玉石といえどもそれに加わる挟圧時の水平分力に打勝って滑りが生じるのを阻止されて一挙に破壊され、効率よく破砕作業を継続することができる。
【0030】
また、破砕作業の稼働時間が長時間経過すれば、当該歯部においても摩耗が進行するが、その峰部分13aに配置される硬化肉盛層15は、摩耗とともに内在する硬質粒子の一部が表面に露出して粗面を維持するので、挟み付けた処理物に滑りを起させず破砕機能を維持することができる。なお、この歯板中央部11では端部12において生じるような処理物との摩擦の頻度が低いので、当該部分の歯部13に設けられる硬化肉盛層15の摩耗は端部12に較べてごく僅かである。したがって、破砕機能が長期間維持できる。
【0031】
このようにして、破砕室30内の上部で大きく砕かれた処理物は、順次落下していくにしたがい細かく砕かれる過程で、可動歯板8の斜め方向の揺動によって処理物を受け止める姿勢にある固定歯板10の歯部13の下部では中央部11よりも激しく摩耗が進行する。しかしながら、この摩耗の激しい所要区間Lの歯部13には山の峰部分13aから山裾13cにかけて硬化肉盛層15’が配され、かつ山の高さもより高くされているので、図3に示されるように、峰部分13aが摩滅しても山裾13c部分には硬化肉盛層15’が残るので、一挙に谷部14まで摩滅するのを防止して、図中円で囲まれる部分Pで表わされるように、その硬化肉盛層上端部15aと可動歯板8の歯部8’とによって処理物を挟み付ける効力を維持できる。言換えると、破砕効率が維持されることになる。当然摩耗寿命が延長されて耐用期間を長めることができる。
【0032】
図4には歯部に配置される硬質耐摩耗材の他の実施形態の横断面図が示されている。
【0033】
前記固定歯板10において中央部11の所要区間L’と両端部12の摩耗が激しい区間Lとにそれぞれ配置される硬質耐摩耗材としては、図4の例示されるように硬質粒子分散材で所要形状寸法に成形された硬質材17を歯部13の歯筋に沿って埋設して用いるようにすることができる。
【0034】
この実施形態では、中央部11の所要区間L’(図2(a)参照)に前記実施形態のものと同様の寸法割合で歯筋に沿って所要の深さの溝部18を設け、この溝部18にそれぞれ予め成形された硬質材17を嵌合ろう付して接合される。なお、溝部18は底部から上方に向って広がりを持つテーパ溝にされ、その溝部18に埋設される硬質材17は、溝部15のテーパに合致する断面形状にして、埋設後山の峰部となる部分が突曲面に形成されて露出するように設けられている。また、摩耗の激しい区間Lにおいても前記同様の構造で硬質材17が歯部13の歯筋に沿って埋設される。なお、この摩耗の激しい区間Lに埋設される硬質材17は、二点鎖線で表わすように、その溝部18の深さを山高さの中央部に配置するものよりも深くなるようにしておくのが寿命の延長を図る上で好ましい。
【0035】
この実施形態の固定歯板では、大きく破砕する中央部において歯部13の峰部分13aに断続して配置される硬質材17の露出部が破砕に伴う摩耗によって、その内部に分散混在する硬質粒子の露出によって粗面になって断続配置されるので、被処理物を挟み付けたときに当接する岩石にその硬質粒の露出部分が食い込むように作用する。その結果、被処理物の表面が平滑な石であっても滑ろうとするのを阻止する働きをなし、破砕効率を高めることができるのである。
【0036】
また、固定歯板10の歯部13における摩耗の激しい区間Lに埋設される硬質材17は、山の峰部分13aの摩耗進行を抑制しつつ、その両側の部分が摩滅して谷部の空間が大きくなるため、この空間内での処理物が動き易くなり、谷部の摩耗が進行される。その結果、摩耗が進行しても山谷の差が長時間維持されることになり、端部12での破砕効率が維持できるのである。なお、この実施形態では、硬質材が点状に埋設されているものと異なり、硬質材17が歯筋に沿って細長く埋設されるのでその側部が摩滅しても脱落し難く、長期使用に供することができる。
【0037】
