JP2004212910A - 電子写真用感光体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ユビキノン類は、電荷輸送物質等の感光体構成物質と外的攻撃物との反応を抑制する作用があるため、外的攻撃物(チャージ生成物)であるオゾン及びNOx等の活性種による画像劣化(HT白すじ、黒すじ等)や、電荷輸送能の劣化による繰り返し使用時の電荷低下等を防ぐことができる。
少なくとも1種類以上のユビキノン類を、感光層における電荷輸送層に含有することで、長期の繰り返しの使用に対しても、画像劣化を引き起こすことなしに、感光体を使用することができるようになる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性支持体上に、
電荷担体を発生する電荷発生物質を有した電荷発生層と、
上記電荷担体を受け入れ輸送する電荷輸送物質を有した電荷輸送層と
が形成された電子写真用感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、複写機やレーザープリンタ等といった電子写真装置に用いられる電子写真用感光体においては、有機光導電物質を用いた有機電子写真用感光体が、材料選択の自由度が高く、感光体特性を任意に設計できるといった利点から、数多く提案され、実用化されてきている。
【0003】
有機電子写真用感光体における感光層は、主として、有機光導電物質を樹脂中に分散させた層から形成され、電荷発生物質を樹脂に分散させた層(電荷発生層)と、電荷輸送物質を樹脂に分散させた層(電荷輸送層)とを、積層させた構造をしたものが提案されている。
【0004】
また、有機電子写真用感光体における感光層として、電荷発生物質及び電荷輸送物質を、単層の樹脂中に分散させた単層構造をしたものも提案されている。
【0005】
有機電子写真用感光体における感光層としては、これらの例に限らず、数多くの提案がなされてきた。
【0006】
それらのうちでも、感光層として、電荷発生層の上に電荷輸送層を積層させた機能分離型の感光体は、電子写真特性や耐久性に優れており、広く実用化されている。
【0007】
電子写真感光体には、材料選択や光感度等の点で有利な、ホール輸送性の材料を使用する負帯電用の物質が用いられることが多い。
【0008】
しかしながら、負帯電を用いる場合には、負極性のコロナ放電の際において、帯電器から多くのチャージ生成物(オゾン、NOx等)が発生してしまうといった問題が生じる。
【0009】
そのため、チャージ生成物の感光体表面への吸着が起こり、電荷輸送能の劣化させてしまうため、繰り返し使用時に電位低下を生じ、画質低下や、感光体の寿命の低下の原因となる。
【0010】
特に最近の電子写真装置(複写機、プリンタ等)は、非常に小型化されているため、感光体ドラム周辺の排気が十分ではなく、その結果、チャージ生成物による感光体の劣化が問題となることが多くなってきている。
【0011】
従来より、有機系の感光体においては、これらチャージ生成物や画像露光及び除電光による感光体の劣化を防止するため、電化輸送層中に、種々の添加剤を添加する方法を用いることにより、繰り返し使用時の電荷安定性及び画質安定性の向上が図られてきた。
【0012】
また、気体の透過係数の小さなバインダー樹脂を有する保護層を、感光体の最表面に形成することで、チャージ生成物に対する耐久性を向上させる方法がある。
【0013】
この場合、有機層の数が増えるため、初期感度が低下してしまう可能性があり、また、製造における工程数が増えるため、コスト高の原因となってしまう。
【0014】
ところで、近年では、強い抗酸化作用を有するとして、ユビキノン類が注目され、種々の物質が合成されており(例えば、非特許文献1及び2参照)、また、活性酸素による細胞の損傷を防ぐといった、老化防止の効果が知られるようになっている。
【0015】
そして、サプリメントや化粧品類等に含有されるようになってきており、(例えば、補酵素コエンザイムQ10が)商品化され、広く使用されている。
【0016】
しかしながら、本発明におけるような、電子写真感光体への使用を目的とした用途に関しては、これまで、全く試みられていなかった。
【0017】
【非特許文献1】
Namsara, ” Coenzyme Biochemistry “, Bioenergetics and ClinicalApplications of Ubiquinone, G.Lenaz(ed.), John Wiley & Sons, New York, 1985, Ch.VI, p.131−144
【非特許文献2】
