JP2004207417A - InPウエハの研磨液とInPウエハの研磨方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】臭素を用いることなく表面にスクラッチが入らず、しかも研磨速度が速いInPウエハ一次研磨用の研磨液を提供すること。
【解決手段】粒径Dは10nm〜300nmであって表面突起の高さの最大値が5nm以上であるコロイダルシリカと、塩素化イソシアヌール酸だけを含み、硫酸ナトリウムや塩化カリウムを含まない研磨液。純水に対する割合は、コロイダルシリカ液が5%〜20%であり、コロイダルシリカ重量を1として、塩素化イソシアヌール酸の重量比は0.5〜1.5である。コロイダルシリカのpHは7〜14であり特に8〜11が望ましい。
【選択図】 図5
【解決手段】粒径Dは10nm〜300nmであって表面突起の高さの最大値が5nm以上であるコロイダルシリカと、塩素化イソシアヌール酸だけを含み、硫酸ナトリウムや塩化カリウムを含まない研磨液。純水に対する割合は、コロイダルシリカ液が5%〜20%であり、コロイダルシリカ重量を1として、塩素化イソシアヌール酸の重量比は0.5〜1.5である。コロイダルシリカのpHは7〜14であり特に8〜11が望ましい。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、InPウエハの一次研磨の研磨液に関する。InPは圧力を掛けて加熱し融液にすることができるのでチョクラルスキー法やブリッジマン法によって原料融液から結晶成長することができる。但し融点でのPの解離圧が高いのでPの解離を防ぐようにPの蒸気圧を制御しながら結晶成長しなければならない。ブリッジマン法は横型(HB)と縦型(VB)があり、どちらもInP成長に適用することができる。
【0002】
融液を石英容器に閉じ込めて成長させるブリッジマン法では、Pの固体を石英容器の一部に置いてPを加熱して融液のPの蒸気圧とバランスさせるようになっている。チョクラルスキー法の場合は、るつぼにInP融液を入れて液体カプセル(B2O3)で覆い、種結晶を漬け種結晶を廻しながら引き上げることによってInP円柱結晶を成長させる。液体カプセル法(Liquid encapsulated Czochralski)と呼ぶ。これらの方法によって2インチ径とか3インチ径のInP単結晶インゴットを得ることができる。それを円筒研削してX線によって方位を調べ側面にOF、IF面を形成する。
【0003】
InP単結晶インゴットを内周波スライサーやワイヤソーなどで薄くスライスする。円形の薄片が得られる。それをアズカットウエハと呼ぶ。それを面取りして、欠け・割れなどが起こらないようにする。さらに厚さを所定の範囲に揃えるためにラッピング(研削)する。またエッチングして表面の変質層を除く。さらに表面を研磨して平滑な面を出すようにする。両面を研磨して両面ミラーウエハとする場合と片面を研磨して片面ミラーウエハとする場合がある。
【0004】
研磨工程には1次研磨(粗研磨)と2次研磨(仕上げ研磨)がある。それぞれの研磨において研磨液が違うし、研磨の速度も違う。
【0005】
研磨速度は1次研磨では2〜3μm/分の程度、仕上げ研磨では0.2〜0.3μm/分の程度である。本発明はそのうち一次研磨に関するものである。現在市販されているInPウエハには2インチウエハ(直径50mm)と3インチウエハ(直径75mm)がある。本発明はいずれのサイズのInPウエハにも適用することができる。
【0006】
【従来の技術】
研磨液というのは研磨装置において研磨定盤の上に常時供給され物理的または化学的な作用によってウエハの表面を削ってゆき表面を平坦にするものである。図1は研磨装置の概略を示す。円盤状の研磨プレート2の下にワックス3によってInPウエハ4を例えば8枚貼り付ける。研磨布6を上面に貼った大きい円盤状の研磨定盤7は回転軸8によって回転可能に支持される。研磨プレート2は研磨ヘッド20から垂下されたシャフト22によって回転可能に保持される。研磨定盤7の上には研磨液供給管9があり、そこから常時研磨液5が研磨布6の上に与えられる。これは簡略化した図面であって実際にはクランプのための機構や様々の機構があるが省略してある。本発明はこのうち研磨液を問題にする。
【0007】
InPウエハの二次研磨液は、コロイダルシリカ、トリクロロイソシアヌール酸、リンゴ酸(pH調整剤)を含むものである。そのような研磨液を用いて例えば15分かけて5μm程度の厚みを除去する(0.3μm/分)。二次研磨はスピードは不要だから一次研磨のように研磨速度はあまり問題でない。本発明は一次研磨に関するもので二次研磨に関するものではないから、二次研磨についてはそれ以上説明しない。
【0008】
従来のInPウエハの研磨液として提案されているものは幾つもある。最も主流をなすのは臭素+メタノールを研磨液とするものである。たとえば
【0009】
▲1▼英国特許第945933号
など数多い文献に臭素を主体とする研磨液が記載されている。この場合メタノールは単に溶剤であり化学的にInPを腐食する作用があるのは臭素である。これはInPウエハ面を平坦にする作用に富む。優れた研磨液材料である。しかし臭素はハロゲンであるだけに腐食作用が強くて廻りの容器や治具へ付着するとそれらを腐食汚染するという欠点がある。また揮発性があって時間とともに揮発消失して成分組成が変化しやすく条件が変わり易いという欠点もある。
【0010】
▲2▼特公平7−67666号「第3−5族化合物半導体の研磨剤」
これは、GaAsなどの研磨液として、塩素化イソシアヌール酸10〜40重量%、アルカリ金属の燐酸塩と硫酸塩60〜90重量%で、アルカリ金属燐酸塩:アルカリ金属硫酸塩=0.3〜2:1であるようなものを提案している。実施例はGaAsウエハの研磨だけである。2%水溶液を研磨液として用いてGaAsウエハを研磨している。研磨速度はだいたい1μm/分であると述べている。研磨作用をするのは塩素であって燐酸塩、硫酸塩などはpH調整をするためであろう。pHは弱アルカリの8.7〜9.4程度に調整されている。
【0011】
▲3▼特許第3147168号「第3−5族化合物半導体の研磨剤」
