JP2004207586A - 面発光型半導体レーザ素子及びその製造方法 - Google Patents
面発光型半導体レーザ素子及びその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004207586A JP2004207586A JP2002376518A JP2002376518A JP2004207586A JP 2004207586 A JP2004207586 A JP 2004207586A JP 2002376518 A JP2002376518 A JP 2002376518A JP 2002376518 A JP2002376518 A JP 2002376518A JP 2004207586 A JP2004207586 A JP 2004207586A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- layer
- semiconductor laser
- laser device
- etching
- etching stop
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Weting (AREA)
- Semiconductor Lasers (AREA)
Abstract
【課題】活性層及び下部DBRの劣化が抑制され、高い信頼性と良好なレーザ特性を有する面発光型半導体レーザ素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】AlGaAs上部クラッド層15と電流狭窄層17との間にInGaP層16を備える。p−GaAsキャップ層19及び上部DBR18は、メサポスト20として形成される。
【選択図】 図1
【解決手段】AlGaAs上部クラッド層15と電流狭窄層17との間にInGaP層16を備える。p−GaAsキャップ層19及び上部DBR18は、メサポスト20として形成される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、面発光型半導体レーザ素子及びその製造方法に関し、特に、活性層及び下部DBRの劣化が抑制され、高い信頼性と良好なレーザ特性を有する、酸化狭窄型の面発光型半導体レーザ素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
基板と垂直な方向にレーザ光を出射する面発光型半導体レーザ素子は、出射ビームの形状が円形であり、光ファイバとの接続が容易である。また、活性層に流れる電流を狭い領域に制限する構成を備えるため、低いしきい値電流を有し、近年、光データ通信分野での光源として注目されている。
【0003】
活性層に流れる電流を制限するには、予めレーザ素子を構成する積層構造中に酸化されやすい物質からなる半導体層を形成しておき、この半導体層を部分的に酸化させて絶縁領域を形成する方法が知られている。このような方法を採用した素子を、酸化狭窄型の面発光半導体レーザ素子と呼んでいる。
【0004】
図4は、従来の酸化狭窄型の面発光型半導体レーザ素子の層構造を、その一部を断面で示す斜視図である。面発光型半導体レーザ素子30は、n−GaAs基板31上に順次に形成された、下部半導体多層膜反射鏡(下部DBR)32、AlGaAs下部クラッド層33、量子井戸活性層34、AlGaAs上部クラッド層35、上部半導体多層膜反射鏡(上部DBR)37、及びp−GaAsキャップ層38から成る積層構造を備えている。積層構造のうち、p−GaAsキャップ層38、上部DBR37、AlGaAs上部クラッド層35、量子井戸活性層34、AlGaAs下部クラッド層33、及び下部DBR32の上層部分は、メサポスト39として形成されている。
【0005】
下部DBR32は、各層の膜厚がλ/4n(λ:レーザの発振波長、n:各層の屈折率)のn−Al0.2Ga0.8As膜とn−Al0.9Ga0.1As膜の35ペアが積層された多層膜によって構成されている。上部DBR37は、各層の膜厚がλ/4nのp−Al0.2Ga0.8As膜とp−Al0.9Ga0.1As膜の25ペアが積層された多層膜によって構成されている。
【0006】
上部DBR37を構成する多層膜のうち、量子井戸活性層34に近い1層は、p−Al0.9Ga0.1As膜に代えて、p−AlAs層の一部領域を選択的に酸化した電流狭窄層36が形成されている。電流狭窄層36は、外側の環状のAl酸化領域36Bが電流狭窄領域を成し、内側の円形の非酸化領域36Aが電流注入領域を成す。
【0007】
電流狭窄層36は、キャリアの移動度の観点から、p側に形成するのが電流経路を限定するには効果的である。また、量子井戸活性層34の電流経路を効果的に限定するには、量子井戸活性層34に近づけて配置する。このため、n型基板を用いたレーザ素子では、電流狭窄層36は、一般的に、量子井戸活性層34より上側で、且つ量子井戸活性層34の近くに形成される。
【0008】
p−GaAsキャップ層38を露出させる円形領域を除いて、全面にSiNx膜40が成膜されている。また、メサポスト39の外側には、SiNx膜40を介してポリイミド層41が形成されている。更に、p−GaAsキャップ層38上には、レーザ出射口を成す円形の窓42を除いてp側電極43が、n−GaAs基板31の裏側には、n側電極44が形成されている。
【0009】
従来の面発光型半導体レーザ素子30の製造方法では、先ず、n−GaAs基板31上にp−GaAsキャップ層38までの積層構造を形成する。この際、電流狭窄層36の位置にはp−AlAs層を形成する。次いで、この積層構造にエッチングを行い、メサポスト39を形成する。続いて、メサポスト39の一部として形成されたp−AlAs層を、メサポスト39の側壁から部分的に酸化させ、電流狭窄層36に転化させるなどの工程を経る。
【0010】
メサポスト39を形成するエッチングには、一般的にドライエッチングを用いる。この際、ドライエッチングの不安定性により、エッチング深さには、設定値に対して±10%程度のばらつきが生じる。また、エッチングに用いるマスクは、その側面形状を上面に対して完全な垂直にすることができないため、マスク近傍のエッチングは不完全になり勝ちである。
【0011】
ここで、電流狭窄層36を形成するためのp−AlAs層の酸化には、p−AlAs層の側面がメサポスト39の側壁から完全に露出することが必要である。従ってメサポスト39の形成にあたっては、エッチング深さに一定のマージンをとり、下部DBR32の上層部分までエッチングしてp−AlAs層を露出させることが電流狭窄層36の形成に不可欠となる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
