JP2004209536A - レーザ溶接方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶接部にフィラワイヤを送給しつつ行うレーザ溶接方法として、開先ギャップを有する場合でも上向き溶接での確実な接合を可能とし、水平配管の全周溶接等の全姿勢溶接を能率よく短時間で行え、厚板の溶接においても開先精度を要求されない手段を提供する。
【解決手段】被溶接材Wの溶接部にフィラーワイヤ5を送給しつつ、レーザビームLを照射してフィラーワイヤ5及び被溶接材Wを溶融させて行うレーザ溶接において、レーザビームLの照射によって溶接部にプラズマプルームP1,P2を発生させ、プラズマプルームP1,P2の発生に伴う蒸発反力によって溶融物8を溶接部の内奥側へ送り込む。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被溶接材の溶接部位にフィラーワイヤを送給しつつ、レーザビームを照射して該被溶接材を溶接するレーザ溶接方法、特にレーザビームの照射方向が上向きや横向きとなる溶接姿勢を含む全姿勢溶接を可能とする該レーザ溶接方法に関する。
【0002】
【従来技術とその課題】
従来より金属材料の接合に汎用されているアーク溶接は、熱源の拡がりによって溶融部の表面積が大きくなり、溶接部を下方から溶接操作する上向き溶接では重力によって溶接金属の垂れ落ちを生じ易いため、下向き溶接が基本となっている。しかるに、化学プラントや石油パイプライン等の配管の組み立てにおいては、現場施工による溶接が不可欠であり、例えば水平配管の突合わせ接続部等では全周溶接のために上向きを含む全姿勢での溶接が必要になる。このような場合、アーク溶接では、上向き溶接での溶融金属の垂れ落ちを少なくするため、溶接速度を極低速として、且つ溶融金属の体積を少なくして凝固を促進しながら間欠的に溶融が起こるように溶接電流を制御しているが、それによって溶接能率の著しい低下を招くことになる。
【0003】
また、開先線が垂直面ないし垂直に近い面に沿う溶接部を正面から溶接接合する立向き溶接では、下から上に向かって溶接してゆく上進溶接、もしくは逆に上から下に向かって溶接してゆく下進溶接のいずれにおいても、重力によって溶接金属が開先の下方側へ垂れ下り易いため、やはり上記同様の問題を生じる。
【0004】
一方、レーザ溶接では、レーザビームの集光によって小さなスポットに高熱を付与できるため、溶融部の表面積が小さく溶込み深さの深い溶接を行える反面、溶接部のギャップに対する裕度が低いという難点を有することから、固定配管等の全周溶接においては突き合わせ部にギャップを生じないように予め機械加工を施すのが普通である。しかして、現場施工等で溶接部のギャップが避けられない場合、フィラワイヤ等の溶加材を供給しながらレーザ溶接を行うことになるが、従来にあってはレーザビームの照射によるフィラワイヤの溶融物は重力によって開先ギャップ内に流れ込むものと考えられており、このためにフィラワイヤを送給しつつ行うレーザ溶接は上向き溶接及び立向き溶接に適用できないものとされていた。
【0005】
更に、厚板の溶接においては、アーク溶接の場合、アーク放電の特性から溶融幅が広く溶け込み深さの浅い溶接になるため、一般的に何回も溶接を重ねる多層溶接が採用されるが、安定したアーク放電を維持する上で電極と被溶接材の間隔を10〜20mm程度に設定し、更に溶接トーチの構造上から溶接部の開先形状を表面側の広いV字形にするのが普通であるから、多層溶接の層数が多くなって非常に長時間を要するという問題があった。これに対し、レーザ溶接は溶込み深さが深いことから、開先の突合わせ精度が充分に確保されている場合には1層で板厚数十mmの溶接を行えるが、大型構造物では開先部を精度よく機械加工するのに非常に手間がかかる。特に、工事現場で大口径のパイプ同士を隙間なく突き合わせて溶接するには、パイプライン全体の位置調整に多大な労力と時間を要する上、調整した位置でパイプを保持するのに大掛かりな保持機構や機械装置が必要になる。