JP2004215399A - モータ制御方法および制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】トルクリップルを大幅に低減することが可能なモータ制御方法を提供する。
【解決手段】検出器2を搭載したモータ1を制御するモータ制御方法において、モータ1に通電する電流に対応した5次及び7次の高調波電流振幅及び電流基本波成分に対する位相データを前記検出器2に格納しておき、モータ駆動時に電流指令及び前記検出器に格納したデータに基づいてトルクリップル演算器4が5次及び7次高調波の電流振幅及び電流基本波成分に対する位相差を算出し、駆動電流にこの5次及び7次の高調波電流成分を取り込むようにする。従って工作機械に適用した場合は切削時の面に筋目の発生が抑えられ、軌跡制御における位置誤差も低減可能となる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はモータ制御方法および制御装置に関するもので、特にトルクリップルを低減できるACサーボモータの制御方法および制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ACモータを工作機械の送り軸に使用した場合、ACサーボモータの出力トルクに脈動があれば、トルクの脈動が切削時の面に筋目として現れる等の不具合が発生する。
そこで従来では、サーボモータの回転速度から回転位置を算出する位置検出回路と、回転子が1回転する間のトルクが一定となる電流に対応する信号を回転子の回転位置毎に格納したROMとD/A変換器と乗算器とからなるトルク脈動補償回路を設け、サーボモータの回転位置に対応して電流制御部の入力信号を補正することを行っている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−229690号公報
【0004】
図4は、特許文献1記載のACサーボモータ駆動装置で、図において25はサーボモータ、21はサーボモータ25の回転を検出してパルス列を発生する回転センサ、22はF/V変換器、23は回転方向判別回路、24は回転指令と検出した回転信号を受けて差をとり、位相補償して速度指令を出力する速度制御器で、26は3相の主回路である。30は電流制御部であり、電流制御器31と、電流検出器32、電流検出回路33、ゲート回路34とからなっており、40はトルク脈動補償回路であり、位置検出回路41と、ROM42、D/Aコンバータ43、乗算器44からなっている。
図4のACサーボモータ駆動装置によるトルク脈動を補償する原理は次のとおりである。サーボモータ21のトルクは回転子の磁石が作る磁束密度と固定子の励磁電流の積で表わされ、そして回転子の表面の磁束密度の周方向分布と励磁電流が正弦波になっていればトルクは脈動せず一定になるが、しかし磁束密度の分布が正弦波に対して歪んでいれば、励磁電流が正弦波であってもトルクに脈動が生じることになる。この場合、前記のようにトルクが回転子の磁束密度と励磁電流の積であるため、励磁電流が、正弦波の磁束密度と歪みを含む磁束密度の比を正弦波に乗じた波形となるようにすれば、その積であるトルクは脈動がなく一定とすることができる。そして歪みを含む磁束密度は次のようにして測ることができる。固定子を励磁することなくサーボモータを自由に回転すると、回転子の表面に固着した磁石の磁束のため固定子の巻線に誘起電圧が発生する。この誘起電圧は磁束密度に比例しているのでこの誘起電圧を測ることによって間接的に磁束密度を測ることができる。そこで回転子の回転位置に対応して誘起電圧を計測してROMに書き込んでおき、永久磁石形ACサーボモータ駆動装置でサーボモータを駆動する時は回転位置に同期して前記ROMの信号をD/A変換器でアナログ信号にして補正し、新たに電流指令とすれば脈動のない一定のトルクを得ることができるのである。
【発明が解決しようとする課題】
ところが、特許文献1記載の発明では、回転子が1回転する間のトルクが一定となる電流に対応する信号を回転子の回転位置毎にROMに格納しておいても、回路基板を組んだ場合、伝送遅れなどにより、トルクが一定とならないことがあった。
また、ACサーボモータのトルクリップルはコギングトルクだけではなく、駆動装置の電流オフセット調整のばらつきや、モータの磁気飽和により発生するトルクリップルも含まれ、コギングトルクのトルクリップルに占める割合は通常小さく、トルクリップル低減の効果は小さいものであった。
