JP2004212097A - 膜厚計及び膜厚測定方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】投光器10と、基板1からの測定光が導かれる分光器20と、コントローラ30と、を備えた膜厚計Aであって、分光器20は、測定光を分光する分光部21及び分光部21によって分光された光束を光電変換して受光電流を生起させる複数のフォトダイオードを有する受光部を備え、コントローラは、異なる露光時間による所定回数の受光電流出力測定を行うための信号を分光器20へ送出する手段と、分光器20からの所定回数の受光電流出力測定で得られた測定値のうち飽和出力値以下の測定値を判別する手段と、所定の測定波長において飽和出力値以下の測定値が複数ある場合により長い露光時間の測定による測定値を採用する手段と、を備えた。
【選択図】 図9
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光学式の膜厚計及び膜厚測定方法に係り、特に蒸着,スパッタ,CVD法等によって、真空槽内で基板上に形成される光学薄膜の膜厚測定を精度よく行うことができる光学式の膜厚計及び膜厚測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光学式膜厚計は、真空蒸着処理やスパッタリング成膜処理等による成膜処理中に基板上に積層された膜厚をモニタリングし、所定膜厚蒸着時に蒸着源シャッタの開閉動作制御等を行うための制御器として用いられる。また、成膜処理をした基板の分光特性を測定するための測定器として用いられる。
【0003】
従来から、成膜中基板の膜厚検測等のために受光器にフォトダイオードアレイが用いられた膜厚計がある(例えば、特許文献1参照)。受光器にフォトダイオードアレイを用いることにより、複数の波長における成膜過程での反射率変化を同時連続的にモニターすることが可能となる。
【0004】
上記のような膜厚計の場合、成膜基板からの測定光は受光器で光電変換され、電気信号として演算部へ送出される。このとき、演算部では得られた電気信号を基に所定の演算処理が行われ、反射率や透過率が算出される。
【0005】
ここで、膜厚制御を精度よく行うためには、算出された反射率や透過率変化から所定の膜厚積層時を正確に検出しなければならない。このため、受光器からの電気信号をできるだけ増幅して処理が行われるが、一般に膜厚の測定精度は前記電気信号に含まれるノイズ分の影響を受ける。
【0006】
特に、出力される電気信号が小さい波長範囲では電気信号のS/N比が相対的に低くなってしまう。一般に、このようなS/N比の低さの要因としては、光源の放射分布特性(例えば、ハロゲン光源の場合、短波長側で光量が少ない)、フォトダイオードの分光感度特性(紫外光側、近赤外光側が悪い)、光路として使用される光ファイバの透過率の波長依存性等が挙げられる。
【0007】
そして、上記電気信号のS/N比の低さを補うために、得られた電気信号の演算処理方法を種々に改善して、正確な膜厚制御を行うことが行われている。つまり、演算部でのソフトウェア面の改善が一般的に行われている。
【0008】
【特許文献1】
特開平5−164518号公報(第2−3頁、第1−6図)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、膜厚計で正確な膜厚制御を行うために、制御装置のソフトウェア面の改善を行う方法では、電気信号自体のS/N比を向上させるわけではないので、大きく制御の精度を向上させることは期待できなかった。
【0010】
また、測定波長範囲のうち得られる電気信号強度が小さい波長範囲のデータは、相対的にS/N比が悪いものとなることから、このような測定範囲のデータを用いた膜厚測定は他の測定範囲によるものと比べて誤差が大きいものとなるという問題があった。
【0011】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、成膜中の薄膜の膜厚測定によって得られる電気信号のS/N比を測定波長によらず向上させて、精度よく膜厚制御を行うことができる膜厚計及び膜厚測定方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、請求項1に記載の膜厚計によれば、光学薄膜が形成された基板へ断続周期的に投光する投光手段と、前記基板からの測定光が導かれる光検出手段と、膜厚測定を制御する制御手段と、を備えた膜厚計であって、前記光検出手段は、前記測定光を分光する分光部を備えると共に、該分光部によって分光された光束を受光して光電変換により電荷を蓄積し受光電流を前記制御手段へ出力する複数の光検出素子を備え、前記制御手段は、露光時間の異なる受光電流出力の測定を所定回数行うための制御信号を前記光検出手段へ送出する制御信号送出手段と、前記光検出手段から得られた前記受光電流出力の測定値のうち所定の飽和出力値に達していない測定値を判別する判別手段と、前記測定値のうち所定の測定波長において前記所定の飽和出力値に達していない測定値が複数ある場合に露光時間のより長い測定による測定値を採用する選定手段と、を備えることにより解決される。
