JP2004211623A - 燃料噴射制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】多段噴射を実行する燃料噴射制御装置であって、各噴射を予め定められた噴射順序で、かつ各噴射間に適切な間隔を確保して実行できる燃料噴射制御装置を提供する。
【解決手段】各補助噴射及び主噴射の噴射時期及び噴射期間を決定する決定手段12と、決定手段12により決定された各噴射の噴射順序が予め定められた噴射順序と異なっているとき、各噴射の噴射期間が重なっているとき、又は各噴射の間隔が最低限確保すべき期間よりも短いときに、補正の必要があることを判断する判定手段12と、判定手段12が補正の必要があることを判断したときに、各噴射の噴射順序が予め定められた噴射順序となるように、かつ、各噴射間の間隔が少なくとも上記最低限確保すべき期間となるように噴射時期を補正する補正手段12とを備えたものである。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置に係り、特に、1サイクル間に複数の補助噴射と主噴射とを行う多段噴射を実行するエンジンの燃料噴射制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ディーゼルエンジンでは、1サイクル間に複数の補助噴射と主噴射とを行う多段噴射(マルチ噴射)を実行する燃料噴射制御装置を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1及び2等)。
【0003】
本出願人は、図4に示すような多段噴射を実行する燃料噴射制御装置を発明した。図4は、インジェクタによる燃料噴射を実行するためにインジェクタの駆動回路に出力する駆動パルス(通電パルス)を示しており、横軸がクランク角である。
【0004】
この多段噴射は、1サイクル間に4種類の補助噴射と主噴射との計5回の噴射を実行するものである。まず、主噴射Mよりも早期の時点で最初の噴射であるパイロット噴射PIが行われる。これは、燃料を予混合化するためのものである。次に、主噴射Mの噴射直前に2番目の噴射であるプレ噴射PRが行われる。これは、火種を作り着火遅れを防止するためのものである。そして、圧縮上死点TDC近傍にて主噴射Mが行われ、主噴射Mの噴射直後に4番目の噴射であるアフター噴射AFが行われる。これは、未燃燃料を燃やすためのものである。更に、アフター噴射AFよりも後に5番目の噴射であるポスト噴射POが行われる。これは、排気温度を上昇させて排気ガス後処理装置の処理能力を高めるためのものである。
【0005】
各噴射(主噴射及び各補助噴射)の噴射時期及び噴射量は次のように決定される。
【0006】
まず、エンジン回転速度やエンジン負荷などのエンジン運転状態を示すパラメータに基づいてマップなどから主噴射Mの噴射開始時期MST及び噴射量MQ(噴射期間に相当)を決定する。
【0007】
そして、主噴射Mの噴射開始時期MSTから所定のインターバル(非噴射期間)IVだけ進角させたポイントを、プレ噴射PRの噴射終了時期PRETとして決定する。インターバルIVは、インジェクタ駆動回路のコンデンサ充電に要する期間であり、各噴射の間に最低限確保する必要のある期間である。プレ噴射PRの噴射量PRQは、エンジン運転状態を示すパラメータに基づいてマップなどから決定され、プレ噴射PRの噴射終了時期PRETから噴射量PRQに相当する噴射期間だけ進角させたポイントがプレ噴射PRの噴射開始時期PRSTとして決定される。
【0008】
また、主噴射Mの噴射終了時期METから上記インターバルIVだけ遅角させたポイントが、アフター噴射AFの噴射開始時期AFSTとして決定される。アフター噴射AFの噴射量(噴射期間)AFQはエンジン運転状態を示すパラメータに基づいてマップなどから決定され、アフター噴射AFの噴射開始時期AFSTから噴射期間AFQだけ遅角させたポイントがアフター噴射AFの噴射終了時期AFETとして決定される。
【0009】
一方、パイロット噴射PI及びポスト噴射POの噴射開始時期PIST,POST及び噴射量(噴射期間)PIQ,POQは、エンジン運転状態を示すパラメータに基づいてマップなどから独立して決定される。
【0010】
【特許文献1】
特開平5−321732号公報
【特許文献2】
