JP2004211177A - 成形性、塗装焼付け硬化性及び形状に優れたアルミニウム合金板並びに製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】成形性、曲げ性、塗装焼付け硬化性及び形状に優れたアルミニウム合金板並びにその製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、Mg:0.2〜1.5%、Si:0.4〜1.8%、を含有し、さらにCu、Mn、Cr、Feの1種又は2種以上を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、粒界析出物占有率が30%以下であり、かつ、平坦度が2%以下であることを特徴とする成形性、塗装焼付け硬化性及び形状に優れたアルミニウム合金板。必要に応じてV、Zr、Ti、Bの1種又は2種以上を含有しても良い。溶解、鋳造し、熱間圧延及び冷間圧延後、500〜570℃まで加熱し、その温度で0〜300s保持し、保持温度から480〜400℃の範囲まで1〜30℃/sで一次冷却し、その後300℃以下まで30℃超〜300℃/sで二次冷却することを特徴とする製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】質量%で、Mg:0.2〜1.5%、Si:0.4〜1.8%、を含有し、さらにCu、Mn、Cr、Feの1種又は2種以上を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、粒界析出物占有率が30%以下であり、かつ、平坦度が2%以下であることを特徴とする成形性、塗装焼付け硬化性及び形状に優れたアルミニウム合金板。必要に応じてV、Zr、Ti、Bの1種又は2種以上を含有しても良い。溶解、鋳造し、熱間圧延及び冷間圧延後、500〜570℃まで加熱し、その温度で0〜300s保持し、保持温度から480〜400℃の範囲まで1〜30℃/sで一次冷却し、その後300℃以下まで30℃超〜300℃/sで二次冷却することを特徴とする製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プレス、曲げ等の成形性に優れ、塗装焼付け時に析出硬化して降伏強度が上昇する、即ち優れた塗装焼付け硬化性(以下BH性)を有し、形状に優れた、自動車用材料等に好適なアルミニウム合金板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車の燃費向上を目的とした車体の軽量化が検討されており、自動車用材料へのアルミニウム合金板の適用が進められつつある。この用途には高強度で、プレス、曲げ等の成形性に優れた材料が要求されるため、成形後に塗装焼き付け時の析出硬化により高強度を得る熱処理型のAl−Mg−Si系合金が開発されている。Al−Mg−Si系合金は製造性に優れ、またストレッチャー−ストレイン模様が出現し難いという長所を有しており、自動車ボディパネル等の外板に最適である。
【0003】
このようなAl−Mg−Si系合金として、特許文献1〜6に、微細組織において析出物の粒径及び分布等を制御して、曲げ性を向上させたアルミニウム合金板が開示されている。しかし、特許文献1〜5は、曲げ試験の前に5%の引張歪みを導入したものではないため、プレス成形により自動車部品等を加工した後の曲げ性が十分ではない可能性があり、特許文献6は、曲げ半径と板厚の比が比較的大きく、特殊な曲げ加工方法が必要であると考えられる。
【0004】
また、特許文献7に、溶体化処理後の冷却速度を大きくすることにより、結晶粒界への析出を抑制して成形性を向上させた、BH性に優れたアルミニウム合金板及びその製造方法が開示されている。しかし、曲げ性を向上させるために溶体化処理後の冷却速度を大きくすると熱歪みによって板が不均一に変形して、JIS H 4000に示されているように、板の中央部が伸びた中ひずみ又は板の端部が伸びた耳ひずみ等が生じて、形状が悪くなるという問題点がある。
【0005】
この問題に対して、溶体化処理後、平均冷却速度50℃/s以上で焼き入れ、歪みの矯正を施すアルミニウム合金板の製造方法が特許文献8に開示されている。しかし、冷間加工により歪みの矯正を行うと、塑性歪みが導入されるため、プレス成形性が低下するという問題があった。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−31616号公報
【特許文献2】
特開2001−279406号公報
【特許文献3】
特開2001−262264号公報
【特許文献4】
特開2001−20027号公報
【特許文献5】
特開2002−47580号公報
【特許文献6】
特開2000−144294号公報
【特許文献7】
特開平11−350058号公報
【特許文献8】
特開2000−180220号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、特に自動車用材料等に好適な、成形性、曲げ性、BH性及び形状に優れたアルミニウム合金板並びにその製造方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、Al−Mg−Si系合金の溶体化処理後の冷却において、Mg−Si系析出物の析出速度が遅い高温の冷却速度を遅くし、析出温度域での冷却速度を速くする二段例冷却を施すことにより、熱歪みによる板の変形を軽減し、かつ析出物の生成も抑制することに成功した。
【0009】
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1) 質量%で、
Mg:0.2〜1.5%、 Si:0.4〜1.8%を含有し、Cu:0.1〜1.5%、 Mn:0.01〜0.5%、Cr:0.001〜0.5%、Fe:0.001〜0.5%、の1種又は2種以上を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、粒界析出物占有率が30%以下であり、かつ、平坦度が2%以下であることを特徴とする、成形性、塗装焼付け硬化性及び形状に優れたアルミニウム合金板。
(2) 質量%で、V :0.01〜0.5%、Zr:0.01〜0.5%、Ti:0.001〜0.5%、B :0.0001〜0.05%の1種又は2種以上を含有することを特徴とする、(1)記載の成形性、塗装焼付け硬化性及び形状に優れたアルミニウム合金板。
(3) (1)又は(2)記載の成分からなるアルミニウム合金を溶解、鋳造し、熱間圧延及び冷間圧延後、500〜570℃まで加熱し、その温度で0〜300s保持し、保持温度から480〜400℃の範囲まで1〜30℃/sで一次冷却し、その後300℃以下まで30超〜300℃/sで二次冷却することを特徴とする、(1)又は(2)記載の成形性、塗装焼付け硬化性及び形状に優れたアルミニウム合金板の製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