面発光型半導体レーザ素子で活性層が露出し空気等に晒されると、表面に酸化膜が形成され、劣化の原因になることが知られている。面発光型半導体レーザ素子では、製品となった後はメサポストは埋込み層で埋め込まれているので、活性層及び下部DBRが空気中に晒されることはないが、製造工程中のメサポストのエッチング後に活性層及び下部DBRが一旦空気中に晒され、これによって劣化が生じていることが判明した。例えば、AlGaAsのようなAlを含む半導体層は、量子井戸活性層に用いられると低いしきい値等の良好なレーザ特性をもたらすが、酸化がされ易く劣化が顕著である。
【0013】
また、エッチング後に下部DBRの上層部分が露出するため、下部DBRの上層部分には空気に晒されると劣化し易い材料から成る層を用いることができない。例えば、AlAsは熱伝導率が大きく、これを下部DBRを構成する多層膜の低反射率膜として用いると熱抵抗の低減をもたらす。しかし、非常に酸化され易いため、少なくともメサポストとして露出する下部DBRの上層部分に用いることはできない。
【0014】
そこで、本発明の目的は、活性層及び下部DBRの劣化が抑制され、高い信頼性と良好なレーザ特性を有する面発光型半導体レーザ素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上述の問題を解決するために、活性層と電流狭窄層との間でウエットエッチングを停止させるエッチング停止層を設け、これよりマージンをとることなくウエットエッチングの深さを制御することで、下側の層がエッチングされてメサポストとなることを防止し、活性層や下部DBRの劣化を抑制することに着想した。
【0016】
また、メサポストの形成に際し、ドライエッチングとウエットエッチングとの特徴の違いに着目し、先ず、加工精度に優れるドライエッチングを用いて、エッチング停止層の手前までをエッチングし、メサの形状に近い柱状体を高い精度で形成する。次いで、材料に対するエッチング選択性の高いウエットエッチングを用いて、エッチング停止層に至るまでエッチングし、エッチング停止層を底面とするメサポストを形成することに着想し、本発明を完成するに至った。
【0017】
即ち、上記目的を達成する本発明の面発光半導体レーザ素子は、半導体基板上に、上部及び下部多層膜反射鏡と、前記上部多層膜反射鏡と下部多層膜反射鏡との間に配設された活性層と、非酸化領域及び酸化領域を有し、前記上部多層膜反射鏡中に、又は、前記上部多層膜反射鏡と前記活性層との間に配設される電流狭窄層とを含む積層構造を備え、前記半導体基板に直交する方向にレーザ光を出射する面発光型半導体レーザ素子において、
前記活性層と前記電流狭窄層との間に配設されウエットエッチングを停止するエッチング停止層を備え、該エッチング停止層より上部の前記積層構造が前記エッチング停止層を底面とするメサ形状に形成されていることを特徴としている。
【0018】
活性層と電流狭窄層との間にエッチング停止層を備え、エッチング停止層より上部の積層構造がエッチング停止層を底面とするメサ形状に形成されることにより、エッチング停止層より下側に配設される活性層及び下部多層膜反射鏡は、メサポストの側壁から露出せず、製造工程中に空気等に晒されない。このため、活性層及び下部多層膜反射鏡の劣化を抑制し、高い信頼性を得ることができる。
【0019】
本発明の好適な実施態様では、前記半導体基板がn型基板である。この場合、p側に電流狭窄層を形成し、キャリア移動度が小さな正孔の経路を規定することで、電流経路を効果的に限定することができる。また、本発明の好適な実施態様では、前記エッチング停止層がInGaPから成る。InGaPは、硫酸水溶液や燐酸水溶液などのエッチング液に対してウエットエッチングされず、また、Alを含む半導体層などとの格子整合性も良好であるため、エッチング停止層として好適に用いることができる。
【0020】
本発明の好適な実施態様では、前記活性層が量子井戸活性層であり、障壁層がAlGaAs層である。この場合、低いしきい値等を有し、良好なレーザ特性を得ることができる。また、本発明の好適な実施態様では、前記下部多層膜反射鏡の低屈折率膜が、前記電流狭窄層の非酸化領域と同じ材料から形成される。この場合、上記材料に例えばAlAsなどの熱伝導率の高い材料を採用することにより、下部多層膜反射鏡の熱抵抗を低減させて、良好なレーザ特性を得ることができる。
【0021】
本発明に係るレーザアレイは、上述の面発光型半導体レーザ素子が、同一の半導体基板上に複数個集積されていることを特徴としている。面発光型半導体レーザ素子が、高密度に集積されたデバイスは、光通信分野で広範囲に用いられている。
【0022】
本発明に係る面発光型半導体レーザ素子の製造方法は、半導体基板上に、下部多層膜反射鏡、活性層、エッチング停止層、Alを含む半導体層、及び、上部多層膜反射鏡を順次に積層して積層構造を形成し、
前記積層構造をドライエッチングし、前記エッチング停止層よりも上部の積層構造からなる柱状体を形成し、
前記柱状体を含む積層構造を、前記エッチング停止層に至るまでウエットエッチングして、前記エッチング停止層を底面とするメサポストを形成し、
前記Alを含む半導体層を選択的に酸化して、非酸化領域及び酸化領域を含む電流狭窄層とすることを特徴としている。
【0023】
本発明方法では、先ず、加工精度に優れるドライエッチングにより、エッチング停止層より上側に柱状体を高い精度で形成し、次に、材料に対するエッチング選択性に優れるウエットエッチングにより、エッチング停止層に至るまでエッチングし、エッチング停止層を底面とするメサポストを形成する。この場合、エッチング停止層より上側に配設される積層構造は完全にエッチングされて、且つ寸法精度の高いメサポストに形成される。また、エッチング停止層より下側に配設される積層構造がエッチングされるのを防止することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に、添付図面を参照し、実施形態例を挙げて本発明の実施の形態を具体的且つ詳細に説明する。
実施形態例
図1は、本実施形態例に係る面発光型半導体レーザ素子の層構造を断面で示す斜視図である。面発光型半導体レーザ素子10は、発振波長が850nmに設定された酸化狭窄型の面発光型半導体レーザ素子であって、n−GaAs基板11上に、順次に形成された、下部DBR12、AlGaAs下部クラッド層13、量子井戸活性層14、AlGaAs上部クラッド層15、InGaP層16、上部DBR18、及びp−GaAsキャップ層19から成る積層構造を備えている。積層構造のうち、p−GaAsキャップ層19及び上部DBR18は、直径が40μmで高さが5μmの円柱状のメサポスト20として形成されている。
【0025】
