JP2004210023A - 車両用フレーム及び車両 - Google Patents
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Abstract
【課題】容易に且つ低コストで製作することができる軽量で高強度の車両用フレーム及びこれを備えた車両を提供すること。
【解決手段】本発明のフレーム1は、板状の鋳物製フレーム本体10と、該フレーム本体10を補強する補強部材21、22、23とを備える。フレーム本体10の片面に補強部材21、22、23が当接された状態で、フレーム本体10に補強部材21、22、23が接合一体化されている。フレーム本体10の材料は、アルミニウム又はアルミニウム合金か、あるいはマグネシウム又はマグネシウム合金であることが望ましい。補強部材21、22、23は、展伸材製であることが望ましく、更にレーザ溶接によってフレーム本体10に接合されていることが望ましい。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明のフレーム1は、板状の鋳物製フレーム本体10と、該フレーム本体10を補強する補強部材21、22、23とを備える。フレーム本体10の片面に補強部材21、22、23が当接された状態で、フレーム本体10に補強部材21、22、23が接合一体化されている。フレーム本体10の材料は、アルミニウム又はアルミニウム合金か、あるいはマグネシウム又はマグネシウム合金であることが望ましい。補強部材21、22、23は、展伸材製であることが望ましく、更にレーザ溶接によってフレーム本体10に接合されていることが望ましい。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えばサスペンションメンバとして好適に用いられる車両用フレーム及び車両に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば自動車のサスペンションメンバ(サブフレーム、クロスメンバ、モノコックフレーム等)として用いられる従来のフレームは、鋼材製であったため、重量が重いという問題を抱えていた。そこで、近年、フレームの軽量化を図るため、様々な材料で製作されたフレームが開発されており、その一つにアルミニウム合金製のフレームが開発されている。
【0003】
このアルミニウム合金製フレームの製造方法として、次の方法が提案されている。
【0004】
(a)素材としてアルミニウム合金板材を塑性加工(例えばプレス加工)したのち接合することによってフレーム全体を製造する方法(例えば特許文献1参照。)。
【0005】
(b)素材としてアルミニウム合金押出材を曲げ成形することによってフレーム全体を製造する方法(例えば特許文献2参照。)。
【0006】
(c)ダイカスト等の鋳造によってフレーム全体を製造する方法(例えば特許文献3、4参照。)。
【0007】
【特許文献1】
特開昭61−40589号公報(第1図)
【0008】
【特許文献2】
特開2001−354157号公報(請求項1、第1、10図)
【0009】
【特許文献3】
特開2002−105572号公報(請求項2、第5図)
【0010】
【特許文献4】
特開2002−137617号公報(請求項1、第1−2図)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記フレームの提案された製造方法には、次の難点があった。
【0012】
(a)によれば、フレームは、その部位ごとに、2個の断面略コ字状の板材が最中状(即ち、開口部同士が向き合う態様)に合わされて接合されて、閉断面構造となっているため、部材点数が多くなり、加工費及び金型費が高くなる。
【0013】
(b)によれば、フレームの素材が押出材なので、フレームの肉厚は押出方向において一定となり、レイアウトにおける形状自由度が少ない。また、フレームの全ての部位の肉厚は、高い強度が要求される部位の肉厚に設定されてしまい、フレームの軽量化を図ることが困難になる。一方、ハイドロフォーミング等でフレームの肉厚や断面形状を複雑に変化させることはできるが、そうするとコストが高く付いてしまう。
【0014】
(c)によれば、フレーム全体がダイカスト等の鋳造によって製造されるので、中空部を有するフレームを製造することが困難であり、コスト高になる。また、鋳物製のフレームは、展伸材製のものに比べて強度、剛性、靱性、耐衝撃性等が劣る。一方、フレームの高強度化を図るために肉厚を厚くすると、フレームの軽量化を図ることができなくなる。
【0015】
この発明は、上述した技術背景に鑑みてなされたもので、その目的は、容易に且つ低コストで製作することができる軽量で高強度の車両用フレーム及びこれを備えた車両を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の手段を提供する。
【0017】
(1)板状の鋳物製フレーム本体と、該フレーム本体を補強する補強部材とを備えるとともに、前記フレーム本体の片面に前記補強部材が当接された状態で、前記フレーム本体に前記補強部材が接合一体化されていることを特徴とする車両用フレーム。
【0018】
(2)前記補強部材は展伸材製である前項1記載の車両用フレーム。
【0019】
(3)前記補強部材は、凹部を有するとともに、該凹部の開口部の少なくとも一部が前記フレーム本体で閉塞された状態で、接合一体化されている前項1又は2記載の車両用フレーム。
【0020】
(4)前記補強部材がレーザ溶接によって接合一体化されている前項1〜3のいずれか1項記載の車両用フレーム。
【0021】
(5)前記レーザ溶接はフッ化物系フラックス材を含有した溶加材を用いたものである前項4記載の車両用フレーム。
【0022】
(6)前記フレーム本体の材料は熱処理系合金又は非熱処理系合金であり、前記補強部材の材料は前記フレーム本体の材料と同系の合金である前項1〜5のいずれか1項記載の車両用フレーム。
【0023】
(7)前記フレーム本体に補強リブ部が一体形成されている前項1〜6のいずれか1項記載の車両用フレーム。
【0024】
(8)前記フレーム本体は、その片面側から見て、180°未満の角度をなして隣接する2つの部位を有するとともに、該両部位間の隅部において補強片部が両部位に跨って両部位に一体形成されている前項1〜7のいずれか1項記載の車両用フレーム。
【0025】
(9)前記フレーム本体に、他の部材と接続される少なくとも1個のブラケット部が一体形成されている前項1〜8のいずれか1項記載の車両用フレーム。
【0026】
(10)前記フレーム本体及び前記補強部材のうち少なくとも一方の部材の材料が、アルミニウム又はアルミニウム合金か、あるいはマグネシウム又はマグネシウム合金である前項1〜9のいずれか1項記載の車両用フレーム。
【0027】
(11)前項1〜10のいずれか1項記載のフレームを備えていることを特徴とする車両。
【0028】
次に、上記各項の発明を説明する。
【0029】
(1)の発明では、フレーム本体が鋳物製であることにより、フレームの製造コストが引き下げられる。さらに、フレーム本体が板状であることにより、フレームの軽量化が図られる。また、フレーム本体の片面に補強部材が当接された状態で、フレーム本体に補強部材が接合一体化されることにより、フレーム本体がこの補強部材で補強され、フレームの強度や剛性が向上する。さらに、補強部材のフレーム本体との接合作業をフレーム本体の片面側からだけで行うことができる。そのため、かかる接合作業を容易に行うことができ、ひいてはフレームの製造コストを更に引き下げることができる。
【0030】
本発明では、フレーム本体及び補強部材の材料はともに限定されるものではないが、軽金属であることがフレームの更なる軽量化を図ることができる点で望ましく、特に、後述するようにアルミニウム又はアルミニウム合金か、あるいはマグネシウム又はマグネシウム合金であることが望ましい。
【0031】
本発明に係るフレームは、車両(例えば自動車や鉄道車両)における様々な種類のフレームに用られ、その種類に限定されるものではなく、例えば、サブフレーム、クロスメンバ、モノコックフレーム等のサスペンションメンバとして特に好適に用いられる。
【0032】
(2)の発明では、補強部材が展伸材製であることにより、フレームの強度や剛性が向上するし、その上、靱性や耐衝撃性等も向上する。なお本発明では、展伸材は、圧延材、押出材、引抜き材であっても良いし、熱間又は冷間の塑性加工品であっても良い。特に、展伸材は、5000系又は6000系のアルミニウム合金圧延材であることが望ましく、更には、このような圧延材を所定の断面形状(断面略コ字状、断面略L字状、断面略円弧状など)にプレス加工した加工品であることが、歩留まりやコスト面で有利である。