Gibson and Young, ” Methods in Enzymology “, Fleischer and Packer(eds.), Academic Press, New York, 1978, p.600−609
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明では、ユビキノン類を感光層に用いることで、初期感度低下や、残留電位を上昇させることなく、耐チャージ生成物(オゾン、NOx等)性に優れた、新規な電子写真感光体を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明は、導電性支持体上に、
電荷担体を発生する電荷発生物質を有した電荷発生層と、
上記電荷担体を受け入れ輸送する電荷輸送物質を有した電荷輸送層と
が形成された電子写真用感光体において、
上記電荷輸送層中に、下記一般式(1)で示されるユビキノン類を、少なくとも1種類以上含有し、
上記ユビキノン類が、電荷輸送物質に対して、0.5%〜20%含有されていることを特徴とする電子写真感光体である。
【0020】
【化4】
【0021】
上記構成によれば、少なくとも1種類以上のユビキノン類を、感光層における電荷輸送層に含有することで、長期の繰り返しの使用に対しても、画像劣化を引き起こすことなしに、感光体を使用することができるようになる。
【0022】
なお、ここでnは、典型的には1〜12である。
【0023】
即ち、上記ユビキノン類は、電荷輸送物質等の感光体構成物質と外的攻撃物との反応を抑制する作用があるため、外的攻撃物(チャージ生成物)であるオゾン及びNOx等の活性種の感光体表面への吸着による画像劣化(HT白すじ、黒すじ等)や、電荷輸送能の劣化による繰り返し使用時の電荷低下等を防ぐことができる。
【0024】
ところで、上記ユビキノン類の電荷輸送物質に対する含有率が、0.5%未満である場合には、酸化防止作用がほとんどなくなってしまい、画像劣化や電荷低下等に対する防止効果がなくなってしまう。
【0025】
また、上記ユビキノン類の電荷輸送物質に対する含有率が、20%以上である場合には、初期感度低下、残留電位の上昇、繰り返し安定性の悪化を引き起こし、良好な画像を得ることができなくなってしまう。
【0026】
従って、上記ユビキノン類の電荷輸送物質に対する含有率は、0.5%〜20%であることが望ましい。
【0027】
また、本発明は、上記電荷輸送層中に、下記一般式(2)で示されるトコール系酸化防止剤を有することを特徴とする電子写真感光体である。
【0028】
【化5】
【0029】
上記構成によれば、少なくとも1種類以上のユビキノン類に加え、トコール系酸化防止剤を電荷輸送層に含有させることで、
上記ユビキノン類による酸化防止作用に加え、トコール系酸化防止剤の効果を重畳することができ、より高い酸化防止作用を有する感光体を得ることができる。
【0030】
従って、上記高い酸化防止作用により、初期感度低下、残留電位の上昇、繰り返し安定性の悪化を引き起こすことなく、チャージ性生物であるオゾン及びNOx等の活性種により引き起こされる画像劣化を、防止することができる。
【0031】
また、本発明は、上記電荷輸送層中に、ヒンダードフェノール系化合物及びヒンダードアミン系化合物の、いずれか又は両方を有することを特徴とする電子写真感光体である。
【0032】
上記構成によれば、少なくとも1種類以上のユビキノン類による酸化防止作用に加え、ヒンダードフェノール系化合物とヒンダードアミン系化合物のいずれか、又は両方を、電荷輸送層に含有することで、初期感度低下、残留電位の上昇、繰り返し安定性の悪化を引き起こすことなく、高い酸化防止作用により、チャージ生成物であるオゾン及びNOx等の活性種により引き起こされる画像劣化を防ぐことができる。
【0033】
また、本発明は、上記電荷輸送層中のバインダー樹脂の少なくとも一つが、下記一般式(3)で示される非対称ジオールの構造単位の少なくとも一つを有する、ポリカーボネート樹脂であることを特徴とする電子写真感光体である。
【0034】
【化6】
【0035】
(式中のR1とR2は異なり、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは未置換の脂肪族基又は置換若しくは未置換の炭素環基、置換若しくは未置換の複素環基を形成するのに必要な原子群である。R3〜R10は、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは未置換の脂肪族基又は置換若しくは未置換の炭素環である。nは10〜1000である。)