アルミニウム合金板の溶体化処理後の形状が損なわれる原因は、溶体化処理後、高温での冷却速度が速くなることであると考えられる。その理由は、アルミニウム合金板をコイルとして連続熱処理炉で溶体化処理する際には、加熱されて膨張した合金板を急冷すると急激に収縮し、加熱部と冷却部での温度勾配が大きくなり、高温部で耐力を超える応力を発生し、塑性変形して形状を損なうためである。従って、冷却速度が遅ければ温度勾配が小さくなり、応力が耐力を超えることはなく、形状を損なうことはないと考えられる。
【0011】
本発明者らは、アルミニウム合金の形状に及ぼす溶体化処理後の冷却速度の影響を明らかにするため、溶体化処理後、冷却速度を変化させて冷却し、試験片の伸びを測定した。試験は、以下のようにして行った。Mg:0.2〜1.5%及びSi:0.4〜1.8%を含有する1mm厚のアルミニウム合金板を、溶解、鋳造、熱間圧延及び冷間圧延により製造し、圧延方向に直交する幅方向を長手として、40〜100mm×250〜500mmに切断し、中央部に熱電対を装着した。さらに、長手方向の伸びを測定するための評点として、試験片中央部において25mmを評点距離として、けがき線でマーキングした。
【0012】
このアルミニウム合金板の長手方向の両端を50〜100mmを掴み部として、ロードセル、張力制御機能、通電加熱機能及びガス冷却機能を有する試験機に装着した。加熱時にはアルミニウム合金板が膨張し、冷却時には収縮するため、張力を2〜5MPaになるように調整しながら、通電加熱により530〜570℃の範囲に20℃/sで加熱し、0〜60s保持した。その後、通電加熱とHeガス冷却を組み合わせて冷却速度を1〜300℃/sの範囲で制御しながら冷却した。Heガスの噴射により冷却した範囲は、板の中央部の長手方向に50mmの範囲である。Heガスを噴出した範囲は、Heガスを噴出するノズルの角度及び形状の調整によって制御した。
【0013】
この試験片のマーキングにより伸びを測定した結果、冷却時に塑性変形を生じず、形状を損なわずに溶体化処理するためには、冷却速度を30℃/s以下にすることが必要であることがわかった。
【0014】
次に、Al−Mg−Si系合金の溶体化処理後の冷却時の粒界析出物の生成及び合金板の変形挙動に及ぼす冷却速度の影響を明らかにするため、以下の検討を行った。上記の試験方法と同様に、1mm×40〜50mm×250〜500mmの試験片を用いて、張力を1MPa以下になるように調整しながら、加熱及び冷却を行った。まず、通電加熱により530〜570℃の範囲に20℃/sで加熱し、0〜60s保持した後、通電加熱とHeガス冷却を組み合わせて冷却速度を1〜300℃/sの範囲で制御しながら板の中央部の長手方向に100mmの範囲を冷却した。
【0015】
その後、60〜100℃加熱したシリコンオイルバス中に1〜60時間保持する熱処理を施した。さらに、平行部の長さが25mm、幅が16mmの引張試験片を採取し、評点距離20mmの伸び計を装着し、引張試験機にて5%の引張歪みを導入した。この際、0.2%耐力を測定した。さらに、この試験片を用いて、JIS Z 2248に準拠して曲げ試験を行った。支えの直径は10mm、支え間の距離は4mmとし、押金具は鋼製であり、試験片と接触する部位の厚さは1mm、先端部は半径0.5mmの半円形状とした。試験片の中央部に押金具を接触させて引張試験機により試験力を負荷して160〜170°曲げた後、板厚1mmのアルミニウム合金板を挟み、万力により180°曲げた。
【0016】
曲げ部の外側部分の割れを観察して、肉眼で割れが見られるものを×とした。肉眼で割れが見られないものについて、JIS Z 2343に準拠して浸透探傷試験を行った。浸透液は染色浸透液、余剰浸透液の除去剤は有機溶剤、現像剤は速乾式現像剤を用いた。割れの観察は、ルーペを用いて4倍に拡大し、割れが見られるものを△、見られないものを○として評価した。その結果、曲げ試験の評点を△とするには、冷却速度を30℃超/sとすることが必要であり、評点を○とするには冷却速度を50℃/s以上とすることが好ましいことがわかった。
【0017】
曲げ試験後、割れを生じた試料の割れ部分の断面を研磨して、NaOH系の腐食液でエッチングし、ミクロ組織を観察した。その結果、割れが結晶粒界に沿って進展しており、粒界には析出物を生じていることがわかった。そこで、曲げ性に及ぼす析出物の影響を明らかにするため、曲げ試験と同様に作成した試料の析出物を薄膜試料を作製して透過型電子顕微鏡(TEMという)で観察した。本発明のアルミニウム合金の組織をTEMにて観察し、析出物をEDX分析すると、長径0.3〜1μm程度の棒状の析出物は、主にMg、Siが検出され、Cuが検出されることもあった。また、粒径が0.1〜0.5μm程度の粒状の析出物は、EDX分析すると、主にFe、Si、Mn、Crが検出された。
【0018】
TEMにより5000倍で観察して、写真を20視野撮影し、それぞれ7cm×10cmの範囲の粒界の長さ及び粒界に沿った析出物の長さを測定した。粒界に沿った析出物の長さとは、棒状の析出物、粒状の析出物ともに、析出物の形状、大きさ、角度に依らず、粒界と交わった部分の長さとした。
【0019】
この測定結果を全て合計し、析出物の合計長さを粒界の合計長さで除した百分率(以下、粒界析出物占有率)を算出した。その結果、曲げ試験の評点が△であった試験片の粒界占有率は30%以下であり、評点が○であった試験片の粒界占有率は20%以下であることがわかった。
【0020】
本発明者らは、高温では溶質の固溶量が多く析出速度が遅いため、高温での冷却速度を遅くして、析出が速くなる温度域での冷却速度を速くすれば、形状を損なわずに曲げ性を向上させることが可能になると考えた。そこで、2段冷却の最適な条件を決定するために、以下の検討を行った。
【0021】
まず、曲げ性を良好とするための条件を明らかにするために、Mg:0.2〜1.5%、Si:0.4〜1.8%及びCu:0.1〜1.5%を含有するアルニミウム合金板を溶体化処理後、2段冷却し、さらに熱処理を施して曲げ試験を行った。試験片のサイズ、溶体化処理温度測定方法及び温度制御方法は、上記の曲げ試験と同様にし、張力は2〜5MPaとして行った。2段冷却の冷却速度は、加熱後、10〜25℃/sで冷却し、その後、50〜100℃/sに切り替えた。冷却速度の切り替え温度を350〜500℃の範囲で変化させた。さらに熱処理、引張試験及び曲げ試験を上記と同様にして行った。
【0022】
以上の検討により、溶体化処理後の冷却時に粒界析出物の生成が速くなる温度域を詳細に調査し、成分によって変化するが、480〜250℃の温度範囲であることを見出した。
【0023】
このような知見に基づき、析出速度が遅く、板が変形し易い溶体化処理温度から400〜480℃の範囲までの高温では冷却速度を遅くし、その後200〜250℃までの析出物を生じ易い温度域では冷却速度を速くすることによって、熱歪みによる変形と粒界析出を同時に抑制して、曲げ性及び形状が共に良好であるアルミニウム合金並びにその製造方法を発明するに至った。
【0024】
まず、好適な成分組成範囲の限定理由について説明する。なお%は質量%を意味する。
【0025】
