JP2004211006A - 潤滑油組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】塩素系極圧剤は、極圧性に優れた潤滑油添加剤であるが、毒性及び発ガン性の懸念や、焼却処理時の有害物質の発生による環境公害や焼却炉の損傷の問題がある。このような塩素系極圧剤を使用しなくとも、難加工性金属材料の難加工が可能な潤滑油を提供すること。
【解決手段】鉱油、合成油又は油脂を基油とし、塩素原子を有する化合物が含まれていない潤滑油組成物において、(A)成分として有機モリブデン化合物、(B)成分として活性硫黄化合物を含有することを特徴とする潤滑油組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】鉱油、合成油又は油脂を基油とし、塩素原子を有する化合物が含まれていない潤滑油組成物において、(A)成分として有機モリブデン化合物、(B)成分として活性硫黄化合物を含有することを特徴とする潤滑油組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塩素系極圧剤等の塩素原子を有する化合物が含まれていない潤滑油組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
切削、研削、引き抜き、伸線、プレス等のいわゆる金属加工に用いられる潤滑油は、動植物性油脂、鉱油、合成油あるいはこれらの混合物を基油とし、これに油性剤、極圧剤、防錆剤、酸化防止剤等を加えて使用されている。特に、技術水準の高度化に伴い、各種加工機械類の大型化、精密化ならびに金属材料の硬度の上昇、加工条件の高速高圧力化、更には製品仕上げ面の精密化等のように、加工条件がますます苛酷になっており、より一層の極圧性が必要とされている。この問題を解決するため、従来は、塩素化パラフィン、塩素化脂肪酸、塩素化脂肪酸エステル等の塩素系極圧剤が使用されていた。
【0003】
しかしながら、近年では塩素系極圧剤が配合された金属加工油を使用した場合、焼却処理時の有害物質の発生による環境公害や焼却炉の損傷の問題を指摘されている。また、塩素系極圧剤のうち一部の塩素化パラフィンでは、毒性及び発ガン性の可能性についての懸念もある。このため、金属加工油においては、塩素系極圧剤を含有しない潤滑油が求められている。塩素系極圧剤を含有しない金属加工油としては、基油に有機モリブデン化合物及び硫黄化合物を配合した金属加工油(例えば、特許文献1〜4等を参照)、活性硫黄化合物を含有する金属加工油(例えば、特許文献5及び6を参照)等が知られているが、有機モリブデン化合物及び活性硫黄化合物を含有する潤滑油は知られていなかった。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−118682号公報
【特許文献2】
特開平7−233388号公報
【特許文献3】
特開平10−88170号公報
【特許文献4】
国際特許WO96/33253号公開公報
【特許文献5】
特開平8−20790号公報
【特許文献6】
特開平10−204470号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、塩素を含有しない極圧剤は、塩素系極圧剤に比べて極圧性が不充分である。このため、従来知られていた、塩素系極圧剤を含有しない金属加工油は、炭素鋼、クロム鋼等の易削材の加工や、旋盤加工、塑性加工等の比較的容易な加工には、塩素系極圧剤を含有する金属加工油と同様に使用できるが、ステンレス等の難加工性金属材料(難削材とも言う)についてブローチ加工等のような難加工を行なう場合には使用することができず、難加工性金属材料の難加工には塩素系極圧剤を含有する金属加工油を使用せざるを得なかった。
【0006】
従って、本発明の目的は、難加工性金属材料の難加工にも使用できる塩素系極圧剤を含有しない金属加工油を提供することにある。
【0007】
【課題を解決する手段】
そこで本発明者等は鋭意検討し、有機モリブデン化合物と特定の硫黄化合物とを配合することにより、塩素系極圧剤と同等の極圧性を有する金属加工油が得られることを見出し本発明を完成するに至った。即ち本発明は、鉱油、合成油又は油脂を基油とし、塩素原子を有する化合物が含まれていない潤滑油組成物において、(A)成分として、有機モリブデン化合物、(B)成分として、活性硫黄化合物を含有することを特徴とする潤滑油組成物である。
【0008】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の(A)成分である有機モリブデン化合物について説明する。本発明において、有機モリブデン化合物とは、2,2,4−トリメチルペンタン(イソオクタン)に対して、25℃で、モリブデン原子を基準にして少なくとも200質量ppm溶解するモリブデン化合物を言う。有機モリブデン化合物としては、例えば、モリブデンとアミン化合物との反応物、モリブデンとアルキル(又はアルケニル)コハク酸ポリアミンアミドとの反応物、モリブデンとベンジルアミン(マンニッヒ反応物)との反応物、硫化オキシモリブデンジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジチオフォスフェート、硫化オキシモリブデンジチオフォスフィネート、モノ(又はジ)アルキル(又はアルケニル)フォスフェートのモリブデン塩、硫化オキシモリブデンキサンテート、硫化オキシモリブデンチオキサンテート、モリブデンのカルボン酸ジエタノールアミド錯体、モリブデンのアルカノールアミン錯体、モリブデンのβ−ケトカルボン酸エステル錯体、モリブデンのグリセリンモノカルボン酸エステル錯体、モリブデンのグリセリンモノアルキル(又はアルケニル)エーテル錯体、モリブデンの1,2−ジオール錯体、2,2−メチレンビスフェノール化合物のモリブデン錯体、モリブデンのモノカルボン酸石鹸等が挙げられる。本発明の(A)成分としては、これらの有機モリブデン化合物の単独でもよいし、2種以上の混合物でもよい。
【0009】
これらの有機モリブデン化合物の中でも、モリブデンとアミン化合物との反応物、硫化オキシモリブデンジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジチオフォスフェート、モリブデンのカルボン酸ジエタノールアミド錯体及びモリブデンのグリセリンモノカルボン酸エステル錯体が好ましく、モリブデンとアミン化合物との反応物、硫化オキシモリブデンジチオカーバメート及び硫化オキシモリブデンジチオフォスフェートが更に好ましく、モリブデンとアミン化合物との反応物が最も好ましい。
【0010】
モリブデンとアミン化合物の反応物としては、例えば、下記の一般式(1)
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、R1は炭素数が4〜36のアルキル基、アルケニル基又は2−ヒドロキシアルキル基を表わし、R2は炭素数1〜12の炭化水素基を表わし、X1〜X3はそれぞれ水素原子、炭素数1〜36の炭化水素基又は炭素数2〜36の2−ヒドロキシアルキル基を表わし、aは0又は1の数を表わす。)
で表わされるアミンと6価のモリブデン原子を有する化合物との反応物が挙げられる。
【0013】
硫化オキシモリブデンジチオカーバメートとしては、例えば、下記の一般式(2)
【0014】
【化2】
【0015】
(式中、Rはそれぞれ炭素数1〜36のアルキル基又はアルケニル基を表わし、Xはそれぞれ酸素原子又は硫黄原子を表わす。)
で表わされる化合物が挙げられる。
【0016】
硫化オキシモリブデンジチオホスフェートとしては、例えば、下記の一般式(3)
【0017】
【化3】
【0018】
(式中、Rはそれぞれ炭素数1〜36のアルキル基又はアルケニル基を表わし、Xはそれぞれ酸素原子又は硫黄原子を表わす。)
で表わされる化合物が挙げられる。
【0019】
モリブデンのカルボン酸ジエタノールアミド錯体としては、例えば、下記の一般式(4)
【0020】
【化4】
【0021】
(式中、Rは炭素数1〜36のアルキル基又はアルケニル基を表わす。)
で表わされる化合物が挙げられる。
【0022】
モリブデンのグリセリンモノカルボン酸エステル錯体としては、例えば、下記の一般式(5)
【0023】
【化5】
【0024】
(式中、Rは炭素数1〜36のアルキル基又はアルケニル基を表わす。)
で表わされる化合物が挙げられる。
【0025】
一般式(1)において、R1は炭素数が少なくとも4であるアルキル基、炭素数が少なくとも4であるアルケニル基又は炭素数が少なくとも4である2−ヒドロキシアルキル基を表わす。炭素数が少なくとも4であるアルキル基としては、例えば、ブチル、2級ブチル、イソブチル、ターシャリブチル、ペンチル、2級ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ターシャリペンチル、ヘキシル、2級ヘキシル、ヘプチル、2級ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、2級オクチル、ノニル、2級ノニル、デシル、2級デシル、ウンデシル、2級ウンデシル、ドデシル、2級ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、2級トリデシル、テトラデシル、2級テトラデシル、ヘキサデシル、2級ヘキサデシル、オクタデシル、2級オクタデシル、エイコシル、ドコシル、テトラコシル、トリアコンチル、2−ブチルオクチル、2−ブチルデシル、2−ヘキシルオクチル、2−ヘキシルデシル、2−オクチルデシル、2−ヘキシルドデシル、2−オクチルドデシル、2−デシルテトラデシル、2−ドデシルヘキサデシル、2−ヘキサデシルオクタデシル、2−テトラデシルオクタデシル等が挙げられる。これらのアルキル基の中でも、炭素数6〜22のアルキル基が好ましく、炭素数8〜18のアルキル基が更に好ましく、炭素数10〜16のアルキル基が最も好ましい。
【0026】
