JP3935068B2 - 膜厚計及び膜厚測定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光学式の膜厚計及び膜厚測定方法に係り、特に蒸着,スパッタ,CVD法等によって、真空槽内で基板上に形成される光学薄膜の膜厚測定を精度よく行うことができる光学式の膜厚計及び膜厚測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光学式膜厚計は、真空蒸着処理やスパッタリング成膜処理等による成膜処理中に基板上に積層された膜厚をモニタリングし、所定膜厚蒸着時に蒸着源シャッタの開閉動作制御等を行うための制御器として用いられる。また、成膜処理をした基板の光学特性を測定するための測定器として用いられる。
【0003】
従来から、成膜中基板の膜厚検測等のために受光器にフォトダイオードアレイが用いられた膜厚計がある(例えば、特許文献1参照)。受光器にフォトダイオードアレイを用いることにより、複数の波長における成膜過程での反射率変化を同時連続的にモニターすることが可能となる。
【0004】
上記のような膜厚計の場合、成膜基板からの測定光は受光器で光電変換され、電気信号として演算部へ送出される。このとき、演算部では得られた電気信号を基に所定の演算処理が行われ、反射率や透過率が算出される。
【0005】
ここで、膜厚制御を精度よく行うためには、算出された反射率や透過率変化から所定の膜厚積層時を正確に検出しなければならない。このため、受光器からの電気信号をできるだけ増幅して処理が行われるが、一般に膜厚の測定精度は前記電気信号に含まれるノイズ分の影響を受ける。
【0006】
特に、出力される電気信号が小さい波長範囲では電気信号のS/N比が相対的に低くなってしまう。一般に、このようなS/N比の低さの要因としては、光源の放射分布特性(例えば、ハロゲン光源の場合、短波長側で光量が少ない)、フォトダイオードの分光感度特性(紫外光側、近赤外光側が悪い)、光路として使用される光ファイバの透過率の波長依存性等が挙げられる。
【0007】
そして、上記電気信号のS/N比の低さを補うために、得られた電気信号の演算処理方法を種々に改善して、正確な膜厚制御を行うことが行われている。つまり、演算部でのソフトウェア面の改善が一般的に行われている。
【0008】
【特許文献1】
特開平5−164518号公報(第2−3頁、第1−6図)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、膜厚計で正確な膜厚制御を行うために、演算部でのソフトウェア面の改善を行う方法では、電気信号自体のS/N比を向上させるわけではないので、大きく制御の精度を向上させることは期待できなかった。
【0010】
また、上記のような膜厚計では受光部に測定光が照射されているか否かにかかわらず、受光部からの電気信号には暗出力(暗電流)が含まれる。この暗電流は、例えば、フォトダイオードアレイの置かれている環境によって時間的に変化するものであり、また、フォトダイオードアレイの各測定波長に対応するチャンネルによってもばらつきが存在する。
【0011】
つまり、上記電気信号にはこのような時間及びチャンネルに依存する暗電流分がノイズ成分として含まれる。したがって、この電気信号を処理することによって膜厚制御を行う場合、膜厚誤差が生じ易いという問題があった。
【0012】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、成膜中の薄膜の膜厚測定によって連続的に得られる電気信号から略リアルタイムに暗電流分を差し引くことによりS/N比を向上させて、精度よく膜厚制御を行うことができる膜厚計及び膜厚測定方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、請求項1に記載の膜厚計によれば、光学薄膜が形成された基板へ投光する投光手段と、前記基板からの測定光が導かれる光検出手段と、膜厚測定を制御する制御手段と、を備え、真空室に配置された基板に形成される薄