JP2004100567A - 内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】マルチ燃料噴射における各燃料噴射の噴射時期、噴射量等の噴射特性値を実際の燃焼状態に基づいて最適な値にフィードバック制御する。
【解決手段】1気筒サイクルあたりに複数回のマルチ燃料噴射を行うディーゼル機関1の各気筒に燃焼室内圧力を検出する筒内圧センサ29a〜29dを設ける。機関の電子制御ユニット(ECU)20は、筒内圧センサで検出さした燃焼室内圧力Pと燃焼室容積Vとを用いて、パラメータPVγのクランク角θについての微分値d(PVγ)/dθを算出し、この値に基づいて各噴射における燃料の燃焼開始時期及び終了時期を、また、上記により算出した燃焼開始と終了時期とにおける値PVから各噴射の発熱量を算出する。ECUは更に、上記により算出した燃焼開始時期、終了時期及び発熱量が最適な値になるように各燃料噴射の噴射量、噴射時期、噴射圧などの噴射特性値をフィードバック制御する。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の燃料噴射制御装置に関し、詳細にはディーゼル機関の燃焼を最適化する燃料噴射制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の排気ガス規制の強化や騒音低減に対する要求から、ディーゼル機関においても燃焼室内での燃焼最適化の要求が高まってきている。燃焼最適化のためにはディーゼル機関においても燃料噴射量、燃料噴射時期、噴射期間などを正確に制御することが必要となる。
【0003】
しかし、ディーゼル機関では、一般に吸入空気量の調整は行わず機関負荷は燃料噴射量により制御している。従って、ディーゼル機関では理論空燃比よりかなり高いリーン空燃比領域で燃焼が行われ、しかも負荷に応じて空燃比が変化する。このため、従来ディーゼル機関では、ガソリン機関のように、空燃比を厳密に制御することは行われておらず、従来、燃料噴射量、燃料噴射時期などの燃料噴射パラメータもガソリン機関ほどには精密な制御は行われていない。又、従来、ディーゼル機関では機関運転条件(回転数、アクセル開度など)から燃料噴射量、噴射時期、噴射圧などの燃料噴射特性値の目標値を決定し、この目標値に応じて燃料噴射弁をオープンループ制御しているが、オープンループ制御では、実際の燃料噴射量が目標噴射量に対して誤差を生じることを防止できず、燃焼状態を目標とする状態に正確に制御することは困難であった。
【0004】
更に、排気ガス性状の改善と騒音の低減のためには、各気筒の1サイクル中に、主燃料噴射の前後に複数回の燃料噴射を行い、燃焼状態を最適に調整するマルチ燃料噴射が有効である。しかし、マルチ燃料噴射を行うためには、複数回の燃料噴射のそれぞれの燃料噴射量と噴射時期とを精密に制御する必要がある。
また、燃焼状態改善のために最近ディーゼル機関において採用されるようになったコモンレール式高圧燃料噴射装置では、燃料噴射時間が短く、しかも噴射中に燃料噴射圧が変化する等のため、燃料噴射量に誤差を生じやすい問題がある。このため、コモンレール式高圧燃料噴射装置では燃料噴射弁の公差を小さく設定して燃料噴射精度を向上させる等の対策が取られているが、実際には燃料噴射弁は各部の摩耗などにより使用期間ともに燃料噴射特性が変化するため、オープンループ制御を行っていたのでは燃料噴射特性値を常に正確に目標値に一致させることは困難である。
【0005】
このように、ディーゼル機関では燃料噴射量などに誤差が生じやすいため最適な燃焼状態を得る目標値を設定できても、実際にその燃料噴射量を目標値に合致させることが困難な事情がある。
燃焼状態を目標とする燃焼状態に合致させるためには、実際の燃焼状態を何らかの形で検出し、実際の燃焼状態が目標とする燃焼状態に合致するように燃料噴射量や燃料噴射時期などの燃料噴射特性値をフィードバック制御することが有効である。
【0006】
このように、燃焼状態を検出して燃料噴射特性値をフィードバック制御する内燃機関の燃焼制御装置の例としては特許文献1に記載されたものがある。
【0007】
特許文献1の装置は、ディーゼル機関の燃焼騒音を計測し、計測した燃焼騒音に基づいてパイロット噴射量が多すぎるのか少なすぎるのかを判断し、これに基づいてパイロット噴射量を補正するものである。また、燃焼騒音としては、燃焼室内圧力を検出する筒内圧センサで検出した筒内圧の微分値または2階微分値を用いることによりメカニカルな振動の影響を除いて燃焼騒音の検出精度を向上させるようにしている。
【0008】
すなわち、特許文献1の装置は実際に計測した燃焼騒音に基づいてパイロット噴射量をフィードバック制御することにより、燃焼騒音を常に目標レベル以下に抑制するものである。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−123871号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、特許文献1の装置では、実際に計測した燃焼騒音に基づいてパイロット噴射量をフィードバック制御するため、燃焼騒音を常に目標レベル以下に抑制することができる。しかし、特許文献1の装置では、燃焼騒音は目標値以下に抑制されるものの、必ずしも常に良好な燃焼状態が得られるとは限らず、逆に排気性状が悪化する場合も生じる。