特開2000−205021号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、パイロット噴射PI及びポスト噴射POの噴射開始時期及び噴射量は、その目的に応じて他の噴射とは相関なく決定されるため、エンジンの運転状態によっては次のような問題が発生する場合があった。
【0012】
1)各噴射の噴射順序が入れ替わってしまう。例えば、図5(a)に示すように、2番目の噴射であるプレ噴射PRの噴射開始時期PRSTがパイロット噴射PIの噴射開始時期PISTよりも早くなってしまう。
【0013】
2)各噴射の噴射期間が重なってしまう。例えば、図5(b)に示すように、最初の噴射であるパイロット噴射PIの噴射終了時期PIETよりも2番目の噴射であるプレ噴射PRの噴射開始時期PRSTが早くなり、結果として一つの長い(噴射量の多い)噴射となってしまう。
【0014】
3)各噴射の間に上記最低限必要なインターバルIVを確保できない。例えば、図5(c)に示すように、パイロット噴射PIの噴射終了時期PIETとプレ噴射PRの噴射開始時期PRSTとの間の間隔(非噴射期間)WがインターバルIVよりも短くなってしまう。
【0015】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、多段噴射を実行するエンジンの燃料噴射制御装置であって、各噴射を、予め定められた噴射順序で、かつ各噴射間に適切な間隔を確保して実行できるように改良した燃料噴射制御装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、1サイクル間に複数の補助噴射と主噴射とを行う多段噴射を実行するエンジンの燃料噴射制御装置であって、エンジン運転状態を示すパラメータに基づいて上記各補助噴射及び主噴射の噴射時期及び噴射期間を各々決定する決定手段と、上記決定手段により決定された上記各噴射の噴射順序が予め定められた噴射順序と異なっているとき、上記決定手段により決定された上記各噴射の噴射期間が重なっているとき、又は上記決定手段により決定された上記各噴射の間隔が最低限確保すべき期間よりも短いときに、補正の必要があることを判断する判定手段と、上記判定手段が補正の必要があることを判断したときに、上記各噴射の噴射順序が上記予め定められた噴射順序となるように、かつ、各噴射間の間隔が少なくとも上記最低限確保すべき期間となるように上記決定手段により決定された上記噴射時期を補正する補正手段とを備えたものである。
【0017】
ここで、上記各噴射の優先順位が予め定められ、上記補正手段は、上記判定手段が補正の必要があることを判断したときに、優先順位の低い噴射の噴射期間を補正することが好ましい。
【0018】
また、上記各噴射の優先順位は、上記主噴射が一番高く、上記予め定められた順序が上記主噴射から離れるにつれて低くなるように設定しても良い。
【0019】
更に本発明は、1サイクル間に複数の補助噴射と主噴射とを行う多段噴射を実行するエンジンの燃料噴射制御装置であって、エンジン運転状態を示すパラメータに基づいて上記各補助噴射及び主噴射の噴射時期及び噴射期間を決定する決定手段と、上記決定手段により決定された上記各噴射の噴射順序が予め定められた噴射順序と異なっているとき、上記決定手段により決定された上記各噴射の噴射期間が重なっているとき、又は上記決定手段により決定された上記各噴射の間隔が最低限確保すべき期間よりも短いときに、補正の必要があることを判断する判定手段と、上記判定手段が、補正の必要があることを判断したときに、噴射順序の入れ替わっている噴射、噴射期間の重なっている噴射、又は互いの間隔が上記期間よりも短い噴射のうち一方の噴射の実行を禁止する禁止手段とを備えたものである。
【0020】
ここで、上記各噴射の優先順位が予め定められ、上記禁止手段は、上記判定手段が補正の必要があることを判断したときに、優先順位の低い噴射の実行を禁止することが好ましい。
【0021】
また、上記各噴射の優先順位は、上記主噴射が一番高く、上記予め定められた順序が上記主噴射から離れるにつれて低くなるように設定しても良い。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0023】
図1は本実施形態に係る燃料噴射制御装置の概略図である。
【0024】
本実施形態の燃料噴射制御装置は車両に搭載された6気筒ディーゼルエンジンEの燃料噴射制御を実行するためのものである。
【0025】
