JP2004211159A - スパッタリングターゲット用沈殿物、焼結体、ターゲットおよび保護膜並びにそれらの製造方法 - Google Patents
スパッタリングターゲット用沈殿物、焼結体、ターゲットおよび保護膜並びにそれらの製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】より一層高品質なスパッタリングターゲット用沈殿物、焼結体、ターゲットおよび保護膜並びにそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の少なくとも粒子の表面に、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有することを特徴とするスパッタリングターゲット用沈殿物とする。この沈殿物から焼結体、ターゲットを製造する。
【選択図】図2
【解決手段】スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の少なくとも粒子の表面に、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有することを特徴とするスパッタリングターゲット用沈殿物とする。この沈殿物から焼結体、ターゲットを製造する。
【選択図】図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はスパッタリングにより保護膜を形成する場合などに使用される沈殿物、焼結体、ターゲットおよび保護膜並びにそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
スパッタリングターゲットは、スパッタリング法のターゲット材料である。スパッタリングターゲットは、酸化物、窒化物、炭化物などの複合材料の焼結体からなる。スパッタリング法は、真空蒸着法と比べて、高融点金属や複雑な組成の合金の薄膜形成が容易などの特徴を有する。このためスパッタリング法は、相変化型光記録媒体の誘電体膜や保護膜、各種装置の光学薄膜、保護膜、絶縁膜の形成に応用されている。
【0003】
例えば、光ディスクなどの光記録媒体、磁気ディスクなどの磁気記録媒体さらには半導体素子、液晶表示装置、サーマルヘッドなどにおいて、酸化物、窒化物、炭化物などの複合材料が誘電体膜や保護膜として利用されている。これらの様々な用途に使用されるスパッタリングターゲットは、従来スパッタリングターゲットを構成する原料の混合により得られており、これまでは十分な特性を有していた。
【0004】
しかしながら、様々な用途に使用されるスパッタリングターゲットにおいて、例えば光ディスクなど光記録媒体である相変化型光記録媒体や、磁気ディスクなどの磁気記録媒体ではさらなる高密度化、大容量化などが求められており、そのために信頼性やオーバーライト特性などに対する要求特性はますます厳しくなってきている。また、スパッタリングターゲットが使用される他の用途であるサーマルヘッドにおいては、サーマルヘッドと絶縁フィルムとの間の静電気帯電防止などが望まれている。したがって、保護膜などの形成はより一層の高品質化が望まれているが、従来の焼結体およびその焼結体からなるスパッタリングターゲットではそのような特性を十分に得られず、更なる改良が求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、より一層高品質なスパッタリングターゲット用沈殿物、焼結体、ターゲットおよび保護膜並びにそれらの製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に記載されるスパッタリングターゲット用沈殿物は、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の少なくとも粒子の表面に、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有することを特徴とする。
【0007】
本発明のスパッタリングターゲット用沈殿物は、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の少なくとも粒子の表面に二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有する。そのため、この沈殿物を焼結するとスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。
【0008】
本発明に記載されるスパッタリングターゲット用沈殿物の製造方法は、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の懸濁液とケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、ランタン、タンタルおよび鉛から選ばれる少なくとも1種の元素のアルコキシドの混合物における前記アルコキシドの加水分解によってスパッタリングターゲット用沈殿物を得る工程を有することを特徴とする。
【0009】
スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の懸濁液にケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、ランタン、タンタルおよび鉛から選ばれる少なくとも1種の元素のアルコキシドの混合物における前記アルコキシドの加水分解によって、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の表面に二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有するスパッタリングターゲット用沈殿物を得ることができる。この沈殿物を焼結することでスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。
【0010】
本発明に記載のスパッタリングターゲット用焼結体は、本発明に記載のスパッタリングターゲット用沈殿物を焼結してなる。本発明に記載のスパッタリングターゲット用沈殿物は、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の表面に二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有する。そのため、この沈殿物を焼結するとスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。
【0011】
本発明に記載のスパッタリングターゲット用焼結体の製造方法は、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の懸濁液とケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、ランタン、タンタルおよび鉛から選ばれる少なくとも1種の元素のアルコキシドの混合物における前記アルコキシドの加水分解によってスパッタリングターゲット用沈殿物を得る工程と、前記スパッタリングターゲット用沈殿物を焼結する工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の懸濁液とケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、ランタン、タンタルおよび鉛から選ばれる少なくとも1種の元素のアルコキシドの混合物における前記アルコキシドの加水分解によって、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の表面に二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有するスパッタリングターゲット用沈殿物を得ることができる。この沈殿物を焼結することでスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。
【0013】
本発明に記載のスパッタリングターゲットは、本発明に記載のスパッタリングターゲット用焼結体を用いてなる。本発明に記載のスパッタリングターゲット用焼結体は、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散され、これらの偏析が少なく高密度である。そのため、この焼結体を用いてなるスパッタリングターゲットは、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲットとなる。
【0014】
本発明のスパッタリングターゲットは、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物の偏析が少なく、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散される。このため高スパッタ率を有するスパッタリングターゲットとなる。またスパッタリングによる成膜中におけるパーティクルの発生が少なくなる。さらにスパッタリングターゲットの寿命を長くすることができる。
【0015】
本発明に記載の保護膜は、本発明に記載のスパッタリングターゲットを用いて成膜してなる。本発明のスパッタリングターゲットは、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物の偏析が少なく、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散される。そのため、膜質の向上した保護膜を得ることができる。またこの保護膜により相変化型光記録媒体のオーバーライト特性を向上させることができる。相変化型光記録媒体の信頼性、安定性を大幅に向上させることができる。
【0016】
本発明に記載のスパッタリングターゲットの製造方法は、2種類以上の元素を有するスパッタリングターゲットの製造方法であって、前記スパッタリングターゲットはスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物を含有させた懸濁液と、ケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、ランタン、タンタルおよび鉛から選ばれる少なくとも1種の元素のアルコキシドの加水分解をさせる工程と、加水分解により前記溶液中からスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の少なくとも粒子の表面に、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が形成された沈殿物を取出す工程と、該沈殿物を焼結する工程とを有することを特徴とする。
【0017】
スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物を含有させた懸濁液と、ケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、ランタン、タンタルおよび鉛から選ばれる少なくとも1種の元素のアルコキシドの加水分解をさせる工程により、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の表面に二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有するスパッタリングターゲット用沈殿物を得ることができる。この沈殿物を焼結することでスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができ、高スパッタ率を有するスパッタリングターゲットを得ることができる。
【0018】
本発明に記載のスパッタリングターゲット用焼結体は、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の少なくとも粒子の表面に、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有するスパッタリングターゲット用焼結体であって、前記スパッタリングターゲット用焼結体のエネルギー分散型X線分析装置によるライン分析で任意の100μm間の2点におけるケイ素の存在する割合が50%以上であることを特徴とする。スパッタリングターゲット用焼結体のエネルギー分散型X線分析装置によるライン分析で任意の100μm間の2点におけるケイ素の割合が50%以上であることは、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の少なくとも粒子の表面に、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散され偏析が少ないことを表している。さらに本発明に記載のスパッタリングターゲット用焼結体は高密度である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、実施の形態、実施例及び図1〜図22を用いて説明する。ただし、本発明は、この実施の形態、実施例及び図1〜図22に限定されない。
【0020】
(スパッタリングターゲット用沈殿物)
本発明に係るスパッタリングターゲット用沈殿物は、好適には、少なくともスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の表面に、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有する。
【0021】
スパッタリングターゲット用沈殿物において、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の表面に有する酸化物としては、二酸化ケイ素、五酸化タンタルから選ばれる少なくとも1種の酸化物が好ましい。より好ましくは、二酸化ケイ素である。
【0022】
スパッタリングターゲット用沈殿物において、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物は、クロム、タンタル、酸化チタン、炭化ケイ素およびカルコゲン化亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0023】
元素および/または化合物が、クロム、タンタル、酸化チタンであることで磁気ディスク、磁気ヘッドおよび光磁気ディスク等に使用されるスパッタリングターゲット用沈殿物を得ることができる。元素および/または化合物が、クロム、タンタル、炭化ケイ素であることでサーマルヘッド等に使用されるスパッタリングターゲット用沈殿物を得ることができる。元素および/または化合物が、カルコゲン化亜鉛であることで相変化型光記録媒体等に使用されるスパッタリングターゲット用沈殿物を得ることができる。
【0024】
スパッタリングターゲット用沈殿物において、カルコゲン化亜鉛は、硫化亜鉛であることが好ましい。少なくともスパッタリングターゲットを構成する硫化亜鉛の粒子の表面に二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有することを特徴とするスパッタリングターゲット用沈殿物であることが好ましい。これを焼結した場合に硫化亜鉛の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。