【0011】
すなわち、良好な排気性状を得るためには、パイロット噴射の噴射量のみではなく噴射時期をも適切に制御する必要があるが、特許文献1の装置では、燃焼騒音に基づいてパイロット噴射の噴射量のみを制御しており、噴射時期については実際の燃焼状態に基づく制御は行っていない。このため、特許文献1のそうちでは、仮に燃焼騒音は低下したとしても、排気性状が常に向上するとは限らない問題がある。
【0012】
更に、特許文献1の装置は、パイロット噴射、それもパイロット噴射を1回だけ行う運転のみを対象としているため、複数回のパイロット噴射や、主燃料噴射の後にアフター噴射を行う場合があるマルチ燃料噴射については、各燃料噴射の噴射量や噴射時期を適切に制御することができない問題がある。
【0013】
本発明は、上記従来技術の問題に鑑み、複数回の燃料噴射を行うマルチ噴射の場合にも各燃料噴射の噴射量と噴射時期などの噴射特性値を実際の燃焼状態に基づいて最適な値にフィードバック制御することが可能な内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明によれば、機関燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射弁を備えた内燃機関の燃料噴射制御装置であって、機関燃焼室内の圧力を検出する筒内圧センサを備え、前記筒内圧センサで検出した燃焼室内圧力Pと、クランク角θから定まる燃焼室容積Vと、予め定めた定数γとを用いて、Vのγ乗とPとの積として算出されるパラメータPVγのクランク角θに対する変化率d(PVγ)/dθの値を算出し、前記変化率の値に基づいて、燃焼室内での燃焼開始時期と終了時期とを含む燃焼期間を検出するとともに、前記燃焼期間が予め定めた期間に一致するように、前記燃料噴射弁からの燃料噴射時期と燃料噴射圧との少なくとも一方を補正する、内燃機関の燃料噴射制御装置が提供される。
【0015】
すなわち、請求項1の発明では、筒内圧センサで検出した燃焼室内圧力Pに基づいて算出されるパラメータPVγに基づいて燃焼室内での燃焼期間が検出される。気筒内で燃焼が生じていない場合、すなわち気筒内で発熱がない場合には気筒内でのピストンによる圧縮はポリトロープ変化であり、圧力Pと容積Vから算出されるパラメータPVγの値は常に一定値になる(γはポリトロープ指数)。従って、発熱がない場合にはパラメータPVγはクランク角θにかかわらず一定であるため、d(PVγ)/dθの値はゼロになる。
【0016】
一方、気筒内に発熱があると、すなわち燃焼が生じていると発熱がある間は入熱によりPVγの値は増大するため、d(PVγ)/dθの値は正になる。このため、d(PVγ)/dθの値が正の値になっている期間は気筒内で燃焼が生じていると判定できる。また、気筒内で燃焼が開始した点はd(PVγ)/dθの値がゼロから正の値に変化した時点として、燃焼が終了した点はd(PVγ)/dθの値が正の値から0に変化した時点として検出することができる。
【0017】
また、燃焼開始時点は燃料噴射開始時期に応じて変化する。更に、燃焼期間は燃料噴射期間に応じて変化し、燃料噴射期間は燃料噴射量が一定であれば燃料噴射圧に応じて変化する。
このため、予め機関運転状態に応じて最適な燃焼期間(燃焼開始及び終了時期)を求めておき、パラメータPVγから求められる実際の燃焼期間が上記最適な燃焼期間に一致するように、燃料噴射開始時期又は/及び燃料噴射圧をフィードバック補正することにより、実際の運転においても燃焼期間を最適に制御することが可能となる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、更に、前記燃焼開始時期と前記燃焼終了時期とにおける前記燃焼室内圧力Pと前記燃焼室容積Vとの積として算出されるパラメータPVの値に基づいて前記燃焼期間における筒内発熱量を算出するとともに、算出した筒内発熱量が予め定めた量になるように前記燃料噴射弁からの燃料噴射量を補正する、請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置が提供される。
【0019】
すなわち、請求項2の発明では更に、パラメータPVの値から発熱量が求められる。圧力と容積との積PVの値は筒内ガスのもつエネルギーに対応した値となり、PVの単位時間当たりの変化量は筒内ガスに付与されたエネルギー、すなわちピストンの上昇による圧縮仕事と燃焼による発熱量との和になる。
従って、燃焼終了時のPVの値と燃焼開始時のPVの値との差は燃焼期間に筒内ガスに与えられたエネルギーの総量、すなわち燃焼による総発熱量とピストンの圧縮仕事との和になる。一方、ピストンの圧縮仕事はクランク角の関数として容易に算出されるため、燃焼開始時と終了時のPVの値から燃焼による総発熱量が算出できる。
【0020】