上述の実施形態においては、固定歯板10にのみ中央部の所要区間(最初の岩塊を破砕する箇所)に断続的に硬質耐摩耗材を配置するものについて記載したが、必要に応じて可動歯板側の歯部にも断続的に硬質耐摩耗材を前記実施形態と同様にして配置することができる。このようにすれば、より一層の破砕効率を高めることができる。また、固定歯板については、破砕面を前記実施形態のような突円弧面に限定されるものではなく、平面的な形状にされたものに本発明を適用して同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の歯板が使用されるジョークラッシャの断面概要図である。
【図2】図2は、本発明にかかる固定歯板の一実施形態を表わす縦断面図(a)とそのa−a視断面図(b)およびb−b視断面図(c)である。
【図3】図3は、歯部の摩耗態様を表わす断面図である。
【図4】図4は、歯部に配置される硬質耐摩耗材の他の実施形態の断面図である。
【図5】図5は、従来の固定歯板の摩耗態様を表わす図である。
【符号の説明】
1 ジョークラッシャ
4 スイングジョー
8 可動歯板
8’ 可動歯板の歯部
8a,13a 歯部の峰部分
10 固定歯板
11 中央部
12 端部
13 固定歯板の歯部
13a 峰部分
14 谷部
15,15’ 硬化肉盛層
16 肉盛されない部分
17 硬質材
18 溝部
【発明の属する技術分野】
本発明は、破砕時における処理物の滑りを抑止して破砕効率の向上と、歯板における山部の摩耗を抑制する機能を備え寿命の延長とを図ったジョークラッシャの歯板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、岩石やコンクリート塊などを破砕するのに用いられているジョークラッシャは、上部を偏芯回転軸によって回転自在に支持されて下端部の背面側でトグルプレートの一端によって支持され揺動するようにされるスイングジョーの前面に取付く可動歯板と、この可動歯板に対向するようにして上方を開いた状態で機体に固定される固定歯板とで断面V状の破砕空間が形成されている。被破砕物(岩石・コンクリート塊など)は、その破砕空間に上方から投入されてスイングジョーの揺動によって可動歯板と固定歯板とで挟み付けるようにして、上方から下方に至る間で次第に細かく破砕して下方に排出される構造になっている。
【0003】
前記可動歯板は、被処理物破砕の過程で固定歯板に対して斜め楕円形状の軌跡を描いて作動する。その可動歯板は下方に行くほど長楕円となり、楕円の短軸は短くなり長軸は長くなる運動をする。このような挙動を示す可動歯板と対峙する固定歯板は、破砕空間において上方(歯板中央部)で大きく砕かれた被破砕物が順次下方に落ちていくに従って細かく破砕されるので、歯板下部においてその処理物と接触する頻度も高くなる。また、可動歯板下部の軌跡は前述のように斜め長楕円の軌跡を取ることから、岩塊を挟んだとき固定歯板には法線方向と水平方向の力が作用することになる。この水平方向の力が固定歯板と岩石との滑りを生じさせ摩耗を促進させる。
【0004】
このように可動歯板は斜め方向に揺動するため、破砕空間を降下してくる処理物を受け止めて固定歯板に擦り付けるように作動して破砕が行われる。そのために、固定歯板の方が可動歯板よりも処理物との滑りが激しくて、摩耗が早くなる。このようなことから、固定歯板100における歯部101は出口部(歯板の端部102)の摩耗が早くなって、図5に例示されるように、原形(二点鎖線で表わされている)のものが、中央部103に較べて端部102の摩耗が大きくなる偏摩耗が生じる。このようなことから、この固定歯板100は上下向きを変えて使用するようにされているが、両端部102の摩耗が進むと中央部103を使い切る前に交換している。
【0005】
また、歯部の摩耗が進行すると山の頂部が丸くなることから扁平に破砕された砕石が多くなって破砕品質が低下する。すなわち、岩石やコンクリート塊を破砕して生産される砕石は、粒形の立方形体のものが求められており、扁平な石では製品として好ましくない。
【0006】
そこで、寿命の延長を図ることを主眼とした構成の歯板については、特許文献1または特許文献2によって、また砕製品の品質向上を図るための構成の歯板について特許文献3または特許文献4によって既に開示されたものがある。
【0007】
【特許文献1】
特公昭55−16703号公報
【特許文献2】
特公昭57−23542号公報
【特許文献3】
特開平6−79187号公報
【特許文献4】
特開平9−38511号公報