これは塩素化イソシアヌール酸10〜60重量%、アルカリ金属硫酸塩5〜50重量%、アルカリ金属燐酸塩5〜50重量%、アルカリ金属炭酸塩0.5〜50重量%からなる研磨液を提案している。これもInPというよりもGaAsウエハの研磨のためのものである。研磨液のpHは8.5〜9.55で弱アルカリというところである。従来例▲2▼と比較してアルカリ金属の炭酸塩というのが増えている。研磨液の評価の基準は、研磨速度がある程度速いこと、研磨によってスクラッチなどが発生しないこと、研磨表面が綺麗なことなどである。先に述べたように研磨には一次研磨(粗研磨)と二次研磨(仕上げ研磨)がある。
【0012】
研磨速度が速いというのは二次研磨には必要のない条件である。ここでは一次研磨を問題にするから研磨速度の速い方が良い、ということになるのである。従来例▲2▼は研磨速度が1μm/分程度であり充分に速いと主張している。但し研磨速度は定盤の回転数や、研磨プレートの回転数やウエハに掛かる圧力などによっても変わるので研磨液だけによって決まるとはいえない。しかし同じ物理的条件でも研磨液の違いによって研磨速度は著しく異なる。だから研磨速度というのは研磨液を評価する重要な因子でありうる。
【0013】
▲4▼特公平8−5007号「第3−5族化合物半導体の研磨剤」
これは、塩素化イソシアヌール酸を、エステル、ケトン、アルコール溶媒にハロゲン濃度が0.01重量%〜10重量%になるように含む液を研磨液として用いることを提案している。これもInPというよりはGaAsウエハの研磨のために考案されたものである。GaAs結晶を除去するのは塩素であって化学的作用によって結晶を除去するようになっている。
【0014】
上に述べた▲2▼〜▲4▼は化合物半導体ウエハの全てに適用可能だと主張しているが実際にはGaAsウエハだけ実験したものでありInPウエハには適用できるだろうという推測を述べている。実際のところGaAsとInPはその性質がかなり違う。GaAsに最適の方法がInPに最適だということは直ちには言えないことである。本発明者の経験ではGaAsは化学的研磨が、InPは物理的研磨がむしろ向いているような気がする。▲2▼〜▲4▼の研磨液において研磨に効果があるのはイソシアヌール酸に付けてある塩素である。塩素のないイソシアヌール酸には研磨の作用はない。InPについて物理的研磨を提案しているものもある。
【0015】
▲5▼特開平7−161669号「化合物半導体のための研磨液及びこれを用いた化合物半導体の研磨方法」
【0016】
これは臭素を用いないInPウエハの研磨方法を提案している。コロイダルシリカ、クエン酸、過酸化水素からなる研磨液によってInPウエハを研磨すると言っている。コロイダルシリカはSiウエハの場合に広く用いられており、よく知られた物理研磨剤である。Siウエハは極めて堅牢で丈夫なのでコロイダルシリカを用いて物理研磨することができる。しかしSiウエハの場合に頻用されたコロイダルシリカは表面構造がよりもろいGaAsウエハ、InPウエハ等の場合にはスクラッチが入ってしまい使えないとされていた。
【0017】
スクラッチを避けるため主に化学的な手法(臭素を用いる)が用いられてきたのである。従来例▲5▼はSiで用いられるコロイダルシリカをなんとかInPにも利用しようとするものである。それはクエン酸と過酸化水素を加えpH調整、物理的研磨作用を緩和することによってInPウエハを研磨できるようにしたというものである。もともとアルカリ性のコロイダルシリカをクエン酸が酸性にし、pHを5(弱酸性)にしている。また加工圧力を100g/cm2とする。スクラッチが入らないようにするにはpHは重要な因子らしくて、中性からアルカリ性になると急激にスクラッチ発生が増大すると述べている。加工圧力も重要なファクターでInPの場合100g/cm2から外れるとスクラッチが発生すると述べている。
【0018】
▲6▼特許第3077665号「第3−5族化合物半導体の研磨剤とその供給方法」
【0019】
これは、アルカリ金属の塩素化イソシアヌール酸塩を5〜40重量%、アルカリ金属の燐酸塩を5〜25重量%、アルカリ金属の炭酸塩を0.5〜10重量%、アルカリ金属の硫酸塩1〜20重量%、シリカ粒子を30〜85重量%含む研磨液によってGaAsウエハを研磨する研磨液としている。燐酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが必須だということを述べている。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らが現在、InPウエハの一次研磨のために用いている研磨液は、コロイダルシリカ、ジクロロイソシアヌール酸、硫酸ナトリウム、塩化カリウムの混合溶液である。ジクロロイソシアヌール酸というのは塩素を二つ含むという意味であり、これまでに述べた塩素化イソシアヌール酸という一般概念に含まれるものである。塩素を一つ含むものはモノクロロであるし、3つ含むものはトリクロロである。
【0021】
定量のコロイダルシリカ、ジクロロイソシアヌール酸、硫酸ナトリウム、塩化カリウムの混合溶液を標準液(表1に組成を示す)とここでは呼ぶことにする。それを基準として本発明の研磨液の性能を比較検討する。
【0022】
標準液は4つの成分を含む。それは研磨速度が速く研磨した表面の状態も良好で充分な実績がある。しかしながら、さらに研磨のコストを下げる必要があり、そのためには研磨液についてもコストを低減する必要がある。そのため本発明者は、4要素を含む研磨液を対象にして省くことができる成分は省き、より安価低コストのInP用研磨液を探求した。本発明の目的は、既存4要素のうち除去できるものは何かを明らかにして、より低コストの研磨液を提供することである。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明のInPウエハの一次研磨液は、表面の突起高さの最大値が5nm以上であるコロイダルシリカと塩素化イソシアヌール酸だけを含み、硫酸ナトリウムや塩化カリウムを含まない。
【0024】
【発明の実施の形態】