膜の膜厚を測定する膜厚計であって、前記投光手段は、前記真空室へ光束を投光する光源と、該光源からの光束を遮るシャッタ機構と、を備え、該シャッタ機構は、前記真空室への光束の出口と前記光源との間に配置される回転式の遮蔽板と、該遮蔽板を回転させる駆動部とを具備し、前記遮蔽板には、前記光源から前記基板への光束を遮る遮蔽部と前記光源から前記基板への光束を遮らない切欠部が形成され、前記駆動部による前記遮蔽板の回転により前記光源から前記基板への光束を遮らない明期間と前記光源から前記基板への光束を遮る暗期間を連続周期的に発生させ、前記遮蔽板の前記基板側には前記遮蔽板の回転位置を検出する位置検出器へ前記光源から前記基板への光束のうち一部の光束を導く光ファイバが配設され、前記位置検出器は、前記遮蔽板の回転位置信号を前記制御手段へ送出することにより解決される。
【0014】
このように本発明によれば、シャッタ機構によって測定光が基板を介して連続周期的に光検出手段へ導かれるので、明暗期間において連続的に基板に形成された光学薄膜の膜厚測定をすることが可能となる。
また、シャッタ機構は、回転式の遮蔽板と、遮蔽板を回転させる駆動部とを備え、遮蔽板には、光源から基板への光束を遮る遮蔽部と光源から基板への光束を遮らない切欠部が形成されるように構成することができる。このようにすることにより、電磁的機械シャッタ方式と異なり、連続的に短時間周期の測定が可能となると共に、測定の時間分解能を向上させることができる。
さらに、遮蔽板の基板側には遮蔽板の回転位置を検出する位置検出器へ、光源から基板への光束のうち一部の光束を導く光ファイバが配設され、位置検出器は、遮蔽板の回転位置信号を制御手段へ送出する。このように構成すると、制御手段による光検出手段の制御と光源からの照射期間を正確に同期させることが容易となる。
【0015】
また、請求項2のように、前記光検出手段は、前記基板からの測定光が光電変換されて受光電流を生起させると共に、該受光電流を前記制御手段へ出力する受光部を備え、前記制御手段は、前記明期間には所定露光時間で前記測定光による受光電流出力を測定し、前記暗期間には前記所定露光時間と略同一の測定時間で暗電流出力を測定するように前記光検出手段を制御することにより、時間的に連続、かつ受光電流測定と同一計測時間で暗電流測定を行うことができる。これにより、測定開始から長時間経過したような場合であっても、暗電流補正をより正確に行うことが可能となる。
【0016】
また、請求項3のように、前記光検出手段は、前記測定光を分光する分光部を備え、前記受光部は、前記分光部によって分光された光を受光する複数のフォトダイオードと、該各フォトダイオードから出力される受光電流出力及び暗電流出力を前記制御手段へ送出する送出手段と、を備えることにより、複数の波長において膜厚測定を行うことができる。
【0017】
また、請求項4のように、前記制御手段は、前記送出手段から受取った前記受光電流出力及び暗電流出力を前記各フォトダイオードに対応させて増幅する増幅部を備えれば好適である。このように構成することにより出力信号強度が小さい波長の出力信号を選択的に増幅して膜厚測定データの感度を向上させ、例えば膜厚制御等の処理が行い易いようにすることができる。
【0018】
また、請求項5のように、前記制御手段は、前記回転位置信号と同期して、前記受光電流出力又は前記暗電流出力を前記制御手段へ送出させるスタートパルスを前記送出手段へ送出することを特徴とする。
【0019】
また、請求項6のように、前記制御手段は、前記駆動部への制御信号により前記遮蔽板の回転速度を可変設定することで、前記明期間の長さと前記暗期間の長さを可変制御可能であるように構成すれば好適である。このようにすれば、露光時間を可変設定する自由度が拡がり、適切な露光時間で膜厚測定を行うことができる。
【0020】
また、請求項7のように、前記遮蔽板は、前記遮蔽部及び前記切欠部が1箇所ずつ形成されていることを特徴とする。
【0021】