【0033】
(3)の発明では、補強部材の凹部の開口部がフレーム本体で閉塞された状態で、補強部材がフレーム本体に接合一体化されていることにより、フレーム全体が閉断面構造となり、そのため強度や剛性が更に向上する。この補強部材としては、例えば、断面略コ字状、断面略L字状、断面略円弧状のものが用いられる。
【0034】
(4)の発明では、補強部材がレーザ溶接によって接合一体化されることにより、フレーム本体に補強部材が強固に接合され、補強部材のフレーム本体との接合強度が向上する。即ち、レーザ溶接によれば、溶け込みが深く、熱影響部を非常に少ないものとなし得る。
【0035】
(5)の発明では、フッ化物系フラックス材を含有した溶加材を用いたレーザ溶接によってフレーム本体に補強部材が接合一体化されることにより、フレーム本体に補強部材が更に強固に接合され、補強部材のフレーム本体との接合強度が更に向上する。即ち、フレーム本体は鋳造製であるから一般に含有ガス量が多いけれども、このようなフレーム本体であっても、該本体フレームに補強部材を良好に接合一体化することができる。
【0036】
(6)の発明では、補強部材の材料がフレーム本体の材料と同系の合金であることより、フレーム本体に補強部材が強固に接合され、補強部材のフレーム本体との接合強度が向上する。
【0037】
(7)の発明では、フレーム本体に補強リブ部が一体形成されていることにより、フレーム本体が補強リブ部によって補強され、もってフレームの強度的信頼性が向上する。
【0038】
(8)の発明では、フレーム本体における所定角度をなして隣接する2つの部位が補強片部によって補強され、もってフレームの強度的信頼性が向上する。本発明では、フレーム本体の両部位がなす角度は、限定されるものではなく、180°未満であれば良いが、特に30〜150°であるこのが望ましい。
【0039】
(9)の発明では、フレーム本体にブラケット部が一体形成されているので、部材点数を少なくすることができる。そのため、フレームを更に容易に製作することができる。
【0040】
(10)の発明では、フレーム本体及び補強部材のうち少なくとも一方の部材の材料が、アルミニウム又はアルミニウム合金か、あるいはマグネシウム又はマグネシウム合金であることにより、フレームの軽量化を確実に図ることができる。
【0041】
(11)の発明では、車両が前記フレームを備えていることにより、優れた強度的信頼性を有する車両が提供される。また、車両の軽量化を図ることができ、車両の燃費が向上する。本発明において、車両は限定されるものではなく、自動車、鉄道車両等が挙げられる。
【0042】
【発明の実施の形態】
次に、この発明の好ましい一実施形態を図面を参照して説明する。なお、この実施形態では、車両用フレームとして自動車用のものを示している。
【0043】
図1(a)において、(1)は本実施形態に係る自動車用フレームである。このフレーム(1)は、自動車(図示せず)のサブフレーム(例えばリヤサブフレームやフロントサブフレーム)として用いられるものであり、自動車に取り付けられた状態において略水平状に配置されるものである。
【0044】
このフレーム(1)(即ちサブフレーム)は、図1(a)に示すように、平面視略ロ字状(略井桁状を含む。)のものである。このフレーム(1)の断面形状は、図2〜図4に示すように略ロ字状乃至略D字状に形成されており、その内部に中空部(2)が形成されている。この中空部(2)はフレーム(1)の延びる方向に連続して形成されている。
【0045】
このフレーム(1)は、図1(a)に示すように、自動車の左右方向に延設される前後一対のクロスメンバ(3)(3)と、自動車の前後方向に延設される左右一対のサイドメンバ(4)(4)とを有している。このフレーム(1)の上面側から見て(即ち平面視で)、これら4個のメンバ(3)(3)(4)(4)は60〜90°の角度をなして相互に隣接している。
【0046】
このフレーム(1)において、図1(a)〜(d)に示すように、前クロスメンバ(3)の両端部には、ブッシュ装着用の筒状(詳述すると円筒状)第1ブラケット部(5)が設けられている。この第1ブラケット部(5)は、ブッシュ装着孔(5a)を有しており、このブッシュ装着部(5a)内にはゴム弾性部を有するブッシュ(図示せず)が装着される。この第1ブラケット部(5)は、ブッシュ装着部(5a)内に装着されたブッシュを介して、他の部材として例えば車体と接続されるものである。ブッシュ装着孔(5a)は貫通している。
【0047】
さらに、前クロスメンバ(3)には下方突出状の左右一対の第2ブラケット部(6)(6)が設けられている。この第2ブラケット部(6)は、他の部材として例えばディファレンシャル装置のハウジング(図示せず)の前部と接続されるものである。
【0048】
また、後クロスメンバ(3)には下方突出状の左右一対の第3ブラケット部(7)(7)が設けられている。この第3ブラケット部(7)は、他の部材として例えは前記ディファレンシャル装置のハウジング(図示せず)の後部と接続されるものである。さらに、この後クロスメンバ(3)の長さ方向中間部にはブッシュ装着孔形成用厚肉部(3a)が設けられるとともに、この厚肉部(3a)に2個のブッシュ装着孔(3b)(3b)が設けられている。なお、このブッシュ装着孔(3b)(3b)は無くても良い。
【0049】
各サイドメンバ(4)には下方突出状の第4ブラケット部(8)が設けられている。この第4ブラケット部(8)は、他の部材として、例えばサスペンション装置のロアリンク(図示せず)と接続されるものである。さらに、各サイドメンバ(4)には上方突出状の第5ブラケット部(9)が設けられている。この第5ブラケット部(9)は、他の部材として例えば前記サスペンション装置のアッパーリンク(図示せず)と接続されるものである。
【0050】
第1ブラケット部(5)は上述したように筒状に形成されたものである。一方、第2〜第5ブラケット部(6)(7)(8)(9)はいずれも、互いに対向する一対の板状接続片部を有している。各接続片部は軸受け孔が形成される部位である。
【0051】
次に、このフレーム(1)の構成を詳細に説明する。
【0052】
フレーム(1)は、図6に示したフレーム本体(10)と、図1に示した複数個の補強部材(21)(22)(23)とが組み付けられて構成されたものである。
【0053】
フレーム本体(10)は、図6(a)〜(d)に示すように、板状のものであって、フレーム(1)と同じく平面視略ロ字状のものである。このフレーム本体(10)はアルミニウム合金鋳物製のものである。本発明では、このフレーム本体(10)の材料は限定されるものではなく、熱処理系アルミニウム合金であっても良いし、非熱処理系アルミニウム合金であっても良く、特に、JIS(日本工業規格) ADC6、AC4CH、AC7A等であることが望ましい。このフレーム本体(10)の鋳造方法としては、低圧鋳造法、重力鋳造法、ダイカスト法が例示されるが、本発明では、フレーム本体(10)の鋳造方法は限定されるものではない。
【0054】
フレーム本体(10)は、フレーム(1)が自動車に取り付けられた状態において略水平状に配置されるものであって、フレーム(1)の下部を形成するものである。したがって、このフレーム本体(10)は、前クロスメンバ形成部(3')、左サイドメンバ形成部(4')、右サイドメンバ形成部(4')及び後クロスメンバの形成部(3')を有している。上述したように、このフレーム本体(10)の上面側から見て(即ち平面視で)、これら4個のメンバ形成部(3')(3')(4')(4')は60〜90°の角度をなして相互に隣接している。
【0055】
さらに、このフレーム本体(10)の所定部位には、前記第1ブラケット部(5)、前記第2ブラケット部(6)、前記第3ブラケット部(7)及び前記第4ブラケット部(8)が一体形成されている。
【0056】
さらに、前クロスメンバ形成部(3')と左サイドメンバ形成部(4')との間の隅部において、補強片部(11)が両メンバ形成部(3')(4')に跨って且つ前記隅部を閉塞する態様で両メンバ形成部(3')(4')に一体形成されている。この補強片部(11)によって両メンバ形成部(3')(4')が補強されている。さらに、前クロスメンバ形成部(3')と右サイドメンバ形成部(4')との間の隅部、後クロスメンバ形成部(3')と左サイドメンバ形成部(4')との間の隅部、並びに後クロスメンバ形成部(3')と右サイドメンバ形成部(4')との間の隅部においても、それぞれ、上記と同様に、補強片部(11)が一体形成されている。
【0057】