炭素数が少なくとも4であるアルケニル基としては例えば、ブテニル、ペンテニル、イソペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、テトラデセニル、オレイル等が挙げられる。これらのアルキル基の中でも、オレイルが好ましい。
【0027】
炭素数が少なくとも4である2−ヒドロキシアルキル基としては、例えば、2−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシペンチル、2−ヒドロキシヘキシル、2−ヒドロキシヘプチル、2−ヒドロキシオクチル、2−ヒドロキシノニル、2−ヒドロキシデシル、2−ヒドロキシドデシル、2−ヒドロキシテトラデシル、2−ヒドロキシヘキサデシル、2−ヒドロキシオクタデシル、2−ヒドロキシエイコシル等が挙げられる。これらの2−ヒドロキシアルキル基の中でも、炭素数6〜22の2−ヒドロキシアルキル基が好ましく、炭素数8〜18の2−ヒドロキシアルキル基が更に好ましく、炭素数10〜16の2−ヒドロキシアルキル基が最も好ましい。
【0028】
一般式(1)において、R2は炭素数1〜12の炭化水素基を表わす。このような炭化水素基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ドデセン、ウンデセン、シクロヘキセン、1,4−ビス(メチレン)シクロヘキサン、フェニレン、ナフチレン等が挙げられる。これらの中で、原料の入手のし易さから、R2としては炭素数2〜6のアルキレン基が好ましい。
【0029】
一般式(1)において、X1〜X3はそれぞれ水素原子、炭素数1〜36の炭化水素基又は炭素数2〜36の2−ヒドロキシアルキル基を表わし、aは0又は1の数を表わす。炭素数1〜36の炭化水素基としては、R1で挙げた炭素数が4〜36のアルキル基、アルケニル基及び2−ヒドロキシアルキル基の他に、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル等のアルキル基;ビニル、プロペニル、イソプロペニル等のアルケニル基;2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基等の2−ヒドロキシアルキル基;フェニル、トルイル、キシリル、クメニル、メシチル、ベンジル、フェネチル、スチリル、シンナミル、ベンズヒドリル、トリチル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ブチルフェニル、ペンチルフェニル、ヘキシルフェニル、ヘプチルフェニル、オクチルフェニル、ノニルフェニル、デシルフェニル、ウンデシルフェニル、ドデシルフェニル、スチレン化フェニル、p−クミルフェニル、フェニルフェニル、ベンジルフェニル、α−ナフチル、β−ナフチル基等のアリール基:シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、メチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、メチルシクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、メチルシクロペンテニル、メチルシクロヘキセニル、メチルシクロヘプテニル基等のシクロアルキル基又はシクロアルケニル基が挙げられる。
【0030】
6価のモリブデン原子を含有する化合物としては、例えば、三酸化モリブデン又はその水和物(MoO3・nH2O)、モリブデン酸(H2MoO4)、モリブデン酸アルカリ金属塩(M2MoO4)、モリブデン酸アンモニウム((NH4)2MoO4又は(NH4)6[Mo7O24]・4H2O)、MoOCl4、MoO2Cl2、MoO2Br2、Mo2O3Cl6等が挙げられるが、入手しやすい三酸化モリブデン又はその水和物、モリブデン酸、モリブデン酸アルカリ金属塩、モリブデン酸アンモニウム等が好ましい。
【0031】
一般式(2)〜(5)において、Rはそれぞれ炭素数1〜36のアルキル基又はアルケニル基を表わす。このようなアルキル基又はアルケニル基としては、一般式(1)のR1及びX1〜X3で挙げた炭素数1〜36のアルキル基又はアルケニル基を挙げることができる。一般式(2)及び(3)には、分子内にRが4つあるが、これらは同一の基でも、それぞれ異なる基でもよい。
【0032】
また、一般式(2)及び(3)において、Xはそれぞれ酸素原子又は硫黄原子を表わす。4つのXが、全て酸素原子又は硫黄原子であってもよいが、潤滑性を考慮した場合、酸素原子/硫黄原子の存在比が1/3〜3/1(個)であることが好ましい。
【0033】
なお、一般式(1)で表わされるアミンと6価のモリブデン原子を有する化合物との反応物は、特開昭61−285293号公報、特開2001−164281号公報、特開2002−249795号公報等に記載の製造方法により得ることができる。一般式(2)で表わされる硫化オキシモリブデンジチオカーバメートは、特開昭52−19629号公報、特開平8−217782号公報、特開平10−17586号公報等に記載の製造方法により得ることができる。一般式(3)で表わされる硫化オキシモリブデンジチオフォスフェートは、特開昭61−87690号公報、特開昭61−106587号公報、特開平11−302294号公報等に記載の製造方法により得ることができる。一般式(4)で表わされるモリブデンのカルボン酸ジエタノールアミド錯体及び一般式(5)で表わされるモリブデンのグリセリンモノカルボン酸エステル錯体は、特開昭62−108891号公報等に記載の製造方法により得ることができる。
【0034】
本発明の潤滑油組成物中の(A)成分の含量は、潤滑油が使用される用途によっても異なるが、組成物全体に対するモリブデン原子の含量で、0.01〜2質量%が好ましく、0.05〜1質量%がより好ましく、0.2〜0.6質量%が最も好ましい。
【0035】
次に、本発明の(B)成分である活性硫黄化合物について説明する。本発明において、活性硫黄化合物とは、硫黄原子を含有し金属原子及びリン原子を含有しない化合物のうち、硫黄含量が1質量%になるように精製鉱油で希釈したものについて、JIS K2513(石油製品―銅板腐食試験方法;試験管法、100℃で1時間加熱)に準じて測定した銅板腐食が2〜4であるものをいう。なお、硫黄原子を含有し金属原子及びリン原子を含有しない化合物のうち、上記の試験法で、銅板腐食が1であるものを不活性硫黄化合物という。
【0036】
活性硫黄化合物としては、例えば、硫化油脂、オレフィンポリサルファイド、ジアルキルポリサルファイド等が挙げられる。
【0037】
硫化油脂は、動植物油若しくはその誘導体及びテルペン類の硫化物である。硫化油脂としては、例えば、硫化ラード、硫化鯨油、硫化大豆油、硫化なたね油、硫化ひまし油、硫化オレイン酸、硫化オレイン酸メチル、硫化オレイン酸ブチル、硫化ピネン油等が挙げられる。硫化油脂としては、硫黄分を5〜30重量%含有するものが基油及び(A)成分との相溶性、保存安定性等が良好であることから好ましい。
【0038】
オレフィンポリサルファイドは、炭素数3〜20のオレフィン又はその2〜4量体と硫化剤とを反応させることによって得られる化合物である。炭素数3〜20のオレフィンとしては、プロピレン、イソブテン及びこれらのオリゴマーが好ましく用いられる。また、硫化剤としては、例えば、硫黄,塩化硫黄,ハロゲン化硫黄などが挙げられる。上記反応によって得られるオレフィンポリサルファイドの硫黄含有量としては、10〜50質量%のものが、基油及び(A)成分との相溶性、保存安定性等が良好であることから好ましい。
【0039】
ジアルキルポリサルファイドは、下記の一般式(6)で表わされる化合物である。
【0040】
R−Sx−R (6)
一般式(6)において、Rはそれぞれ炭素数1〜20の炭化水素基を表わし、xは2〜8の数を表わす。炭化水素基は、アルキル基に限定されず、シクロアルキル基又はアリール基でもよい。ジアルキルポリサルファイドとしては、硫黄含有量としては、10〜50質量%のものが、基油及び(A)成分との相溶性、保存安定性等が良好であることから好ましい。
【0041】
なお、これらの活性硫黄化合物と、原料や硫黄含量が近似していても、製造条件等により、不活性硫黄化合物である場合がある。
【0042】
活性硫黄化合物の中でも、活性硫黄率が20〜70質量%である硫化油脂及び活性硫黄率が30〜100質量%であるオレフィンポリサルファイド若しくはジアルキルポリサルファイドが好ましく、活性硫黄率が25〜65質量%である硫化油脂及び活性硫黄率が40〜100質量%であるオレフィンポリサルファイド若しくはジアルキルポリサルファイドが更に好ましく、活性硫黄率が60〜98質量%であるオレフィンポリサルファイド若しくはジアルキルポリサルファイドが最も好ましい。全硫黄含量に対する活性硫黄の比率が、この範囲以外の場合には、十分な極圧性が得られなかったり、保存安定性が不充分なる場合があるからである。なお、本発明において、活性硫黄率とは、硫黄化合物中の全硫黄含量に対する活性硫黄含量の質量比を100分率で表わしたものである。活性硫黄含量は、ASTM D1662−69に準拠し、硫黄化合物に銅粉を添加し、150℃で1時間加熱攪拌した後の銅粉の重量増から求めることができる。
【0043】
本発明の潤滑油組成物中の(B)成分の含量は、組成物全体に対する(B)成分由来の硫黄原子の含量で、0.005〜4質量%が好ましく、0.02〜2質量%がより好ましく、0.2〜1量%が最も好ましい。また、(A)成分に対する(B)成分の比率は、(A)成分に由来するモリブデン100質量部に対して、(B)成分に由来する硫黄含量が20〜200質量部であることが好ましく、40〜150質量部であることが更に好ましく、50〜120質量部であることが最も好ましい。
【0044】
本発明の潤滑油組成物に使用される基油は、鉱油、合成油又は油脂であり、これらの混合物からなる基油でもよい。
【0045】