Mg:Mgは本発明の基本となる合金元素であり、塗装焼付け時にギニエ−プレストン・ゾーン(Guinier−Preston Zone、GPゾーンという)を生じてBH性の発現に寄与するものである。この効果は、Mg量が0.2%未満では不十分であり、一方、1.5%を超えるMgを添加すると粗大な析出物を生じて成形性及び曲げ性を劣化させる。このことから、Mg量は0.2〜1.5%の範囲とした。
【0026】
Si:Siも本発明の基本となる合金元素であり、塗装焼付け時にGPゾーンを生じてBH性の発現に寄与するものであるが、Si量が0.4%未満ではこの効果は十分ではない。一方、Si量が1.8%を超えると粗大な析出物を生じ、成形性及び曲げ性を損なう。従ってSi量は、0.4〜1.8%の範囲とした。
【0027】
さらに、Cu、Mn、Cr、Feの1種又は2種以上を含有させる。
【0028】
Cu:Cuは、成形性を向上させる元素であるが、0.1%未満では効果が小さいため、0.1%をCu量の下限とする。一方、1.5%を超えると粗大な析出物を生じ、成形性及び曲げ性を低下させることから、Cu量の上限を1.5%とした。
【0029】
Mn:Mnは強度向上と結晶粒径の微細化に有効な元素であるが、Mn量が0.01%未満では効果が小さく、0.5%超では多量の析出物を生じて曲げ性を損なう。従って、Mn量は0.01〜0.5%の範囲とした。
【0030】
Cr:Crも強度向上と結晶粒径の微細化に有効な元素であるが、0.001%未満では効果が小さく、0.5%超では多量の析出物を生じ、曲げ性を損なう。従って、Cr量は0.001〜0.5%の範囲とした。さらに微細な析出物の生成を抑制し、曲げ性を向上させるには、Cr量を0.001〜0.05%とすることが好ましく、0.001〜0.02%が最適である。
【0031】
Fe:Feは強度向上と鋳塊組織の微細化に有効な元素であるが、その含有量が0.001%未満では効果が小さいため、Fe量の下限を0.001%以上とする。また、0.5%を超えると粗大な晶出物を生じて成形性を低下させるため、Fe量の上限を0.5%以下とした。さらに成形性及び曲げ性を向上させるには、Fe量を0.001〜0.15%とすることが好ましい。
【0032】
さらに必要に応じて、V、Zr、Ti、Bの1種又は2種以上を含有させてもよい。
【0033】
V:Vは強度向上と結晶粒の微細化に有効な元素であるが、その含有量が0.01%未満では効果が小さく、0.5%超では粗大な析出物を生じて成形性を低下させる。従って、V量を0.01〜0.5%の範囲とした。
【0034】
Zr:Zrも強度向上と結晶粒の微細化に有効な元素であるが、その含有量が0.01%未満では効果が小さく、0.5%超では粗大な析出物を生じて成形性を低下させる。従って、Zr量を0.01〜0.5%の範囲とした。
【0035】
Ti:Tiは強度向上と鋳塊組織の微細化に有効な元素であるが、その含有量が0.001%未満では効果が小さく、0.5%超では粗大な析出物を生じて成形性を低下させる。従って、Ti量を0.001〜0.5%の範囲とした。
【0036】
B:Bも強度向上と鋳塊組織の微細化に有効な元素であるが、0.0001%未満では効果が小さく、0.05%超では粗大な析出物を生じて成形性を低下させる。従って、B量を0.0001〜0.05%の範囲とした。
【0037】
析出物粒界析出物占有率は、小さいほど曲げ性が良好であり、30%を超えると曲げ性が低下するため、30%以下の範囲とした。なお、粒界析出物占有率は、TEMを用いて、5000倍の倍率で10視野〜20視野の写真を撮影し、それぞれ7cm×10cmの範囲の粒界の長さ及び粒界に沿った析出物の長さを測定し、求めることができる。この粒界に沿った析出物の長さとは、析出物の形状、大きさ、角度に依らず、粒界と交わった部分の長さとする。この粒界に沿った析出物の長さの測定結果を全て合計し、それを粒界の合計長さで除した百分率として、粒界析出物占有率を算出することができる。
【0038】
平坦度は、板を平坦な盤面上に静置して、板が盤面から離れている隙間の高さを、圧延方向及びそれに垂直な幅方向の隙間の長さで除した百分率の最大値である。平坦度が2%より大きいとプレス成形時にしわが発生し易くなるため、2%以下の範囲とした。なお、平坦度の測定は以下のようにして行うことができる。200mm角の板を採取し、盤上に静置して、板が盤面から離れた部分の形状を測定する。まず、板が盤面から離れた部分の高さは、盤面を基準高さとして測定し、最高の高さから板厚を差し引いて隙間高さとする。さらに、その板が盤面から離れた部分の圧延方向及び幅方向の長さを測定して短い方を隙間長さとする。この隙間高さを隙間長さで除した割合の最大値として平坦度を評価する。
【0039】
次に、本発明のアルミニウム合金板の好適な製造方法について詳しく説明する。本発明のアルミニウム合金は、鋳造後、熱間圧延及び冷間圧延によって冷延板とし、溶体化処理後の冷却を、2段階の冷却速度とするものである。鋳造後に均質化焼鈍を施しても良く、冷間圧延工程において中間焼鈍を施しても良い。均質化焼鈍は、凝固組織中の微細な析出物の再固溶を促進するものであり、500〜580℃で1〜20時間保持することが好ましい。中間焼鈍により、冷間加工組織を再結晶させ、析出物の再固溶を促進するためには、500〜570℃まで加熱し、その温度で0〜300s保持することが好ましい。また、溶体化処理後、予備時効処理を施しても良い。
【0040】
溶体化処理は、冷間加工組織を再結晶させ、冷延板に生じているMg2Si等の析出物を固溶させるために施す。この温度が500℃よりも低いとMg、Si等の溶質元素が十分に固溶せず、成形性及びBH性が低下する。一方、570℃を超えると結晶粒径が粗大化して曲げ性を損なう。また、保持時間は溶体化処理温度に到達後、保持せずに冷却しても良いが、保持すると溶質元素の固溶が促進される。しかしながら、保持温度が300sよりも長いと結晶粒径が粗大化して曲げ性を損なうため、保持時間は300s以下とする。さらに、好ましい保持時間は120s以下である。
【0041】
溶体化処理後の冷却は2段階で行う。これは、高温での冷却を遅くすることにより板の変形を抑制して平坦度を良好な範囲に保ち、その後、冷却速度を速くして粒界への析出物の生成を抑制し、優れた成形性、BH性及び曲げ性を得るものである。
【0042】
一次冷却の開始温度は溶体化処理の保持温度であるが、一次冷却の終了温度は400〜480℃とする。これは、一次冷却の終了温度が480℃より高いと二次冷却の際に板が変形し、400℃よりも低いと粒界に析出物を生じて曲げ性を損なうためである。なお、溶質元素の添加量により析出挙動が変化するため、例えば、添加量が多い場合には一次冷却の終了温度を高くすることが好ましい。
【0043】
また、一次冷却の冷却速度は、1℃/sより遅いと析出物を生じて曲げ性を損ない、30℃/sより速いと板が変形するため、1〜30℃/sの範囲とする。好ましい範囲は5〜25℃/s、最適範囲は10〜20℃/sである。
【0044】
