JP2004209922A - 液滴吐出ヘッド・液体カートリッジ・画像形成装置 - Google Patents
液滴吐出ヘッド・液体カートリッジ・画像形成装置 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】インクに対して耐性のある保護膜を有する加圧液室形成部材の反りを減少させることができ、よってノズル形成部材や振動板との接合時の不良を抑制でき、良好な液滴吐出機能を長期に亘って維持できるようにする。
【解決手段】加圧液室形成部材51をシリコンで形成し、該加圧液室形成部材の51ノズル形成部材50に対する接合面の凹部と、該加圧液室形成部材51の振動板52に対する接合面の凹部の体積が略同じであるようにする。51ノズル形成部材50に対する接合面に、加圧液室51bと同等の体積の擬似液室パターン51cを形成する。
【選択図】 図1
【解決手段】加圧液室形成部材51をシリコンで形成し、該加圧液室形成部材の51ノズル形成部材50に対する接合面の凹部と、該加圧液室形成部材51の振動板52に対する接合面の凹部の体積が略同じであるようにする。51ノズル形成部材50に対する接合面に、加圧液室51bと同等の体積の擬似液室パターン51cを形成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インク等の液滴を吐出する液滴吐出ヘッド、該液滴吐出ヘッドを有する液体カートリッジ及び該液滴吐出ヘッドを有する複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ等の画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ等の画像形成装置として用いられるインクジェット記録装置は、インク滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室(インク流路、吐出室、圧力室、加圧液室、流路とも称される。)と、この液室内のインクを振動板を介して加圧するための駆動手段(圧力発生手段)とを備えた液滴吐出ヘッドとしてのインクジェットヘッドを搭載している。
液滴吐出ヘッドとしては、例えば液体レジストを液滴として吐出する液滴吐出ヘッド、DNAの試料を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドなどもあるが、以下ではインクジェットヘッドを中心に説明をする。
【0003】
インクジェット記録装置は記録時の騒音が極めて小さいこと、高速印字が可能なこと、インクの自由度が高く安価な普通紙を使用できることなど多くの利点を有する。この中でも記録の必要なときにのみインク液滴を吐出するいわゆるインク・オン・デマンド方式が記録に不要なインク液滴の回収を必要としないため現在主流となっている。
インク・オン・デマンド方式のインクジェットヘッドとしては、駆動手段が圧電素子であるもの(特公平2−51734号公報参照)や、インクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインクを吐出させる方式のもの(特公昭61−59911号公報参照)、駆動手段に静電気力を利用したもの(特開平5−50601号公報参照)などがある。
【0004】
インクジェットヘッドは記録媒体上のドットをインク滴により構成する関係上、インク滴のサイズを小さくすることにより、極めて高い解像度での記録、印刷が可能である。しかしながら、効率よく記録するためには、インク開口(ノズル)の数を多くする必要があり、また圧力室(加圧液室)を大きくする必要がある。
このことはヘッドの小型化要請とは相反することである。このような相反する問題を解消するため、通常隣り合う圧力室を区画している壁(隔壁)を薄くすると共に圧力室の形状を長手方向に大きくして容積を稼ぐことが行われている。
このような圧力室やリザーバ(液溜め室)は振動板とノズルプレートの間隔を所定の値に保持する部材である液室形成部材に形成されているが、上述したように極めて小さく、しかも複雑な形状を備えた加圧液室を形成する必要上、加圧液室形成部材の加工には通常エッチング技術が使用されている。
【0005】
このような加圧液室形成部材を形成する材料としては感光性樹脂膜が使用されることが多いが、これは機械的強度が低いためクロストークや撓み等が生じやすく、高い解像度を得ようとすると印字品質が低下するという問題がある。
そこで比較的簡単な手法で微細な形状を高い精度で加工が可能なシリコン単結晶基板の異方性エッチングを用いた部品製作技術、いわゆるマイクロマシニング技術を適用してインクジェット式記録ヘッドを構成する部材を加工することが検討され、種々な技術や手法が提案されている。
特に結晶方位(110)の単結晶シリコン基板を加圧液室形成部材に用いて、異方性エッチングを行い、圧力室やリザーバを形成することが提案されている。単結晶シリコンを使用したスペーサは機械的剛性が高いため、特に圧電振動子を圧力発生手段として使用する場合に圧電振動子の変形に伴う記録ヘッド全体の撓みを小さくできるとともに、エッチングを受けた壁面が表面に対してほぼ垂直であるため圧力発生室を均一に構成することが可能であるという大きな利点を備えている。
上記方法によって形成された加圧液室形成部材は、アルカリ系のインクに溶出してしまうため、保護膜として酸化膜あるいは窒化チタン膜などが利用されている。
【0006】
特開平10−264383号公報には、シリコン基板に形成されたインクが収容されるインクキャビティと、インクキャビティ内の圧力を変化させ、インクキャビティ内に収容されたインクを外部に吐出させる圧電素子とを備え、インクキャビティの内壁表面に親水性及び耐アルカリ性を備えた膜、例えばニッケル酸化膜やシリコン酸化膜を形成した構成が開示されている。
特開平11−348282号公報には、インク室、インク供給口、インクリザーバーが形成された基板の上側に接着剤を用いてノズル孔が形成された基板を接合した構成が開示されている。インク室等が形成された基板にはインク室、リザーバーの縁に沿って複数の凹部が千鳥状に配設されており、残余の接着剤をこの凹部内に収容して接着剤がインク流路内に流れ込むことを防止することを特徴としている。
【0007】
シリコン単結晶基板を異方性エッチングして液室形成部材を形成する場合、シリコン単結晶基板に圧力室やインク流路となる空間がエッチングにより形成され、このシリコン単結晶基板(液室形成部材)は金属製のノズルプレートや振動版と接着剤等で貼り合わされて積層される。
しかしながら、シリコン単結晶と金属の線膨張率は一般に相違するため、流路ユニットではいわゆる「反り」が発生することがある。このことは、記録ヘッドの大型化を困難にする要因である。
特開2001−270117号公報には、液室形成部材における「反り」の発生を抑制するために、電鋳により形成されたシリコン基板と電鋳部の2層構造とする構成が開示されている。また、ノズルプレートと液室形成部材を線膨張率が近い材料で形成することを特徴としている。
特開2001−301176号公報には、異なる材料を接合するときの残留応力を緩和して歪や剥離等が生じることを防止するため、ノズル基板としてニッケルを使用し、液室基板としてシリコンを使用した場合、線膨張係数の大きいニッケルを使用したノズル基板の接合面に肉抜きを設け、加熱接合時の線膨張係数の差による残留応力を緩和する構成が開示されている。
【0008】
【特許文献1】
特公平2−51734号公報
【特許文献2】
特公昭61−59911号公報
【特許文献3】
特開平5−50601号公報
【特許文献4】
特開平10−264383号公報
【特許文献5】
特開平11−348282号公報
【特許文献6】
特開2001−270117号公報
【特許文献7】
特開2001−301176号公報
【特許文献8】
特開2002−254638号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような保護膜を形成することによりシリコンのインクへの溶出は防止することが可能になるが、該保護膜の膜応力により加圧液室形成部材に反りが生じてしまうという不具合があった。
反りを生じてしまうことで加圧液室形成部材とノズル板(ノズル形成部材)あるいは振動板との接合時に接合不良が生じてしまう可能性があった。このような問題は印刷の高速化に伴いヘッドの長尺化が進むにつれてより重要な問題となる。
【0010】
本発明は、インクに対して耐性のある保護膜を有する加圧液室形成部材の反りを減少させることができ、よってノズル形成部材や振動板との接合時の不良を抑制でき、良好な液滴吐出機能を長期に亘って維持できる信頼性の高い液滴吐出ヘッド、該液滴吐出ヘッドを有する液体カートリッジ及び該液滴吐出ヘッドを有する画像形成装置の提供を、その目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明では、複数のノズルが形成されるノズル形成部材と、前記ノズルに連通する加圧液室が形成される加圧液室形成部材と、前記ノズルから液滴を吐出させるための圧力を前記加圧液室に伝搬させる振動板を備えた液滴吐出ヘッドにおいて、前記加圧液室形成部材がシリコンで形成されており、該加圧液室形成部材の前記ノズル形成部材に対する接合面の凹部と、該加圧液室形成部材の前記振動板に対する接合面の凹部の体積が略同じである、という構成を採っている。ここで、「凹部」とは、堀加工された部分をいう(以下、同じ)。
【0012】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記加圧液室形成部材の両面の凹部の体積の比が、0.25〜4.0の範囲にある、という構成を採っている。
【0013】
請求項3記載の発明では、請求項1または2記載の液滴吐出ヘッドにおいて、少なくとも前記加圧液室形成部材の液体接触部に耐液性薄膜が形成されている、という構成を採っている。
【0014】
請求項4記載の発明では、請求項3記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記加圧液室形成部材の前記ノズル形成部材に対する接合面側と、該加圧液室形成部材の前記振動板に対する接合面側の表面積が略同じである、という構成を採っている。
【0015】
請求項5記載の発明では、請求項4に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記加圧液室形成部材の両面の表面積の差[mm2]が、1200000/(前記加圧液室形成部材の長辺の長さ[mm]の2乗)以下である、という構成を採っている。
【0016】
請求項6記載の発明では、請求項3記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記耐液性薄膜が、酸化膜または窒化チタン膜である、という構成を採っている。
【0017】
請求項7記載の発明では、請求項3乃至6のうちの何れか1つに記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記加圧液室形成部材の前記ノズル形成部材に対する接合面側と、該加圧液室形成部材の前記振動板に対する接合面側に形成されている前記耐液性薄膜の持つ内部応力の差[MPa.]が、60000/(前記加圧液室形成部材の長辺の長さ[mm]の2乗)以下である、という構成を採っている。
【0018】
請求項8記載の発明では、請求項3乃至6のうちの何れか1つに記載の液滴吐出ヘッドにおいて、該加圧液室形成部材の前記ノズル形成部材に対する接合面の凹部と、該加圧液室形成部材の前記振動板に対する接合面の凹部の周囲長の差[mm]が、36000000/(前記加圧液室形成部材の長辺の長さ[mm]の2乗)以下である、という構成を採っている。
【0019】
請求項9記載の発明では、請求項1乃至8のうちの何れか1つに記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記加圧液室形成部材の前記ノズル形成部材に対する接合面と、該加圧液室形成部材の前記振動板に対する接合面のいずれか一方の面または両面に不純物が導入拡散され、応力が制御されている、という構成を採っている。
【0020】
請求項10記載の発明では、請求項9記載の液滴吐出ヘッドにおいて、導入する不純物の種が、応力緩和又は熱酸化膜応力を低減するN型(P、Asなど)である、という構成を採っている。
【0021】
請求項11記載の発明では、請求項9記載の液滴吐出ヘッドにおいて、導入する不純物の種が、応力緩和または熱酸化膜応力を増加させるP型(Bなど)である、という構成を採っている。
【0022】
請求項12記載の発明では、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、該液滴吐出ヘッドに液体を供給するタンクを一体化した液体カートリッジにおいて、前記液滴吐出ヘッドが、請求項1乃至11のうちの何れか1つに記載の液滴吐出ヘッドである、という構成を採っている。
【0023】