また、図6及び図7に示すように、このフレーム本体(10)の前クロスメンバ形成部(3')の上面の一側縁部には、上方突出状の接合凸部(12)が対応する側縁部に沿って一体形成されている。そして、図2に示すように、凹部(21a)を有する断面略L字状乃至略円弧状の棒状第1補強部材(21)の一側縁部が接合凸部(12)に当接されるとともに、第1補強部材(21)の他側縁部がフレーム本体(10)の上面の他側縁部に当接されており、これにより、第1補強部材(21)の凹部(21a)の開口部の全体が前クロスメンバ形成部(3')で閉塞されている。この閉塞状態で、第1補強部材(21)の一側縁部が接合凸部(12)に接合されるとともに、第1補強部材(21)の他側縁部が前クロスメンバ形成部(3')に接合されている。こうして第1補強部材(21)が前クロスメンバ形成部(3')に接合一体化されることによって、前クロスメンバ(3)が形成されている。図2において、(J)は接合部(溶接部)である。こうして第1補強部材(21)が接合された状態において、前クロスメンバ(3)は閉断面構造となっており、その内部には第1補強部材(21)の凹部(21a)からなる前記中空部(2)が形成されている。
【0058】
また、図6及び図8に示すように、フレーム本体(10)の各サイドメンバ形成部(4')の上面の両側縁部には、上方突出状の接合凸部(12)(12)が対応する側縁部に沿って一体形成されている。そして、図3に示すように、このサイドメンバ形成部(4')の両接合凸部(12)(12)間の上面に、凹部(22a)を有する断面略コ字状の棒状第2補強部材(22)の両側縁部が当接されており、これにより、第2補強部材(22)の凹部(22a)の開口部の全体がサイドメンバ形成部(4')で閉塞されている。この閉塞状態で、第2補強部材(22)の両側縁部がサイドメンバ形成部(4')の対応する接合凸部(12)(12)に接合されている。こうして第2補強部材(22)がサイドメンバ形成部(4')に接合一体化されることによって、サイドメンバ(4)が形成されている。また、こうして第2補強部材(22)が接合された状態において、サイドメンバ(4)は閉断面構造となっており、その内部には第2補強部材(22)の凹部(22a)からなる前記中空部(2)が形成されている。さらに、この第2補強部材(22)には、図1(d)に示すように、上方突出状の前記第5ブラケット部(9)が接合一体化されている。なお、第5ブラケット部(9)はアルミニウム合金板材を屈曲形成したものである。
【0059】
また、図6(a)及び(c)に示すように、フレーム本体(10)の後クロスメンバ(3)における前記厚肉部(3a)両側の部位の上面の両側縁部には、上方突出状の接合凸部(12)(12)が対応する側縁部に沿って一体形成されている。そして、図1(a)、(c)及び図4に示すように、この後クロスメンバ形成部(3')の両接合凸部(12)(12)間の上面に、凹部(23a)を有する断面略コ字状の棒状第3補強部材(23)の両側縁部が当接されており、これにより、第3補強部材(23)の凹部(23a)の開口部の全体が後クロスメンバ形成部(3')で閉塞されている。この閉塞状態で、第3補強部材(23)の両側縁部が後クロスメンバ形成部(3')の対応する接合凸部(12)(12)に一体化されている。こうして第3接合部材(23)が後クロスメンバ(3')に接合一体化されることによって、後クロスメンバ(3)が形成されている。また、こうして第3補強部材(23)が接合された状態において、後クロスメンバ(3)は閉断面構造となっており、その内部には第3構成部材(23)の凹部(23a)からなる前記中空部(2)が形成されている。
【0060】
第1〜第3補強部材(21)(22)(23)は、いずれも、アルミニウム合金展伸材製のものである。特に、これら補強部材(21)(22)(23)は、5000系又は6000系のアルミニウム合金圧延材製であることが望ましく、更には、このような圧延材を所定の断面形状にプレス加工した加工品であることが、歩留まりやコスト面で有利である。なお本発明では、これら補強部材(21)(22)(23)の材料は限定されるものではなく、熱処理系アルミニウム合金であっても良いし、非熱処理系アルミニウム合金であっても良い。特に、フレーム本体(10)の材料が熱処理系合金である場合には、補強部材(21)(22)(23)の材料は熱処理系合金であることが望ましく、フレーム本体(10)の材料が非熱処理系合金である場合には、補強部材(21)(22)(23)の材料は非熱処理系合金であることが望ましい。こうすることにより、補強部材(21)(22)(23)をフレーム本体(10)に強固に接合できるようになり、補強部材(21)(22)(23)のフレーム本体(10)との接合強度が向上する。また、フレーム本体(10)及び補強部材(21)(22)(23)の材料がいずれも熱処理系合金である場合には、接合後に人工時効や自然時効を行うことが望ましく、これにより、熱影響部の強度を回復させることができる。
【0061】
また、図6(a)及び図10に示すように、フレーム本体(10)において高い面剛性が要求される部位には、突出状の補強リブ部(13)が一体形成されている。本実施形態では、この補強リブ部(13)は、フレーム本体(10)のサイドメンバ形成部(4')の上面に、サイドメンバ形成部(4')の延びる方向に略ジグザグ状に一体形成されている。この補強リブ部(13)によってフレーム本体(10)が補強されている。そして、第2補強部材(22)がサイドメンバ形成部(4')に接合されることにより、補強リブ部(13)が第2補強部材(22)によって覆われて隠蔽されている。
【0062】
本発明では、各補強部材(21)(22)(23)をフレーム本体(10)に接合する接合手段は限定されるものではなく、例えば冶金的接合手段(レーザ溶接、摩擦撹拌接合、MIG溶接、スポット溶接等)であっても良いし、機械的接合手段(リベット、ボルト等)であっても良いし、接着剤であっても良い。これらの接合手段のうち、本発明では特にレーザ溶接であることが望ましい。このようにレーザ溶接を接合手段として適用することにより、補強部材(21)(22)(23)をフレーム本体(10)に強固に接合できるようになる。その理由は次のとおりである。すなわち、フレーム本体(10)は鋳物製であるから、一般に、該フレーム本体(10)の内部には鋳造時に巻き込まれた空気等のガスが含有されている。そのため、このガスが接合時にフレーム本体(10)内部から多量に放出されてしまい、接合部(J)に気孔が発生し易い。このように気孔が発生すると、接合強度が低下するという問題が生じる。そこで、本発明では接合手段としてレーザ溶接を適用する。こうすることにより、気孔の発生を抑制することができ、補強部材(21)(22)(23)をフレーム本体(10)に強固に接合でき、もって補強部材(21)(22)(23)のフレーム本体(10)との接合強度が向上する。また、レーザ溶接によれば、溶け込みが深く、熱影響部が非常に少ないものとなり得るため、補強部材(21)(22)(23)をフレーム本体(10)に良好に接合することができる。
【0063】
さらに、このレーザ溶接は、フッ化物系フラックス材を含有した溶加材を用いて行うことが望ましい。こうすることにより、前記気孔の発生を顕著に抑制することができ、補強部材(21)(22)(23)をフレーム本体(10)に更に強固に接合できるようになる。
【0064】
接合手段がレーザ溶接である場合において、そのレーザ溶接法について図11を参照して説明すると次のとおりである。
【0065】
同図において、(30)はレーザ光、(31)はレーザ集光ヘッドである。また、(35)は棒状又はワイヤ状の溶加材である。溶加材(35)はフッ化物系フラックス材を含有したものである。
【0066】
レーザ光(30)は、レーザ発振器(図示せず)によって発振されてレーザ集光ヘッド(31)によって集光される。そして、集光されたレーザ光(30)は、同図に示すように、フレーム本体(10)の前クロスメンバ形成部(3')と第1補強部材(21)との当接部(T)(即ち接合予定部)の外面に照射される。このレーザ光(30)の照射によって当接部(T)やその近傍が溶融し、もって第1補強部材(21)が前クロスメンバ形成部(3')に接合される。溶加材(35)は、このレーザ溶接時に前記当接部(T)に連続的に供給される。本発明では、レーザ光(30)としては、様々な波長のレーザ光が用いられ、例えばYAGレーザ光、CO2レーザ光が好適に用いられる。各サイドメンバ形成部(4')と第2補強部材(22)との接合、並びに後クロスメンバ(3')と第3補強部材(23)との接合についても、上記と同様に行われる。
【0067】