また、前記課題は、請求項8に記載の膜厚測定方法によれば、真空室内に配置された基板上に形成された薄膜の光学膜厚を測定する方法であって、前記真空室への光束の出口と前記光源との間に配置される回転式の遮蔽板と、該遮蔽板を回転させる駆動部とを具備し、前記遮蔽板には、前記光源から前記基板への光束を遮る遮蔽部と前記光源から前記基板への光束を遮らない切欠部が形成され、前記駆動部による前記遮蔽板の回転により前記光源から前記基板への光束を遮らない明期間と前記光源から前記基板への光束を遮る暗期間を連続周期的に発生させるシャッタ機構により、前記基板へ光束を断続的に投光し、前記遮蔽板の前記基板側に配設された光ファイバにより、前記光源から前記基板への光束のうち一部の光束を位置検出器へ導き、該位置検出器で前記遮蔽板の回転位置を検出し、該検出された回転位置に基づいて、前記基板からの測定光が受光部に照射されている期間に所定露光時間で前記測定光を光電変換して受光電流出力を測定し、前記検出された回転位置に基づいて、前記基板からの測定光が受光部に照射されていない期間に前記所定露光時間と略同一の測定時間で暗電流出力を測定し、前記受光電流出力から前記暗電流出力を差し引いた受光強度データをもとに前記光学薄膜の光学特性値を算出することにより解決される。
【0022】
このように、本発明によれば、測定光を受取る明期間と受取らない暗期間の両期間において、略同一の露光時間で測定を行う。したがって、暗期間における測定によって得られる暗電流出力を明期間における測定によって得られる受光電流出力から差し引けば、ノイズ成分としての暗電流成分を除去することができる。そして、暗電流測定の測定期間が受光電流測定の測定期間と隣接して、かつ連続的に行われるため、略リアルタイムでの暗電流分の除去が可能となる。これにより、より精度が向上された光学薄膜の膜厚測定が可能となる。
また、電磁的機械シャッタ方式と異なり、連続的に短時間周期の測定が可能となると共に、測定の時間分解能を向上させることができる。さらに、制御手段による光検出手段の制御と光源からの照射期間を正確に同期させることが容易となる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は実施例の膜厚計の構成を示す説明図、図2は実施例のシャッタ機構の説明図、図3は実施例の膜厚計の構成を示すブロック図、図4は実施例の連続測定処理の説明図、図5は実施例のチャンネルごとの露光時間を示す説明図、図6は実施例の膜厚制御データ取得の概略処理手順を示す説明図、図7は別実施例のシャッタ機構の説明図である。なお、以下に説明する配置、形状等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
【0024】
図1に本発明の実施例に係る膜厚計Aの概略構成図を示す。本例の膜厚計Aは、真空室50内に配置された成膜中の基板1を透過する光の透過量の変化から膜厚を測定する光透過式の膜厚計である。なお、基板1上への薄膜の形成は、真空蒸着法に限らず、スパッタリング,CVD法によるものでもよい。また、本例の膜厚計Aは光透過式としたが、これに限らず光反射式としてもよい。
【0025】
本例の膜厚計Aは、投光手段としての投光器10,分光手段としての分光器20,制御手段としてのコントローラ30等から構成される。投光器10は投光部11とシャッタ機構14を備えて構成され、投光部11はハロゲンランプ,キセノンランプ又は重水素ランプ等からなる光源12、集光レンズ13、不図示の安定化電源等を備えている。
【0026】
図2にシャッタ機構14の構成を示す説明図を示す。シャッタ機構14は、駆動源としてのステッピングモータ15,略円形形状の回転式の遮蔽板16,位置検出器17等から構成されている。遮蔽板16は、光源12の光を遮る遮蔽部16aと、光源12の光を真空室50側へ通過させる切欠部16bを備えており、遮蔽板16が回転することにより、真空室50側へ周期的なパルス状の光束が送出される。
【0027】
モータ15は後述するようにコントローラ30から制御信号を受けて、遮蔽板16を所定の回転速度で回転するように構成されており、該回転速度は制御信号によって可変設定されるようになっている。
