JP2004211338A - Frpによる鋼構造体の補強方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】鋼構造体を目視観察する際に簡便に携行することができ、即時的な措置によって、発見されたき裂の進展を遅延させることができる方法を提供する。
【解決手段】本発明のFRPによる鋼構造体の補強方法は、鋼構造体の繰返し応力のかかる部分に生じたき裂に繊維強化型合成樹脂シートを貼付することを特徴とする。前記繊維強化型合成樹脂シートが紫外線を透過する強化繊維に紫外線硬化型樹脂を含浸させたプリプレグであること、前記繊維強化型合成樹脂シートを、前記鋼構造体に接着剤によって貼付された後に完全硬化されることができる。
【選択図】 図2
【解決手段】本発明のFRPによる鋼構造体の補強方法は、鋼構造体の繰返し応力のかかる部分に生じたき裂に繊維強化型合成樹脂シートを貼付することを特徴とする。前記繊維強化型合成樹脂シートが紫外線を透過する強化繊維に紫外線硬化型樹脂を含浸させたプリプレグであること、前記繊維強化型合成樹脂シートを、前記鋼構造体に接着剤によって貼付された後に完全硬化されることができる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、振動を含む荷重等の繰り返し応力が作用する鋼構造体における疲労破壊等によって発生したき裂の進展を遅らせる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼鉄製の構造物には、溶接による接合部、目的の形状に基づく切り欠き部や不連続部等、構造的な不連続部の存在は避けることができない。鋼鉄製の構造物に外力が作用すると、その様な構造的な不連続部で応力集中が生じ、破壊の基点となり易い。振動を含む荷重等の繰り返し荷重が作用するところでは、金属疲労によりき裂が発生し、破壊にまで至ることがある。
高速自動車道や鉄道の橋梁や橋脚等の鋼構造体におけるき裂の発見は、第一次的には、定期的な見回りによる目視観察によってなされている。き裂が発見されると、その位置を確認記録し、検査機器等を持参し直してそのき裂の程度をチェックし、き裂の程度に応じて補修・補強等の実施計画を立て、必要な補修・補強等の工事を実施している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
被検査個所の足場の悪さや、き裂発見の頻度の低さ、検査機器を多数用意するためのコスト、等を勘案して、現行の目視観察による検査体制では、目視観察にき裂の程度を検査する検査機器を携行することは行われていない。
しかし、き裂の程度を検査し、修理・補修の計画を立てている間にも、き裂は進展する危険性があり、修理・補修工事の実施までにき裂が相当に進展し、一時的にしろ、道路・鉄道軌道の使用を中止せざるを得なくなることが危惧される場合もある。そのような場合には、き裂の先端部にドリルで孔をあけて、き裂の進展を遅延させることも行われてきた。
本発明は、このような現状に鑑み、目視観察の際に簡便に携行することができ、即時的な措置によって、発見されたき裂の進展を遅延させることができる方法を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明のFRPによる鋼構造体の補強方法は、鋼構造体の繰返し応力のかかる部分に生じたき裂に繊維強化型合成樹脂シートを貼付することを特徴とする。前記繊維強化型合成樹脂シートが紫外線を透過する強化繊維に紫外線硬化型樹脂を含浸させたプリプレグであること、前記繊維強化型合成樹脂シートを、前記鋼構造体に接着剤によって貼付された後に完全硬化されることができる。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明は、鋼構造体に生じ、発見されたき裂個所に、繊維補強形の樹脂シートを貼り付けることによって、き裂の進展を少なくとも一時的にでも遅延させ、検査、補修・修理計画立案、施工までに安全を保つことができるようにすることを基本とする。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いる繊維強化型樹脂シートは、ガラス繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維等の繊維またはそれらの複合繊維からなるマットに合成樹脂を含浸させて硬化したものである。強化用繊維は、樹脂シートの方向性強化を重視して、ネット状に編んだもの、繊維方向を揃えてマット状としたもの、等も使用可能である。
【0006】
合成樹脂は、樹脂材料に硬化剤を添加してなるものであり、その硬化方法の種類は、熱硬化型、触媒硬化型、紫外線硬化型等がある。樹脂材料としては、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