溶加材(35)において、フッ化物系フラックス材はK−Al−F系フラックス材であることが望ましい。K−Al−F系フラックス材の成分について具体的に例示すると、一般式:KnAlFn+3(nは1以上の整数)で表されるKAlF4、K2AlF5、K3AlF6、KFとAlF3との混合物又は共晶組成物、およびフルオロアルミン酸カリウム錯体のうちのいすれか1種、あるいは2種以上の混合材料が挙げられる。また、この溶加材(35)に含有されるベース材はAl−Si系材料であることが望ましく、特にAl−10質量%Si材、JIS A4043材及びJIS A4047材のうちいずれか1種、あるいは2種以上の混合材料であることが望ましい。
【0068】
而して、上記実施形態のフレーム(1)は次のような利点を有している。すなわち、フレーム(1)は中空であり、且つフレーム本体(10)がアルミニウム合金鋳物製であり、更に補強部材(21)(22)(23)がアルミニウム合金展伸材製であるため、フレーム(1)は極めて軽量になっている。したがって、このフレーム(1)を自動車にサブフレームとして取り付けることにより、自動車の燃費が向上する。
【0069】
さらに、このフレーム(1)では、フレーム本体(10)が鋳物製であるから、フレーム(1)の製造コストを引き下げることができる。また、フレーム本体(10)と補強部材(21)(22)(23)との組み付けによってフレーム(1)が製作されているので、該フレーム(1)を容易に製作することができる。
【0070】
さらに、補強部材(21)(22)(23)は展伸材製であるから、フレーム(1)は高い強度や高い剛性を有していることはもとより、優れた靱性及び耐衝撃性をも具備している。
【0071】
さらに、フレーム本体(10)において高い面剛性が要求される部位には、図6(a)及び図10に示すように、補強リブ部(13)が形成されているので、フレーム(1)は極めて高い強度及び剛性を有しており、優れた強度的信頼性を有している。
【0072】
さらに、フレーム本体(10)における互いに隣接する2つのメンバ形成部(33'(3')(4')(4')が補強片部(11)によって補強されているので、フレーム(1)の強度及び剛性は更に向上している。
【0073】
また、フレーム本体(10)の上面に補強部材(21)(22)(23)が当接された状態で、フレーム本体(10)に補強部材(21)(22)(23)が接合一体化されているから、補強部材(21)(22)(23)のフレーム本体(10)との接合作業をフレーム本体(10)の上面側からだけで行うことができる。そのため、かかる接合作業を容易に行うことができる。
【0074】
さらに、フレーム本体(10)に第1ブラケット部(6)、第2ブラケット部(7)及び第3ブラケット部(8)が一体形成されているから、部材点数が少なく、そのためフレーム(1)を更に容易に製作することができ、もってフレーム(1)の製造コストを大幅に引き下げることができる。
【0075】
図12は、この発明の上記実施形態に係るフレームの第1変形例を示す、図2に対応する位置の断面図である。
【0076】
この第1変形例では、フレーム本体(10)の前クロスメンバ形成部(3')の接合凸部(12)の内面の上端部には、段部(12a)が設けられている。また、前クロスメンバ形成部(3')の上面の他側縁部には、上方突出状の接合凸部(12)が該側縁部に沿って一体形成されている。そして、第1補強部材(21)の一側縁部が段部(12a)で受けられた状態で接合凸部(12)に接合されるとともに、第1補強部材(21)の他側縁部が前クロスメンバ形成部(3')の上面に当接された状態で接合凸部(12)に接合されている。
【0077】
図13は、この発明の上記実施形態に係るフレームの第2変形例を示す、図3に対応する位置の断面図である。
【0078】
この第2変形例では、フレーム本体(10)のサイドメンバ形成部(4')における両接合凸部(12)(12)外側の上面に、第2補強部材(22)の両側縁部が当接されている。そして、この状態で、第2補強部材(22)の両側縁部がサイドメンバ形成部(4')に接合されている。なお、この第2変形例では、接合凸部(12)は位置決め凸部として機能している。
【0079】
以上で、この発明の幾つかの好ましい実施形態について説明したが、この発明は上記実施形態及び変形例に示すものに限定されるものではなく、様々に設定変更可能である。
【0080】
例えば、フレーム本体(10)は、アルミニウム鋳物製であっても良いし、マグネシウム又はマグネシウム合金鋳物製であっても良い。また、補強部材(21)(22)(23)は、アルミニウム製であっても良いし、マグネシウム又はマグネシウム合金製であっても良い。
【0081】
また、フレームの上部に形成されるブラケット部の個数が、該フレームの下部に形成されるブラケット部の個数よりも多い場合等においては、フレームの上部をフレーム本体とし、このフレーム本体の下面に補強部材を接合一体化することにより、フレームを製作しても良い。
【0082】
また、補強部材(21)(22)(23)の凹部(21a)(22a)(23a)の開口部は、必ずしもその全体がフレーム本体(10)で閉塞されている必要はなく、つまり凹部(21a)(22a)(23a)の開口部の一部が開いた状態になっていても良い。
【0083】
【発明の効果】
上述の次第で、この発明は次の効果を奏し得る。
【0084】
(1)の発明によれば、フレーム本体が鋳物製であるから、フレームの製造コストを引き下げることができる。さらに、フレーム本体が板状であるから、フレームの軽量化を図ることができる、さらに、フレーム本体が補強部材によって補強されるので、フレームの強度や剛性を向上させることができる。さらに、補強部材のフレーム本体との接合作業をフレーム本体の片面側からだけで行うことができる。そのため、かかる接合作業を容易に行うことができ、ひいてはフレームの製造コストを更に引き下げることができる。
【0085】
(2)の発明によれば、補強部材が展伸材製であるから、フレームの強度や剛性を向上させることができるし、その上、靱性や耐衝撃性についても向上させることができる。
【0086】
(3)の発明によれば、フレームの強度や剛性を更に向上させることができる。
【0087】
(4)の発明によれば、補強部材のフレーム本体との接合強度を向上させることができる。
【0088】
(5)の発明によれば、補強部材のフレーム本体との接合強度を更に向上させることができる。
【0089】
(6)の発明によれば、補強部材のフレーム本体との接合強度を向上させることができる。
【0090】
(7)の発明によれば、フレームの強度や剛性を更に向上させることができる。
【0091】
(8)の発明によれば、フレームの強度や剛性を更に向上させることができる。
【0092】
(9)の発明によれば、フレームを更に容易に製作することができる。
【0093】
(10)の発明によれば、フレームの軽量化を確実に図ることができる。
【0094】
(11)の発明によれば、優れた強度的信頼性を有する車両が提供され、また車両の燃費が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係る車両用フレームを示す、平面図を中心として各側面図を展開した図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は背面図、(d)は側面図である。
【図2】図1(a)中のA−A線断面図である。
【図3】図1(a)中のB−B線断面図である。
【図4】図1(c)中のC−C線断面図である。
【図5】同フレームのブッシュ装着部の拡大斜視図である。
【図6】同フレームのフレーム本体を示す、平面図を中心として各側面図を展開した図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は背面図、(d)は側面図である。
【図7】図6(a)中のD−D線断面図である。
【図8】図6(a)中のE−E線断面図である。
【図9】図6(c)中のF−F線断面図である。
【図10】同フレーム本体のブッシュ装着部の拡大斜視図である。
【図11】補強部材をフレーム本体にレーザ溶接によって接合一体化する途中の状態を示す、図2に対応する位置の断面図である。
【図12】この発明の上記実施形態に係る車両用フレームの第1変形例を示す、図2に対応する位置の断面図である。
【図13】この発明の上記実施形態に係る車両用フレームの第2変形例を示す、図3に対応する位置の断面図である。
【符号の説明】
1…フレーム(サブフレーム)
2…中空部
3…クロスメンバ
4…サイドメンバ
5、6、7、8、9…ブラケット部
10…フレーム本体
11…補強片部
13…補強リブ部
21、22、23…補強部材
J…接合部