上記構成によれば、電荷輸送層中に、高いガスバリア性をもつ、上記一般式(3)で表される非対称ジオール構造単位の少なくとも一つを有するポリカーボネート樹脂を有することにより、チャージ生成物の電荷輸送層への侵入を抑制することができる。
【0036】
そのため、長い繰り返し使用する場合においても、チャージ生成物であるオゾン及びNOx等の活性種により引き起こされる画像劣化を防ぐことができる。
【0037】
特に、粘度平均分子量が20000〜50000であるポリカーボネート樹脂を用いることで、上記電荷特性の卓越した安定性を付与することが可能となる。
【0038】
また、より好ましくは、バインダー樹脂の厚みが15μmのときの、酸素についての気体透過係数が、1.50×10−10(cc(STP)cm/cm2・s・cmHg)以下のポリカーボネート樹脂を用いることで、上記電荷特性の卓越した安定性を、より好ましく付与することが可能となる。
【0039】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態について、添付する図面に基づいて説明する。
【0040】
なお、以下の説明は、本発明を限定するものではなく、実施形態の一例であり、他の実施形態であっても良い。
【0041】
図1に本発明の実施形態の一例である感光体を示す。
【0042】
図中、符号1は導電性支持体、符号2は下引き層、符号3は電荷発生層を、符号4は電荷輸送層を、符号5は感光層を、それぞれ表している。
【0043】
図1に示す感光体は、感光層5が電荷発生層3及び電荷輸送層4の2層から形成された、機能分離型感光体である。
【0044】
導電性支持体1として使用できるものとしては、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料がある。
【0045】
また、表面にアルミニウム、銅、パラジウム、酸化錫、酸化イリジウム等の導電性層を設けたポリエステルフィルム、フェノール樹脂パイプ、紙管等の絶縁性物質が挙げられる。
【0046】
また、導電性支持体1の形状としては、シート状、円筒状、円柱状のいずれであっても良く、限定されるものではない。
【0047】
導電性支持体1と電荷発生層3との間には、下引き層2を導入するようにしても良い。
【0048】
下引き層2としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等の有機層が使用される。
【0049】
それらのなかでも、有機溶媒可溶性のポリアミド樹脂は、下引き層2の上に感光層5を形成する際に用いる溶媒に対して、溶解や膨潤等が起こらないこと、及び、導電性支持体1との接着性に優れることから、特に好ましい。
【0050】
下引き層2を分散する溶剤としては、炭素数が1〜4である低級アルコール及びこれらの混合液からなる群から選ばれたアルコールと、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン及びこれらの混合液からなる群から選ばれた溶剤との混合液を用いる。
【0051】
そして、上記下引き層2の材料を、上記溶剤(混合液)で溶解し、浸漬塗布装置等を用いて、導電性支持体1表面に塗布する。
【0052】
環境保護の観点からすると、非ハロゲン系溶剤を用いることが好ましい。
【0053】
また、必要に応じて、特に下引き層2の体積抵抗率の設定や、低温/低湿環境下での繰り返しエージング特性の改善等の理由で、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化錫、酸化インジウム、シリカ、酸化アンチモン等の無機顔料を、ボールミル、ダイノーミル、超音波発振機等の分散機を用いて分散含有させることが知られている。
【0054】
下引き層2中の無機顔料の割合は、30〜95重量%の範囲であることが好ましく、膜厚は0.1〜5μm程度になるように塗布されることが好ましい。
【0055】
電荷発生層3は、光照射によって、電荷を発生する電荷発生物質を主成分とし、必要に応じて公知の結合剤、可塑剤、増感剤を含有する。
【0056】
電荷発生材料としては、ペリレンイミド、ペリレン酸無水物等のペリレン系顔料、キナクリドン、アントラキノン等の多環キノン系顔料、金属及び無金属フタロシアニン、ハロゲン化無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、スクエアリウム色素、アズレニウム色素、チアピリリウム色素、及びカルバゾール骨格、スチリルスチルベン骨格、トリフェニルアミン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、オキサジアゾール骨格、フルオレノン骨格、ビススチルベン骨格、ジスチリルオキサジアゾール骨格又はジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料等が挙げられる。