つまり二つの成分だけを含む研磨液を提案する。純水に、コロイダルシリカと塩素化イソシアヌール酸を分散した研磨液だということである。純水に対する割合はコロイダルシリカ液が5%〜20%の程度であり、流動性、粘性が適切な範囲のものとする。コロイダルシリカと塩素化イソシアヌール酸の重量比は、コロイダルシリカ(乾量)と1として、塩素化イソシアヌール酸を0.5〜1.5とする。
【0025】
さらにコロイダルシリカの粒径に限定があり粒径Dは10nm〜300nmとする。特に粒径は50nm〜150nmであるのが望ましい。
【0026】
コロイダルシリカはシリカの微粒子なのでアルカリ性である。適切なpHは7〜14とする。特にpH=8〜11であるのが望ましい。
【0027】
上に述べたコロイダルシリカの粒径、pHはコロイダルシリカをわかりやすい通常の物性によって定義するものである。本発明はさらにそれらのパラメータでは定義できないものによってもコロイダルシリカ性質を限定する。それは少し難しく理解しにくいパラメータであるから写真によって説明する。
【0028】
図2は比較例にかかるコロイダルシリカの5万倍の顕微鏡写真である。図3は同じものの20万倍の顕微鏡写真である。シリカの粒径はかなりよく揃っており時に大きいものが混ざっているが大体似たようなものである。5万倍ではよくわからないが20万倍にするとよくわかる。きれいな球形に揃った粒子になっている。20万倍だから図面で1cmの直径をもつ粒子の実際の直径は50nmである。これはよく整ったコロイダルシリカである。しかし本発明者の実験では研磨速度は良くないことが分かった。
【0029】
図4は実施例にかかるコロイダルシリカの5万倍の顕微鏡写真である。図5は同じものの20万倍の顕微鏡写真である。シリカの粒径はよりばらつきが大きい。10nmから300nm程度の直径を持っている粒子の集合である。5万倍ではよく見えないが、20万倍にすると粒子の表面までよく見える。特に大きい粒子の表面をよく見れば分かるが表面に凹凸があることがわかる。それだけを見てもわからないが、比較例の図3と比べるとその違いがハッキリする。
【0030】
比較例の表面はツルッと滑らかであるが、実施例の図5の粒子は表面がガタガタして凹凸がある。同じ条件で比較例のコロイダルシリカと実施例のコロイダルシリカを使って研磨すると研磨速度が1:2.5程度も違うことがわかった。つまり実施例のコロイダルシリカを使って2μm/分の研磨速度が得られたとすると、比較例のコロイダルシリカを用いたときは、0.8μm/分程度の研磨速度しか実現できないということである。
【0031】
その違いであるが、表面のギザギザガタガタが実施例のコロイダルシリカにあり、比較例のコロイダルシリカにないということである。この凹凸の高さが高いので研磨の効率が良いのであろうと本発明者は考える。表面凹凸(突起)が存在し、望ましくは高さが5nm以上あれば効果があるというようなことが分かってきた。突起高さというのは少し定義が難しいが前後での平均の球面を想定してそれからのズレを突起高さhと定義する。hの最大値が5nmであるということである。図6にはその定義を示す。本発明は表面突起の最大値が5nm以上だということである。図2、図3の写真に見える粒子は表面がツルツルであって、そのような突起がない。本発明が利用している図4、5の粒子は突起があって、それが研磨の能率を著しく高めているのである。それが本発明の一つの条件である。もう一つの条件は、研磨液が、コロイダルシリカと塩素化イソシアヌール酸だけを含むというものである。後者の条件はコスト低減のための条件である。それは従来例の研磨液が、コロイダルシリカ、ジクロロイソシアヌール酸、硫酸ナトリウム、塩化カリウムを含んでいたが、そのうち不要なものを除去してコストを低減したということである。その根拠については後に詳しく述べる。
【0032】
【実施例】
4つの成分から幾つかを除去した研磨液を作製した。だから、それらの研磨液は1〜3つの成分を含む研磨液である。配合量は従来(標準条件)と同様としている。つまり標準の配合比は、
【0033】
A. 超純水 4500ml
B. コロイダルシリカ(20%) 500ml
C. ジクロロイソシアヌール酸 43.2g
D. 硫酸ナトリウム(Na2SO4) 24g
E. 塩化カリウム(KCl) 14.4g
【0034】
である。4つの成分といっているのはB〜Eの薬剤のことである。超純水は必ず要るのだから省くことはない。標準はB〜Eの全部を含む。下の実験はその内のどれかを省いたものである。省かれなかったものの配合比は上に記した通りである。たとえば硫酸ナトリウムDがないという研磨液の場合は、コロイダルシリカBが500ml、ジクロロイソシアヌール酸Cは43.2g、塩化カリウムEが14.4g、純水4500mlの中に含まれている研磨液ということである。
【0035】
何れの場合も供給量は100ml/分である。研磨時間は10分である。それぞれについて研磨実験を4回行った。平均というのはウエハと時間についての平均値ということである。研磨液はコロイダルシリカのために白濁して見える。被処理物は2インチInPウエハであり、1枚の研磨プレートに8枚貼り付けてある。定盤に貼り付けてある研磨布は発泡ポリエステル樹脂である。表1には標準液の組成を示す。
【0036】
【表1】
【0037】
表2に組成の異なる研磨液1〜9の組成と、その研磨液を用いて4回の研磨実験をしたときの研磨液速度の実測値を示す。○があるのはその成分を含むということである。
【0038】
【表2】
【0039】
[研磨液9(コロイダルシリカ+イソシアヌール酸+硫酸ナトリウム+塩化カリウム:標準研磨液:比較の基準となる)]
これは超純水A4500ml、コロイダルシリカ(20%)B500ml、ジクロロイソシアヌール酸C43.2g、硫酸ナトリウム(Na2SO4)D24g、塩化カリウム(KCl)E14.4gの全てを含む液であり標準となる。初めに基準を与えるために、これについて述べる。研磨液9によって4回、InPウエハ(2インチ)の研磨実験を行った。それぞれの回における研磨速度の平均値は2.5μm/分、2.5μm/分、2.5μm/分、2.5μm/分であった。4回の平均速度が2.5μm/分である。研磨速度が速くて優れた研磨液だということがわかる。コロイダルシリカが物理的な力でウエハの表面を削っているだろうということは容易に推測できる。