【0013】
このように本発明によれば、光検出手段に複数の光検出素子を備え、該光検出素子に波長が異なる分光された光が照射されるようになっており、複数の露光時間が異なる測定を行うことによって、各光検出素子からそれぞれ受光電流出力を得ることが可能となっている。そして、複数の測定によって得られた受光電流出力の測定値のうち、露光時間がより長い測定での測定値が採用されるようになっている。
【0014】
このように構成することにより、所定の測定波長においてより露光時間の長い測定での測定値、すなわちS/N比が良い測定値を用いて膜厚等を算出することができる。これにより、形成される薄膜の膜厚精度を向上させることができる。
【0015】
また、請求項2のように、光学薄膜が形成された基板へ断続周期的に投光する投光手段と、前記基板からの測定光が導かれる光検出手段と、制御手段と、を備えた膜厚計であって、前記光検出手段は、前記測定光を分光する分光部を備えると共に、該分光部によって分光された光束を受光して光電変換により電荷を蓄積し受光電流を前記制御手段へ出力する複数の光検出素子を備え、前記制御手段は、露光時間の異なる所定回数の受光電流出力の測定と、前記光検出手段へ前記測定光が入射されない状態且つ前記各露光時間と略同一の測定時間での暗電流出力の測定と、を行うための制御信号を前記光検出手段へ送出する制御信号送出手段と、前記光検出手段から得られた前記受光電流出力の測定値のうち所定の飽和出力値に達していない測定値を判別する判別手段と、前記測定値のうち所定の測定波長において前記所定の飽和出力値に達していない測定値が複数ある場合にはより長い露光時間での測定による測定値を採用すると共に、前記より長い露光時間と略同一の測定時間で測定された前記暗電流出力による測定値と、前記採用された受光電流出力の測定値とを対応させる選定手段と、前記採用された受光電流出力の測定値から該測定値に対応した前記暗電流出力の測定値を差し引く演算手段と、を備えることにより解決される。
【0016】
このように本発明によれば、所定の測定波長においてより露光時間の長い測定での測定値、すなわちS/N比が良い測定値を用いて膜厚等を算出することができると共に、受光電流出力測定と暗電流出力測定が略同一測定時間で行われることから、受光電流分に対応する暗電流分の測定を精度よく行うことができる。これにより、測定開始から長時間経過したような場合であっても、形成される薄膜の膜厚精度を向上させることができる。
【0017】
また、請求項3のように、前記受光電流出力の露光時間を取得すると共に、該露光時間を前記制御手段へ設定する入出力部を備えれば好適である。
【0018】
また、請求項4に記載の膜厚測定方法によれば、基板上に形成された薄膜の光学膜厚を測定する方法であって、前記基板からの測定光を分光し、該分光された光束を複数の光検出素子にそれぞれ照射させ、該光検出素子に光電変換により生起される受光電流出力を異なる露光時間で所定回数測定し、該所定回数の測定によって得られた測定値のうち所定測定波長について所定の飽和出力値に達していない測定値を判別して採用し、前記所定測定波長において前記所定の飽和出力値に達していない測定値が複数ある場合は、より長い露光時間での測定による測定値を採用する方法とすることができる。
【0019】
また、請求項5のように、基板上に形成された薄膜の光学膜厚を測定する方法であって、前記基板からの測定光を分光し、該分光された光束を複数の光検出素子にそれぞれ照射させ、該光検出素子に光電変換により生起される受光電流出力を異なる露光時間で所定回数測定すると共に、前記測定光が前記光検出素子に照射されない状態且つ前記各露光時間と略同一の測定時間で暗電流出力を前記所定回数測定し、前記受光電流出力の所定回数の測定によって得られた測定値のうち所定測定波長について所定の飽和出力値に達していない測定値を判別して採用し、前記所定測定波長において前記所定の飽和出力値に達していない測定値が複数ある場合は、より長い露光時間での測定による測定値を採用すると共に、前記より長い露光時間と略同一の測定時間で行われた前記暗電流出力の測定の測定値と前記採用された受光電流出力の測定による測定値とを対応させ、前記所定測定波長において前記採用された受光電流出力の測定による測定値から該測定値に対応した前記暗電流出力の測定による測定値を差し引く演算を行う方法とすることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は実施例の膜厚計の構成を示す説明図、図2は実施例のシャッタ機構の説明図、図3は実施例の膜厚計の構成を示すブロック図、図4は実施例の連続測定処理の説明図、図5は実施例のチャンネルごとの露光時間を示す説明図、図6は実施例の膜厚制御データ取得の概略処理手順を示す説明図である。