そこで本発明の目的は、トルクリップルを大幅に低減することが可能なモータ制御方法および制御装置を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の課題を解決するもので磁気飽和によるトルクリップルは電流の基本周波数成分に対して、5次もしくは7次の高調波電流成分を盛り込むことで低減できることが判明したので、そこで請求項1記載のモータ制御方法の発明によれば、検出器を搭載したモータを制御するモータ制御方法において、該モータに通電する電流に対応した5次及び7次の高調波電流振幅及び電流基本波成分に対する位相データを前記検出器に予め格納しておき、電源投入時に前記検出器より前記高調波電流振幅及び位相データをトルクリップル演算器に取り込み、モータ駆動時に電流指令及び前記高調波電流振幅及び位相データに基づいて5次及び7次の高調波電流振幅及び電流基本波成分に対する位相差を算出し、この5次及び7次の高調波電流成分を前記電流指令に加算し、加算された電流指令に、dq変換された検出電流を負帰還し、これを電流制御器へ送り、PWM制御を経て電力変換部からモータを通電制御することを特徴とする。
請求項2記載のモータ制御装置の発明によれば、検出器を搭載したモータを制御するモータ制御装置において、モータに通電する電流に対応した5次及び7次高調波電流振幅及び電流基本波成分に対する位相データが格納された検出器と、該検出器に格納された前記電流振幅および位相データを電源投入時に前記検出器から取り込みかつモータ駆動時に電流指令に基づいて5次及び7次高調波の電流振幅及び電流基本波成分に対する位相差を演算するトルクリップル演算器と、を有することを特徴とする。
このような構成にすることにより、検出器に格納されたモータに通電する電流に対応した5次及び7次高調波の電流振幅及び電流基本波成分に対する位相データに基づいて、駆動電流に5次及び7次高調波成分を盛り込むことでトルクリップル低減が可能となり、工作機械に適用した場合は切削時の面に筋目の発生が抑えられ、軌跡制御における位置誤差も低減可能となる。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は本発明に係るモータ制御のブロック図である。
図2は本発明に係る5次および7次高調波を考慮したモータ制御のフローチャート図である。
図において、1はモータ、2は検出器、3はモータ駆動装置、4はトルクリップル演算器、5は差分演算器、6は回転位置演算器、7は速度制御器、8は電流指令器、9は電流制御器、10はPWM制御器、11はdq変換器、12は電流検出部である。そして、モータ1は3相ACサーボモータで、検出器2を搭載している。モータ駆動装置3は31の速度制御部、32の電流制御部、33の電力変換部を搭載している。また、5次・7次高調波電流の振幅データと位相データは、後述する方法にて予め検出器2に格納されている。
このような構成のモータ駆動装置3において、電源投入時に、モータに通電する各電流に対応した、5次高調波電流の振幅データと電流基本波成分に対する位相データおよび7次高調波電流の振幅データと電流基本波成分に対する位相データを、前述の検出器2よりトルクリップル演算器4に取り込む(図2のステップST1に相当)。
電源投入時にトルクリップル演算器4に取り込む5次・7次高調波電流の振幅データと位相データは、通常、モータ1に検出器2を搭載した後、モータデータ(誘起電圧、抵抗、電流等)をパソコンからシリアル通信により検出器2に格納される。本発明では、このモータデータと併せて5次・7次高調波電流の振幅データと位相データを書き込むものである。5次・7次高調波電流の振幅データと位相データとしては、例えば表1の数値が挙げられる。
【表1】
Figure 2004215399
【0007】
そして、モータ駆動時にはこのデータの取り込みは行なわず、検出器2から位置データを取り込み、差分演算器5で演算した現在速度であるモータ速度フィードバック信号を速度指令に負帰還して、この値を速度制御器7に送る。速度制御器7の出力は電流指令器8に送られ、ここで、検出器2からの位置データを基に回転位置演算器6で演算された出力を用いて電流指令を算出する。算出された電流指令はトルクリップル演算器4に送られる。トルクリップル演算器4では、電源投入時に既に、モータに通電する各電流に対応した5次高調波電流の振幅データと電流基本波成分に対する位相データおよび7次高調波電流の振幅データと電流基本波成分に対する位相データが取り込まれているから、これらのデータと電流指令に基づいてトルクリップル演算器4において5次高調波電流の振幅Aと位相αおよび7次高調波電流の振幅Bと位相βを算出する(図2のステップST2に相当)。
【0008】
トルクリップル演算器4にて算出された5次高調波電流の振幅Aと位相αおよび7次高調波電流の振幅Bと位相βは後述する(Asin5(θ+α)+Bsin7(θ+β))として電流指令器8の出力である電流指令に加算される(図2のステップST3に相当)。
【0009】