【0040】
ジクロロイソシアヌール酸は化学的に表面を削っているのかもしれないが、よくわからない。硫酸ナトリウムは前記の従来例▲2▼、▲3▼、▲4▼にも現れたものである。これはpH調整用のように思えるが、その他の作用があるのかもしれない。塩化カリウムは塩素を含み塩素自体は活性であるがKClという安定な化合物に含まれる塩素が研磨に寄与しているのかどうかわからない。そのように研磨の主体が何であるのかハッキリしない。それらの作用が複合しているのであろうが、どれが必須でどれが必須でないのか?というところが今一つよく分からない。
【0041】
[研磨液1(コロイダルシリカだけ)]
これは4%のコロイダルシリカ500mlだけを含む研磨液である。研磨液1によって4回、InPウエハ(2インチ)の研磨実験を行った。それぞれの回における研磨速度の平均値は0.4μm/分、0.2μm/分、0.2μm/分、0.4μm/分であった。4回の平均速度が0.3μm/分である。研磨速度が遅すぎるという明白な欠点がある。
【0042】
[研磨液2(コロイダルシリカ+ジクロロイソシアヌール酸)]
これは4%のコロイダルシリカ500mlと、43.2gのジクロロイソシアヌール酸だけを含む研磨液である。研磨液2によって4回、InPウエハ(2インチ)の研磨実験を行った。それぞれの回における研磨速度の平均値は2.4μm/分、2μm/分、2.2μm/分、2.2μm/分であった。4回の平均速度が2.2μm/分である。標準研磨液の研磨速度が2.5μmなのだから、研磨液2の2.2μm/分という研磨速度は満足できるものである。研磨速度が速くて、これは使いものになる。研磨液1と研磨液2を比べてみると、ジクロロイソシアヌール酸はどうも必須の薬剤のように見える。
【0043】
[研磨液3(コロイダルシリカ+硫酸ナトリウム)]
これは4%のコロイダルシリカ500mlと、24gの硫酸ナトリウムを含む研磨液である。これも標準研磨液の4成分のうち2成分だけを含むものである。研磨液4と3は硫酸ナトリウムがあるか塩化カリウムがあるかという違いである。研磨液3によって4回、InPウエハの研磨実験を行った。それぞれの回における研磨速度の平均値は0.6μm/分、0.6μm/分、0.4μm/分、0.4μm/分であった。4回の平均速度が0.5μm/分である。標準研磨液の研磨速度が2.5μmなのだから、その1/5程度ということである。0.5μm/分というのでは使いものにならない。これは全く研磨液として不適当である。
【0044】
この結果から硫酸ナトリウムには研磨の作用はないのだということがわかる。硫酸ナトリウムは従来例▲2▼、▲3▼、▲4▼などで必須のものとして提案されたものであるが、それにも拘らず硫酸ナトリウムには研磨の作用がない。これもコロイダルシリカを含む研磨液なのだからコロイダルシリカによる物理的な研磨作用ぐらいはあるように予想される。しかし0.5μm/分という研磨速度はコロイダルシリカがあっても、それだけではInPウエハを削ることはできないのだということを強く示唆する。これは研磨に必須のものが、イソシアヌール酸C、塩化カリウムEのいずれかに違いないということをも暗示する。
【0045】
[研磨液4(コロイダルシリカ+塩化カリウム)]
これは4%のコロイダルシリカ500mlと、14.4gの塩化カリウムを含む研磨液である。つまり標準研磨液の4成分のうち2成分だけを含むものである。研磨液4によって4回、InPウエハの研磨実験を行った。それぞれの回における研磨速度の平均値は0μm/分、0μm/分、0.2μm/分、0.2μm/分であった。4回の平均速度が0.1μm/分である。標準研磨液9の研磨速度が2.5μmなのだから、その1/25程度ということである。0μm/分というのは全く削れなかったということである。それは全く研磨液として不適当である。この結果から塩化カリウムには研磨の作用はないのだということがわかる。
【0046】
塩化カリウムは塩素を含むのであるがアルカリ金属との化合物になった塩素は極めて安定で反応性に乏しい。それだけではない。コロイダルシリカを含む研磨液なのだからコロイダルシリカによる物理的な研磨作用ぐらいはあるように予想される。しかし0μm/分という研磨速度はコロイダルシリカがあっても、それだけではInPウエハを削ることはできないのだということを強く示唆する。しかも研磨に必須のものが、ジクロロイソシアヌール酸C、硫酸ナトリウムDのいずれかに違いないということをも暗示する。
【0047】
[研磨液5(コロイダルシリカ+硫酸ナトリウム+塩化カリウム)]
これは4%のコロイダルシリカ500mlと、24gの硫酸ナトリウム、14.4gの塩化カリウムを含む研磨液である。つまり標準研磨液の4成分のうち3成分だけを含むものである。研磨液5によって4回、InPウエハの研磨実験を行った。それぞれの回における研磨速度の平均値は0.2μm/分、0.2μm/分、0.2μm/分、0μm/分であった。4回の平均速度が0.15μm/分である。標準研磨液9の研磨速度が2.5μmなのだから、その1/16程度ということである。4回目の実験の0μm/分というのは全く削れなかったということである。それは研磨液として不適当である。
【0048】
この結果は重要である。標準研磨液の4要素の内3要素を含むのであるから、これは標準液に近い良好な結果をもたらすことが予想される。しかし結果はとてもそうではなかった。コロイダルシリカを含む研磨液なのだからコロイダルシリカによる物理的な研磨作用ぐらいはあるように予想される。しかし0.15μm/分という研磨速度はコロイダルシリカがあっても、それだけではInPウエハを削ることはできないのだということを重ねて示唆する。Si研磨で頻用されているコロイダルシリカをInPに使うとスクラッチが出たり割れたりするからいけないのだと思われてきたがそれだけでなくて、ある場合には研磨できないという理由もあるということが分かる。
【0049】
研磨液5に欠けているものはジクロロイソシアヌール酸だけなのだから、これが研磨液成分として不可欠のものだということがこれで明らかになる。ジクロロイソシアヌール酸は塩素を含み、この塩素は本体から離れ易くて活性が高いので化学的作用が強く、それがウエハ表面を削る作用があるのであろう。それはそうであるが、これだけではコロイダルシリカとジクロロイソシアヌール酸の関係がよくわからない。