【0021】
図7は実施例の基本測定による暗電流補正後の受光電流出力を示す説明図、図8は実施例のマルチフレーム露光法での照射パターンを示す説明図、図9は実施例の各ゲイン測定ごとの露光時間を示す説明図、図10は実施例の異なるゲイン測定による暗電流補正後の受光電流出力を示す説明図、図11は実施例のマルチフレーム露光法によって得られる測定出力を示す説明図である。なお、以下に説明する配置、形状等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
【0022】
図1に本発明の実施例に係る膜厚計Aの概略構成図を示す。本例の膜厚計Aは、真空室50内に配置された成膜中の基板1を透過する光の透過量の変化から膜厚を測定する光透過式の膜厚計である。なお、基板1上への薄膜の形成は、真空蒸着法に限らず、スパッタリング,CVD法によるものでもよい。また、本例の膜厚計Aは光透過式としたが、これに限らず光反射式としてもよい。
【0023】
本例の膜厚計Aは、投光手段としての投光器10,分光手段としての分光器20,制御手段としてのコントローラ30等から構成される。投光器10は投光部11とシャッタ機構14を備えて構成され、投光部11はハロゲンランプ,キセノンランプ又は重水素ランプ等からなる光源12、集光レンズ13、不図示の安定化電源等を備えている。
【0024】
図2にシャッタ機構14の構成を示す説明図を示す。シャッタ機構14は、駆動源としてのステッピングモータ15,略円形形状の回転式の遮蔽板16,位置検出器17等から構成されている。遮蔽板16は、光源12の光を遮る遮蔽部16aと、光源12の光を真空室50側へ通過させる切欠部16bを備えており、遮蔽板16が回転することにより、真空室50側へ周期的なパルス状の光束が送出される。
【0025】
モータ15は後述するようにコントローラ30から制御信号を受けて、遮蔽板16を所定の回転速度で回転するように構成されており、該回転速度は制御信号によって可変設定されるようになっている。
【0026】
図1に示すように投光器10では、光源12から放射される光が集光レンズ13によって集光され、該集光された光束がシャッタ機構14を通過することにより、真空室50側へ送出される。なお、投光器10と真空室50,真空室50と分光器20は、それぞれ光ファイバ40,42によって接続されている。また、光ファイバ40,42にはレンズユニットが配設されており、スポット径が小さく平行光に近い光路が確保されている。なお、このような光ファイバ光学系に限らず、ミラー反射光学系であってもよい。
【0027】
光ファイバ40は出力側が二分岐されており、光ファイバ40に入射された光束はその一部が分岐部40aを通して投光器10に備えられたフォトダイオードからなる位置検出器17へ導かれている。
【0028】
このように構成することにより、遮蔽板16の回転位置が位置検出器17によって正確に検出され、位置検出器17から送出される検出信号によってコントローラ30は遮蔽板16の回転位置をモニターすることができると共に、正確に同期制御することが可能となっている。
【0029】
また、従来用いられるような電磁的機械シャッタは、光源を短時間周期で遮ることによりパルス状光束を送出することには不向きであったが、本例のシャッタ機構14では、シャッタ部を回転式としたことにより短時間周期のパルス状光束を送出することが可能となっている。
【0030】
光検出手段としての分光器20は、分光部21と受光部28を備えている。分光部21はクロスツェルニターナ方式であって、スリット22,コリメート光を形成する反射鏡23,回折格子24,反射鏡25から構成されている。受光部28は、フォトダイオードアレイを備えた検出素子26,検出素子26へ制御信号P1,P2を送出する検出素子駆動部27から構成されている。
【0031】
スリット22を通過した真空室50からの測定光は反射鏡23でコリメート光とされ、該コリメート光は回折格子24に入射し、回折格子24によって波長に応じて回折される。回折格子24で回折された回折光は、反射鏡25で反射されて検出素子26の複数のフォトダイオードにそれぞれ照射される。
【0032】
本例の検出素子26及び検出素子駆動部27からなる受光部28は、電荷蓄積方式のリニアイメージセンサを構成する。検出素子26は、512の測定チャンネルに対応した512個の光検出素子としてのフォトダイオード,スイッチ,コンデンサ等から構成されている。また、検出素子駆動部27は、コントローラ30からのスタートパルス及びクロック信号に応じて前記各スイッチに制御信号P1,P2を送出するシフトレジスタを備えて構成されている。
【0033】