樹脂シートは、適宜の大きさ、例えば400mm2程度の大きさ(正方形・矩形等形状は適宜)とし、未硬化状のプリプレグタイプのものが用いられ得る。鋼構造物に生じるき裂の周囲の形状に適合しやすいためには、未硬化状のプリプレグであって、鋼構造物に貼付後に硬化させるものであることが好ましい。さらにまた、繊維を鋼構造物にあてがい、合成樹脂をハンドレイアップ法によって含浸させて硬化するものであることもできる。
未硬化状のプリプレグ、あるいはハンドレイアップタイプのものを用いる場合には、鋼構造物に貼付後、熱線照射や加熱体をあてがう、あるいは紫外線等の電磁波を照射する等によって、合成樹脂の硬化を行う。
【0007】
鋼構造体に生じたき裂を発見した場合には、繊維硬化型樹脂シートをき裂の生じた個所に接着剤を用いて貼付する。接着剤は、適宜の接着剤、例えばエポキシ樹脂接着剤、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂等の接着剤が挙げられる。接着剤は、即乾性のものであると、鋼構造体上の車両等の通行を規制することなく施工できるので、より望ましい。繊維体に含浸させる合成樹脂が硬化に際して鋼構造体に強固に接着する場合には、敢えて接着剤を使用しないこともできる。
鋼構造体に樹脂シートを接着する際には、鋼構造体表面の塗装の上から貼付することもできるが、鋼構造体表面の塗装を剥がすこと、あるいは、露出させた鋼材表面に接着改良剤、例えばシランカップリング剤、チタネートカップリング剤等で処理することも有効である。
繊維硬化型樹脂シートは、必要に応じて、並べて広面積として、また、重層に重ねて、あるいは鋼構造体の両面に、貼付することができる。
【0008】
橋梁、橋脚等の鋼構造体には、自動車・列車等の通過に伴って、振動等も含めて繰返し応力がかかる。繰返し応力によって鋼構造体の不連続部等では応力が一層集中し、その不連続部等を起点として疲労破壊が始まる。疲労破壊によるき裂は、初期にはその進展が緩やかで、進展するにしたがって加速する傾向がある。一方、疲労破壊によるき裂の初期には、外観からは発見され難い。特に防錆塗装が施されていると、初期き裂は発見され難い。き裂部分(き裂面)には、大気中の湿気や雨等により、時間が経つと錆が発生して表面に現れ、錆によって亀裂の存在が確認される場合が多い。
【0009】
錆等を介して、あるいは他の適宜の手段・現象を利用して、鋼構造体にき裂を発見した場合に、見回り者は、従来であれば位置を確認して通報し、その後の適宜の措置を促すだけであったが、本発明を適用して、発見したき裂の部分に、繊維強化型合成樹脂シートを貼付して、き裂のその後の進展を一時的なりとも遅らせる措置を執り、そしてき裂位置等、必要に応じてき裂の大きさやき裂の進展状況等、を通報する。
繊維強化型合成樹脂シート、接着剤、鋼構造体表面の防錆塗装剥離のための小道具等は、見回り者が簡便に携行できるものであり、き裂発見のときに繊維強化型合成樹脂シートを貼付することにより、き裂の位置が明確になるだけでなく、繊維強化型合成樹脂シートないし接着剤の強度によって、き裂の進展を遅らせる効果が得られる。
また、繊維強化型合成樹脂シートとして透明なものを使用し、接着剤で貼付する場合には、き裂の進展につれてき裂の進展部分の近傍の接着剤が剥離し、外見上白化するので、貼付以降のき裂の進展状況を把握することもできる。
【0010】
[確認試験]
本発明で提案する、繊維強化型合成樹脂シート(FRP)貼付による鋼構造体の補強効果を確認するために、以下のような実験を行った。
[供試材料]
JIS SM490鋼を用い、板厚9mm、平面形状「1TCT」試験片(図1参照)を加工し、長さ2mm、幅0.2mmの切欠き先端に長さ5mmの疲労予き裂を導入した。試験に先立ち、疲労予き裂導入の影響を除去するために700℃で応力除去焼鈍をして試験に供した。
[疲労試験機]
50kN電気油圧式疲労試験機(島津製作所製、SERVOPET Lab5)を用いて、繰返し速度30Hzで試験した。
なお、ここで疲労き裂進展速度は、
da/dN=C(△Km−△Kthm)
C,m:定数
△Kth:き裂進展の下限界応力拡大係数範囲
【0011】
[繊維強化型合成樹脂シート]
サンシート(商標名、サンコーテクノ(株)社製):強化繊維(5〜15μmφのガラス繊維)に紫外線硬化型合成樹脂(ビニルエステル樹脂)を含浸させた粘着FRPシート(柔軟性の程度は、日本ゴム協会標準規格(SRIS)に規定されているアスカーC(ASKER C;規格No.SRIS 0101)による測定で60。)。
[接着剤]
スターパテSPP−S001(商品名、サンコーテクノ(株)社製)。室内実験であるので、接着剤は速乾性のものではないものを使用した。
【0012】
試験片の片面あるいは両面の全面に繊維強化型合成樹脂シートを接着剤を用いて貼付し、紫外線照射2時間でプリプレグを完全硬化した後に、疲労試験を行った。
試験結果を、応力拡大係数範囲△Kとき裂進展速度(単位:mm/cycle)との関係として整理して、図2に示す。図2において、▲1▼は国際溶接学会で規定する値であり、▲2▼、▲3▼は、シート無しおよびシートあり(片面、両面)の試験結果をそれぞれ総括した値である。