なお、電子ビームを用いたパイプ溶接システムも開発されているが、レーザ溶接以上に開先の精度が要求されることに加え、溶接部を局所的に真空状態にする必要があるため、設備コストが極めて高くつくという難点があった。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みて、溶接部に溶加材としてフィラワイヤを送給しつつ行うレーザ溶接方法として、開先ギャップを有する場合でも上向き溶接及び立向き溶接での確実な接合を可能とし、もって水平配置した固定配管の全周溶接等の全姿勢溶接を能率よく短時間で行えると共に、厚板の溶接においても開先精度を確保するための機械加工を不要にし得る手段を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るレーザ溶接方法は、被溶接材の溶接部にフィラーワイヤを送給しつつ、レーザビームを照射して該フィラーワイヤ及び被溶接材を溶融させ、その溶融物を介して被溶接材を溶接するレーザ溶接において、レーザビームの照射によって溶接部にプラズマプルームを発生させ、このプラズマプルームの発生に伴う蒸発反力によって溶融物を溶接部の内奥側へ送り込むことを特徴としている。
【0008】
請求項2の発明は、上記請求項1のレーザ溶接方法において、レーザビームの照射方向が横向き又は/及び上向きとなる溶接姿勢を含む構成としている。
【0009】
請求項3の発明は、上記請求項1又は2のレーザ溶接方法において、矩形変調波や正弦変調波の如き変調波のレーザビームを用いる構成としている。更に、この請求項3のレーザ溶接方法において、請求項4の発明は、レーザビームの照射方向を上向きにする溶接領域と下向きにする溶接領域とを含むレーザ溶接において、レーザビームの変調波のピーク出力を下向き照射では上向き照射よりも低く設定する構成を採用している。
【0010】
請求項5の発明は、上記請求項1〜4のいずれかのレーザ溶接方法において、被溶接材の溶接部位が開先ギャップを有するI型突合わせ継手であり、開先ギャップの開口部の外側へ離間した位置に、フィラーワイヤを溶接進行方向前方から送給する構成を採用している。
【0011】
一方、請求項6の発明は、上記請求項1〜4のいずれかのレーザ溶接方法において、被溶接材の溶接部位が開先ギャップを有するI型突合わせ継手であり、そのギャップ幅よりも径小のフィラーワイヤを用い、開先ギャップ内に該フィラーワイヤを溶接進行方向前方から送給する構成を採用している。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は本発明のレーザ溶接方法に使用するレーザ溶接装置の一構成例を示す。図中の1はレーザ発振器、2は集光レンズを始めとする光学系を内蔵したレーザヘッド、3はレーザ発振器1から出射されるレーザ光をレーザヘッドへ伝送する光ファイバ、4はワイヤ送給装置、50は該送給装置4より送給されるフィラワイヤ5のコンジットケーブル、6はワイヤ送出ヘッド、7はレーザ発振器1及びワイヤ送給装置4と図示省略した溶接ロボットの作動制御を行う溶接制御装置、W1は被溶接材としての水平配置した固定配管の金属製パイプである。そして、レーザヘッド2とワイヤ送出ヘッド6は溶接ロボットが把持して操作するようになされている。
【0013】
レーザ溶接に際しては、予め溶接制御装置7に溶接条件(被溶接材の寸法形状、溶接部の厚さ、ギャップ幅、溶接経路、レーザ平均出力、レーザ変調波形及び周波数、ピーク出力、フィラワイヤ送給速度等)が入力される。そして、この溶接条件に基づいて該溶接制御装置7から出力される指令信号にしたがい、レーザ発振器1から出射された所定のレーザビームが光ファイバ3を介してレーザヘッド2に伝送され、このレーザヘッド2から溶接点に集光して照射される一方、ワイヤ送給装置4が所定の送給速度でフィラワイヤ5を送給すると共に、溶接ロボットがレーザヘッド2及びワイヤ送出ヘッド6をパイプW1の周りに所定速度で一周させることにより、該パイプW1,W1同士の全周突合せ溶接を行う。
【0014】