本例の膜厚計Aは、任意の300nmの波長範囲を指定して測定することができるようになっており、それぞれのフォトダイオードは300nmの測定波長範囲(例えば、380nmから680nm)のうち約0.6nmの波長幅に相当する回折光を受光するようになっている。
【0034】
上記512個のフォトダイオード等の各素子は、512のチャンネルに割り振られており、1番目のチャンネルが長波長側(例えば、680nm付近)、512番目のチャンネルが短波長側(例えば、380nm付近)に設定されている。
【0035】
なお、測定波長範囲は300nmに限定されるものではなく、それぞれのフォトダイオードが照射される波長範囲も約0.6nmに限定されるものではない。また、チャンネル数も512に制限されるものではなく、例えば、1024個のフォトダイオードを備えたリニアイメージセンサを使用して、チャンネル数を1024としてもよい。
【0036】
受光部28の動作の概略を説明する。各チャンネルのフォトダイオードに回折光が照射されると、フォトダイオードによって光電変換され、電荷が受光部28内の不図示のコンデンサに蓄積される。
【0037】
検出素子駆動部27はコントローラ30からスタートパルスを受取ると各チャンネルへ制御信号P1又はP2を送出し始める。そして、検出素子駆動部27は、コントローラ30からクロック信号を受け取るごとにチャンネル数を加算していき、時間をずらして順次各チャンネルのスイッチへ制御信号P1又はP2を送出する。
【0038】
各スイッチは、制御信号P1又はP2によって電気的に閉じて各コンデンサが順次出力側に接続される。検出素子駆動部27及び各スイッチは送出手段を構成する。これにより、測定光の照射によって各コンデンサに蓄積された電荷は、コントローラ30側へチャンネルごとに時間をずらして順次出力される。
【0039】
このような電荷蓄積方式の受光部28では、蓄積電荷量は入射光の強さと露光時間の積(露光量)に比例する。しかし、上記コンデンサの容量は有限であるため、所定の露光量(飽和露光量)を超えると出力は一定値(飽和出力値)をとることになり、測定値として意味を持たなくなる。このため、露光量を適切に調整するために、露光時間の調整が行われる。
【0040】
図3に示すように、コントローラ30は、膜厚測定制御を行うCPU31と、CPU31からの制御信号を受けて検出素子駆動部27へ所定のスタートパルス及びクロック信号を送出する制御信号送出手段としてのタイミング設定部32と、検出素子26からの出力をチャンネルごとに受取りチャンネルごとの信号増幅を行う増幅部としてのPGA(プログラムゲインアンプ)33と、PGA33からの増幅信号を受取りA/D変換してCPU31へ送出するA/D変換器34と、インターフェース部35と、設定入力処理やデータ出力処理を行うための入出力部としての入出力装置37と、出力データ及び設定値等を記憶する記憶部38等によって構成されている。
【0041】
記憶部38は、ROM38aと、作業エリアとして用いられるRAM38b等を備えている。ROM38aには、膜厚計Aの制御プログラムやオペレーションシステムプログラム等が記憶される。また、モニターやプリンター等の表示装置36がインターフェース部35を介して接続されている。CPU31は、記憶部38のプログラム及び入出力装置37からの設定入力等に基づき、投光器10や分光器20への各種制御信号等の送出及び、分光器20からの測定データの受信、受信データの増幅、記憶、演算、出力等の各種処理を行う。本例の判別手段、選定手段、演算手段は、主としてCPU31によって構成されている。
【0042】
PGA33は、検出素子26からのチャンネルごとの出力を受取り、CPU31からの設定により、チャンネルごとに増幅率を変化させてA/D変換器34へ出力する。すなわち、操作者は、測定波長ごと(すなわち、チャンネルごと)に出力信号を所定の倍数に増幅するように、入出力装置37から設定入力することが可能であり、当該設定入力はCPU31を通してPGA33に設定される。
【0043】
このような構成とすることにより、信号強度の小さい波長範囲の出力信号を選択的に増幅させてデータとして得ることが可能となる。このように小さい信号強度を増幅することにより、光量変化に対する追従性を向上させ、当該増幅信号を制御値として扱いやすくし膜厚制御し易いものとすることができる。
【0044】
また、コントローラ30からインターフェース部35を通して、真空蒸着装置の制御装置51へ所定の膜厚測定データを送出している。制御装置51は該データをもとに,蒸着源を遮るシャッタ装置の駆動制御を行っている。
【0045】
また、コントローラ30は、投光器10へモータ15の回転速度を制御する信号を送出する。モータ15は、該制御信号に基づいて所定の回転速度で遮蔽板16を回転させる。また、位置検出器17から遮蔽板16の回転位置を示す位置信号がコントローラ30へ送出される。これによりコントローラ30は、遮蔽板16の回転位置と、検出素子駆動部27へ送出するスタートパルスを同期させることができるようになっている。