量子井戸活性層14は、例えば3層の膜厚7nmのGaAs井戸層と、それぞれのGaAs井戸層の間に形成された膜厚10nmのAlGaAs障壁層とから構成されている。下部DBR12は、各層の膜厚がλ/4n(λ:レーザの発振波長、n:各層の屈折率)のn−Al0.2Ga0.8As膜とn−AlAs膜の35ペアが積層された多層膜によって構成されている。上部DBR18は、各層の膜厚がλ/4nのp−Al0.2Ga0.8As膜とp−Al0.9Ga0.1As膜の25ペアが積層された多層膜によって構成されている。
【0026】
上部DBR18を構成する多層膜のうち、量子井戸活性層14に最も近い層は、p−Al0.9Ga0.1As膜に代えて、p−AlAs層の一部領域を選択的に酸化した電流狭窄層17が形成されている。電流狭窄層17は、外側の環状のAl酸化領域17Bが電流狭窄領域を成し、内側の直径10μmの円形の非酸化領域17Aが電流注入領域を成す。下部DBR12及び上部DBR18は、上述した半導体多層膜に代えて、誘電体多層膜や金属薄膜からそれぞれの反射鏡を構成してもよい。
【0027】
p−GaAsキャップ層19を露出させる円形領域を除いて、全面にSiNx膜21が成膜されている。また、メサポスト20の外側には、SiNx膜21を介してポリイミド層22が形成され、これにより寄生容量を減少させることができる。更に、p−GaAsキャップ層19上には、レーザ出射口を成す円形の窓23を除いてAuZnから成るp側電極24が、n−GaAs基板11の裏側には、Ti/Pt/Auの多層膜から成るn側電極25が形成されている。
【0028】
本実施形態例の面発光型半導体レーザ素子10の製造方法は、先ず、図2(a)に示すように、有機金属気相成長法(MOCVD法:Metal Organic ChemicalVapor Deposition)により、n−GaAs基板11上に、下部DBR12、AlGaAs下部クラッド層13、量子井戸活性層14、AlGaAs上部クラッド層15、InGaP層16、上部DBR18、及びp−GaAsキャップ層19を成長させる。
【0029】
量子井戸活性層14の成長の際には、3層の膜厚7nmのGaAs井戸層と、それぞれのGaAs井戸層の間に形成された膜厚10nmのAlGaAs障壁層を成長させる。下部DBR12の成長の際には、各層の膜厚がλ/4nのn−Al0.2Ga0.8As膜とn−AlAs膜の35ペアからなる多層膜を成長させる。上部DBR18の成長の際には、各層の厚さがλ/4nのp−Al0.2Ga0.8As膜とp−Al0.9Ga0.1As膜の25ペアからなる多層膜を成長させる。また、上部DBR18のうち量子井戸活性層14に最も近い層は、p−Al0.9Ga0.1As膜に代えて、p−AlAs層17aを成長させる。
【0030】
次に、p−GaAsキャップ層19上にプラズマCVD法によりSiNx膜(図示せず)を成膜し、更にその上にフォトレジスト膜(図示せず)を成膜する。続いて、直径約40μmの円形パターンをフォトリソグラフィ技術でフォトレジスト膜に転写し、円形レジスト・エッチングマスク(図示せず)を形成する。続いて、円形レジスト・エッチングマスクを用い、CF4ガスをエッチングガスとする反応性イオンエッチング(RIE)法によりSiNx膜をエッチングし、SiNxマスク26を形成する。
【0031】
次いで、図2(b)に示すように、SiNxマスク26をエッチングマスクとして、反応性イオンビームエッチング(RIBE)法によるドライエッチングを行い、メサの形状に近い円柱形状27を形成する。この際に、InGaP層16の近傍までエッチングされ、且つInGaP層16がエッチングされないようにエッチング深さを設定する。即ち、p−GaAsキャップ層19の上面からInGaP層16の上面までの深さは5μmであるため、例えば、p−GaAsキャップ層19の上面から4μmの位置にエッチング深さを設定すればよい。この場合、実際にエッチングされる深さは最大でも4.5μm程度であり、InGaP層16がエッチングされることは無い。
【0032】
次いで、図3に示すように、硫酸水溶液又は燐酸水溶液をエッチング液として、上述の円柱形状27を含む積層構造を更にウエットエッチングしてInGaP層16を露出させ、円柱状のメサポスト20を形成する。この際、InGaPはこれらのエッチング液に対してウエットエッチングされないため、InGaP層16がエッチング停止層として機能し、エッチング深さを厳密に制御しなくても、エッチングはInGaP層16の上面で自動的に停止する。
【0033】
これにより、InGaP層16より下側に配設されているAlGaAs上部クラッド層15、量子井戸活性層14、AlGaAs下部クラッド層13、及び下部DBR12がエッチングされるのを防止することができる。エッチング停止層は、隣接する半導体層との格子不整合率が0.5%以下で、所定のエッチング液に対してウエットエッチングされない材料であれば、InGaP層16に限定されない。またメサポスト20は、円柱状に限定されず、四角柱状及びその他の多角柱状に形成してもよい。
【0034】
次いで、図1に示すように、400℃の水蒸気雰囲気中で約25分間の酸化処理を行い、メサポスト20の一部として形成されたp−AlAs膜17aをメサポスト20の側壁から中心に向かって選択的に酸化する。この酸化処理により、メサポスト20の側壁に沿って環状のAl酸化領域17Bを生成すると共に、中央近傍の直径10μmの円形の領域を元のp−AlAsのままに残して、非酸化領域17Aとして形成する。p−AlAs膜17aに代えて、p−AlxGa1-xAs(0.95≦x<1)膜を用いることもできる。
【0035】
次いで、図3に示したSiNxマスク26をRIE法により完全に除去した後に、改めて、プラズマCVD法でSiNx膜21を全面に成膜することにより、レーザ素子のパッシベーション処理を行う。続いて、メサポスト20の外側に、SiNx膜21を介してポリイミド層22を形成する。
【0036】
次いで、p−GaAsキャップ層19上のSiNx膜21の中心部を円形に除去し、p−GaAsキャップ層19上に、レーザ出射口を成す円形の窓23を除いてAuZnから成るp側電極24を蒸着する。また、n−GaAs基板11の裏面を研磨して基板厚さを100μm程度に調整した後、裏面にTi/Pt/Auの多層膜から成るn側電極24を蒸着する。最後に、窒素雰囲気中でのアニール処理等の工程を経ることにより面発光型半導体レーザ素子10を完成することができる。
【0037】
本実施形態例の面発光型半導体レーザ素子10は、AlGaAs上部クラッド層15と電流狭窄層17との間にエッチング停止層としてInGaP層16を備え、InGaP層16より上部の積層構造がメサポスト20として形成されている。このため、InGaP層16より下側に配設される、AlGaAs上部クラッド層15、量子井戸活性層14、AlGaAs下部クラッド層13、及び下部DBR12は、メサポスト20の側面から露出せず、製造工程中に空気等に晒されない。このため、これらの各層の劣化を抑制し、高い信頼性を得ることができる。また、下部DBR12が製造工程中に露出しないため、非常に酸化され易いn−AlAs膜を下部DBR12を構成する低反射率層として採用し、熱抵抗の低減により良好なレーザ特性を得ることができる。