【0050】
[研磨液6(コロイダルシリカ+ジクロロイソシアヌール酸+硫酸ナトリウム)]
これは4%のコロイダルシリカ500mlと、43.2gのジクロロイソシアヌール酸、24gの硫酸ナトリウムを含む研磨液である。つまり標準研磨液の4成分のうち塩化カリウム以外の3成分を含むものである。研磨液6によってInPウエハの研磨実験を4回行った。それぞれの回における研磨速度の平均値は2μm/分、2μm/分、2μm/分、2.2μm/分であった。4回の平均速度が2.05μm/分である。標準研磨液9の研磨速度が2.5μmなのだから、それとほぼ同等だということである。
【0051】
もう少し条件を最適化すれば4成分を含む標準研磨液9と比肩することができる性能を発揮できよう。それは研磨液として研磨液6が利用可能だということを示唆する。つまり、この結果は塩化カリウムは必須の成分でないということである。塩化カリウムの塩素はハロゲンであるがカリウムと化合物を形成しているので不活性になっているのである。この塩素にはハロゲンとしての活性はなくて研磨には殆ど寄与しないものと思われる。それは研磨液2の実験結果とも整合するものであるといえよう。そうなると残る問題は硫酸ナトリウムは何をしているのか?ということである。
【0052】
[研磨液7(コロイダルシリカ+ジクロロイソシアヌール酸+塩化カリウム)]これは4%のコロイダルシリカ500mlと、43.2gのジクロロイソシアヌール酸、14.4gの塩化カリウムを含む研磨液である。つまり標準研磨液の4成分のうち硫酸ナトリウム以外の3成分を含むものである。研磨液7によってInPウエハの研磨実験を4回行った。それぞれの回における研磨速度の平均値は2.4μm/分、2.4μm/分、2.4μm/分、2.4μm/分であった。4回の平均速度が2.4μm/分である。標準研磨液の研磨速度が2.5μmなのだから、それと同等だということである。もう少し条件を最適化すれば4成分を含む標準研磨液9と研磨速度を同じにすることができよう。
【0053】
それは研磨液として研磨液7が利用可能だということを示唆する。つまり、この結果は硫酸ナトリウムは必須の成分でないということである。硫酸ナトリウムは従来例▲2▼、▲3▼、▲4▼には必須のものとして出ているが、それは他の成分が違う(コロイダルシリカを含まない)からであろう。コロイダルシリカを有する研磨液においては硫酸ナトリウムは必須でないということを意味している。研磨液5、研磨液6、研磨液7によって硫酸ナトリウム、塩化カリウムが必須でないということが分かる。それではジクロロイソシアヌール酸はどうだろうか?それが最後の問題である。
【0054】
[研磨液8(ジクロロイソシアヌール酸だけ)]
これは43.2gのジクロロイソシアヌール酸だけ含む研磨液である。コロイダルシリカを含まない研磨液である。これまでの実験から硫酸ナトリウムや塩化カリウムが必須不可欠のものでないということが分かったが、ジクロロイソシアヌール酸はどうだろうか?ということである。研磨液2はコロイダルシリカとジクロロイソシアヌール酸を含むものであり、それは充分な研磨能力があることが確かめられている。そうするとジクロロイソシアヌール酸単独での能力はどうかということである。
【0055】
研磨液8によってInPウエハの研磨実験を4回行った。それぞれの回における研磨速度の平均値は0.2μm/分、0.2μm/分、0.2μm/分、0.2μm/分であった。4回の平均速度が0.2μm/分である。標準研磨液9の研磨速度が2.5μmなのだから、とても及ばない。それはジクロロイソシアヌール酸に含まれる塩素が化学反応によって研磨する作用がわずかだということを意味する。塩素が解離しても、それだけでは強い化学反応性を発揮できずコロイダルシリカの物理的な力も必要だということを意味している。研磨液2、研磨液6、研磨液7と比較してみれば、ジクロロイソシアヌール酸とコロイダルシリカが共通して存在するということが研磨液にとって必須の条件だということが明白になる。それは重要な結果である。研磨液8はコロイダルシリカを含まないからInPを研磨できないのである。
【0056】
塩素化イソシアヌール酸を用いるというのが従来例▲2▼、▲3▼、▲4▼の主張であるが、本発明は塩素化しないイソシアヌール酸を用いる。その代わりに物理作用をもつコロイダルシリカを本発明は採用する。コロイダルシリカの物理作用によってスクラッチや割れが出てはいけないから、それを緩和する作用がイソシアヌール酸にあるようである。単にコロイダルシリカの作用を矯めるということだけでなくてジクロロイソシアヌール酸にも研磨作用があるということは研磨液1の結果からわかる。イソシアヌール酸に付属する塩素が活性であって、これが化学作用でInPを削るのであろう。これらの実験の組み合わせから、InPの研磨において必須のものがコロイダルシリカとイソシアヌール酸だということが分かる。
【0057】
硫酸ナトリウムは塩素化イソシアヌール酸を用いるときは必須であると従来例▲2▼、▲3▼、▲4▼が主張しているが、本発明者のようにコロイダルシリカを用いるときは硫酸ナトリウムは省くことができる。
【0058】
また、塩化カリウムの塩素はハロゲンであるが、それには活性がないようである。カリウムと化合物を形成しているので不活性になっているのである。この塩素にはハロゲンとしての活性はなくて研磨には殆ど寄与しない。
【0059】
そのようなことがハッキリしてきた。だから本発明は、InPの研磨液としてコロイダルシリカ+イソシアヌール酸の組み合わせを提案する。
【0060】
純水に対する割合は、コロイダルシリカ液が5%〜20%であり、コロイダルシリカ重量を1として、塩素化イソシアヌール酸の重量比は0.5〜1.5である。コロイダルシリカのpHは7〜14であり特に8〜11が望ましい。
硫酸ナトリウム、塩化カリウムの含まれる量は5%の時よりも1%にした時の方が、研磨レートが1.5倍になることが分かっている。よって、塩化カリウムと硫酸ナトリウムは入っていても1%以下にしておかなくてはならない。