【0046】
次に、本例の膜厚計Aによる基本となる膜厚測定手順について説明する。コントローラ30から投光器10へ制御信号が送出され、所定回転速度で遮蔽板16が回転すると、図4(A)に示すように真空室50側へ光束が送出される期間(明期間)と送出されない期間(暗期間)が周期的に繰り返される。本基本測定例の場合、明暗期間一周期は0.3秒程度となっている。
【0047】
コントローラ30は、明期間の開始に合わせて、同図(B)に示すように検出素子駆動部27へスタートパルスPST1を送出する。また、コントローラ30は、順次にチャンネル数分のクロック信号を検出素子駆動部27へ送出する。検出素子駆動部27は、このスタートパルスPST1を受取ると、コントローラ30からのクロック信号に従い、検出素子26の各チャンネルへ制御信号P1を順次送出し始める。すなわち、同図(C),(D)に示すように、検出素子駆動部27はクロック信号を受取るごとにシフトレジスタによりチャンネルを順次繰り上げ、チャンネルごとに時間をずらしながら制御信号P1を送出する。この制御信号P1によって各チャンネルは順次リセットされる。
【0048】
すなわち、このとき各チャンネルのコンデンサに蓄積されていた電荷が出力される(同図(E)参照)。このようにして、所定時間(T1)で、各チャンネルのリセット出力S1がコントローラ30へ送出される。なお、リセット出力S1は膜厚データに関係しないので、基板1の膜厚制御をするためには用いられない。
【0049】
全てのチャンネルが所定時間(T1)でリセットされると、これから所定時間(T0)経過後にコントローラ30から検出素子駆動部27へスタートパルスPST2が送出され、さらにクロック信号に応じて検出素子駆動部27から各チャンネルへ制御信号P2が制御信号P1と同様に送出される。明期間中、各チャンネルには測定光が照射されている。
【0050】
そして、制御信号P2が各チャンネルへ順次送出されると、各チャンネルのコンデンサに蓄積された電荷は、PGA33へ順次出力される(受光電流出力S2)。このようにして、所定時間(T1)で、各チャンネルの受光電流出力S2がコントローラ30へ送出される(同図(E)参照)。
【0051】
すなわち、各チャンネルからは、各チャンネルのスイッチにリセット用の制御信号P1が送出されてから、出力用の制御信号P2が送出されるまでの測定時間(露光時間)に蓄積された電荷がコントローラ30側へ受光電流出力S2として出力される。図5に示すように、各チャンネルの露光時間TS(=T1+T0、すなわち制御信号P1と制御信号P2との間隔)は一定となっている。
【0052】
また、本例の膜厚計Aでは、明期間だけでなく、暗期間についても同様にスタートパルスPST1,PST2、クロック信号及び制御信号P1,P2が送出され、各チャンネルの出力を検出するようになっている。すなわち、各チャンネルのフォトダイオードに測定光が照射されていないときの受光電流出力S2(実際は、暗電流出力)が、明期間の受光電流出力S2と同様にデータとして出力されている。
【0053】
したがって、暗期間に各チャンネルにリセット用の制御信号P1が送出されてから出力用の制御信号P2が送出されるまでの時間は、明期間のものと略同一(すなわち、露光時間TSに略等しい)となっている。このようにすることにより、フォトダイオードから出力される暗電流出力は時間に比例するものとなるので、同時期の受光電流出力S2に含まれる暗電流分をより正確に見積もることが可能となる。
【0054】
本例の膜厚計Aでは、上述のように明暗期間が周期的に繰り返されて、明期間及び暗期間のそれぞれについて同様な出力処理が行われるので、受光電流出力と暗電流出力が明暗周期ごとに得られる。したがって、明暗周期ごとに暗電流によるノイズ成分を精度よく補正することが可能となっている。
【0055】
図6に膜厚制御データ取得の処理手順を示す。先ず図6に示すように、上記繰返し連続測定によって、各チャンネルの受光電流出力及び暗電流出力を所定時間毎に得ることができる。検出素子26から出力された各チャンネルの受光電流出力及び暗電流出力は、リアルタイムにPGA33によってチャンネルごとに所定倍数に増幅され、A/D変換器34によってデジタルデータに変換された後、受光電流データ及び暗電流データとしてコントローラ30内の記憶部38に記憶される。
【0056】
そして、これら得られたデータに基づき、演算処理が行われる。具体的には、演算手段としてのコントローラ30は、各チャンネルについて明暗期間周期の測定ごとに受光電流データから暗電流データを差し引き、ノイズ分が除去された受光強度データとして記憶部38に記憶する。
【0057】
なお、入出力装置37からの設定入力にしたがい、所定回数(例えば、15回)のデータ積分処理が行われるように構成してもよい。このようにすることにより、データの精度が向上される。
【0058】