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えばサスペンションメンバとして好適に用いられる車両用フレーム及び車両に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば自動車のサスペンションメンバ(サブフレーム、クロスメンバ、モノコックフレーム等)として用いられる従来のフレームは、鋼材製であったため、重量が重いという問題を抱えていた。そこで、近年、フレームの軽量化を図るため、様々な材料で製作されたフレームが開発されており、その一つにアルミニウム合金製のフレームが開発されている。
【0003】
このアルミニウム合金製フレームの製造方法として、次の方法が提案されている。
【0004】
(a)素材としてアルミニウム合金板材を塑性加工(例えばプレス加工)したのち接合することによってフレーム全体を製造する方法(例えば特許文献1参照。)。
【0005】
(b)素材としてアルミニウム合金押出材を曲げ成形することによってフレーム全体を製造する方法(例えば特許文献2参照。)。
【0006】
(c)ダイカスト等の鋳造によってフレーム全体を製造する方法(例えば特許文献3、4参照。)。
【0007】
【特許文献1】
特開昭61−40589号公報(第1図)
【0008】
【特許文献2】
特開2001−354157号公報(請求項1、第1、10図)
【0009】
【特許文献3】
特開2002−105572号公報(請求項2、第5図)
【0010】
【特許文献4】
特開2002−137617号公報(請求項1、第1−2図)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記フレームの提案された製造方法には、次の難点があった。
【0012】
(a)によれば、フレームは、その部位ごとに、2個の断面略コ字状の板材が最中状(即ち、開口部同士が向き合う態様)に合わされて接合されて、閉断面構造となっているため、部材点数が多くなり、加工費及び金型費が高くなる。
【0013】
(b)によれば、フレームの素材が押出材なので、フレームの肉厚は押出方向において一定となり、レイアウトにおける形状自由度が少ない。また、フレームの全ての部位の肉厚は、高い強度が要求される部位の肉厚に設定されてしまい、フレームの軽量化を図ることが困難になる。一方、ハイドロフォーミング等でフレームの肉厚や断面形状を複雑に変化させることはできるが、そうするとコストが高く付いてしまう。
【0014】
(c)によれば、フレーム全体がダイカスト等の鋳造によって製造されるので、中空部を有するフレームを製造することが困難であり、コスト高になる。また、鋳物製のフレームは、展伸材製のものに比べて強度、剛性、靱性、耐衝撃性等が劣る。一方、フレームの高強度化を図るために肉厚を厚くすると、フレームの軽量化を図ることができなくなる。
【0015】
この発明は、上述した技術背景に鑑みてなされたもので、その目的は、容易に且つ低コストで製作することができる軽量で高強度の車両用フレーム及びこれを備えた車両を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の手段を提供する。
【0017】
(1)板状の鋳物製フレーム本体と、該フレーム本体を補強する補強部材とを備えるとともに、前記フレーム本体の片面に前記補強部材が当接された状態で、前記フレーム本体に前記補強部材が接合一体化されていることを特徴とする車両用フレーム。
【0018】
(2)前記補強部材は展伸材製である前項1記載の車両用フレーム。
【0019】
(3)前記補強部材は、凹部を有するとともに、該凹部の開口部の少なくとも一部が前記フレーム本体で閉塞された状態で、接合一体化されている前項1又は2記載の車両用フレーム。
【0020】
(4)前記補強部材がレーザ溶接によって接合一体化されている前項1〜3のいずれか1項記載の車両用フレーム。
【0021】
(5)前記レーザ溶接はフッ化物系フラックス材を含有した溶加材を用いたものである前項4記載の車両用フレーム。
【0022】
(6)前記フレーム本体の材料は熱処理系合金又は非熱処理系合金であり、前記補強部材の材料は前記フレーム本体の材料と同系の合金である前項1〜5のいずれか1項記載の車両用フレーム。
【0023】
(7)前記フレーム本体に補強リブ部が一体形成されている前項1〜6のいずれか1項記載の車両用フレーム。
【0024】
(8)前記フレーム本体は、その片面側から見て、180°未満の角度をなして隣接する2つの部位を有するとともに、該両部位間の隅部において補強片部が両部位に跨って両部位に一体形成されている前項1〜7のいずれか1項記載の車両用フレーム。
【0025】
(9)前記フレーム本体に、他の部材と接続される少なくとも1個のブラケット部が一体形成されている前項1〜8のいずれか1項記載の車両用フレーム。
【0026】
(10)前記フレーム本体及び前記補強部材のうち少なくとも一方の部材の材料が、アルミニウム又はアルミニウム合金か、あるいはマグネシウム又はマグネシウム合金である前項1〜9のいずれか1項記載の車両用フレーム。
【0027】
(11)前項1〜10のいずれか1項記載のフレームを備えていることを特徴とする車両。
【0028】
次に、上記各項の発明を説明する。
【0029】
(1)の発明では、フレーム本体が鋳物製であることにより、フレームの製造コストが引き下げられる。さらに、フレーム本体が板状であることにより、フレームの軽量化が図られる。また、フレーム本体の片面に補強部材が当接された状態で、フレーム本体に補強部材が接合一体化されることにより、フレーム本体がこの補強部材で補強され、フレームの強度や剛性が向上する。さらに、補強部材のフレーム本体との接合作業をフレーム本体の片面側からだけで行うことができる。そのため、かかる接合作業を容易に行うことができ、ひいてはフレームの製造コストを更に引き下げることができる。
【0030】
本発明では、フレーム本体及び補強部材の材料はともに限定されるものではないが、軽金属であることがフレームの更なる軽量化を図ることができる点で望ましく、特に、後述するようにアルミニウム又はアルミニウム合金か、あるいはマグネシウム又はマグネシウム合金であることが望ましい。
【0031】
本発明に係るフレームは、車両(例えば自動車や鉄道車両)における様々な種類のフレームに用られ、その種類に限定されるものではなく、例えば、サブフレーム、クロスメンバ、モノコックフレーム等のサスペンションメンバとして特に好適に用いられる。
【0032】
(2)の発明では、補強部材が展伸材製であることにより、フレームの強度や剛性が向上するし、その上、靱性や耐衝撃性等も向上する。なお本発明では、展伸材は、圧延材、押出材、引抜き材であっても良いし、熱間又は冷間の塑性加工品であっても良い。特に、展伸材は、5000系又は6000系のアルミニウム合金圧延材であることが望ましく、更には、このような圧延材を所定の断面形状(断面略コ字状、断面略L字状、断面略円弧状など)にプレス加工した加工品であることが、歩留まりやコスト面で有利である。
【0033】
(3)の発明では、補強部材の凹部の開口部がフレーム本体で閉塞された状態で、補強部材がフレーム本体に接合一体化されていることにより、フレーム全体が閉断面構造となり、そのため強度や剛性が更に向上する。この補強部材としては、例えば、断面略コ字状、断面略L字状、断面略円弧状のものが用いられる。
【0034】
(4)の発明では、補強部材がレーザ溶接によって接合一体化されることにより、フレーム本体に補強部材が強固に接合され、補強部材のフレーム本体との接合強度が向上する。即ち、レーザ溶接によれば、溶け込みが深く、熱影響部を非常に少ないものとなし得る。
【0035】
(5)の発明では、フッ化物系フラックス材を含有した溶加材を用いたレーザ溶接によってフレーム本体に補強部材が接合一体化されることにより、フレーム本体に補強部材が更に強固に接合され、補強部材のフレーム本体との接合強度が更に向上する。即ち、フレーム本体は鋳造製であるから一般に含有ガス量が多いけれども、このようなフレーム本体であっても、該本体フレームに補強部材を良好に接合一体化することができる。
【0036】
(6)の発明では、補強部材の材料がフレーム本体の材料と同系の合金であることより、フレーム本体に補強部材が強固に接合され、補強部材のフレーム本体との接合強度が向上する。
【0037】
(7)の発明では、フレーム本体に補強リブ部が一体形成されていることにより、フレーム本体が補強リブ部によって補強され、もってフレームの強度的信頼性が向上する。
【0038】
(8)の発明では、フレーム本体における所定角度をなして隣接する2つの部位が補強片部によって補強され、もってフレームの強度的信頼性が向上する。本発明では、フレーム本体の両部位がなす角度は、限定されるものではなく、180°未満であれば良いが、特に30〜150°であるこのが望ましい。