【0028】
図1に示すように投光器10では、光源12から放射される光が集光レンズ13によって集光され、該集光された光束がシャッタ機構14を通過することにより、真空室50側へ送出される。なお、投光器10と真空室50,真空室50と分光器20は、それぞれ光ファイバ40,42によって接続されている。また、光ファイバ40,42にはレンズユニットが配設されており、スポット径が小さく平行光に近い光路が確保されている。なお、このような光ファイバ光学系に限らず、ミラー反射光学系であってもよい。
【0029】
光ファイバ40は出力側が二分岐されており、光ファイバ40に入射された光束はその一部が分岐部40aを通して投光器10に備えられたフォトダイオードからなる位置検出器17へ導かれている。
【0030】
このように構成することにより、遮蔽板16の回転位置が位置検出器17によって正確に検出され、位置検出器17から送出される検出信号によってコントローラ30は遮蔽板16の回転位置をモニターすることができると共に、正確に同期制御することが可能となっている。
【0031】
また、従来用いられるような電磁的機械シャッタは、光源を短時間周期で遮ることによりパルス状光束を送出することには不向きであったが、本例のシャッタ機構14では、シャッタ部を回転式としたことにより短時間周期のパルス状光束を送出することが可能となっている。
【0032】
光検出手段としての分光器20は、分光部21と受光部28を備えている。分光部21はクロスツェルニターナ方式であって、スリット22,コリメート光を形成する反射鏡23,回折格子24,反射鏡25から構成されている。受光部28は、フォトダイオードアレイを備えた検出素子26,検出素子26へ制御信号P1,P2を送出する検出素子駆動部27から構成されている。
【0033】
スリット22を通過した真空室50からの測定光は反射鏡23でコリメート光とされ、該コリメート光は回折格子24に入射し、回折格子24によって波長に応じて回折される。回折格子24で回折された回折光は、反射鏡25で反射されて検出素子26の複数のフォトダイオードにそれぞれ照射される。
【0034】
本例の検出素子26及び検出素子駆動部27からなる受光部28は、電荷蓄積方式のリニアイメージセンサを構成する。検出素子26は、512の測定チャンネルに対応した512個のフォトダイオード,スイッチ,コンデンサ等から構成されている。また、検出素子駆動部27は、コントローラ30からのスタートパルス及びクロック信号に応じて前記各スイッチに制御信号P1,P2を送出するシフトレジスタを備えて構成されている。
【0035】
本例の膜厚計Aは、任意の300nmの波長範囲を指定して測定することができるようになっており、それぞれのフォトダイオードは300nmの測定波長範囲(例えば、380nmから680nm)のうち約0.6nmの波長幅に相当する回折光を受光するようになっている。
【0036】
上記512個のフォトダイオード等の各素子は、512のチャンネルに割り振られており、1番目のチャンネルが長波長側(例えば、680nm付近)、512番目のチャンネルが短波長側(例えば、380nm付近)に設定されている。
【0037】
なお、測定波長範囲は300nmに限定されるものではなく、それぞれのフォトダイオードが照射される波長範囲も約0.6nmに限定されるものではない。また、チャンネル数も512に制限されるものではなく、例えば、1024個のフォトダイオードを備えたリニアイメージセンサを使用して、チャンネル数を1024としてもよい。
【0038】
受光部28の動作の概略を説明する。各チャンネルのフォトダイオードに回折光が照射されると、フォトダイオードによって光電変換され、電荷が受光部28内の不図示のコンデンサに蓄積される。
【0039】
検出素子駆動部27はコントローラ30からスタートパルスを受取ると各チャンネルへ制御信号P1又はP2を送出し始める。そして、検出素子駆動部27は、コントローラ30からクロック信号を受取るごとにチャンネル数を加算していき、時間をずらして順次各チャンネルのスイッチへ制御信号P1又はP2を送出する。