【0061】
【発明の効果】
本発明は臭素を使うことなくInPウエハを研磨することができる。臭素による装置や治具の不測の腐食や事故を防ぐことができる。本発明はInPをコロイダルシリカによって物理作用で研磨するようにしている。コロイダルシリカといってもInPに適するものと適さないものがある。粒子表面の突起の高さhの最大値hmaxが5nm以上のものを選ぶのが必須だということを見出している。
【0062】
さらに本発明は、従来4種類の薬剤を使っていたものを、2種類の薬剤だけで研磨できることを主張する。コロイダルシリカと塩素化イソシアヌール酸だけで足りる。つまり硫酸ナトリウムと塩化カリウムを省くことができる。薬剤の数が少なくなるので研磨に要するコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】InPウエハの研磨装置の概略断面図。
【図2】比較例にかかるコロイダルシリカの5万倍の顕微鏡写真。
【図3】比較例にかかるコロイダルシリカの20万倍の顕微鏡写真。
【図4】実施例にかかるコロイダルシリカの5万倍の顕微鏡写真。
【図5】実施例にかかるコロイダルシリカの20万倍の顕微鏡写真。
【図6】コロイダルシリカ粒子表面の凹凸の突起の高さの定義を示すための図。局所平均球面からの凹凸の高さとして突起高さを定義する。
【符号の説明】
2 研磨プレート
3 ワックス
4 InPウエハ
5 研磨液
6 研磨布
7 研磨定盤
8 回転軸
9 研磨液供給管
20 研磨ヘッド
22 シャフト
【発明の属する技術分野】
この発明は、InPウエハの一次研磨の研磨液に関する。InPは圧力を掛けて加熱し融液にすることができるのでチョクラルスキー法やブリッジマン法によって原料融液から結晶成長することができる。但し融点でのPの解離圧が高いのでPの解離を防ぐようにPの蒸気圧を制御しながら結晶成長しなければならない。ブリッジマン法は横型(HB)と縦型(VB)があり、どちらもInP成長に適用することができる。
【0002】
融液を石英容器に閉じ込めて成長させるブリッジマン法では、Pの固体を石英容器の一部に置いてPを加熱して融液のPの蒸気圧とバランスさせるようになっている。チョクラルスキー法の場合は、るつぼにInP融液を入れて液体カプセル(B2O3)で覆い、種結晶を漬け種結晶を廻しながら引き上げることによってInP円柱結晶を成長させる。液体カプセル法(Liquid encapsulated Czochralski)と呼ぶ。これらの方法によって2インチ径とか3インチ径のInP単結晶インゴットを得ることができる。それを円筒研削してX線によって方位を調べ側面にOF、IF面を形成する。
【0003】
InP単結晶インゴットを内周波スライサーやワイヤソーなどで薄くスライスする。円形の薄片が得られる。それをアズカットウエハと呼ぶ。それを面取りして、欠け・割れなどが起こらないようにする。さらに厚さを所定の範囲に揃えるためにラッピング(研削)する。またエッチングして表面の変質層を除く。さらに表面を研磨して平滑な面を出すようにする。両面を研磨して両面ミラーウエハとする場合と片面を研磨して片面ミラーウエハとする場合がある。
【0004】
研磨工程には1次研磨(粗研磨)と2次研磨(仕上げ研磨)がある。それぞれの研磨において研磨液が違うし、研磨の速度も違う。
【0005】
研磨速度は1次研磨では2〜3μm/分の程度、仕上げ研磨では0.2〜0.3μm/分の程度である。本発明はそのうち一次研磨に関するものである。現在市販されているInPウエハには2インチウエハ(直径50mm)と3インチウエハ(直径75mm)がある。本発明はいずれのサイズのInPウエハにも適用することができる。
【0006】
【従来の技術】
研磨液というのは研磨装置において研磨定盤の上に常時供給され物理的または化学的な作用によってウエハの表面を削ってゆき表面を平坦にするものである。図1は研磨装置の概略を示す。円盤状の研磨プレート2の下にワックス3によってInPウエハ4を例えば8枚貼り付ける。研磨布6を上面に貼った大きい円盤状の研磨定盤7は回転軸8によって回転可能に支持される。研磨プレート2は研磨ヘッド20から垂下されたシャフト22によって回転可能に保持される。研磨定盤7の上には研磨液供給管9があり、そこから常時研磨液5が研磨布6の上に与えられる。これは簡略化した図面であって実際にはクランプのための機構や様々の機構があるが省略してある。本発明はこのうち研磨液を問題にする。
【0007】
InPウエハの二次研磨液は、コロイダルシリカ、トリクロロイソシアヌール酸、リンゴ酸(pH調整剤)を含むものである。そのような研磨液を用いて例えば15分かけて5μm程度の厚みを除去する(0.3μm/分)。二次研磨はスピードは不要だから一次研磨のように研磨速度はあまり問題でない。本発明は一次研磨に関するもので二次研磨に関するものではないから、二次研磨についてはそれ以上説明しない。
【0008】
従来のInPウエハの研磨液として提案されているものは幾つもある。最も主流をなすのは臭素+メタノールを研磨液とするものである。たとえば
【0009】
▲1▼英国特許第945933号
など数多い文献に臭素を主体とする研磨液が記載されている。この場合メタノールは単に溶剤であり化学的にInPを腐食する作用があるのは臭素である。これはInPウエハ面を平坦にする作用に富む。優れた研磨液材料である。しかし臭素はハロゲンであるだけに腐食作用が強くて廻りの容器や治具へ付着するとそれらを腐食汚染するという欠点がある。また揮発性があって時間とともに揮発消失して成分組成が変化しやすく条件が変わり易いという欠点もある。
【0010】
▲2▼特公平7−67666号「第3−5族化合物半導体の研磨剤」
これは、GaAsなどの研磨液として、塩素化イソシアヌール酸10〜40重量%、アルカリ金属の燐酸塩と硫酸塩60〜90重量%で、アルカリ金属燐酸塩:アルカリ金属硫酸塩=0.3〜2:1であるようなものを提案している。実施例はGaAsウエハの研磨だけである。2%水溶液を研磨液として用いてGaAsウエハを研磨している。研磨速度はだいたい1μm/分であると述べている。研磨作用をするのは塩素であって燐酸塩、硫酸塩などはpH調整をするためであろう。pHは弱アルカリの8.7〜9.4程度に調整されている。