【0039】
(9)の発明では、フレーム本体にブラケット部が一体形成されているので、部材点数を少なくすることができる。そのため、フレームを更に容易に製作することができる。
【0040】
(10)の発明では、フレーム本体及び補強部材のうち少なくとも一方の部材の材料が、アルミニウム又はアルミニウム合金か、あるいはマグネシウム又はマグネシウム合金であることにより、フレームの軽量化を確実に図ることができる。
【0041】
(11)の発明では、車両が前記フレームを備えていることにより、優れた強度的信頼性を有する車両が提供される。また、車両の軽量化を図ることができ、車両の燃費が向上する。本発明において、車両は限定されるものではなく、自動車、鉄道車両等が挙げられる。
【0042】
【発明の実施の形態】
次に、この発明の好ましい一実施形態を図面を参照して説明する。なお、この実施形態では、車両用フレームとして自動車用のものを示している。
【0043】
図1(a)において、(1)は本実施形態に係る自動車用フレームである。このフレーム(1)は、自動車(図示せず)のサブフレーム(例えばリヤサブフレームやフロントサブフレーム)として用いられるものであり、自動車に取り付けられた状態において略水平状に配置されるものである。
【0044】
このフレーム(1)(即ちサブフレーム)は、図1(a)に示すように、平面視略ロ字状(略井桁状を含む。)のものである。このフレーム(1)の断面形状は、図2〜図4に示すように略ロ字状乃至略D字状に形成されており、その内部に中空部(2)が形成されている。この中空部(2)はフレーム(1)の延びる方向に連続して形成されている。
【0045】
このフレーム(1)は、図1(a)に示すように、自動車の左右方向に延設される前後一対のクロスメンバ(3)(3)と、自動車の前後方向に延設される左右一対のサイドメンバ(4)(4)とを有している。このフレーム(1)の上面側から見て(即ち平面視で)、これら4個のメンバ(3)(3)(4)(4)は60〜90°の角度をなして相互に隣接している。
【0046】
このフレーム(1)において、図1(a)〜(d)に示すように、前クロスメンバ(3)の両端部には、ブッシュ装着用の筒状(詳述すると円筒状)第1ブラケット部(5)が設けられている。この第1ブラケット部(5)は、ブッシュ装着孔(5a)を有しており、このブッシュ装着部(5a)内にはゴム弾性部を有するブッシュ(図示せず)が装着される。この第1ブラケット部(5)は、ブッシュ装着部(5a)内に装着されたブッシュを介して、他の部材として例えば車体と接続されるものである。ブッシュ装着孔(5a)は貫通している。
【0047】
さらに、前クロスメンバ(3)には下方突出状の左右一対の第2ブラケット部(6)(6)が設けられている。この第2ブラケット部(6)は、他の部材として例えばディファレンシャル装置のハウジング(図示せず)の前部と接続されるものである。
【0048】
また、後クロスメンバ(3)には下方突出状の左右一対の第3ブラケット部(7)(7)が設けられている。この第3ブラケット部(7)は、他の部材として例えは前記ディファレンシャル装置のハウジング(図示せず)の後部と接続されるものである。さらに、この後クロスメンバ(3)の長さ方向中間部にはブッシュ装着孔形成用厚肉部(3a)が設けられるとともに、この厚肉部(3a)に2個のブッシュ装着孔(3b)(3b)が設けられている。なお、このブッシュ装着孔(3b)(3b)は無くても良い。
【0049】
各サイドメンバ(4)には下方突出状の第4ブラケット部(8)が設けられている。この第4ブラケット部(8)は、他の部材として、例えばサスペンション装置のロアリンク(図示せず)と接続されるものである。さらに、各サイドメンバ(4)には上方突出状の第5ブラケット部(9)が設けられている。この第5ブラケット部(9)は、他の部材として例えば前記サスペンション装置のアッパーリンク(図示せず)と接続されるものである。
【0050】
第1ブラケット部(5)は上述したように筒状に形成されたものである。一方、第2〜第5ブラケット部(6)(7)(8)(9)はいずれも、互いに対向する一対の板状接続片部を有している。各接続片部は軸受け孔が形成される部位である。
【0051】
次に、このフレーム(1)の構成を詳細に説明する。
【0052】
フレーム(1)は、図6に示したフレーム本体(10)と、図1に示した複数個の補強部材(21)(22)(23)とが組み付けられて構成されたものである。
【0053】
フレーム本体(10)は、図6(a)〜(d)に示すように、板状のものであって、フレーム(1)と同じく平面視略ロ字状のものである。このフレーム本体(10)はアルミニウム合金鋳物製のものである。本発明では、このフレーム本体(10)の材料は限定されるものではなく、熱処理系アルミニウム合金であっても良いし、非熱処理系アルミニウム合金であっても良く、特に、JIS(日本工業規格) ADC6、AC4CH、AC7A等であることが望ましい。このフレーム本体(10)の鋳造方法としては、低圧鋳造法、重力鋳造法、ダイカスト法が例示されるが、本発明では、フレーム本体(10)の鋳造方法は限定されるものではない。
【0054】
フレーム本体(10)は、フレーム(1)が自動車に取り付けられた状態において略水平状に配置されるものであって、フレーム(1)の下部を形成するものである。したがって、このフレーム本体(10)は、前クロスメンバ形成部(3')、左サイドメンバ形成部(4')、右サイドメンバ形成部(4')及び後クロスメンバの形成部(3')を有している。上述したように、このフレーム本体(10)の上面側から見て(即ち平面視で)、これら4個のメンバ形成部(3')(3')(4')(4')は60〜90°の角度をなして相互に隣接している。
【0055】
さらに、このフレーム本体(10)の所定部位には、前記第1ブラケット部(5)、前記第2ブラケット部(6)、前記第3ブラケット部(7)及び前記第4ブラケット部(8)が一体形成されている。
【0056】
さらに、前クロスメンバ形成部(3')と左サイドメンバ形成部(4')との間の隅部において、補強片部(11)が両メンバ形成部(3')(4')に跨って且つ前記隅部を閉塞する態様で両メンバ形成部(3')(4')に一体形成されている。この補強片部(11)によって両メンバ形成部(3')(4')が補強されている。さらに、前クロスメンバ形成部(3')と右サイドメンバ形成部(4')との間の隅部、後クロスメンバ形成部(3')と左サイドメンバ形成部(4')との間の隅部、並びに後クロスメンバ形成部(3')と右サイドメンバ形成部(4')との間の隅部においても、それぞれ、上記と同様に、補強片部(11)が一体形成されている。
【0057】
また、図6及び図7に示すように、このフレーム本体(10)の前クロスメンバ形成部(3')の上面の一側縁部には、上方突出状の接合凸部(12)が対応する側縁部に沿って一体形成されている。そして、図2に示すように、凹部(21a)を有する断面略L字状乃至略円弧状の棒状第1補強部材(21)の一側縁部が接合凸部(12)に当接されるとともに、第1補強部材(21)の他側縁部がフレーム本体(10)の上面の他側縁部に当接されており、これにより、第1補強部材(21)の凹部(21a)の開口部の全体が前クロスメンバ形成部(3')で閉塞されている。この閉塞状態で、第1補強部材(21)の一側縁部が接合凸部(12)に接合されるとともに、第1補強部材(21)の他側縁部が前クロスメンバ形成部(3')に接合されている。こうして第1補強部材(21)が前クロスメンバ形成部(3')に接合一体化されることによって、前クロスメンバ(3)が形成されている。図2において、(J)は接合部(溶接部)である。こうして第1補強部材(21)が接合された状態において、前クロスメンバ(3)は閉断面構造となっており、その内部には第1補強部材(21)の凹部(21a)からなる前記中空部(2)が形成されている。
【0058】
また、図6及び図8に示すように、フレーム本体(10)の各サイドメンバ形成部(4')の上面の両側縁部には、上方突出状の接合凸部(12)(12)が対応する側縁部に沿って一体形成されている。そして、図3に示すように、このサイドメンバ形成部(4')の両接合凸部(12)(12)間の上面に、凹部(22a)を有する断面略コ字状の棒状第2補強部材(22)の両側縁部が当接されており、これにより、第2補強部材(22)の凹部(22a)の開口部の全体がサイドメンバ形成部(4')で閉塞されている。この閉塞状態で、第2補強部材(22)の両側縁部がサイドメンバ形成部(4')の対応する接合凸部(12)(12)に接合されている。こうして第2補強部材(22)がサイドメンバ形成部(4')に接合一体化されることによって、サイドメンバ(4)が形成されている。また、こうして第2補強部材(22)が接合された状態において、サイドメンバ(4)は閉断面構造となっており、その内部には第2補強部材(22)の凹部(22a)からなる前記中空部(2)が形成されている。さらに、この第2補強部材(22)には、図1(d)に示すように、上方突出状の前記第5ブラケット部(9)が接合一体化されている。なお、第5ブラケット部(9)はアルミニウム合金板材を屈曲形成したものである。