【0057】
特に高い電荷発生能を有する顔料としては、無金属フタロシアニン顔料、オキソチタニルフタロシアニン顔料、フローレン環及びフルオレノン環を含有するビスアゾ顔料、芳香族アミンからなるビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料が挙げられ、高い感度を有する像担持体を提供することができる。
【0058】
更に、オキソチタニルフタロシアニンの内、Cu−kα特性X線回折(波長:1.54Å)におけるX線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)が、27.3°に回折ピークを示す結晶型は高感度であり、より好ましい。
【0059】
電荷発生層3に使用されるバインダー樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸エステル、ポリカーボネート、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテル等が挙げられる。
【0060】
電荷発生物質を分散する適当な溶剤としては、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒等を用いることができる。
【0061】
特に、環境保護を考えると、非ハロゲン系溶剤を用いることが好ましい。
【0062】
電荷発生層3の形成方法としては、一般に真空蒸着法、スパッタリング、CVD等の気相堆積法を用いるか、あるいは、電荷発生物質をボールミル、サンドグラインダ、ペイントシェイカー、超音波分散機等によって粉砕し、溶剤に分散させ、必要に応じてバインダー樹脂を加え、導電性支持体1がシートの場合にはベーカアプリケータ、バーコータ、キャスティング、スピンコート等、導電性支持体1がドラムの場合にはスプレー法、垂直型リング法、浸漬塗工法等によって形成する方法が用いられる。
【0063】
電荷発生層3中の電荷発生材料の割合は、30〜90重量%の範囲であることが好ましい。
【0064】
また、電荷発生層3の膜厚は、0.05〜5μmであることが好ましく、更に好ましくは0.1〜1μmである。
【0065】
また、電荷発生層3には、必要に応じて、塗布性を改善するためのレベリング剤や酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいても良い。
【0066】
電荷発生層3上に設けられる電荷輸送層4は、電荷発生材料で発生した電荷を受け入れ、これを輸送する能力を有する電荷輸送材料と、バインダー樹脂を必須成分とする。
【0067】
電荷輸送材料としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリ−g−カルバゾリルエチルグルタメート及びその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物及びその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、ピラゾリン誘導体、フェニルヒドラゾン類、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルアミン系化合物、テトラフェニルジアミン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、スチルベン系化合物、3−メチル−2−ベンゾチアゾリン環を有するアジン化合物等の電子供与性物質、あるいはフルオレノン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、インデノチオフェン誘導体、フェナンスレンキノン誘導体、インデノピリジン誘導体、チオキサントン誘導体、ベンゾ[c]シンノリン誘導体、フェナジンオキサイド誘導体、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、プロマニル、クロラニル、ベンゾキノン等の電子受容性物質が挙げられる。
【0068】
これらの中でも、後述する構造を有したブタジエン系化合物、スチリル系化合物、アミン化合物は、材料自体の持つホール輸送能力が高いため、樹脂比率の高い状態においても高感度を維持することができ、より好ましい。
【0069】