【0038】
本実施形態例の面発光型半導体レーザ素子10の製造方法では、先ず、加工精度に優れるドライエッチングにより、InGaP層16より上側にメサの形状に近い円柱形状27を高い精度で形成する。次に、材料に対するエッチング選択性の高いウエットエッチングにより、InGaP層16に至るまでエッチングして、InGaP層16を底面とするメサポスト20を形成する。この場合、InGaP層16より上側に配設される積層構造は完全にエッチングされて、且つ寸法精度の高いメサポスト20に形成される。また、InGaP層16より下側に配設される積層構造がエッチングされるのを防止することができる。
【0039】
以上、本発明をその好適な実施形態例に基づいて説明したが、本発明の面発光型半導体レーザ素子は、上記実施形態例の構成にのみ限定されるものではなく、上記実施形態例の構成から種々の修正及び変更を施した面発光型半導体レーザ素子も、本発明の範囲に含まれる。
【0040】
【発明の効果】
本発明に係る面発光半導体レーザ素子は、活性層と電流狭窄層との間にエッチング停止層を備え、エッチング停止層より上部の積層構造がエッチング停止層を底面とするメサ形状に形成されることにより、エッチング停止層より下側に配設される活性層及び下部多層膜反射鏡は、メサポストの側面から露出せず、製造工程中に空気等に晒されない。このため、活性層及び下部多層膜反射鏡の劣化を抑制し、高い信頼性を得ることができる。また、活性層及び下部多層膜反射鏡が製造工程中に露出しないため、これらの層に空気等に晒されると劣化し易い材料を用いることができ、適当な材料の採用により良好なレーザ特性を得ることができる。
【0041】
また、本発明に係る面発光型半導体レーザ素子の製造方法では、先ず、加工精度に優れるドライエッチングにより、エッチング停止層より上側にメサの形状に近い柱状体を高い精度で形成し、次に、材料に対するエッチング選択性に優れるウエットエッチングにより、エッチング停止層に至るまでエッチングし、エッチング停止層を底面とするメサポストを形成する。これによって、上記本発明の面発光型半導体レーザ素子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例の面発光型半導体レーザ素子の層構造を、その一部を断面で示す斜視図である。
【図2】(a)及び(b)はそれぞれ実施形態例の面発光型半導体レーザ素子の製造方法に係る一製造工程段階を示す斜視断面図である。
【図3】実施形態例の面発光型半導体レーザ素子の製造方法に係る一製造工程段階を示す斜視断面図である。
【図4】従来の面発光型半導体レーザ素子の層構造を、その一部を断面で示す斜視図である。
【符号の説明】
10 実施形態例の面発光型半導体レーザ素子
11 n−GaAs基板
12 下部半導体多層膜反射鏡(下部DBR)
13 AlGaAs下部クラッド層
14 量子井戸活性層
15 AlGaAs上部クラッド層
16 InGaP層
17 電流狭窄層
17A 非酸化領域
17B Al酸化領域
17a p−AlAs膜
18 上部半導体多層膜反射鏡(上部DBR)
19 p−GaAs層キャップ層
20 メサポスト
21 SiNx膜
22 ポリイミド層
23 (レーザ出射口を成す)窓
24 p側電極
25 n側電極
26 SiNxマスク
27 メサの形状に近い円柱形状
30 従来の面発光型半導体レーザ素子
31 n−GaAs基板
32 下部半導体多層膜反射鏡(下部DBR)
33 AlGaAs下部クラッド層
34 量子井戸活性層
35 AlGaAs上部クラッド層
36 電流狭窄層
37 上部半導体多層膜反射鏡(上部DBR)
38 p−GaAs層キャップ層
39 メサポスト
40 SiNx膜
41 ポリイミド層
42 (レーザ出射口を成す)窓
43 p側電極
44 n側電極
【発明の属する技術分野】
本発明は、面発光型半導体レーザ素子及びその製造方法に関し、特に、活性層及び下部DBRの劣化が抑制され、高い信頼性と良好なレーザ特性を有する、酸化狭窄型の面発光型半導体レーザ素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
基板と垂直な方向にレーザ光を出射する面発光型半導体レーザ素子は、出射ビームの形状が円形であり、光ファイバとの接続が容易である。また、活性層に流れる電流を狭い領域に制限する構成を備えるため、低いしきい値電流を有し、近年、光データ通信分野での光源として注目されている。
【0003】
活性層に流れる電流を制限するには、予めレーザ素子を構成する積層構造中に酸化されやすい物質からなる半導体層を形成しておき、この半導体層を部分的に酸化させて絶縁領域を形成する方法が知られている。このような方法を採用した素子を、酸化狭窄型の面発光半導体レーザ素子と呼んでいる。
【0004】
図4は、従来の酸化狭窄型の面発光型半導体レーザ素子の層構造を、その一部を断面で示す斜視図である。面発光型半導体レーザ素子30は、n−GaAs基板31上に順次に形成された、下部半導体多層膜反射鏡(下部DBR)32、AlGaAs下部クラッド層33、量子井戸活性層34、AlGaAs上部クラッド層35、上部半導体多層膜反射鏡(上部DBR)37、及びp−GaAsキャップ層38から成る積層構造を備えている。積層構造のうち、p−GaAsキャップ層38、上部DBR37、AlGaAs上部クラッド層35、量子井戸活性層34、AlGaAs下部クラッド層33、及び下部DBR32の上層部分は、メサポスト39として形成されている。
【0005】
下部DBR32は、各層の膜厚がλ/4n(λ:レーザの発振波長、n:各層の屈折率)のn−Al0.2Ga0.8As膜とn−Al0.9Ga0.1As膜の35ペアが積層された多層膜によって構成されている。上部DBR37は、各層の膜厚がλ/4nのp−Al0.2Ga0.8As膜とp−Al0.9Ga0.1As膜の25ペアが積層された多層膜によって構成されている。
【0006】
上部DBR37を構成する多層膜のうち、量子井戸活性層34に近い1層は、p−Al0.9Ga0.1As膜に代えて、p−AlAs層の一部領域を選択的に酸化した電流狭窄層36が形成されている。電流狭窄層36は、外側の環状のAl酸化領域36Bが電流狭窄領域を成し、内側の円形の非酸化領域36Aが電流注入領域を成す。
【0007】
電流狭窄層36は、キャリアの移動度の観点から、p側に形成するのが電流経路を限定するには効果的である。また、量子井戸活性層34の電流経路を効果的に限定するには、量子井戸活性層34に近づけて配置する。このため、n型基板を用いたレーザ素子では、電流狭窄層36は、一般的に、量子井戸活性層34より上側で、且つ量子井戸活性層34の近くに形成される。