【0008】
前記特許文献1によれば、固定歯板の偏摩耗を防止し寿命の延長を図る対策として、歯底の厚みを摩耗の早い上下両端部で厚くして山の断面積を谷の断面積より大きくして山部の摩耗代を増やすことで寿命を延長させる。そして、歯板の谷を小さくすることで谷の中を滑る処理物が減り歯板の山の偏摩耗を防止する、という構成のものが開示されている。また、特許文献2によれば、歯形の山の部分に高Cr鋳鉄のブロックを埋め込んで歯の耐摩耗性向上を図り破砕効率を維持させるものが開示されている。
【0009】
また、前記特許文献3によれば、砕製品の品質向上を図るために、可動歯板と固定歯板の双方またはいずれか一方の有効肉厚部に、母材より耐摩耗性の低い材料からなる有孔プレートが埋設された構成にしてその有孔プレートが優先的に摩耗して凹凸が形成され、被処理物と歯板との接触が点状になり、破砕効率が良好になる旨記載されている。さらに、前記特許文献4によれば、可動歯板と固定歯板との歯の頂部(凸部分)に超硬合金からなる圧砕チップを埋め込まれた構成にすることで、被処理物にクラックを発生させて破砕効率を向上させることが記載されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特許文献1によって知られる先行技術では、摩耗の激しい破砕空間の出口部となる個所(上下両端部)ほど肉厚を大きくして(肉厚を厚くして)、谷の底部から山の峰までの高さが長手方向中央部よりも低く、山の断面積が谷の断面積よりも大きい構造とされ、摩耗時間を延ばすことと偏摩耗を防ぐことが記載されているが、出口部の山形状がなだらかにされていることと、山高さが低くされていることから2つの課題がある。その一つは、山形状が急峻である方が破砕効率も高いが、初期からなだらかな形状にされているので、山頂部の摩耗が進行するに従い早期に破砕効率も低下すること。もう一つは、山谷差が存在することによって破砕効率が維持されるが、初期から山高さが低くされているので山谷差がなくなるまでの時間、すなわち実質的に有効に破砕作業が行える時間も必然的に短くなる。すなわち、このような構成では摩耗の進行とともに山部が摩滅すると、大きく砕かれた処理物が出口部に達して可動歯板との挟圧でさらに細かく破砕する破砕のメカニズムを充分に発揮することができない。言換えると最も重要な破砕の効果を低減させることになる。その結果、固定歯板の耐久性が高まる反面、細かく破砕する機能が低下して作業能率を高められないことになる、という問題点がある。
【0011】
また、前記特許文献2によれば、山部に埋め込まれる高Cr鋳鉄は硬度が高く摩耗面が平滑なため処理物の滑りが生じやすく、被処理物に玉石が混在する場合には、両方の歯板で被処理物(玉石)を把持されず、跳ね上げてしまい破砕の効率が著しく低下する。また、なだらかな山形状では摩耗が進行するため、破砕効率が低下しやすく、通常の岩石でも扁平破砕が生じ易くなるので、扁平に破砕された石が多くなると破砕品の品質が低下する。このほかに、使用済みとなった処分品は高Mn鋼(低合金鋼)と高Cr鋳鉄が合体したスクラップとなるので、再生する処理が困難である、などの問題がある。
【0012】
さらに、前記特許文献3による歯板では、破砕面に優先的に摩耗させる有孔プレートを配して、その有孔プレートと母材との硬度差を利用することで表面に凹凸を形成させて破砕効率を高めようとするもので、破砕面の全面的に凹凸を形成できれば処理物の扁平破砕や滑りの防止に役立て得ることになるが、有孔プレート(軟鋼からなる耐摩耗性の低い材料)が早期に摩滅するため、それに伴って母材も摩耗が進行し、全体として早期に摩耗が進行して歯板の寿命を長めることは困難であるという問題がある。また、前記特許文献4による歯板では、歯部に植設された超硬チップ(圧砕チップ)を点在させることで被処理物に対する挟圧力を局部的に付加できることから扁平破砕を阻止できるが、その超硬チップに集中的な負荷が作用するので破損し易い。また、超硬チップの周りの母材が摩滅するとその保持能力が失われて、超硬チップが脱落するという問題がある。これらいずれの先行技術でも、破砕時における玉石のような滑りを起こしやすい被処理物を効率よく破砕することに関してはなんらの対策も見出せていない。
【0013】