鉱油は、天然の原油から分離されるものであり、これを適当に蒸留、精製等を行って製造される。鉱油の主成分は炭化水素(多くはパラフィン類である)であり、その他ナフテン分、芳香族分等を含有している。これらを水素化精製、溶剤脱れき、溶剤抽出、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化分解、硫酸洗浄、白土処理等の精製を行うと、芳香族分、硫黄分、窒素分等を除去することが可能である。
【0046】
又、合成油とは、化学的に合成された潤滑油であって、例えばポリ−α−オレフィン、ポリイソブチレン(ポリブテン)、ジエステル、ポリオールエステル、リン酸エステル、ケイ酸エステル、ポリアルキレングリコール、ポリフェニルエーテル、シリコーン、フッ素化化合物、アルキルベンゼン等が挙げられる。これらの中でも、ポリ−α−オレフィン、ポリイソブチレン(ポリブテン)、ジエステル、ポリオールエステル等は汎用的に使用することができる。
【0047】
ポリ−α−オレフィンとしては例えば、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン等をポリマー化又はオリゴマー化したもの或いはこれらを水素化したもの等が挙げられる。ジエステルとしては例えば、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の2塩基酸と、2−エチルヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、トリデカノール等のアルコールのジエステル等が挙げられる。ポリオールエステルとしては例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等のポリオールと、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸とのエステル等が挙げられる。
【0048】
油脂としては、例えば、ヒマシ油、オリーブ油、カカオ脂、ゴマ油、コメヌカ油、サフラワー油、大豆油、ツバキ油、コーン油、ナタネ油、パーム油、パーム核油、ひまし油、ひまわり油、綿実油、ヤシ油等の植物性油脂、牛脂、豚脂、乳脂、魚油、鯨油等の動物性油脂が挙げられる。
【0049】
本発明の潤滑油組成物は、(A)成分の種類によっては長期間保存中に(A)成分が沈殿分離を起す場合がある。このため、本発明の潤滑油組成物は、更に(C)成分として無灰分散剤を含有することが好ましい。無灰分散剤はとしては、例えば、コハク酸イミド、ベンジルアミン、コハク酸エステル又はこれらのホウ素変性物等が挙げられる。コハク酸イミドとしては、例えば、分子量300〜4,000程度のポリブテニル基等のポリアルケニル基を有するコハク酸と、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のポリエチレンポリアミンのモノイミド又はビスイミド、若しくはこれらのホウ酸変性物;ポリアルケニル基を有するフェノールとホルムアルデヒドとポリエチレンポリアミンのマンニッヒ反応物等が挙げられる。これらの無灰分散剤のうちで、好ましいものはコハク酸イミド又はそのホウ素変性物である。(C)成分の配合量は、組成物全体に対して0.01〜10質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%であることが更に好ましく、0.1〜3質量%であることが最も好ましい。
【0050】
また、本発明の潤滑油組成物の潤滑性を更に向上させるには、更に(D)成分として金属清浄剤を含有することが好ましい。金属清浄剤としては、例えば、、金属フェネート、金属サリシレート、金属ホスホネート等が挙げられる。金属スルホネートとしては、例えば、(モノ又はジ)アルキルベンゼンスルホン酸金属塩、(モノ又はジ)アルキルナフタレンスルホン酸金属塩、石油スルホン酸金属塩等が挙げられる。金属フェネートとしては、例えば、(モノ又はジ)アルキルフェノール金属塩、チオビス{(モノ又はジ)アルキルフェノール}金属塩、メチレンビス{(モノ又はジ)アルキルフェノール}金属塩等が挙げられる。金属サリシレートとしては、例えば、(モノ又はジ)アルキルサリチル酸金属塩、チオビス{(モノ又はジ)アルキルサリチル酸}金属塩、メチレンビス{(モノ又はジ)アルキルサリチル酸}金属塩等が挙げられる。また、金属原子としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属が好ましく、カルシウム、マグネシウム、バリウムがより好ましい。これらの金属清浄剤のうちで、好ましいものは金属スルホネートであり、更に好ましくはカルシウムスルホネートである。なお、上記の化合物は一般に中性塩であるが、金属清浄剤としては、中性塩の他に、金属酸化物、金属炭酸塩等の塩基性物質を含有するものもある。このような塩基性物質を含有する金属清浄剤のうち、全塩基価(TBN)が、100〜500mgKOH/g程度であるものを、塩基性又は過塩基性の金属清浄剤という場合がある。特に、全塩基価が200〜400mgKOH/gであるものが好ましい。(D)成分の配合量は、組成物全体に対して0.01〜10質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%であることが更に好ましく、0.1〜3質量%であることが最も好ましい。
【0051】
本発明の潤滑油組成物は、塩素を含まない潤滑油添加剤であれば、更に、他の潤滑油添加剤を含有しても良い。このような潤滑油添加剤としては、例えば、リンを含有する化合物、不活性硫黄化合物、油性向上剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、固体潤滑剤、増稠剤、防錆剤、消泡剤、着色剤等が挙げられる。
【0052】
リン原子を含有する化合物としては、例えば、リン酸エステル、亜リン酸エステル、チオリン酸エステル、ジアルキルポリチオフォスフェート、亜鉛ジチオフォスフェート等が挙げられる。リン酸エステルには、リン酸トリエステル、リン酸ジエステル及びリン酸モノエステルが挙げられる。リン酸エステルのうち、リン酸トリエステル又はリン酸ジエステルは酸性リン酸エステルと呼ばれ、アルカリ金属又はアミン等の塩基で中和して使用してもよい。
【0053】
不活性硫黄化合物としては、前記硫黄原子を含有し金属原子及びリン原子を含有しない化合物のうち銅板腐食が1であるものの他に、例えば、チウラムジスルフィド、ジチオカルバミン酸エステル等が挙げられる。
【0054】
油性向上剤としては、ステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸;大豆油、ナタネ油、パーム油、ひまし油、ヤシ油、牛脂、豚脂等の油脂或はこれらの水素化物又は部分ケン化物;ダイマー酸、トリマー酸等の多塩基酸;リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシ脂肪酸の重縮合物又は該重縮合物と脂肪酸とのエステル;ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール;ラウリルアミン、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン等の高級アミン及びそのアルキレンオキサイド付加物;ラウリルアミド、ミリスチルアミド、パルミチルアミド、オレイルアミド等の脂肪酸アミド;ラウリルジエタノールアミド、ステアリルジエタノールアミド、オレイルジエタノールアミド等の脂肪酸ジエタノールアミド;グリセリン、ジグリセリン、ソルビタン等の多価アルコールの部分脂肪酸エステル;(ポリ)グリセリンモノステアリルエーテル、(ポリ)グリセリンモノオレイルエーテル等の(ポリ)グリセリンモノアルキルエーテル等が挙げられる。
【0055】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等が挙げられる。
【0056】
金属不活性化剤としては、例えば、N,N’−サリチリデン−1,2−プロパンジアミン、アリザリン、テトラアルキルチウラムジサルファイド、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、2−アルキルジチオベンゾイミダゾール、2−アルキルジチオベンゾチアゾール、2−(N,N−ジアルキルジチオカルバモイル)ベンゾチアゾール、2,5−ビス(アルキルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(N,N−ジアルキルジチオカルバモイル)−1,3,4−チアジアゾール等が挙げられる。
【0057】
固体潤滑剤としては、例えば、グラファイト、二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン、脂肪酸アルカリ土類金属塩、雲母、二塩化カドミウム、二ヨウ化カドミウム、フッ化カルシウム、ヨウ化鉛、酸化鉛、チタンカーバイド、窒化チタン、珪酸アルミニウム、酸化アンチモン、フッ化セリウム、ポリエチレン、ダイアモンド粉末、窒化ケイ素、窒化ホウ素フッ化炭素、メラミンイソシアヌレート等が挙げられる。
【0058】
増稠剤は、本発明の潤滑油組成物をグリースとして使用する場合に配合される成分である。増稠剤としては、例えば、ステアリン酸リチウム石鹸、12−ヒドロキシステアリン酸リチウム石鹸等の石鹸系増稠剤;ウレア系増稠剤、テレフタレメート系増稠剤等が挙げられる。
【0059】
本発明の潤滑油組成物の動粘度は特に限定されないが、40℃で1〜2000mm2/sであることが好ましい。特に、本発明の潤滑油組成物を金属加工油として塑性加工に用いる場合は40℃で5〜500mm2/sであることが好ましく、10〜300mm2/sであることが更に好ましく、20〜200mm2/sであることが最も好ましい。本発明の潤滑油組成物を金属加工油として切削加工又研削加工に用いる場合は、40℃で5〜200mm2/sであることが好ましく、10〜100mm2/sであることが更に好ましく、20〜60mm2/sであることが最も好ましい。また、本発明の潤滑油をギア油として用いる場合は40℃で20〜800mm2/sであることが好ましく、40〜600mm2/sであることが更に好ましく、60〜500mm2/sであることが最も好ましい。