請求項13記載の発明では、液滴吐出ヘッドにより液滴を吐出させて画像を形成する画像形成装置において、前記液滴吐出ヘッドが、請求項1乃至11のうちの何れか1つに記載の液滴吐出ヘッドである、という構成を採っている。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1の実施形態を図1乃至図13に基づいて説明する。
まず、図12及び図13に基づいて、本実施形態における画像形成装置としてのインクジェット記録装置の構成の概要を説明する。
記録装置本体1の内部には、主走査方向に移動可能なキャリッジ、キャリッジに搭載したインクジェットヘッドからなる記録ヘッド、記録ヘッドヘのインクを供給するインクカートリッジ等で構成される印宇機構部2等が収納されている。
給紙カセット4或いは手差しトレイ5から給送される用紙3を取り込み、印字機構部2によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ6に排紙するようになっている。
【0025】
印宇機構部2では、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド11と従ガイドロッド12によりキャリッジ13が主走査方向(図12で紙面垂直方向)に摺動自在に保持されている。キャリッジ13には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する液滴吐出ヘッドとしての記録ヘッド14がインク滴吐出方向を下方に向けて装着され、キャリッジ13の上側には記録ヘッド14に各色のインクを供給するための各インクタンク(インクカートリッジ)15が交換可能に装着されている。
インクカートリッジ15は上方に大気と連通する大気口、下方にはインクジェットヘッドへインクを供給する供給口を、内部にはインクが充填された多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力によりインクジェットヘッドへ供給されるインクを僅かな負圧に維持している。このインクカートリッジ15からインクを記録ヘッド14の各インクジェットヘッド内に供給する。
【0026】
本実施形態では記録ヘッド14として、各色のヘッドを用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のヘッドでもよい。記録ヘッド14を構成する個々のインクジェットヘッドとしては、圧電素子を用いてインク流路の壁面を形成する振動板を変形させてインク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させるいわゆるピエゾ型のもの、或いは、発熱抵抗体を用いてインク流路内でインクを加熱して気泡を発生させることによる圧力でインク滴を吐出させるいわゆるバブル型のもの、インク流路の壁面の少なくとも一部を形成する振動板とこれに対向する電極とを備え、静電力で振動板を変形変位させてインクを加圧する静電型のものなどを用いることができるが、本実施形態では、後述するように、静電型インクジェットヘッドを用いている。
【0027】
キャリッジ13は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド11に摺動自在に嵌装され、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド12に摺動自在に載置されている。キャリッジ13を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ17で回転駆動される駆動プーリ18と従動プーリ19との間にタイミングベルレト20が掛け回されている。このタイミングベルト20にキャリッジ13が固定されており、主走査モータ17の正逆回転によりキャリッジ13が往復駆動される。
給紙カセット4にセットされた用紙3を記録ヘッド14の下方側に搬送するために、給紙カセット4から用紙3を分離給送する給紙ローラ21及びフリクションパッド22と、用紙3を案内するガイド部材23と、給紙された用紙3を反転させて搬送する搬送ローラ24と、この搬送ローラ24の周面に押し付けられる搬送コロ25と、搬送ローラ24からの用紙3の送り出し角度を規定する先端コロ26が設けられている。搬送ローラ24は主走査モータ27によってギヤ列を介して回転駆動される。
【0028】
キャリッジ13の主走査方向の移動範囲に対応して、搬送回一ラ24から送り出された用紙3を記録記録ヘッド14の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材29が設けられている。印写受け部材29の用紙搬送方向下流側には、用紙3を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ31、拍車32が設けられ、さらに用紙3を排紙トレイ6に送り出す排紙ロ一ラ33及び抽車34と、排紙経路を形成するガイド部材35、36が配設されている。
記録時には、キャリッジ13を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド14を駆動することにより、停止している用紙3にインクを吐出して1行分を記録し、用紙3を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号、または用紙3の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙3を排紙する。
【0029】
キャリッジ13の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、記録ヘッド14の吐出不良を回復するための回復装置37が配置されている。回復装置37は、図示しないキャッピング手段、吸引手段、クリーニング手段等を有している。
キャリッジ13は印字待機中には回復装置37側に移動され、上記キャッピング手段により記録ヘッド14をキャッピングされる。これにより、吐出口部(ノズル孔)が湿潤状態に保たれ、インク乾燥による吐出不良が防止される。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持するように制御される。
【0030】
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段により記緑ヘッド14の吐出口(ノズルまたはノズル孔)が密封され、チューブを通して上記吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等が吸い出される。このように、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され、吐出不良が回復される。
吸引されたインクは、装置本体下部に設置された図示しない廃インク溜に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
【0031】
次に、図1に基づいて記録ヘッド14の要部の構成を説明する。
記録ヘッド14は、ノズル形成部材50と、加圧液室形成部材51と、振動板52と、圧力発生手段(アクチュエータ)53を有している。
ノズル形成部材50には、インク滴を飛翔させるための微細孔である多数のノズル(ノズル孔)50aが各加圧液室の先端部分(後述する連通管51a)に対応して形成されており、各ノズル50aの径は20〜35μmに設定されている。
ノズル形成部材50は、本実施形態では電鋳工法によって製造したNiの金属プレートを用いて形成されている。Niの金属プレートに限定される趣旨ではなく、シリコンやその他金属材料、あるいはポリイミド等の樹脂フィルムを用いることができる。なお、ノズル形成部材50の表面には撥水性の表面処理膜を成膜している。
【0032】
加圧液室形成部材(流路板)51には、各ノズル50aに連通する連通管51aがノズル50aに対応して形成されているとともに、振動板52に対する接合面側には、連通管51aに連通する加圧液室51bが複数形成されている。また、加圧液室形成部材51のノズル形成部材50に対する接合面側には、振動板52に対する接合面との凹部体積比が0.25〜4.0となるように擬似液室パターン51cが複数形成されている。
連通管51aは、例えばドライエッチングによる深堀と異方性エッチングにより形成されている。異方性エッチングを行うエッチング液としては、KOH水溶液、TMAH液等が使用できる。加圧液室51bは、シリコンの異方性エッチング法により形成されている。
また、加圧液室形成部材51の表面には酸化膜が形成されている。酸化膜が形成されていることで、インクに対して溶出しにくく、また濡れ性も向上するため気泡の滞留が生じにくい構造となる。これは酸化膜に限らず窒化チタン(TiN)膜、またはポリイミド膜でもかまわない。
【0033】
振動板52は、Ni電鋳工法で形成した金属プレートからなり、該振動板52の振動機能部は、圧電素子53内の非駆動部に接合する梁部52aと、圧電素子53内の駆動部に接合する島状凸部51bと、該島状凸部51bの周囲に形成された厚み2〜10μm程度の最薄膜部分(ダイヤフラム領域)52cを有している。
圧力発生手段53は、セラミックス基板、例えばチタン酸バリウム、アルミナ、フォルステライトなどの絶縁性の基板54上に、電気機械変換素子である複数の積層型圧電素子55を列状に2列配列して接合し、これら2列の各圧電素子55をダイシングにより切断を行って形成されている。
各列の複数の圧電素子55はチャンネル方向で駆動波形を印加する駆動部55aと、駆動波形を印加しない非駆動部55bを交互に構成している。圧電素子55は、厚さ10〜50μm/層のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)と、厚さ数μm/層の銀パラジューム(AgPd)からなる内部電極とを交互に積層したものである。
【0034】
圧電素子55を厚さ10〜55μm/層の積層型とすることによって低電圧駆動を可能としている。なお、電気機械変換素子としてはPZTに限られるものではない。
また、加圧液室51b内の液体を加圧する圧力を発生する圧力発生手段53としては、電気機械変換素子として圧電素子55を有する例を説明したが、これに限るものではない。例えば、静電気で振動板を変形させる静電型、あるいは熱エネルギーによってインクにバブルを発生させるサーマルインクジェット型、音響波エネルギーによってインクを吐出する音響型、放電のエネルギーによってインクを吐出するスパークジェット型なども適用可能である。
圧力発生手段53における圧力発生は次のようになされる。例えば、特開2002−254638号公報に開示されているように、圧電素子55の内部電極を交互に端面に取り出して端面電極とし、一方、基板上に共通電極パターン及び個別電極パターンを駆動部となる圧電素子55の端面電極に導電性接着剤等を介して電気的に接続し、共通電極パターン及び共通電極パターンに接続したFPCケーブルを介してPCB基板と接続して駆動部に駆動波形を印加することによって積層方向の伸びの変位を発生させる。
【0035】
図2、図3は、加圧液室形成部材のノズル接合面と振動板接合面の形状を示す概要平面図である。図2は従来例における加圧液室形成部材200の形状で、図3が本実施形態における加圧液室形成部材51の形状である。また、各図において、(a)はノズル接合面側の形状、(b)は振動板接合面側の形状を示している。
従来においては、図2(a)、(b)に示すように、ノズル形成部材に対する接合、及び振動板に対する接合時に生じる余剰接着剤を吸収するための肉抜き部200aが形成されている。図2において、符号200bは連通管を、200cは加圧液室をそれぞれ示している。図3において、符号51dはノズル形成部材50に対する接合、及び振動板52に対する接合時に生じる余剰接着剤を吸収するための肉抜き部を示している。
【0036】
従来の形状では、ノズル接合面側と振動板接合面側でその形状や接合面積が大きく異なるため、耐インク性の保護膜を形成した場合に膜応力による反りが発生する。例えば、酸化膜で0.70μmの厚みの保護膜を形成した場合は6μm以上の反りが発生する。
このような加圧液室形成部材の反りが発生する場合、接合時に接合不良箇所が発生してしまう不具合が生じてしまう。
上記反りの発生を低減すべく、本実施形態では、図3(a)、(b)に示すように、ノズル接合面側における余剰接着剤を吸収するための肉抜き部パターンの一部を擬似液室パターン51cにして、振動板接合面側、ノズル接合面側の肉抜き部の体積(凹部体積)、形状をほぼ同等とするようにしている。
このような形状にすることにより、シリコン母材の持つ内部応力が、ノズル接合面側、振動板接合面側において同様に低減(歪開放)され、形状の差に起因する加圧液室形成部材51の反りを低減することができる。
【0037】
図4及び図5に、本実施形態における加圧液室形成部材51の一部(1ビット分)のノズル接合面側(a)、振動板接合面側(b)における(1)、(2)、(3)部位での断面図を示す。