図2(A)(B)は、本発明のレーザ溶接方法にて上記の全周突合せ溶接を行う場合の配置状態を示す。図示の如く、パイプW1,W1は溶接部に開先ギャップGを有するI型突合せ継手をなし、レーザヘッド2からのレーザビームLが集光される溶接点において、ワイヤ送出ヘッド6から繰り出されるフィラワイヤ5の先端部が開先ギャップGの外側に離間した位置に来るように設定される。また、レーザヘッド2及びワイヤ送出ヘッド6は、該配置状態を維持しつつパイプW1の周りを一周させるが、その周回方向はフィラワイヤ5が溶接進行方向前方から送給される方向、つまり図2(B)における時計回り方向(右回り)とする。
【0015】
上記のレーザ溶接において、矩形変調波のようなピーク出力の高いレーザビームLを溶接点に照射すると、溶融金属部から勢いよく蒸発が起こってプラズマプルームを発生し、その蒸発反力によって溶滴がプラズマプルームとは逆方向つまり溶接部の内奥側へ飛ばされる現象が認められる。そして、この現象に伴い、パイプW1の下半部の領域、つまりレーザビームLの照射方向が水平より上向きになる領域においても、溶融金属が垂れ落ちを生じることなく溶接部の内奥側へ送り込まれ、もってパイプ周壁の全厚にわたって確実に溶接される結果、高品位の全周突合せ溶接を短時間で能率よく行えることが判明している。
【0016】
しかして、上記現象を高速度カメラ観察によって更に仔細に解析した結果と、後述する実施例1での特定元素(Cr)含有比率が被溶接材とは異なるフィラワイヤを用いた場合の溶接断面の元素分析結果とから、開先ギャップGを有する溶接部にフィラワイヤ5を送給しつつ行うレーザ溶接における上向き溶接の領域では、次のような挙動を生じることが推定されている。
【0017】
すなわち、図3の突き合わせ端面に沿う断面で模式的に示すように、レーザビームLの照射により、まずフィラワイヤ5が溶融して溶滴5a…を生じると共に、その一部が蒸発してワイヤプラズマプルームP1を発生し、その蒸発反力によって溶滴5a…がレーザビームLの照射方向に沿う上向きに飛翔して開先ギャップ内に送り込まれ、次いでフィラワイヤ5の溶融に消費された残りのレーザビームLの余剰エネルギーによって被溶接材Wの母材内にキーホールが形成されると共に、このキーホール内にキーホールプラズマプルームP2が発生し、その蒸発反力によって母材の溶融物と前記溶滴5a…とからなる溶融金属8が矢印sの如くキーホールに沿って押し上げられて上向きの湯流れを生じ、溶接部の内奥端まで溶融金属8が行きわたって開先全厚の溶接がなされるものと想定される。なお、図3において、9は被溶接材Wの開先である未溶接端面、10は溶接完了部、11は溶融池、2aはレーザヘッド2の集光レンズ、矢印Fは溶接の進行方向、をそれぞれ示す。
【0018】
従って、本発明のレーザ溶接方法によれば、レーザビームの照射方向が上向きとなる上向き溶接姿勢、ならびに同照射方向が横向きとなる溶接姿勢を含む全姿勢での確実な接合が可能であり、しかも開先にギャップのあるI型突合せ継手の上向き溶接でも溶融金属の垂れ落ちを生じることがない。このため、例えば化学プラントや石油パイプライン等における配管の組み立てのように現場施工による溶接が必要な場合でも、水平配置した固定配管の全周溶接等の全姿勢溶接を簡単な装置構成によって能率よく短時間で行える。また、開先線が垂直面ないし垂直に近い面に沿う溶接部を正面から溶接接合する立向き溶接では、レーザビームの照射方向は横向きになるが、下から上へ溶接してゆく上進溶接と逆に上から下へ溶接してゆく下進溶接のいずれにおいても、溶接金属の下方側への垂れ下りを生じることなく、容易に能率よく接合操作できる。更に、上述のように開先ギャップがあっても支障なく上向き溶接を行えるから、厚板の溶接においても厳密な開先精度を要求されず、位置合わせが簡単となり、もって各種の構築物や機械等の組立施工等の作業能率を著しく高めることが可能となる。
【0019】
本発明のレーザ溶接方法に用いるレーザ発振器1としては、種々の固体及び気体レーザを利用できるが、特にYAGレーザがレーザ特性及び装置構成の容易さから好適である。しかして、レーザビームLは、連続波も使用可能であるが、矩形変調波及び正弦変調波がより好適である。すなわち、矩形変調波及び正弦変調波では、連続波に対して同じ平均出力でも高いピーク出力が得られると共に、同じ溶接速度では連続波の使用時よりもビード幅が狭くなり、それだけ上向き溶接における溶融金属8の上方への輸送力が大きくなるため、開先ギャップを有するI型突合せ継手のフィラワイヤを用いる全姿勢レーザ溶接に適している。