エンジンEの各気筒に燃料噴射弁(インジェクタ)6が設けられ、各インジェクタ6にはコモンレール7に貯留されたコモンレール圧(数10〜数100MPa)の高圧燃料が常時供給される。コモンレール7への燃料圧送はサプライポンプ5によって行われる。即ち、図示しない燃料タンク内の燃料(軽油)がサプライポンプ5に送られ、サプライポンプ5により加圧された後、コモンレール7へと圧送供給される。サプライポンプ5は吐出圧力を調整可能な調圧ポンプであり、コントローラ12によってその吐出圧力が制御される。
【0026】
また、コモンレール7には圧力センサ11が設けられており、コモンレール7内の燃料圧力が圧力センサ11により検出され、その検出値がコントローラ12に入力される。
【0027】
コントローラ12は本装置を総括的に電子制御するもので、制御処理、演算処理を行うCPU、各種制御プログラムやマップ等を記憶するメモリ(ROM)などを備えている。コントローラ12には、エンジンEの回転速度を検出するエンジン回転センサ16、車両のアクセル開度(エンジン負荷)を検出するアクセル開度センサ17、エンジンEのクランク軸(図示せず)の角度を検出するクランク角度センサ18等の検出手段が接続されており、各検出手段16,17,18の検出値がコントローラ12に入力される。なお、エンジン回転センサ16とクランク角度センサ18とは実質的に同一のものであっても良い。
【0028】
コントローラ12は、クランク角度センサ18から送られたクランク角度信号に応じてインジェクタ6の駆動回路(図示せず)に駆動パルス(通電パルス)を出力してインジェクタ6を開閉制御し、インジェクタ6による燃料の噴射時期及び噴射量を制御する。
【0029】
本実施形態の燃料噴射制御装置は、図4に示すような多段噴射を実行する。各補助噴射の目的については、「従来の技術」の欄で説明したので省略するが、要するに、主噴射Mと4種類の補助噴射PI,PR,AF,POを実行する。各噴射の順序は予め定められており、図示の通り、▲1▼パイロット噴射PI、▲2▼プレ噴射PR、▲3▼主噴射M、▲4▼アフター噴射AF、▲5▼ポスト噴射POである。コントローラ12には、この噴射順序が予め記憶されている。なお、ポスト噴射POは常時行われるものではなく、排気温度が低くかつ排気ガス後処理装置のフィルタが目詰まりしたときなど、所定の条件が成立したときに実行されるものである。以下の説明ではポスト噴射POの実行条件が成立しているとして説明する。
【0030】
各噴射(主噴射及び各補助噴射)の噴射時期及び噴射量(噴射期間)の決定方法は次の通りである。
【0031】
まず、コントローラ12は、エンジン回転センサ16により検出された実際のエンジン回転速度とアクセル開度センサ17により検出された実際のアクセル開度に基づいてマップ又は演算式から主噴射Mの噴射開始時期MST及び噴射量(噴射期間)MQを決定する。
【0032】
そして、主噴射Mの噴射開始時期MSTから所定のインターバル(非噴射期間)IVだけ進角させたポイントを、プレ噴射PRの噴射終了時期PRETとして決定する。インターバルIVは、インジェクタ6の駆動回路のコンデンサ充電に要する期間であり、各噴射の間に最低限確保する必要のある期間である。インターバルIVはエンジンEの回転速度に応じて変化する値であり、コントローラ12はエンジン回転センサ16により検出された実際のエンジン回転速度に基づいてマップ又は演算式からインターバルIVを決定する。
【0033】
プレ噴射PRの噴射量(噴射期間)PRQは、上記実際のエンジン回転速度と実際のアクセル開度とに基づいてマップ又は演算式から決定され、プレ噴射PRの噴射終了時期PRETから噴射期間PRQだけ進角させたポイントがプレ噴射PRの噴射開始時期PRSTとして決定される。
【0034】
また、主噴射Mの噴射終了時期METから上記インターバルIVだけ遅角させたポイントが、アフター噴射AFの噴射開始時期AFSTとして決定される。アフター噴射AFの噴射量(噴射期間)AFQは上記実際のエンジン回転速度と実際のアクセル開度とに基づいてマップ又は演算式から決定され、アフター噴射AFの噴射開始時期AFSTから噴射期間AFQだけ遅角させたポイントがアフター噴射AFの噴射終了時期AFETとして決定される。
【0035】
一方、パイロット噴射PI及びポスト噴射POの噴射開始時期PIST,POST及び噴射量(噴射期間)PIQ,POQは、上記実際のエンジン回転速度と実際のアクセル開度とに基づいてマップ又は演算式から独立して決定される。