燃焼による総発熱量は燃料噴射量に対応しているため、予め機関運転状態に応じて最適な燃焼の発熱量を求めておき、パラメータPVから求められる実際の燃焼の発熱量が上記最適な発熱量に一致するように、燃料噴射量をフィードバック補正することにより、実際の運転においても発熱量(燃料噴射量)を最適に制御することが可能となる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、主燃料噴射に加えて、主燃料噴射の前または後、若しくは前と後との両方に機関燃焼室に燃料を噴射するマルチ燃料噴射を行い、マルチ燃料噴射における少なくとも1つ以上の燃料噴射に対して前記d(PVγ)/dθの値に基づく燃料噴射時期または燃料噴射圧の補正と、前記PVの値に基づく燃料噴射量の補正を行う、請求項2に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置が提供される。
【0022】
すなわち、請求項3の発明では、マルチ燃料噴射を行う場合に、マルチ燃料噴射を構成する少なくとも1つ以上の燃料噴射に対して請求項1と2とで説明した補正が行われる。
パラメータPVγに基づく燃料噴射開始時期、燃料噴射圧の補正、及びパラメータPVに基づく燃料噴射の補正は、気筒の1行程サイクルに複数回の燃料噴射が行われる場合にも、各々の燃料噴射に対して適用することが可能である。
このため、マルチ燃料噴射における少なくとも1つ以上の燃料噴射に対して上記補正を行うことにより、マルチ燃料噴射のそれぞれの燃料噴射の燃料噴射量、噴射時期、噴射圧が正確に最適値にフィードバック補正される。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の燃料噴射装置を自動車用ディーゼル機関に適用した場合の実施形態の概略構成を示す図である。
図1において、1は内燃機関(本実施形態では#1から#4の4つの気筒を備えた4気筒4サイクルディーゼル機関が使用される)、10aから10dは機関1の#1から#4の各気筒燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁を示している。燃料噴射弁10aから10dは、それぞれ燃料通路(高圧燃料配管)を介して共通の蓄圧室(コモンレール)3に接続されている。コモンレール3は、高圧燃料噴射ポンプ5から供給される加圧燃料を貯留し、貯留した高圧燃料を高圧燃料配管を介して各燃料噴射弁10aから10dに分配する機能を有する。
【0024】
図1に20で示すのは、機関の制御を行う電子制御ユニット(ECU)である。ECU20は、リードオンリメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、マイクロプロセッサ(CPU)、入出力ポートを双方向バスで接続した公知の構成のマイクロコンピュータとして構成されている。ECU20は、本実施形態では、燃料ポンプ5の吐出量を制御してコモンレール3圧力を機関運転条件に応じて定まる目標値に制御する燃料圧制御を行っている他、機関運転状態に応じて燃料噴射の噴射時期及び噴射量の目標値を設定するとともに、後述する筒内圧センサ出力に基づいて求めたパラメータを用いて燃料噴射量、噴射時期、燃料噴射圧等の燃料噴射特性値をフィードバック制御する燃料噴射制御等の機関の基本制御を行う。
【0025】
これらの制御を行なうために、本実施形態ではコモンレール3にはコモンレール内燃料圧力を検出する燃料圧センサ27が設けられている他、機関1のアクセルペダル(図示せず)近傍にはアクセル開度(運転者のアクセルペダル踏み込み量)を検出するアクセル開度センサ21が設けられている。また、図1に23で示すのは機関1のカム軸の回転位相を検出するカム角センサ、25で示すのはクランク軸の回転位相を検出するクランク角センサである。カム角センサ23は、機関1のカム軸近傍に配置され、クランク回転角度に換算して720度毎に基準パルスを出力する。また、クランク角センサ25は、機関1のクランク軸近傍に配置され所定クランク回転角毎(例えば15度毎)にクランク角パルスを発生する。
【0026】
ECU20は、クランク角センサ25から入力するクランク回転角パルス信号の周波数から機関回転数を算出し、アクセル開度センサ21から入力するアクセル開度信号と、機関回転数とに基づいて燃料噴射弁10aから10dの燃料噴射時期と燃料噴射量との目標値を算出する。
【0027】
また、図1に29aから29dで示すのは、各気筒10aから10dに配置され、気筒燃焼室内の圧力を検出する公知の形式の筒内圧センサである。筒内圧センサ29aから29dで検出された各燃焼室内圧力は、ADコンバータ30を経てECU20に供給される。
【0028】
本実施形態では、コモンレール3の燃料圧力はECU20により機関運転状態に応じた圧力に制御され、例えば10MPaから150MPa程度の高圧で、しかも広い範囲で変化する。
また、本実施形態では、機関1は各気筒の行程1サイクルの間に複数回気筒内に燃料を噴射するマルチ燃料噴射を行う。
【0029】
図2は、本実施形態におけるマルチ燃料噴射を構成するそれぞれの燃料噴射を説明する図である。
図2において、横軸はクランク角(CA)を示し、横軸上のTDCは圧縮上死点を表している。また図2の縦軸はそれぞれの燃料噴射の噴射率を表しており、それぞれの山の面積は概略各燃料噴射の相対的な燃料噴射量を示している。図に示すように、マルチ燃料噴射では早期パイロット噴射、近接パイロット噴射、メイン噴射(主燃料噴射)、アフター噴射、ポスト噴射等の全部または一部が行われる。