【0020】
なお、前記のパイプW1の全周突合せ溶接のように、レーザビームの照射方向を上向きにする溶接領域と下向きにする溶接領域とを含むレーザ溶接においては、下向き溶接を行う領域では溶融金属の溶接部内奥側への輸送力に重力が加わるため、下向き照射では蒸発反力が小さくなるように、レーザビームの変調波のピーク出力を上向き照射よりも低く設定することが推奨される。
【0021】
また、本発明のレーザ溶接方法は、レーザビームの照射方向を問わない全姿勢の溶接に適用できるが、前記の水平配置したパイプの全周溶接を始めとしてレーザビームの照射方向が上向きとなる溶接姿勢、ならびに立向き溶接のように同照射方向が横向きとなる溶接姿勢を含む溶接作業に特に好適である。しかして、本発明のレーザ溶接方法は、開先ギャップを有する突合せ部に限らず、例えば図4(A)に示す金属板W2,W2同士のL字形の端部接合部の如き隅肉溶接や、同図(B)に示すような溶接部の開先形状を表面側の広いV字形にした金属厚板W3,W3同士の突合せ部の溶接等、各種開先形状の溶接に同様に適用できる。
【0022】
一般的にフィラワイヤは送給性能上の制約から0.8mm径以上のものが用いられるが、被溶接材の溶接部位に開先ギャップを有するI型突合わせ継手においてギャップ幅がワイヤ径より大きい場合は、図4(C)に示すように、開先ギャップG内に該フィラーワイヤ5を高速で送給することが推奨される。なお、フィラーワイヤ5の送給は、いずれの場合も、溶滴を開先内に効率よく送り込むために、溶接進行方向前方から溶接部へ送るようにするのがよい。また、フィラーワイヤ5の送給量(送給速度)はI型突合わせ継手のギャップ幅に応じて調整すると共に、この送給量に応じてレーザ平均出力を調整することは言うまでもない。しかして、一つの溶融部におけるギャップ幅が溶接位置によって異なり、そのギャップ幅の変化が予め判明している場合は、変化に対応してフィラーワイヤ5の送給量を変化させればよい。
【0023】
【実施例】
以下、本発明に係るレーザ溶接方法を実施例によって具体的に説明する。
【0024】
実施例1
図1で示す構成のレーザ溶接装置において、レーザ発振器1として出力4kWのYAGレーザ発振器1を用いると共に、フィラワイヤ5として1.2mm径のSUS304ステンレス鋼線を用い、板厚5mmの軟鋼板からなる被溶接材Wを水平配置して開先を平行ギャップ1mmに設定したI型突合せ継手を溶接対象とし、レーザビームLを矩形変調波(平均出力3.3kW、50Hz、デューティ50%)に設定し、溶接部を窒素ガスでシールドし、フィラワイヤ5を溶接進行方向前方側からギャップの下端より下へ0.5〜1.0mm離れた位置へ送給速度31mm/sで送給すると共に、溶接速度10mm/sとして、溶接部にレーザビームを真下から垂直に照射する上向き溶接姿勢でレーザ溶接を行った。
【0025】
その結果、溶融金属の垂れ落ちを生じることなく、溶接部は図5(A)の拡大断面写真に示すように全厚にわたって均一に接合されていた。また、フィラワイヤ5に用いたSUS304ステンレス鋼のCr元素が被溶接材Wの軟鋼よりも多く含まれていることを利用し、溶接断面の元素分析を行ってCr元素の分布状況を調べたところ、図5(B)示すように、Cr元素の多い領域Z1が溶融部の下端から上端まで一様に分布しており、ギャップの下側に送給したフィラワイヤ5が溶加材として該ギャップの上端にまで送られていることが判明した。なお、図5(B)中、Z2は未溶融部のCr元素が少ない領域である。
【0026】
実施例2