【0025】
スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物とその粒子の表面に存在する酸化物の組み合わせとしては、硫化亜鉛と二酸化ケイ素、硫化亜鉛と五酸化タンタル、セレン化亜鉛と二酸化ケイ素、セレン化亜鉛と五酸化タンタル、テルル化亜鉛と二酸化ケイ素、セレン化亜鉛と五酸化タンタル、酸化チタンと二酸化ケイ素、酸化チタンと五酸化タンタル、炭化ケイ素と二酸化ケイ素、炭化ケイ素と五酸化タンタル、クロムと二酸化ケイ素、クロムと五酸化タンタル、タンタルと二酸化ケイ素などが好適に挙げられる。
【0026】
本発明に係るスパッタリングターゲット用沈殿物において、酸化物はスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の表面にどのような形で存在していても本発明の効果を発揮する。例えば、酸化物がスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の表面の全体に被膜されている場合であっても、酸化物がスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の表面の一部に被覆されている場合であっても、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。
【0027】
好ましくは酸化物がスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の表面の全体に被膜されている場合である。この場合、酸化物がより均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。
また、酸化物は、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の少なくとも粒子の表面に存在していればよい。したがって、酸化物の一部が粒子の内部に存在していてもよい。
【0028】
酸化物がスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の少なくとも粒子の表面に存在しているかどうかは、種々の方法によって解析できる。例えば、オージェ電子分光法(AES)、X線光電子分光法(XPS)等で解析することができる。
【0029】
(スパッタリングターゲット用沈殿物の製造方法)
本発明に係るスパッタリングターゲット用沈殿物の製造方法は、好ましくはスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の懸濁液とケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、ランタン、タンタルおよび鉛から選ばれる少なくとも1種の元素のアルコキシドの混合物における前記アルコキシドの加水分解によってスパッタリングターゲット用沈殿物を得る工程を有する。
【0030】
スパッタリングターゲット用沈殿物の製造方法において、アルコキシドとして、ケイ素、タンタルから選ばれる少なくとも1種の元素のアルコキシドが好ましい。より好ましくはケイ素のアルコキシドである。
【0031】
スパッタリングターゲット用沈殿物の製造方法において、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物は、クロム、タンタル、酸化チタン、炭化ケイ素およびカルコゲン化亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0032】
元素および/または化合物が、クロム、タンタル、酸化チタンであることで磁気ディスク、磁気ヘッドおよび光磁気ディスク等に使用されるスパッタリングターゲット用沈殿物を得ることができる。元素および/または化合物が、クロム、タンタル、炭化ケイ素であることでサーマルヘッド等に使用されるスパッタリングターゲット用沈殿物を得ることができる。元素および/または化合物が、カルコゲン化亜鉛であることで相変化型光記録媒体等に使用されるスパッタリングターゲット用沈殿物を得ることができる。
【0033】
スパッタリングターゲット用沈殿物の製造方法において、カルコゲン化亜鉛は、硫化亜鉛であることが好ましい。硫化亜鉛の懸濁液とケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、ランタン、タンタルおよび鉛から選ばれる少なくとも1種の元素のアルコキシドの混合物におけるアルコキシドの加水分解によってスパッタリングターゲット用沈殿物を得る工程を有することを特徴とするスパッタリングターゲット用沈殿物の製造方法であることが好ましい。
【0034】
硫化亜鉛の懸濁液とケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、ランタン、タンタルおよび鉛から選ばれる少なくとも1種の元素のアルコキシドの混合物におけるアルコキシドの加水分解によって、硫化亜鉛の粒子の表面に二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有するスパッタリングターゲット用沈殿物を得ることができる。この沈殿物を焼結することで硫化亜鉛の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。
【0035】
スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物と加水分解において加えるアルコキシドの組み合わせとしては、硫化亜鉛とケイ素のアルコキシド、硫化亜鉛とタンタルのアルコキシド、セレン化亜鉛とケイ素のアルコキシド、セレン化亜鉛とタンタルのアルコキシド、テルル化亜鉛とケイ素のアルコキシド、セレン化亜鉛とタンタルのアルコキシド、酸化チタンとケイ素のアルコキシド、酸化チタンとタンタルのアルコキシド、炭化ケイ素とケイ素のアルコキシド、炭化ケイ素とタンタルのアルコキシド、クロムとケイ素のアルコキシド、クロムとタンタルのアルコキシド、タンタルとケイ素のアルコキシドなどが好適に挙げられる。
【0036】
本発明に係るスパッタリングターゲット用沈殿物の製造方法において、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の懸濁液の溶媒としては特に限定されない。好ましくは、アルコール、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)である。カルコゲン化亜鉛の懸濁液の溶媒としては、アルコール、テトラヒドロフラン、アセトンが好ましい。
【0037】
加水分解とは、水の状態に関係なく無機化合物または有機化合物と水との複分解反応および水による分子内の開裂などを含め、広く水による分解反応をさす。一般的にアルコキシドは反応性が高いため、水の添加によって急激に反応が進行する。しかし、水を添加して溶液を調製してもゲル体ができないことがある。この場合、反応を促進するために、触媒を使用する。触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸およびフッ酸から選ばれる少なくとも1種の酸またはアンモニアが用いられる。好ましくは塩酸、アンモニアが用いられる。
【0038】
(スパッタリングターゲット用焼結体)
本発明に係るスパッタリングターゲット用焼結体は、好ましくは本発明に記載のスパッタリングターゲット用沈殿物を焼結してなる。
【0039】
焼結とは、粉体を融点以下または部分的溶融の程度に加熱して強固な結合体とするこという。
【0040】
本発明に係るスパッタリングターゲット用焼結体は、好ましくはスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の少なくとも粒子の表面に、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有するスパッタリングターゲット用焼結体であって、前記スパッタリングターゲット用焼結体のエネルギー分散型X線分析装置によるライン分析で任意の100μm間の2点におけるケイ素の割合が50%以上である。
【0041】
スパッタリングターゲット用焼結体のエネルギー分散型X線分析装置(EDX)によるライン分析は、走査電子顕微鏡(SEM)による観察を行った後行う。ライン分析においては任意の2点をとり、ライン分析の距離は100μmとする。スパッタリングターゲット用焼結体のエネルギー分散型X線分析装置によるライン分析で任意の100μm間の2点におけるケイ素の割合が60%以上であることが好ましい。このときスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の少なくとも粒子の表面に、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物がより均一に分散され偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体となる。
【0042】
(スパッタリングターゲット用焼結体の製造方法)
本発明に係るスパッタリングターゲット用焼結体の製造方法は、好ましくはスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の懸濁液とケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、ランタン、タンタルおよび鉛から選ばれる少なくとも1種の元素のアルコキシドの混合物におけるアルコキシドの加水分解によってスパッタリングターゲット用沈殿物を得る工程と、前記スパッタリングターゲット用沈殿物を焼結する工程とを有する。
【0043】
スパッタリングターゲット用焼結体の製造方法において、アルコキシドとして、ケイ素、タンタルから選ばれる少なくとも1種のアルコキシドが好ましい。より好ましくはケイ素のアルコキシドである。
【0044】
スパッタリングターゲット用焼結体の製造方法において、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物は、クロム、タンタル、酸化チタン、炭化ケイ素およびカルコゲン化亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0045】
元素および/または化合物が、クロム、タンタル、酸化チタンであることで磁気ディスク、磁気ヘッドおよび光磁気ディスク等に使用されるスパッタリングターゲット用沈殿物を得ることができる。この沈殿物を焼結することでスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。元素および/または化合物が、クロム、タンタル、炭化ケイ素であることでサーマルヘッド等に使用されるスパッタリングターゲット用沈殿物を得ることができる。この沈殿物を焼結することでスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。元素および/または化合物が、カルコゲン化亜鉛であることで相変化型光記録媒体等に使用されるスパッタリングターゲット用沈殿物を得ることができる。この沈殿物を焼結することでスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。
【0046】
スパッタリングターゲット用焼結体の製造方法において、カルコゲン化亜鉛は、硫化亜鉛であることが好ましい。硫化亜鉛の懸濁液とケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、ランタン、タンタルおよび鉛から選ばれる少なくとも1種の元素のアルコキシドの混合物における前記アルコキシドの加水分解のよってスパッタリングターゲット用沈殿物を得る工程と、前記スパッタリングターゲット用沈殿物を焼結する工程と、を有することを特徴とするスパッタリングターゲット用焼結体の製造方法であることが好ましい。
【0047】
硫化亜鉛の懸濁液とアルコキシドの混合物におけるアルコキシドの加水分解によって、硫化亜鉛の粒子の表面に二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有するスパッタリングターゲット用沈殿物を得ることができる。この沈殿物を焼結することで硫化亜鉛の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。
【0048】
スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物と加水分解において加えるアルコキシドの組み合わせとしては、硫化亜鉛とケイ素のアルコキシド、硫化亜鉛とタンタルのアルコキシド、セレン化亜鉛とケイ素のアルコキシド、セレン化亜鉛とタンタルのアルコキシド、テルル化亜鉛とケイ素のアルコキシド、セレン化亜鉛とタンタルのアルコキシド、酸化チタンとケイ素のアルコキシド、酸化チタンとタンタルのアルコキシド、炭化ケイ素とケイ素のアルコキシド、炭化ケイ素とタンタルのアルコキシド、クロムとケイ素のアルコキシド、クロムとタンタルのアルコキシド、タンタルとケイ素のアルコキシドなどが好適に挙げられる。
【0049】
焼結の工程はホットプレス法やHIP法などの公知の方法により実施する。ホットプレス時の雰囲気はアルゴン雰囲気あるいは窒素雰囲気が好ましく、保持温度は900〜1300℃程度、保持時間は3〜14時間程度とするのが好ましい。また、ホットプレス時の圧力は0.1〜0.3N/m2程度とすることが好ましい。
【0050】
酸化チタンの懸濁液にケイ素のアルコキシドを加えて加水分解して磁気ディスクに使用されるスパッタリングターゲット用沈殿物が得られる。これを窒素雰囲気、1300℃で3時間、0.3N/m2の圧力でホットプレスすることにより磁気ディスクに使用されるスパッタリングターゲット用焼結体が得られる。
【0051】
クロムの懸濁液にケイ素のアルコキシドを加えて加水分解してサーマルヘッドに使用されるスパッタリングターゲット用沈殿物が得られる。これをアルゴン雰囲気、1300℃で5時間、0.3N/m2の圧力でホットプレスすることによりサーマルヘッドに使用されるスパッタリングターゲット用焼結体が得られる。
【0052】
(スパッタリングターゲット)
本発明に係るスパッタリングターゲットは、本発明に記載のスパッタリングターゲット用焼結体を用いてなる。
【0053】
本発明のスパッタリングターゲットは、主として次の用途に用いられる。磁気ディスク、磁気ヘッドなどの磁気記録媒体の絶縁膜や保護膜として用いられる。また、光ディスクなどの相変化型光記録媒体の保護膜として用いられる。さらにサーマルヘッドの発熱抵抗体、絶縁膜および保護膜として用いられる。
【0054】
(スパッタリングターゲットの製造方法)