【0040】
各スイッチは、制御信号P1又はP2によって電気的に閉じて各コンデンサが順次出力側に接続される。検出素子駆動部27及び各スイッチは送出手段を構成する。これにより、測定光の照射によって各コンデンサに蓄積された電荷は、コントローラ30側へチャンネルごとに時間をずらして順次出力される。
【0041】
このような電荷蓄積方式の受光部28では、蓄積電荷量は入射光の強さと露光時間の積(露光量)に比例する。しかし、上記コンデンサの容量は有限であるため、所定の露光量(飽和露光量)を超えると出力は一定値をとることになり、測定値として意味を持たなくなる。このため、露光量を適切に調整するために、露光時間の調整が行われる。
【0042】
図3に示すように、コントローラ30は、膜厚測定制御を行うCPU31と、CPU31からの制御信号を受けて検出素子駆動部27へ所定のスタートパルス及びクロック信号を送出するタイミング設定部32と、検出素子26からの出力をチャンネルごとに受取りチャンネルごとの信号増幅を行う増幅部としてのPGA(プログラムゲインアンプ)33と、PGA33からの増幅信号を受取りA/D変換してCPU31へ送出するA/D変換器34と、インターフェース部35と、設定入力処理やデータ出力処理を行うための入出力装置37と、出力データ及び設定値等を記憶する記憶部38等によって構成されている。
【0043】
記憶部38は、ROM38aと、作業エリアとして用いられるRAM38b等を備えている。ROM38aには、膜厚計Aの制御プログラムやオペレーションシステムプログラム等が記憶される。また、モニターやプリンター等の表示装置36がインターフェース部35を介して接続されている。CPU31は、記憶部38のプログラム及び入出力装置37からの設定入力等に基づき、投光器10や分光器20への各種制御信号等の送出及び、分光器20からの測定データの受信、受信データの増幅、記憶、演算、出力等の各種処理を行う。
【0044】
PGA33は、検出素子26からのチャンネルごとの出力を受取り、CPU31からの設定により、チャンネルごとに増幅率を変化させてA/D変換器34へ出力する。すなわち、操作者は、測定波長ごと(すなわち、チャンネルごと)に出力信号を所定の倍数に増幅するように、入出力装置37から設定入力することが可能であり、当該設定入力はCPU31を通してPGA33に設定される。
【0045】
このような構成とすることにより、信号強度の小さい波長範囲の出力信号を選択的に増幅させてデータとして得ることが可能となる。このように小さい信号強度を増幅することにより、光量変化に対する追従性を向上させ、当該増幅信号を制御値として扱いやすくし膜厚制御し易いものとすることができる。
【0046】
また、コントローラ30からインターフェース部35を通して、真空蒸着装置の制御装置51へ所定の膜厚測定データを送出している。制御装置51は該データをもとに、蒸着源を遮るシャッタ装置の駆動制御を行っている。
【0047】
また、コントローラ30は、投光器10へモータ15の回転速度を制御する信号を送出する。モータ15は、該制御信号に基づいて所定の回転速度で遮蔽板16を回転させる。また、位置検出器17から遮蔽板16の回転位置を示す位置信号がコントローラ30へ送出される。これによりコントローラ30は、遮蔽板16の回転位置と、検出素子駆動部27へ送出するスタートパルスを同期させることができるようになっている。
【0048】
次に、本例の膜厚計Aによる膜厚測定手順について説明する。コントローラ30から投光器10へ回転制御信号が送出され、所定回転速度で遮蔽板16が回転すると、図4(A)に示すように真空室50側へ光束が送出される期間(明期間)と送出されない期間(暗期間)が周期的に繰り返される。本例の場合、明暗期間一周期は0.3秒程度となっている。
【0049】