板厚5mmのSUS304ステンレス鋼板からなる被溶接材Wを水平配置して開先を平行ギャップ1mmに設定したI型突合せ継手を溶接対象とし、フィラワイヤ5として1.2mm径のSUS308ステンレス鋼線を用い、レーザビームLとして連続波(平均出力3.3kW)と矩形変調波(平均出力3.3kW、50Hz、デューティ50%)を用いると共に、溶接速度を図6の如く3段階に変化させ、他は実施例1と同様にして、それぞれ上向き溶接姿勢でレーザ溶接を行った。その結果、溶接部は図6の拡大断面写真に示す状態となった。なお、レーザビームLの矩形変調波のピーク出力は連続波の2倍になっている。
【0027】
図6に示すように、連続波の場合、溶接速度7mm/sではフィラワイヤ5の溶融物が被溶接材の上端部まで輸送されて融合しているが、溶接速度10mm/s及び15mm/sでは開先ギャップの上端部まで融合していない。これに対し、矩形変調波の場合、溶接速度15mm/sでもフィラワイヤ5の溶融物が被溶接材の上端部まで輸送されて融合している。また、同じ溶接速度であっても、連続波の方が矩形変調波よりも広いビード幅になっている。これらより、連続波よりもピーク出力の高い矩形変調波を用いた方が、フィラワイヤ5の溶融物を上方へ輸送する力が大きく、上向き溶接に適することが判る。
【0028】
実施例3
肉厚5mm、外径267.4mmのSUS304ステンレス鋼製パイプW1を被溶接材として略水平に配置し、図7(A)(B)に示すように開先ギャップGの幅が上端位置eで0mm、左右の中間高さ位置c,gで0.5mm、下端位置aで1.0mmとなるように設定し、レーザビームLとして矩形変調波(平均出力3.45kW、50Hz、デューティ50%)を用い、溶接速度5mm/sとし、フィラワイヤ送給量をギャップ幅に応じて制御し、全周突合せ溶接を行った。その結果、溶接部の各位置a〜hにおける溶接ビードの断面は、図8の拡大断面写真で示すように、開先ギャップ幅の大小と溶接姿勢の違いによる影響が少なく、いずれも良好な接合状態になっていた。
【0029】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、被溶接材の溶接部にフィラーワイヤを送給しつつ、レーザビームを照射して該フィラーワイヤ及び被溶接材を溶融させ、その溶融物を介して被溶接材を溶接するレーザ溶接方法において、レーザビームの照射によって溶接部にプラズマプルームを発生させ、このプラズマプルームの発生に伴う蒸発反力によって溶融物を溶接部の内奥側へ送り込むことから、レーザビームの照射方向が上向きとなる上向き溶接姿勢を含む全姿勢での確実な接合が可能となり、しかも開先にギャップのあるI型突合せ継手でも溶融金属の垂れ落ちを生じることなく上向き溶接で良好な接合状態となし得るから、例えば化学プラントや石油パイプライン等における配管の組み立てのように現場施工による溶接が必要な場合でも、位置合わせを簡略化でき、水平配置した固定配管の全周溶接等の全姿勢溶接を簡単な装置構成によって能率よく短時間で行えると共に、厚板の溶接においても厳密な開先精度を要求されないため、各種の構築物や機械等の組立施工等の作業能率を著しく高めることが可能となる。
【0030】
請求項2の発明によれば、特にレーザビームの照射方向が上向き又は/及び横向きとなる溶接姿勢を含む上記のレーザ溶接において、溶融金属の垂れ落ちを生じることなく確実で且つ良好な溶接接合が可能となる。
【0031】
請求項3の発明によれば、上記のレーザ溶接方法において、矩形変調波や正弦変調波等の変調波のレーザビームを用いることから、上向き溶接における溶融金属の上方への輸送力が大きくなり、もって開先ギャップを有するI型突合せ継手のフィラワイヤを用いる全姿勢レーザ溶接として好結果が得られる。
【0032】
請求項4の発明によれば、レーザビームの照射方向を上向きにする溶接領域と下向きにする溶接領域とを含む上記のレーザ溶接において、レーザビームの変調波のピーク出力を下向き照射では上向き照射よりも低く設定することから、溶接部の仕上がり状態がより良好になるという利点がある。
【0033】
請求項5の発明によれば、被溶接材の溶接部位が開先ギャップを有するI型突合わせ継手である場合の上記レーザ溶接において、開先ギャップの外側へ離間した位置に、フィラーワイヤを溶接進行方向前方から送給するようにしているから、ギャップ幅がフィラワイヤ径よりも狭い場合でも溶接が可能となり、また効率よく溶滴をギャップ内に送り込むことができ、従来では不可能とされていた開先ギャップのある継手の溶接を行える。