【0030】
以下、メイン噴射以外のそれぞれの燃料噴射について簡単に説明する。
(1)早期パイロット噴射
早期パイロット噴射は、メイン噴射よりかなり早い時期(例えばメイン噴射開始よりクランク角で20度(20°CA)以上早い時期に行われるパイロット噴射である。早期パイロット噴射で噴射された燃料は予混合気を形成し、圧縮着火するためNOやパティキュレートをほとんど生成せず、早期パイロット噴射を行うことにより排気性状を向上させることができる。また、早期パイロット噴射は燃焼室内の温度と圧力とを上昇させ、後述する近接パイロット噴射やメイン噴射の着火遅れ期間を短縮するため、メイン噴射による燃焼の騒音やNO生成を抑制することができる。
【0031】
早期パイロット噴射は、比較的燃焼室内の温度圧力が低い時点で行われるため、噴射量が多い場合には噴射された燃料が液状のままシリンダ壁に到達して、潤滑油希釈などの問題を起こす。このため、噴射量が多い場合には早期パイロット噴射は必要とされる噴射量を分割して少量ずつ複数回に分けて噴射することによりシリンダ壁への液状燃料の到達を防止する。
【0032】
(2)近接パイロット噴射
近接パイロット噴射は、メイン噴射の直前(例えば、メイン噴射開始より20°CA以内)に行われるパイロット噴射である。近接パイロット噴射は、早期パイロット噴射に較べて炭化水素の発生が少なく、早期パイロット噴射と同様にメイン噴射の着火遅れ期間を短縮してメイン噴射の騒音やNO生成を抑制することができる。
【0033】
(3)アフター噴射
アフター噴射は、メイン噴射終了直後、または比較的短い間隔(例えばメイン噴射終了後15°CA以内)に開始される噴射である。
アフター噴射は、メイン噴射の燃料の燃焼後期に再度燃焼室内の温度、圧力、乱れなどを増加させて燃焼を良好にすることと、メイン噴射の噴射量を減らすことを目的として行われる。
【0034】
すなわち、メイン噴射の燃焼後期には燃焼室内の温度、圧力は低下し、筒内の乱れも小さくなっているため、燃料が燃焼しにくくなっている。この状態でアフター噴射を行うことにより、燃料の噴射による乱れの増大と噴射された燃料の燃焼による温度、圧力の増大が生じるため、燃焼室内の雰囲気が燃焼を促進する方向に改善される。また、アフター噴射の噴射量分だけメイン噴射の噴射量を減らすことができるため、メイン噴射燃料により生成される局所的な過濃領域の生成が抑制されるとともに、メイン噴射量の低下により燃焼による筒内最高温度が低下して、NOの生成が抑制される効果がある。
【0035】
(4)ポスト噴射
ポスト噴射は、メイン噴射終了後比較的間隔をあけて(例えばメイン噴射終了後15°CA以上)開始される燃料噴射である。ポスト噴射の主な目的は排気温度、圧力を上昇させることである。
例えば、排気系に配置した排気浄化触媒の温度が低く活性化温度に到達しないため排ガス浄化作用を得られないような場合には、ポスト噴射を行うことにより排気温度を上昇させて短時間で触媒温度を活性化温度まで上昇させることができる。また、ポスト噴射を行うことにより排気の温度、圧力が上昇するため、ターボチャージャを有する機関ではタービンの仕事を増大させて過給圧上昇による加速性能の向上や加速時のスモーク抑制などの効果を得ることができる。
また、排気浄化触媒として、HC成分を用いて排気中のNOを浄化する選択還元触媒を使用する場合には、ポスト噴射を行うことにより触媒にHCを供給してNOの浄化率を向上させることができる。
【0036】
上記のようにマルチ燃料噴射を行うことにより、ディーゼル機関の排気性状や騒音を大幅に改善することが可能であるが、この改善効果を得るためにはマルチ燃料噴射における各燃料噴射の噴射量と噴射時期とを精密に制御する必要がある。例えば、最も噴射量と噴射時期との精度が要求される近接パイロット噴射では、1回の燃料噴射噴射量は1.5〜2.5mm程度に、噴射時期は±2°CA以内程度に制御する必要がある。
【0037】
ところが、前述したように、燃料噴射弁には公差による個体間のばらつきや、使用期間による燃料噴射特性の変化などが生じるため、通常のオープンループ制御では燃料噴射の精度を向上させることはできず、充分にマルチ燃料噴射による効果を得ることはできない。
【0038】
また、例えば前述の特許文献1の装置のように燃焼騒音に基づいて燃料噴射を制御しても、一部のパイロット噴射の噴射量は制御できるものの、各燃料噴射の噴射量を個別に制御することはできず、更に噴射時期については全く制御することができない問題がある。
【0039】
本実施形態では、筒内圧センサ29a〜29d(以下、「筒内圧センサ29」と総称する)を用いて検出した燃焼室内圧力Pとそのときの燃焼室容積Vとを用いて算出するパラメータPVγとPVとを用いてそれぞれの燃料噴射の噴射量、噴射時期、噴射圧などを個別に正確に正確に制御することを可能としている。
【0040】