【0008】
p−GaAsキャップ層38を露出させる円形領域を除いて、全面にSiNx膜40が成膜されている。また、メサポスト39の外側には、SiNx膜40を介してポリイミド層41が形成されている。更に、p−GaAsキャップ層38上には、レーザ出射口を成す円形の窓42を除いてp側電極43が、n−GaAs基板31の裏側には、n側電極44が形成されている。
【0009】
従来の面発光型半導体レーザ素子30の製造方法では、先ず、n−GaAs基板31上にp−GaAsキャップ層38までの積層構造を形成する。この際、電流狭窄層36の位置にはp−AlAs層を形成する。次いで、この積層構造にエッチングを行い、メサポスト39を形成する。続いて、メサポスト39の一部として形成されたp−AlAs層を、メサポスト39の側壁から部分的に酸化させ、電流狭窄層36に転化させるなどの工程を経る。
【0010】
メサポスト39を形成するエッチングには、一般的にドライエッチングを用いる。この際、ドライエッチングの不安定性により、エッチング深さには、設定値に対して±10%程度のばらつきが生じる。また、エッチングに用いるマスクは、その側面形状を上面に対して完全な垂直にすることができないため、マスク近傍のエッチングは不完全になり勝ちである。
【0011】
ここで、電流狭窄層36を形成するためのp−AlAs層の酸化には、p−AlAs層の側面がメサポスト39の側壁から完全に露出することが必要である。従ってメサポスト39の形成にあたっては、エッチング深さに一定のマージンをとり、下部DBR32の上層部分までエッチングしてp−AlAs層を露出させることが電流狭窄層36の形成に不可欠となる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
面発光型半導体レーザ素子で活性層が露出し空気等に晒されると、表面に酸化膜が形成され、劣化の原因になることが知られている。面発光型半導体レーザ素子では、製品となった後はメサポストは埋込み層で埋め込まれているので、活性層及び下部DBRが空気中に晒されることはないが、製造工程中のメサポストのエッチング後に活性層及び下部DBRが一旦空気中に晒され、これによって劣化が生じていることが判明した。例えば、AlGaAsのようなAlを含む半導体層は、量子井戸活性層に用いられると低いしきい値等の良好なレーザ特性をもたらすが、酸化がされ易く劣化が顕著である。
【0013】
また、エッチング後に下部DBRの上層部分が露出するため、下部DBRの上層部分には空気に晒されると劣化し易い材料から成る層を用いることができない。例えば、AlAsは熱伝導率が大きく、これを下部DBRを構成する多層膜の低反射率膜として用いると熱抵抗の低減をもたらす。しかし、非常に酸化され易いため、少なくともメサポストとして露出する下部DBRの上層部分に用いることはできない。
【0014】
そこで、本発明の目的は、活性層及び下部DBRの劣化が抑制され、高い信頼性と良好なレーザ特性を有する面発光型半導体レーザ素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上述の問題を解決するために、活性層と電流狭窄層との間でウエットエッチングを停止させるエッチング停止層を設け、これよりマージンをとることなくウエットエッチングの深さを制御することで、下側の層がエッチングされてメサポストとなることを防止し、活性層や下部DBRの劣化を抑制することに着想した。
【0016】
また、メサポストの形成に際し、ドライエッチングとウエットエッチングとの特徴の違いに着目し、先ず、加工精度に優れるドライエッチングを用いて、エッチング停止層の手前までをエッチングし、メサの形状に近い柱状体を高い精度で形成する。次いで、材料に対するエッチング選択性の高いウエットエッチングを用いて、エッチング停止層に至るまでエッチングし、エッチング停止層を底面とするメサポストを形成することに着想し、本発明を完成するに至った。
【0017】
即ち、上記目的を達成する本発明の面発光半導体レーザ素子は、半導体基板上に、上部及び下部多層膜反射鏡と、前記上部多層膜反射鏡と下部多層膜反射鏡との間に配設された活性層と、非酸化領域及び酸化領域を有し、前記上部多層膜反射鏡中に、又は、前記上部多層膜反射鏡と前記活性層との間に配設される電流狭窄層とを含む積層構造を備え、前記半導体基板に直交する方向にレーザ光を出射する面発光型半導体レーザ素子において、
前記活性層と前記電流狭窄層との間に配設されウエットエッチングを停止するエッチング停止層を備え、該エッチング停止層より上部の前記積層構造が前記エッチング停止層を底面とするメサ形状に形成されていることを特徴としている。
【0018】
活性層と電流狭窄層との間にエッチング停止層を備え、エッチング停止層より上部の積層構造がエッチング停止層を底面とするメサ形状に形成されることにより、エッチング停止層より下側に配設される活性層及び下部多層膜反射鏡は、メサポストの側壁から露出せず、製造工程中に空気等に晒されない。このため、活性層及び下部多層膜反射鏡の劣化を抑制し、高い信頼性を得ることができる。
【0019】
本発明の好適な実施態様では、前記半導体基板がn型基板である。この場合、p側に電流狭窄層を形成し、キャリア移動度が小さな正孔の経路を規定することで、電流経路を効果的に限定することができる。また、本発明の好適な実施態様では、前記エッチング停止層がInGaPから成る。InGaPは、硫酸水溶液や燐酸水溶液などのエッチング液に対してウエットエッチングされず、また、Alを含む半導体層などとの格子整合性も良好であるため、エッチング停止層として好適に用いることができる。
【0020】
本発明の好適な実施態様では、前記活性層が量子井戸活性層であり、障壁層がAlGaAs層である。この場合、低いしきい値等を有し、良好なレーザ特性を得ることができる。また、本発明の好適な実施態様では、前記下部多層膜反射鏡の低屈折率膜が、前記電流狭窄層の非酸化領域と同じ材料から形成される。この場合、上記材料に例えばAlAsなどの熱伝導率の高い材料を採用することにより、下部多層膜反射鏡の熱抵抗を低減させて、良好なレーザ特性を得ることができる。
【0021】
本発明に係るレーザアレイは、上述の面発光型半導体レーザ素子が、同一の半導体基板上に複数個集積されていることを特徴としている。面発光型半導体レーザ素子が、高密度に集積されたデバイスは、光通信分野で広範囲に用いられている。
【0022】
本発明に係る面発光型半導体レーザ素子の製造方法は、半導体基板上に、下部多層膜反射鏡、活性層、エッチング停止層、Alを含む半導体層、及び、上部多層膜反射鏡を順次に積層して積層構造を形成し、
前記積層構造をドライエッチングし、前記エッチング停止層よりも上部の積層構造からなる柱状体を形成し、