そして、演算処理により得られた受光強度データから、さらに光学特性値としての透過率,光学膜厚等が算出され、予め設定された複数のチャンネル(例えば、5チャンネル)についての算出データが外部へ出力され、蒸着処理の制御等に用いられる。本例の場合、上記チャンネルは予め入出力装置37から設定することができるようになっている。また、表示装置36へ表示処理が行われる。なお、すべてのチャンネルについての算出データを外部へ出力するようにしてもよい。
【0059】
次に、上記基本膜厚測定手順を応用した本発明の要旨であるマルチフレーム露光法について説明する。図7に上記基本となる明暗期間一周期(0.3秒程度)での暗電流補正をした受光電流出力(受光強度データ)を示す。
【0060】
図7における測定波長範囲はλLからλHとなっている。この場合、受光電流出力は長波長側にピークがあり、特に短波長側の出力強度が小さくなっている。フォトダイオードによる電気信号出力は、一般に電気信号出力の大きさに関係なく、略一定の測定誤差分を含むものとなる。ただし、ここでいう測定誤差分は暗電流成分を含まないものを意味する。
【0061】
したがって、短波長側では特にS/N比が悪く、この波長範囲の測定データから算出された光学特性データを用いて膜厚制御をする場合は、相対的に精度よく制御することができない。
【0062】
このような電気信号出力の小さな波長範囲での光学特性データのS/N比を向上させるために、本例のマルチフレーム露光法では投光器10から送出される光束は、例えば図8のように制御される。つまり、明暗周期を基本測定時間と同じとした測定(基本測定)に続いて、明暗周期を2倍とした測定(ゲイン2倍測定)、明暗周期を4倍とした測定(ゲイン4倍測定)、明暗周期を10倍(ゲイン10倍測定)とした測定をそれぞれ行う。
【0063】
これらの測定は、コントローラ30に予め操作者によって設定され、コントローラ30が検出素子駆動部27及びシャッタ機構14を制御することによって行われる。なお、基本測定の明暗周期は、可変設定することが可能である。また、基本測定に続く測定における明暗周期も所定の長さに設定可能である。
【0064】
図8に示した各明暗周期における露光時間(Ts、暗電流測定時間も同様)の説明図を図9に示す。図9では、説明上、基本測定,ゲイン2倍測定,ゲイン4倍測定,ゲイン10倍測定における露光時間TsをそれぞれTs(1),Ts(2),Ts(4),Ts(10)とし、制御信号P1(512)送出後制御信号P2(1)が送出されるまでの時間をそれぞれT0(1),T0(2),T0(4),T0(10)としている。
【0065】
図9に示すように、基本測定においてはT0(1)はT1に比べ短い時間が設定されている。これに対して、ゲイン2倍測定,ゲイン4倍測定,ゲイン10倍測定ではそれぞれ、T0(2)はT1,T0(4)は3T1,T0(10)は9T1に略等しい時間となっている。したがって、露光時間Ts(1),Ts(2),Ts(4),Ts(10)は、それぞれT1,2T1,4T1,10T1に略等しくなっている。つまり、基本測定の露光時間に対して、ゲイン2倍測定,ゲイン4倍測定,ゲイン10倍測定の各露光時間は、約2倍,約4倍,約10倍となっている。このように各測定ごとに露光時間を可変設定することにより、信号のゲイン向上が図られている。暗電流測定時間についても同様である。
【0066】
コントローラ30は、このように露光時間を可変設定した各測定を連続的に行うため、入出力装置37から設定入力された各測定の明暗周期時間,露光時間,T0等に基づいて、投光器10へ制御信号を送出すると共に、検出素子駆動部27へ適正なタイミングでスタートパルス及びクロック信号を送出する。
【0067】
図10にそれぞれの明暗周期での測定によって得られる暗電流補正をした受光電流出力を示す。基本測定では出力は飽和出力値に達していないが、ゲイン2倍測定では波長λ3からλ4の波長範囲で出力が飽和出力値に達しているため、この範囲では出力が一定となっている(同図(B))。同様に、ゲイン4倍測定では波長λ2からλHの波長範囲、ゲイン10倍測定では波長λ1からλHの波長範囲で出力が飽和している(同図(C),(D))。
【0068】
上記測定データを説明のためそれぞれ所定波長範囲を抜き出して合成すると、図11(A)に示すようになる。これによれば、測定波長範囲にわたって受光電流出力は飽和出力に近い大きな値を有するものとなる。また、ノイズ成分はゲインによらず略一定である。このように、測定波長範囲全体においてS/N比が向上されているので、これから算出される透過率等の膜厚制御に用いるデータについても全体的に精度が向上されたものとなり、精度よく膜厚制御を行うことが可能となる。
【0069】
なお、同図(B)に示すように、露光時間(暗電流測定時間)が長くなると、これに比例して暗電流出力も大きくなる。同図(A)では、この暗電流出力分を差し引いて基板1と薄膜の光学特性に関する信号強度のみが表されている。