図4のハッチング領域が凹部を示しており、このように略同体積の肉抜きとすることでシリコン母材の歪を小さく抑えることができる。図5の斜線領域及び太線部分が肉抜きによる表面積に差異が生じる部分を示している。この表面積の差により、保護膜形成面積差により生ずる両面の膜応力の差により加圧液室形成部材51に反りが発生する。この表面積差を少なくすることにより、保護膜形成による反りは非常に小さく抑えることができる。
加圧液室形成部材51を上記形状にすることにより、接合不良のない高信頼性の液滴吐出ヘッド14を形成することが可能となる。以下にその根拠を実験データに基づいて説明する。
【0038】
図6は、加圧液室形成部材51のノズル接合面と振動板接合面の排除体積の比における強度減少による反り量の実験結果のグラフを示す。図6に示す結果から、反り量を3μm以下に抑えるためには、両面の体積比を0.25から4.0の範囲にすることが必要であることが判る。
次に、図7に、ノズル接合面と振動板接合面の表面積の差と酸化膜を膜厚1.00μmで形成した場合の加圧液室形成部材51の反り量の実験結果のグラフを示す。反り量を3μm以下に抑えるためには、両面の表面積の差[単位:mm2]を、1200000/(チップ長さL[mm]の2乗)以下にすることが必要である。ここで、チップ長さLは、前記加圧液室形成部材の長辺の長さを意味する(以下、同じ)。
反り量を3μm以下に抑えることで加圧液室形成部材51の反りに起因する接合不良をほぼなくすことが可能であることが本発明者らの実験により確認された。
【0039】
図8に、ヤング率が約170MPa.のシリコンを使用した場合の膜応力の差による反り量の実験結果のグラフを示す。反り量を3μm以下に抑えるためにはチップ長さL=20mmで100MPa.以下にすることが必要であることが判る。60000/(チップ長さL[mm]の2乗)以下の応力とすることにより、反り量を3μm以下に抑えることができ、加圧液室形成部材51の反りに起因する接合不良をほぼなくすことが可能であることが本発明者らの実験により確認された。
この応力差(表面積差による応力)を簡便に計算するには、各接合面の凹部の周囲長により形成される側面の面積に相当する膜応力差を上記とすることになる。また、酸化膜自身の持つ内部応力は成膜条件(酸化温度)、あるいは不純物を導入することにより制御する(VLSI TECHNOLOGY edited by Sze)。
【0040】
成膜条件による応力制御は全応力の制御であり、両面の面積差による応力差を補うにはあまり効果がないが、不純物による応力制御は、ノズル接合面側、振動板接合面側を独立に制御できるため、表面積差を補うには効果的である。
図9に、加圧液室形成部材51の全体に不純物を導入することによる応力変化に対する反りの影響についての実験結果のグラフを示す。
ある濃度域で極値をもつ傾向となり、濃度、不純物導入領域を制御することにより反りを制御することが可能となる。応力を低減する場合には、例えば、導入する不純物の種類はN型[P(リン)、As(ヒ素)など]とし、応力を増加させる場合には、導入する不純物の種類はP型[B(ホウ素)など]とする。
【0041】
次に、図10及び図11に基づいて、本実施形態における加圧液室形成部材51の製造工程(製造方法)を説明する。
まず、図10(a)に示すように、厚さが400μmでSi(110)のシリコン基板56を用意し、その両表面に厚さ1.00μmのシリコン酸化膜57及び0.20μmのLP−CVD窒化膜58を形成した。次に、図10(b)に示すように、ノズル接合面側に連通管形成パターン59と、接合時の余剰接着剤を流れ込ませる肉抜きパターン60、61の形状にレジストのパターニング62を行い、その後窒化膜58をドライエッチングにてパターニングを行った。この工程では肉抜きパターン(擬似液室パターン51cの基礎)61を加圧液室51bとほぼ同じ形状にて形成した。また該肉抜きパターンを各々連通させてさらに外部に連通させる連通口のパターンに窒化膜58のパターニングを行った。
【0042】
次に、図10(c)に示すように、レジストのパターニング64を行い、その後シリコン酸化膜57を連通管形成パターン65の形状にドライエッチングにてパターニングを行った。その後、図10(d)に示すように、レジストのパターニング64を除去するとともに、加圧液室のパターン66及び振動板52との接合時の余剰接着剤を流れ込ませる肉抜きパターン67の形状にレジストのパターニング68を行い、その後窒化膜58のパターニングをノズル接合面側と同様にドライエッチングにて行った。
次に、図10(e)に示すように、連通管形成パターン69の形状にシリコン酸化膜57のパターニングを行った。シリコン酸化膜57のエッチング時のレジストパターンは70である。その後図10(f)に示すように、ICPドライエッチャーを使用して連通管形状71のパターニングを行った。この際のレジスト72の膜厚は8μmにて行った。ICPエッチャーを使用してのドライエッチングは300μmの深さまで行った。
【0043】
その後図10(g)に示すように、レジスト72を除去すべく水酸化カリウム水溶液によりシリコンの異方性エッチングを行い、連通管51aを貫通させた。水酸化カリウム水溶液による連通管51aの貫通工程ではノズル接合面側、振動板接合面側両面よりエッチングを行った。連通管51aの貫通直後は異方性エッチングによる傾斜部が発生するが、本実施形態では該傾斜部をこの連通管貫通工程にて後退させて傾斜部全てのエッチングを行った。
その後図11(h)に示すように、窒化膜58をマスクとして希ふっ酸によりシリコン酸化膜57のウェットエッチング73を行った。その後図11(i)に示すように、再度水酸化カリウム水溶液によりシリコンの異方性エッチングを行い、加圧液室51b及び擬似液室51cの形成を行った。加圧液室51b形成時のシリコンの異方性エッチングは、水酸化カリウム水溶液濃度30%、処理温度85℃で行った。最後に図11(j)に示すように、窒化膜58及びシリコン酸化膜57の除去を行い、その後耐インク接液膜としてシリコン酸化膜を1.00μmの厚さで形成してインクジェット用の加圧液室形成部材51の形成(加工)を行った。
【0044】
上述のように、本実施形態では、加圧液室形成部材51におけるノズル接合面側と振動板接合面側との排除体積がほぼ同じになるように、またノズル接合面側には疑似加圧液室51cを形成し、表面積もほぼ同じになるようにパターニングを行った。
上記方法にて作成した加圧液室形成部材51を用いた記録ヘッド14の組み立て(接合)を行ったところ、接液保護膜形成時でも反り量は2μm以下に抑えることができ、さらに加熱接合時に疑似加圧液室(擬似液室パターン)51c中の気体が膨張することによる接合不良も防ぐことができることが確認された。
【0045】
以下に他の実施形態を説明する。なお、上記実施形態と同一部分は同一符号で示し、特に必要がない限り既にした構成上及び機能上の説明は省略し、要部のみ説明する。
図14及び図15に基づいて、第2の実施形態(加圧液室形成部材の製造方法)を説明する。
まず、図14(a)に示すように、厚さが400μmでSi(110)のシリコン基板56を用意し、その両表面に0.15μmのLP−CVD窒化膜75を形成した。次に、図14(b)に示すように、ノズル接合面側にノズル接合面側連通管パターン76と、接合時の余剰接着剤を流れ込ませる肉抜きパターン77、78の形状にレジストのパターニング79を行い、その後窒化膜75をドライエッチングにてパターニングを行った。この工程では肉抜きパターン(擬似液室パターン51cの基礎)78を加圧液室51bとほぼ同じ形状にて形成した。
また、該肉抜きパターンを各々連通させてさらに外部に連通させる連通口のパターンに窒化膜75のパターニングを行った。
【0046】
次に、図14(c)に示すように、レジスト79を除去するとともに、加圧液室のパターン80及び振動板52との接合時の余剰接着剤を流れ込ませる肉抜きパターン81の形状にレジストのパターニング82及び窒化膜75のパターニングを行った。次に、図14(d)に示すように、レジスト82を除去するとともに、高温酸化膜83を0.250μmの厚さで窒化膜75及びシリコン基板56を覆うように形成を行った。
次に、図14(e)に示すように、前記高温酸化膜83の上に0.15μmのLP−CVD窒化膜84を形成し、ノズル接合面側及び振動板接合面側の窒化膜75及び高温酸化膜83を連通管の形状にドライエッチングにより形成した。その後図14(f)に示すように、ICPドライエッチャーを使用して連通管形状85のパターニングを行った。この際のレジスト86の膜厚は8μmにて行った。
その後図14(g)に示すように、レジスト86を除去して水酸化カリウム水溶液によりシリコンの異方性エッチングを行い、連通管51aを貫通させた。
【0047】
その後図15(h)に示すように、上層の窒化膜84を熱燐酸により除去した。高温酸化膜83は、上層の窒化膜84を除去する際のストップ層として使用している。続いて、高温酸化膜83を希ふっ酸により除去した。その後図15(i)に示すように、再度水酸化カリウム水溶液によりシリコンの異方性エッチングを行い、加圧液室51b及び擬似液室51を形成した。加圧液室51b形成時のシリコンの異方性エッチングは水酸化カリウム水溶液濃度30%、処理温度85℃で行った。
最後に図15(j)に示すように、窒化膜75の除去を行い、その後耐インク接液膜としてシリコン酸化膜を1.00μmの厚さで形成してインクジェット用の加圧液室形成部材51の形成を行った。
【0048】
本実施形態では、上述のように、加圧液室形成部材51におけるノズル接合面側と振動板接合面側との排除体積がほぼ同じになるように、またノズル接合面側に疑似加圧液室51cを形成し、表面積もほぼ同じになるようにパターニングを行った。さらに各々の疑似加圧液室51cを連通させ、さらに外部に連通させるように連通口を形成した。
上記方法にて作成した加圧液室形成部材51を用いて記録ヘッド14の組み立て(接合)を行ったところ、接液保護膜形成時でも反り量は2μm以下に抑えることができた。また、窒化膜75のみを加圧液室51b形成時のマスクとしているため、より高精度の寸法制御が可能となった。
【0049】
次に、図16に基づいて、第3の実施形態(加圧液室形成部材の製造方法)を説明する。
まず、図16(a)に示すように、厚さが400μmでSi(110)のシリコン基板56を用意し、その両表面に0.15μmのLP−CVD窒化膜75を形成した。次に、図16(b)に示すように、ノズル接合面側にノズル接合面側連通管パターン76と、接合時の余剰接着剤を流れ込ませる肉抜きパターン77、78の形状にレジストのパターニング79を行い、その後窒化膜75をドライエッチングにてパターニングを行った。この工程では肉抜きパターン(擬似液室パターン51cの基礎)78を加圧液室51bとほぼ同じ形状にて形成した。
また、該肉抜きパターンを各々連通させてさらに外部に連通させる連通口のパターンに窒化膜75のパターニングを行った。
【0050】
次に、図16(c)に示すように、レジスト79を除去するとともに、加圧液室のパターン80及び振動板52との接合時の余剰接着剤を流れ込ませる肉抜きパターン81の形状にレジストのパターニング82及び窒化膜75のパターニングを行った。次に、図16(d)に示すように、ICPドライエッチャーによるシリコンエッチングのためのマスク形成を行った。
この際のレジスト87の膜厚は8μmにて行った。本実施形態ではICPエッチングを振動板接合面側より行っているが、ノズル接合面側より行ってもかまわない。
次に、図16(e)に示すように、ICPドライエッチャーを使用して連通管形状88のパターニングを行った。その後図16(f)に示すように、レジスト87を除去して水酸化カリウム水溶液によりシリコンの異方性エッチングを行い、連通管51aの貫通、加圧液室部51b及び擬似液室51cを形成した。加圧液室部形成時のシリコンの異方性エッチングは水酸化カリウム水溶液濃度30%、処理温度85℃で行った。
最後に図16(g)に示すように、窒化膜75の除去を行い、その後耐インク接液膜としてシリコン酸化膜を1.00μmの厚さで形成してインクジェット用の加圧液室形成部材51の形成を行った。
【0051】
上記方法にて作成した加圧液室形成部材51を用いて記録ヘッド14の組み立て(接合)を行ったところ、接液保護膜形成時でも反り量は1μm以下に抑えることができた。また、窒化膜75のみを加圧液室51b形成時のマスクとしているため、より高精度の寸法制御が可能となった。
さらに、本実施形態ではプロセスが短工程となるため、加圧液室形成部材51の低コスト化、ひいては記録ヘッド14の低コスト化を実現できる。
【0052】
上記各実施形態における加圧液室形成部材51製造工程では、いずれの場合にも応力制御のための不純物導入が可能である。
不純物導入工程の挿入例としては、▲1▼シリコン基板準備段階で全面に不純物の注入を行う方式、▲2▼加圧液室形成部材作成後、接液保護膜形成前で全面に不純物の注入を行う方式等がある。
また、不純物の導入の方法としては、熱拡散法、イオン注入法が挙げられるが、以下の制御を行うためには、イオン注入法の方が適しており、いずれの組み合わせも可能である。