前記柱状体を含む積層構造を、前記エッチング停止層に至るまでウエットエッチングして、前記エッチング停止層を底面とするメサポストを形成し、
前記Alを含む半導体層を選択的に酸化して、非酸化領域及び酸化領域を含む電流狭窄層とすることを特徴としている。
【0023】
本発明方法では、先ず、加工精度に優れるドライエッチングにより、エッチング停止層より上側に柱状体を高い精度で形成し、次に、材料に対するエッチング選択性に優れるウエットエッチングにより、エッチング停止層に至るまでエッチングし、エッチング停止層を底面とするメサポストを形成する。この場合、エッチング停止層より上側に配設される積層構造は完全にエッチングされて、且つ寸法精度の高いメサポストに形成される。また、エッチング停止層より下側に配設される積層構造がエッチングされるのを防止することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に、添付図面を参照し、実施形態例を挙げて本発明の実施の形態を具体的且つ詳細に説明する。
実施形態例
図1は、本実施形態例に係る面発光型半導体レーザ素子の層構造を断面で示す斜視図である。面発光型半導体レーザ素子10は、発振波長が850nmに設定された酸化狭窄型の面発光型半導体レーザ素子であって、n−GaAs基板11上に、順次に形成された、下部DBR12、AlGaAs下部クラッド層13、量子井戸活性層14、AlGaAs上部クラッド層15、InGaP層16、上部DBR18、及びp−GaAsキャップ層19から成る積層構造を備えている。積層構造のうち、p−GaAsキャップ層19及び上部DBR18は、直径が40μmで高さが5μmの円柱状のメサポスト20として形成されている。
【0025】
量子井戸活性層14は、例えば3層の膜厚7nmのGaAs井戸層と、それぞれのGaAs井戸層の間に形成された膜厚10nmのAlGaAs障壁層とから構成されている。下部DBR12は、各層の膜厚がλ/4n(λ:レーザの発振波長、n:各層の屈折率)のn−Al0.2Ga0.8As膜とn−AlAs膜の35ペアが積層された多層膜によって構成されている。上部DBR18は、各層の膜厚がλ/4nのp−Al0.2Ga0.8As膜とp−Al0.9Ga0.1As膜の25ペアが積層された多層膜によって構成されている。
【0026】
上部DBR18を構成する多層膜のうち、量子井戸活性層14に最も近い層は、p−Al0.9Ga0.1As膜に代えて、p−AlAs層の一部領域を選択的に酸化した電流狭窄層17が形成されている。電流狭窄層17は、外側の環状のAl酸化領域17Bが電流狭窄領域を成し、内側の直径10μmの円形の非酸化領域17Aが電流注入領域を成す。下部DBR12及び上部DBR18は、上述した半導体多層膜に代えて、誘電体多層膜や金属薄膜からそれぞれの反射鏡を構成してもよい。
【0027】
p−GaAsキャップ層19を露出させる円形領域を除いて、全面にSiNx膜21が成膜されている。また、メサポスト20の外側には、SiNx膜21を介してポリイミド層22が形成され、これにより寄生容量を減少させることができる。更に、p−GaAsキャップ層19上には、レーザ出射口を成す円形の窓23を除いてAuZnから成るp側電極24が、n−GaAs基板11の裏側には、Ti/Pt/Auの多層膜から成るn側電極25が形成されている。
【0028】
本実施形態例の面発光型半導体レーザ素子10の製造方法は、先ず、図2(a)に示すように、有機金属気相成長法(MOCVD法:Metal Organic ChemicalVapor Deposition)により、n−GaAs基板11上に、下部DBR12、AlGaAs下部クラッド層13、量子井戸活性層14、AlGaAs上部クラッド層15、InGaP層16、上部DBR18、及びp−GaAsキャップ層19を成長させる。
【0029】
量子井戸活性層14の成長の際には、3層の膜厚7nmのGaAs井戸層と、それぞれのGaAs井戸層の間に形成された膜厚10nmのAlGaAs障壁層を成長させる。下部DBR12の成長の際には、各層の膜厚がλ/4nのn−Al0.2Ga0.8As膜とn−AlAs膜の35ペアからなる多層膜を成長させる。上部DBR18の成長の際には、各層の厚さがλ/4nのp−Al0.2Ga0.8As膜とp−Al0.9Ga0.1As膜の25ペアからなる多層膜を成長させる。また、上部DBR18のうち量子井戸活性層14に最も近い層は、p−Al0.9Ga0.1As膜に代えて、p−AlAs層17aを成長させる。
【0030】
次に、p−GaAsキャップ層19上にプラズマCVD法によりSiNx膜(図示せず)を成膜し、更にその上にフォトレジスト膜(図示せず)を成膜する。続いて、直径約40μmの円形パターンをフォトリソグラフィ技術でフォトレジスト膜に転写し、円形レジスト・エッチングマスク(図示せず)を形成する。続いて、円形レジスト・エッチングマスクを用い、CF4ガスをエッチングガスとする反応性イオンエッチング(RIE)法によりSiNx膜をエッチングし、SiNxマスク26を形成する。
【0031】
次いで、図2(b)に示すように、SiNxマスク26をエッチングマスクとして、反応性イオンビームエッチング(RIBE)法によるドライエッチングを行い、メサの形状に近い円柱形状27を形成する。この際に、InGaP層16の近傍までエッチングされ、且つInGaP層16がエッチングされないようにエッチング深さを設定する。即ち、p−GaAsキャップ層19の上面からInGaP層16の上面までの深さは5μmであるため、例えば、p−GaAsキャップ層19の上面から4μmの位置にエッチング深さを設定すればよい。この場合、実際にエッチングされる深さは最大でも4.5μm程度であり、InGaP層16がエッチングされることは無い。
【0032】
次いで、図3に示すように、硫酸水溶液又は燐酸水溶液をエッチング液として、上述の円柱形状27を含む積層構造を更にウエットエッチングしてInGaP層16を露出させ、円柱状のメサポスト20を形成する。この際、InGaPはこれらのエッチング液に対してウエットエッチングされないため、InGaP層16がエッチング停止層として機能し、エッチング深さを厳密に制御しなくても、エッチングはInGaP層16の上面で自動的に停止する。
【0033】
これにより、InGaP層16より下側に配設されているAlGaAs上部クラッド層15、量子井戸活性層14、AlGaAs下部クラッド層13、及び下部DBR12がエッチングされるのを防止することができる。エッチング停止層は、隣接する半導体層との格子不整合率が0.5%以下で、所定のエッチング液に対してウエットエッチングされない材料であれば、InGaP層16に限定されない。またメサポスト20は、円柱状に限定されず、四角柱状及びその他の多角柱状に形成してもよい。
【0034】