その一例として、ブタジエン系化合物である、下記一般式(4)で示される化合物が挙げられる。
【0070】
【化7】
【0071】
(式中、Ar1、Ar2、Ar3及びAr4はそれぞれ置換基を有しても良いアリール基を示し、Ar1〜Ar4の少なくとも1つは置換基として置換アミノ基を有するアリール基である。nは0又は1を示す。)
以下に、一般式(4)の代表的な具体例を示すが、本発明に係る化合物はこれらに限定されるものではない。
【0072】
【化8】
【0073】
【化9】
【0074】
【化10】
【0075】
【化11】
【0076】
【化12】
【0077】
【化13】
【0078】
【化14】
【0079】
【化15】
【0080】
【化16】
【0081】
【化17】
【0082】
【化18】
【0083】
【化19】
【0084】
スチリル系化合物としては、下記一般式(5)で示される化合物が挙げられる。
【0085】
【化20】(5)
【0086】
(式中、Ar5は置換基を有しても良いアリール基を表し、Ar6は置換基を有しても良いフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、あるいはアントリレン基を表し、R11は、水素原子、低級アルキル基又は低級アルコキシ基を表し、Xは水素原子、置換基を有しても良いアルキル基又は置換基を有しても良いアリール基を表し、Yは置換基を有しても良いアリール基等を表す。)
以下に、一般式(5)の代表的な具体例を示すが、本発明に係る化合物はこれらに限定されるものではない。
【0087】
【化21】
【0088】
【化22】
【0089】
【化23】
【0090】
【化24】
【0091】
【化25】
【0092】
【化26】
【0093】
【化27】
【0094】
【化28】
【0095】
【化29】
【0096】
【化30】
【0097】
【化31】
【0098】
【化32】
【0099】
【化33】
【0100】
【化34】
【0101】
【化35】
【0102】
【化36】
【0103】
アミン系化合物としては、下記一般式(6)で示される化合物が挙げられる。
【0104】
【化37】
【0105】
(式中、R12〜R17は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はアルコキシ基を表し、p、q、t、u は1〜5の整数、r、sは1〜4の整数を表す。)
以下に、一般式(6)の代表的な具体例を示すが、本発明に係る化合物はこれらに限定されるものではない。
【0106】
【化38】
【0107】
【化39】
【0108】
【化40】
【0109】
【化41】
【0110】
【化42】
【0111】
【化43】
【0112】
バインダー樹脂としては、電荷輸送材料と相溶性を有するものが選ばれる。
【0113】
例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、ならびに、ポリカーボネート樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、及びフェノール樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0114】
特に、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート及びポリフェニレンオキシド等の樹脂は、体積抵抗値が1013Ω以上であり、皮膜性、電気特性等にも優れている。
【0115】
これらは通常、単独に使用しても良く、又は、部分的に架橋した熱硬化性樹脂を使用しても良く、より好ましくは2種以上ブレンドして使用する。
【0116】
なお、2種以上ブレンドするために選択される樹脂は、高分子の構造単位が異なる樹脂同士であっても良いし、高分子の構造単位が同じで、粘度平均分子量等が異なる樹脂同士であっても良い。
【0117】
少なくとも2種以上の樹脂をブレンドすることにより、耐摩耗性や表面性、ガスバリア性、感度等の電子写真感光体として有利な特性をいくつか兼ね備えることか可能となり、また塗液の塗工性の調節が容易になる等、機能分離した設計が可能となる。
【0118】
本発明で使用される好ましいバインダー樹脂の1つとして、上記一般式(3)で表される非対称ジオール構造単位の少なくとも1つを有するポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0119】
具体例としては、下記化合物(3−1)〜(3−7)に代表される非対称ジオール化合物から合成されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0120】