(a)両面共に同種の不純物導入を行い、反りに対して各面の注入量を変える。
(b)各面に異種不純物導入を行い、反りに対して各面の注入量を制御する。
【0053】
さらに、接液保護膜形成直前に不純物活性のための熱処理(不活性ガス雰囲気での600〜800℃のアニール)を行うことにより制御性がさらに向上する。
具体的な不純物導入例としては、第1の実施形態における図11(j)後に、PSGを900℃、O2:100sccm、N2:18000sccm、PH3:1800sccm雰囲気により形成し、800℃1時間のアニールを行う。その後、ふっ酸による酸化膜除去を行い、接液保護膜形成を行う。
この処理を行わない場合、10μm程度の反りのあるものが不純物導入を行うと4μm程度となる。これと同程度の濃度の不純物導入をイオン注入で行うには、PH3、60KeV、1E16atoms/cm2程度の注入で実現できる。
以上、反りを無くすことを目的として説明してきたが、本発明による、排除体積、表面積、不純物導入による反りの制御を行うことにより、ノズル形成部材50、振動板52と加圧液室形成部材51の熱膨張率の違いによる接合時の反り、剥がれを考慮して、いずれかの面側へ反りを生じさせる場合もある。
【0054】
図17に、液体カートリッジとしてのインクカートリッジ(第4の実施形態)を示す。
インクカートリッジ100は、ノズル50a等を有する上記各実施形態のいずれかのインクジェットヘッド(記録ヘッド)101と、このインクジェットヘッド101に対してインクを供給するインクタンク102とを一体化したものである。
このようにインクタンク一体型のヘッドの場合、ヘッドの歩留まり不良は直ちにインクカートリッジ100全体の不良につながるので、上述したようにパーティクルなどによる製造不良を低減することで、インクカートリッジ100の歩留まりが向上し、ヘッド一体型のインクカートリッジ100の低コスト化を図れる。
【0055】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、複数のノズルが形成されるノズル形成部材と、前記ノズルに連通する加圧液室が形成される加圧液室形成部材と、前記ノズルから液滴を吐出させるための圧力を前記加圧液室に伝搬させる振動板を備えた液滴吐出ヘッドにおいて、前記加圧液室形成部材がシリコンで形成されており、該加圧液室形成部材の前記ノズル形成部材に対する接合面の凹部と、該加圧液室形成部材の前記振動板に対する接合面の凹部の体積が略同じである構成としたので、シリコンの部材の持つ内部応力開放による反りを低減することができるとともに、シリコンのアルカリ系インクへの溶出を防止するための保護膜を形成する場合に該保護膜の膜応力によるシリコン部材の反りを低減することができ、ノズル形成部材あるいは振動板との接合時の接合不良を無くすことができる。このため高信頼性の液滴吐出ヘッドを実現できる。
【0056】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記加圧液室形成部材の両面の凹部の体積の比が、0.25〜4.0の範囲にある構成としたので、シリコンの部材の持つ内部応力開放による反りを低減することができるとともに、シリコンのアルカリ系インクへの溶出を防止するための保護膜を形成する場合に該保護膜の膜応力によるシリコン部材の反りを低減することができ、ノズル形成部材あるいは振動板との接合時の接合不良を無くすことができる。このため高信頼性の液滴吐出ヘッドを実現できる。
【0057】
請求項3記載の発明によれば、請求項1または2記載の液滴吐出ヘッドにおいて、少なくとも前記加圧液室形成部材の液体接触部に耐液性薄膜が形成されている構成としたので、アルカリ系のインクを使用する場合にシリコンがインクに溶出してしまうことを防止でき、高信頼性の液滴吐出ヘッドを実現できる。
【0058】
請求項4記載の発明によれば、請求項3記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記加圧液室形成部材の前記ノズル形成部材に対する接合面側と、該加圧液室形成部材の前記振動板に対する接合面側の表面積が略同じである構成としたので、シリコンのアルカリ系インクへの溶出を防止するための保護膜を形成する場合に該保護膜の膜応力によるシリコン部材の反りを低減することができ、ノズル形成部材あるいは振動板との接合時の接合不良を無くすことができる。このため高信頼性の液滴吐出ヘッドを実現できる。
【0059】
請求項5記載の発明によれば、請求項4に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記加圧液室形成部材の両面の表面積の差[mm2]が、1200000/(前記加圧液室形成部材の長辺の長さ[mm]の2乗)以下である構成としたので、シリコンのアルカリ系インクへの溶出を防止するための保護膜を形成する場合に該保護膜の膜応力によるシリコン部材の反りを低減することができ、ノズル形成部材あるいは振動板との接合時の接合不良を無くすことができる。このため高信頼性の液滴吐出ヘッドを実現できる。
【0060】
請求項6記載の発明によれば、請求項3記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記耐液性薄膜が、酸化膜または窒化チタン膜である構成としたので、アルカリ系のインクを使用する場合にシリコンがインクに溶出してしまうことを防止でき、高信頼性の液滴吐出ヘッドを実現できる。
【0061】
請求項7記載の発明によれば、請求項3乃至6のうちの何れか1つに記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記加圧液室形成部材の前記ノズル形成部材に対する接合面側と、該加圧液室形成部材の前記振動板に対する接合面側に形成されている前記耐液性薄膜の持つ内部応力の差[MPa.]が、60000/(前記加圧液室形成部材の長辺の長さ[mm]の2乗)以下である構成としたので、シリコン部材の反りを低減することができ、ノズル形成部材あるいは振動板との接合時の接合不良を無くすことができる。このため高信頼性の液滴吐出ヘッドを実現できる。
【0062】
請求項8記載の発明によれば、請求項3乃至6のうちの何れか1つに記載の液滴吐出ヘッドにおいて、該加圧液室形成部材の前記ノズル形成部材に対する接合面の凹部と、該加圧液室形成部材の前記振動板に対する接合面の凹部の周囲長の差[mm]が、36000000/(前記加圧液室形成部材の長辺の長さ[mm]の2乗)以下である構成としたので、シリコン部材の反りを低減することができ、ノズル形成部材あるいは振動板との接合時の接合不良を無くすことができる。このため高信頼性の液滴吐出ヘッドを実現できる。
【0063】
請求項9記載の発明によれば、請求項1乃至8のうちの何れか1つに記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記加圧液室形成部材の前記ノズル形成部材に対する接合面と、該加圧液室形成部材の前記振動板に対する接合面のいずれか一方の面または両面に不純物が導入拡散され、応力が制御されている構成としたので、ノズル形成部材あるいは振動板との接合時の接合不良を無くすことができ、高信頼性の液滴吐出ヘッドを実現できる。
【0064】
請求項10記載の発明によれば、請求項9記載の液滴吐出ヘッドにおいて、導入する不純物の種が、応力緩和または熱酸化膜応力を低減するN型(P、Asなど)である構成としたので、応力低減により耐液性薄膜の持つ内部応力を変化させ、ノズル接合面側または振動板接合面側へのソリを制御することにより、ノズル形成部材あるいは振動板との接合時の接合不良を無くすことができる。このため高信頼性の液滴吐出ヘッドを実現できる。また、片面ずつの応力制御を行い、ノズル接合面側または振動板接合面側へのソリを制御することにより、ノズル形成部材あるいは振動板との接合時の接合不良を無くすことができる。このため高信頼性の液滴吐出ヘッドを実現できる。
【0065】
請求項11記載の発明によれば、請求項9記載の液滴吐出ヘッドにおいて、導入する不純物の種が、応力緩和または熱酸化膜応力を増加させるP型(Bなど)である構成としたので、応力増加により耐液性薄膜の持つ内部応力を変化させ、ノズル接合面側または振動板接合面側へのソリを制御することにより、ノズル形成部材あるいは振動板との接合時の接合不良を無くすことができる。このため高信頼性の液滴吐出ヘッドを実現できる。また、片面ずつの応力制御を行い、ノズル接合面側または振動板接合面側へのソリを制御することにより、ノズル形成部材あるいは振動板との接合時の接合不良を無くすことができる。このため高信頼性の液滴吐出ヘッドを実現できる。
【0066】
請求項12記載の発明によれば、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、該液滴吐出ヘッドに液体を供給するタンクを一体化した液体カートリッジにおいて、前記液滴吐出ヘッドが、請求項1乃至11のうちの何れか1つに記載の液滴吐出ヘッドである構成としたので、何れかの液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッドとこのインクジェットヘッドにインクを供給するインクタンクを一体化したので、製造不良が減少し、低コスト化を図ることができる。
【0067】
請求項13記載の発明によれば、液滴吐出ヘッドにより液滴を吐出させて画像を形成する画像形成装置において、前記液滴吐出ヘッドが、請求項1乃至11のうちの何れか1つに記載の液滴吐出ヘッドである構成としたので、気泡の溜まりがなく機械強度に優れた液滴吐出ヘッドの使用により高信頼性の画像形成装置を実現できる。また、上述した各効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態における液滴吐出ヘッドの要部分解斜視図である。
【図2】従来における加圧液室形成部材のノズル接合面側と振動板接合面側の形状を示す概要平面図である。
【図3】第1の実施形態における加圧液室形成部材のノズル接合面側と振動板接合面側の形状を示す概要平面図である。
【図4】加圧液室形成部材の要部断面図である。
【図5】加圧液室形成部材の要部断面図である。
【図6】加圧液室形成部材のノズル接合面側と振動板接合面側の排除体積比と反り量との関係を示す実験結果のグラフである。
【図7】加圧液室形成部材のノズル接合面側と振動板接合面側の表面積の差と反り量との関係を示す実験結果のグラフである。
【図8】加圧液室形成部材に被覆される膜の応力の差と反り量との関係を示す実験結果のグラフである。
【図9】不純物濃度と反り量との関係を示す実験結果のグラフである。
【図10】加圧液室形成部材の製造工程を示す図である。
【図11】加圧液室形成部材の製造工程を示す図である。
【図12】画像形成装置としてのインクジェット記録装置の概要正面図である。
【図13】インクジェット記録装置の要部斜視図である。
【図14】第2の実施形態における加圧液室形成部材の製造工程を示す図である。
【図15】第2の実施形態における加圧液室形成部材の製造工程を示す図である。
【図16】第3の実施形態における加圧液室形成部材の製造工程を示す図である。
【図17】第4の実施形態における液体カートリッジとしてのインクカートリッジの斜視図である。
【符号の説明】
14 液滴吐出ヘッドとしての記録ヘッド
50 ノズル形成部材
50a ノズル
51 加圧液室形成部材
51b 加圧液室
100 液体カートリッジとしてのインクカートリッジ
【発明の属する技術分野】
本発明は、インク等の液滴を吐出する液滴吐出ヘッド、該液滴吐出ヘッドを有する液体カートリッジ及び該液滴吐出ヘッドを有する複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ等の画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ等の画像形成装置として用いられるインクジェット記録装置は、インク滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する液室(インク流路、吐出室、圧力室、加圧液室、流路とも称される。)と、この液室内のインクを振動板を介して加圧するための駆動手段(圧力発生手段)とを備えた液滴吐出ヘッドとしてのインクジェットヘッドを搭載している。
液滴吐出ヘッドとしては、例えば液体レジストを液滴として吐出する液滴吐出ヘッド、DNAの試料を液滴として吐出する液滴吐出ヘッドなどもあるが、以下ではインクジェットヘッドを中心に説明をする。
【0003】
インクジェット記録装置は記録時の騒音が極めて小さいこと、高速印字が可能なこと、インクの自由度が高く安価な普通紙を使用できることなど多くの利点を有する。この中でも記録の必要なときにのみインク液滴を吐出するいわゆるインク・オン・デマンド方式が記録に不要なインク液滴の回収を必要としないため現在主流となっている。