【0070】
以上のようにして、マルチフレーム露光法では、異なるゲイン(露光時間)による複数の測定をそれぞれ行い、判別手段としてのコントローラ30はそれぞれの測定において各チャンネルの受光電流出力が飽和したか否かを判定し、飽和した波長範囲の出力値は採用せず、飽和していない波長範囲のみの出力値を採用する。
【0071】
そして、選定手段としてのコントローラ30は、上記複数の測定において同一波長(同一チャンネル)で採用した出力値が複数存在することとなった場合は、ゲインが大きい測定での出力値を採用するようになっている。このとき、明期間の受光電流出力と暗期間の暗電流出力とはチャンネルごとに対応してその出力値(測定値)が採用されるようになっている。
【0072】
例えば、波長波長λ4からλHにおいては基本測定及びゲイン2倍測定の両測定において受光電流出力は飽和していないため、この波長範囲での出力値は2つ存在することになる。この場合は、ゲインが大きい測定、すなわちゲイン2倍測定での出力値(測定値)が選択される。また、波長λLからλ1においては全てのゲイン測定において、受光電流出力は飽和していない。この場合も同様に、ゲインの最も大きい測定での出力値、すなわちゲイン10倍測定での出力値が選択される。
【0073】
したがって、膜厚制御のために複数の波長(チャンネル)が設定された場合、該波長においてはゲインが大きい方の測定データから透過率等が算出されるように構成されている。
【0074】
なお、本例の膜厚計Aでは、入出力装置37からの設定により、明暗期間周期の各継続時間(明期間時間、暗期間時間)を変えることも可能である。ただし、受光電流出力測定の露光時間と暗電流出力測定の測定時間とを略同一とすることが望ましい。これにより、各チャンネルへの任意の露光時間の調整が可能となり、最適な露光時間を選択することができることから、精度の良い膜厚測定データを得ることが可能となる。
【0075】
また、本例では、ゲインを異ならせた測定を順次行っているが、各測定で所定回数積分が行われる場合は、その積分回数分だけ連続してそれぞれのゲインの測定が行われるようにしてもよい。
【0076】
また、本例の膜厚計Aでは、演算処理におけるデータ積分処理の回数を操作者が入出力装置37によって設定変更することも可能である。例えば、データ積分処理回数を1回のみとすることも可能である。
【0077】
また、本例の膜厚計Aでは、所定の波長範囲を同時に測定することができるが、測定波長範囲内の任意の単数又は複数の波長についてのみ測定することも可能である。この場合、当該波長に対応するチャンネルが指定されることにより所定のデータを得ることができる。
【0078】
また、本実施の形態では、露光時間及び暗電流測定時間を異ならせた複数の測定をそれぞれ異なる明暗期間周期で行っているが、これに限らず、前記複数の測定を同一明暗期間周期として、この周期の範囲内で露光時間及び暗電流測定時間を異ならせて測定することも可能である。
【0079】
【発明の効果】
以上のように、本発明の膜厚計及び膜厚測定方法によれば、投光器からの光束が短時間周期でパルス状に送出され、成膜基板に投光器からの光束が照射されている期間と照射されていない期間の双方について、同じように複数の波長について測定が行われる。
【0080】
そして、各明暗周期の長さを異ならせ、光検出部への露光時間及び暗電流測定時間を異ならせることによりゲインを段階的に上げた複数の測定を行う構成とした。したがって、所定の波長についての測定データにおいてよりゲインを向上させた測定による測定データを選択することができる。
【0081】
このような構成としたことにより、一周期内で受光電流出力と暗電流出力の双方の測定を複数の波長について行いリアルタイムに暗電流分が考慮された精度の良いデータを得ることが可能となると共に、測定波長範囲全体にわたって得られる電気信号出力のS/N比を向上されたものとすることができる。したがって、このようにして得られる精度のよい膜厚制御データによって、膜厚制御の精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の膜厚計の構成を示す説明図である。
【図2】実施例のシャッタ機構の説明図である。
【図3】実施例の膜厚計の構成を示すブロック図である。
【図4】実施例の連続測定処理の説明図である。
【図5】実施例のチャンネルごとの露光時間を示す説明図である。
【図6】実施例の膜厚制御データ取得の概略処理手順を示す説明図である。
【図7】実施例の基本測定による暗電流補正後の受光電流出力を示す説明図である。
【図8】実施例のマルチフレーム露光法での照射パターンを示す説明図である。
【図9】実施例の各ゲイン測定ごとの露光時間を示す説明図である。
【図10】実施例の異なるゲイン測定による暗電流補正後の受光電流出力を示す説明図である。
【図11】実施例のマルチフレーム露光法によって得られる測定出力を示す説明図である。