次いで、図1に示すように、400℃の水蒸気雰囲気中で約25分間の酸化処理を行い、メサポスト20の一部として形成されたp−AlAs膜17aをメサポスト20の側壁から中心に向かって選択的に酸化する。この酸化処理により、メサポスト20の側壁に沿って環状のAl酸化領域17Bを生成すると共に、中央近傍の直径10μmの円形の領域を元のp−AlAsのままに残して、非酸化領域17Aとして形成する。p−AlAs膜17aに代えて、p−AlxGa1-xAs(0.95≦x<1)膜を用いることもできる。
【0035】
次いで、図3に示したSiNxマスク26をRIE法により完全に除去した後に、改めて、プラズマCVD法でSiNx膜21を全面に成膜することにより、レーザ素子のパッシベーション処理を行う。続いて、メサポスト20の外側に、SiNx膜21を介してポリイミド層22を形成する。
【0036】
次いで、p−GaAsキャップ層19上のSiNx膜21の中心部を円形に除去し、p−GaAsキャップ層19上に、レーザ出射口を成す円形の窓23を除いてAuZnから成るp側電極24を蒸着する。また、n−GaAs基板11の裏面を研磨して基板厚さを100μm程度に調整した後、裏面にTi/Pt/Auの多層膜から成るn側電極24を蒸着する。最後に、窒素雰囲気中でのアニール処理等の工程を経ることにより面発光型半導体レーザ素子10を完成することができる。
【0037】
本実施形態例の面発光型半導体レーザ素子10は、AlGaAs上部クラッド層15と電流狭窄層17との間にエッチング停止層としてInGaP層16を備え、InGaP層16より上部の積層構造がメサポスト20として形成されている。このため、InGaP層16より下側に配設される、AlGaAs上部クラッド層15、量子井戸活性層14、AlGaAs下部クラッド層13、及び下部DBR12は、メサポスト20の側面から露出せず、製造工程中に空気等に晒されない。このため、これらの各層の劣化を抑制し、高い信頼性を得ることができる。また、下部DBR12が製造工程中に露出しないため、非常に酸化され易いn−AlAs膜を下部DBR12を構成する低反射率層として採用し、熱抵抗の低減により良好なレーザ特性を得ることができる。
【0038】
本実施形態例の面発光型半導体レーザ素子10の製造方法では、先ず、加工精度に優れるドライエッチングにより、InGaP層16より上側にメサの形状に近い円柱形状27を高い精度で形成する。次に、材料に対するエッチング選択性の高いウエットエッチングにより、InGaP層16に至るまでエッチングして、InGaP層16を底面とするメサポスト20を形成する。この場合、InGaP層16より上側に配設される積層構造は完全にエッチングされて、且つ寸法精度の高いメサポスト20に形成される。また、InGaP層16より下側に配設される積層構造がエッチングされるのを防止することができる。
【0039】
以上、本発明をその好適な実施形態例に基づいて説明したが、本発明の面発光型半導体レーザ素子は、上記実施形態例の構成にのみ限定されるものではなく、上記実施形態例の構成から種々の修正及び変更を施した面発光型半導体レーザ素子も、本発明の範囲に含まれる。
【0040】
【発明の効果】
本発明に係る面発光半導体レーザ素子は、活性層と電流狭窄層との間にエッチング停止層を備え、エッチング停止層より上部の積層構造がエッチング停止層を底面とするメサ形状に形成されることにより、エッチング停止層より下側に配設される活性層及び下部多層膜反射鏡は、メサポストの側面から露出せず、製造工程中に空気等に晒されない。このため、活性層及び下部多層膜反射鏡の劣化を抑制し、高い信頼性を得ることができる。また、活性層及び下部多層膜反射鏡が製造工程中に露出しないため、これらの層に空気等に晒されると劣化し易い材料を用いることができ、適当な材料の採用により良好なレーザ特性を得ることができる。
【0041】
また、本発明に係る面発光型半導体レーザ素子の製造方法では、先ず、加工精度に優れるドライエッチングにより、エッチング停止層より上側にメサの形状に近い柱状体を高い精度で形成し、次に、材料に対するエッチング選択性に優れるウエットエッチングにより、エッチング停止層に至るまでエッチングし、エッチング停止層を底面とするメサポストを形成する。これによって、上記本発明の面発光型半導体レーザ素子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例の面発光型半導体レーザ素子の層構造を、その一部を断面で示す斜視図である。
【図2】(a)及び(b)はそれぞれ実施形態例の面発光型半導体レーザ素子の製造方法に係る一製造工程段階を示す斜視断面図である。
【図3】実施形態例の面発光型半導体レーザ素子の製造方法に係る一製造工程段階を示す斜視断面図である。
【図4】従来の面発光型半導体レーザ素子の層構造を、その一部を断面で示す斜視図である。
【符号の説明】
10 実施形態例の面発光型半導体レーザ素子
11 n−GaAs基板
12 下部半導体多層膜反射鏡(下部DBR)
13 AlGaAs下部クラッド層
14 量子井戸活性層
15 AlGaAs上部クラッド層
16 InGaP層
17 電流狭窄層
17A 非酸化領域
17B Al酸化領域
17a p−AlAs膜
18 上部半導体多層膜反射鏡(上部DBR)
19 p−GaAs層キャップ層
20 メサポスト
21 SiNx膜
22 ポリイミド層
23 (レーザ出射口を成す)窓
24 p側電極
25 n側電極
26 SiNxマスク
27 メサの形状に近い円柱形状
30 従来の面発光型半導体レーザ素子
31 n−GaAs基板
32 下部半導体多層膜反射鏡(下部DBR)
33 AlGaAs下部クラッド層
34 量子井戸活性層
35 AlGaAs上部クラッド層
36 電流狭窄層
37 上部半導体多層膜反射鏡(上部DBR)
38 p−GaAs層キャップ層
39 メサポスト
40 SiNx膜
41 ポリイミド層
42 (レーザ出射口を成す)窓
43 p側電極
44 n側電極
Claims (8)
- 半導体基板上に、上部及び下部多層膜反射鏡と、前記上部多層膜反射鏡と下部多層膜反射鏡との間に配設された活性層と、非酸化領域及び酸化領域を有し、前記上部多層膜反射鏡中に、又は、前記上部多層膜反射鏡と前記活性層との間に配設される電流狭窄層とを含む積層構造を備え、前記半導体基板に直交する方向にレーザ光を出射する面発光型半導体レーザ素子において、
前記活性層と前記電流狭窄層との間に配設されウエットエッチングを停止するエッチング停止層を備え、該エッチング停止層より上部の前記積層構造が前記エッチング停止層を底面とするメサ形状に形成されていることを特徴とする面発光型半導体レーザ素子。 - 前記半導体基板がn型基板である、請求項1に記載の面発光型半導体レーザ素子。
- 前記エッチング停止層がInGaPから成る、請求項1又は2に記載の面発光型半導体レーザ素子。
- 前記活性層が量子井戸活性層であり、障壁層がAlGaAs層である、請求項1〜3の何れかに記載の面発光型半導体レーザ素子。