インク・オン・デマンド方式のインクジェットヘッドとしては、駆動手段が圧電素子であるもの(特公平2−51734号公報参照)や、インクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインクを吐出させる方式のもの(特公昭61−59911号公報参照)、駆動手段に静電気力を利用したもの(特開平5−50601号公報参照)などがある。
【0004】
インクジェットヘッドは記録媒体上のドットをインク滴により構成する関係上、インク滴のサイズを小さくすることにより、極めて高い解像度での記録、印刷が可能である。しかしながら、効率よく記録するためには、インク開口(ノズル)の数を多くする必要があり、また圧力室(加圧液室)を大きくする必要がある。
このことはヘッドの小型化要請とは相反することである。このような相反する問題を解消するため、通常隣り合う圧力室を区画している壁(隔壁)を薄くすると共に圧力室の形状を長手方向に大きくして容積を稼ぐことが行われている。
このような圧力室やリザーバ(液溜め室)は振動板とノズルプレートの間隔を所定の値に保持する部材である液室形成部材に形成されているが、上述したように極めて小さく、しかも複雑な形状を備えた加圧液室を形成する必要上、加圧液室形成部材の加工には通常エッチング技術が使用されている。
【0005】
このような加圧液室形成部材を形成する材料としては感光性樹脂膜が使用されることが多いが、これは機械的強度が低いためクロストークや撓み等が生じやすく、高い解像度を得ようとすると印字品質が低下するという問題がある。
そこで比較的簡単な手法で微細な形状を高い精度で加工が可能なシリコン単結晶基板の異方性エッチングを用いた部品製作技術、いわゆるマイクロマシニング技術を適用してインクジェット式記録ヘッドを構成する部材を加工することが検討され、種々な技術や手法が提案されている。
特に結晶方位(110)の単結晶シリコン基板を加圧液室形成部材に用いて、異方性エッチングを行い、圧力室やリザーバを形成することが提案されている。単結晶シリコンを使用したスペーサは機械的剛性が高いため、特に圧電振動子を圧力発生手段として使用する場合に圧電振動子の変形に伴う記録ヘッド全体の撓みを小さくできるとともに、エッチングを受けた壁面が表面に対してほぼ垂直であるため圧力発生室を均一に構成することが可能であるという大きな利点を備えている。
上記方法によって形成された加圧液室形成部材は、アルカリ系のインクに溶出してしまうため、保護膜として酸化膜あるいは窒化チタン膜などが利用されている。
【0006】
特開平10−264383号公報には、シリコン基板に形成されたインクが収容されるインクキャビティと、インクキャビティ内の圧力を変化させ、インクキャビティ内に収容されたインクを外部に吐出させる圧電素子とを備え、インクキャビティの内壁表面に親水性及び耐アルカリ性を備えた膜、例えばニッケル酸化膜やシリコン酸化膜を形成した構成が開示されている。
特開平11−348282号公報には、インク室、インク供給口、インクリザーバーが形成された基板の上側に接着剤を用いてノズル孔が形成された基板を接合した構成が開示されている。インク室等が形成された基板にはインク室、リザーバーの縁に沿って複数の凹部が千鳥状に配設されており、残余の接着剤をこの凹部内に収容して接着剤がインク流路内に流れ込むことを防止することを特徴としている。
【0007】
シリコン単結晶基板を異方性エッチングして液室形成部材を形成する場合、シリコン単結晶基板に圧力室やインク流路となる空間がエッチングにより形成され、このシリコン単結晶基板(液室形成部材)は金属製のノズルプレートや振動版と接着剤等で貼り合わされて積層される。
しかしながら、シリコン単結晶と金属の線膨張率は一般に相違するため、流路ユニットではいわゆる「反り」が発生することがある。このことは、記録ヘッドの大型化を困難にする要因である。
特開2001−270117号公報には、液室形成部材における「反り」の発生を抑制するために、電鋳により形成されたシリコン基板と電鋳部の2層構造とする構成が開示されている。また、ノズルプレートと液室形成部材を線膨張率が近い材料で形成することを特徴としている。
特開2001−301176号公報には、異なる材料を接合するときの残留応力を緩和して歪や剥離等が生じることを防止するため、ノズル基板としてニッケルを使用し、液室基板としてシリコンを使用した場合、線膨張係数の大きいニッケルを使用したノズル基板の接合面に肉抜きを設け、加熱接合時の線膨張係数の差による残留応力を緩和する構成が開示されている。
【0008】
【特許文献1】
特公平2−51734号公報
【特許文献2】
特公昭61−59911号公報
【特許文献3】
特開平5−50601号公報
【特許文献4】
特開平10−264383号公報
【特許文献5】
特開平11−348282号公報
【特許文献6】
特開2001−270117号公報
【特許文献7】
特開2001−301176号公報
【特許文献8】
特開2002−254638号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような保護膜を形成することによりシリコンのインクへの溶出は防止することが可能になるが、該保護膜の膜応力により加圧液室形成部材に反りが生じてしまうという不具合があった。
反りを生じてしまうことで加圧液室形成部材とノズル板(ノズル形成部材)あるいは振動板との接合時に接合不良が生じてしまう可能性があった。このような問題は印刷の高速化に伴いヘッドの長尺化が進むにつれてより重要な問題となる。
【0010】
本発明は、インクに対して耐性のある保護膜を有する加圧液室形成部材の反りを減少させることができ、よってノズル形成部材や振動板との接合時の不良を抑制でき、良好な液滴吐出機能を長期に亘って維持できる信頼性の高い液滴吐出ヘッド、該液滴吐出ヘッドを有する液体カートリッジ及び該液滴吐出ヘッドを有する画像形成装置の提供を、その目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明では、複数のノズルが形成されるノズル形成部材と、前記ノズルに連通する加圧液室が形成される加圧液室形成部材と、前記ノズルから液滴を吐出させるための圧力を前記加圧液室に伝搬させる振動板を備えた液滴吐出ヘッドにおいて、前記加圧液室形成部材がシリコンで形成されており、該加圧液室形成部材の前記ノズル形成部材に対する接合面の凹部と、該加圧液室形成部材の前記振動板に対する接合面の凹部の体積が略同じである、という構成を採っている。ここで、「凹部」とは、堀加工された部分をいう(以下、同じ)。
【0012】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記加圧液室形成部材の両面の凹部の体積の比が、0.25〜4.0の範囲にある、という構成を採っている。
【0013】
請求項3記載の発明では、請求項1または2記載の液滴吐出ヘッドにおいて、少なくとも前記加圧液室形成部材の液体接触部に耐液性薄膜が形成されている、という構成を採っている。
【0014】
請求項4記載の発明では、請求項3記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記加圧液室形成部材の前記ノズル形成部材に対する接合面側と、該加圧液室形成部材の前記振動板に対する接合面側の表面積が略同じである、という構成を採っている。
【0015】
請求項5記載の発明では、請求項4に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記加圧液室形成部材の両面の表面積の差[mm2]が、1200000/(前記加圧液室形成部材の長辺の長さ[mm]の2乗)以下である、という構成を採っている。
【0016】
請求項6記載の発明では、請求項3記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記耐液性薄膜が、酸化膜または窒化チタン膜である、という構成を採っている。
【0017】
請求項7記載の発明では、請求項3乃至6のうちの何れか1つに記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記加圧液室形成部材の前記ノズル形成部材に対する接合面側と、該加圧液室形成部材の前記振動板に対する接合面側に形成されている前記耐液性薄膜の持つ内部応力の差[MPa.]が、60000/(前記加圧液室形成部材の長辺の長さ[mm]の2乗)以下である、という構成を採っている。
【0018】
請求項8記載の発明では、請求項3乃至6のうちの何れか1つに記載の液滴吐出ヘッドにおいて、該加圧液室形成部材の前記ノズル形成部材に対する接合面の凹部と、該加圧液室形成部材の前記振動板に対する接合面の凹部の周囲長の差[mm]が、36000000/(前記加圧液室形成部材の長辺の長さ[mm]の2乗)以下である、という構成を採っている。
【0019】
請求項9記載の発明では、請求項1乃至8のうちの何れか1つに記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記加圧液室形成部材の前記ノズル形成部材に対する接合面と、該加圧液室形成部材の前記振動板に対する接合面のいずれか一方の面または両面に不純物が導入拡散され、応力が制御されている、という構成を採っている。
【0020】
請求項10記載の発明では、請求項9記載の液滴吐出ヘッドにおいて、導入する不純物の種が、応力緩和又は熱酸化膜応力を低減するN型(P、Asなど)である、という構成を採っている。
【0021】
請求項11記載の発明では、請求項9記載の液滴吐出ヘッドにおいて、導入する不純物の種が、応力緩和または熱酸化膜応力を増加させるP型(Bなど)である、という構成を採っている。
【0022】
請求項12記載の発明では、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、該液滴吐出ヘッドに液体を供給するタンクを一体化した液体カートリッジにおいて、前記液滴吐出ヘッドが、請求項1乃至11のうちの何れか1つに記載の液滴吐出ヘッドである、という構成を採っている。
【0023】
請求項13記載の発明では、液滴吐出ヘッドにより液滴を吐出させて画像を形成する画像形成装置において、前記液滴吐出ヘッドが、請求項1乃至11のうちの何れか1つに記載の液滴吐出ヘッドである、という構成を採っている。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1の実施形態を図1乃至図13に基づいて説明する。
まず、図12及び図13に基づいて、本実施形態における画像形成装置としてのインクジェット記録装置の構成の概要を説明する。
記録装置本体1の内部には、主走査方向に移動可能なキャリッジ、キャリッジに搭載したインクジェットヘッドからなる記録ヘッド、記録ヘッドヘのインクを供給するインクカートリッジ等で構成される印宇機構部2等が収納されている。
給紙カセット4或いは手差しトレイ5から給送される用紙3を取り込み、印字機構部2によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ6に排紙するようになっている。
【0025】
印宇機構部2では、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド11と従ガイドロッド12によりキャリッジ13が主走査方向(図12で紙面垂直方向)に摺動自在に保持されている。キャリッジ13には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する液滴吐出ヘッドとしての記録ヘッド14がインク滴吐出方向を下方に向けて装着され、キャリッジ13の上側には記録ヘッド14に各色のインクを供給するための各インクタンク(インクカートリッジ)15が交換可能に装着されている。
インクカートリッジ15は上方に大気と連通する大気口、下方にはインクジェットヘッドへインクを供給する供給口を、内部にはインクが充填された多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力によりインクジェットヘッドへ供給されるインクを僅かな負圧に維持している。このインクカートリッジ15からインクを記録ヘッド14の各インクジェットヘッド内に供給する。
【0026】
本実施形態では記録ヘッド14として、各色のヘッドを用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のヘッドでもよい。記録ヘッド14を構成する個々のインクジェットヘッドとしては、圧電素子を用いてインク流路の壁面を形成する振動板を変形させてインク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させるいわゆるピエゾ型のもの、或いは、発熱抵抗体を用いてインク流路内でインクを加熱して気泡を発生させることによる圧力でインク滴を吐出させるいわゆるバブル型のもの、インク流路の壁面の少なくとも一部を形成する振動板とこれに対向する電極とを備え、静電力で振動板を変形変位させてインクを加圧する静電型のものなどを用いることができるが、本実施形態では、後述するように、静電型インクジェットヘッドを用いている。