本発明は、このような問題点を解消するためになされたもので、固定歯板と可動歯板と少なくとも一方の歯部に耐摩耗性材料を合理的に付加することで被処理物を確実に捉えて破砕機能を高めかつ寿命の延長を図ったジョークラッシャの歯板を提供することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段および作用・効果】
前述された目的を達成するために、本発明によるジョークラッシャの歯板は、ジョークラッシャの歯板において、破砕面の上下方向に形成される少なくとも固定歯板における歯部の山に、上下方向の中間部分で歯筋に沿って断続的に適宜長さで硬質耐摩耗材を一体に配置されていることを特徴とするものである(第1発明)。
【0015】
本発明によれば、相対向して被処理物を挟み付けて圧壊する可動歯板と固定歯板との両破砕面の少なくとも固定歯板の上下方向に形成される歯部に、その中間部分で歯筋に沿って断続的に硬質耐摩耗材を配置することにより、被処理物が最初に挟み付けられる個所にて接触抵抗が大きくなる構成とされるので、玉石のように表面が丸くて平滑な被処理物であっても滑ることなく捕捉されて破砕できるので、以後の破砕操作に無理なく移行させることができ、破砕効率を向上させ得る。なお、可動歯板の歯部にも固定歯板と同様の断続的な耐摩耗材を配置するようにすれば、より効果的である。
【0016】
前記発明において、固定歯板は破砕面が上下方向に円弧状にされているのがよい(第2発明)。こうすると、固定歯板の破砕面が上下方向で平面状の歯板と比較して、歯板中央より下方の範囲では固定歯板と可動歯板との成す角度が小さくなり、被処理物の滑りが少なくなって摩耗を抑制することができる。ただし、固定歯板の中央部の上方範囲では逆に固定歯板と可動歯板の成す角度が大きくなり、被処理物が滑って跳ね上がり易くなるため、硬質耐摩耗材を断続的に配置しておくことによって、跳ね上がりを抑制することができる。
【0017】
前記発明において、固定歯板の歯部は、上下方向に前記断続的に硬質耐摩耗材を配置した個所よりも端部側での山の高さを高くするとともに、その山を高くした範囲で歯部の少なくとも峰部を含む部分に硬質耐摩耗材を一体に配置されるのがよい(第3発明)。こうすると、特に摩耗の早い歯板端部側で山部の摩耗代を多くすることができ、さらに硬質耐摩耗材の配置により山部の摩耗進行が抑制されて、長時間破砕効率のよい山形状を維持することができる。したがって、歯板中央部で被処理物の滑りを抑制して岩を効率的に粗破砕し、次いで歯板端部側でも良好な山形状で破砕ができるため、扁平破砕が防止でき、良質の破砕製品が生産できる。
【0018】
前記第1発明,第2発明および第3発明において、前記歯部に配置される硬質耐摩耗材は、硬質粒子分散材による硬化肉盛層で覆うようにされるのがよい(第4発明)。また、前記歯部に配置される硬質耐摩耗材は、歯筋に沿って形成される溝に硬質粒子分散材を含む耐摩耗硬質材を埋設して、その一部が峰部分を形成するようにされるのがよい(第5発明)。こうすると、特に断続的に硬質耐摩耗材を配置される個所では、破砕に伴う摩耗に際してその耐摩耗材に混在させた硬質粒子が露出して処理物との接触抵抗が維持され、被処理物の滑りを阻止する機能が維持できる。併せて山の摩耗を抑制し、谷部の摩耗の促進により山谷の差が維持されて破砕効率の向上を図ることができる。
【0019】
前記第4発明において、硬化肉盛層を溶着する歯部は、その山の峰から裾部にかけての肉盛層形成部端までの部分で表面を通常表面からやや彫り込んだ形状にして、その彫り込まれた表面に硬質粒子分散材を溶着して硬化肉盛されているのがよい(第6発明)。このようにすることで、硬質粒子分散材の欠損を防止する効果がある。また、溶接肉盛操作の始点を容易に決定できるので、自動肉盛作業が円滑に実施でき、断続的に形成するにも無理なく肉盛加工が行えるという利点がある。なお、前記硬化肉盛層形成のための彫り込み個所は、歯板が鋳造されるときに同時成形することで、特別な加工を施すことがなく、したがって、コストアップを招くことはない。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、本発明によるジョークラッシャの歯板の具体的な実施の形態につき、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1には本発明の歯板が装着使用されるジョークラッシャの断面概要図が示されている。図2には本発明にかかる固定歯板の一実施形態を表わす縦断面図(a)とそのa−a視断面図(b)およびb−b視断面図(c)が、図3には歯部の摩耗態様を表わす断面図が、それぞれ示されている。