【0059】
また、図6(a)及び(c)に示すように、フレーム本体(10)の後クロスメンバ(3)における前記厚肉部(3a)両側の部位の上面の両側縁部には、上方突出状の接合凸部(12)(12)が対応する側縁部に沿って一体形成されている。そして、図1(a)、(c)及び図4に示すように、この後クロスメンバ形成部(3')の両接合凸部(12)(12)間の上面に、凹部(23a)を有する断面略コ字状の棒状第3補強部材(23)の両側縁部が当接されており、これにより、第3補強部材(23)の凹部(23a)の開口部の全体が後クロスメンバ形成部(3')で閉塞されている。この閉塞状態で、第3補強部材(23)の両側縁部が後クロスメンバ形成部(3')の対応する接合凸部(12)(12)に一体化されている。こうして第3接合部材(23)が後クロスメンバ(3')に接合一体化されることによって、後クロスメンバ(3)が形成されている。また、こうして第3補強部材(23)が接合された状態において、後クロスメンバ(3)は閉断面構造となっており、その内部には第3構成部材(23)の凹部(23a)からなる前記中空部(2)が形成されている。
【0060】
第1〜第3補強部材(21)(22)(23)は、いずれも、アルミニウム合金展伸材製のものである。特に、これら補強部材(21)(22)(23)は、5000系又は6000系のアルミニウム合金圧延材製であることが望ましく、更には、このような圧延材を所定の断面形状にプレス加工した加工品であることが、歩留まりやコスト面で有利である。なお本発明では、これら補強部材(21)(22)(23)の材料は限定されるものではなく、熱処理系アルミニウム合金であっても良いし、非熱処理系アルミニウム合金であっても良い。特に、フレーム本体(10)の材料が熱処理系合金である場合には、補強部材(21)(22)(23)の材料は熱処理系合金であることが望ましく、フレーム本体(10)の材料が非熱処理系合金である場合には、補強部材(21)(22)(23)の材料は非熱処理系合金であることが望ましい。こうすることにより、補強部材(21)(22)(23)をフレーム本体(10)に強固に接合できるようになり、補強部材(21)(22)(23)のフレーム本体(10)との接合強度が向上する。また、フレーム本体(10)及び補強部材(21)(22)(23)の材料がいずれも熱処理系合金である場合には、接合後に人工時効や自然時効を行うことが望ましく、これにより、熱影響部の強度を回復させることができる。
【0061】
また、図6(a)及び図10に示すように、フレーム本体(10)において高い面剛性が要求される部位には、突出状の補強リブ部(13)が一体形成されている。本実施形態では、この補強リブ部(13)は、フレーム本体(10)のサイドメンバ形成部(4')の上面に、サイドメンバ形成部(4')の延びる方向に略ジグザグ状に一体形成されている。この補強リブ部(13)によってフレーム本体(10)が補強されている。そして、第2補強部材(22)がサイドメンバ形成部(4')に接合されることにより、補強リブ部(13)が第2補強部材(22)によって覆われて隠蔽されている。
【0062】
本発明では、各補強部材(21)(22)(23)をフレーム本体(10)に接合する接合手段は限定されるものではなく、例えば冶金的接合手段(レーザ溶接、摩擦撹拌接合、MIG溶接、スポット溶接等)であっても良いし、機械的接合手段(リベット、ボルト等)であっても良いし、接着剤であっても良い。これらの接合手段のうち、本発明では特にレーザ溶接であることが望ましい。このようにレーザ溶接を接合手段として適用することにより、補強部材(21)(22)(23)をフレーム本体(10)に強固に接合できるようになる。その理由は次のとおりである。すなわち、フレーム本体(10)は鋳物製であるから、一般に、該フレーム本体(10)の内部には鋳造時に巻き込まれた空気等のガスが含有されている。そのため、このガスが接合時にフレーム本体(10)内部から多量に放出されてしまい、接合部(J)に気孔が発生し易い。このように気孔が発生すると、接合強度が低下するという問題が生じる。そこで、本発明では接合手段としてレーザ溶接を適用する。こうすることにより、気孔の発生を抑制することができ、補強部材(21)(22)(23)をフレーム本体(10)に強固に接合でき、もって補強部材(21)(22)(23)のフレーム本体(10)との接合強度が向上する。また、レーザ溶接によれば、溶け込みが深く、熱影響部が非常に少ないものとなり得るため、補強部材(21)(22)(23)をフレーム本体(10)に良好に接合することができる。
【0063】
さらに、このレーザ溶接は、フッ化物系フラックス材を含有した溶加材を用いて行うことが望ましい。こうすることにより、前記気孔の発生を顕著に抑制することができ、補強部材(21)(22)(23)をフレーム本体(10)に更に強固に接合できるようになる。
【0064】
接合手段がレーザ溶接である場合において、そのレーザ溶接法について図11を参照して説明すると次のとおりである。
【0065】
同図において、(30)はレーザ光、(31)はレーザ集光ヘッドである。また、(35)は棒状又はワイヤ状の溶加材である。溶加材(35)はフッ化物系フラックス材を含有したものである。
【0066】
レーザ光(30)は、レーザ発振器(図示せず)によって発振されてレーザ集光ヘッド(31)によって集光される。そして、集光されたレーザ光(30)は、同図に示すように、フレーム本体(10)の前クロスメンバ形成部(3')と第1補強部材(21)との当接部(T)(即ち接合予定部)の外面に照射される。このレーザ光(30)の照射によって当接部(T)やその近傍が溶融し、もって第1補強部材(21)が前クロスメンバ形成部(3')に接合される。溶加材(35)は、このレーザ溶接時に前記当接部(T)に連続的に供給される。本発明では、レーザ光(30)としては、様々な波長のレーザ光が用いられ、例えばYAGレーザ光、CO2レーザ光が好適に用いられる。各サイドメンバ形成部(4')と第2補強部材(22)との接合、並びに後クロスメンバ(3')と第3補強部材(23)との接合についても、上記と同様に行われる。
【0067】
溶加材(35)において、フッ化物系フラックス材はK−Al−F系フラックス材であることが望ましい。K−Al−F系フラックス材の成分について具体的に例示すると、一般式:KnAlFn+3(nは1以上の整数)で表されるKAlF4、K2AlF5、K3AlF6、KFとAlF3との混合物又は共晶組成物、およびフルオロアルミン酸カリウム錯体のうちのいすれか1種、あるいは2種以上の混合材料が挙げられる。また、この溶加材(35)に含有されるベース材はAl−Si系材料であることが望ましく、特にAl−10質量%Si材、JIS A4043材及びJIS A4047材のうちいずれか1種、あるいは2種以上の混合材料であることが望ましい。
【0068】
而して、上記実施形態のフレーム(1)は次のような利点を有している。すなわち、フレーム(1)は中空であり、且つフレーム本体(10)がアルミニウム合金鋳物製であり、更に補強部材(21)(22)(23)がアルミニウム合金展伸材製であるため、フレーム(1)は極めて軽量になっている。したがって、このフレーム(1)を自動車にサブフレームとして取り付けることにより、自動車の燃費が向上する。
【0069】
さらに、このフレーム(1)では、フレーム本体(10)が鋳物製であるから、フレーム(1)の製造コストを引き下げることができる。また、フレーム本体(10)と補強部材(21)(22)(23)との組み付けによってフレーム(1)が製作されているので、該フレーム(1)を容易に製作することができる。
【0070】
さらに、補強部材(21)(22)(23)は展伸材製であるから、フレーム(1)は高い強度や高い剛性を有していることはもとより、優れた靱性及び耐衝撃性をも具備している。
【0071】
さらに、フレーム本体(10)において高い面剛性が要求される部位には、図6(a)及び図10に示すように、補強リブ部(13)が形成されているので、フレーム(1)は極めて高い強度及び剛性を有しており、優れた強度的信頼性を有している。
【0072】