二次冷却の開始温度は上記の一次冷却の終了温度であり、二次冷却の終了温度は300℃以下とする。これは、二次冷却を300℃よりも高い温度で終了すると、粒界に析出物を生じて曲げ性を損なうためである。なお、二次冷却の終了温度の好ましい範囲は260℃以下である。二次冷却の終了温度の下限は規定しないが、その後の予備時効処理の条件によって、変化させることが好ましく室温以上であれば良い。BH性を向上させるためには、二次冷却の終了温度の下限を70℃以上とすることが好ましい。
【0045】
また、二次冷却の冷却速度については、30℃/s以下では析出物を生じて曲げ性を損なうため30℃超を下限とする。また二次冷却の冷却速度は速いほど良いが、現状の技術では300℃/sを超えることは難しい。
【0046】
【実施例】
以下、本発明を実施例で説明する。
【0047】
(実施例1)
表1に示す成分のアルミニウム合金を溶解、鋳造後、540℃で15時間保持する均質化処理を施した後、熱間圧延及び冷間圧延により、厚さ1mmの冷延板とした。これらの冷延板に540℃で5秒保持する溶体化処理を施した後、表2に示す条件で冷却した。室温での放置時間を1時間以内として、さらに耐力が120〜130MPaの範囲となるように60〜100℃の温度範囲で1〜50時間保持する予備時効処理を施して、7日間室温に放置した。冷却は、ファンによる制御冷却、ミスト冷却、水冷によって行ったが、冷却条件は、加熱炉の雰囲気温度、冷却条件、通板速度をパラメータとして熱伝導計算によって決定した。なお、熱伝導計算に必要なパラメータは、実験室で熱電対を装着した試験片を制御冷却して求めた。
【0048】
これらのアルミニウム合金板より200mm角の試料を採取し平坦度を以下のようにして測定した。まず、試料を盤上に静置して、板が盤面から離れた部分の形状を測定した。板が盤面から離れた部分の高さは、盤面を基準高さとして測定し、最高の高さから板厚を差し引いて隙間高さとした。さらに、その板が盤面から離れた部分の圧延方向及び幅方向の長さを測定して短い方を隙間長さとした。この隙間高さを隙間長さで除した割合の最大値として平坦度を評価した。
【0049】
粒界析出物占有率は、TEMを用いて、5000倍の倍率で20視野の写真を撮影し、粒界長さと粒界に沿った粒界析出物の長さを測定し、粒界析出物の長さの総和を粒界の長さの総和で除した百分率として評価した。なお、粒界に沿った析出物の長さとは、析出物の形状、大きさ、角度に依らず、粒界と交わった部分の長さとした。
【0050】
引張試験及び成形試験を、それぞれJIS Z 2241及びJIS Z 2247に準拠して実施した。成形性はエリクセン値で評価し、10.0以上を良好とした。引張試験及び成形試験の結果を、表3のBH前の欄に示した。塗装焼付け熱処理に相当する180℃で30分の熱処理をBHとし、BHを行った後に引張試験をJIS Z 2241に準拠して実施した。得られた0.2%耐力を表3のBH後の欄に示した。BH後の0.2%耐力からBH前の0.2%耐力を減じて、ΔBHとして表3に示した。BH後の0.2%耐力は、190MPa以上を良好とした。また、プレス成形はBH前に行うため、BH前の0.2%耐力が低い方が成形性を向上させるためには好ましく、BH後は0.2%耐力が高い方が好ましい。そのため、ΔBHは、75MPa以上を良好とした。
【0051】
アルミニウム合金板の曲げ性は、0.2%耐力の上昇とともに低下するため、0.2%耐力をほぼ同等と見なすことができる範囲である145〜155MPaに調整した。0.2%耐力の調整は、60〜100℃のオイルバスに1〜100時間保持する熱処理によって行った。熱処理の条件は、成分によって異なるため、予備試験を行って決定した。
【0052】
曲げ試験を行う前に、JIS Z 2201の5号試験片に、評点距離25mmの伸び計を装着し、引張試験機にて5%の引張歪みを導入した。この際、0.2%耐力を測定し、145〜155MPaの範囲であることを確認した。
【0053】
さらに、この試験片を用いて、JIS Z 2248に準拠して曲げ試験を行った。支えの直径は10mm、支え間の距離は4mmとし、押金具は鋼製であり、試験片と接触する部位の厚さは1mm、先端部は半径0.5mmの半円形状とした。試験片の中央部に押金具を接触させて引張試験機により試験力を負荷して160〜170°曲げた後、板厚1mmのアルミニウム合金板を挟み、万力により180°曲げた。
【0054】
その外側部分の割れを観察して、肉眼で割れが見られるものを×とし、肉眼で割れが見られないものについては、JIS Z 2343に準拠して浸透探傷試験を行った。さらにルーペを用いて4倍に拡大し、割れが見られるものを△、見られないものを○として評価した。
【0055】
試験結果を表3に示す。本発明のアルミニウム合金板No.1〜20は、塗装焼付け後の耐力、成形性及び曲げ性が良好である。一方、本発明以外の成分を有する比較例の合金No.21はMg量が、No.23はSi量が本発明の範囲よりも少なく、成形性及びBH性が低い。また、No.22はMg量が、No.24はSi量が、No.25はCu量が、本発明の範囲よりも多いため、粒界析出物占有率が本発明の範囲よりも大きく、粗大な析出物を生じて成形性及び曲げ性が低下している。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
(実施例2)
表1のA2、A19及びA20に示す成分のアルミニウム合金を溶解、鋳造後、550℃で10時間保持する均質化処理を施した後、熱間圧延及び冷間圧延により、厚さ1mmの冷延板とした。これらの冷延板に表4に示す条件で溶体化処理を施した。さらに、室温での放置時間を1時間以内として、耐力が120〜130MPaの範囲となるように60〜90℃の温度範囲で1〜50時間保持する予備時効処理を施した。その後、7日間室温に放置して、実施例1と同様の試験を行った。
【0060】
試験結果を表5に示す。表5より、本発明のアルミニウム合金板No.26〜34は、成形性、曲げ性及び塗装焼き付け処理後の耐力が良好である。一方、No.35は溶体化処理の温度が低いため粒界に析出物を生じ、粒界析出物占有率が大きく、曲げ性が低下している。また、溶質元素の固溶が不十分であり、成形性及びBH性も低下している。一方、No.36は溶体化処理温度が高く、No.37は溶体化処理の保持時間が長いため、結晶粒径が粗大化して成形性及び曲げ性が低下している。
【0061】
No.38は一次冷却の終了温度が低いため粒界析出物占有率が大きく、曲げ性が低下している。また、No.39は一次冷却の終了温度が高く、No.41は一次冷却の冷却速度が大きいため、形状が悪く、平坦度が低下している。No.40は一次冷却の冷却速度が遅いため、成形性、BH性及び曲げ性が低下している。No.42は二次冷却の終了温度が高く、No.43は二次冷却の冷却速度が遅いため、粒界析出物占有率が大きく、曲げ性が低下している。
【0062】
【表4】
【0063】
【表5】
【0064】
【発明の効果】
本発明によれば、成形、塗装焼付け硬化性、曲げ性及び形状に優れた自動車用材料などに好適なアルミニウム合金板及びその製造方法を提供できる。本発明合金の適用により自動車重量の著しい軽量化が可能であり、産業上の価値のみならず、温室効果ガス排出量削減への貢献も極めて高い。