【0060】
本発明の潤滑油組成物は、工業用潤滑油、タービン油、マシン油、軸受油、圧縮機油、油圧油、作動油、内燃機関油、冷凍機油、ギヤ油、自動変速機用油(ATF)、連続可変無段変速機用油(CVTF)、トランスアクスル流体、金属加工油等の、あらゆる用途の潤滑油に使用することができる。特に好ましく使用できる用途は、金属の塑性加工、切削加工、研磨加工等に用いられる金属加工油である。金属の塑性加工としては、例えば、伸線加工、圧延加工、鍛造加工、プレス加工、押し出し加工、曲げ加工、絞り加工、張出し加工、しごき加工、ロール成形、剪断加工、回転加工、延ばし加工、引き抜き加工、施圧加工が挙げられる。切削加工としては、旋盤加工、穴開け加工(ドリル加工)、リーマ加工、タップ加工、中ぐり加工、面削り、5面加工、フライス加工(ミーリング)、ブローチ加工、タップ加工、スロッター加工(立て削り盤加工)、平削り(プレーナー仕上げ)、リーマ加工、エンドミル加工等が挙げられる。また、研削加工としては、平面研削、円筒研削(トラバース研削、プランジ研削、アンギュラ研削等)、センターレス研削、内面研削(内径研削)等が挙げられる。
本発明の潤滑油組成物は、これらの金属加工の中でも、切削加工に好適に用いられ、特にブローチ加工、タップ加工、リーマ加工、シェービング加工等の難加工に好適に用いられる。
【0061】
本発明の潤滑油組成物を金属加工油として用いる場合、対象となる金属材料の種類は、特に限定されないが、本発明の潤滑油組成物が優れた極圧性を有することから、特に難加工性金属材料に好適に使用される。難加工性金属材料としては、例えば、炭素工具鋼、クロム鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、オーステナイト系ステンレス、フェライト系ステンレス、マルテンサイト系ステンレス、合金工具鋼、チタン合金、耐熱鋼、高マンガン鋼、高張力鋼等が挙げられる。
【0062】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。尚、以下の実施例中、%は特に記載が無い限り質量基準である。
【0063】
下記の基油及び添加剤を用いて、表1又は表2に示す配合にて実施例1〜17及び比較例1〜24の各潤滑油組成物を調製した。また、表3及び表4に、実施例1〜17又は比較例1〜24の各潤滑油組成物中の、(A)成分に由来するモリブデン含量、(B)成分に由来する硫黄含量、及び(B)成分由来の硫黄とモリブデンとの重量比を示す。
<基油>
40℃の動粘度が20mm2/sであるパラフィン系精製鉱油
(A)成分:有機モリブデン化合物
<A−1>
特開昭61−285293号公報の実施例1に記載の方法に準じ、ジトリデシルアミン2モルと三酸化モリブデン1モルとを反応して得られたモリブデンとアミン化合物との反応物。(モリブデン含量11質量%)
<A−2>
特開2001−164281号公報に記載の方法に準じ、N−ドデシルエタノールアミン2モルと三酸化モリブデン1モルとを反応して得られたモリブデンとアミン化合物との反応物。(モリブデン含量15質量%)
<A−3>
下記の方法により得られたモリブデンとアミン化合物との反応物。(モリブデ含量18質量%)
製造方法:反応容器に、三酸化モリブデン1モル及び水30モルを仕込み、50〜60℃で攪拌しながらジトリデシルアミン0.9モルを1時間かけて滴下し、更に同温度で1時間攪拌した後、攪拌を停止して静置した。分離した水層を除去した後、油層を100℃で1.4kPa以下に減圧して水分を除去して、淡青色オイル状のモリブデンアミン化合物を得た。
<A−4>
一般式(2)において、Rがオクチル基とトリデシル基の混合アルキル基であり、Xの酸素原子/硫黄原子の比が2.1/1.9である硫化オキシモリブデンジチオカーバメート。(モリブデン含量18質量%)
<A−5>
一般式(3)において、Rがオクチル基であり、Xの酸素原子/硫黄原子の比が2.1/1.9である硫化オキシモリブデンジチオフォスフェート。(モリブデン含量18質量%)
<A−6>
特開昭62−108891号公報の例Vに記載の方法に準じ、ヤシ油1モル、ジエタノールアミン1.8モル及び三酸化モリブデン1.3モルを用いて得られたモリブデンのカルボン酸ジエタノールアミド錯体及びモリブデンのグリセリンモノカルボン酸エステル錯体の混合物。(モリブデン含量6質量%)
(B)成分:活性硫黄化合物
<B−1>
硫化ラード(硫黄含量15質量%、活性硫黄率33質量%、銅板腐食4)
<B−2>
硫化脂肪酸エステル(硫黄含量18質量%、活性硫黄率54質量%、銅板腐食4)
<B−3>
硫化ヘキサデセン/オクタデセン混合物(硫黄含量21質量%、活性硫黄率55質量%、銅板腐食4)
<B−4>
硫化オクテン(硫黄含量39質量%、活性硫黄率97質量%、銅板腐食4)
<B−5>
ジドデシルポリスルフィド(硫黄含量30質量%、活性硫黄率67質量%、銅板腐食4)
<B−6>
硫化イソブテン(硫黄含量48質量%、活性硫黄率92質量%、銅板腐食3)
(C)成分:無灰分散剤
<C−1>
モノ型ポリブテニルコハク酸イミド(分子量1000、窒素含量2.1重量%)
<C―2>
ビス型ポリブテニルコハク酸イミド(分子量2000、窒素含量1.1重量%)
なお、分子量は、GPC分析によるスチレン換算の重量平均分子量である。
(D)成分:金属清浄剤
<D−1>
カルシウムスルホネート (全塩基価280mgKOH/g)
<D−2>
マグネシウムスルホネート (全塩基価60mgKOH/g)
(E)成分:不活性硫黄化合物又は塩素含有化合物(比較用)
<E−1>
硫化ラード(硫黄含量11質量%、活性硫黄率15質量%、銅板腐食1)
<E−2>
硫化脂肪酸エステル(硫黄含量10質量%、活性硫黄率19質量%、銅板腐食1)
<E−3>
ジドデシルポリスルフィド(硫黄含量29質量%、活性硫黄率68質量%、銅板腐食1)
<E−4>
メチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)(硫黄含量30質量%、銅板腐食1)
<E−5>
亜鉛ジドデシルジチオフォスフェート(硫黄含量13質量%、銅板腐食1)
<E−6>
塩素化パラフィン(塩素含量50質量%)
【0064】
【表1】
表1
【0065】
【表2】
表2
【0066】
【表3】
表3
*1:B成分由来の硫黄の含量。
*2:B成分由来の硫黄と、モリブデンとの重量比。
【0067】
【表4】
表4
*3:B成分由来の硫黄の含量。( )内はE成分由来の硫黄の含量。
*4:B成分若しくはE成分由来の硫黄と、モリブデンの重量比
【0068】
実施例1〜17及び比較例1〜24の各潤滑油組成物について、下記に示す試験方法にて、耐荷重能試験、ボール通し試験及びブローチ加工試験を行なった。結果を表5及び表6に示す。
<耐荷重能試験>
ASTM D−2783−82に準拠し、耐荷重能の評価試験を行なった。すなわち、試験球を所定の位置にセットし、試験油をカップに満たし、所定の荷重をレバーにより負荷した後、スタートし、所定時間(10秒とした)における溶着焼き付きの有無を調べ、溶着を起こさなかった最大荷重を耐荷重能とした。なお、試験は各回毎に試験球、試験油を換え、荷重を換えて行った。測定条件の詳細は以下のとおりである。
試験機:シェル式高速4級試験機
縦軸回転数:1800rpm
摩擦速度 :56cm/秒
測定温度 :室温
試験鋼球 :玉軸受用鋼球(直径12.7mm、材質SUJ2軸受鋼)
負荷方法 :レバー式ショック荷重 同一方向(10秒間)
<ボール通し試験>
プレス機を用いて下記の条件にてボール通し試験を行ない、最大押込み荷重及び焼付きまでの距離を測定し、潤滑性及び耐焼付き性を評価した。本試験では、円筒状の試験片の内孔に鋼球を押込み、鋼球が試験片に最初に接触した部位から焼付きが発生した部位までの距離を焼付きまでの距離とした。なお、最大押込み荷重が小さいほど潤滑性が良好であり、焼付きまでの距離が大きいほど耐焼付き性が良好であることを示す。
試験機:プレス機
鋼球:軸受鋼球(材質SUJ2、直径17.46mm)
試験片:材質S10C、内径15.0mm、外径29.9mm、長さ50mm、内側ストローク(鋼球が接触する距離):40mm
試験片断面積の減少率:12%
鋼球押込み速度:鋼球押込み開始時:0.46m/秒
鋼球押込み中:0.26m/秒
<ブローチ加工試験>
下記の条件でブローチ加工を行ない、加工面の表面粗さ(Rz:10点平均粗さ)を測定した。表面粗さの小さいものほど、加工精度が高いことを表わす。
試験機:高速ブローチ加工機(不二越社製)
工具:6枚刃サーフェスブローチ(材質SKH55)
切削速度:60mm/秒
切り込み:0.08mm/刃
被削材:オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)
評価機器:表面粗さ測定機(小坂製作所製、型式SE30D)
【0069】
【表5】
表5
【0070】
【表6】
表6
【0071】
上記の結果より、本発明の潤滑油組成物である実施例1〜17はいずれも、塩素化合物を含有しない比較例1〜22よりも、耐荷重能、潤滑性、耐焼付き性及び加工精度が優れており、塩素系極圧剤である塩素化パラフィンを含有する比較例23及び24と同等又はそれ以上の性能を有していることがわかる。これは、本発明の潤滑油組成物が優れた極圧性を有しており、塩素系極圧剤を含有する金属加工油の代替として難加工性金属材料の難加工に使用できることを示すものである。
【0072】
【発明の効果】
本発明によれば、毒性及び発ガン性の懸念や、焼却処理時の有害物質の発生による環境公害や焼却炉の損傷の問題のある塩素系極圧剤を使用しなくとも、難加工性金属材料の難加工が可能な潤滑油が提供できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、塩素系極圧剤等の塩素原子を有する化合物が含まれていない潤滑油組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