【0022】
この実施形態の固定歯板が装着使用されるジョークラッシャ1は、図1に示されるように、所要の間隔で配置される左右一対の機体フレーム2(縦断面図で示されているので片側のみ表わされている)上部で軸支されて図示されない駆動機により回転駆動される偏芯回転軸3に、スイングジョー4の上部が支持されている。このスイングジョー4の下部背面側はトグルプレート5の一端によって支持されている。そのトグルプレート5は、スイングジョー4のほぼ幅方向全体に接続されて他端を機体フレーム2に設けられるブロック6に当接支持されている。前記偏芯回転軸3の両端部にはフライホイール7が取付けられて回転力を維持させるようになっており、その偏芯回転軸3の回転でスイングジョー4が揺動するようにされており、このスイングジョー4の前面に可動歯板8が取付けられている。
【0023】
前記スイングジョー4は、前述のように偏芯回転軸3により上部を支持されて、下部を背面部でトグルプレート5の一端と連結されて前面に取付く可動歯板8が、その上部を後方に傾けて全体が傾斜する状態に配置されている。このような可動歯板8(スイングジョー)に対向するようにして固定歯板10が背後を機体フレーム2に取付く取付支持部9に受支されて着脱可能に装着され、この固定歯板10と前記可動歯板8とによって両者の前に断面V字状の破砕空間(破砕室30)が形成されている。なお、前記固定歯板10は、その幅方向(図面上の紙面に直交する方向)の両側部でチークプレート31と称される楔形状にされたプレートによって取付支持部9に押付けられて固定されるとともに、前記破砕室30の側部を囲うようにされている。
【0024】
本実施形態の固定歯板10は、図2によって示されるように、破砕操作が行われる表面(本発明の破砕面)を上下方向に中央部11が上下両端部12,12より高くなる円弧状にされるとともに、その幅方向に所要のピッチで多数条の歯部13が上下方向に形成されている。また、その歯部13は、中央部11から上下両端部12,12に至るまでの中間位置より端までの区間、言換えると摩耗の激しい所要区間Lにおける山の高さを、中央部11における山の高さよりも高い寸法に形成されている。なお、この固定歯板10は、従来品と同様に高マンガン鋳鋼によって形成されている。
【0025】
一方、可動歯板8は、その破砕面をほぼ平坦にして前記固定歯板10における幅方向に設けられた多数条の歯部13の間に形成される谷部14に対向するようにして上下方向に多数条の歯部8’(図1参照)が設けられている。
【0026】
前記固定歯板10における歯部8には、図2(a)によって示されるように、両端部の山を高く形成された区間L以外の範囲、言換えると中央部の区間L’において所要の間隔で断続的に山の峰部分13aに、図2(b)で示されるように硬質粒子分散材を溶接肉盛して硬化肉盛層15が設けられている。この硬化肉盛層15の肉盛部は、予め峰部分13aから少し両側に下がった部分までを溶接肉盛が容易なように本来の歯部形成面から少し彫り込んだ状態に形成され、この彫り込まれた部分13bに硬質粒子分散材を溶接肉盛して形成されている。
【0027】
前記断続的に硬化肉盛層15を配置される範囲では、その硬化肉盛層15の配置間隔を例えば硬化肉盛層形成長さ約90mmに対して肉盛されない部分16の長さを35mm程度で複数個所に設けられている。なお、前記数値については限定されるものではない。
【0028】
また、両端部12の山の高さを高くした部分(区間L)においては、図2(c)に示されるように、山の裾部13cから峰部分13aまで前記硬化肉盛層15の形成部と同様に通常の歯部表面より少し彫り込んだ状態に形成され、この彫り込まれた部分13b’に硬質粒子分散材を溶接肉盛して硬化肉盛層15’が設けられている。なお、固定歯板10は鋳造されるので、その鋳造時に予め前記各硬化肉盛層形成のための彫り込み部分13b,13b’を成形しておけば、後加工を必要とせずに、溶接肉盛作業の開始端位置の設定が容易となり円滑に肉盛を実施できる。特に自動肉盛作業を行わせるに有効である。