【0036】
なお、各噴射の噴射時期及び噴射量は、水温、吸気圧、吸気温度等の各種条件に基づいて補正するようにしても良い。
【0037】
本実施形態の燃料噴射制御装置は、このようにして決定された各噴射の噴射時期及び噴射期間に「発明が解決しようとする課題」の欄で説明したような問題が生じたときに、噴射時期を適切に補正する。つまり、▲1▼.噴射順序が入れ替わった場合(図5(a)参照)、▲2▼.噴射期間が重なった場合(図5(b)参照)、▲3▼.噴射間の間隔(非噴射期間)がインターバルIVよりも短い場合(図5(c)参照)に噴射時期の補正を実行する。
【0038】
なお、本実施形態では、主噴射Mとプレ噴射PR及び主噴射Mとアフター噴射AFとは互いに相関をもって決定されるので、上記▲1▼〜▲3▼の問題が発生することはない。本実施形態において、実際に上記問題が発生する可能性があるのは、パイロット噴射PIとプレ噴射PR及びアフター噴射AFとポスト噴射POである。
【0039】
以下、図2のフローチャートを用いて、本実施形態の燃料噴射制御装置による噴射時期の補正方法について説明する。
【0040】
まず、ステップS1において、上述した方法で各噴射の噴射開始時期及び噴射量(噴射期間)を決定する。
【0041】
次に、ステップS2に進み、ステップS1で決定した各噴射の噴射開始時期の順序がコントローラ12に予め記憶されている規定の噴射順序と等しいかどうかを判定する。つまり、上記▲1▼の問題の発生の有無を判定する。
【0042】
各噴射の噴射開始時期の順序が規定通りであれば、ステップS3に進み、ステップS1で決定した各噴射の噴射期間の重なり(ラップ)が存在するかを判定する。ここでは、上記▲2▼の問題の発生の有無を判定する。
【0043】
全ての噴射間で噴射期間の重なりが存在しないと判定されたならば、ステップS4に進み、各噴射間の間隔が上記インターバルIV以上であるかを判定する。ここでは、上記▲3▼の問題の発生の有無を判定する。インターバルIVの値は、エンジン回転センサ16により検出された実際のエンジン回転速度等に基づいてマップや演算式などから決定される。
【0044】
ステップS2〜S4の全てを満たす場合は、ステップS5に進み、ステップS1で決定した各噴射の噴射開始時期及び噴射量(噴射期間)に従ってインジェクタ6の駆動回路に駆動パルス(通電パルス)を出力する。つまり、噴射時期の補正は実行しない。
【0045】
一方、ステップS2〜S4のうち一つでも満たさない場合、ステップS6に進み、問題を有する噴射(つまり、順番が入れ替わっている噴射、噴射期間が重なっている噴射、あるいは互いの間隔がインターバルIVよりも短い噴射)で優先順位を比較する。この優先順位は予めコントローラ12に記憶されており、本実施形態では、主噴射Mを筆頭に、規定の噴射順序が主噴射Mから離れるほど低くなる。つまり、優先順位は主噴射Mが1番であり、次にプレ噴射PR及びアフター噴射AFが2番、パイロット噴射PI及びポスト噴射POが3番である。なお、主噴射Mを挟んで進角側と遅角側とに分かれる噴射間については優先順位を設定していない。これは、それら噴射間で上記問題が発生することは実際上ありえないからである。
【0046】
さて、ステップS6で優先順位を比較したならば、ステップS7に進み、優先順位の低い噴射の噴射開始時期を、各噴射の噴射順序が規定通りとなるように、かつ各噴射間にインターバルIVを確保できるように補正する。例えば、パイロット噴射PIとプレ噴射PRとの間で上記問題が発生したと判定された場合、パイロット噴射PIの噴射開始時期を、パイロット噴射PIの噴射終了時期とプレ噴射PRの噴射開始時期との間にインターバルIVを確保できるポイントまで進角側に補正する。また、アフター噴射AFとポスト噴射POとの間で上記問題が発生したと判定された場合、ポスト噴射POの噴射開始時期を、アフター噴射AFの噴射終了時期との間にインターバルIVを確保できるポイントまで遅角側に補正する。この補正によって、各噴射の噴射開始時期を規定の噴射順序通りにすることができ、また各噴射間に適切な間隔を確保することが可能となる。
【0047】
ところで、燃料噴射制御装置には、燃料噴射制御を実行できる時期(クランク角)に制約がある。つまり、圧縮上死点TDCの進角側及び遅角側に燃料噴射制御の限界角を有しており、進角側限界角よりも早期、及び遅角側限界角よりも遅期では燃料噴射制御を行うことができない。限界角は、エンジンEやコントローラ12の種類などにより異なる。本実施形態の燃料噴射制御装置では、進角側限界角がBTDC60CA、遅角側限界角がATDC60CAとする。