コントローラ30は、明期間の開始に合わせて、同図(B)に示すように検出素子駆動部27へスタートパルスPST1を送出する。また、コントローラ30は、順次にチャンネル数分のクロック信号を検出素子駆動部27へ送出する。検出素子駆動部27は、このスタートパルスPST1を受取ると、コントローラ30からのクロック信号に従い、検出素子26の各チャンネルへ制御信号P1を順次送出し始める。すなわち、同図(C),(D)に示すように、検出素子駆動部27はクロック信号を受取るごとにシフトレジスタによりチャンネルを順次繰り上げ、チャンネルごとに時間をずらしながら制御信号P1を送出する。この制御信号P1によって各チャンネルは順次リセットされる。
【0050】
すなわち、このとき各チャンネルのコンデンサに蓄積されていた電荷が出力される(同図(E)参照)。このようにして、所定時間(T1)で、各チャンネルのリセット出力S1がコントローラ30へ送出される。なお、リセット出力S1は膜厚データに関係しないので、基板1の膜厚制御をするためには用いられない。
【0051】
全てのチャンネルが所定時間(T1)でリセットされると、これから所定時間(T0)経過後にコントローラ30から検出素子駆動部27へスタートパルスPST2が送出され、さらにクロック信号に応じて検出素子駆動部27から各チャンネルへ制御信号P2が制御信号P1と同様に送出される。明期間中、各チャンネルには測定光が照射されている。
【0052】
そして、制御信号P2が各チャンネルへ順次送出されると、各チャンネルのコンデンサに蓄積された電荷は、PGA33へ順次出力される(受光電流出力S2)。このようにして、所定時間(T1)で、各チャンネルの受光電流出力S2がコントローラ30へ送出される(同図(E)参照)。
【0053】
すなわち、各チャンネルからは、各チャンネルのスイッチにリセット用の制御信号P1が送出されてから、出力用の制御信号P2が送出されるまでの測定時間(露光時間)に蓄積された電荷がコントローラ30側へ受光電流出力S2として出力される。図5に示すように、各チャンネルの露光時間TS(=T1+T0、すなわち制御信号P1と制御信号P2との間隔)は一定となっている。
【0054】
また、本例の膜厚計Aでは、明期間だけでなく、暗期間についても同様にスタートパルスPST1,PST2、クロック信号及び制御信号P1,P2が送出され、各チャンネルの出力を検出するようになっている。すなわち、各チャンネルのフォトダイオードに測定光が照射されていないときの受光電流出力S2(実際は、暗電流出力)が、明期間の受光電流出力S2と同様にデータとして出力されている。
【0055】
したがって、暗期間に各チャンネルにリセット用の制御信号P1が送出されてから出力用の制御信号P2が送出されるまでの時間は、明期間のものと略同一(すなわち、露光時間TSに略等しい)となっている。このようにすることにより、フォトダイオードから出力される暗電流出力は時間に比例するものとなるので、同時期の受光電流出力S2に含まれる暗電流分をより正確に見積もることが可能となる。
【0056】
本例の膜厚計Aでは、上述のように明暗期間が周期的に繰り返されて、明期間及び暗期間のそれぞれについて同様な出力処理が行われるので、受光電流出力と暗電流出力が明暗周期ごとに得られる。したがって、明暗周期ごとに暗電流によるノイズ成分を精度よく補正することが可能となっている。
【0057】
図6に膜厚制御データ取得の処理手順を示す。先ず図6に示すように、上記繰返し連続測定によって、各チャンネルの受光電流出力及び暗電流出力を明暗周期毎に得ることができる。検出素子26から出力された各チャンネルの受光電流出力及び暗電流出力は、リアルタイムにPGA33によってチャンネルごとに所定倍数に増幅され、A/D変換器34によってデジタルデータに変換された後、受光電流データ及び暗電流データとしてコントローラ30内の記憶部38に記憶される。
【0058】
そして、これら得られたデータに基づき、演算処理が行われる。具体的には、各チャンネルについて明暗期間周期の測定ごとに受光電流データから暗電流データが差し引かれ、ノイズ分が除去された受光強度データとして記憶部38に記憶される。
【0059】
なお、入出力装置37からの設定入力にしたがい、所定回数(例えば、15回)のデータ積分処理が行われるように構成してもよい。このようにすることにより、データの精度が向上される。