【発明の属する技術分野】
本発明は、プレス、曲げ等の成形性に優れ、塗装焼付け時に析出硬化して降伏強度が上昇する、即ち優れた塗装焼付け硬化性(以下BH性)を有し、形状に優れた、自動車用材料等に好適なアルミニウム合金板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車の燃費向上を目的とした車体の軽量化が検討されており、自動車用材料へのアルミニウム合金板の適用が進められつつある。この用途には高強度で、プレス、曲げ等の成形性に優れた材料が要求されるため、成形後に塗装焼き付け時の析出硬化により高強度を得る熱処理型のAl−Mg−Si系合金が開発されている。Al−Mg−Si系合金は製造性に優れ、またストレッチャー−ストレイン模様が出現し難いという長所を有しており、自動車ボディパネル等の外板に最適である。
【0003】
このようなAl−Mg−Si系合金として、特許文献1〜6に、微細組織において析出物の粒径及び分布等を制御して、曲げ性を向上させたアルミニウム合金板が開示されている。しかし、特許文献1〜5は、曲げ試験の前に5%の引張歪みを導入したものではないため、プレス成形により自動車部品等を加工した後の曲げ性が十分ではない可能性があり、特許文献6は、曲げ半径と板厚の比が比較的大きく、特殊な曲げ加工方法が必要であると考えられる。
【0004】
また、特許文献7に、溶体化処理後の冷却速度を大きくすることにより、結晶粒界への析出を抑制して成形性を向上させた、BH性に優れたアルミニウム合金板及びその製造方法が開示されている。しかし、曲げ性を向上させるために溶体化処理後の冷却速度を大きくすると熱歪みによって板が不均一に変形して、JIS H 4000に示されているように、板の中央部が伸びた中ひずみ又は板の端部が伸びた耳ひずみ等が生じて、形状が悪くなるという問題点がある。
【0005】
この問題に対して、溶体化処理後、平均冷却速度50℃/s以上で焼き入れ、歪みの矯正を施すアルミニウム合金板の製造方法が特許文献8に開示されている。しかし、冷間加工により歪みの矯正を行うと、塑性歪みが導入されるため、プレス成形性が低下するという問題があった。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−31616号公報
【特許文献2】
特開2001−279406号公報
【特許文献3】
特開2001−262264号公報
【特許文献4】
特開2001−20027号公報
【特許文献5】
特開2002−47580号公報
【特許文献6】
特開2000−144294号公報
【特許文献7】
特開平11−350058号公報
【特許文献8】
特開2000−180220号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、特に自動車用材料等に好適な、成形性、曲げ性、BH性及び形状に優れたアルミニウム合金板並びにその製造方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、Al−Mg−Si系合金の溶体化処理後の冷却において、Mg−Si系析出物の析出速度が遅い高温の冷却速度を遅くし、析出温度域での冷却速度を速くする二段例冷却を施すことにより、熱歪みによる板の変形を軽減し、かつ析出物の生成も抑制することに成功した。
【0009】
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1) 質量%で、
Mg:0.2〜1.5%、 Si:0.4〜1.8%を含有し、Cu:0.1〜1.5%、 Mn:0.01〜0.5%、Cr:0.001〜0.5%、Fe:0.001〜0.5%、の1種又は2種以上を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、粒界析出物占有率が30%以下であり、かつ、平坦度が2%以下であることを特徴とする、成形性、塗装焼付け硬化性及び形状に優れたアルミニウム合金板。
(2) 質量%で、V :0.01〜0.5%、Zr:0.01〜0.5%、Ti:0.001〜0.5%、B :0.0001〜0.05%の1種又は2種以上を含有することを特徴とする、(1)記載の成形性、塗装焼付け硬化性及び形状に優れたアルミニウム合金板。
(3) (1)又は(2)記載の成分からなるアルミニウム合金を溶解、鋳造し、熱間圧延及び冷間圧延後、500〜570℃まで加熱し、その温度で0〜300s保持し、保持温度から480〜400℃の範囲まで1〜30℃/sで一次冷却し、その後300℃以下まで30超〜300℃/sで二次冷却することを特徴とする、(1)又は(2)記載の成形性、塗装焼付け硬化性及び形状に優れたアルミニウム合金板の製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
アルミニウム合金板の溶体化処理後の形状が損なわれる原因は、溶体化処理後、高温での冷却速度が速くなることであると考えられる。その理由は、アルミニウム合金板をコイルとして連続熱処理炉で溶体化処理する際には、加熱されて膨張した合金板を急冷すると急激に収縮し、加熱部と冷却部での温度勾配が大きくなり、高温部で耐力を超える応力を発生し、塑性変形して形状を損なうためである。従って、冷却速度が遅ければ温度勾配が小さくなり、応力が耐力を超えることはなく、形状を損なうことはないと考えられる。
【0011】
本発明者らは、アルミニウム合金の形状に及ぼす溶体化処理後の冷却速度の影響を明らかにするため、溶体化処理後、冷却速度を変化させて冷却し、試験片の伸びを測定した。試験は、以下のようにして行った。Mg:0.2〜1.5%及びSi:0.4〜1.8%を含有する1mm厚のアルミニウム合金板を、溶解、鋳造、熱間圧延及び冷間圧延により製造し、圧延方向に直交する幅方向を長手として、40〜100mm×250〜500mmに切断し、中央部に熱電対を装着した。さらに、長手方向の伸びを測定するための評点として、試験片中央部において25mmを評点距離として、けがき線でマーキングした。
【0012】
このアルミニウム合金板の長手方向の両端を50〜100mmを掴み部として、ロードセル、張力制御機能、通電加熱機能及びガス冷却機能を有する試験機に装着した。加熱時にはアルミニウム合金板が膨張し、冷却時には収縮するため、張力を2〜5MPaになるように調整しながら、通電加熱により530〜570℃の範囲に20℃/sで加熱し、0〜60s保持した。その後、通電加熱とHeガス冷却を組み合わせて冷却速度を1〜300℃/sの範囲で制御しながら冷却した。Heガスの噴射により冷却した範囲は、板の中央部の長手方向に50mmの範囲である。Heガスを噴出した範囲は、Heガスを噴出するノズルの角度及び形状の調整によって制御した。
【0013】
この試験片のマーキングにより伸びを測定した結果、冷却時に塑性変形を生じず、形状を損なわずに溶体化処理するためには、冷却速度を30℃/s以下にすることが必要であることがわかった。