ただし、本発明はこれらに限定されるものではなく、ここで非対称ジオールとは、ビスフェノールの主鎖、主鎖の置換基、または側鎖としての有機の基を有しており、かつビスフェノールの主鎖に対して180°回転したときに同じ形にならないようなジオールのことである。
【0121】
また、これらは単独もしくは2種以上の混合、及び他の構造との共重合であっても良い。
【0122】
【化44】
【0123】
【化45】
【0124】
【化46】
【0125】
【化47】
【0126】
【化48】
【0127】
【化49】
【0128】
【化50】
【0129】
また、上記一般式(3)で表される非対称ジオール構造単位の少なくとも1つを有するポリカーボネート樹脂は、ガス透過率が小さいため、オゾンやNOx等といった電子写真感光体の特性を劣化させるガスの、感光層への浸透を防ぐことができる。
【0130】
特に、化合物(3−3)から重合される構造単位を有するポリカーボネート樹脂は、ガスバリア性に優れている。
【0131】
また、これらの樹脂は、電荷輸送物質との相溶性に優れ、耐久性にも優れている。
【0132】
また、これらの樹脂の分子量としては、感光体の電気特性、繰り返し安定性、耐刷性の面から、粘度平均分子量が20,000〜50,000であることが好ましい。
【0133】
粘度平均分子量が20,000未満の場合、耐刷性の低下が著しくなり、50,000より大きい場合、初期感度の低下及び繰り返し使用時の残留電位の上昇が大きくなる。
【0134】
バインダー樹脂の量は、電荷輸送材料100重量部に対し50〜300重量部であることが好ましく、より好ましくは、100〜200重量部が適切である。
【0135】
100重量部以下では感度特性は良好であるものの、帯電特性、膜の機械的強度が低下し、200重量部以上では逆に帯電特性、機械的強度は良好であるものの、感度特性の低下が著しくなる。
【0136】
また、電荷輸送層4の膜厚は、約10〜約50μm、好ましくは約15〜約35μmである。
【0137】
ここで、本発明の電荷輸送層4には、酸化防止剤として上記一般式(1)で表されるユビキノン類の少なくとも1種以上が、含有される。
【0138】
ユビキノン類の酸化防止作用により、チャージ生成物であるオゾン及びN0x等の活性種によって、又は、チャージ生成物であるオゾン及びNOx等の活性種の感光体表面への吸着によって引き起こされる画像劣化(HT白すじ、黒すじ)を、防ぐことができる。
【0139】
また、電荷輸送能の劣化による繰り返し使用時の、電位低下等を防ぐことができる。
【0140】
本発明において使用されるユビキノン類は、n=6〜10の場合は天然物から胆視してもよく、またはn=1〜12の場合は、上記非特許文献1又は2のいずれかに記載の、幾つかの方法のいずれかを用いて、合成しても良い。
【0141】
また、少なくとも1種以上のユビキノン類に加えて、上記一般式(2)により表されるトコール系酸化防止剤、下記一般式(7)により表されるヒンダードフェノール系化合物、下記一般式(8)により表されるヒンダードアミン系化合物の誘導体を含有しても良い。
【0142】
【化51】
【0143】
【化52】
【0144】
またハイドロキノン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン及びそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物等を配合して用いても良い。
【0145】
また、ユビキノン類に加えて、上記化合物の1種以上、もしくは数種の構造を併せもった化合物を含有しても良い。
【0146】
ヒンダードフェノール系化合物の具体例としては、化合物(7−1)〜(7−5)等がある。
【0147】
ヒンダードアミン系化合物の具体例としては、化合物(8−1)〜(8−3)等がある。
【0148】
ヒンダードフェノール及びヒンダードアミン両方の構造を有する化合物の具体例としては、化合物(9−1)〜(9−3)等がある。
【0149】
【化53】
【0150】
【化54】
【0151】
【化55】
【0152】
【化56】
【0153】
【化57】
【0154】
【化58】
【0155】
【化59】
【0156】
【化60】
【0157】
【化61】
【0158】
【化62】
【0159】
【化63】
【0160】
レベリング剤としては、シリコンオイル類や側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用でき、使用量は結着樹脂100重量部に対し0〜1重量部が適当である。