【0048】
そこで、ステップS7で噴射時期の補正を行った後、ステップS8に進み、補正後の噴射期間が限界角以内であるかを判定する。例えば、パイロット噴射PIの噴射開始時期を進角補正した場合、補正後の噴射開始時期が進角側限界角(BTDC60CA)よりも遅角側であるかを判定する。また、ポスト噴射POの噴射開始時期を遅角補正した場合、補正後のポスト噴射POの噴射終了時期が遅角側限界角(ATDC60CA)よりも進角側であるかを判定する。
【0049】
補正後の噴射期間が限界角以内であれば、ステップS9に進み、ステップS7で補正した噴射時期及び噴射量(噴射期間)に従ってインジェクタ6の駆動回路に駆動パルスを出力する。なお、ステップS7で補正が行われない噴射については、ステップS1で決定した噴射時期及び噴射量(噴射期間)に従ってインジェクタ6の駆動回路に駆動パルスを出力するのは勿論である。
【0050】
一方、補正後の噴射期間が限界角を越えている場合、ステップS10に進み、その噴射の噴射期間が限界角以内となるように補正する。具体的には、パイロット噴射PIの噴射開始時期が進角側限界角よりも進角側である場合は、噴射開始時期を進角側限界角に補正する。パイロット噴射PIの噴射終了時期はプレ噴射PRとの間にインターバルIVを確保する必要があるのでそのままとする。従って、パイロット噴射PIの噴射量は少なく(噴射期間が短く)なる。また、ポスト噴射POの噴射終了時期が遅角側限界角よりも遅角側である場合は、噴射終了時期を遅角側限界角に補正する。この場合も、ポスト噴射POの噴射開始時期は補正しない。
【0051】
次にステップS11に進み、ステップS10で補正した噴射の噴射量(噴射期間)が最小値以上であるかどうかを判定する。この最小値は、インジェクタ6によって実際に燃料を噴射することのできる最小の値である。つまり、この値よりも小さい噴射量(噴射期間)に相当する駆動パルスを出力しても、実際にはインジェクタ6から燃料は噴射されない。
【0052】
従って、補正後の噴射量が最小値よりも小さい場合、ステップS12に進み、その噴射の実行を禁止する。
【0053】
補正後の噴射量が最小値以上であれば、ステップS13に進み、ステップS10で補正した噴射時期及び噴射量(噴射期間)に従ってインジェクタ6の駆動回路に駆動パルスを出力する。
【0054】
なお、図2のフローチャートでは示されていないが、ステップS7で補正した結果、補正後の噴射期間が完全に限界角を越えている場合、つまり、パイロット噴射PIを補正したときに補正後の噴射終了時期が進角側限界角よりも進角側となった場合や、ポスト噴射POを補正したときに補正後の噴射開始時期が遅角側限界角よりも遅角側となった場合などは、その噴射の実行を禁止する。
【0055】
以上のフローチャートはコントローラ12により実行される。従って、本実施形態のコントローラ12は、「特許請求の範囲」における、決定手段、判定手段及び補正手段としての機能を有している。
【0056】
なお、噴射時期の補正方法は上記実施形態に限定はされず他の方法も考えられる。
【0057】
例えば、図2のステップS8において、補正後の噴射期間が限界角を越えていると判定されたときに、その噴射の実行を禁止するようにしても良い。
【0058】
次に本発明の他の実施形態を図3のフローチャートに基づいて説明する。
【0059】
まず、ステップS101において、上述した方法で各噴射の噴射開始時期及び噴射量を決定する。
【0060】
次に、ステップS102〜S104において、図2のステップS2〜S4と同様に、各噴射の噴射順番が規定の噴射順序と等しいかどうか(S102)、噴射期間の重なりがないかどうか(S103)、各噴射間の間隔がインターバルIVよりも大きいかどうか(S104)をそれぞれ判定する。
【0061】
ステップS102〜S104を全て満たす場合は、ステップS105に進み、ステップS101で決定した各噴射の噴射開始時期及び噴射量に従ってインジェクタ6の駆動回路に駆動パルスを出力する。
【0062】
ステップS102〜S104のうち一つでも満たさない場合、ステップS106に進み、問題を有する二つの噴射の優先順位を比較する。各噴射間の優先順位は図2の形態と同様である。即ち、主噴射Mを筆頭に、規定の噴射順序が主噴射Mから離れるほど低くなる。そして、ステップS107に進み、それら二つの噴射のうち優先順位の低い方の実行を禁止する。