【0011】
▲3▼特許第3147168号「第3−5族化合物半導体の研磨剤」
これは塩素化イソシアヌール酸10〜60重量%、アルカリ金属硫酸塩5〜50重量%、アルカリ金属燐酸塩5〜50重量%、アルカリ金属炭酸塩0.5〜50重量%からなる研磨液を提案している。これもInPというよりもGaAsウエハの研磨のためのものである。研磨液のpHは8.5〜9.55で弱アルカリというところである。従来例▲2▼と比較してアルカリ金属の炭酸塩というのが増えている。研磨液の評価の基準は、研磨速度がある程度速いこと、研磨によってスクラッチなどが発生しないこと、研磨表面が綺麗なことなどである。先に述べたように研磨には一次研磨(粗研磨)と二次研磨(仕上げ研磨)がある。
【0012】
研磨速度が速いというのは二次研磨には必要のない条件である。ここでは一次研磨を問題にするから研磨速度の速い方が良い、ということになるのである。従来例▲2▼は研磨速度が1μm/分程度であり充分に速いと主張している。但し研磨速度は定盤の回転数や、研磨プレートの回転数やウエハに掛かる圧力などによっても変わるので研磨液だけによって決まるとはいえない。しかし同じ物理的条件でも研磨液の違いによって研磨速度は著しく異なる。だから研磨速度というのは研磨液を評価する重要な因子でありうる。
【0013】
▲4▼特公平8−5007号「第3−5族化合物半導体の研磨剤」
これは、塩素化イソシアヌール酸を、エステル、ケトン、アルコール溶媒にハロゲン濃度が0.01重量%〜10重量%になるように含む液を研磨液として用いることを提案している。これもInPというよりはGaAsウエハの研磨のために考案されたものである。GaAs結晶を除去するのは塩素であって化学的作用によって結晶を除去するようになっている。
【0014】
上に述べた▲2▼〜▲4▼は化合物半導体ウエハの全てに適用可能だと主張しているが実際にはGaAsウエハだけ実験したものでありInPウエハには適用できるだろうという推測を述べている。実際のところGaAsとInPはその性質がかなり違う。GaAsに最適の方法がInPに最適だということは直ちには言えないことである。本発明者の経験ではGaAsは化学的研磨が、InPは物理的研磨がむしろ向いているような気がする。▲2▼〜▲4▼の研磨液において研磨に効果があるのはイソシアヌール酸に付けてある塩素である。塩素のないイソシアヌール酸には研磨の作用はない。InPについて物理的研磨を提案しているものもある。
【0015】
▲5▼特開平7−161669号「化合物半導体のための研磨液及びこれを用いた化合物半導体の研磨方法」
【0016】
これは臭素を用いないInPウエハの研磨方法を提案している。コロイダルシリカ、クエン酸、過酸化水素からなる研磨液によってInPウエハを研磨すると言っている。コロイダルシリカはSiウエハの場合に広く用いられており、よく知られた物理研磨剤である。Siウエハは極めて堅牢で丈夫なのでコロイダルシリカを用いて物理研磨することができる。しかしSiウエハの場合に頻用されたコロイダルシリカは表面構造がよりもろいGaAsウエハ、InPウエハ等の場合にはスクラッチが入ってしまい使えないとされていた。
【0017】
スクラッチを避けるため主に化学的な手法(臭素を用いる)が用いられてきたのである。従来例▲5▼はSiで用いられるコロイダルシリカをなんとかInPにも利用しようとするものである。それはクエン酸と過酸化水素を加えpH調整、物理的研磨作用を緩和することによってInPウエハを研磨できるようにしたというものである。もともとアルカリ性のコロイダルシリカをクエン酸が酸性にし、pHを5(弱酸性)にしている。また加工圧力を100g/cm2とする。スクラッチが入らないようにするにはpHは重要な因子らしくて、中性からアルカリ性になると急激にスクラッチ発生が増大すると述べている。加工圧力も重要なファクターでInPの場合100g/cm2から外れるとスクラッチが発生すると述べている。
【0018】
▲6▼特許第3077665号「第3−5族化合物半導体の研磨剤とその供給方法」
【0019】
これは、アルカリ金属の塩素化イソシアヌール酸塩を5〜40重量%、アルカリ金属の燐酸塩を5〜25重量%、アルカリ金属の炭酸塩を0.5〜10重量%、アルカリ金属の硫酸塩1〜20重量%、シリカ粒子を30〜85重量%含む研磨液によってGaAsウエハを研磨する研磨液としている。燐酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが必須だということを述べている。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らが現在、InPウエハの一次研磨のために用いている研磨液は、コロイダルシリカ、ジクロロイソシアヌール酸、硫酸ナトリウム、塩化カリウムの混合溶液である。ジクロロイソシアヌール酸というのは塩素を二つ含むという意味であり、これまでに述べた塩素化イソシアヌール酸という一般概念に含まれるものである。塩素を一つ含むものはモノクロロであるし、3つ含むものはトリクロロである。
【0021】
定量のコロイダルシリカ、ジクロロイソシアヌール酸、硫酸ナトリウム、塩化カリウムの混合溶液を標準液(表1に組成を示す)とここでは呼ぶことにする。それを基準として本発明の研磨液の性能を比較検討する。
【0022】
標準液は4つの成分を含む。それは研磨速度が速く研磨した表面の状態も良好で充分な実績がある。しかしながら、さらに研磨のコストを下げる必要があり、そのためには研磨液についてもコストを低減する必要がある。そのため本発明者は、4要素を含む研磨液を対象にして省くことができる成分は省き、より安価低コストのInP用研磨液を探求した。本発明の目的は、既存4要素のうち除去できるものは何かを明らかにして、より低コストの研磨液を提供することである。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明のInPウエハの一次研磨液は、表面の突起高さの最大値が5nm以上であるコロイダルシリカと塩素化イソシアヌール酸だけを含み、硫酸ナトリウムや塩化カリウムを含まない。