【0161】
電荷輸送層4は、電荷輸送材料をバインダー樹脂とともに、適当な溶剤中に溶解(あるいは分散)させた溶液を、電荷発生層3が形成された導電性支持体1に塗布し、乾燥あるいは硬化させて成膜し、形成される。
【0162】
電荷輸送層4用の塗布液は、数種又は一種の電荷輸送材料、バインダー樹脂及び添加剤を計量し、所定量の有機溶媒に溶解させて作製する。
【0163】
電荷輸送層4の形成方法としては、導電性支持体1がシート状の場合には、ベーカアプリケータ、バーコータ、キャスティング、スピンコート等が用いられ、一方、導電性支持体1がドラム状の場合には、スプレー法、垂直型リング法、浸漬塗工法等が用いられる。
【0164】
特に生産性やコストという観点から一般的に浸漬塗工法等が好ましい。
【0165】
次に、電荷輸送材料を溶解(または分散)させる適当な溶剤であるが、該溶剤は、電荷発生材料を分散する溶剤と実質的に異ならず、電荷発生材料に関して列挙した溶剤の中から選択することができる。
【0166】
特に好ましい溶剤は、テトラヒドロフランである。
【0167】
本発明の感光体の製造方法には、好ましくは電荷発生層3を形成する際等の、各層の乾燥工程が含まれる。
【0168】
感光体の乾燥温度としては、約50℃〜約140℃が適当であり、特に約80℃〜約130℃の範囲が好ましい。
【0169】
感光体の乾燥温度が約80℃未満では、乾燥時間が長くなり、一方、乾燥温度が約120℃を越えると、繰返し使用時の電気的特性が悪くなり、感光体を使用して得られる画像も劣化する。
【0170】
以下に実施例及び比較例を用いて、本発明の実施の形態をさらに説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0171】
また、すべての部は、特に示す以外、重量基準である。
【0172】
【実施例】
(実施例1)
導電性支持体1として、φ30mm、長さ340mmのアルミニウム製円筒管を用いた。
【0173】
これに、酸化チタン粒子4重量部、バインダー樹脂としての共重合ナイロン樹脂(東レ社製:CM8000)6重量部を、メチルアルコール35重量部と1,3−ジオキソラン65重量部との混合溶媒に加えた。
【0174】
その後、その混合溶媒を、ペイントシェーカーにて8時間分散し、それにより得た下引き層2用塗布液をタンクに満たし、上記アルミ製円筒状支持体を浸漬、引き上げて塗工し、1.0μmの下引き層をアルミドラム上に形成した。
【0175】
溶媒は乾燥時に蒸発するので、酸化チタン粒子及び共重合ナイロン樹脂が下引き層2として残り、酸化チタン粒子の含有量は40重量%,バインダ樹脂の含有量は60重量%となる。
【0176】
次いで、図2に示すように、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が、9.4゜に最大回折ピークを示し、かつ少なくとも、7.4゜、9.7゜、27.3゜に明確なピークを有するチタニルフタロシアニン顔料2部と、ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBMS:積水化学社製)1部と、テトラヒドロフラン97部とをボールミル分散機で12時間分散して、分散液を調製し、これをタンクに満たし、上記下引き層2を設けたアルミドラムを浸漬、引き上げて塗布し、厚さ約0.2μmの電荷発生層3を、下引き層2上に形成した。
【0177】
更に、テトラヒドロフラン1200重量部に、電荷輸送物質として化合物(4−2)に示されるブタジエン化合物100重量部と、バインダー樹脂としてビスフェノールAポリカーボネート樹脂(帝人化成社製:商品名C−1400)180重量部と、酸化防止剤として化合物(1−1)で示されるユビキノン5重量部と、シリコーン系レベリング剤(KF−96:信越化学工業)0.036重量部とを混合したものを、電荷輸送層4塗工用塗布液に調製した。
【0178】
上記のようにして形成された電荷発生層3上に、電荷輸送層塗工用塗布液を、浸漬塗布し、120℃で1時間乾燥を行い、厚さ約25μmの電荷輸送層4を形成し、図1に示すような積層機能分離型感光体を作製した。
【0179】
ここで、溶剤の量は、粘度、塗工性を考慮して適時変えた。
【0180】
【化64】
【0181】
(実施例2)
電荷輸送物質を化合物(5−8)とした以外は、実施例1と同様にして、感光体を形成した。
(実施例3)
電荷輸送物質を化合物(6−1)とした以外は、実施例1と同様にして、感光体を形成した。
(比較例1)
化合物(1−1)に示すユビキノンを含有しない以外は、実施例1と同様にして、感光体を形成した。