切削、研削、引き抜き、伸線、プレス等のいわゆる金属加工に用いられる潤滑油は、動植物性油脂、鉱油、合成油あるいはこれらの混合物を基油とし、これに油性剤、極圧剤、防錆剤、酸化防止剤等を加えて使用されている。特に、技術水準の高度化に伴い、各種加工機械類の大型化、精密化ならびに金属材料の硬度の上昇、加工条件の高速高圧力化、更には製品仕上げ面の精密化等のように、加工条件がますます苛酷になっており、より一層の極圧性が必要とされている。この問題を解決するため、従来は、塩素化パラフィン、塩素化脂肪酸、塩素化脂肪酸エステル等の塩素系極圧剤が使用されていた。
【0003】
しかしながら、近年では塩素系極圧剤が配合された金属加工油を使用した場合、焼却処理時の有害物質の発生による環境公害や焼却炉の損傷の問題を指摘されている。また、塩素系極圧剤のうち一部の塩素化パラフィンでは、毒性及び発ガン性の可能性についての懸念もある。このため、金属加工油においては、塩素系極圧剤を含有しない潤滑油が求められている。塩素系極圧剤を含有しない金属加工油としては、基油に有機モリブデン化合物及び硫黄化合物を配合した金属加工油(例えば、特許文献1〜4等を参照)、活性硫黄化合物を含有する金属加工油(例えば、特許文献5及び6を参照)等が知られているが、有機モリブデン化合物及び活性硫黄化合物を含有する潤滑油は知られていなかった。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−118682号公報
【特許文献2】
特開平7−233388号公報
【特許文献3】
特開平10−88170号公報
【特許文献4】
国際特許WO96/33253号公開公報
【特許文献5】
特開平8−20790号公報
【特許文献6】
特開平10−204470号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、塩素を含有しない極圧剤は、塩素系極圧剤に比べて極圧性が不充分である。このため、従来知られていた、塩素系極圧剤を含有しない金属加工油は、炭素鋼、クロム鋼等の易削材の加工や、旋盤加工、塑性加工等の比較的容易な加工には、塩素系極圧剤を含有する金属加工油と同様に使用できるが、ステンレス等の難加工性金属材料(難削材とも言う)についてブローチ加工等のような難加工を行なう場合には使用することができず、難加工性金属材料の難加工には塩素系極圧剤を含有する金属加工油を使用せざるを得なかった。
【0006】
従って、本発明の目的は、難加工性金属材料の難加工にも使用できる塩素系極圧剤を含有しない金属加工油を提供することにある。
【0007】
【課題を解決する手段】
そこで本発明者等は鋭意検討し、有機モリブデン化合物と特定の硫黄化合物とを配合することにより、塩素系極圧剤と同等の極圧性を有する金属加工油が得られることを見出し本発明を完成するに至った。即ち本発明は、鉱油、合成油又は油脂を基油とし、塩素原子を有する化合物が含まれていない潤滑油組成物において、(A)成分として、有機モリブデン化合物、(B)成分として、活性硫黄化合物を含有することを特徴とする潤滑油組成物である。
【0008】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の(A)成分である有機モリブデン化合物について説明する。本発明において、有機モリブデン化合物とは、2,2,4−トリメチルペンタン(イソオクタン)に対して、25℃で、モリブデン原子を基準にして少なくとも200質量ppm溶解するモリブデン化合物を言う。有機モリブデン化合物としては、例えば、モリブデンとアミン化合物との反応物、モリブデンとアルキル(又はアルケニル)コハク酸ポリアミンアミドとの反応物、モリブデンとベンジルアミン(マンニッヒ反応物)との反応物、硫化オキシモリブデンジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジチオフォスフェート、硫化オキシモリブデンジチオフォスフィネート、モノ(又はジ)アルキル(又はアルケニル)フォスフェートのモリブデン塩、硫化オキシモリブデンキサンテート、硫化オキシモリブデンチオキサンテート、モリブデンのカルボン酸ジエタノールアミド錯体、モリブデンのアルカノールアミン錯体、モリブデンのβ−ケトカルボン酸エステル錯体、モリブデンのグリセリンモノカルボン酸エステル錯体、モリブデンのグリセリンモノアルキル(又はアルケニル)エーテル錯体、モリブデンの1,2−ジオール錯体、2,2−メチレンビスフェノール化合物のモリブデン錯体、モリブデンのモノカルボン酸石鹸等が挙げられる。本発明の(A)成分としては、これらの有機モリブデン化合物の単独でもよいし、2種以上の混合物でもよい。
【0009】
これらの有機モリブデン化合物の中でも、モリブデンとアミン化合物との反応物、硫化オキシモリブデンジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジチオフォスフェート、モリブデンのカルボン酸ジエタノールアミド錯体及びモリブデンのグリセリンモノカルボン酸エステル錯体が好ましく、モリブデンとアミン化合物との反応物、硫化オキシモリブデンジチオカーバメート及び硫化オキシモリブデンジチオフォスフェートが更に好ましく、モリブデンとアミン化合物との反応物が最も好ましい。
【0010】
モリブデンとアミン化合物の反応物としては、例えば、下記の一般式(1)
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、R1は炭素数が4〜36のアルキル基、アルケニル基又は2−ヒドロキシアルキル基を表わし、R2は炭素数1〜12の炭化水素基を表わし、X1〜X3はそれぞれ水素原子、炭素数1〜36の炭化水素基又は炭素数2〜36の2−ヒドロキシアルキル基を表わし、aは0又は1の数を表わす。)
で表わされるアミンと6価のモリブデン原子を有する化合物との反応物が挙げられる。
【0013】
硫化オキシモリブデンジチオカーバメートとしては、例えば、下記の一般式(2)
【0014】
【化2】
【0015】
(式中、Rはそれぞれ炭素数1〜36のアルキル基又はアルケニル基を表わし、Xはそれぞれ酸素原子又は硫黄原子を表わす。)
で表わされる化合物が挙げられる。
【0016】
硫化オキシモリブデンジチオホスフェートとしては、例えば、下記の一般式(3)
【0017】
【化3】
【0018】
(式中、Rはそれぞれ炭素数1〜36のアルキル基又はアルケニル基を表わし、Xはそれぞれ酸素原子又は硫黄原子を表わす。)
で表わされる化合物が挙げられる。
【0019】
モリブデンのカルボン酸ジエタノールアミド錯体としては、例えば、下記の一般式(4)
【0020】
【化4】
【0021】
(式中、Rは炭素数1〜36のアルキル基又はアルケニル基を表わす。)
で表わされる化合物が挙げられる。
【0022】
モリブデンのグリセリンモノカルボン酸エステル錯体としては、例えば、下記の一般式(5)
【0023】
【化5】
【0024】
(式中、Rは炭素数1〜36のアルキル基又はアルケニル基を表わす。)
で表わされる化合物が挙げられる。
【0025】
一般式(1)において、R1は炭素数が少なくとも4であるアルキル基、炭素数が少なくとも4であるアルケニル基又は炭素数が少なくとも4である2−ヒドロキシアルキル基を表わす。炭素数が少なくとも4であるアルキル基としては、例えば、ブチル、2級ブチル、イソブチル、ターシャリブチル、ペンチル、2級ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ターシャリペンチル、ヘキシル、2級ヘキシル、ヘプチル、2級ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、2級オクチル、ノニル、2級ノニル、デシル、2級デシル、ウンデシル、2級ウンデシル、ドデシル、2級ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、2級トリデシル、テトラデシル、2級テトラデシル、ヘキサデシル、2級ヘキサデシル、オクタデシル、2級オクタデシル、エイコシル、ドコシル、テトラコシル、トリアコンチル、2−ブチルオクチル、2−ブチルデシル、2−ヘキシルオクチル、2−ヘキシルデシル、2−オクチルデシル、2−ヘキシルドデシル、2−オクチルドデシル、2−デシルテトラデシル、2−ドデシルヘキサデシル、2−ヘキサデシルオクタデシル、2−テトラデシルオクタデシル等が挙げられる。これらのアルキル基の中でも、炭素数6〜22のアルキル基が好ましく、炭素数8〜18のアルキル基が更に好ましく、炭素数10〜16のアルキル基が最も好ましい。
【0026】
炭素数が少なくとも4であるアルケニル基としては例えば、ブテニル、ペンテニル、イソペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、テトラデセニル、オレイル等が挙げられる。これらのアルキル基の中でも、オレイルが好ましい。
【0027】
炭素数が少なくとも4である2−ヒドロキシアルキル基としては、例えば、2−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシペンチル、2−ヒドロキシヘキシル、2−ヒドロキシヘプチル、2−ヒドロキシオクチル、2−ヒドロキシノニル、2−ヒドロキシデシル、2−ヒドロキシドデシル、2−ヒドロキシテトラデシル、2−ヒドロキシヘキサデシル、2−ヒドロキシオクタデシル、2−ヒドロキシエイコシル等が挙げられる。これらの2−ヒドロキシアルキル基の中でも、炭素数6〜22の2−ヒドロキシアルキル基が好ましく、炭素数8〜18の2−ヒドロキシアルキル基が更に好ましく、炭素数10〜16の2−ヒドロキシアルキル基が最も好ましい。
【0028】
一般式(1)において、R2は炭素数1〜12の炭化水素基を表わす。このような炭化水素基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ドデセン、ウンデセン、シクロヘキセン、1,4−ビス(メチレン)シクロヘキサン、フェニレン、ナフチレン等が挙げられる。これらの中で、原料の入手のし易さから、R2としては炭素数2〜6のアルキレン基が好ましい。