本発明に係るスパッタリングターゲットの製造方法は、好ましくはスパッタリングターゲットはスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物を含有させた懸濁液と、ケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、ランタン、タンタルおよび鉛から選ばれる少なくとも1種の元素のアルコキシドの加水分解をさせる工程と、加水分解により前記溶液中からスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の少なくとも粒子の表面に、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が形成された沈殿物を取出す工程と、該沈殿物を焼結する工程とを有する。
【0055】
スパッタリングターゲットの製造方法において、アルコキシドとして、ケイ素、タンタルから選ばれる少なくとも1種のアルコキシドが好ましい。より好ましくはケイ素のアルコキシドである。
【0056】
スパッタリングターゲットの製造方法において、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物は、クロム、タンタル、酸化チタン、炭化ケイ素およびカルコゲン化亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0057】
元素および/または化合物が、クロム、タンタル、酸化チタンであることで磁気ディスク、磁気ヘッドおよび光磁気ディスク等に使用されるスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲットを得ることができる。元素および/または化合物が、クロム、タンタル、炭化ケイ素であることでサーマルヘッド等に使用されるスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲットを得ることができる。元素および/または化合物が、カルコゲン化亜鉛であることで相変化型光記録媒体等に使用されるスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲットを得ることができる。
【0058】
スパッタリングターゲットの製造方法において、カルコゲン化亜鉛は、硫化亜鉛であることが好ましい。硫化亜鉛の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲットを得ることができる。このスパッタリングターゲットは高スパッタ率を有し、この製造方法により生産効率が著しく向上する。
【0059】
スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物と加水分解において加えるアルコキシドの組み合わせとしては、硫化亜鉛とケイ素のアルコキシド、硫化亜鉛とタンタルのアルコキシド、セレン化亜鉛とケイ素のアルコキシド、セレン化亜鉛とタンタルのアルコキシド、テルル化亜鉛とケイ素のアルコキシド、セレン化亜鉛とタンタルのアルコキシド、酸化チタンとケイ素のアルコキシド、酸化チタンとタンタルのアルコキシド、炭化ケイ素とケイ素のアルコキシド、炭化ケイ素とタンタルのアルコキシド、クロムとケイ素のアルコキシド、クロムとタンタルのアルコキシド、タンタルとケイ素のアルコキシドなどが好適に挙げられる。
【0060】
焼結の工程はホットプレス法やHIP法などの公知の方法により実施する。ホットプレス時の雰囲気はアルゴン雰囲気あるいは窒素雰囲気が好ましく、保持温度は900〜1300℃程度、保持時間は3〜14時間程度とするのが好ましい。また、ホットプレス時の圧力は0.1〜0.3N/m2程度とすることが好ましい。
【0061】
(保護膜)
本発明に係る保護膜は、本発明に記載のスパッタリングターゲットを用いて成膜してなる。
【0062】
本発明の保護膜は、主として次の用途に用いられる。磁気ディスク、磁気ヘッド、サーマルヘッドおよび光ディスクの保護膜として用いられる。光ディスクなどの相変化型光記録媒体としては、CD−RW、DVD−RAM、DVD−RW等が挙げられる。
【0063】
以下、本発明に係るスパッタリングターゲット用沈殿物について実施例を挙げて説明するが、この実施例に限定されるものではない。
【0064】
【実施例】
〔実施例1〕
相変化型光記録媒体の保護膜の形成に用いられるスパッタリングターゲットとして、カルコゲン化亜鉛である硫化亜鉛の粒子の表面に二酸化ケイ素を形成させた。ここではスパッタリングターゲットを構成する化合物としては硫化亜鉛となる。
硫化亜鉛194.9gにアルコールを加え、攪拌することでスパッタリングターゲットを構成する化合物の懸濁液を得た。これは、スパッタリングターゲットを構成する化合物を含有させた懸濁液となる。
次にケイ素のアルコキシドとしてテトラエトキシシラン(Si(OC2H5)4)を用いた。テトラエトキシラン104.2gと、アンモニア水と水の混合物と、を上述の硫化亜鉛含有アルコール懸濁液中に同時に滴下した。
滴下すると共に攪拌しながら熟成すると、テトラエトキシキランが加水分解され硫化亜鉛の粒子の表面に、二酸化ケイ素が均一に分散されて付着し被膜が形成された。二酸化ケイ素による被膜が形成された硫化亜鉛の粒子が溶液中にスパッタリングターゲット用沈殿物として沈降した。
こうして得られた沈殿物を濾過し、乾燥することによってスパッタリングターゲット用沈殿物が形成された。
【0065】
テトラエトキシシランとは、テトラアルコキシシランの一種である。Si(OC2H5)4で表され、主に四塩化ケイ素とエタノールとの反応、あるいは金属ケイ素とエタノールとの反応から合成される無色透明の液体である。
【0066】
(スパッタリングターゲット用沈殿物の評価)
本発明に係るスパッタリングターゲット用沈殿物は、走査電子顕微鏡(SEM)とエネルギー分散型X線分析装置(EDX)により評価を行った。
【0067】
走査電子顕微鏡による観察を、S−4700を用いて行った。カーボン蒸着を行った実施例1で得られたスパッタリングターゲット用沈殿物に対し、加速電圧20kV、ビーム電流10μAにて15000倍の走査電子顕微鏡写真を撮影した。この走査電子顕微鏡写真に対して、エネルギー分散型X線分析装置にて面分析を行いケイ素の存在する場所を赤色で着色した。これを図1に示す。またケイ素の存在する場所をわかりやすくするために、ケイ素の存在する場所を黒色で示したのが図2である。さらに走査電子顕微鏡写真に対して、エネルギー分散型X線分析装置にて図3に示す位置のライン分析を行った結果を図4に示す。図4において前方のグラフはケイ素の強度を表し、後方のグラフは亜鉛の強度を表す。
【0068】
また、二酸化ケイ素が硫化亜鉛の粒子の表面に存在しているかどうかをオージェ電子分光法(AES)により測定した。
【0069】
JEOL社製のAugerMicroProbe JAMP−7800Fを用いて測定した。両面粘着性の導電性カーボンを試料台に貼り付け、貼り付け面の反対側に実施例1で得られたスパッタリングターゲット用沈殿物を接着させた。その後、実施例1で得られたスパッタリングターゲット用沈殿物の4つの任意の位置を選択し、プローブエネルギーを10keV、プローブ電流を1×10−7Aとして分析エリア0.1μmφ未満のオージェスペクトルを測定した。測定結果を図21に示す。また各元素のピーク強度を表1に、簡易定量の結果を表2に示す。
【0070】
〔実施例2〕
相変化型光記録媒体の保護膜の形成に用いられるスパッタリングターゲットとして、カルコゲン化亜鉛である硫化亜鉛の粒子の表面に二酸化ケイ素を形成させた。ここではスパッタリングターゲットを構成する化合物としては硫化亜鉛となる。
硫化亜鉛194.9gにアルコールを加え、攪拌することでスパッタリングターゲットを構成する化合物の懸濁液を得た。これは、スパッタリングターゲットを構成する化合物を含有させた懸濁液となる。
次にアンモニア水と水を加えて攪拌しながら、テトラエトキシラン104.2gを上述の硫化亜鉛含有アルコール懸濁液中に滴下した。
滴下すると共に攪拌しながら熟成すると、テトラエトキシキランが加水分解され硫化亜鉛の粒子の表面に、二酸化ケイ素が均一に分散されて付着し被膜が形成された。二酸化ケイ素による被膜が形成された硫化亜鉛の粒子が溶液中にスパッタリングターゲット用沈殿物として沈降した。
こうして得られた沈殿物を濾過し、乾燥することによってスパッタリングターゲット用沈殿物が形成された。
【0071】
以下、実施例1と同様にして実施例2で得られたスパッタリングターゲット用沈殿物の評価を行った。結果を図9〜図12に示す。図12において前方のグラフはケイ素の強度を表し、後方のグラフは亜鉛の強度を表す。またオージェ電子分光法による測定結果を図22に示す。また各元素のピーク強度を表1に、簡易定量の結果を表2に示す。
【0072】
〔実施例3〕
相変化型光記録媒体の保護膜の形成に用いられるスパッタリングターゲットとして、カルコゲン化亜鉛である硫化亜鉛の粒子の表面に二酸化ケイ素を形成させた。ここではスパッタリングターゲットを構成する化合物としては硫化亜鉛となる。
テトラエトキシシラン104.2gにアルコールを加え、攪拌しながら、硫化亜鉛(ZnS)194.9gを加え、水を加えた。アルコールと硫化亜鉛により硫化亜鉛含有アルコール懸濁液となる。さらにアンモニア水を加えた。
攪拌しながら熟成すると、テトラエトキシキランが加水分解され硫化亜鉛の粒子の表面に、二酸化ケイ素が均一に分散されて付着し被膜が形成された。二酸化ケイ素による被膜が形成された硫化亜鉛の粒子が溶液中にスパッタリングターゲット用沈殿物として沈降した。
こうして得られた沈殿物を濾過し、乾燥することによってスパッタリングターゲット用沈殿物が形成された。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
図1および図9から明らかなように、本発明のスパッタリングターゲット用沈殿物は、硫化亜鉛の粒子の表面に、二酸化ケイ素が均一に分散され偏析が少ないことがわかる。またエネルギー分散型X線分析装置にて行ったライン分析の結果である図4および図8からも、本発明のスパッタリングターゲット用沈殿物は、硫化亜鉛の粒子の表面に、二酸化ケイ素が均一に分散され偏析が少ないことがわかる。
【0076】
さらに図21、表1および表2によって、本発明のスパッタリングターゲット用沈殿物は、硫化亜鉛の粒子の表面に二酸化ケイ素の被膜が形成されているこがわかる。また図22、表1および表2によって、本発明のスパッタリングターゲット用沈殿物は、硫化亜鉛の粒子の表面に二酸化ケイ素が被覆されていることがわかる。
【0077】
次に、本発明に係るスパッタリングターゲット用焼結体について実施例を挙げて説明するが、この実施例に限定されるものではない。
〔実施例4〕
実施例1で得られたスパッタリングターゲット用沈殿物をホットプレス黒鉛型に充填し、アルゴン雰囲気下で、温度1160℃、圧力0.3N/m2で14時間ホットプレス焼結を行った。
【0078】
(スパッタリングターゲット用焼結体の評価)
本発明に係るスパッタリングターゲット用焼結体は、走査電子顕微鏡(SEM)とエネルギー分散型X線分析装置(EDX)により評価を行った。
【0079】
走査電子顕微鏡による観察を、S−4700を用いて行った。カーボン蒸着を行った実施例4で得られたスパッタリングターゲット用焼結体に対し、加速電圧20kV、ビーム電流10μAにて1000倍の走査電子顕微鏡写真を撮影した。この走査電子顕微鏡写真に対して、エネルギー分散型X線分析装置にて面分析を行いケイ素の存在する場所を赤色で着色した。これを図5に示す。またケイ素の存在する場所をわかりやすくするために、ケイ素の存在する場所を黒色で示したのが図6である。さらに走査電子顕微鏡写真に対して、エネルギー分散型X線分析装置にて図7に示す位置のライン分析を行った結果を図8に示す。図8において前方のグラフはケイ素の強度を表し、後方のグラフは亜鉛の強度を表す。
【0080】
また焼結体の相対密度を、アルキメデス法により測定されたかさ密度から算出した。焼結体の理論密度は、硫化亜鉛単体の密度と二酸化ケイ素単体の密度の、焼結体の構成比を重みとした加重平均値を用いた。焼結体の理論密度の値は3.68g/cm3であった。実施例4で得られたスパッタリングターゲット用焼結体の相対密度は97.9%であった。
【0081】
〔実施例5〕
実施例3で得られたスパッタリングターゲット用沈殿物をホットプレス黒鉛型に充填し、アルゴン雰囲気下で、温度1160℃、圧力0.3N/m2で14時間ホットプレス焼結を行った。
【0082】
以下、実施例4と同様にして実施例5で得られたスパッタリングターゲット用焼結体の評価を行う。走査電子顕微鏡(SEM)とエネルギー分散型X線分析装置(EDX)により評価の結果を図13〜図16に示す。図16において前方のグラフはケイ素の強度を表し、後方のグラフは亜鉛の強度を表す。実施例5で得られたスパッタリングターゲット用焼結体の相対密度は99.5%であった。
【0083】
〔比較例1〕
モル比で硫化亜鉛(ZnS):二酸化ケイ素(SiO2)=80:20となるように定量し、1時間乾式混合した。これをホットプレス黒鉛型に充填し、アルゴン雰囲気下で、温度1160℃、圧力0.3N/m2で14時間ホットプレス焼結を行った。
【0084】
以下、実施例4と同様にして比較例1で得られたスパッタリングターゲット用焼結体の評価を行う。走査電子顕微鏡(SEM)とエネルギー分散型X線分析装置(EDX)により評価の結果を図17〜図20に示す。図20において前方のグラフはケイ素の強度を表し、後方のグラフは亜鉛の強度を表す。
【0085】
図5および図13から明らかなように、本発明のスパッタリングターゲット用焼結体は、硫化亜鉛の粒子の表面に、二酸化ケイ素が均一に分散され偏析が少ないことがわかる。またエネルギー分散型X線分析装置にて行ったライン分析の結果である図8および図16からも、本発明のスパッタリングターゲット用焼結体は、硫化亜鉛の粒子の表面に、二酸化ケイ素が均一に分散され偏析が少ないことがわかる。さらに高い焼結密度を示すこともわかった。
【0086】
これに対して、乾式混合により得られたスパッタリングターゲット用沈殿物から作成した焼結体は、図17から二酸化ケイ素が局在し、偏析している部分があることがわかる。またエネルギー分散型X線分析装置にて行ったライン分析の結果である図20からも、二酸化ケイ素が局在し偏析していることがわかる。また本発明のスパッタリングターゲット用焼結体に比べて焼結密度が低い。
【0087】
前記各実施の形態から把握できる請求項記載以外の技術思想(発明)について、以下にその効果とともに記載する。
【0088】
(1)硫化亜鉛の粒子の表面に、二酸化ケイ素を有することを特徴とするスパッタリングターゲット用沈殿物である。この沈殿物を焼結することで硫化亜鉛の粒子の周りに二酸化ケイ素が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。
【0089】
(2)硫化亜鉛の懸濁液とケイ素のアルコキシドの混合物における前記アルコキシドの加水分解によってスパッタリングターゲット用沈殿物を得る工程を有することを特徴とするスパッタリングターゲット用沈殿物の製造方法である。この製造方法により、硫化亜鉛の粒子の表面に二酸化ケイ素を有するスパッタリングターゲット用沈殿物を得ることができる。
【0090】
(3)(1)に記載のスパッタリングターゲット用沈殿物を焼結してなるスパッタリングターゲット用焼結体である。このスパッタリングターゲット用焼結体は、硫化亜鉛の粒子の周りに二酸化ケイ素が均一に分散され、偏析が少なく、高密度である。