【0014】
次に、Al−Mg−Si系合金の溶体化処理後の冷却時の粒界析出物の生成及び合金板の変形挙動に及ぼす冷却速度の影響を明らかにするため、以下の検討を行った。上記の試験方法と同様に、1mm×40〜50mm×250〜500mmの試験片を用いて、張力を1MPa以下になるように調整しながら、加熱及び冷却を行った。まず、通電加熱により530〜570℃の範囲に20℃/sで加熱し、0〜60s保持した後、通電加熱とHeガス冷却を組み合わせて冷却速度を1〜300℃/sの範囲で制御しながら板の中央部の長手方向に100mmの範囲を冷却した。
【0015】
その後、60〜100℃加熱したシリコンオイルバス中に1〜60時間保持する熱処理を施した。さらに、平行部の長さが25mm、幅が16mmの引張試験片を採取し、評点距離20mmの伸び計を装着し、引張試験機にて5%の引張歪みを導入した。この際、0.2%耐力を測定した。さらに、この試験片を用いて、JIS Z 2248に準拠して曲げ試験を行った。支えの直径は10mm、支え間の距離は4mmとし、押金具は鋼製であり、試験片と接触する部位の厚さは1mm、先端部は半径0.5mmの半円形状とした。試験片の中央部に押金具を接触させて引張試験機により試験力を負荷して160〜170°曲げた後、板厚1mmのアルミニウム合金板を挟み、万力により180°曲げた。
【0016】
曲げ部の外側部分の割れを観察して、肉眼で割れが見られるものを×とした。肉眼で割れが見られないものについて、JIS Z 2343に準拠して浸透探傷試験を行った。浸透液は染色浸透液、余剰浸透液の除去剤は有機溶剤、現像剤は速乾式現像剤を用いた。割れの観察は、ルーペを用いて4倍に拡大し、割れが見られるものを△、見られないものを○として評価した。その結果、曲げ試験の評点を△とするには、冷却速度を30℃超/sとすることが必要であり、評点を○とするには冷却速度を50℃/s以上とすることが好ましいことがわかった。
【0017】
曲げ試験後、割れを生じた試料の割れ部分の断面を研磨して、NaOH系の腐食液でエッチングし、ミクロ組織を観察した。その結果、割れが結晶粒界に沿って進展しており、粒界には析出物を生じていることがわかった。そこで、曲げ性に及ぼす析出物の影響を明らかにするため、曲げ試験と同様に作成した試料の析出物を薄膜試料を作製して透過型電子顕微鏡(TEMという)で観察した。本発明のアルミニウム合金の組織をTEMにて観察し、析出物をEDX分析すると、長径0.3〜1μm程度の棒状の析出物は、主にMg、Siが検出され、Cuが検出されることもあった。また、粒径が0.1〜0.5μm程度の粒状の析出物は、EDX分析すると、主にFe、Si、Mn、Crが検出された。
【0018】
TEMにより5000倍で観察して、写真を20視野撮影し、それぞれ7cm×10cmの範囲の粒界の長さ及び粒界に沿った析出物の長さを測定した。粒界に沿った析出物の長さとは、棒状の析出物、粒状の析出物ともに、析出物の形状、大きさ、角度に依らず、粒界と交わった部分の長さとした。
【0019】
この測定結果を全て合計し、析出物の合計長さを粒界の合計長さで除した百分率(以下、粒界析出物占有率)を算出した。その結果、曲げ試験の評点が△であった試験片の粒界占有率は30%以下であり、評点が○であった試験片の粒界占有率は20%以下であることがわかった。
【0020】
本発明者らは、高温では溶質の固溶量が多く析出速度が遅いため、高温での冷却速度を遅くして、析出が速くなる温度域での冷却速度を速くすれば、形状を損なわずに曲げ性を向上させることが可能になると考えた。そこで、2段冷却の最適な条件を決定するために、以下の検討を行った。
【0021】
まず、曲げ性を良好とするための条件を明らかにするために、Mg:0.2〜1.5%、Si:0.4〜1.8%及びCu:0.1〜1.5%を含有するアルニミウム合金板を溶体化処理後、2段冷却し、さらに熱処理を施して曲げ試験を行った。試験片のサイズ、溶体化処理温度測定方法及び温度制御方法は、上記の曲げ試験と同様にし、張力は2〜5MPaとして行った。2段冷却の冷却速度は、加熱後、10〜25℃/sで冷却し、その後、50〜100℃/sに切り替えた。冷却速度の切り替え温度を350〜500℃の範囲で変化させた。さらに熱処理、引張試験及び曲げ試験を上記と同様にして行った。
【0022】
以上の検討により、溶体化処理後の冷却時に粒界析出物の生成が速くなる温度域を詳細に調査し、成分によって変化するが、480〜250℃の温度範囲であることを見出した。
【0023】
このような知見に基づき、析出速度が遅く、板が変形し易い溶体化処理温度から400〜480℃の範囲までの高温では冷却速度を遅くし、その後200〜250℃までの析出物を生じ易い温度域では冷却速度を速くすることによって、熱歪みによる変形と粒界析出を同時に抑制して、曲げ性及び形状が共に良好であるアルミニウム合金並びにその製造方法を発明するに至った。
【0024】
まず、好適な成分組成範囲の限定理由について説明する。なお%は質量%を意味する。
【0025】
Mg:Mgは本発明の基本となる合金元素であり、塗装焼付け時にギニエ−プレストン・ゾーン(Guinier−Preston Zone、GPゾーンという)を生じてBH性の発現に寄与するものである。この効果は、Mg量が0.2%未満では不十分であり、一方、1.5%を超えるMgを添加すると粗大な析出物を生じて成形性及び曲げ性を劣化させる。このことから、Mg量は0.2〜1.5%の範囲とした。
【0026】
Si:Siも本発明の基本となる合金元素であり、塗装焼付け時にGPゾーンを生じてBH性の発現に寄与するものであるが、Si量が0.4%未満ではこの効果は十分ではない。一方、Si量が1.8%を超えると粗大な析出物を生じ、成形性及び曲げ性を損なう。従ってSi量は、0.4〜1.8%の範囲とした。
【0027】
さらに、Cu、Mn、Cr、Feの1種又は2種以上を含有させる。
【0028】
Cu:Cuは、成形性を向上させる元素であるが、0.1%未満では効果が小さいため、0.1%をCu量の下限とする。一方、1.5%を超えると粗大な析出物を生じ、成形性及び曲げ性を低下させることから、Cu量の上限を1.5%とした。
【0029】
Mn:Mnは強度向上と結晶粒径の微細化に有効な元素であるが、Mn量が0.01%未満では効果が小さく、0.5%超では多量の析出物を生じて曲げ性を損なう。従って、Mn量は0.01〜0.5%の範囲とした。
【0030】
Cr:Crも強度向上と結晶粒径の微細化に有効な元素であるが、0.001%未満では効果が小さく、0.5%超では多量の析出物を生じ、曲げ性を損なう。従って、Cr量は0.001〜0.5%の範囲とした。さらに微細な析出物の生成を抑制し、曲げ性を向上させるには、Cr量を0.001〜0.05%とすることが好ましく、0.001〜0.02%が最適である。
【0031】
Fe:Feは強度向上と鋳塊組織の微細化に有効な元素であるが、その含有量が0.001%未満では効果が小さいため、Fe量の下限を0.001%以上とする。また、0.5%を超えると粗大な晶出物を生じて成形性を低下させるため、Fe量の上限を0.5%以下とした。さらに成形性及び曲げ性を向上させるには、Fe量を0.001〜0.15%とすることが好ましい。