【0029】
一般式(1)において、X1〜X3はそれぞれ水素原子、炭素数1〜36の炭化水素基又は炭素数2〜36の2−ヒドロキシアルキル基を表わし、aは0又は1の数を表わす。炭素数1〜36の炭化水素基としては、R1で挙げた炭素数が4〜36のアルキル基、アルケニル基及び2−ヒドロキシアルキル基の他に、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル等のアルキル基;ビニル、プロペニル、イソプロペニル等のアルケニル基;2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基等の2−ヒドロキシアルキル基;フェニル、トルイル、キシリル、クメニル、メシチル、ベンジル、フェネチル、スチリル、シンナミル、ベンズヒドリル、トリチル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ブチルフェニル、ペンチルフェニル、ヘキシルフェニル、ヘプチルフェニル、オクチルフェニル、ノニルフェニル、デシルフェニル、ウンデシルフェニル、ドデシルフェニル、スチレン化フェニル、p−クミルフェニル、フェニルフェニル、ベンジルフェニル、α−ナフチル、β−ナフチル基等のアリール基:シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、メチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、メチルシクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、メチルシクロペンテニル、メチルシクロヘキセニル、メチルシクロヘプテニル基等のシクロアルキル基又はシクロアルケニル基が挙げられる。
【0030】
6価のモリブデン原子を含有する化合物としては、例えば、三酸化モリブデン又はその水和物(MoO3・nH2O)、モリブデン酸(H2MoO4)、モリブデン酸アルカリ金属塩(M2MoO4)、モリブデン酸アンモニウム((NH4)2MoO4又は(NH4)6[Mo7O24]・4H2O)、MoOCl4、MoO2Cl2、MoO2Br2、Mo2O3Cl6等が挙げられるが、入手しやすい三酸化モリブデン又はその水和物、モリブデン酸、モリブデン酸アルカリ金属塩、モリブデン酸アンモニウム等が好ましい。
【0031】
一般式(2)〜(5)において、Rはそれぞれ炭素数1〜36のアルキル基又はアルケニル基を表わす。このようなアルキル基又はアルケニル基としては、一般式(1)のR1及びX1〜X3で挙げた炭素数1〜36のアルキル基又はアルケニル基を挙げることができる。一般式(2)及び(3)には、分子内にRが4つあるが、これらは同一の基でも、それぞれ異なる基でもよい。
【0032】
また、一般式(2)及び(3)において、Xはそれぞれ酸素原子又は硫黄原子を表わす。4つのXが、全て酸素原子又は硫黄原子であってもよいが、潤滑性を考慮した場合、酸素原子/硫黄原子の存在比が1/3〜3/1(個)であることが好ましい。
【0033】
なお、一般式(1)で表わされるアミンと6価のモリブデン原子を有する化合物との反応物は、特開昭61−285293号公報、特開2001−164281号公報、特開2002−249795号公報等に記載の製造方法により得ることができる。一般式(2)で表わされる硫化オキシモリブデンジチオカーバメートは、特開昭52−19629号公報、特開平8−217782号公報、特開平10−17586号公報等に記載の製造方法により得ることができる。一般式(3)で表わされる硫化オキシモリブデンジチオフォスフェートは、特開昭61−87690号公報、特開昭61−106587号公報、特開平11−302294号公報等に記載の製造方法により得ることができる。一般式(4)で表わされるモリブデンのカルボン酸ジエタノールアミド錯体及び一般式(5)で表わされるモリブデンのグリセリンモノカルボン酸エステル錯体は、特開昭62−108891号公報等に記載の製造方法により得ることができる。
【0034】
本発明の潤滑油組成物中の(A)成分の含量は、潤滑油が使用される用途によっても異なるが、組成物全体に対するモリブデン原子の含量で、0.01〜2質量%が好ましく、0.05〜1質量%がより好ましく、0.2〜0.6質量%が最も好ましい。
【0035】
次に、本発明の(B)成分である活性硫黄化合物について説明する。本発明において、活性硫黄化合物とは、硫黄原子を含有し金属原子及びリン原子を含有しない化合物のうち、硫黄含量が1質量%になるように精製鉱油で希釈したものについて、JIS K2513(石油製品―銅板腐食試験方法;試験管法、100℃で1時間加熱)に準じて測定した銅板腐食が2〜4であるものをいう。なお、硫黄原子を含有し金属原子及びリン原子を含有しない化合物のうち、上記の試験法で、銅板腐食が1であるものを不活性硫黄化合物という。
【0036】
活性硫黄化合物としては、例えば、硫化油脂、オレフィンポリサルファイド、ジアルキルポリサルファイド等が挙げられる。
【0037】
硫化油脂は、動植物油若しくはその誘導体及びテルペン類の硫化物である。硫化油脂としては、例えば、硫化ラード、硫化鯨油、硫化大豆油、硫化なたね油、硫化ひまし油、硫化オレイン酸、硫化オレイン酸メチル、硫化オレイン酸ブチル、硫化ピネン油等が挙げられる。硫化油脂としては、硫黄分を5〜30重量%含有するものが基油及び(A)成分との相溶性、保存安定性等が良好であることから好ましい。
【0038】
オレフィンポリサルファイドは、炭素数3〜20のオレフィン又はその2〜4量体と硫化剤とを反応させることによって得られる化合物である。炭素数3〜20のオレフィンとしては、プロピレン、イソブテン及びこれらのオリゴマーが好ましく用いられる。また、硫化剤としては、例えば、硫黄,塩化硫黄,ハロゲン化硫黄などが挙げられる。上記反応によって得られるオレフィンポリサルファイドの硫黄含有量としては、10〜50質量%のものが、基油及び(A)成分との相溶性、保存安定性等が良好であることから好ましい。
【0039】
ジアルキルポリサルファイドは、下記の一般式(6)で表わされる化合物である。
【0040】
R−Sx−R (6)
一般式(6)において、Rはそれぞれ炭素数1〜20の炭化水素基を表わし、xは2〜8の数を表わす。炭化水素基は、アルキル基に限定されず、シクロアルキル基又はアリール基でもよい。ジアルキルポリサルファイドとしては、硫黄含有量としては、10〜50質量%のものが、基油及び(A)成分との相溶性、保存安定性等が良好であることから好ましい。
【0041】
なお、これらの活性硫黄化合物と、原料や硫黄含量が近似していても、製造条件等により、不活性硫黄化合物である場合がある。
【0042】
活性硫黄化合物の中でも、活性硫黄率が20〜70質量%である硫化油脂及び活性硫黄率が30〜100質量%であるオレフィンポリサルファイド若しくはジアルキルポリサルファイドが好ましく、活性硫黄率が25〜65質量%である硫化油脂及び活性硫黄率が40〜100質量%であるオレフィンポリサルファイド若しくはジアルキルポリサルファイドが更に好ましく、活性硫黄率が60〜98質量%であるオレフィンポリサルファイド若しくはジアルキルポリサルファイドが最も好ましい。全硫黄含量に対する活性硫黄の比率が、この範囲以外の場合には、十分な極圧性が得られなかったり、保存安定性が不充分なる場合があるからである。なお、本発明において、活性硫黄率とは、硫黄化合物中の全硫黄含量に対する活性硫黄含量の質量比を100分率で表わしたものである。活性硫黄含量は、ASTM D1662−69に準拠し、硫黄化合物に銅粉を添加し、150℃で1時間加熱攪拌した後の銅粉の重量増から求めることができる。
【0043】
本発明の潤滑油組成物中の(B)成分の含量は、組成物全体に対する(B)成分由来の硫黄原子の含量で、0.005〜4質量%が好ましく、0.02〜2質量%がより好ましく、0.2〜1量%が最も好ましい。また、(A)成分に対する(B)成分の比率は、(A)成分に由来するモリブデン100質量部に対して、(B)成分に由来する硫黄含量が20〜200質量部であることが好ましく、40〜150質量部であることが更に好ましく、50〜120質量部であることが最も好ましい。
【0044】
本発明の潤滑油組成物に使用される基油は、鉱油、合成油又は油脂であり、これらの混合物からなる基油でもよい。
【0045】
鉱油は、天然の原油から分離されるものであり、これを適当に蒸留、精製等を行って製造される。鉱油の主成分は炭化水素(多くはパラフィン類である)であり、その他ナフテン分、芳香族分等を含有している。これらを水素化精製、溶剤脱れき、溶剤抽出、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化分解、硫酸洗浄、白土処理等の精製を行うと、芳香族分、硫黄分、窒素分等を除去することが可能である。
【0046】
又、合成油とは、化学的に合成された潤滑油であって、例えばポリ−α−オレフィン、ポリイソブチレン(ポリブテン)、ジエステル、ポリオールエステル、リン酸エステル、ケイ酸エステル、ポリアルキレングリコール、ポリフェニルエーテル、シリコーン、フッ素化化合物、アルキルベンゼン等が挙げられる。これらの中でも、ポリ−α−オレフィン、ポリイソブチレン(ポリブテン)、ジエステル、ポリオールエステル等は汎用的に使用することができる。
【0047】
ポリ−α−オレフィンとしては例えば、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン等をポリマー化又はオリゴマー化したもの或いはこれらを水素化したもの等が挙げられる。ジエステルとしては例えば、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の2塩基酸と、2−エチルヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、トリデカノール等のアルコールのジエステル等が挙げられる。ポリオールエステルとしては例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等のポリオールと、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸とのエステル等が挙げられる。