【0060】
そして、演算処理により得られた受光強度データから、さらに光学特性値としての透過率,光学膜厚等が算出され、予め設定された複数のチャンネル(例えば、5チャンネル)についての算出データが外部へ出力され、蒸着処理の制御等に用いられる。本例の場合、上記チャンネルは予め入出力装置37から設定することができるようになっている。また、表示装置36へ表示処理が行われる。なお、すべてのチャンネルについての算出データを外部へ出力するようにしてもよい。
【0061】
なお、本例の膜厚計Aでは、入出力装置37からの設定により、明暗期間周期の各継続時間(明期間時間、暗期間時間)を変えることも可能である。ただし、受光電流出力測定の露光時間と暗電流出力測定の測定時間とを略同一とすることが望ましい。また、上記制御信号P1を送出後、制御信号P2を送出するまでの時間(T0)を変えることも可能である。これらにより、各チャンネルへの任意の露光時間の調整が可能となり、最適な露光時間を選択することができることから、精度の良い膜厚測定データを得ることが可能となる。
【0062】
また、本例の膜厚計Aでは、演算処理におけるデータ積分処理の回数を操作者が入出力装置37によって設定変更することも可能である。例えば、データ積分処理回数を1回のみとすることも可能である。
【0063】
また、本例の膜厚計Aでは、所定の波長範囲(512チャンネル分)を同時に測定することができるが、測定波長範囲内の任意の単数又は複数の波長についてのみ測定することも可能である。この場合、当該波長に対応するチャンネルが指定されることにより所定のデータを得ることができる。
【0064】
また、本例の遮蔽板16は、遮蔽部16aと切欠部16bが1箇所づつ遮蔽板16の周縁に略同角度分だけ形成されているが、これに限らず、図7に示すようにそれぞれ複数の遮蔽部16a,切欠部16bを形成してもよく、また、両者は同角度でなくてもよい。
【0065】
【発明の効果】
以上のように、本発明の膜厚計及び膜厚測定方法によれば、投光器に配設されるシャッタ機構を回転式の遮蔽板による構成としたことにより、成膜基板の光学特性を短時間周期で連続的に測定することができる。
【0066】
また、上記短時間周期の測定において、成膜基板に投光器からの光束が照射されている期間と照射されていない期間の双方について、同じように複数の波長について測定が行われる構成となっている。
【0067】
このような構成としたことにより、一周期内で受光電流出力と暗電流出力の双方の測定を複数の波長について行うことができ、リアルタイムに暗電流分が考慮された精度の良いデータを得ることが可能となる。これにより、膜厚制御の精度を向上させることが可能となる。
【0068】
また、受光部からの出力信号はチャンネルごとに適宜増幅される構成となっているので、データ処理が行いやすく精度よく膜厚制御を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の膜厚計の構成を示す説明図である。
【図2】実施例のシャッタ機構の説明図である。
【図3】実施例の膜厚計の構成を示すブロック図である。
【図4】実施例の連続測定処理の説明図である。
【図5】実施例のチャンネルごとの露光時間を示す説明図である。
【図6】実施例の膜厚制御データ取得の概略処理手順を示す説明図である。
【図7】別実施例のシャッタ機構の説明図である。
【符号の説明】
1 基板、10 投光器、11 投光部、12 光源、13 集光レンズ、14 シャッタ機構、15 モータ、16 遮蔽板、16a 遮蔽部、16b 切欠部、17 位置検出器、20 分光器、21 分光部、22 スリット、23,25 反射鏡、24 回折格子、26 検出素子、27 検出素子駆動部、28 受光部、30 コントローラ、32 タイミング設定部、34 A/D変換器、35 インターフェース部、36 表示装置、37 入出力装置、38 記憶部、40,42 光ファイバ、40a 分岐部、50 真空室、51 制御装置、A 膜厚計、P1,P2 制御信号、S1 リセット出力、S2 受光電流出力、TS 露光時間