【0032】
さらに必要に応じて、V、Zr、Ti、Bの1種又は2種以上を含有させてもよい。
【0033】
V:Vは強度向上と結晶粒の微細化に有効な元素であるが、その含有量が0.01%未満では効果が小さく、0.5%超では粗大な析出物を生じて成形性を低下させる。従って、V量を0.01〜0.5%の範囲とした。
【0034】
Zr:Zrも強度向上と結晶粒の微細化に有効な元素であるが、その含有量が0.01%未満では効果が小さく、0.5%超では粗大な析出物を生じて成形性を低下させる。従って、Zr量を0.01〜0.5%の範囲とした。
【0035】
Ti:Tiは強度向上と鋳塊組織の微細化に有効な元素であるが、その含有量が0.001%未満では効果が小さく、0.5%超では粗大な析出物を生じて成形性を低下させる。従って、Ti量を0.001〜0.5%の範囲とした。
【0036】
B:Bも強度向上と鋳塊組織の微細化に有効な元素であるが、0.0001%未満では効果が小さく、0.05%超では粗大な析出物を生じて成形性を低下させる。従って、B量を0.0001〜0.05%の範囲とした。
【0037】
析出物粒界析出物占有率は、小さいほど曲げ性が良好であり、30%を超えると曲げ性が低下するため、30%以下の範囲とした。なお、粒界析出物占有率は、TEMを用いて、5000倍の倍率で10視野〜20視野の写真を撮影し、それぞれ7cm×10cmの範囲の粒界の長さ及び粒界に沿った析出物の長さを測定し、求めることができる。この粒界に沿った析出物の長さとは、析出物の形状、大きさ、角度に依らず、粒界と交わった部分の長さとする。この粒界に沿った析出物の長さの測定結果を全て合計し、それを粒界の合計長さで除した百分率として、粒界析出物占有率を算出することができる。
【0038】
平坦度は、板を平坦な盤面上に静置して、板が盤面から離れている隙間の高さを、圧延方向及びそれに垂直な幅方向の隙間の長さで除した百分率の最大値である。平坦度が2%より大きいとプレス成形時にしわが発生し易くなるため、2%以下の範囲とした。なお、平坦度の測定は以下のようにして行うことができる。200mm角の板を採取し、盤上に静置して、板が盤面から離れた部分の形状を測定する。まず、板が盤面から離れた部分の高さは、盤面を基準高さとして測定し、最高の高さから板厚を差し引いて隙間高さとする。さらに、その板が盤面から離れた部分の圧延方向及び幅方向の長さを測定して短い方を隙間長さとする。この隙間高さを隙間長さで除した割合の最大値として平坦度を評価する。
【0039】
次に、本発明のアルミニウム合金板の好適な製造方法について詳しく説明する。本発明のアルミニウム合金は、鋳造後、熱間圧延及び冷間圧延によって冷延板とし、溶体化処理後の冷却を、2段階の冷却速度とするものである。鋳造後に均質化焼鈍を施しても良く、冷間圧延工程において中間焼鈍を施しても良い。均質化焼鈍は、凝固組織中の微細な析出物の再固溶を促進するものであり、500〜580℃で1〜20時間保持することが好ましい。中間焼鈍により、冷間加工組織を再結晶させ、析出物の再固溶を促進するためには、500〜570℃まで加熱し、その温度で0〜300s保持することが好ましい。また、溶体化処理後、予備時効処理を施しても良い。
【0040】
溶体化処理は、冷間加工組織を再結晶させ、冷延板に生じているMg2Si等の析出物を固溶させるために施す。この温度が500℃よりも低いとMg、Si等の溶質元素が十分に固溶せず、成形性及びBH性が低下する。一方、570℃を超えると結晶粒径が粗大化して曲げ性を損なう。また、保持時間は溶体化処理温度に到達後、保持せずに冷却しても良いが、保持すると溶質元素の固溶が促進される。しかしながら、保持温度が300sよりも長いと結晶粒径が粗大化して曲げ性を損なうため、保持時間は300s以下とする。さらに、好ましい保持時間は120s以下である。
【0041】
溶体化処理後の冷却は2段階で行う。これは、高温での冷却を遅くすることにより板の変形を抑制して平坦度を良好な範囲に保ち、その後、冷却速度を速くして粒界への析出物の生成を抑制し、優れた成形性、BH性及び曲げ性を得るものである。
【0042】
一次冷却の開始温度は溶体化処理の保持温度であるが、一次冷却の終了温度は400〜480℃とする。これは、一次冷却の終了温度が480℃より高いと二次冷却の際に板が変形し、400℃よりも低いと粒界に析出物を生じて曲げ性を損なうためである。なお、溶質元素の添加量により析出挙動が変化するため、例えば、添加量が多い場合には一次冷却の終了温度を高くすることが好ましい。
【0043】
また、一次冷却の冷却速度は、1℃/sより遅いと析出物を生じて曲げ性を損ない、30℃/sより速いと板が変形するため、1〜30℃/sの範囲とする。好ましい範囲は5〜25℃/s、最適範囲は10〜20℃/sである。
【0044】
二次冷却の開始温度は上記の一次冷却の終了温度であり、二次冷却の終了温度は300℃以下とする。これは、二次冷却を300℃よりも高い温度で終了すると、粒界に析出物を生じて曲げ性を損なうためである。なお、二次冷却の終了温度の好ましい範囲は260℃以下である。二次冷却の終了温度の下限は規定しないが、その後の予備時効処理の条件によって、変化させることが好ましく室温以上であれば良い。BH性を向上させるためには、二次冷却の終了温度の下限を70℃以上とすることが好ましい。
【0045】
また、二次冷却の冷却速度については、30℃/s以下では析出物を生じて曲げ性を損なうため30℃超を下限とする。また二次冷却の冷却速度は速いほど良いが、現状の技術では300℃/sを超えることは難しい。
【0046】
【実施例】
以下、本発明を実施例で説明する。
【0047】
(実施例1)
表1に示す成分のアルミニウム合金を溶解、鋳造後、540℃で15時間保持する均質化処理を施した後、熱間圧延及び冷間圧延により、厚さ1mmの冷延板とした。これらの冷延板に540℃で5秒保持する溶体化処理を施した後、表2に示す条件で冷却した。室温での放置時間を1時間以内として、さらに耐力が120〜130MPaの範囲となるように60〜100℃の温度範囲で1〜50時間保持する予備時効処理を施して、7日間室温に放置した。冷却は、ファンによる制御冷却、ミスト冷却、水冷によって行ったが、冷却条件は、加熱炉の雰囲気温度、冷却条件、通板速度をパラメータとして熱伝導計算によって決定した。なお、熱伝導計算に必要なパラメータは、実験室で熱電対を装着した試験片を制御冷却して求めた。
【0048】
これらのアルミニウム合金板より200mm角の試料を採取し平坦度を以下のようにして測定した。まず、試料を盤上に静置して、板が盤面から離れた部分の形状を測定した。板が盤面から離れた部分の高さは、盤面を基準高さとして測定し、最高の高さから板厚を差し引いて隙間高さとした。さらに、その板が盤面から離れた部分の圧延方向及び幅方向の長さを測定して短い方を隙間長さとした。この隙間高さを隙間長さで除した割合の最大値として平坦度を評価した。