【0048】
油脂としては、例えば、ヒマシ油、オリーブ油、カカオ脂、ゴマ油、コメヌカ油、サフラワー油、大豆油、ツバキ油、コーン油、ナタネ油、パーム油、パーム核油、ひまし油、ひまわり油、綿実油、ヤシ油等の植物性油脂、牛脂、豚脂、乳脂、魚油、鯨油等の動物性油脂が挙げられる。
【0049】
本発明の潤滑油組成物は、(A)成分の種類によっては長期間保存中に(A)成分が沈殿分離を起す場合がある。このため、本発明の潤滑油組成物は、更に(C)成分として無灰分散剤を含有することが好ましい。無灰分散剤はとしては、例えば、コハク酸イミド、ベンジルアミン、コハク酸エステル又はこれらのホウ素変性物等が挙げられる。コハク酸イミドとしては、例えば、分子量300〜4,000程度のポリブテニル基等のポリアルケニル基を有するコハク酸と、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のポリエチレンポリアミンのモノイミド又はビスイミド、若しくはこれらのホウ酸変性物;ポリアルケニル基を有するフェノールとホルムアルデヒドとポリエチレンポリアミンのマンニッヒ反応物等が挙げられる。これらの無灰分散剤のうちで、好ましいものはコハク酸イミド又はそのホウ素変性物である。(C)成分の配合量は、組成物全体に対して0.01〜10質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%であることが更に好ましく、0.1〜3質量%であることが最も好ましい。
【0050】
また、本発明の潤滑油組成物の潤滑性を更に向上させるには、更に(D)成分として金属清浄剤を含有することが好ましい。金属清浄剤としては、例えば、、金属フェネート、金属サリシレート、金属ホスホネート等が挙げられる。金属スルホネートとしては、例えば、(モノ又はジ)アルキルベンゼンスルホン酸金属塩、(モノ又はジ)アルキルナフタレンスルホン酸金属塩、石油スルホン酸金属塩等が挙げられる。金属フェネートとしては、例えば、(モノ又はジ)アルキルフェノール金属塩、チオビス{(モノ又はジ)アルキルフェノール}金属塩、メチレンビス{(モノ又はジ)アルキルフェノール}金属塩等が挙げられる。金属サリシレートとしては、例えば、(モノ又はジ)アルキルサリチル酸金属塩、チオビス{(モノ又はジ)アルキルサリチル酸}金属塩、メチレンビス{(モノ又はジ)アルキルサリチル酸}金属塩等が挙げられる。また、金属原子としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属が好ましく、カルシウム、マグネシウム、バリウムがより好ましい。これらの金属清浄剤のうちで、好ましいものは金属スルホネートであり、更に好ましくはカルシウムスルホネートである。なお、上記の化合物は一般に中性塩であるが、金属清浄剤としては、中性塩の他に、金属酸化物、金属炭酸塩等の塩基性物質を含有するものもある。このような塩基性物質を含有する金属清浄剤のうち、全塩基価(TBN)が、100〜500mgKOH/g程度であるものを、塩基性又は過塩基性の金属清浄剤という場合がある。特に、全塩基価が200〜400mgKOH/gであるものが好ましい。(D)成分の配合量は、組成物全体に対して0.01〜10質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%であることが更に好ましく、0.1〜3質量%であることが最も好ましい。
【0051】
本発明の潤滑油組成物は、塩素を含まない潤滑油添加剤であれば、更に、他の潤滑油添加剤を含有しても良い。このような潤滑油添加剤としては、例えば、リンを含有する化合物、不活性硫黄化合物、油性向上剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、固体潤滑剤、増稠剤、防錆剤、消泡剤、着色剤等が挙げられる。
【0052】
リン原子を含有する化合物としては、例えば、リン酸エステル、亜リン酸エステル、チオリン酸エステル、ジアルキルポリチオフォスフェート、亜鉛ジチオフォスフェート等が挙げられる。リン酸エステルには、リン酸トリエステル、リン酸ジエステル及びリン酸モノエステルが挙げられる。リン酸エステルのうち、リン酸トリエステル又はリン酸ジエステルは酸性リン酸エステルと呼ばれ、アルカリ金属又はアミン等の塩基で中和して使用してもよい。
【0053】
不活性硫黄化合物としては、前記硫黄原子を含有し金属原子及びリン原子を含有しない化合物のうち銅板腐食が1であるものの他に、例えば、チウラムジスルフィド、ジチオカルバミン酸エステル等が挙げられる。
【0054】
油性向上剤としては、ステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸;大豆油、ナタネ油、パーム油、ひまし油、ヤシ油、牛脂、豚脂等の油脂或はこれらの水素化物又は部分ケン化物;ダイマー酸、トリマー酸等の多塩基酸;リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシ脂肪酸の重縮合物又は該重縮合物と脂肪酸とのエステル;ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール;ラウリルアミン、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン等の高級アミン及びそのアルキレンオキサイド付加物;ラウリルアミド、ミリスチルアミド、パルミチルアミド、オレイルアミド等の脂肪酸アミド;ラウリルジエタノールアミド、ステアリルジエタノールアミド、オレイルジエタノールアミド等の脂肪酸ジエタノールアミド;グリセリン、ジグリセリン、ソルビタン等の多価アルコールの部分脂肪酸エステル;(ポリ)グリセリンモノステアリルエーテル、(ポリ)グリセリンモノオレイルエーテル等の(ポリ)グリセリンモノアルキルエーテル等が挙げられる。
【0055】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等が挙げられる。
【0056】
金属不活性化剤としては、例えば、N,N’−サリチリデン−1,2−プロパンジアミン、アリザリン、テトラアルキルチウラムジサルファイド、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、2−アルキルジチオベンゾイミダゾール、2−アルキルジチオベンゾチアゾール、2−(N,N−ジアルキルジチオカルバモイル)ベンゾチアゾール、2,5−ビス(アルキルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(N,N−ジアルキルジチオカルバモイル)−1,3,4−チアジアゾール等が挙げられる。
【0057】
固体潤滑剤としては、例えば、グラファイト、二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン、脂肪酸アルカリ土類金属塩、雲母、二塩化カドミウム、二ヨウ化カドミウム、フッ化カルシウム、ヨウ化鉛、酸化鉛、チタンカーバイド、窒化チタン、珪酸アルミニウム、酸化アンチモン、フッ化セリウム、ポリエチレン、ダイアモンド粉末、窒化ケイ素、窒化ホウ素フッ化炭素、メラミンイソシアヌレート等が挙げられる。
【0058】
増稠剤は、本発明の潤滑油組成物をグリースとして使用する場合に配合される成分である。増稠剤としては、例えば、ステアリン酸リチウム石鹸、12−ヒドロキシステアリン酸リチウム石鹸等の石鹸系増稠剤;ウレア系増稠剤、テレフタレメート系増稠剤等が挙げられる。
【0059】
本発明の潤滑油組成物の動粘度は特に限定されないが、40℃で1〜2000mm2/sであることが好ましい。特に、本発明の潤滑油組成物を金属加工油として塑性加工に用いる場合は40℃で5〜500mm2/sであることが好ましく、10〜300mm2/sであることが更に好ましく、20〜200mm2/sであることが最も好ましい。本発明の潤滑油組成物を金属加工油として切削加工又研削加工に用いる場合は、40℃で5〜200mm2/sであることが好ましく、10〜100mm2/sであることが更に好ましく、20〜60mm2/sであることが最も好ましい。また、本発明の潤滑油をギア油として用いる場合は40℃で20〜800mm2/sであることが好ましく、40〜600mm2/sであることが更に好ましく、60〜500mm2/sであることが最も好ましい。
【0060】
本発明の潤滑油組成物は、工業用潤滑油、タービン油、マシン油、軸受油、圧縮機油、油圧油、作動油、内燃機関油、冷凍機油、ギヤ油、自動変速機用油(ATF)、連続可変無段変速機用油(CVTF)、トランスアクスル流体、金属加工油等の、あらゆる用途の潤滑油に使用することができる。特に好ましく使用できる用途は、金属の塑性加工、切削加工、研磨加工等に用いられる金属加工油である。金属の塑性加工としては、例えば、伸線加工、圧延加工、鍛造加工、プレス加工、押し出し加工、曲げ加工、絞り加工、張出し加工、しごき加工、ロール成形、剪断加工、回転加工、延ばし加工、引き抜き加工、施圧加工が挙げられる。切削加工としては、旋盤加工、穴開け加工(ドリル加工)、リーマ加工、タップ加工、中ぐり加工、面削り、5面加工、フライス加工(ミーリング)、ブローチ加工、タップ加工、スロッター加工(立て削り盤加工)、平削り(プレーナー仕上げ)、リーマ加工、エンドミル加工等が挙げられる。また、研削加工としては、平面研削、円筒研削(トラバース研削、プランジ研削、アンギュラ研削等)、センターレス研削、内面研削(内径研削)等が挙げられる。
本発明の潤滑油組成物は、これらの金属加工の中でも、切削加工に好適に用いられ、特にブローチ加工、タップ加工、リーマ加工、シェービング加工等の難加工に好適に用いられる。