【0029】
このように構成する固定歯板10を用いて破砕操作を行えば、クラッシャにおける破砕室30に被処理物を投入して破砕操作を行わせる際に、玉石のような丸くて表面が平滑な石が投入されても、その破砕初期段階である可動歯板8と固定歯板10との両歯板の中央部によって挟圧されるとき、可動歯板8(スイングジョー)の揺動による斜め上向きの長楕円運動で、挟まれた玉石が固定歯板10の破砕面に沿って滑り転がろうとするのを、その固定歯板10の歯部13に断続的に複数個所に配置される硬化肉盛層15によって阻止され、挟圧されて破砕されることになる。すなわち、固定歯板10の歯部13に設けられている硬化肉盛層15は、その表面が粗面で、かつ断続的に配置されているので摩擦抵抗が大きくて、玉石といえどもそれに加わる挟圧時の水平分力に打勝って滑りが生じるのを阻止されて一挙に破壊され、効率よく破砕作業を継続することができる。
【0030】
また、破砕作業の稼働時間が長時間経過すれば、当該歯部においても摩耗が進行するが、その峰部分13aに配置される硬化肉盛層15は、摩耗とともに内在する硬質粒子の一部が表面に露出して粗面を維持するので、挟み付けた処理物に滑りを起させず破砕機能を維持することができる。なお、この歯板中央部11では端部12において生じるような処理物との摩擦の頻度が低いので、当該部分の歯部13に設けられる硬化肉盛層15の摩耗は端部12に較べてごく僅かである。したがって、破砕機能が長期間維持できる。
【0031】
このようにして、破砕室30内の上部で大きく砕かれた処理物は、順次落下していくにしたがい細かく砕かれる過程で、可動歯板8の斜め方向の揺動によって処理物を受け止める姿勢にある固定歯板10の歯部13の下部では中央部11よりも激しく摩耗が進行する。しかしながら、この摩耗の激しい所要区間Lの歯部13には山の峰部分13aから山裾13cにかけて硬化肉盛層15’が配され、かつ山の高さもより高くされているので、図3に示されるように、峰部分13aが摩滅しても山裾13c部分には硬化肉盛層15’が残るので、一挙に谷部14まで摩滅するのを防止して、図中円で囲まれる部分Pで表わされるように、その硬化肉盛層上端部15aと可動歯板8の歯部8’とによって処理物を挟み付ける効力を維持できる。言換えると、破砕効率が維持されることになる。当然摩耗寿命が延長されて耐用期間を長めることができる。
【0032】
図4には歯部に配置される硬質耐摩耗材の他の実施形態の横断面図が示されている。
【0033】
前記固定歯板10において中央部11の所要区間L’と両端部12の摩耗が激しい区間Lとにそれぞれ配置される硬質耐摩耗材としては、図4の例示されるように硬質粒子分散材で所要形状寸法に成形された硬質材17を歯部13の歯筋に沿って埋設して用いるようにすることができる。
【0034】
この実施形態では、中央部11の所要区間L’(図2(a)参照)に前記実施形態のものと同様の寸法割合で歯筋に沿って所要の深さの溝部18を設け、この溝部18にそれぞれ予め成形された硬質材17を嵌合ろう付して接合される。なお、溝部18は底部から上方に向って広がりを持つテーパ溝にされ、その溝部18に埋設される硬質材17は、溝部15のテーパに合致する断面形状にして、埋設後山の峰部となる部分が突曲面に形成されて露出するように設けられている。また、摩耗の激しい区間Lにおいても前記同様の構造で硬質材17が歯部13の歯筋に沿って埋設される。なお、この摩耗の激しい区間Lに埋設される硬質材17は、二点鎖線で表わすように、その溝部18の深さを山高さの中央部に配置するものよりも深くなるようにしておくのが寿命の延長を図る上で好ましい。
【0035】
この実施形態の固定歯板では、大きく破砕する中央部において歯部13の峰部分13aに断続して配置される硬質材17の露出部が破砕に伴う摩耗によって、その内部に分散混在する硬質粒子の露出によって粗面になって断続配置されるので、被処理物を挟み付けたときに当接する岩石にその硬質粒の露出部分が食い込むように作用する。その結果、被処理物の表面が平滑な石であっても滑ろうとするのを阻止する働きをなし、破砕効率を高めることができるのである。