【0034】
請求項6の発明によれば、被溶接材の溶接部位が開先ギャップを有するI型突合わせ継手である場合の上記レーザ溶接において、そのギャップ幅よりも径小のフィラーワイヤを用い、開先ギャップ内に該フィラーワイヤを溶接進行方向前方から送給するようにしているから、特に溶接部の厚みが比較的に厚い場合に、能率よく仕上がり状態のよい溶接を行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るレーザ溶接方法に使用するレーザ溶接装置の一構成例を模式的に示す側面図である。
【図2】同レーザ溶接装置による溶接部位の配置構成を示し、(A)は縦断正面図、(B)は開先位置での側面図である。
【図3】本発明のレーザ溶接方法による溶接部での挙動を模式的に示す突き合わせ端面に沿う縦断正面図である。
【図4】本発明のレーザ溶接方法の適用例を示し、(A)は金属板同士のL字形端部接合部の隅肉溶接を示す縦断側面図、(B)は開先形状をV字状にした金属厚板同士の突合せ溶接を示す縦断側面図、(C)は開先ギャップを有して溶接厚さが比較的に厚い場合のI型突合せ溶接を示す縦断正面図である。
【図5】本発明の実施例1による溶接部を示し、(A)は溶接部の拡大断面写真図、(B)は溶接部のCr分布状態を示す元素分析写真図である。
【図6】本発明の実施例2によるレーザビームの波形と溶接速度の違いによる溶接ビードの差異を拡大断面写真によって対比した特性相関図である。
【図7】本発明の実施例3によるパイプ材の開先ギャップ幅が溶接位置によって異なる全周突合せ溶接を示し、(A)はパイプ材の開先における周方向の溶接位置を示す側面図、(B)はパイプ材同士の突合せによる開先ギャップを誇張して示す模式正面図である。
【図8】図7(A)で示す各溶接位置の拡大断面写真によるビード断面とフィラワイヤ送給速度との相関図である。
【符号の説明】
1 レーザ発振器
2 レーザヘッド
2a 集光レンズ
3 光ファイバ
4 ワイヤ送給装置
5 フィラワイヤ
5a 溶滴(溶融物)
6 ワイヤ送出ヘッド
7 溶接制御装置
8 溶融金属(溶融物)
9 未溶接端面
10 溶接完了部
11 溶融池
F 溶接の進行方向
G 開先ギャップ
L レーザビーム
P1 ワイヤプラズマプルーム
P2 キーホールプラズマプルーム
W 被溶接材
W1 金属製パイプ(被溶接材)
W2 金属板(被溶接材)
W3 金属厚板(被溶接材)
W4 被溶接材
s 上向きの湯流れ

Claims (6)

  1. 被溶接材の溶接部にフィラーワイヤを送給しつつレーザビームを照射して該フィラーワイヤ及び被溶接材を溶融させ、その溶融物を介して被溶接材を接合するレーザ溶接において、
    レーザビームの照射によって溶接部にプラズマプルームを発生させ、このプラズマプルームの発生に伴う蒸発反力によって溶融物を溶接部の内奥側へ送り込むことを特徴とするレーザ溶接方法。
  2. レーザビームの照射方向が上向き又は/及び横向きとなる溶接姿勢を含む請求項1記載のレーザ溶接方法。
  3. 矩形変調波や正弦変調波の如き変調波のレーザビームを用いる請求項1又は2に記載のレーザ溶接方法。
  4. レーザビームの照射方向を上向きにする溶接領域と下向きにする溶接領域とを含むレーザ溶接において、レーザビームの変調波のピーク出力を下向き照射では上向き照射よりも低く設定する請求項3記載のレーザ溶接方法。
  5. 被溶接材の溶接部位が開先ギャップを有するI型突合わせ継手であり、開先ギャップの外側へ離間した位置に、フィラーワイヤを溶接進行方向前方から送給する請求項1〜4のいずれかに記載のレーザ溶接方法。
  6. 被溶接材の溶接部位が開先ギャップを有するI型突合わせ継手であり、そのギャップ幅よりも径小のフィラーワイヤを用い、開先ギャップ内に該フィラーワイヤを溶接進行方向前方から送給する請求項1〜4のいずれかに記載のレーザ溶接方法。
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