【0027】
キャリッジ13は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド11に摺動自在に嵌装され、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド12に摺動自在に載置されている。キャリッジ13を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ17で回転駆動される駆動プーリ18と従動プーリ19との間にタイミングベルレト20が掛け回されている。このタイミングベルト20にキャリッジ13が固定されており、主走査モータ17の正逆回転によりキャリッジ13が往復駆動される。
給紙カセット4にセットされた用紙3を記録ヘッド14の下方側に搬送するために、給紙カセット4から用紙3を分離給送する給紙ローラ21及びフリクションパッド22と、用紙3を案内するガイド部材23と、給紙された用紙3を反転させて搬送する搬送ローラ24と、この搬送ローラ24の周面に押し付けられる搬送コロ25と、搬送ローラ24からの用紙3の送り出し角度を規定する先端コロ26が設けられている。搬送ローラ24は主走査モータ27によってギヤ列を介して回転駆動される。
【0028】
キャリッジ13の主走査方向の移動範囲に対応して、搬送回一ラ24から送り出された用紙3を記録記録ヘッド14の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材29が設けられている。印写受け部材29の用紙搬送方向下流側には、用紙3を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ31、拍車32が設けられ、さらに用紙3を排紙トレイ6に送り出す排紙ロ一ラ33及び抽車34と、排紙経路を形成するガイド部材35、36が配設されている。
記録時には、キャリッジ13を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド14を駆動することにより、停止している用紙3にインクを吐出して1行分を記録し、用紙3を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号、または用紙3の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙3を排紙する。
【0029】
キャリッジ13の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、記録ヘッド14の吐出不良を回復するための回復装置37が配置されている。回復装置37は、図示しないキャッピング手段、吸引手段、クリーニング手段等を有している。
キャリッジ13は印字待機中には回復装置37側に移動され、上記キャッピング手段により記録ヘッド14をキャッピングされる。これにより、吐出口部(ノズル孔)が湿潤状態に保たれ、インク乾燥による吐出不良が防止される。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持するように制御される。
【0030】
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段により記緑ヘッド14の吐出口(ノズルまたはノズル孔)が密封され、チューブを通して上記吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等が吸い出される。このように、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され、吐出不良が回復される。
吸引されたインクは、装置本体下部に設置された図示しない廃インク溜に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
【0031】
次に、図1に基づいて記録ヘッド14の要部の構成を説明する。
記録ヘッド14は、ノズル形成部材50と、加圧液室形成部材51と、振動板52と、圧力発生手段(アクチュエータ)53を有している。
ノズル形成部材50には、インク滴を飛翔させるための微細孔である多数のノズル(ノズル孔)50aが各加圧液室の先端部分(後述する連通管51a)に対応して形成されており、各ノズル50aの径は20〜35μmに設定されている。
ノズル形成部材50は、本実施形態では電鋳工法によって製造したNiの金属プレートを用いて形成されている。Niの金属プレートに限定される趣旨ではなく、シリコンやその他金属材料、あるいはポリイミド等の樹脂フィルムを用いることができる。なお、ノズル形成部材50の表面には撥水性の表面処理膜を成膜している。
【0032】
加圧液室形成部材(流路板)51には、各ノズル50aに連通する連通管51aがノズル50aに対応して形成されているとともに、振動板52に対する接合面側には、連通管51aに連通する加圧液室51bが複数形成されている。また、加圧液室形成部材51のノズル形成部材50に対する接合面側には、振動板52に対する接合面との凹部体積比が0.25〜4.0となるように擬似液室パターン51cが複数形成されている。
連通管51aは、例えばドライエッチングによる深堀と異方性エッチングにより形成されている。異方性エッチングを行うエッチング液としては、KOH水溶液、TMAH液等が使用できる。加圧液室51bは、シリコンの異方性エッチング法により形成されている。
また、加圧液室形成部材51の表面には酸化膜が形成されている。酸化膜が形成されていることで、インクに対して溶出しにくく、また濡れ性も向上するため気泡の滞留が生じにくい構造となる。これは酸化膜に限らず窒化チタン(TiN)膜、またはポリイミド膜でもかまわない。
【0033】
振動板52は、Ni電鋳工法で形成した金属プレートからなり、該振動板52の振動機能部は、圧電素子53内の非駆動部に接合する梁部52aと、圧電素子53内の駆動部に接合する島状凸部51bと、該島状凸部51bの周囲に形成された厚み2〜10μm程度の最薄膜部分(ダイヤフラム領域)52cを有している。
圧力発生手段53は、セラミックス基板、例えばチタン酸バリウム、アルミナ、フォルステライトなどの絶縁性の基板54上に、電気機械変換素子である複数の積層型圧電素子55を列状に2列配列して接合し、これら2列の各圧電素子55をダイシングにより切断を行って形成されている。
各列の複数の圧電素子55はチャンネル方向で駆動波形を印加する駆動部55aと、駆動波形を印加しない非駆動部55bを交互に構成している。圧電素子55は、厚さ10〜50μm/層のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)と、厚さ数μm/層の銀パラジューム(AgPd)からなる内部電極とを交互に積層したものである。
【0034】
圧電素子55を厚さ10〜55μm/層の積層型とすることによって低電圧駆動を可能としている。なお、電気機械変換素子としてはPZTに限られるものではない。
また、加圧液室51b内の液体を加圧する圧力を発生する圧力発生手段53としては、電気機械変換素子として圧電素子55を有する例を説明したが、これに限るものではない。例えば、静電気で振動板を変形させる静電型、あるいは熱エネルギーによってインクにバブルを発生させるサーマルインクジェット型、音響波エネルギーによってインクを吐出する音響型、放電のエネルギーによってインクを吐出するスパークジェット型なども適用可能である。
圧力発生手段53における圧力発生は次のようになされる。例えば、特開2002−254638号公報に開示されているように、圧電素子55の内部電極を交互に端面に取り出して端面電極とし、一方、基板上に共通電極パターン及び個別電極パターンを駆動部となる圧電素子55の端面電極に導電性接着剤等を介して電気的に接続し、共通電極パターン及び共通電極パターンに接続したFPCケーブルを介してPCB基板と接続して駆動部に駆動波形を印加することによって積層方向の伸びの変位を発生させる。
【0035】
図2、図3は、加圧液室形成部材のノズル接合面と振動板接合面の形状を示す概要平面図である。図2は従来例における加圧液室形成部材200の形状で、図3が本実施形態における加圧液室形成部材51の形状である。また、各図において、(a)はノズル接合面側の形状、(b)は振動板接合面側の形状を示している。
従来においては、図2(a)、(b)に示すように、ノズル形成部材に対する接合、及び振動板に対する接合時に生じる余剰接着剤を吸収するための肉抜き部200aが形成されている。図2において、符号200bは連通管を、200cは加圧液室をそれぞれ示している。図3において、符号51dはノズル形成部材50に対する接合、及び振動板52に対する接合時に生じる余剰接着剤を吸収するための肉抜き部を示している。
【0036】
従来の形状では、ノズル接合面側と振動板接合面側でその形状や接合面積が大きく異なるため、耐インク性の保護膜を形成した場合に膜応力による反りが発生する。例えば、酸化膜で0.70μmの厚みの保護膜を形成した場合は6μm以上の反りが発生する。
このような加圧液室形成部材の反りが発生する場合、接合時に接合不良箇所が発生してしまう不具合が生じてしまう。
上記反りの発生を低減すべく、本実施形態では、図3(a)、(b)に示すように、ノズル接合面側における余剰接着剤を吸収するための肉抜き部パターンの一部を擬似液室パターン51cにして、振動板接合面側、ノズル接合面側の肉抜き部の体積(凹部体積)、形状をほぼ同等とするようにしている。
このような形状にすることにより、シリコン母材の持つ内部応力が、ノズル接合面側、振動板接合面側において同様に低減(歪開放)され、形状の差に起因する加圧液室形成部材51の反りを低減することができる。
【0037】
図4及び図5に、本実施形態における加圧液室形成部材51の一部(1ビット分)のノズル接合面側(a)、振動板接合面側(b)における(1)、(2)、(3)部位での断面図を示す。
図4のハッチング領域が凹部を示しており、このように略同体積の肉抜きとすることでシリコン母材の歪を小さく抑えることができる。図5の斜線領域及び太線部分が肉抜きによる表面積に差異が生じる部分を示している。この表面積の差により、保護膜形成面積差により生ずる両面の膜応力の差により加圧液室形成部材51に反りが発生する。この表面積差を少なくすることにより、保護膜形成による反りは非常に小さく抑えることができる。
加圧液室形成部材51を上記形状にすることにより、接合不良のない高信頼性の液滴吐出ヘッド14を形成することが可能となる。以下にその根拠を実験データに基づいて説明する。
【0038】
図6は、加圧液室形成部材51のノズル接合面と振動板接合面の排除体積の比における強度減少による反り量の実験結果のグラフを示す。図6に示す結果から、反り量を3μm以下に抑えるためには、両面の体積比を0.25から4.0の範囲にすることが必要であることが判る。
次に、図7に、ノズル接合面と振動板接合面の表面積の差と酸化膜を膜厚1.00μmで形成した場合の加圧液室形成部材51の反り量の実験結果のグラフを示す。反り量を3μm以下に抑えるためには、両面の表面積の差[単位:mm2]を、1200000/(チップ長さL[mm]の2乗)以下にすることが必要である。ここで、チップ長さLは、前記加圧液室形成部材の長辺の長さを意味する(以下、同じ)。
反り量を3μm以下に抑えることで加圧液室形成部材51の反りに起因する接合不良をほぼなくすことが可能であることが本発明者らの実験により確認された。
【0039】
図8に、ヤング率が約170MPa.のシリコンを使用した場合の膜応力の差による反り量の実験結果のグラフを示す。反り量を3μm以下に抑えるためにはチップ長さL=20mmで100MPa.以下にすることが必要であることが判る。60000/(チップ長さL[mm]の2乗)以下の応力とすることにより、反り量を3μm以下に抑えることができ、加圧液室形成部材51の反りに起因する接合不良をほぼなくすことが可能であることが本発明者らの実験により確認された。
この応力差(表面積差による応力)を簡便に計算するには、各接合面の凹部の周囲長により形成される側面の面積に相当する膜応力差を上記とすることになる。また、酸化膜自身の持つ内部応力は成膜条件(酸化温度)、あるいは不純物を導入することにより制御する(VLSI TECHNOLOGY edited by Sze)。
【0040】
成膜条件による応力制御は全応力の制御であり、両面の面積差による応力差を補うにはあまり効果がないが、不純物による応力制御は、ノズル接合面側、振動板接合面側を独立に制御できるため、表面積差を補うには効果的である。
図9に、加圧液室形成部材51の全体に不純物を導入することによる応力変化に対する反りの影響についての実験結果のグラフを示す。
ある濃度域で極値をもつ傾向となり、濃度、不純物導入領域を制御することにより反りを制御することが可能となる。応力を低減する場合には、例えば、導入する不純物の種類はN型[P(リン)、As(ヒ素)など]とし、応力を増加させる場合には、導入する不純物の種類はP型[B(ホウ素)など]とする。