- 前記下部多層膜反射鏡の低屈折率膜が、前記電流狭窄層の非酸化領域と同じ材料から形成される、請求項1〜4の何れかに記載の面発光型半導体レーザ素子。
- 請求項1〜5の何れかに記載の面発光型半導体レーザ素子が、同一の半導体基板上に複数個集積されていることを特徴とするレーザアレイ。
- 半導体基板上に、下部多層膜反射鏡、活性層、エッチング停止層、Alを含む半導体層、及び、上部多層膜反射鏡を順次に積層して積層構造を形成し、
前記積層構造をドライエッチングし、前記エッチング停止層よりも上部の積層構造からなる柱状体を形成し、
前記柱状体を含む積層構造を、前記エッチング停止層に至るまでウエットエッチングして、前記エッチング停止層を底面とするメサポストを形成し、
前記Alを含む半導体層を選択的に酸化して、非酸化領域及び酸化領域を含む電流狭窄層とすることを特徴とする面発光型半導体レーザ素子の製造方法。 - 前記半導体基板がn型基板である、請求項7に記載の面発光型半導体レーザ素子の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002376518A JP2004207586A (ja) | 2002-12-26 | 2002-12-26 | 面発光型半導体レーザ素子及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002376518A JP2004207586A (ja) | 2002-12-26 | 2002-12-26 | 面発光型半導体レーザ素子及びその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004207586A true JP2004207586A (ja) | 2004-07-22 |
Family
ID=32813969
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002376518A Pending JP2004207586A (ja) | 2002-12-26 | 2002-12-26 | 面発光型半導体レーザ素子及びその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004207586A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007103613A (ja) * | 2005-10-03 | 2007-04-19 | Dowa Holdings Co Ltd | 垂直共振器型発光ダイオード及びその製造方法 |
JP2016127236A (ja) * | 2015-01-08 | 2016-07-11 | 株式会社リコー | 面発光レーザ素子、面発光レーザアレイ、光走査装置、画像形成装置 |
-
2002
- 2002-12-26 JP JP2002376518A patent/JP2004207586A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007103613A (ja) * | 2005-10-03 | 2007-04-19 | Dowa Holdings Co Ltd | 垂直共振器型発光ダイオード及びその製造方法 |
JP2016127236A (ja) * | 2015-01-08 | 2016-07-11 | 株式会社リコー | 面発光レーザ素子、面発光レーザアレイ、光走査装置、画像形成装置 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5038371B2 (ja) | 面発光レーザの製造方法 | |
JP4062983B2 (ja) | 表面発光型半導体レーザおよびその製造方法 | |
JP3748807B2 (ja) | 電気光学的特性が改善された半導体光放出装置及びその製造方法 | |
JP3783411B2 (ja) | 表面発光型半導体レーザ | |
JP2002164621A (ja) | 面発光半導体レーザ素子 | |
JP3799667B2 (ja) | 面発光型半導体レーザ装置およびその製造方法 | |
JP2008028120A (ja) | 面発光型半導体素子 | |
JP2001085788A (ja) | 面発光型半導体レーザ素子及び面発光型半導体レーザアレイ | |
JP4087152B2 (ja) | 面発光半導体レーザ素子及びレーザアレイ | |
JP5006242B2 (ja) | 面発光半導体レーザ素子 | |
JP2009170508A (ja) | 面発光半導体レーザ及びその製造方法 | |
JP4224981B2 (ja) | 面発光半導体レーザ素子およびその製造方法 | |
WO2002050968A1 (fr) | Laser a emission par la surface, procede de fabrication de ce laser, et reseau de lasers a emission par la surface | |
JP2004031863A (ja) | 面発光型半導体レーザ素子 | |
JP3876886B2 (ja) | 面発光型半導体レーザ装置の製造方法 | |
JP2009246252A (ja) | 面発光レーザ素子及び面発光レーザアレイ | |
JP2004297064A (ja) | 垂直共振器面発光レーザ | |
JP2004207586A (ja) | 面発光型半導体レーザ素子及びその製造方法 | |
WO2021142962A1 (zh) | 高对比度光栅垂直腔面发射激光器及制造方法 | |
JP2000012962A (ja) | 面発光型半導体レーザ及びその作製方法 | |
JP5322800B2 (ja) | 垂直共振器型面発光レーザ | |
JP2006190752A (ja) | 面発光レーザー素子及びその製造方法 | |
JP5261201B2 (ja) | 面発光レーザ、面発光レーザアレイ及びその製造方法 | |
JP2005277309A (ja) | 面発光型半導体レーザおよびその製造方法 | |
JP2008210991A (ja) | 面発光レーザ素子の製造方法および面発光レーザ素子 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Effective date: 20051201 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Effective date: 20081125 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20090323 |