なお、図3に実験途中の試験状態を示すように、疲労予き裂からき裂が進展成長するにつれて、接着剤が剥がれ、進展成長したき裂部分近傍が白色化していた。
【0013】
図2から、補強シート(繊維強化型合成樹脂シート)を貼付することによって、き裂進展速度にややばらつきはあるものの、貼付しない場合に比較して、き裂進展速度が1/3程度に減速することがわかった。
なお、き裂の初期に補強シート(繊維強化型合成樹脂シート)を貼付することによって、き裂の進展を殆ど停止させることもできる可能性も見られた。
【0014】
【発明の効果】
本発明によれば、鋼構造体に発生した金属疲労によるき裂の進展を遅延させることができ、鋼構造体の安全性の向上と、補修・改修等の準備に余裕をもって対処できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】確認試験に用いた供試材試験片を示す図である。
【図2】繊維強化型合成樹脂シートの有無による疲労き裂の進展速度の相違を示すグラフである。
【図3】確認実験途中の試験片の状態を示す写真である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、振動を含む荷重等の繰り返し応力が作用する鋼構造体における疲労破壊等によって発生したき裂の進展を遅らせる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼鉄製の構造物には、溶接による接合部、目的の形状に基づく切り欠き部や不連続部等、構造的な不連続部の存在は避けることができない。鋼鉄製の構造物に外力が作用すると、その様な構造的な不連続部で応力集中が生じ、破壊の基点となり易い。振動を含む荷重等の繰り返し荷重が作用するところでは、金属疲労によりき裂が発生し、破壊にまで至ることがある。
高速自動車道や鉄道の橋梁や橋脚等の鋼構造体におけるき裂の発見は、第一次的には、定期的な見回りによる目視観察によってなされている。き裂が発見されると、その位置を確認記録し、検査機器等を持参し直してそのき裂の程度をチェックし、き裂の程度に応じて補修・補強等の実施計画を立て、必要な補修・補強等の工事を実施している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
被検査個所の足場の悪さや、き裂発見の頻度の低さ、検査機器を多数用意するためのコスト、等を勘案して、現行の目視観察による検査体制では、目視観察にき裂の程度を検査する検査機器を携行することは行われていない。
しかし、き裂の程度を検査し、修理・補修の計画を立てている間にも、き裂は進展する危険性があり、修理・補修工事の実施までにき裂が相当に進展し、一時的にしろ、道路・鉄道軌道の使用を中止せざるを得なくなることが危惧される場合もある。そのような場合には、き裂の先端部にドリルで孔をあけて、き裂の進展を遅延させることも行われてきた。
本発明は、このような現状に鑑み、目視観察の際に簡便に携行することができ、即時的な措置によって、発見されたき裂の進展を遅延させることができる方法を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明のFRPによる鋼構造体の補強方法は、鋼構造体の繰返し応力のかかる部分に生じたき裂に繊維強化型合成樹脂シートを貼付することを特徴とする。前記繊維強化型合成樹脂シートが紫外線を透過する強化繊維に紫外線硬化型樹脂を含浸させたプリプレグであること、前記繊維強化型合成樹脂シートを、前記鋼構造体に接着剤によって貼付された後に完全硬化されることができる。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明は、鋼構造体に生じ、発見されたき裂個所に、繊維補強形の樹脂シートを貼り付けることによって、き裂の進展を少なくとも一時的にでも遅延させ、検査、補修・修理計画立案、施工までに安全を保つことができるようにすることを基本とする。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いる繊維強化型樹脂シートは、ガラス繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維等の繊維またはそれらの複合繊維からなるマットに合成樹脂を含浸させて硬化したものである。強化用繊維は、樹脂シートの方向性強化を重視して、ネット状に編んだもの、繊維方向を揃えてマット状としたもの、等も使用可能である。
【0006】
合成樹脂は、樹脂材料に硬化剤を添加してなるものであり、その硬化方法の種類は、熱硬化型、触媒硬化型、紫外線硬化型等がある。樹脂材料としては、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
樹脂シートは、適宜の大きさ、例えば400mm2程度の大きさ(正方形・矩形等形状は適宜)とし、未硬化状のプリプレグタイプのものが用いられ得る。鋼構造物に生じるき裂の周囲の形状に適合しやすいためには、未硬化状のプリプレグであって、鋼構造物に貼付後に硬化させるものであることが好ましい。さらにまた、繊維を鋼構造物にあてがい、合成樹脂をハンドレイアップ法によって含浸させて硬化するものであることもできる。