【0061】
本発明の潤滑油組成物を金属加工油として用いる場合、対象となる金属材料の種類は、特に限定されないが、本発明の潤滑油組成物が優れた極圧性を有することから、特に難加工性金属材料に好適に使用される。難加工性金属材料としては、例えば、炭素工具鋼、クロム鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、オーステナイト系ステンレス、フェライト系ステンレス、マルテンサイト系ステンレス、合金工具鋼、チタン合金、耐熱鋼、高マンガン鋼、高張力鋼等が挙げられる。
【0062】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。尚、以下の実施例中、%は特に記載が無い限り質量基準である。
【0063】
下記の基油及び添加剤を用いて、表1又は表2に示す配合にて実施例1〜17及び比較例1〜24の各潤滑油組成物を調製した。また、表3及び表4に、実施例1〜17又は比較例1〜24の各潤滑油組成物中の、(A)成分に由来するモリブデン含量、(B)成分に由来する硫黄含量、及び(B)成分由来の硫黄とモリブデンとの重量比を示す。
<基油>
40℃の動粘度が20mm2/sであるパラフィン系精製鉱油
(A)成分:有機モリブデン化合物
<A−1>
特開昭61−285293号公報の実施例1に記載の方法に準じ、ジトリデシルアミン2モルと三酸化モリブデン1モルとを反応して得られたモリブデンとアミン化合物との反応物。(モリブデン含量11質量%)
<A−2>
特開2001−164281号公報に記載の方法に準じ、N−ドデシルエタノールアミン2モルと三酸化モリブデン1モルとを反応して得られたモリブデンとアミン化合物との反応物。(モリブデン含量15質量%)
<A−3>
下記の方法により得られたモリブデンとアミン化合物との反応物。(モリブデ含量18質量%)
製造方法:反応容器に、三酸化モリブデン1モル及び水30モルを仕込み、50〜60℃で攪拌しながらジトリデシルアミン0.9モルを1時間かけて滴下し、更に同温度で1時間攪拌した後、攪拌を停止して静置した。分離した水層を除去した後、油層を100℃で1.4kPa以下に減圧して水分を除去して、淡青色オイル状のモリブデンアミン化合物を得た。
<A−4>
一般式(2)において、Rがオクチル基とトリデシル基の混合アルキル基であり、Xの酸素原子/硫黄原子の比が2.1/1.9である硫化オキシモリブデンジチオカーバメート。(モリブデン含量18質量%)
<A−5>
一般式(3)において、Rがオクチル基であり、Xの酸素原子/硫黄原子の比が2.1/1.9である硫化オキシモリブデンジチオフォスフェート。(モリブデン含量18質量%)
<A−6>
特開昭62−108891号公報の例Vに記載の方法に準じ、ヤシ油1モル、ジエタノールアミン1.8モル及び三酸化モリブデン1.3モルを用いて得られたモリブデンのカルボン酸ジエタノールアミド錯体及びモリブデンのグリセリンモノカルボン酸エステル錯体の混合物。(モリブデン含量6質量%)
(B)成分:活性硫黄化合物
<B−1>
硫化ラード(硫黄含量15質量%、活性硫黄率33質量%、銅板腐食4)
<B−2>
硫化脂肪酸エステル(硫黄含量18質量%、活性硫黄率54質量%、銅板腐食4)
<B−3>
硫化ヘキサデセン/オクタデセン混合物(硫黄含量21質量%、活性硫黄率55質量%、銅板腐食4)
<B−4>
硫化オクテン(硫黄含量39質量%、活性硫黄率97質量%、銅板腐食4)
<B−5>
ジドデシルポリスルフィド(硫黄含量30質量%、活性硫黄率67質量%、銅板腐食4)
<B−6>
硫化イソブテン(硫黄含量48質量%、活性硫黄率92質量%、銅板腐食3)
(C)成分:無灰分散剤
<C−1>
モノ型ポリブテニルコハク酸イミド(分子量1000、窒素含量2.1重量%)
<C―2>
ビス型ポリブテニルコハク酸イミド(分子量2000、窒素含量1.1重量%)
なお、分子量は、GPC分析によるスチレン換算の重量平均分子量である。
(D)成分:金属清浄剤
<D−1>
カルシウムスルホネート (全塩基価280mgKOH/g)
<D−2>
マグネシウムスルホネート (全塩基価60mgKOH/g)
(E)成分:不活性硫黄化合物又は塩素含有化合物(比較用)
<E−1>
硫化ラード(硫黄含量11質量%、活性硫黄率15質量%、銅板腐食1)
<E−2>
硫化脂肪酸エステル(硫黄含量10質量%、活性硫黄率19質量%、銅板腐食1)
<E−3>
ジドデシルポリスルフィド(硫黄含量29質量%、活性硫黄率68質量%、銅板腐食1)
<E−4>
メチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)(硫黄含量30質量%、銅板腐食1)
<E−5>
亜鉛ジドデシルジチオフォスフェート(硫黄含量13質量%、銅板腐食1)
<E−6>
塩素化パラフィン(塩素含量50質量%)
【0064】
【表1】
表1
【0065】
【表2】
表2
【0066】
【表3】
表3
*1:B成分由来の硫黄の含量。
*2:B成分由来の硫黄と、モリブデンとの重量比。
【0067】
【表4】
表4
*3:B成分由来の硫黄の含量。( )内はE成分由来の硫黄の含量。
*4:B成分若しくはE成分由来の硫黄と、モリブデンの重量比
【0068】
実施例1〜17及び比較例1〜24の各潤滑油組成物について、下記に示す試験方法にて、耐荷重能試験、ボール通し試験及びブローチ加工試験を行なった。結果を表5及び表6に示す。
<耐荷重能試験>
ASTM D−2783−82に準拠し、耐荷重能の評価試験を行なった。すなわち、試験球を所定の位置にセットし、試験油をカップに満たし、所定の荷重をレバーにより負荷した後、スタートし、所定時間(10秒とした)における溶着焼き付きの有無を調べ、溶着を起こさなかった最大荷重を耐荷重能とした。なお、試験は各回毎に試験球、試験油を換え、荷重を換えて行った。測定条件の詳細は以下のとおりである。
試験機:シェル式高速4級試験機
縦軸回転数:1800rpm
摩擦速度 :56cm/秒
測定温度 :室温
試験鋼球 :玉軸受用鋼球(直径12.7mm、材質SUJ2軸受鋼)
負荷方法 :レバー式ショック荷重 同一方向(10秒間)
<ボール通し試験>
プレス機を用いて下記の条件にてボール通し試験を行ない、最大押込み荷重及び焼付きまでの距離を測定し、潤滑性及び耐焼付き性を評価した。本試験では、円筒状の試験片の内孔に鋼球を押込み、鋼球が試験片に最初に接触した部位から焼付きが発生した部位までの距離を焼付きまでの距離とした。なお、最大押込み荷重が小さいほど潤滑性が良好であり、焼付きまでの距離が大きいほど耐焼付き性が良好であることを示す。
試験機:プレス機
鋼球:軸受鋼球(材質SUJ2、直径17.46mm)
試験片:材質S10C、内径15.0mm、外径29.9mm、長さ50mm、内側ストローク(鋼球が接触する距離):40mm
試験片断面積の減少率:12%
鋼球押込み速度:鋼球押込み開始時:0.46m/秒
鋼球押込み中:0.26m/秒
<ブローチ加工試験>
下記の条件でブローチ加工を行ない、加工面の表面粗さ(Rz:10点平均粗さ)を測定した。表面粗さの小さいものほど、加工精度が高いことを表わす。
試験機:高速ブローチ加工機(不二越社製)
工具:6枚刃サーフェスブローチ(材質SKH55)
切削速度:60mm/秒
切り込み:0.08mm/刃
被削材:オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)
評価機器:表面粗さ測定機(小坂製作所製、型式SE30D)
【0069】
【表5】
表5
【0070】
【表6】
表6
【0071】
上記の結果より、本発明の潤滑油組成物である実施例1〜17はいずれも、塩素化合物を含有しない比較例1〜22よりも、耐荷重能、潤滑性、耐焼付き性及び加工精度が優れており、塩素系極圧剤である塩素化パラフィンを含有する比較例23及び24と同等又はそれ以上の性能を有していることがわかる。これは、本発明の潤滑油組成物が優れた極圧性を有しており、塩素系極圧剤を含有する金属加工油の代替として難加工性金属材料の難加工に使用できることを示すものである。
【0072】
【発明の効果】
本発明によれば、毒性及び発ガン性の懸念や、焼却処理時の有害物質の発生による環境公害や焼却炉の損傷の問題のある塩素系極圧剤を使用しなくとも、難加工性金属材料の難加工が可能な潤滑油が提供できる。
Claims (8)
- 鉱油、合成油又は油脂を基油とし、塩素原子を有する化合物が含まれていない潤滑油組成物において、(A)成分として有機モリブデン化合物、(B)成分として活性硫黄化合物を含有することを特徴とする潤滑油組成物。
- (A)成分の有機モリブデン化合物が、モリブデンとアミン化合物との反応物、硫化オキシモリブデンジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンジチオフォスフェート、モリブデンのカルボン酸ジエタノールアミド錯体又はモリブデンのグリセリンモノカルボン酸エステル錯体である請求項1記載の潤滑油組成物。
- (B)成分の活性硫黄化合物が、活性硫黄率20〜70質量%である硫化油脂、又は活性硫黄率30〜100質量%であるオレフィンポリサルファイド若しくはジアルキルポリサルファイドである請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
- 潤滑油組成物中の(A)成分に由来するモリブデン含量と(B)成分に由来する硫黄含量の比が、モリブデン100質量部に対して、硫黄20〜200質量部である請求項1〜3の何れか1項に記載の潤滑油組成物。
- (C)成分として無灰分散剤を含有する請求項1〜4の何れか1項に記載の潤滑油組成物。
- (D)成分として金属清浄剤を含有する請求項1〜5の何れか1項に記載の潤滑油組成物。
- 請求項1〜6の何れか1項に記載の潤滑油組成物からなる金属加工油組成物。
- 請求項7に記載の金属加工油組成物を使用することを特徴とする難加工性金属材料の研削加工方法。
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