【0091】
(4)硫化亜鉛の懸濁液とケイ素のアルコキシドの混合物における前記アルコキシドの加水分解によってスパッタリングターゲット用沈殿物を得る工程と、前記スパッタリングターゲット用沈殿物を焼結する工程と、を有することを特徴とするスパッタリングターゲット用焼結体の製造方法である。この製造方法により、硫化亜鉛の粒子の表面に二酸化ケイ素が均一に分散された、偏析が少ない、高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。
【0092】
(5)(3)に記載のスパッタリングターゲット用焼結体を用いてなるスパッタリングターゲットである。このスパッタリングターゲットは、硫化亜鉛の粒子の周りに二酸化ケイ素が均一に分散され偏析が少ない。このため高スパッタ率を有するスパッタリングターゲットとなる。またスパッタリングによる成膜中におけるパーティクルの発生が少なくなる。さらにスパッタリングターゲットの寿命が長くなる。
【0093】
(6)(5)に記載のスパッタリングターゲットを用いて成膜してなる保護膜である。この保護膜は、膜質が向上し高品質である。
【0094】
(7)2種類以上の元素を有するスパッタリングターゲットの製造方法であって、硫化亜鉛を含有させた懸濁液中に、ケイ素のアルコキシドの加水分解をさせる工程と、加水分解により前記溶液中から硫化亜鉛の少なくとも粒子の表面に、二酸化ケイ素が形成された沈殿物を取出す工程と、該沈殿物を焼結する工程とを有することを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法である。この製造方法により高スパッタ率を有するスパッタリングターゲットを得ることができる。
【0095】
(8)スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の少なくとも粒子の表面に、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有するスパッタリングターゲット用沈殿物であって、前記スパッタリングターゲット用沈殿物のエネルギー分散型X線分析装置によるライン分析で任意の3μm間の2点におけるケイ素の割合が50%以上であることを特徴とするスパッタリングターゲット用沈殿物である。スパッタリングターゲット用沈殿物のエネルギー分散型X線分析装置によるライン分析で任意の3μm間の2点におけるケイ素の割合が50%以上であることはスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の表面に二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散され偏析が少ないことを表している。したがって、この沈殿物を焼結することでスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。
【0096】
(7)スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の少なくとも粒子の表面に、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有するスパッタリングターゲット用沈殿物であって、前記スパッタリングターゲット用沈殿物のオージェ電子分光法により求められたオージェスペクトル中の(ケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、ランタン、タンタルおよび亜鉛から選ばれる少なくとも1種のピーク強度)/(クロム、タンタル、チタン、ケイ素および亜鉛から選ばれる少なくとも1種のピーク強度)の強度比が0.2以上であることを特徴とするスパッタリングターゲット用沈殿物である。このように規定することでスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の表面に二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散され偏析が少ないことを表している。したがって、この沈殿物を焼結することでスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。
【0097】
(8)硫化亜鉛の少なくとも粒子の表面に、二酸化ケイ素を有するスパッタリングターゲット用沈殿物であって、前記スパッタリングターゲット用沈殿物のオージェ電子分光法により求められたオージェスペクトル中の(ケイ素のピーク強度)/(亜鉛のピーク強度)の強度比が0.2以上であることを特徴とするスパッタリングターゲット用沈殿物である。オージェスペクトル中の(ケイ素のピーク強度)/(亜鉛のピーク強度)の強度比が0.2以上であることは硫化亜鉛の粒子の表面に二酸化ケイ素が均一に分散され偏析が少ないことを表している。したがって、この沈殿物を焼結することで硫化亜鉛の粒子の周りに二酸化ケイ素が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。
【0098】
(9)スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の少なくとも粒子の表面に、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有するスパッタリングターゲット用沈殿物であって、前記スパッタリングターゲット用沈殿物の表面分析方法により求められた(ケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、ランタン、タンタルおよび亜鉛から選ばれる少なくとも1種の原子量%)/(クロム、タンタル、チタン、ケイ素および亜鉛から選ばれる少なくとも1種の原子量%)が1.0以上であることを特徴とするスパッタリングターゲット用沈殿物である。このように規定することでスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の表面に二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散され偏析が少ないことを表している。したがって、この沈殿物を焼結することでスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。表面分析方法は、オージェ電子分光法(AES)、X線光電子分光法(XPS)等がある。好ましくはオージェ電子分光法(AES)である。
【0099】
(9)硫化亜鉛の少なくとも粒子の表面に、二酸化ケイ素を有するスパッタリングターゲット用沈殿物であって、前記スパッタリングターゲット用沈殿物の表面分析方法により求められた(ケイ素の原子量%)/(亜鉛の原子量%)が1.0以上であることを特徴とするスパッタリングターゲット用沈殿物である。(ケイ素の原子量%)/(亜鉛の原子量%)が1.0以上であることは硫化亜鉛の粒子の表面に二酸化ケイ素が均一に分散され偏析が少ないことを表している。したがって、この沈殿物を焼結することで硫化亜鉛の粒子の周りに二酸化ケイ素が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。表面分析方法は、オージェ電子分光法(AES)、X線光電子分光法(XPS)等がある。好ましくはオージェ電子分光法(AES)である。
【0100】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明は、高品質なスパッタリングターゲット用沈殿物、焼結体、ターゲットおよび保護膜ならびにそれらの製造方法である。本発明のスパッタリングターゲット用沈殿物は、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の表面に酸化物が均一に分散され偏析が少ない。本発明のスパッタリングターゲット用焼結体は、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の表面に酸化物が均一に分散され偏析が少なく、高密度である。このため本発明のスパッタリングターゲットは、高スパッタ率を有する。さらにスパッタリングによる成膜中におけるパーティクルの発生が少なく、スパッタリングターゲットの寿命が長い。本発明の保護膜は、膜質が向上した高品質の保護膜である。本発明のスパッタリングターゲット用沈殿物、焼結体、ターゲットおよび保護膜ならびにそれらの製造方法によれば、高スパッタ率を有するスパッタリングターゲットを得ることができるため、生産効率が著しく向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1で得られたスパッタリングターゲット用沈殿物の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置で面分析を行った写真図である。
【図2】本発明の実施例1で得られたスパッタリングターゲット用沈殿物の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置で面分析を行った写真図である。
【図3】本発明の実施例1で得られたスパッタリングターゲット用沈殿物の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置でライン分析を行う位置を示した写真図である。
【図4】本発明の実施例1で得られたスパッタリングターゲット用沈殿物の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置でライン分析を行った結果を示したグラフである。
【図5】本発明の実施例4で得られたスパッタリングターゲット用焼結体の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置で面分析を行った写真図である。
【図6】本発明の実施例4で得られたスパッタリングターゲット用焼結体の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置で面分析を行った写真図である。
【図7】本発明の実施例4で得られたスパッタリングターゲット用焼結体の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置でライン分析を行う位置を示した写真図である。
【図8】本発明の実施例4で得られたスパッタリングターゲット用焼結体の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置でライン分析を行った結果を示したグラフである。
【図9】本発明の実施例2で得られたスパッタリングターゲット用沈殿物の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置で面分析を行った写真図である。
【図10】本発明の実施例2で得られたスパッタリングターゲット用沈殿物の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置で面分析を行った写真図である。
【図11】本発明の実施例2で得られたスパッタリングターゲット用沈殿物の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置でライン分析を行う位置を示した写真図である。
【図12】本発明の実施例2で得られたスパッタリングターゲット用沈殿物の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置でライン分析を行った結果を示したグラフである。
【図13】本発明の実施例5で得られたスパッタリングターゲット用焼結体の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置で面分析を行った写真図である。
【図14】本発明の実施例5で得られたスパッタリングターゲット用焼結体の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置で面分析を行った写真図である。
【図15】本発明の実施例5で得られたスパッタリングターゲット用焼結体の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置でライン分析を行う位置を示した写真図である。
【図16】本発明の実施例5で得られたスパッタリングターゲット用焼結体の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置でライン分析を行った結果を示したグラフである。
【図17】比較例1で得られたスパッタリングターゲット用焼結体の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置で面分析を行った写真図である。
【図18】比較例1で得られたスパッタリングターゲット用焼結体の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置で面分析を行った写真図である。
【図19】比較例1で得られたスパッタリングターゲット用焼結体の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置でライン分析を行う位置を示した写真図である。
【図20】比較例1で得られたスパッタリングターゲット用焼結体の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置でライン分析を行った結果を示したグラフである。
【図21】実施例1で得られたスパッタリングターゲット用沈殿物のオージェ電子分光法により求められたオージェスペクトルである。
【図22】実施例2で得られたスパッタリングターゲット用沈殿物のオージェ電子分光法により求められたオージェスペクトルである。
【符号の説明】
1…ケイ素の存在する場所
2…硫化亜鉛
3…亜鉛
4…ケイ素
【発明の属する技術分野】
本発明はスパッタリングにより保護膜を形成する場合などに使用される沈殿物、焼結体、ターゲットおよび保護膜並びにそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
スパッタリングターゲットは、スパッタリング法のターゲット材料である。スパッタリングターゲットは、酸化物、窒化物、炭化物などの複合材料の焼結体からなる。スパッタリング法は、真空蒸着法と比べて、高融点金属や複雑な組成の合金の薄膜形成が容易などの特徴を有する。このためスパッタリング法は、相変化型光記録媒体の誘電体膜や保護膜、各種装置の光学薄膜、保護膜、絶縁膜の形成に応用されている。
【0003】
例えば、光ディスクなどの光記録媒体、磁気ディスクなどの磁気記録媒体さらには半導体素子、液晶表示装置、サーマルヘッドなどにおいて、酸化物、窒化物、炭化物などの複合材料が誘電体膜や保護膜として利用されている。これらの様々な用途に使用されるスパッタリングターゲットは、従来スパッタリングターゲットを構成する原料の混合により得られており、これまでは十分な特性を有していた。
【0004】