図3(A)は、本実施形態における燃焼時期の検出原理を説明する図である。図3(A)は気筒の圧縮行程後期から膨張行程前記における燃焼室内の種々の燃焼に関連するパラメータのクランク角θに対する変化を示している(クランク角θ=0は圧縮上死点を示す)。図3(A)においてカーブPは筒内圧センサ29で検出した実際の燃焼室内圧の変化を示す。又、カーブQは、筒内の熱発生率を示している。カーブQから判るように、本実施形態ではメイン噴射に加えて早期パイロット噴射とアフター噴射とを含むマルチ燃料噴射が行われており、図3(A)の熱発生率の山Q1、Q2、Q3はそれぞれ早期パイロット噴射、メイン噴射、アフター噴射に相当している。
【0041】
図3(A)カーブPから判るように、熱発生率Q1、Q2、Q3からはマルチ噴射における各燃料噴射の燃焼期間を判別することができるものの、燃焼室内圧力の変化には各燃料噴射の燃焼期間は明確に現れておらず、カーブPから各燃料噴射を判別することはできない。
一方、熱発生率を算出すれば一応図3(A)に示すように各燃料噴射の燃焼期間を判別することは可能である。また、熱発生率dQ自体も燃焼室内圧力に基づいて次の計算式から算出することができる。
【0042】
dQ/dθ=(κ・P・(dV/dθ)+V(dP/dθ))/(κ−1)
(θはクランク角、κは筒内混合気の比熱比をそれぞれ表している)
ところが、この熱発生率の計算は複雑であり、しかもクランク角θを含む項を多く含むため、比較的検出精度の低いクランク角の誤差の影響を受けやすい。このため、実際の制御に熱発生率を制御指標として使用することは、計算負荷の増大と誤差との問題があり実際的ではない。
【0043】
そこで、本実施形態では燃焼期間を検出するために熱発生率を用いずに、筒内圧センサ29で検出した圧力Pとそのときの体積Vをγ乗して得た値PVγのクランク角θに対する一次変化率(一次微分値)(以下「PVγ微分値」という)を用いる。ここで、γはポリトロープ指数である。
【0044】
ポリトロープ指数γは予め実験などにより求めて置くことができ、更にVはθのみの関数となるため、各θの値に対してVを予め算出しておくことも可能である。従って、各クランク角においてPVγ値は簡易な計算で算出することができ、そのθに対する変化率であるPVγ微分値は、後述するように簡単な差分計算で求めることができる。
図3(A)のカーブRは、各クランク角において算出したPVγ微分値を示す。カーブRに示すように、PVγ微分値の値は大部分0となり、燃焼期間に相当する部分のみ正の値となるため、極めて明確に各燃料噴射の燃焼期間を判別することが可能となる。
【0045】
気筒内のピストンの移動による圧縮を指数γのポリトローブ変化で近似すると、圧力Pと燃焼室容積Vとは、PVγ=C(一定値)の関係を有する。すなわち、燃焼が生じず、気筒内のガスに圧縮による仕事以外のエネルギーが付与されないポリトロープ変化では、PVγ値は常に一定となる。このため、燃焼室内で燃焼が生じていない場合には、PVγ値のクランク角による一次微分値d(PVγ)/dθの値は0になる。
【0046】
一方、気筒内で燃焼が生じると気筒内のガスには圧縮による仕事以外にエネルギ(熱)が加えられるため、気筒内のガスの変化はもはやポリトロープ変化ではなくなり、PVγ値は燃焼が生じている間増大を続けるため、PVγ微分値は正の値をとるようになる。
このため、燃焼室内で燃焼が生じている期間は、PVγ微分値が正になる期間として明確に判別することができる。これは、図3(A)カーブRに示すように、気筒の1行程サイクルに複数回の燃料噴射(燃焼)Q1、Q2、Q3が行われる場合も同様である。
【0047】
本実施形態では、機関運転中に筒内圧センサ29で検出した各気筒の燃焼室内圧力に基づいてPVγ微分値を算出し、このPVγ微分値が正の値になっている期間を燃焼期間と判定する。図3(A)カーブRにstartで示すのは燃焼開始時期、endで示すのは燃焼終了時期であり、startとendとの間が燃焼期間を表す。
【0048】
ところで、燃焼期間の開始時期(クランク角)は燃料噴射時期と強い相関がある。更に、燃焼期間の長さ(燃焼開始時期から終了時期までの長さ)は燃料噴射期間と強い相関がある。又、燃料噴射期間は燃料噴射量が一定であれば噴射率により変化し、噴射率は燃料噴射圧によって変化する。
【0049】
本実施形態では、機関の運転条件(例えば機関回転数とアクセル開度、及びマルチ燃料噴射の種類との組み合わせ)毎に最適な燃焼状態を与える各燃料噴射の発熱量、燃焼期間を予め実験などにより求めてあり、例えば、マルチ燃料噴射の各燃料噴射毎(早期パイロット噴射、近接パイロット噴射、メイン噴射、アフター噴射、ポスト噴射)に上記最適値をそれぞれ機関回転数とアクセル開度とを用いた数値テーブルとして、ECU20のROMに格納してある。
【0050】
ECU20は、筒内圧センサ29で検出した各気筒の燃焼室内圧力Pに基づいて各クランク角におけるPVγ微分値を算出して、各噴射の実際の燃焼期間を判別するとともに、この実際の燃焼期間(開始時期、長さ)がROMに記憶した、現在の機関運転状態に最適な燃焼期間になるように、燃料噴射時期と噴射圧とをフィードバック制御する。これにより、簡易かつ正確に各気筒の燃料噴射時期と噴射圧とが最適な燃焼時期を得る値に制御されるようになる。
【0051】
次に、本実施形態における燃料噴射量の制御について図3(B)を用いて説明する。