【0049】
粒界析出物占有率は、TEMを用いて、5000倍の倍率で20視野の写真を撮影し、粒界長さと粒界に沿った粒界析出物の長さを測定し、粒界析出物の長さの総和を粒界の長さの総和で除した百分率として評価した。なお、粒界に沿った析出物の長さとは、析出物の形状、大きさ、角度に依らず、粒界と交わった部分の長さとした。
【0050】
引張試験及び成形試験を、それぞれJIS Z 2241及びJIS Z 2247に準拠して実施した。成形性はエリクセン値で評価し、10.0以上を良好とした。引張試験及び成形試験の結果を、表3のBH前の欄に示した。塗装焼付け熱処理に相当する180℃で30分の熱処理をBHとし、BHを行った後に引張試験をJIS Z 2241に準拠して実施した。得られた0.2%耐力を表3のBH後の欄に示した。BH後の0.2%耐力からBH前の0.2%耐力を減じて、ΔBHとして表3に示した。BH後の0.2%耐力は、190MPa以上を良好とした。また、プレス成形はBH前に行うため、BH前の0.2%耐力が低い方が成形性を向上させるためには好ましく、BH後は0.2%耐力が高い方が好ましい。そのため、ΔBHは、75MPa以上を良好とした。
【0051】
アルミニウム合金板の曲げ性は、0.2%耐力の上昇とともに低下するため、0.2%耐力をほぼ同等と見なすことができる範囲である145〜155MPaに調整した。0.2%耐力の調整は、60〜100℃のオイルバスに1〜100時間保持する熱処理によって行った。熱処理の条件は、成分によって異なるため、予備試験を行って決定した。
【0052】
曲げ試験を行う前に、JIS Z 2201の5号試験片に、評点距離25mmの伸び計を装着し、引張試験機にて5%の引張歪みを導入した。この際、0.2%耐力を測定し、145〜155MPaの範囲であることを確認した。
【0053】
さらに、この試験片を用いて、JIS Z 2248に準拠して曲げ試験を行った。支えの直径は10mm、支え間の距離は4mmとし、押金具は鋼製であり、試験片と接触する部位の厚さは1mm、先端部は半径0.5mmの半円形状とした。試験片の中央部に押金具を接触させて引張試験機により試験力を負荷して160〜170°曲げた後、板厚1mmのアルミニウム合金板を挟み、万力により180°曲げた。
【0054】
その外側部分の割れを観察して、肉眼で割れが見られるものを×とし、肉眼で割れが見られないものについては、JIS Z 2343に準拠して浸透探傷試験を行った。さらにルーペを用いて4倍に拡大し、割れが見られるものを△、見られないものを○として評価した。
【0055】
試験結果を表3に示す。本発明のアルミニウム合金板No.1〜20は、塗装焼付け後の耐力、成形性及び曲げ性が良好である。一方、本発明以外の成分を有する比較例の合金No.21はMg量が、No.23はSi量が本発明の範囲よりも少なく、成形性及びBH性が低い。また、No.22はMg量が、No.24はSi量が、No.25はCu量が、本発明の範囲よりも多いため、粒界析出物占有率が本発明の範囲よりも大きく、粗大な析出物を生じて成形性及び曲げ性が低下している。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
(実施例2)
表1のA2、A19及びA20に示す成分のアルミニウム合金を溶解、鋳造後、550℃で10時間保持する均質化処理を施した後、熱間圧延及び冷間圧延により、厚さ1mmの冷延板とした。これらの冷延板に表4に示す条件で溶体化処理を施した。さらに、室温での放置時間を1時間以内として、耐力が120〜130MPaの範囲となるように60〜90℃の温度範囲で1〜50時間保持する予備時効処理を施した。その後、7日間室温に放置して、実施例1と同様の試験を行った。
【0060】
試験結果を表5に示す。表5より、本発明のアルミニウム合金板No.26〜34は、成形性、曲げ性及び塗装焼き付け処理後の耐力が良好である。一方、No.35は溶体化処理の温度が低いため粒界に析出物を生じ、粒界析出物占有率が大きく、曲げ性が低下している。また、溶質元素の固溶が不十分であり、成形性及びBH性も低下している。一方、No.36は溶体化処理温度が高く、No.37は溶体化処理の保持時間が長いため、結晶粒径が粗大化して成形性及び曲げ性が低下している。
【0061】
No.38は一次冷却の終了温度が低いため粒界析出物占有率が大きく、曲げ性が低下している。また、No.39は一次冷却の終了温度が高く、No.41は一次冷却の冷却速度が大きいため、形状が悪く、平坦度が低下している。No.40は一次冷却の冷却速度が遅いため、成形性、BH性及び曲げ性が低下している。No.42は二次冷却の終了温度が高く、No.43は二次冷却の冷却速度が遅いため、粒界析出物占有率が大きく、曲げ性が低下している。
【0062】
【表4】
【0063】
【表5】
【0064】
【発明の効果】
本発明によれば、成形、塗装焼付け硬化性、曲げ性及び形状に優れた自動車用材料などに好適なアルミニウム合金板及びその製造方法を提供できる。本発明合金の適用により自動車重量の著しい軽量化が可能であり、産業上の価値のみならず、温室効果ガス排出量削減への貢献も極めて高い。
Claims (3)
- 質量%で、
Mg:0.2〜1.5%、
Si:0.4〜1.8%
を含有し、
Cu:0.1〜1.5%、
Mn:0.01〜0.5%、
Cr:0.001〜0.5%、
Fe:0.01〜0.5%、
の1種又は2種以上を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、粒界析出物占有率が30%以下であり、かつ、平坦度が2%以下であることを特徴とする成形性、塗装焼付け硬化性及び形状に優れたアルミニウム合金板。 - 質量%で、
V :0.01〜0.5%、
Zr:0.01〜0.5%、
Ti:0.001〜0.5%、
B :0.0001〜0.05%
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の成形性、塗装焼付け硬化性及び形状に優れたアルミニウム合金板。 - 請求項1又は2記載の成分からなるアルミニウム合金を溶解、鋳造し、熱間圧延及び冷間圧延後、500〜570℃まで加熱し、その温度で0〜300s保持し、保持温度から480〜400℃の範囲まで1〜30℃/sで一次冷却し、その後300℃以下まで30℃超〜300℃/sで二次冷却することを特徴とする請求項1又は2記載の成形性、塗装焼付け硬化性及び形状に優れたアルミニウム合金板の製造方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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-
2003
- 2003-01-07 JP JP2003001175A patent/JP2004211177A/ja not_active Withdrawn
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