しかしながら、様々な用途に使用されるスパッタリングターゲットにおいて、例えば光ディスクなど光記録媒体である相変化型光記録媒体や、磁気ディスクなどの磁気記録媒体ではさらなる高密度化、大容量化などが求められており、そのために信頼性やオーバーライト特性などに対する要求特性はますます厳しくなってきている。また、スパッタリングターゲットが使用される他の用途であるサーマルヘッドにおいては、サーマルヘッドと絶縁フィルムとの間の静電気帯電防止などが望まれている。したがって、保護膜などの形成はより一層の高品質化が望まれているが、従来の焼結体およびその焼結体からなるスパッタリングターゲットではそのような特性を十分に得られず、更なる改良が求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、より一層高品質なスパッタリングターゲット用沈殿物、焼結体、ターゲットおよび保護膜並びにそれらの製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に記載されるスパッタリングターゲット用沈殿物は、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の少なくとも粒子の表面に、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有することを特徴とする。
【0007】
本発明のスパッタリングターゲット用沈殿物は、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の少なくとも粒子の表面に二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有する。そのため、この沈殿物を焼結するとスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。
【0008】
本発明に記載されるスパッタリングターゲット用沈殿物の製造方法は、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の懸濁液とケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、ランタン、タンタルおよび鉛から選ばれる少なくとも1種の元素のアルコキシドの混合物における前記アルコキシドの加水分解によってスパッタリングターゲット用沈殿物を得る工程を有することを特徴とする。
【0009】
スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の懸濁液にケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、ランタン、タンタルおよび鉛から選ばれる少なくとも1種の元素のアルコキシドの混合物における前記アルコキシドの加水分解によって、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の表面に二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有するスパッタリングターゲット用沈殿物を得ることができる。この沈殿物を焼結することでスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。
【0010】
本発明に記載のスパッタリングターゲット用焼結体は、本発明に記載のスパッタリングターゲット用沈殿物を焼結してなる。本発明に記載のスパッタリングターゲット用沈殿物は、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の表面に二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有する。そのため、この沈殿物を焼結するとスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。
【0011】
本発明に記載のスパッタリングターゲット用焼結体の製造方法は、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の懸濁液とケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、ランタン、タンタルおよび鉛から選ばれる少なくとも1種の元素のアルコキシドの混合物における前記アルコキシドの加水分解によってスパッタリングターゲット用沈殿物を得る工程と、前記スパッタリングターゲット用沈殿物を焼結する工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の懸濁液とケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、ランタン、タンタルおよび鉛から選ばれる少なくとも1種の元素のアルコキシドの混合物における前記アルコキシドの加水分解によって、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の表面に二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有するスパッタリングターゲット用沈殿物を得ることができる。この沈殿物を焼結することでスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。
【0013】
本発明に記載のスパッタリングターゲットは、本発明に記載のスパッタリングターゲット用焼結体を用いてなる。本発明に記載のスパッタリングターゲット用焼結体は、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散され、これらの偏析が少なく高密度である。そのため、この焼結体を用いてなるスパッタリングターゲットは、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲットとなる。
【0014】
本発明のスパッタリングターゲットは、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物の偏析が少なく、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散される。このため高スパッタ率を有するスパッタリングターゲットとなる。またスパッタリングによる成膜中におけるパーティクルの発生が少なくなる。さらにスパッタリングターゲットの寿命を長くすることができる。
【0015】
本発明に記載の保護膜は、本発明に記載のスパッタリングターゲットを用いて成膜してなる。本発明のスパッタリングターゲットは、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物の偏析が少なく、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散される。そのため、膜質の向上した保護膜を得ることができる。またこの保護膜により相変化型光記録媒体のオーバーライト特性を向上させることができる。相変化型光記録媒体の信頼性、安定性を大幅に向上させることができる。
【0016】
本発明に記載のスパッタリングターゲットの製造方法は、2種類以上の元素を有するスパッタリングターゲットの製造方法であって、前記スパッタリングターゲットはスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物を含有させた懸濁液と、ケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、ランタン、タンタルおよび鉛から選ばれる少なくとも1種の元素のアルコキシドの加水分解をさせる工程と、加水分解により前記溶液中からスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の少なくとも粒子の表面に、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が形成された沈殿物を取出す工程と、該沈殿物を焼結する工程とを有することを特徴とする。
【0017】
スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物を含有させた懸濁液と、ケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、ランタン、タンタルおよび鉛から選ばれる少なくとも1種の元素のアルコキシドの加水分解をさせる工程により、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の表面に二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有するスパッタリングターゲット用沈殿物を得ることができる。この沈殿物を焼結することでスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができ、高スパッタ率を有するスパッタリングターゲットを得ることができる。
【0018】
本発明に記載のスパッタリングターゲット用焼結体は、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の少なくとも粒子の表面に、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有するスパッタリングターゲット用焼結体であって、前記スパッタリングターゲット用焼結体のエネルギー分散型X線分析装置によるライン分析で任意の100μm間の2点におけるケイ素の存在する割合が50%以上であることを特徴とする。スパッタリングターゲット用焼結体のエネルギー分散型X線分析装置によるライン分析で任意の100μm間の2点におけるケイ素の割合が50%以上であることは、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の少なくとも粒子の表面に、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散され偏析が少ないことを表している。さらに本発明に記載のスパッタリングターゲット用焼結体は高密度である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、実施の形態、実施例及び図1〜図22を用いて説明する。ただし、本発明は、この実施の形態、実施例及び図1〜図22に限定されない。
【0020】
(スパッタリングターゲット用沈殿物)
本発明に係るスパッタリングターゲット用沈殿物は、好適には、少なくともスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の表面に、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有する。
【0021】
スパッタリングターゲット用沈殿物において、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の表面に有する酸化物としては、二酸化ケイ素、五酸化タンタルから選ばれる少なくとも1種の酸化物が好ましい。より好ましくは、二酸化ケイ素である。
【0022】
スパッタリングターゲット用沈殿物において、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物は、クロム、タンタル、酸化チタン、炭化ケイ素およびカルコゲン化亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0023】
元素および/または化合物が、クロム、タンタル、酸化チタンであることで磁気ディスク、磁気ヘッドおよび光磁気ディスク等に使用されるスパッタリングターゲット用沈殿物を得ることができる。元素および/または化合物が、クロム、タンタル、炭化ケイ素であることでサーマルヘッド等に使用されるスパッタリングターゲット用沈殿物を得ることができる。元素および/または化合物が、カルコゲン化亜鉛であることで相変化型光記録媒体等に使用されるスパッタリングターゲット用沈殿物を得ることができる。
【0024】
スパッタリングターゲット用沈殿物において、カルコゲン化亜鉛は、硫化亜鉛であることが好ましい。少なくともスパッタリングターゲットを構成する硫化亜鉛の粒子の表面に二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有することを特徴とするスパッタリングターゲット用沈殿物であることが好ましい。これを焼結した場合に硫化亜鉛の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。
【0025】
スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物とその粒子の表面に存在する酸化物の組み合わせとしては、硫化亜鉛と二酸化ケイ素、硫化亜鉛と五酸化タンタル、セレン化亜鉛と二酸化ケイ素、セレン化亜鉛と五酸化タンタル、テルル化亜鉛と二酸化ケイ素、セレン化亜鉛と五酸化タンタル、酸化チタンと二酸化ケイ素、酸化チタンと五酸化タンタル、炭化ケイ素と二酸化ケイ素、炭化ケイ素と五酸化タンタル、クロムと二酸化ケイ素、クロムと五酸化タンタル、タンタルと二酸化ケイ素などが好適に挙げられる。
【0026】
本発明に係るスパッタリングターゲット用沈殿物において、酸化物はスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の表面にどのような形で存在していても本発明の効果を発揮する。例えば、酸化物がスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の表面の全体に被膜されている場合であっても、酸化物がスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の表面の一部に被覆されている場合であっても、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。
【0027】
好ましくは酸化物がスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の表面の全体に被膜されている場合である。この場合、酸化物がより均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。
また、酸化物は、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の少なくとも粒子の表面に存在していればよい。したがって、酸化物の一部が粒子の内部に存在していてもよい。
【0028】
酸化物がスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の少なくとも粒子の表面に存在しているかどうかは、種々の方法によって解析できる。例えば、オージェ電子分光法(AES)、X線光電子分光法(XPS)等で解析することができる。
【0029】
(スパッタリングターゲット用沈殿物の製造方法)