未硬化状のプリプレグ、あるいはハンドレイアップタイプのものを用いる場合には、鋼構造物に貼付後、熱線照射や加熱体をあてがう、あるいは紫外線等の電磁波を照射する等によって、合成樹脂の硬化を行う。
【0007】
鋼構造体に生じたき裂を発見した場合には、繊維硬化型樹脂シートをき裂の生じた個所に接着剤を用いて貼付する。接着剤は、適宜の接着剤、例えばエポキシ樹脂接着剤、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂等の接着剤が挙げられる。接着剤は、即乾性のものであると、鋼構造体上の車両等の通行を規制することなく施工できるので、より望ましい。繊維体に含浸させる合成樹脂が硬化に際して鋼構造体に強固に接着する場合には、敢えて接着剤を使用しないこともできる。
鋼構造体に樹脂シートを接着する際には、鋼構造体表面の塗装の上から貼付することもできるが、鋼構造体表面の塗装を剥がすこと、あるいは、露出させた鋼材表面に接着改良剤、例えばシランカップリング剤、チタネートカップリング剤等で処理することも有効である。
繊維硬化型樹脂シートは、必要に応じて、並べて広面積として、また、重層に重ねて、あるいは鋼構造体の両面に、貼付することができる。
【0008】
橋梁、橋脚等の鋼構造体には、自動車・列車等の通過に伴って、振動等も含めて繰返し応力がかかる。繰返し応力によって鋼構造体の不連続部等では応力が一層集中し、その不連続部等を起点として疲労破壊が始まる。疲労破壊によるき裂は、初期にはその進展が緩やかで、進展するにしたがって加速する傾向がある。一方、疲労破壊によるき裂の初期には、外観からは発見され難い。特に防錆塗装が施されていると、初期き裂は発見され難い。き裂部分(き裂面)には、大気中の湿気や雨等により、時間が経つと錆が発生して表面に現れ、錆によって亀裂の存在が確認される場合が多い。
【0009】
錆等を介して、あるいは他の適宜の手段・現象を利用して、鋼構造体にき裂を発見した場合に、見回り者は、従来であれば位置を確認して通報し、その後の適宜の措置を促すだけであったが、本発明を適用して、発見したき裂の部分に、繊維強化型合成樹脂シートを貼付して、き裂のその後の進展を一時的なりとも遅らせる措置を執り、そしてき裂位置等、必要に応じてき裂の大きさやき裂の進展状況等、を通報する。
繊維強化型合成樹脂シート、接着剤、鋼構造体表面の防錆塗装剥離のための小道具等は、見回り者が簡便に携行できるものであり、き裂発見のときに繊維強化型合成樹脂シートを貼付することにより、き裂の位置が明確になるだけでなく、繊維強化型合成樹脂シートないし接着剤の強度によって、き裂の進展を遅らせる効果が得られる。
また、繊維強化型合成樹脂シートとして透明なものを使用し、接着剤で貼付する場合には、き裂の進展につれてき裂の進展部分の近傍の接着剤が剥離し、外見上白化するので、貼付以降のき裂の進展状況を把握することもできる。
【0010】
[確認試験]
本発明で提案する、繊維強化型合成樹脂シート(FRP)貼付による鋼構造体の補強効果を確認するために、以下のような実験を行った。
[供試材料]
JIS SM490鋼を用い、板厚9mm、平面形状「1TCT」試験片(図1参照)を加工し、長さ2mm、幅0.2mmの切欠き先端に長さ5mmの疲労予き裂を導入した。試験に先立ち、疲労予き裂導入の影響を除去するために700℃で応力除去焼鈍をして試験に供した。
[疲労試験機]
50kN電気油圧式疲労試験機(島津製作所製、SERVOPET Lab5)を用いて、繰返し速度30Hzで試験した。
なお、ここで疲労き裂進展速度は、
da/dN=C(△Km−△Kthm)
C,m:定数
△Kth:き裂進展の下限界応力拡大係数範囲
【0011】
[繊維強化型合成樹脂シート]
サンシート(商標名、サンコーテクノ(株)社製):強化繊維(5〜15μmφのガラス繊維)に紫外線硬化型合成樹脂(ビニルエステル樹脂)を含浸させた粘着FRPシート(柔軟性の程度は、日本ゴム協会標準規格(SRIS)に規定されているアスカーC(ASKER C;規格No.SRIS 0101)による測定で60。)。
[接着剤]
スターパテSPP−S001(商品名、サンコーテクノ(株)社製)。室内実験であるので、接着剤は速乾性のものではないものを使用した。
【0012】
試験片の片面あるいは両面の全面に繊維強化型合成樹脂シートを接着剤を用いて貼付し、紫外線照射2時間でプリプレグを完全硬化した後に、疲労試験を行った。
試験結果を、応力拡大係数範囲△Kとき裂進展速度(単位:mm/cycle)との関係として整理して、図2に示す。図2において、▲1▼は国際溶接学会で規定する値であり、▲2▼、▲3▼は、シート無しおよびシートあり(片面、両面)の試験結果をそれぞれ総括した値である。
なお、図3に実験途中の試験状態を示すように、疲労予き裂からき裂が進展成長するにつれて、接着剤が剥がれ、進展成長したき裂部分近傍が白色化していた。