【0041】
次に、図10及び図11に基づいて、本実施形態における加圧液室形成部材51の製造工程(製造方法)を説明する。
まず、図10(a)に示すように、厚さが400μmでSi(110)のシリコン基板56を用意し、その両表面に厚さ1.00μmのシリコン酸化膜57及び0.20μmのLP−CVD窒化膜58を形成した。次に、図10(b)に示すように、ノズル接合面側に連通管形成パターン59と、接合時の余剰接着剤を流れ込ませる肉抜きパターン60、61の形状にレジストのパターニング62を行い、その後窒化膜58をドライエッチングにてパターニングを行った。この工程では肉抜きパターン(擬似液室パターン51cの基礎)61を加圧液室51bとほぼ同じ形状にて形成した。また該肉抜きパターンを各々連通させてさらに外部に連通させる連通口のパターンに窒化膜58のパターニングを行った。
【0042】
次に、図10(c)に示すように、レジストのパターニング64を行い、その後シリコン酸化膜57を連通管形成パターン65の形状にドライエッチングにてパターニングを行った。その後、図10(d)に示すように、レジストのパターニング64を除去するとともに、加圧液室のパターン66及び振動板52との接合時の余剰接着剤を流れ込ませる肉抜きパターン67の形状にレジストのパターニング68を行い、その後窒化膜58のパターニングをノズル接合面側と同様にドライエッチングにて行った。
次に、図10(e)に示すように、連通管形成パターン69の形状にシリコン酸化膜57のパターニングを行った。シリコン酸化膜57のエッチング時のレジストパターンは70である。その後図10(f)に示すように、ICPドライエッチャーを使用して連通管形状71のパターニングを行った。この際のレジスト72の膜厚は8μmにて行った。ICPエッチャーを使用してのドライエッチングは300μmの深さまで行った。
【0043】
その後図10(g)に示すように、レジスト72を除去すべく水酸化カリウム水溶液によりシリコンの異方性エッチングを行い、連通管51aを貫通させた。水酸化カリウム水溶液による連通管51aの貫通工程ではノズル接合面側、振動板接合面側両面よりエッチングを行った。連通管51aの貫通直後は異方性エッチングによる傾斜部が発生するが、本実施形態では該傾斜部をこの連通管貫通工程にて後退させて傾斜部全てのエッチングを行った。
その後図11(h)に示すように、窒化膜58をマスクとして希ふっ酸によりシリコン酸化膜57のウェットエッチング73を行った。その後図11(i)に示すように、再度水酸化カリウム水溶液によりシリコンの異方性エッチングを行い、加圧液室51b及び擬似液室51cの形成を行った。加圧液室51b形成時のシリコンの異方性エッチングは、水酸化カリウム水溶液濃度30%、処理温度85℃で行った。最後に図11(j)に示すように、窒化膜58及びシリコン酸化膜57の除去を行い、その後耐インク接液膜としてシリコン酸化膜を1.00μmの厚さで形成してインクジェット用の加圧液室形成部材51の形成(加工)を行った。
【0044】
上述のように、本実施形態では、加圧液室形成部材51におけるノズル接合面側と振動板接合面側との排除体積がほぼ同じになるように、またノズル接合面側には疑似加圧液室51cを形成し、表面積もほぼ同じになるようにパターニングを行った。
上記方法にて作成した加圧液室形成部材51を用いた記録ヘッド14の組み立て(接合)を行ったところ、接液保護膜形成時でも反り量は2μm以下に抑えることができ、さらに加熱接合時に疑似加圧液室(擬似液室パターン)51c中の気体が膨張することによる接合不良も防ぐことができることが確認された。
【0045】
以下に他の実施形態を説明する。なお、上記実施形態と同一部分は同一符号で示し、特に必要がない限り既にした構成上及び機能上の説明は省略し、要部のみ説明する。
図14及び図15に基づいて、第2の実施形態(加圧液室形成部材の製造方法)を説明する。
まず、図14(a)に示すように、厚さが400μmでSi(110)のシリコン基板56を用意し、その両表面に0.15μmのLP−CVD窒化膜75を形成した。次に、図14(b)に示すように、ノズル接合面側にノズル接合面側連通管パターン76と、接合時の余剰接着剤を流れ込ませる肉抜きパターン77、78の形状にレジストのパターニング79を行い、その後窒化膜75をドライエッチングにてパターニングを行った。この工程では肉抜きパターン(擬似液室パターン51cの基礎)78を加圧液室51bとほぼ同じ形状にて形成した。
また、該肉抜きパターンを各々連通させてさらに外部に連通させる連通口のパターンに窒化膜75のパターニングを行った。
【0046】
次に、図14(c)に示すように、レジスト79を除去するとともに、加圧液室のパターン80及び振動板52との接合時の余剰接着剤を流れ込ませる肉抜きパターン81の形状にレジストのパターニング82及び窒化膜75のパターニングを行った。次に、図14(d)に示すように、レジスト82を除去するとともに、高温酸化膜83を0.250μmの厚さで窒化膜75及びシリコン基板56を覆うように形成を行った。
次に、図14(e)に示すように、前記高温酸化膜83の上に0.15μmのLP−CVD窒化膜84を形成し、ノズル接合面側及び振動板接合面側の窒化膜75及び高温酸化膜83を連通管の形状にドライエッチングにより形成した。その後図14(f)に示すように、ICPドライエッチャーを使用して連通管形状85のパターニングを行った。この際のレジスト86の膜厚は8μmにて行った。
その後図14(g)に示すように、レジスト86を除去して水酸化カリウム水溶液によりシリコンの異方性エッチングを行い、連通管51aを貫通させた。
【0047】
その後図15(h)に示すように、上層の窒化膜84を熱燐酸により除去した。高温酸化膜83は、上層の窒化膜84を除去する際のストップ層として使用している。続いて、高温酸化膜83を希ふっ酸により除去した。その後図15(i)に示すように、再度水酸化カリウム水溶液によりシリコンの異方性エッチングを行い、加圧液室51b及び擬似液室51を形成した。加圧液室51b形成時のシリコンの異方性エッチングは水酸化カリウム水溶液濃度30%、処理温度85℃で行った。
最後に図15(j)に示すように、窒化膜75の除去を行い、その後耐インク接液膜としてシリコン酸化膜を1.00μmの厚さで形成してインクジェット用の加圧液室形成部材51の形成を行った。
【0048】
本実施形態では、上述のように、加圧液室形成部材51におけるノズル接合面側と振動板接合面側との排除体積がほぼ同じになるように、またノズル接合面側に疑似加圧液室51cを形成し、表面積もほぼ同じになるようにパターニングを行った。さらに各々の疑似加圧液室51cを連通させ、さらに外部に連通させるように連通口を形成した。
上記方法にて作成した加圧液室形成部材51を用いて記録ヘッド14の組み立て(接合)を行ったところ、接液保護膜形成時でも反り量は2μm以下に抑えることができた。また、窒化膜75のみを加圧液室51b形成時のマスクとしているため、より高精度の寸法制御が可能となった。
【0049】
次に、図16に基づいて、第3の実施形態(加圧液室形成部材の製造方法)を説明する。
まず、図16(a)に示すように、厚さが400μmでSi(110)のシリコン基板56を用意し、その両表面に0.15μmのLP−CVD窒化膜75を形成した。次に、図16(b)に示すように、ノズル接合面側にノズル接合面側連通管パターン76と、接合時の余剰接着剤を流れ込ませる肉抜きパターン77、78の形状にレジストのパターニング79を行い、その後窒化膜75をドライエッチングにてパターニングを行った。この工程では肉抜きパターン(擬似液室パターン51cの基礎)78を加圧液室51bとほぼ同じ形状にて形成した。
また、該肉抜きパターンを各々連通させてさらに外部に連通させる連通口のパターンに窒化膜75のパターニングを行った。
【0050】
次に、図16(c)に示すように、レジスト79を除去するとともに、加圧液室のパターン80及び振動板52との接合時の余剰接着剤を流れ込ませる肉抜きパターン81の形状にレジストのパターニング82及び窒化膜75のパターニングを行った。次に、図16(d)に示すように、ICPドライエッチャーによるシリコンエッチングのためのマスク形成を行った。
この際のレジスト87の膜厚は8μmにて行った。本実施形態ではICPエッチングを振動板接合面側より行っているが、ノズル接合面側より行ってもかまわない。
次に、図16(e)に示すように、ICPドライエッチャーを使用して連通管形状88のパターニングを行った。その後図16(f)に示すように、レジスト87を除去して水酸化カリウム水溶液によりシリコンの異方性エッチングを行い、連通管51aの貫通、加圧液室部51b及び擬似液室51cを形成した。加圧液室部形成時のシリコンの異方性エッチングは水酸化カリウム水溶液濃度30%、処理温度85℃で行った。
最後に図16(g)に示すように、窒化膜75の除去を行い、その後耐インク接液膜としてシリコン酸化膜を1.00μmの厚さで形成してインクジェット用の加圧液室形成部材51の形成を行った。
【0051】
上記方法にて作成した加圧液室形成部材51を用いて記録ヘッド14の組み立て(接合)を行ったところ、接液保護膜形成時でも反り量は1μm以下に抑えることができた。また、窒化膜75のみを加圧液室51b形成時のマスクとしているため、より高精度の寸法制御が可能となった。
さらに、本実施形態ではプロセスが短工程となるため、加圧液室形成部材51の低コスト化、ひいては記録ヘッド14の低コスト化を実現できる。
【0052】
上記各実施形態における加圧液室形成部材51製造工程では、いずれの場合にも応力制御のための不純物導入が可能である。
不純物導入工程の挿入例としては、▲1▼シリコン基板準備段階で全面に不純物の注入を行う方式、▲2▼加圧液室形成部材作成後、接液保護膜形成前で全面に不純物の注入を行う方式等がある。
また、不純物の導入の方法としては、熱拡散法、イオン注入法が挙げられるが、以下の制御を行うためには、イオン注入法の方が適しており、いずれの組み合わせも可能である。
(a)両面共に同種の不純物導入を行い、反りに対して各面の注入量を変える。
(b)各面に異種不純物導入を行い、反りに対して各面の注入量を制御する。
【0053】
さらに、接液保護膜形成直前に不純物活性のための熱処理(不活性ガス雰囲気での600〜800℃のアニール)を行うことにより制御性がさらに向上する。
具体的な不純物導入例としては、第1の実施形態における図11(j)後に、PSGを900℃、O2:100sccm、N2:18000sccm、PH3:1800sccm雰囲気により形成し、800℃1時間のアニールを行う。その後、ふっ酸による酸化膜除去を行い、接液保護膜形成を行う。
この処理を行わない場合、10μm程度の反りのあるものが不純物導入を行うと4μm程度となる。これと同程度の濃度の不純物導入をイオン注入で行うには、PH3、60KeV、1E16atoms/cm2程度の注入で実現できる。
以上、反りを無くすことを目的として説明してきたが、本発明による、排除体積、表面積、不純物導入による反りの制御を行うことにより、ノズル形成部材50、振動板52と加圧液室形成部材51の熱膨張率の違いによる接合時の反り、剥がれを考慮して、いずれかの面側へ反りを生じさせる場合もある。
【0054】
図17に、液体カートリッジとしてのインクカートリッジ(第4の実施形態)を示す。
インクカートリッジ100は、ノズル50a等を有する上記各実施形態のいずれかのインクジェットヘッド(記録ヘッド)101と、このインクジェットヘッド101に対してインクを供給するインクタンク102とを一体化したものである。
このようにインクタンク一体型のヘッドの場合、ヘッドの歩留まり不良は直ちにインクカートリッジ100全体の不良につながるので、上述したようにパーティクルなどによる製造不良を低減することで、インクカートリッジ100の歩留まりが向上し、ヘッド一体型のインクカートリッジ100の低コスト化を図れる。
【0055】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、複数のノズルが形成されるノズル形成部材と、前記ノズルに連通する加圧液室が形成される加圧液室形成部材と、前記ノズルから液滴を吐出させるための圧力を前記加圧液室に伝搬させる振動板を備えた液滴吐出ヘッドにおいて、前記加圧液室形成部材がシリコンで形成されており、該加圧液室形成部材の前記ノズル形成部材に対する接合面の凹部と、該加圧液室形成部材の前記振動板に対する接合面の凹部の体積が略同じである構成としたので、シリコンの部材の持つ内部応力開放による反りを低減することができるとともに、シリコンのアルカリ系インクへの溶出を防止するための保護膜を形成する場合に該保護膜の膜応力によるシリコン部材の反りを低減することができ、ノズル形成部材あるいは振動板との接合時の接合不良を無くすことができる。このため高信頼性の液滴吐出ヘッドを実現できる。