本発明に係るスパッタリングターゲット用沈殿物の製造方法は、好ましくはスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の懸濁液とケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、ランタン、タンタルおよび鉛から選ばれる少なくとも1種の元素のアルコキシドの混合物における前記アルコキシドの加水分解によってスパッタリングターゲット用沈殿物を得る工程を有する。
【0030】
スパッタリングターゲット用沈殿物の製造方法において、アルコキシドとして、ケイ素、タンタルから選ばれる少なくとも1種の元素のアルコキシドが好ましい。より好ましくはケイ素のアルコキシドである。
【0031】
スパッタリングターゲット用沈殿物の製造方法において、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物は、クロム、タンタル、酸化チタン、炭化ケイ素およびカルコゲン化亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0032】
元素および/または化合物が、クロム、タンタル、酸化チタンであることで磁気ディスク、磁気ヘッドおよび光磁気ディスク等に使用されるスパッタリングターゲット用沈殿物を得ることができる。元素および/または化合物が、クロム、タンタル、炭化ケイ素であることでサーマルヘッド等に使用されるスパッタリングターゲット用沈殿物を得ることができる。元素および/または化合物が、カルコゲン化亜鉛であることで相変化型光記録媒体等に使用されるスパッタリングターゲット用沈殿物を得ることができる。
【0033】
スパッタリングターゲット用沈殿物の製造方法において、カルコゲン化亜鉛は、硫化亜鉛であることが好ましい。硫化亜鉛の懸濁液とケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、ランタン、タンタルおよび鉛から選ばれる少なくとも1種の元素のアルコキシドの混合物におけるアルコキシドの加水分解によってスパッタリングターゲット用沈殿物を得る工程を有することを特徴とするスパッタリングターゲット用沈殿物の製造方法であることが好ましい。
【0034】
硫化亜鉛の懸濁液とケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、ランタン、タンタルおよび鉛から選ばれる少なくとも1種の元素のアルコキシドの混合物におけるアルコキシドの加水分解によって、硫化亜鉛の粒子の表面に二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有するスパッタリングターゲット用沈殿物を得ることができる。この沈殿物を焼結することで硫化亜鉛の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。
【0035】
スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物と加水分解において加えるアルコキシドの組み合わせとしては、硫化亜鉛とケイ素のアルコキシド、硫化亜鉛とタンタルのアルコキシド、セレン化亜鉛とケイ素のアルコキシド、セレン化亜鉛とタンタルのアルコキシド、テルル化亜鉛とケイ素のアルコキシド、セレン化亜鉛とタンタルのアルコキシド、酸化チタンとケイ素のアルコキシド、酸化チタンとタンタルのアルコキシド、炭化ケイ素とケイ素のアルコキシド、炭化ケイ素とタンタルのアルコキシド、クロムとケイ素のアルコキシド、クロムとタンタルのアルコキシド、タンタルとケイ素のアルコキシドなどが好適に挙げられる。
【0036】
本発明に係るスパッタリングターゲット用沈殿物の製造方法において、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の懸濁液の溶媒としては特に限定されない。好ましくは、アルコール、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)である。カルコゲン化亜鉛の懸濁液の溶媒としては、アルコール、テトラヒドロフラン、アセトンが好ましい。
【0037】
加水分解とは、水の状態に関係なく無機化合物または有機化合物と水との複分解反応および水による分子内の開裂などを含め、広く水による分解反応をさす。一般的にアルコキシドは反応性が高いため、水の添加によって急激に反応が進行する。しかし、水を添加して溶液を調製してもゲル体ができないことがある。この場合、反応を促進するために、触媒を使用する。触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸およびフッ酸から選ばれる少なくとも1種の酸またはアンモニアが用いられる。好ましくは塩酸、アンモニアが用いられる。
【0038】
(スパッタリングターゲット用焼結体)
本発明に係るスパッタリングターゲット用焼結体は、好ましくは本発明に記載のスパッタリングターゲット用沈殿物を焼結してなる。
【0039】
焼結とは、粉体を融点以下または部分的溶融の程度に加熱して強固な結合体とするこという。
【0040】
本発明に係るスパッタリングターゲット用焼結体は、好ましくはスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の少なくとも粒子の表面に、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有するスパッタリングターゲット用焼結体であって、前記スパッタリングターゲット用焼結体のエネルギー分散型X線分析装置によるライン分析で任意の100μm間の2点におけるケイ素の割合が50%以上である。
【0041】
スパッタリングターゲット用焼結体のエネルギー分散型X線分析装置(EDX)によるライン分析は、走査電子顕微鏡(SEM)による観察を行った後行う。ライン分析においては任意の2点をとり、ライン分析の距離は100μmとする。スパッタリングターゲット用焼結体のエネルギー分散型X線分析装置によるライン分析で任意の100μm間の2点におけるケイ素の割合が60%以上であることが好ましい。このときスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の少なくとも粒子の表面に、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物がより均一に分散され偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体となる。
【0042】
(スパッタリングターゲット用焼結体の製造方法)
本発明に係るスパッタリングターゲット用焼結体の製造方法は、好ましくはスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の懸濁液とケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、ランタン、タンタルおよび鉛から選ばれる少なくとも1種の元素のアルコキシドの混合物におけるアルコキシドの加水分解によってスパッタリングターゲット用沈殿物を得る工程と、前記スパッタリングターゲット用沈殿物を焼結する工程とを有する。
【0043】
スパッタリングターゲット用焼結体の製造方法において、アルコキシドとして、ケイ素、タンタルから選ばれる少なくとも1種のアルコキシドが好ましい。より好ましくはケイ素のアルコキシドである。
【0044】
スパッタリングターゲット用焼結体の製造方法において、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物は、クロム、タンタル、酸化チタン、炭化ケイ素およびカルコゲン化亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0045】
元素および/または化合物が、クロム、タンタル、酸化チタンであることで磁気ディスク、磁気ヘッドおよび光磁気ディスク等に使用されるスパッタリングターゲット用沈殿物を得ることができる。この沈殿物を焼結することでスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。元素および/または化合物が、クロム、タンタル、炭化ケイ素であることでサーマルヘッド等に使用されるスパッタリングターゲット用沈殿物を得ることができる。この沈殿物を焼結することでスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。元素および/または化合物が、カルコゲン化亜鉛であることで相変化型光記録媒体等に使用されるスパッタリングターゲット用沈殿物を得ることができる。この沈殿物を焼結することでスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。
【0046】
スパッタリングターゲット用焼結体の製造方法において、カルコゲン化亜鉛は、硫化亜鉛であることが好ましい。硫化亜鉛の懸濁液とケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、ランタン、タンタルおよび鉛から選ばれる少なくとも1種の元素のアルコキシドの混合物における前記アルコキシドの加水分解のよってスパッタリングターゲット用沈殿物を得る工程と、前記スパッタリングターゲット用沈殿物を焼結する工程と、を有することを特徴とするスパッタリングターゲット用焼結体の製造方法であることが好ましい。
【0047】
硫化亜鉛の懸濁液とアルコキシドの混合物におけるアルコキシドの加水分解によって、硫化亜鉛の粒子の表面に二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有するスパッタリングターゲット用沈殿物を得ることができる。この沈殿物を焼結することで硫化亜鉛の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。
【0048】
スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物と加水分解において加えるアルコキシドの組み合わせとしては、硫化亜鉛とケイ素のアルコキシド、硫化亜鉛とタンタルのアルコキシド、セレン化亜鉛とケイ素のアルコキシド、セレン化亜鉛とタンタルのアルコキシド、テルル化亜鉛とケイ素のアルコキシド、セレン化亜鉛とタンタルのアルコキシド、酸化チタンとケイ素のアルコキシド、酸化チタンとタンタルのアルコキシド、炭化ケイ素とケイ素のアルコキシド、炭化ケイ素とタンタルのアルコキシド、クロムとケイ素のアルコキシド、クロムとタンタルのアルコキシド、タンタルとケイ素のアルコキシドなどが好適に挙げられる。
【0049】
焼結の工程はホットプレス法やHIP法などの公知の方法により実施する。ホットプレス時の雰囲気はアルゴン雰囲気あるいは窒素雰囲気が好ましく、保持温度は900〜1300℃程度、保持時間は3〜14時間程度とするのが好ましい。また、ホットプレス時の圧力は0.1〜0.3N/m2程度とすることが好ましい。
【0050】
酸化チタンの懸濁液にケイ素のアルコキシドを加えて加水分解して磁気ディスクに使用されるスパッタリングターゲット用沈殿物が得られる。これを窒素雰囲気、1300℃で3時間、0.3N/m2の圧力でホットプレスすることにより磁気ディスクに使用されるスパッタリングターゲット用焼結体が得られる。
【0051】
クロムの懸濁液にケイ素のアルコキシドを加えて加水分解してサーマルヘッドに使用されるスパッタリングターゲット用沈殿物が得られる。これをアルゴン雰囲気、1300℃で5時間、0.3N/m2の圧力でホットプレスすることによりサーマルヘッドに使用されるスパッタリングターゲット用焼結体が得られる。
【0052】
(スパッタリングターゲット)
本発明に係るスパッタリングターゲットは、本発明に記載のスパッタリングターゲット用焼結体を用いてなる。
【0053】
本発明のスパッタリングターゲットは、主として次の用途に用いられる。磁気ディスク、磁気ヘッドなどの磁気記録媒体の絶縁膜や保護膜として用いられる。また、光ディスクなどの相変化型光記録媒体の保護膜として用いられる。さらにサーマルヘッドの発熱抵抗体、絶縁膜および保護膜として用いられる。
【0054】
(スパッタリングターゲットの製造方法)
本発明に係るスパッタリングターゲットの製造方法は、好ましくはスパッタリングターゲットはスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物を含有させた懸濁液と、ケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、ランタン、タンタルおよび鉛から選ばれる少なくとも1種の元素のアルコキシドの加水分解をさせる工程と、加水分解により前記溶液中からスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の少なくとも粒子の表面に、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が形成された沈殿物を取出す工程と、該沈殿物を焼結する工程とを有する。
【0055】
スパッタリングターゲットの製造方法において、アルコキシドとして、ケイ素、タンタルから選ばれる少なくとも1種のアルコキシドが好ましい。より好ましくはケイ素のアルコキシドである。
【0056】
スパッタリングターゲットの製造方法において、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物は、クロム、タンタル、酸化チタン、炭化ケイ素およびカルコゲン化亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0057】
元素および/または化合物が、クロム、タンタル、酸化チタンであることで磁気ディスク、磁気ヘッドおよび光磁気ディスク等に使用されるスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲットを得ることができる。元素および/または化合物が、クロム、タンタル、炭化ケイ素であることでサーマルヘッド等に使用されるスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲットを得ることができる。元素および/または化合物が、カルコゲン化亜鉛であることで相変化型光記録媒体等に使用されるスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲットを得ることができる。
【0058】
スパッタリングターゲットの製造方法において、カルコゲン化亜鉛は、硫化亜鉛であることが好ましい。硫化亜鉛の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲットを得ることができる。このスパッタリングターゲットは高スパッタ率を有し、この製造方法により生産効率が著しく向上する。
【0059】
スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物と加水分解において加えるアルコキシドの組み合わせとしては、硫化亜鉛とケイ素のアルコキシド、硫化亜鉛とタンタルのアルコキシド、セレン化亜鉛とケイ素のアルコキシド、セレン化亜鉛とタンタルのアルコキシド、テルル化亜鉛とケイ素のアルコキシド、セレン化亜鉛とタンタルのアルコキシド、酸化チタンとケイ素のアルコキシド、酸化チタンとタンタルのアルコキシド、炭化ケイ素とケイ素のアルコキシド、炭化ケイ素とタンタルのアルコキシド、クロムとケイ素のアルコキシド、クロムとタンタルのアルコキシド、タンタルとケイ素のアルコキシドなどが好適に挙げられる。
【0060】
焼結の工程はホットプレス法やHIP法などの公知の方法により実施する。ホットプレス時の雰囲気はアルゴン雰囲気あるいは窒素雰囲気が好ましく、保持温度は900〜1300℃程度、保持時間は3〜14時間程度とするのが好ましい。また、ホットプレス時の圧力は0.1〜0.3N/m2程度とすることが好ましい。
【0061】
(保護膜)
本発明に係る保護膜は、本発明に記載のスパッタリングターゲットを用いて成膜してなる。
【0062】
本発明の保護膜は、主として次の用途に用いられる。磁気ディスク、磁気ヘッド、サーマルヘッドおよび光ディスクの保護膜として用いられる。光ディスクなどの相変化型光記録媒体としては、CD−RW、DVD−RAM、DVD−RW等が挙げられる。
【0063】
以下、本発明に係るスパッタリングターゲット用沈殿物について実施例を挙げて説明するが、この実施例に限定されるものではない。
【0064】
【実施例】
〔実施例1〕
相変化型光記録媒体の保護膜の形成に用いられるスパッタリングターゲットとして、カルコゲン化亜鉛である硫化亜鉛の粒子の表面に二酸化ケイ素を形成させた。ここではスパッタリングターゲットを構成する化合物としては硫化亜鉛となる。
硫化亜鉛194.9gにアルコールを加え、攪拌することでスパッタリングターゲットを構成する化合物の懸濁液を得た。これは、スパッタリングターゲットを構成する化合物を含有させた懸濁液となる。
次にケイ素のアルコキシドとしてテトラエトキシシラン(Si(OC2H5)4)を用いた。テトラエトキシラン104.2gと、アンモニア水と水の混合物と、を上述の硫化亜鉛含有アルコール懸濁液中に同時に滴下した。
滴下すると共に攪拌しながら熟成すると、テトラエトキシキランが加水分解され硫化亜鉛の粒子の表面に、二酸化ケイ素が均一に分散されて付着し被膜が形成された。二酸化ケイ素による被膜が形成された硫化亜鉛の粒子が溶液中にスパッタリングターゲット用沈殿物として沈降した。
こうして得られた沈殿物を濾過し、乾燥することによってスパッタリングターゲット用沈殿物が形成された。
【0065】
テトラエトキシシランとは、テトラアルコキシシランの一種である。Si(OC2H5)4で表され、主に四塩化ケイ素とエタノールとの反応、あるいは金属ケイ素とエタノールとの反応から合成される無色透明の液体である。
【0066】
(スパッタリングターゲット用沈殿物の評価)
本発明に係るスパッタリングターゲット用沈殿物は、走査電子顕微鏡(SEM)とエネルギー分散型X線分析装置(EDX)により評価を行った。
【0067】
走査電子顕微鏡による観察を、S−4700を用いて行った。カーボン蒸着を行った実施例1で得られたスパッタリングターゲット用沈殿物に対し、加速電圧20kV、ビーム電流10μAにて15000倍の走査電子顕微鏡写真を撮影した。この走査電子顕微鏡写真に対して、エネルギー分散型X線分析装置にて面分析を行いケイ素の存在する場所を赤色で着色した。これを図1に示す。またケイ素の存在する場所をわかりやすくするために、ケイ素の存在する場所を黒色で示したのが図2である。さらに走査電子顕微鏡写真に対して、エネルギー分散型X線分析装置にて図3に示す位置のライン分析を行った結果を図4に示す。図4において前方のグラフはケイ素の強度を表し、後方のグラフは亜鉛の強度を表す。
【0068】
また、二酸化ケイ素が硫化亜鉛の粒子の表面に存在しているかどうかをオージェ電子分光法(AES)により測定した。
【0069】
JEOL社製のAugerMicroProbe JAMP−7800Fを用いて測定した。両面粘着性の導電性カーボンを試料台に貼り付け、貼り付け面の反対側に実施例1で得られたスパッタリングターゲット用沈殿物を接着させた。その後、実施例1で得られたスパッタリングターゲット用沈殿物の4つの任意の位置を選択し、プローブエネルギーを10keV、プローブ電流を1×10−7Aとして分析エリア0.1μmφ未満のオージェスペクトルを測定した。測定結果を図21に示す。また各元素のピーク強度を表1に、簡易定量の結果を表2に示す。
【0070】
〔実施例2〕
相変化型光記録媒体の保護膜の形成に用いられるスパッタリングターゲットとして、カルコゲン化亜鉛である硫化亜鉛の粒子の表面に二酸化ケイ素を形成させた。ここではスパッタリングターゲットを構成する化合物としては硫化亜鉛となる。
硫化亜鉛194.9gにアルコールを加え、攪拌することでスパッタリングターゲットを構成する化合物の懸濁液を得た。これは、スパッタリングターゲットを構成する化合物を含有させた懸濁液となる。
次にアンモニア水と水を加えて攪拌しながら、テトラエトキシラン104.2gを上述の硫化亜鉛含有アルコール懸濁液中に滴下した。
滴下すると共に攪拌しながら熟成すると、テトラエトキシキランが加水分解され硫化亜鉛の粒子の表面に、二酸化ケイ素が均一に分散されて付着し被膜が形成された。二酸化ケイ素による被膜が形成された硫化亜鉛の粒子が溶液中にスパッタリングターゲット用沈殿物として沈降した。
こうして得られた沈殿物を濾過し、乾燥することによってスパッタリングターゲット用沈殿物が形成された。
【0071】
以下、実施例1と同様にして実施例2で得られたスパッタリングターゲット用沈殿物の評価を行った。結果を図9〜図12に示す。図12において前方のグラフはケイ素の強度を表し、後方のグラフは亜鉛の強度を表す。またオージェ電子分光法による測定結果を図22に示す。また各元素のピーク強度を表1に、簡易定量の結果を表2に示す。
【0072】
〔実施例3〕
相変化型光記録媒体の保護膜の形成に用いられるスパッタリングターゲットとして、カルコゲン化亜鉛である硫化亜鉛の粒子の表面に二酸化ケイ素を形成させた。ここではスパッタリングターゲットを構成する化合物としては硫化亜鉛となる。
テトラエトキシシラン104.2gにアルコールを加え、攪拌しながら、硫化亜鉛(ZnS)194.9gを加え、水を加えた。アルコールと硫化亜鉛により硫化亜鉛含有アルコール懸濁液となる。さらにアンモニア水を加えた。
攪拌しながら熟成すると、テトラエトキシキランが加水分解され硫化亜鉛の粒子の表面に、二酸化ケイ素が均一に分散されて付着し被膜が形成された。二酸化ケイ素による被膜が形成された硫化亜鉛の粒子が溶液中にスパッタリングターゲット用沈殿物として沈降した。
こうして得られた沈殿物を濾過し、乾燥することによってスパッタリングターゲット用沈殿物が形成された。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
図1および図9から明らかなように、本発明のスパッタリングターゲット用沈殿物は、硫化亜鉛の粒子の表面に、二酸化ケイ素が均一に分散され偏析が少ないことがわかる。またエネルギー分散型X線分析装置にて行ったライン分析の結果である図4および図8からも、本発明のスパッタリングターゲット用沈殿物は、硫化亜鉛の粒子の表面に、二酸化ケイ素が均一に分散され偏析が少ないことがわかる。
【0076】
さらに図21、表1および表2によって、本発明のスパッタリングターゲット用沈殿物は、硫化亜鉛の粒子の表面に二酸化ケイ素の被膜が形成されているこがわかる。また図22、表1および表2によって、本発明のスパッタリングターゲット用沈殿物は、硫化亜鉛の粒子の表面に二酸化ケイ素が被覆されていることがわかる。
【0077】
次に、本発明に係るスパッタリングターゲット用焼結体について実施例を挙げて説明するが、この実施例に限定されるものではない。
〔実施例4〕
実施例1で得られたスパッタリングターゲット用沈殿物をホットプレス黒鉛型に充填し、アルゴン雰囲気下で、温度1160℃、圧力0.3N/m2で14時間ホットプレス焼結を行った。
【0078】
(スパッタリングターゲット用焼結体の評価)
本発明に係るスパッタリングターゲット用焼結体は、走査電子顕微鏡(SEM)とエネルギー分散型X線分析装置(EDX)により評価を行った。
【0079】
走査電子顕微鏡による観察を、S−4700を用いて行った。カーボン蒸着を行った実施例4で得られたスパッタリングターゲット用焼結体に対し、加速電圧20kV、ビーム電流10μAにて1000倍の走査電子顕微鏡写真を撮影した。この走査電子顕微鏡写真に対して、エネルギー分散型X線分析装置にて面分析を行いケイ素の存在する場所を赤色で着色した。これを図5に示す。またケイ素の存在する場所をわかりやすくするために、ケイ素の存在する場所を黒色で示したのが図6である。さらに走査電子顕微鏡写真に対して、エネルギー分散型X線分析装置にて図7に示す位置のライン分析を行った結果を図8に示す。図8において前方のグラフはケイ素の強度を表し、後方のグラフは亜鉛の強度を表す。
【0080】
また焼結体の相対密度を、アルキメデス法により測定されたかさ密度から算出した。焼結体の理論密度は、硫化亜鉛単体の密度と二酸化ケイ素単体の密度の、焼結体の構成比を重みとした加重平均値を用いた。焼結体の理論密度の値は3.68g/cm3であった。実施例4で得られたスパッタリングターゲット用焼結体の相対密度は97.9%であった。
【0081】
〔実施例5〕
実施例3で得られたスパッタリングターゲット用沈殿物をホットプレス黒鉛型に充填し、アルゴン雰囲気下で、温度1160℃、圧力0.3N/m2で14時間ホットプレス焼結を行った。
【0082】
以下、実施例4と同様にして実施例5で得られたスパッタリングターゲット用焼結体の評価を行う。走査電子顕微鏡(SEM)とエネルギー分散型X線分析装置(EDX)により評価の結果を図13〜図16に示す。図16において前方のグラフはケイ素の強度を表し、後方のグラフは亜鉛の強度を表す。実施例5で得られたスパッタリングターゲット用焼結体の相対密度は99.5%であった。
【0083】
〔比較例1〕
モル比で硫化亜鉛(ZnS):二酸化ケイ素(SiO2)=80:20となるように定量し、1時間乾式混合した。これをホットプレス黒鉛型に充填し、アルゴン雰囲気下で、温度1160℃、圧力0.3N/m2で14時間ホットプレス焼結を行った。
【0084】
以下、実施例4と同様にして比較例1で得られたスパッタリングターゲット用焼結体の評価を行う。走査電子顕微鏡(SEM)とエネルギー分散型X線分析装置(EDX)により評価の結果を図17〜図20に示す。図20において前方のグラフはケイ素の強度を表し、後方のグラフは亜鉛の強度を表す。
【0085】
図5および図13から明らかなように、本発明のスパッタリングターゲット用焼結体は、硫化亜鉛の粒子の表面に、二酸化ケイ素が均一に分散され偏析が少ないことがわかる。またエネルギー分散型X線分析装置にて行ったライン分析の結果である図8および図16からも、本発明のスパッタリングターゲット用焼結体は、硫化亜鉛の粒子の表面に、二酸化ケイ素が均一に分散され偏析が少ないことがわかる。さらに高い焼結密度を示すこともわかった。
【0086】
これに対して、乾式混合により得られたスパッタリングターゲット用沈殿物から作成した焼結体は、図17から二酸化ケイ素が局在し、偏析している部分があることがわかる。またエネルギー分散型X線分析装置にて行ったライン分析の結果である図20からも、二酸化ケイ素が局在し偏析していることがわかる。また本発明のスパッタリングターゲット用焼結体に比べて焼結密度が低い。
【0087】
前記各実施の形態から把握できる請求項記載以外の技術思想(発明)について、以下にその効果とともに記載する。
【0088】
(1)硫化亜鉛の粒子の表面に、二酸化ケイ素を有することを特徴とするスパッタリングターゲット用沈殿物である。この沈殿物を焼結することで硫化亜鉛の粒子の周りに二酸化ケイ素が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。
【0089】
(2)硫化亜鉛の懸濁液とケイ素のアルコキシドの混合物における前記アルコキシドの加水分解によってスパッタリングターゲット用沈殿物を得る工程を有することを特徴とするスパッタリングターゲット用沈殿物の製造方法である。この製造方法により、硫化亜鉛の粒子の表面に二酸化ケイ素を有するスパッタリングターゲット用沈殿物を得ることができる。
【0090】
(3)(1)に記載のスパッタリングターゲット用沈殿物を焼結してなるスパッタリングターゲット用焼結体である。このスパッタリングターゲット用焼結体は、硫化亜鉛の粒子の周りに二酸化ケイ素が均一に分散され、偏析が少なく、高密度である。
【0091】
(4)硫化亜鉛の懸濁液とケイ素のアルコキシドの混合物における前記アルコキシドの加水分解によってスパッタリングターゲット用沈殿物を得る工程と、前記スパッタリングターゲット用沈殿物を焼結する工程と、を有することを特徴とするスパッタリングターゲット用焼結体の製造方法である。この製造方法により、硫化亜鉛の粒子の表面に二酸化ケイ素が均一に分散された、偏析が少ない、高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。
【0092】
(5)(3)に記載のスパッタリングターゲット用焼結体を用いてなるスパッタリングターゲットである。このスパッタリングターゲットは、硫化亜鉛の粒子の周りに二酸化ケイ素が均一に分散され偏析が少ない。このため高スパッタ率を有するスパッタリングターゲットとなる。またスパッタリングによる成膜中におけるパーティクルの発生が少なくなる。さらにスパッタリングターゲットの寿命が長くなる。
【0093】
(6)(5)に記載のスパッタリングターゲットを用いて成膜してなる保護膜である。この保護膜は、膜質が向上し高品質である。
【0094】
(7)2種類以上の元素を有するスパッタリングターゲットの製造方法であって、硫化亜鉛を含有させた懸濁液中に、ケイ素のアルコキシドの加水分解をさせる工程と、加水分解により前記溶液中から硫化亜鉛の少なくとも粒子の表面に、二酸化ケイ素が形成された沈殿物を取出す工程と、該沈殿物を焼結する工程とを有することを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法である。この製造方法により高スパッタ率を有するスパッタリングターゲットを得ることができる。
【0095】
(8)スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の少なくとも粒子の表面に、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有するスパッタリングターゲット用沈殿物であって、前記スパッタリングターゲット用沈殿物のエネルギー分散型X線分析装置によるライン分析で任意の3μm間の2点におけるケイ素の割合が50%以上であることを特徴とするスパッタリングターゲット用沈殿物である。スパッタリングターゲット用沈殿物のエネルギー分散型X線分析装置によるライン分析で任意の3μm間の2点におけるケイ素の割合が50%以上であることはスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の表面に二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散され偏析が少ないことを表している。したがって、この沈殿物を焼結することでスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。