各気筒の実際の燃料噴射量は、気筒の圧縮行程から膨張行程にかけての気筒内の発熱量に対応している。この発熱量は、前述の式を用いて算出される熱発生率を積分することによっても算出可能であるが、前述したように熱発生率dQを用いた計算は実際的ではない。
そこで、本実施形態では燃焼室内圧力Pとそのときの燃焼室内容積Vとの積PV(以下「PV値」という)を用いて実際の筒内発熱量を算出する。
【0052】
燃焼室内の気体の有するエネルギーは圧力と容積との積PVで表される。このため、単位クランク角あたりに燃焼室内の気体に与えられるエネルギーは、d(PV)/dθで表される。
前述したように、燃焼室内の気体に単位クランク角あたりに与えられるエネルギーは、ピストンの圧縮による機械的エネルギーと燃焼により発生する化学的エネルギーの和となる。
【0053】
いま、気体の状態方程式PV=(m/W)RTを微分形式にして、
d(PV)=(m/W)RdT …(1)
を得る。ここで、mは燃焼室内の気体の質量(kg)、Wは気体の分子量、Tは温度(K)、Rは一般ガス定数(J/mol・K)である。
【0054】
又、(1)式は気体の有するエネルギーの変化量を表しており、この変化量は、上記したように、ピストンの圧縮による機械的エネルギーd(PV)pistと燃焼により発生する化学的エネルギーd(PV)chemとの和として表される。すなわち、
d(PV)=d(PV)pist+d(PV)chem …(2)
上記(2)式中、燃焼により気体に与えられるエネルギーd(PV)chemは、上記(1)の気体の状態方程式を用いて、以下のように表される。
【0055】
d(PV)chem=(m/W)RdTchem …(3)
ここで、dTchemは、燃焼による気体の温度上昇である。
(3)式を(2)式に代入してdTchemを求めると、
dTchem=(W/m・R)(d(PV)−d(PV)pist)…(4)
となる。燃焼による発熱量dQ(J)は温度上昇dTchem(K)と気体質量m(kg)と定容比熱(J/mol・K)Cvとの積として求められるため、(4)式から、
【0056】
Figure 2004100567
噴射毎の発生熱量ΔQは、図3(A)で噴射毎の燃焼期間が判っているのであるから、(5)式を各燃料噴射の燃焼開始(start)から燃焼終了(end)まで積分することにより求められる。
すなわち
【0057】
【数1】
Figure 2004100567
【0058】
ここで、(PV)end、(PV)startは、それぞれ筒内圧センサで検出した燃焼室内圧力Pと燃焼室容積Vとの積の、燃焼終了時と燃焼開始時の値である。
また(PV)pist,end、(PV)pist,startは、燃焼が生じなかった場合のピストン圧縮のみの場合(いわゆるモータリング時)の燃焼室内圧力と燃焼室容積Vとの積の、燃焼終了時(図3(A)、(B)、end)と燃焼開始時(図3(A)、(B)、start)に相当するクランク角における値である。
【0059】
図3(B)は、図3(A)の場合のPV値の変化と、(PV)pist値の変化を示す図であり、図3(B)のカーブPは図3(A)のカーブPと同じ燃焼室内圧力変化を、カーブQは熱発生率を、それぞれ表している。
また図3(B)のカーブSは、カーブPの圧力変化時のPV値を、カーブTは(PV)pist値を、それぞれ表している。(PV)pist値は、機関が定まれば常に一定のカーブとなる。
【0060】
さて、上記(6)式から、例えばメイン噴射Q1の発熱量ΔQは、図3(B)のA点におけるPV値((PV)start)と(PV)pist値((PV)pist,start)とB点におけるPV値((PV)end)と(PV)pist値((PV)pist,end)とを用いて簡単に求めることができる。
【0061】
発熱量ΔQは燃料噴射量と強い相関を有する。本実施形態では、予め機関運転状態に応じて各噴射の理想的な発熱量が実験などにより求めてあり、ECU30のROMに格納されている。このため、(6)式から求めた実際の発熱量が、ROMに記憶した理想的な発熱量と一致するように燃料噴射量をフィードバック補正することにより、燃料噴射量を最適な値に制御することが可能となる。
【0062】
図4は、上述した燃焼時期と発熱量との実際の算出操作を示すフローチャートである。本操作は、ECU20により一定クランク角毎に実行される。
図4において、ステップ401では現在のクランク角θと、筒内圧センサ29で検出した燃焼室内圧力Pとが読み込まれる。そして、ステップ403では、クランク角θに基づいて現在の燃焼室内容積Vが算出される。本実施形態では、θとVとの関係は予め計算により求められ、θを用いた1次元数値テーブルとしてECU20のROMに格納されている。ステップ403では、ステップ401で読み込んだθの値を用いてこの数値テーブルから燃焼室内容積Vを求める。
【0063】
次いでステップ405では、ステップ401で読み込んだ圧力Pとステップ403で算出した容積Vとを用いてPVγが算出される。γ(ポリトロープ指数)は予め実験により求められ、ECU20のROMに格納されている。