Claims (8)
- 光学薄膜が形成された基板へ投光する投光手段と、前記基板からの測定光が導かれる光検出手段と、膜厚測定を制御する制御手段と、を備え、真空室に配置された基板に形成される薄膜の膜厚を測定する膜厚計であって、
前記投光手段は、
前記真空室へ光束を投光する光源と、
該光源からの光束を遮るシャッタ機構と、を備え、
該シャッタ機構は、前記真空室への光束の出口と前記光源との間に配置される回転式の遮蔽板と、該遮蔽板を回転させる駆動部とを具備し、前記遮蔽板には、前記光源から前記基板への光束を遮る遮蔽部と前記光源から前記基板への光束を遮らない切欠部が形成され、前記駆動部による前記遮蔽板の回転により前記光源から前記基板への光束を遮らない明期間と前記光源から前記基板への光束を遮る暗期間を連続周期的に発生させ、
前記遮蔽板の前記基板側には前記遮蔽板の回転位置を検出する位置検出器へ前記光源から前記基板への光束のうち一部の光束を導く光ファイバが配設され、
前記位置検出器は、前記遮蔽板の回転位置信号を前記制御手段へ送出することを特徴とする膜厚計。 - 前記光検出手段は、前記基板からの測定光が光電変換されて受光電流を生起させると共に、該受光電流を前記制御手段へ出力する受光部を備え、
前記制御手段は、前記明期間には所定露光時間で前記測定光による受光電流出力を測定し、前記暗期間には前記所定露光時間と略同一の測定時間で暗電流出力を測定するように前記光検出手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の膜厚計。 - 前記光検出手段は、前記測定光を分光する分光部を備え、
前記受光部は、前記分光部によって分光された光を受光する複数のフォトダイオードと、該各フォトダイオードから出力される受光電流出力及び暗電流出力を前記制御手段へ送出する送出手段と、を備えたことを特徴とする請求項2に記載の膜厚計。 - 前記制御手段は、前記送出手段から受取った前記受光電流出力及び暗電流出力を前記各フォトダイオードに対応させて増幅する増幅部を備えたことを特徴とする請求項3に記載の膜厚計。
- 前記制御手段は、前記回転位置信号と同期して、前記受光電流出力又は前記暗電流出力を前記制御手段へ送出させるスタートパルスを前記送出手段へ送出することを特徴とする請求項3に記載の膜厚計。
- 前記制御手段は、前記駆動部への制御信号により前記遮蔽板の回転速度を可変設定することで、前記明期間の長さと前記暗期間の長さを可変制御可能であることを特徴とする請求項1に記載の膜厚計。
- 前記遮蔽板は、前記遮蔽部及び前記切欠部が1箇所ずつ形成されていることを特徴とする請求項1に記載の膜厚計。
- 真空室内に配置された基板上に形成された薄膜の光学膜厚を測定する方法であって、
前記真空室への光束の出口と前記光源との間に配置される回転式の遮蔽板と、該遮蔽板を回転させる駆動部とを具備し、前記遮蔽板には、前記光源から前記基板への光束を遮る遮蔽部と前記光源から前記基板への光束を遮らない切欠部が形成され、前記駆動部による前記遮蔽板の回転により前記光源から前記基板への光束を遮らない明期間と前記光源から前記基板への光束を遮る暗期間を連続周期的に発生させるシャッタ機構により、前記基板へ光束を断続的に投光し、
前記遮蔽板の前記基板側に配設された光ファイバにより、前記光源から前記基板への光束のうち一部の光束を位置検出器へ導き、該位置検出器で前記遮蔽板の回転位置を検出し、
該検出された回転位置に基づいて、前記基板からの測定光が受光部に照射されている期間に所定露光時間で前記測定光を光電変換して受光電流出力を測定し、
前記検出された回転位置に基づいて、前記基板からの測定光が受光部に照射されていない期間に前記所定露光時間と略同一の測定時間で暗電流出力を測定し、
前記受光電流出力から前記暗電流出力を差し引いた受光強度データをもとに前記光学薄膜の光学特性値を算出する膜厚測定方法。
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