その後は従来の制御と同じ制御を行う。すなわち、電流検出部12で検出した電流をdq変換器11を介して前記加算された電流指令に負帰還し、電流制御器9とPWM制御器10を介して電力変換部から5次高調波及び7次高調波成分を盛り込んだ電流をモータ1に通電する(図2のステップST4に相当)。
【0010】
次に、5次・7次高調波電流の振幅データと位相データに基づいて、駆動電流に5次及び7次高調波成分を加算する1例を示す。
従来は、高調波成分を含まない1次電流のみで、式1となる。
I=Isinθ ・・・式1
ただし、θ=1次成分の電流位相
これに対して本発明では、例えば表1のデータを例にとると下記のとおりとなる。
(1)基本波電流が2.5[A]とすると、表1の2.3[A]のパラメータから図3に示すように、直線補間で第5次高調波電流の振幅α5と位相β5を算出し、5次加算分αsin5(θ−β)を求める。
同様にして、7次加算分αsin7(θ−β)を求める。
(2)(1)で算出した位相・振幅を電流指令に加算すると式2が得られる。
I=I{sinθ+αsin5(θ−β)+αsin7(θ−β)}・・・・式2
【0011】
このような構成にすることにより、検出器2に格納されたモータに通電する電流に対応した5次及び7次高調波の電流振幅及び電流基本波成分に対する位相データに基づいて、駆動電流に5次及び7次高調波成分を盛り込むことでトルクリップル低減が可能となり、工作機械に適用した場合は切削時の面に筋目の発生が抑えられた。軌跡制御における位置誤差も低減できた。
【0012】
図5は図1のモータ制御ブロックを有する場合のトルクリップル実測波形(a)およびこれを有しない図4のトルクリップル実測波形(b)である。
図から明らかなように、図1のモータ制御ブロックを有する場合のトルクリップルが、図4のトルクリップル実測波形と比べて、トルクリップルが約1/3以下と大幅に改善されていることが確認できる。
【0013】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、検出器を搭載したモータを制御するモータ制御方法において、モータに通電する電流に対応した5次及び7次高調波電流振幅及び電流基本波成分に対する位相データを前記検出器に格納しておき、モータ駆動時に電流指令及び前記検出器に格納したデータに基づいて5次及び7次高調波の電流振幅及び電流基本波成分に対する位相差を算出し、駆動電流にこの5次及び7次の高調波電流成分を取り込むようにしたので、トルクリップルを大幅に低減することが可能となる。したがって工作機械に適用した場合は切削時の面に筋目の発生が抑えられ、軌跡制御における位置誤差も低減可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るモータ制御のブロック図である。
【図2】本発明に係る5次および7次高調波を考慮したモータ制御のフローチャート図である。
【図3】基本波電流と第5次高調波の振幅と位相の関係を示す線図である。
【図4】従来装置のモータ制御のブロック図である。
【図5】図1のモータ制御ブロック図を有する場合のトルクリップル実測波形(a)およびこれを有しない図4のトルクリップル実測波形(b)である。
【符号の説明】
1:モータ
2:検出器
3:モータ駆動装置
31:速度制御部
32:電流制御部
33:電力変換部
4:トルクリップル演算器
5:差分演算器
6:回転位置演算器
7:速度制御器
8:電流指令器
9:電流制御器
10:PWM制御器
11:dq変換器
12:電流検出部

Claims (2)

  1. 検出器を搭載したモータを制御するモータ制御方法において、該モータに通電する電流に対応した5次及び7次の高調波電流振幅及び電流基本波成分に対する位相データを前記検出器に予め格納しておき、電源投入時に前記検出器より前記高調波電流振幅及び位相データをトルクリップル演算器に取り込み、モータ駆動時に電流指令及び前記高調波電流振幅及び位相データに基づいて5次及び7次の高調波電流振幅及び電流基本波成分に対する位相差を算出し、この5次及び7次の高調波電流成分を前記電流指令に加算し、加算された電流指令に、dq変換された検出電流を負帰還し、これを電流制御器へ送り、PWM制御を経て電力変換部からモータを通電制御することを特徴とするモータ制御方法。
  2. 検出器を搭載したモータを制御するモータ制御装置において、モータに通電する電流に対応した5次及び7次の高調波電流振幅び電流基本波成分に対する位相データが格納される検出器と、
    該検出器に格納された前記電流振幅および位相データを電源投入時に前記検出器から取り込みかつモータ駆動時に電流指令に基づいて5次及び7次高調波の電流振幅及び電流基本波成分に対する位相差を演算するトルクリップル演算器と、
    を有することを特徴とするモータ制御装置。
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