【0013】
図2から、補強シート(繊維強化型合成樹脂シート)を貼付することによって、き裂進展速度にややばらつきはあるものの、貼付しない場合に比較して、き裂進展速度が1/3程度に減速することがわかった。
なお、き裂の初期に補強シート(繊維強化型合成樹脂シート)を貼付することによって、き裂の進展を殆ど停止させることもできる可能性も見られた。
【0014】
【発明の効果】
本発明によれば、鋼構造体に発生した金属疲労によるき裂の進展を遅延させることができ、鋼構造体の安全性の向上と、補修・改修等の準備に余裕をもって対処できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】確認試験に用いた供試材試験片を示す図である。
【図2】繊維強化型合成樹脂シートの有無による疲労き裂の進展速度の相違を示すグラフである。
【図3】確認実験途中の試験片の状態を示す写真である。
Claims (3)
- 鋼構造体の繰返し応力のかかる部分に生じたき裂に繊維強化型合成樹脂シートを貼付することを特徴とするFRPによる鋼構造体の補強方法。
- 前記繊維強化型合成樹脂シートが紫外線を透過する強化繊維に紫外線硬化型樹脂を含浸させたプリプレグである請求項1に記載のFRPによる鋼構造体の補強方法。
- 前記繊維強化型合成樹脂シートを、前記鋼構造体に接着剤によって貼付された後に完全硬化される請求項2に記載のFRPによる鋼構造体の補強方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002380015A JP2004211338A (ja) | 2002-12-27 | 2002-12-27 | Frpによる鋼構造体の補強方法 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002380015A JP2004211338A (ja) | 2002-12-27 | 2002-12-27 | Frpによる鋼構造体の補強方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004211338A true JP2004211338A (ja) | 2004-07-29 |
Family
ID=32816349
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002380015A Pending JP2004211338A (ja) | 2002-12-27 | 2002-12-27 | Frpによる鋼構造体の補強方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004211338A (ja) |
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006057352A (ja) * | 2004-08-20 | 2006-03-02 | Nippon Oil Corp | 炭素繊維強化樹脂板による鋼製構造物の補修方法、該方法に使用される炭素繊維強化樹脂板及び補修された鋼製構造物 |
JP2006102738A (ja) * | 2004-09-08 | 2006-04-20 | Hiroyuki Suzuki | 鋼構造体の予防保全方法 |
JP2009046931A (ja) * | 2007-08-22 | 2009-03-05 | Nippon Oil Corp | 炭素繊維強化樹脂板による鋼製材料の補修方法、及び補修された鋼製材料 |
JP2009162033A (ja) * | 2008-01-10 | 2009-07-23 | Tekken Constr Co Ltd | 繊維シート接着工法 |
JP2010090543A (ja) * | 2008-10-03 | 2010-04-22 | Birudorando:Kk | コンクリートの剥落防止用不織布シート |
JP2013147834A (ja) * | 2012-01-18 | 2013-08-01 | Hanshin Expressway Engineering Co Ltd | 橋梁の亀裂監視方法及び亀裂監視システム |
-
2002
- 2002-12-27 JP JP2002380015A patent/JP2004211338A/ja active Pending
Cited By (7)
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JP4680550B2 (ja) * | 2004-08-20 | 2011-05-11 | Jx日鉱日石エネルギー株式会社 | 炭素繊維強化樹脂板による鋼製構造物の補修方法、該方法に使用される炭素繊維強化樹脂板及び補修・補強された鋼製構造物 |
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