【符号の説明】
1 基板、10 投光器、11 投光部、12 光源、13 集光レンズ、14 シャッタ機構、15 モータ、16 遮蔽板、16a 遮蔽部、16b 切欠部、17 位置検出器、20 分光器、21 分光部、22 スリット、23,25 反射鏡、24 回折格子、26 検出素子、27 検出素子駆動部、28 受光部、30 コントローラ、32 タイミング設定部、34 A/D変換器、35 インターフェース部、36 表示装置、37 入出力装置、38 記憶部、40,42 光ファイバ、40a 分岐部、50 真空室、51 制御装置、A 膜厚計、P1,P2 制御信号、S1 リセット出力、S2 受光電流出力、TS 露光時間
Claims (5)
- 光学薄膜が形成された基板へ断続周期的に投光する投光手段と、前記基板からの測定光が導かれる光検出手段と、膜厚測定を制御する制御手段と、を備えた膜厚計であって、
前記光検出手段は、前記測定光を分光する分光部を備えると共に、該分光部によって分光された光束を受光して光電変換により電荷を蓄積し受光電流を前記制御手段へ出力する複数の光検出素子を備え、
前記制御手段は、露光時間の異なる受光電流出力の測定を所定回数行うための制御信号を前記光検出手段へ送出する制御信号送出手段と、
前記光検出手段から得られた前記受光電流出力の測定値のうち所定の飽和出力値に達していない測定値を判別する判別手段と、
前記測定値のうち所定の測定波長において前記所定の飽和出力値に達していない測定値が複数ある場合に露光時間のより長い測定による測定値を採用する選定手段と、を備えたことを特徴とする膜厚計。 - 光学薄膜が形成された基板へ断続周期的に投光する投光手段と、前記基板からの測定光が導かれる光検出手段と、制御手段と、を備えた膜厚計であって、
前記光検出手段は、前記測定光を分光する分光部を備えると共に、該分光部によって分光された光束を受光して光電変換により電荷を蓄積し受光電流を前記制御手段へ出力する複数の光検出素子を備え、
前記制御手段は、露光時間の異なる所定回数の受光電流出力の測定と、前記光検出手段へ前記測定光が入射されない状態且つ前記各露光時間と略同一の測定時間での暗電流出力の測定と、を行うための制御信号を前記光検出手段へ送出する制御信号送出手段と、
前記光検出手段から得られた前記受光電流出力の測定値のうち所定の飽和出力値に達していない測定値を判別する判別手段と、
前記測定値のうち所定の測定波長において前記所定の飽和出力値に達していない測定値が複数ある場合にはより長い露光時間での測定による測定値を採用すると共に、前記より長い露光時間と略同一の測定時間で測定された前記暗電流出力による測定値と、前記採用された受光電流出力の測定値とを対応させる選定手段と、
前記採用された受光電流出力の測定値から該測定値に対応した前記暗電流出力の測定値を差し引く演算手段と、を備えたことを特徴とする膜厚計。 - 前記受光電流出力の露光時間を取得すると共に、該露光時間を前記制御手段へ設定する入出力部を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の膜厚計。
- 基板上に形成された薄膜の光学膜厚を測定する方法であって、
前記基板からの測定光を分光し、該分光された光束を複数の光検出素子にそれぞれ照射させ、該光検出素子に光電変換により生起される受光電流出力を異なる露光時間で所定回数測定し、
該所定回数の測定によって得られた測定値のうち所定測定波長について所定の飽和出力値に達していない測定値を判別して採用し、
前記所定測定波長において前記所定の飽和出力値に達していない測定値が複数ある場合は、より長い露光時間での測定による測定値を採用することを特徴とする膜厚測定方法。 - 基板上に形成された薄膜の光学膜厚を測定する方法であって、
前記基板からの測定光を分光し、該分光された光束を複数の光検出素子にそれぞれ照射させ、該光検出素子に光電変換により生起される受光電流出力を異なる露光時間で所定回数測定すると共に、前記測定光が前記光検出素子に照射されない状態且つ前記各露光時間と略同一の測定時間で暗電流出力を前記所定回数測定し、
前記受光電流出力の所定回数の測定によって得られた測定値のうち所定測定波長について所定の飽和出力値に達していない測定値を判別して採用し、
前記所定測定波長において前記所定の飽和出力値に達していない測定値が複数ある場合は、より長い露光時間での測定による測定値を採用すると共に、前記より長い露光時間と略同一の測定時間で行われた前記暗電流出力の測定の測定値と前記採用された受光電流出力の測定による測定値とを対応させ、
前記所定測定波長において前記採用された受光電流出力の測定による測定値から該測定値に対応した前記暗電流出力の測定による測定値を差し引く演算を行うことを特徴とする膜厚測定方法。
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