さらに、フレーム本体(10)における互いに隣接する2つのメンバ形成部(33'(3')(4')(4')が補強片部(11)によって補強されているので、フレーム(1)の強度及び剛性は更に向上している。
【0073】
また、フレーム本体(10)の上面に補強部材(21)(22)(23)が当接された状態で、フレーム本体(10)に補強部材(21)(22)(23)が接合一体化されているから、補強部材(21)(22)(23)のフレーム本体(10)との接合作業をフレーム本体(10)の上面側からだけで行うことができる。そのため、かかる接合作業を容易に行うことができる。
【0074】
さらに、フレーム本体(10)に第1ブラケット部(6)、第2ブラケット部(7)及び第3ブラケット部(8)が一体形成されているから、部材点数が少なく、そのためフレーム(1)を更に容易に製作することができ、もってフレーム(1)の製造コストを大幅に引き下げることができる。
【0075】
図12は、この発明の上記実施形態に係るフレームの第1変形例を示す、図2に対応する位置の断面図である。
【0076】
この第1変形例では、フレーム本体(10)の前クロスメンバ形成部(3')の接合凸部(12)の内面の上端部には、段部(12a)が設けられている。また、前クロスメンバ形成部(3')の上面の他側縁部には、上方突出状の接合凸部(12)が該側縁部に沿って一体形成されている。そして、第1補強部材(21)の一側縁部が段部(12a)で受けられた状態で接合凸部(12)に接合されるとともに、第1補強部材(21)の他側縁部が前クロスメンバ形成部(3')の上面に当接された状態で接合凸部(12)に接合されている。
【0077】
図13は、この発明の上記実施形態に係るフレームの第2変形例を示す、図3に対応する位置の断面図である。
【0078】
この第2変形例では、フレーム本体(10)のサイドメンバ形成部(4')における両接合凸部(12)(12)外側の上面に、第2補強部材(22)の両側縁部が当接されている。そして、この状態で、第2補強部材(22)の両側縁部がサイドメンバ形成部(4')に接合されている。なお、この第2変形例では、接合凸部(12)は位置決め凸部として機能している。
【0079】
以上で、この発明の幾つかの好ましい実施形態について説明したが、この発明は上記実施形態及び変形例に示すものに限定されるものではなく、様々に設定変更可能である。
【0080】
例えば、フレーム本体(10)は、アルミニウム鋳物製であっても良いし、マグネシウム又はマグネシウム合金鋳物製であっても良い。また、補強部材(21)(22)(23)は、アルミニウム製であっても良いし、マグネシウム又はマグネシウム合金製であっても良い。
【0081】
また、フレームの上部に形成されるブラケット部の個数が、該フレームの下部に形成されるブラケット部の個数よりも多い場合等においては、フレームの上部をフレーム本体とし、このフレーム本体の下面に補強部材を接合一体化することにより、フレームを製作しても良い。
【0082】
また、補強部材(21)(22)(23)の凹部(21a)(22a)(23a)の開口部は、必ずしもその全体がフレーム本体(10)で閉塞されている必要はなく、つまり凹部(21a)(22a)(23a)の開口部の一部が開いた状態になっていても良い。
【0083】
【発明の効果】
上述の次第で、この発明は次の効果を奏し得る。
【0084】
(1)の発明によれば、フレーム本体が鋳物製であるから、フレームの製造コストを引き下げることができる。さらに、フレーム本体が板状であるから、フレームの軽量化を図ることができる、さらに、フレーム本体が補強部材によって補強されるので、フレームの強度や剛性を向上させることができる。さらに、補強部材のフレーム本体との接合作業をフレーム本体の片面側からだけで行うことができる。そのため、かかる接合作業を容易に行うことができ、ひいてはフレームの製造コストを更に引き下げることができる。
【0085】
(2)の発明によれば、補強部材が展伸材製であるから、フレームの強度や剛性を向上させることができるし、その上、靱性や耐衝撃性についても向上させることができる。
【0086】
(3)の発明によれば、フレームの強度や剛性を更に向上させることができる。
【0087】
(4)の発明によれば、補強部材のフレーム本体との接合強度を向上させることができる。
【0088】
(5)の発明によれば、補強部材のフレーム本体との接合強度を更に向上させることができる。
【0089】
(6)の発明によれば、補強部材のフレーム本体との接合強度を向上させることができる。
【0090】
(7)の発明によれば、フレームの強度や剛性を更に向上させることができる。
【0091】
(8)の発明によれば、フレームの強度や剛性を更に向上させることができる。
【0092】
(9)の発明によれば、フレームを更に容易に製作することができる。
【0093】
(10)の発明によれば、フレームの軽量化を確実に図ることができる。
【0094】
(11)の発明によれば、優れた強度的信頼性を有する車両が提供され、また車両の燃費が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係る車両用フレームを示す、平面図を中心として各側面図を展開した図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は背面図、(d)は側面図である。
【図2】図1(a)中のA−A線断面図である。
【図3】図1(a)中のB−B線断面図である。
【図4】図1(c)中のC−C線断面図である。
【図5】同フレームのブッシュ装着部の拡大斜視図である。
【図6】同フレームのフレーム本体を示す、平面図を中心として各側面図を展開した図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は背面図、(d)は側面図である。
【図7】図6(a)中のD−D線断面図である。
【図8】図6(a)中のE−E線断面図である。
【図9】図6(c)中のF−F線断面図である。
【図10】同フレーム本体のブッシュ装着部の拡大斜視図である。
【図11】補強部材をフレーム本体にレーザ溶接によって接合一体化する途中の状態を示す、図2に対応する位置の断面図である。
【図12】この発明の上記実施形態に係る車両用フレームの第1変形例を示す、図2に対応する位置の断面図である。
【図13】この発明の上記実施形態に係る車両用フレームの第2変形例を示す、図3に対応する位置の断面図である。
【符号の説明】
1…フレーム(サブフレーム)
2…中空部
3…クロスメンバ
4…サイドメンバ
5、6、7、8、9…ブラケット部
10…フレーム本体
11…補強片部
13…補強リブ部
21、22、23…補強部材
J…接合部
Claims (11)
- 板状の鋳物製フレーム本体と、該フレーム本体を補強する補強部材とを備えるとともに、
前記フレーム本体の片面に前記補強部材が当接した状態で、前記フレーム本体に前記補強部材が接合一体化されていることを特徴とする車両用フレーム。 - 前記補強部材は展伸材製である請求項1記載の車両用フレーム。
- 前記補強部材は、凹部を有するとともに、該凹部の開口部の少なくとも一部が前記フレーム本体で閉塞された状態で、接合一体化されている請求項1又は2記載の車両用フレーム。
- 前記補強部材がレーザ溶接によって接合一体化されている請求項1〜3のいずれか1項記載の車両用フレーム。
- 前記レーザ溶接はフッ化物系フラックス材を含有した溶加材を用いたものである請求項4記載の車両用フレーム。
- 前記フレーム本体の材料は熱処理系合金又は非熱処理系合金であり、
前記補強部材の材料は前記フレーム本体の材料と同系の合金である請求項1〜5のいずれか1項記載の車両用フレーム。 - 前記フレーム本体に補強リブ部が一体形成されている請求項1〜6のいずれか1項記載の車両用フレーム。
- 前記フレーム本体は、その片面側から見て、180°未満の角度をなして隣接する2つの部位を有するとともに、該両部位間の隅部において補強片部が両部位に跨って両部位に一体形成されている請求項1〜7のいずれか1項記載の車両用フレーム。
- 前記フレーム本体に、他の部材と接続される少なくとも1個のブラケット部が一体形成されている請求項1〜8のいずれか1項記載の車両用フレーム。
- 前記フレーム本体及び前記補強部材のうち少なくとも一方の部材の材料が、アルミニウム又はアルミニウム合金か、あるいはマグネシウム又はマグネシウム合金である請求項1〜9のいずれか1項記載の車両用フレーム。
- 請求項1〜10のいずれか1項記載のフレームを備えていることを特徴とする車両。
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