【0036】
また、固定歯板10の歯部13における摩耗の激しい区間Lに埋設される硬質材17は、山の峰部分13aの摩耗進行を抑制しつつ、その両側の部分が摩滅して谷部の空間が大きくなるため、この空間内での処理物が動き易くなり、谷部の摩耗が進行される。その結果、摩耗が進行しても山谷の差が長時間維持されることになり、端部12での破砕効率が維持できるのである。なお、この実施形態では、硬質材が点状に埋設されているものと異なり、硬質材17が歯筋に沿って細長く埋設されるのでその側部が摩滅しても脱落し難く、長期使用に供することができる。
【0037】
上述の実施形態においては、固定歯板10にのみ中央部の所要区間(最初の岩塊を破砕する箇所)に断続的に硬質耐摩耗材を配置するものについて記載したが、必要に応じて可動歯板側の歯部にも断続的に硬質耐摩耗材を前記実施形態と同様にして配置することができる。このようにすれば、より一層の破砕効率を高めることができる。また、固定歯板については、破砕面を前記実施形態のような突円弧面に限定されるものではなく、平面的な形状にされたものに本発明を適用して同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の歯板が使用されるジョークラッシャの断面概要図である。
【図2】図2は、本発明にかかる固定歯板の一実施形態を表わす縦断面図(a)とそのa−a視断面図(b)およびb−b視断面図(c)である。
【図3】図3は、歯部の摩耗態様を表わす断面図である。
【図4】図4は、歯部に配置される硬質耐摩耗材の他の実施形態の断面図である。
【図5】図5は、従来の固定歯板の摩耗態様を表わす図である。
【符号の説明】
1 ジョークラッシャ
4 スイングジョー
8 可動歯板
8’ 可動歯板の歯部
8a,13a 歯部の峰部分
10 固定歯板
11 中央部
12 端部
13 固定歯板の歯部
13a 峰部分
14 谷部
15,15’ 硬化肉盛層
16 肉盛されない部分
17 硬質材
18 溝部
Claims (6)
- ジョークラッシャの歯板において、破砕面の上下方向に形成される少なくとも固定歯板における歯部の山に、上下方向の中間部分で歯筋に沿って断続的に適宜長さで硬質耐摩耗材を一体に配置されていることを特徴とするジョークラッシャの歯板。
- 前記歯板の破砕面が上下方向に円弧状にされていることを特徴とする請求項1に記載のジョークラッシャの歯板。
- 固定歯板の歯部は、上下方向に前記断続的に硬質耐摩耗材を配置した個所よりも端部側での山の高さを高くするとともに、その山を高くした範囲で歯部の少なくとも峰部を含む部分に硬質耐摩耗材を一体に配置される請求項1または2に記載のジョークラッシャの歯板。
- 前記歯部に配置される硬質耐摩耗材は、硬質粒子分散材による硬化肉盛層で覆うようにされる請求項1,2または3のいずれかに記載のジョークラッシャの歯板。
- 前記歯部に配置される硬質耐摩耗材は、歯筋に沿って形成される溝に硬質粒子分散材を含む耐摩耗硬質材を埋設して、その一部が峰部分を形成するようにされる請求項1,2または3のいずれかに記載のジョークラッシャの歯板。
- 前記硬化肉盛層を溶着する歯部は、その山の峰から裾部にかけての肉盛層形成部端までの部分で表面を通常表面からやや彫り込んだ形状にして、その彫り込まれた表面に硬質粒子分散材を溶着して硬化肉盛されている請求項4に記載のジョークラッシャの歯板。
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JP2007268461A (ja) * | 2006-03-31 | 2007-10-18 | Komatsu Ltd | ジョークラッシャの歯板 |
WO2009078400A1 (ja) * | 2007-12-19 | 2009-06-25 | Kazumasa Matsuura | リングソー付き切断装置 |
-
2003
- 2003-01-10 JP JP2003004280A patent/JP2004216222A/ja not_active Withdrawn
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