【0056】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記加圧液室形成部材の両面の凹部の体積の比が、0.25〜4.0の範囲にある構成としたので、シリコンの部材の持つ内部応力開放による反りを低減することができるとともに、シリコンのアルカリ系インクへの溶出を防止するための保護膜を形成する場合に該保護膜の膜応力によるシリコン部材の反りを低減することができ、ノズル形成部材あるいは振動板との接合時の接合不良を無くすことができる。このため高信頼性の液滴吐出ヘッドを実現できる。
【0057】
請求項3記載の発明によれば、請求項1または2記載の液滴吐出ヘッドにおいて、少なくとも前記加圧液室形成部材の液体接触部に耐液性薄膜が形成されている構成としたので、アルカリ系のインクを使用する場合にシリコンがインクに溶出してしまうことを防止でき、高信頼性の液滴吐出ヘッドを実現できる。
【0058】
請求項4記載の発明によれば、請求項3記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記加圧液室形成部材の前記ノズル形成部材に対する接合面側と、該加圧液室形成部材の前記振動板に対する接合面側の表面積が略同じである構成としたので、シリコンのアルカリ系インクへの溶出を防止するための保護膜を形成する場合に該保護膜の膜応力によるシリコン部材の反りを低減することができ、ノズル形成部材あるいは振動板との接合時の接合不良を無くすことができる。このため高信頼性の液滴吐出ヘッドを実現できる。
【0059】
請求項5記載の発明によれば、請求項4に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記加圧液室形成部材の両面の表面積の差[mm2]が、1200000/(前記加圧液室形成部材の長辺の長さ[mm]の2乗)以下である構成としたので、シリコンのアルカリ系インクへの溶出を防止するための保護膜を形成する場合に該保護膜の膜応力によるシリコン部材の反りを低減することができ、ノズル形成部材あるいは振動板との接合時の接合不良を無くすことができる。このため高信頼性の液滴吐出ヘッドを実現できる。
【0060】
請求項6記載の発明によれば、請求項3記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記耐液性薄膜が、酸化膜または窒化チタン膜である構成としたので、アルカリ系のインクを使用する場合にシリコンがインクに溶出してしまうことを防止でき、高信頼性の液滴吐出ヘッドを実現できる。
【0061】
請求項7記載の発明によれば、請求項3乃至6のうちの何れか1つに記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記加圧液室形成部材の前記ノズル形成部材に対する接合面側と、該加圧液室形成部材の前記振動板に対する接合面側に形成されている前記耐液性薄膜の持つ内部応力の差[MPa.]が、60000/(前記加圧液室形成部材の長辺の長さ[mm]の2乗)以下である構成としたので、シリコン部材の反りを低減することができ、ノズル形成部材あるいは振動板との接合時の接合不良を無くすことができる。このため高信頼性の液滴吐出ヘッドを実現できる。
【0062】
請求項8記載の発明によれば、請求項3乃至6のうちの何れか1つに記載の液滴吐出ヘッドにおいて、該加圧液室形成部材の前記ノズル形成部材に対する接合面の凹部と、該加圧液室形成部材の前記振動板に対する接合面の凹部の周囲長の差[mm]が、36000000/(前記加圧液室形成部材の長辺の長さ[mm]の2乗)以下である構成としたので、シリコン部材の反りを低減することができ、ノズル形成部材あるいは振動板との接合時の接合不良を無くすことができる。このため高信頼性の液滴吐出ヘッドを実現できる。
【0063】
請求項9記載の発明によれば、請求項1乃至8のうちの何れか1つに記載の液滴吐出ヘッドにおいて、前記加圧液室形成部材の前記ノズル形成部材に対する接合面と、該加圧液室形成部材の前記振動板に対する接合面のいずれか一方の面または両面に不純物が導入拡散され、応力が制御されている構成としたので、ノズル形成部材あるいは振動板との接合時の接合不良を無くすことができ、高信頼性の液滴吐出ヘッドを実現できる。
【0064】
請求項10記載の発明によれば、請求項9記載の液滴吐出ヘッドにおいて、導入する不純物の種が、応力緩和または熱酸化膜応力を低減するN型(P、Asなど)である構成としたので、応力低減により耐液性薄膜の持つ内部応力を変化させ、ノズル接合面側または振動板接合面側へのソリを制御することにより、ノズル形成部材あるいは振動板との接合時の接合不良を無くすことができる。このため高信頼性の液滴吐出ヘッドを実現できる。また、片面ずつの応力制御を行い、ノズル接合面側または振動板接合面側へのソリを制御することにより、ノズル形成部材あるいは振動板との接合時の接合不良を無くすことができる。このため高信頼性の液滴吐出ヘッドを実現できる。
【0065】
請求項11記載の発明によれば、請求項9記載の液滴吐出ヘッドにおいて、導入する不純物の種が、応力緩和または熱酸化膜応力を増加させるP型(Bなど)である構成としたので、応力増加により耐液性薄膜の持つ内部応力を変化させ、ノズル接合面側または振動板接合面側へのソリを制御することにより、ノズル形成部材あるいは振動板との接合時の接合不良を無くすことができる。このため高信頼性の液滴吐出ヘッドを実現できる。また、片面ずつの応力制御を行い、ノズル接合面側または振動板接合面側へのソリを制御することにより、ノズル形成部材あるいは振動板との接合時の接合不良を無くすことができる。このため高信頼性の液滴吐出ヘッドを実現できる。
【0066】
請求項12記載の発明によれば、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、該液滴吐出ヘッドに液体を供給するタンクを一体化した液体カートリッジにおいて、前記液滴吐出ヘッドが、請求項1乃至11のうちの何れか1つに記載の液滴吐出ヘッドである構成としたので、何れかの液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッドとこのインクジェットヘッドにインクを供給するインクタンクを一体化したので、製造不良が減少し、低コスト化を図ることができる。
【0067】
請求項13記載の発明によれば、液滴吐出ヘッドにより液滴を吐出させて画像を形成する画像形成装置において、前記液滴吐出ヘッドが、請求項1乃至11のうちの何れか1つに記載の液滴吐出ヘッドである構成としたので、気泡の溜まりがなく機械強度に優れた液滴吐出ヘッドの使用により高信頼性の画像形成装置を実現できる。また、上述した各効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態における液滴吐出ヘッドの要部分解斜視図である。
【図2】従来における加圧液室形成部材のノズル接合面側と振動板接合面側の形状を示す概要平面図である。
【図3】第1の実施形態における加圧液室形成部材のノズル接合面側と振動板接合面側の形状を示す概要平面図である。
【図4】加圧液室形成部材の要部断面図である。
【図5】加圧液室形成部材の要部断面図である。
【図6】加圧液室形成部材のノズル接合面側と振動板接合面側の排除体積比と反り量との関係を示す実験結果のグラフである。
【図7】加圧液室形成部材のノズル接合面側と振動板接合面側の表面積の差と反り量との関係を示す実験結果のグラフである。
【図8】加圧液室形成部材に被覆される膜の応力の差と反り量との関係を示す実験結果のグラフである。
【図9】不純物濃度と反り量との関係を示す実験結果のグラフである。
【図10】加圧液室形成部材の製造工程を示す図である。
【図11】加圧液室形成部材の製造工程を示す図である。
【図12】画像形成装置としてのインクジェット記録装置の概要正面図である。
【図13】インクジェット記録装置の要部斜視図である。
【図14】第2の実施形態における加圧液室形成部材の製造工程を示す図である。
【図15】第2の実施形態における加圧液室形成部材の製造工程を示す図である。
【図16】第3の実施形態における加圧液室形成部材の製造工程を示す図である。
【図17】第4の実施形態における液体カートリッジとしてのインクカートリッジの斜視図である。
【符号の説明】
14 液滴吐出ヘッドとしての記録ヘッド
50 ノズル形成部材
50a ノズル
51 加圧液室形成部材
51b 加圧液室
100 液体カートリッジとしてのインクカートリッジ
Claims (13)
- 複数のノズルが形成されるノズル形成部材と、前記ノズルに連通する加圧液室が形成される加圧液室形成部材と、前記ノズルから液滴を吐出させるための圧力を前記加圧液室に伝搬させる振動板を備えた液滴吐出ヘッドにおいて、
前記加圧液室形成部材がシリコンで形成されており、該加圧液室形成部材の前記ノズル形成部材に対する接合面の凹部と、該加圧液室形成部材の前記振動板に対する接合面の凹部の体積が略同じであることを特徴とする液滴吐出ヘッド。 - 請求項1記載の液滴吐出ヘッドにおいて、
前記加圧液室形成部材の両面の凹部の体積の比が、0.25〜4.0の範囲にあることを特徴とする液滴吐出ヘッド。 - 請求項1または2記載の液滴吐出ヘッドにおいて、
少なくとも前記加圧液室形成部材の液体接触部に耐液性薄膜が形成されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。 - 請求項3記載の液滴吐出ヘッドにおいて、
前記加圧液室形成部材の前記ノズル形成部材に対する接合面側と、該加圧液室形成部材の前記振動板に対する接合面側の表面積が略同じであることを特徴とする液滴吐出ヘッド。 - 請求項4に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、
前記加圧液室形成部材の両面の表面積の差[mm2]が、1200000/(前記加圧液室形成部材の長辺の長さ[mm]の2乗)以下であることを特徴とする液滴吐出ヘッド。 - 請求項3記載の液滴吐出ヘッドにおいて、
前記耐液性薄膜が、酸化膜または窒化チタン膜であることを特徴とする液滴吐出ヘッド。 - 請求項3乃至6のうちの何れか1つに記載の液滴吐出ヘッドにおいて、
前記加圧液室形成部材の前記ノズル形成部材に対する接合面側と、該加圧液室形成部材の前記振動板に対する接合面側に形成されている前記耐液性薄膜の持つ内部応力の差[MPa.]が、60000/(前記加圧液室形成部材の長辺の長さ[mm]の2乗)以下であることを特徴とする液滴吐出ヘッド。 - 請求項3乃至6のうちの何れか1つに記載の液滴吐出ヘッドにおいて、
該加圧液室形成部材の前記ノズル形成部材に対する接合面の凹部と、該加圧液室形成部材の前記振動板に対する接合面の凹部の周囲長の差[mm]が、36000000/(前記加圧液室形成部材の長辺の長さ[mm]の2乗)以下であることを特徴とする液滴吐出ヘッド。 - 請求項1乃至8のうちの何れか1つに記載の液滴吐出ヘッドにおいて、
前記加圧液室形成部材の前記ノズル形成部材に対する接合面と、該加圧液室形成部材の前記振動板に対する接合面のいずれか一方の面または両面に不純物が導入拡散され、応力が制御されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。 - 請求項9記載の液滴吐出ヘッドにおいて、
導入する不純物の種が、応力緩和または熱酸化膜応力を低減するN型(P、Asなど)であることを特徴とする液滴吐出ヘッド。 - 請求項9記載の液滴吐出ヘッドにおいて、
導入する不純物の種が、応力緩和または熱酸化膜応力を増加させるP型(Bなど)であることを特徴とする液滴吐出ヘッド。 - 液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、該液滴吐出ヘッドに液体を供給するタンクを一体化した液体カートリッジにおいて、
前記液滴吐出ヘッドが、請求項1乃至11のうちの何れか1つに記載の液滴吐出ヘッドであることを特徴とする液体カートリッジ。 - 液滴吐出ヘッドにより液滴を吐出させて画像を形成する画像形成装置において、
前記液滴吐出ヘッドが、請求項1乃至11のうちの何れか1つに記載の液滴吐出ヘッドであることを特徴とする画像形成装置。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2007290214A (ja) * | 2006-04-24 | 2007-11-08 | Ricoh Co Ltd | 液滴吐出ヘッド、加圧液室形成部材の製造方法、液体カートリッジ、及び液滴吐出記録装置 |
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JP2007290214A (ja) * | 2006-04-24 | 2007-11-08 | Ricoh Co Ltd | 液滴吐出ヘッド、加圧液室形成部材の製造方法、液体カートリッジ、及び液滴吐出記録装置 |
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