ステップ407はPVγ微分値の算出操作を示す。本実施形態では、PVγ微分値d(PVγ)/dθは、今回算出したPVγ値(PVγと、前回本操作実行時に算出した(PVγi−1との差分として算出される。
【0064】
次に、ステップ409から417は燃焼開始時期の検出を示す。
ステップ409ではフラグXSの値が1にセットされているか否かが判定される。フラグXSは、燃焼期間の開始時期の検出が完了したか否かを示すフラグであり、XS=1は検出完了を表している。
【0065】
ステップ409で検出が完了していない場合(X≠1)にはステップ411に進み、ステップ407で算出したPVγ微分値が所定値C1以上になるまでステップ413以下の操作実行を保留して待機する。前述のように、PVγ微分値は燃焼機関以外は略ゼロの値となり、燃焼期間中のみ正の値となる。C1は、雑音などによる誤検出を防止するための判定値であり、できるだけゼロに近い正の値に設定される。燃焼が開始されると、ステップ411ではPVγ微分値がC1より大きくなるが、ステップ411で最初にd(PVγ)/dθ>C1が成立すると、次にステップ413でフラグXSの値が1に設定されるため、次回からはステップ411から417は実行されない。
これにより、燃焼開始時期が正確に検出されるようになる。すなわち、ステップ411で最初にd(PVγ)/dθ>C1が成立すると、ステップ415、417ではそのときのクランク角θを燃焼開始時のクランク角θstartとして記憶するとともに、このときのPV値を算出して、燃焼開始時のPV値(PV)startとして記憶する。又、ステップ419ではモータリング中のPV値である(PV)pistの燃焼開始時の値を予め算出しておいた、図3(B)のカーブTの関係から求め、(PV)pist,startとして記憶する。
【0066】
ステップ419から425は、燃焼期間の終了時期の検出操作を示す。終了時期の検出操作は、ステップ411から417の燃焼期間開始時期の検出が完了して、XSが1にセットされた場合にのみ行われる。
ステップ419から425の操作はステップ411から417の操作と同様であるが、ステップ419でd(PVγ)/dθ<C1となったときのクランク角を燃焼終了時期θend、そのときの(PV)、(PV)pistの値をそれぞれ(PV)end、(PV)pist,endとして記憶する点が相違している。そして、上記の値を記憶した後、ステップ425ではフラグXSの値が0にリセットされる。これにより、再度ステップ411から417で燃焼開始時期が検出されるまではステップ419以下のステップは実行されなくなる。
【0067】
そして、上記の操作終了後、ステップ427では前述の(6)式を用いて、今回の燃焼期間における発熱量ΔQが算出される。
【0068】
上述のように、図4の操作を実行することにより、複数の燃料噴射のそれぞれについて、燃焼開始時期θstart、燃焼終了時期θend、及び発熱量ΔQが算出され、記憶される。
【0069】
次に、上記により算出した燃焼開始時期θstart、燃焼終了時期θend、及び発熱量ΔQを用いた燃料噴射制御について説明する。
本実施形態では、燃料噴射量、噴射時期、燃料噴射圧の基本値、及び噴射の形態(マルチ燃料噴射のタイプ)は、ECU30により別途実行される図示しない燃料噴射設定操作により、機関回転数とアクセル開度とを用いて予め定めた関係に基づいて設定されている。本来この基本値の通りに実際の燃料噴射が行われれば、機関の燃焼状態は最適になる。しかし、実際には燃料噴射弁の噴射特性のばらつきや変化等により、基本値に相当する指令信号を燃料噴射弁に与えても実際の燃料噴射が基本値通りにはならない。
【0070】
本実施形態では、燃焼開始時期θstart、燃焼終了時期θend、及び発熱量ΔQを用いて、実際の燃料噴射が基本値で行われるように燃料噴射をフィードバック補正するものである。
図5は、ECU20により行われる、本実施形態の燃料噴射補正操作の手順を説明するフローチャートである。
【0071】
図5、ステップ501では、まず補正しようとする燃料噴射の判別が、機関運転条件と算出したθstartとに基づいて行われる。すなわち、いま補正しようとしている燃料噴射が、どのタイプのマルチ燃料噴射のどの燃料噴射(例えば早期パイロット噴射か、近接パイロット噴射か等)であるかの判定が行われる。
【0072】
そして、ステップ503では、現在補正しようとしている燃料噴射の発熱量の目標値が、機関運転条件(機関回転数、アクセル開度)に基づいて予めECU20のROMに記憶した数値テーブルから読み出される。
そして、ステップ505では、前述の図4の操作で算出した発熱量ΔQが、ステップ503で設定した目標値に一致するように燃料噴射量が増減補正される。すなわち、実際の発熱量ΔQが目標値より小さい場合には、燃料噴射量が所定量増大され、目標値より大きい場合には所定量低減される。
【0073】
そして、ステップ507では同様に機関運転条件に基づいて予めECU20のROMに記憶した数値テーブルから、燃焼開始時期と終了時期との目標値が読み出され、ステップ509では、実際の燃焼開始時期θstartが目標値に一致するように燃料噴射時期が補正される。例えば燃焼開始時期が目標値より遅い場合には燃料噴射開始時期が進角され、早い場合には遅角される。
【0074】