【0063】
この形態では、コントローラ12は「特許請求の範囲」における、禁止手段としての機能を有する。
【0064】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、各噴射を予め定められた噴射順序で、かつ各噴射間に適切な間隔を確保して実行できるという優れた効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の燃料噴射制御装置の概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る燃料噴射制御装置による噴射時期補正方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明の他の実施形態に係る燃料噴射制御装置による噴射時期補正方法を示すフローチャートである。
【図4】多段噴射の一例を説明する図である。
【図5】(a)噴射順序が入れ替わった状態を示す図である。
(b)噴射期間が重なった状態を示す図である。
(c)噴射間の間隔が所定のインターバルよりも短くなった状態を示す図である。
【符号の説明】
6 燃料噴射弁
7 コモンレール
12 コントローラ(決定手段、判定手段、補正手段、禁止手段)
16 エンジン回転センサ
17 アクセル開度センサ
18 クランク角度センサ
AF アフター噴射
IV インターバル
M 主噴射
PI パイロット噴射
PO ポスト噴射
PR プレ噴射

Claims (6)

  1. 1サイクル間に複数の補助噴射と主噴射とを行う多段噴射を実行するエンジンの燃料噴射制御装置であって、
    エンジン運転状態を示すパラメータに基づいて上記各補助噴射及び主噴射の噴射時期及び噴射期間を各々決定する決定手段と、
    上記決定手段により決定された上記各噴射の噴射順序が予め定められた噴射順序と異なっているとき、上記決定手段により決定された上記各噴射の噴射期間が重なっているとき、又は上記決定手段により決定された上記各噴射の間隔が最低限確保すべき期間よりも短いときに、補正の必要があることを判断する判定手段と、
    上記判定手段が補正の必要があることを判断したときに、上記各噴射の噴射順序が上記予め定められた噴射順序となるように、かつ、各噴射間の間隔が少なくとも上記最低限確保すべき期間となるように上記決定手段により決定された上記噴射時期を補正する補正手段とを備えたことを特徴とする燃料噴射制御装置。
  2. 上記各噴射の優先順位が予め定められ、上記補正手段は、上記判定手段が補正の必要があることを判断したときに、優先順位の低い噴射の噴射期間を補正する請求項1記載の燃料噴射制御装置。
  3. 上記各噴射の優先順位が、上記主噴射が一番高く、上記予め定められた順序が上記主噴射から離れるにつれて低くなるように設定された請求項2記載の燃料噴射制御装置。
  4. 1サイクル間に複数の補助噴射と主噴射とを行う多段噴射を実行するエンジンの燃料噴射制御装置であって、
    エンジン運転状態を示すパラメータに基づいて上記各補助噴射及び主噴射の噴射時期及び噴射期間を決定する決定手段と、
    上記決定手段により決定された上記各噴射の噴射順序が予め定められた噴射順序と異なっているとき、上記決定手段により決定された上記各噴射の噴射期間が重なっているとき、又は上記決定手段により決定された上記各噴射の間隔が最低限確保すべき期間よりも短いときに、補正の必要があることを判断する判定手段と、
    上記判定手段が、補正の必要があることを判断したときに、噴射順序の入れ替わっている噴射、噴射期間の重なっている噴射、又は互いの間隔が上記期間よりも短い噴射のうち一方の噴射の実行を禁止する禁止手段とを備えたことを特徴とする燃料噴射制御装置。
  5. 上記各噴射の優先順位が予め定められ、上記禁止手段は、上記判定手段が補正の必要があることを判断したときに、優先順位の低い噴射の実行を禁止する請求項4記載の燃料噴射制御装置。
  6. 上記各噴射の優先順位が、上記主噴射が一番高く、上記予め定められた順序が上記主噴射から離れるにつれて低くなるように設定された請求項5記載の燃料噴射制御装置。
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