【0096】
(7)スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の少なくとも粒子の表面に、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有するスパッタリングターゲット用沈殿物であって、前記スパッタリングターゲット用沈殿物のオージェ電子分光法により求められたオージェスペクトル中の(ケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、ランタン、タンタルおよび亜鉛から選ばれる少なくとも1種のピーク強度)/(クロム、タンタル、チタン、ケイ素および亜鉛から選ばれる少なくとも1種のピーク強度)の強度比が0.2以上であることを特徴とするスパッタリングターゲット用沈殿物である。このように規定することでスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の表面に二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散され偏析が少ないことを表している。したがって、この沈殿物を焼結することでスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。
【0097】
(8)硫化亜鉛の少なくとも粒子の表面に、二酸化ケイ素を有するスパッタリングターゲット用沈殿物であって、前記スパッタリングターゲット用沈殿物のオージェ電子分光法により求められたオージェスペクトル中の(ケイ素のピーク強度)/(亜鉛のピーク強度)の強度比が0.2以上であることを特徴とするスパッタリングターゲット用沈殿物である。オージェスペクトル中の(ケイ素のピーク強度)/(亜鉛のピーク強度)の強度比が0.2以上であることは硫化亜鉛の粒子の表面に二酸化ケイ素が均一に分散され偏析が少ないことを表している。したがって、この沈殿物を焼結することで硫化亜鉛の粒子の周りに二酸化ケイ素が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。
【0098】
(9)スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の少なくとも粒子の表面に、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有するスパッタリングターゲット用沈殿物であって、前記スパッタリングターゲット用沈殿物の表面分析方法により求められた(ケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、ランタン、タンタルおよび亜鉛から選ばれる少なくとも1種の原子量%)/(クロム、タンタル、チタン、ケイ素および亜鉛から選ばれる少なくとも1種の原子量%)が1.0以上であることを特徴とするスパッタリングターゲット用沈殿物である。このように規定することでスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の表面に二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散され偏析が少ないことを表している。したがって、この沈殿物を焼結することでスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の周りに二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。表面分析方法は、オージェ電子分光法(AES)、X線光電子分光法(XPS)等がある。好ましくはオージェ電子分光法(AES)である。
【0099】
(9)硫化亜鉛の少なくとも粒子の表面に、二酸化ケイ素を有するスパッタリングターゲット用沈殿物であって、前記スパッタリングターゲット用沈殿物の表面分析方法により求められた(ケイ素の原子量%)/(亜鉛の原子量%)が1.0以上であることを特徴とするスパッタリングターゲット用沈殿物である。(ケイ素の原子量%)/(亜鉛の原子量%)が1.0以上であることは硫化亜鉛の粒子の表面に二酸化ケイ素が均一に分散され偏析が少ないことを表している。したがって、この沈殿物を焼結することで硫化亜鉛の粒子の周りに二酸化ケイ素が均一に分散された偏析が少ない高密度のスパッタリングターゲット用焼結体を得ることができる。表面分析方法は、オージェ電子分光法(AES)、X線光電子分光法(XPS)等がある。好ましくはオージェ電子分光法(AES)である。
【0100】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明は、高品質なスパッタリングターゲット用沈殿物、焼結体、ターゲットおよび保護膜ならびにそれらの製造方法である。本発明のスパッタリングターゲット用沈殿物は、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の表面に酸化物が均一に分散され偏析が少ない。本発明のスパッタリングターゲット用焼結体は、スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の粒子の表面に酸化物が均一に分散され偏析が少なく、高密度である。このため本発明のスパッタリングターゲットは、高スパッタ率を有する。さらにスパッタリングによる成膜中におけるパーティクルの発生が少なく、スパッタリングターゲットの寿命が長い。本発明の保護膜は、膜質が向上した高品質の保護膜である。本発明のスパッタリングターゲット用沈殿物、焼結体、ターゲットおよび保護膜ならびにそれらの製造方法によれば、高スパッタ率を有するスパッタリングターゲットを得ることができるため、生産効率が著しく向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1で得られたスパッタリングターゲット用沈殿物の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置で面分析を行った写真図である。
【図2】本発明の実施例1で得られたスパッタリングターゲット用沈殿物の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置で面分析を行った写真図である。
【図3】本発明の実施例1で得られたスパッタリングターゲット用沈殿物の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置でライン分析を行う位置を示した写真図である。
【図4】本発明の実施例1で得られたスパッタリングターゲット用沈殿物の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置でライン分析を行った結果を示したグラフである。
【図5】本発明の実施例4で得られたスパッタリングターゲット用焼結体の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置で面分析を行った写真図である。
【図6】本発明の実施例4で得られたスパッタリングターゲット用焼結体の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置で面分析を行った写真図である。
【図7】本発明の実施例4で得られたスパッタリングターゲット用焼結体の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置でライン分析を行う位置を示した写真図である。
【図8】本発明の実施例4で得られたスパッタリングターゲット用焼結体の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置でライン分析を行った結果を示したグラフである。
【図9】本発明の実施例2で得られたスパッタリングターゲット用沈殿物の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置で面分析を行った写真図である。
【図10】本発明の実施例2で得られたスパッタリングターゲット用沈殿物の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置で面分析を行った写真図である。
【図11】本発明の実施例2で得られたスパッタリングターゲット用沈殿物の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置でライン分析を行う位置を示した写真図である。
【図12】本発明の実施例2で得られたスパッタリングターゲット用沈殿物の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置でライン分析を行った結果を示したグラフである。
【図13】本発明の実施例5で得られたスパッタリングターゲット用焼結体の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置で面分析を行った写真図である。
【図14】本発明の実施例5で得られたスパッタリングターゲット用焼結体の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置で面分析を行った写真図である。
【図15】本発明の実施例5で得られたスパッタリングターゲット用焼結体の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置でライン分析を行う位置を示した写真図である。
【図16】本発明の実施例5で得られたスパッタリングターゲット用焼結体の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置でライン分析を行った結果を示したグラフである。
【図17】比較例1で得られたスパッタリングターゲット用焼結体の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置で面分析を行った写真図である。
【図18】比較例1で得られたスパッタリングターゲット用焼結体の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置で面分析を行った写真図である。
【図19】比較例1で得られたスパッタリングターゲット用焼結体の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置でライン分析を行う位置を示した写真図である。
【図20】比較例1で得られたスパッタリングターゲット用焼結体の走査電子顕微鏡写真にエネルギー分散型X線分析装置でライン分析を行った結果を示したグラフである。
【図21】実施例1で得られたスパッタリングターゲット用沈殿物のオージェ電子分光法により求められたオージェスペクトルである。
【図22】実施例2で得られたスパッタリングターゲット用沈殿物のオージェ電子分光法により求められたオージェスペクトルである。
【符号の説明】
1…ケイ素の存在する場所
2…硫化亜鉛
3…亜鉛
4…ケイ素
Claims (8)
- スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の少なくとも粒子の表面に、
二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有することを特徴とするスパッタリングターゲット用沈殿物。 - スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の懸濁液と
ケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、ランタン、タンタルおよび鉛から選ばれる少なくとも1種の元素のアルコキシドの混合物における
前記アルコキシドの加水分解によってスパッタリングターゲット用沈殿物を得る工程を有する
ことを特徴とするスパッタリングターゲット用沈殿物の製造方法。 - 請求項1に記載のスパッタリングターゲット用沈殿物を焼結してなるスパッタリングターゲット用焼結体。
- スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の懸濁液と
ケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、ランタン、タンタルおよび鉛から選ばれる少なくとも1種の元素のアルコキシドの混合物における
前記アルコキシドの加水分解によってスパッタリングターゲット用沈殿物を得る工程と、
前記スパッタリングターゲット用沈殿物を焼結する工程と、
を有することを特徴とするスパッタリングターゲット用焼結体の製造方法。 - 請求項3に記載のスパッタリングターゲット用焼結体を用いてなるスパッタリングターゲット。
- 請求項5に記載のスパッタリングターゲットを用いて成膜してなる保護膜。
- 2種類以上の元素を有するスパッタリングターゲットの製造方法であって、
前記スパッタリングターゲットはスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物を含有させた懸濁液と、
ケイ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、インジウム、スズ、ランタン、タンタルおよび鉛から選ばれる少なくとも1種の元素のアルコキシドの加水分解をさせる工程と、
加水分解により前記溶液中からスパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の少なくとも粒子の表面に、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物が形成された沈殿物を取出す工程と、
該沈殿物を焼結する工程とを有することを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。 - スパッタリングターゲットを構成する元素および/または化合物の少なくとも粒子の表面に、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化第二スズ、酸化ランタン、五酸化タンタルおよび一酸化鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を有するスパッタリングターゲット用焼結体であって、
前記スパッタリングターゲット用焼結体のエネルギー分散型X線分析装置によるライン分析で任意の100μm間の2点におけるケイ素の存在する割合が50%以上であることを特徴とするスパッタリングターゲット用焼結体。
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-
2002
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