更に、ステップ511では、燃料噴射圧が補正される。本実施形態ではコモンレール圧力を変えることにより燃料噴射圧が調整される。すなわち、ステップ511では、ステップ509で燃焼開始時期θstartが目標値に一致した状態で、実際の燃焼終了時期θendが目標値より遅いか早いかを判定し、遅い場合(実際の燃焼期間が目標値より長い場合)には、燃料噴射圧を所定量だけ上昇させて、その分だけ燃料噴射の終了時期(燃料噴射弁の閉弁時期)を進角させ燃料噴射量を一定に維持しながら燃料噴射期間を変化させる。また、逆に実際の燃焼終了時期が目標値より早い場合には、燃料噴射圧を所定量だけ低下させて燃料噴射の終了時期を遅角させる。
【0075】
上記各操作を、それぞれの値が目標値と一致するまで繰り返すことによりマルチ燃料噴射の各燃料噴射における実際の燃料噴射量、燃料噴射時期、燃料噴射圧が運転状態に応じた最適な燃焼を得る値になるようにフィードバック補正される。
【0076】
上述したように、図4の操作では、簡易な差分演算で算出可能なPVγの微分値を用いて燃焼期間を、また、PV値の簡易な演算で発熱量を求めることが可能となり、発熱量や燃焼期間の検出のために複雑な計算を行う必要がなくなる。このため、ECU20の計算負荷が増大することが防止され、簡易かつ確実に各噴射毎の発熱量と燃焼期間とを正確に検出することができ、各噴射の噴射量、噴射時期、噴射圧を正確にフィードバック制御することが可能となる。
【0077】
また、本実施形態ではマルチ燃料噴射の各噴射量と噴射時期、噴射圧とが実際の発熱量、燃焼期間に基づいてフィードバック制御されるため、例えば燃料噴射弁の公差による燃料噴射特性の個体間ばらつきが比較的大きい場合や、或いは使用とともに燃料噴射特性が変化するような場合であっても各燃料噴射特性を正確に補正することが可能となる。このため、コモンレール式燃料噴射装置においても、燃料噴射弁の特性のばらつきをある程度許容することができ、従来のように燃料噴射弁の特性のばらつきを厳しく管理する必要がなくなるため、燃料噴射弁のコストを低減することが可能となる。
【0078】
【発明の効果】
各請求項に記載の発明によれば、マルチ燃料噴射を行う機関においても各燃料噴射の噴射量と噴射時期、噴射圧などの噴射特性を実際の燃焼データに基づいて適正な値にフィードバック制御することが可能となる共通の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を自動車用4気筒ディーゼル機関に適用した実施形態の概略構成を示す図である。
【図2】マルチ燃料噴射を構成する各燃料噴射を説明する図である。
【図3】本実施形態における燃焼期間の検出原理(図3(A))及び、発熱量の検出原理(図3(B))を説明する図である。
【図4】各燃料噴射における燃焼時期と発熱量との算出操作を説明するフローチャートである。
【図5】本実施形態の燃料噴射補正操作の手順を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
1…ディーゼル機関
3…コモンレール
10a〜10d…筒内燃料噴射弁
20…電子制御ユニット(ECU)
21…アクセル開度センサ
25…クランク角センサ
29a〜29d…筒内圧センサ

Claims (3)

  1. 機関燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射弁を備えた内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
    機関燃焼室内の圧力を検出する筒内圧センサを備え、
    前記筒内圧センサで検出した燃焼室内圧力Pと、クランク角θから定まる燃焼室容積Vと、予め定めた定数γとを用いて、Vのγ乗とPとの積として算出されるパラメータPVγのクランク角θに対する変化率d(PVγ)/dθの値を算出し、前記変化率の値に基づいて、燃焼室内での燃焼開始時期と終了時期とを含む燃焼期間を検出するとともに、前記燃焼期間が予め定めた期間に一致するように、前記燃料噴射弁からの燃料噴射時期と燃料噴射圧との少なくとも一方を補正する、内燃機関の燃料噴射制御装置。
  2. 更に、前記燃焼開始時期と前記燃焼終了時期とにおける前記燃焼室内圧力Pと前記燃焼室容積Vとの積として算出されるパラメータPVの値に基づいて前記燃焼期間における筒内発熱量を算出するとともに、算出した筒内発熱量が予め定めた量になるように前記燃料噴射弁からの燃料噴射量を補正する、請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
  3. 主燃料噴射に加えて、主燃料噴射の前または後、若しくは前と後との両方に機関燃焼室に燃料を噴射するマルチ燃料噴射を行い、マルチ燃料噴射における少なくとも1つ以上の燃料噴射に対して前記d(PVγ)/dθの値に基づく燃料噴射時期または燃料噴射圧の補正と、前記PVの値に基づく燃料噴射量の補正を行う、請求項2に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
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