(比較例2)
化合物(1−1)に示すユビキノンを含有しない以外は、実施例2と同様にして、感光体を形成した。
(比較例3)
化合物(1−1)に示すユビキノンを含有しない以外は、実施例3と同様にして、感光体を形成した。
(実施例4)
化合物(1−1)に示すユビキノンを1重量部とした以外は、実施例1と同様にして、感光体を形成した。
(実施例5)
化合物(1−1)に示すユビキノンを15重量部とした以外は、実施例1と同様にして、感光体を形成した。
(比較例4)
化合物(1−1)に示すユビキノンを0.3重量部とした以外は、実施例1と同様にして、感光体を形成した。
(比較例5)
化合物(1−1)に示すユビキノンを25重量部とした以外は、実施例1と同様にして、感光体を形成した。
(実施例6)
電荷輸送層4塗工用塗布液に一般式(2)で示されるα−トコフェロール化合物5重量部を含有する以外は、実施例4と同様にして、感光体を形成した。
(実施例7)
電荷輸送層4塗工用塗布液に化合物(7−1)に示されるヒンダードフェノール化合物5重量部を含有する以外は、実施例4と同様にして、感光体を形成した。
(実施例8)
電荷輸送層4塗工用塗布液に化合物(8−1)に示されるヒンダードアミン化合物5重量部を含有する以外は、実施例4と同様にして、感光体を形成した。
(実施例9)
ビスフェノールAポリカーボネート樹脂(帝人化成社製:商品名C−1400)を、化合物(3−3−1)で表されるポリカーボネート樹脂(帝人化成社製:TS−2020)180重量部にする以外は、実施例1と同様にして、感光体を形成した。
【0182】
【化65】
【0183】
次に、上記のようにして作製した各感光体について、市販のデジタル複写機(AR−450:シャープ社製)を改造した実験機に搭載し、初期及び50,000枚の耐刷試験後における、現像部での感光体表面電位、具体的には帯電電位を見るために、露光プロセスを除いた暗中での感光体表面電位(帯電電位)V0、露光後の感光体表面電位VL、除電後の感光体表面電位(残留電位)Vrを測定した。
【0184】
また、これらの各感光体の初期及び50,000枚複写後における画像特性について観察した。
【0185】
画像特性の欄には全く問題が無い場合は優と記載し、HT白すじ、HT黒すじ、カブリ等の欠陥が発生した場合は、その現象を記載した。
【0186】
【表1】
【0187】
表1から明らかなように、実施例1〜3、比較例1〜3より、電荷輸送層4に一般式(1)で示されるユビキノン類を含有することで、耐チャージ生成物(オゾン、NOx)による、帯電特性の低下、残留電位の上昇、及び画質の劣化を防ぐことができた。
【0188】
また、実施例4及び比較例4より、ユビキノン類の電荷輸送材料に対する含有率が0.5%以下であると、耐チャージ生成物能が発揮されず、実施例5及び比較例5より、ユビキノン類が20%以上含有されると、初期感度の低下及び残留電位の上昇を引き起こすことがわかる。
【0189】
また、実施例6、7、8から、ユビキノン類に加え、トコール系化合物、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物を含有することで、より耐チャージ生成物性がアップすることがわかる。
【0190】
また、実施例9より、ガスバリア性の高い非対称ポリカ−ボネ−ト樹脂を含有することで、より高い耐チャージ生成物性能が得られることがわかる。
【0191】
【発明の効果】
ユビキノン類を酸化防止剤として電荷輸送層に含有することにより、残留電位が低く、繰り返し疲労特性、チャ−ジ生成物による劣化に優れた安価な電子写真感光体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の実施形態に係り、積層機能分離型感光体の例を示す模式的断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係り、下引き層2に含有されるチタニルフタロシアニン顔料の、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の回折ピークを示す図である。
【符号の説明】
1 導電性支持体
2 下引き層
3 電荷発生層
4 電荷輸送層
5 感光層
Claims (4)
- 上記電荷輸送層中に、ヒンダードフェノール系化合物及びヒンダードアミン系化合物の、いずれか又は両方を有することを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
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