【0024】
【発明の実施の形態】
つまり二つの成分だけを含む研磨液を提案する。純水に、コロイダルシリカと塩素化イソシアヌール酸を分散した研磨液だということである。純水に対する割合はコロイダルシリカ液が5%〜20%の程度であり、流動性、粘性が適切な範囲のものとする。コロイダルシリカと塩素化イソシアヌール酸の重量比は、コロイダルシリカ(乾量)と1として、塩素化イソシアヌール酸を0.5〜1.5とする。
【0025】
さらにコロイダルシリカの粒径に限定があり粒径Dは10nm〜300nmとする。特に粒径は50nm〜150nmであるのが望ましい。
【0026】
コロイダルシリカはシリカの微粒子なのでアルカリ性である。適切なpHは7〜14とする。特にpH=8〜11であるのが望ましい。
【0027】
上に述べたコロイダルシリカの粒径、pHはコロイダルシリカをわかりやすい通常の物性によって定義するものである。本発明はさらにそれらのパラメータでは定義できないものによってもコロイダルシリカ性質を限定する。それは少し難しく理解しにくいパラメータであるから写真によって説明する。
【0028】
図2は比較例にかかるコロイダルシリカの5万倍の顕微鏡写真である。図3は同じものの20万倍の顕微鏡写真である。シリカの粒径はかなりよく揃っており時に大きいものが混ざっているが大体似たようなものである。5万倍ではよくわからないが20万倍にするとよくわかる。きれいな球形に揃った粒子になっている。20万倍だから図面で1cmの直径をもつ粒子の実際の直径は50nmである。これはよく整ったコロイダルシリカである。しかし本発明者の実験では研磨速度は良くないことが分かった。
【0029】
図4は実施例にかかるコロイダルシリカの5万倍の顕微鏡写真である。図5は同じものの20万倍の顕微鏡写真である。シリカの粒径はよりばらつきが大きい。10nmから300nm程度の直径を持っている粒子の集合である。5万倍ではよく見えないが、20万倍にすると粒子の表面までよく見える。特に大きい粒子の表面をよく見れば分かるが表面に凹凸があることがわかる。それだけを見てもわからないが、比較例の図3と比べるとその違いがハッキリする。
【0030】
比較例の表面はツルッと滑らかであるが、実施例の図5の粒子は表面がガタガタして凹凸がある。同じ条件で比較例のコロイダルシリカと実施例のコロイダルシリカを使って研磨すると研磨速度が1:2.5程度も違うことがわかった。つまり実施例のコロイダルシリカを使って2μm/分の研磨速度が得られたとすると、比較例のコロイダルシリカを用いたときは、0.8μm/分程度の研磨速度しか実現できないということである。
【0031】
その違いであるが、表面のギザギザガタガタが実施例のコロイダルシリカにあり、比較例のコロイダルシリカにないということである。この凹凸の高さが高いので研磨の効率が良いのであろうと本発明者は考える。表面凹凸(突起)が存在し、望ましくは高さが5nm以上あれば効果があるというようなことが分かってきた。突起高さというのは少し定義が難しいが前後での平均の球面を想定してそれからのズレを突起高さhと定義する。hの最大値が5nmであるということである。図6にはその定義を示す。本発明は表面突起の最大値が5nm以上だということである。図2、図3の写真に見える粒子は表面がツルツルであって、そのような突起がない。本発明が利用している図4、5の粒子は突起があって、それが研磨の能率を著しく高めているのである。それが本発明の一つの条件である。もう一つの条件は、研磨液が、コロイダルシリカと塩素化イソシアヌール酸だけを含むというものである。後者の条件はコスト低減のための条件である。それは従来例の研磨液が、コロイダルシリカ、ジクロロイソシアヌール酸、硫酸ナトリウム、塩化カリウムを含んでいたが、そのうち不要なものを除去してコストを低減したということである。その根拠については後に詳しく述べる。
【0032】
【実施例】
4つの成分から幾つかを除去した研磨液を作製した。だから、それらの研磨液は1〜3つの成分を含む研磨液である。配合量は従来(標準条件)と同様としている。つまり標準の配合比は、
【0033】
A. 超純水 4500ml
B. コロイダルシリカ(20%) 500ml
C. ジクロロイソシアヌール酸 43.2g
D. 硫酸ナトリウム(Na2SO4) 24g
E. 塩化カリウム(KCl) 14.4g
【0034】
である。4つの成分といっているのはB〜Eの薬剤のことである。超純水は必ず要るのだから省くことはない。標準はB〜Eの全部を含む。下の実験はその内のどれかを省いたものである。省かれなかったものの配合比は上に記した通りである。たとえば硫酸ナトリウムDがないという研磨液の場合は、コロイダルシリカBが500ml、ジクロロイソシアヌール酸Cは43.2g、塩化カリウムEが14.4g、純水4500mlの中に含まれている研磨液ということである。
【0035】
何れの場合も供給量は100ml/分である。研磨時間は10分である。それぞれについて研磨実験を4回行った。平均というのはウエハと時間についての平均値ということである。研磨液はコロイダルシリカのために白濁して見える。被処理物は2インチInPウエハであり、1枚の研磨プレートに8枚貼り付けてある。定盤に貼り付けてある研磨布は発泡ポリエステル樹脂である。表1には標準液の組成を示す。
【0036】
【表1】
【0037】
表2に組成の異なる研磨液1〜9の組成と、その研磨液を用いて4回の研磨実験をしたときの研磨液速度の実測値を示す。○があるのはその成分を含むということである。
【0038】
【表2】
【0039】
[研磨液9(コロイダルシリカ+イソシアヌール酸+硫酸ナトリウム+塩化カリウム:標準研磨液:比較の基準となる)]
これは超純水A4500ml、コロイダルシリカ(20%)B500ml、ジクロロイソシアヌール酸C43.2g、硫酸ナトリウム(Na2SO4)D24g、塩化カリウム(KCl)E14.4gの全てを含む液であり標準となる。初めに基準を与えるために、これについて述べる。研磨液9によって4回、InPウエハ(2インチ)の研磨実験を行った。それぞれの回における研磨速度の平均値は2.5μm/分、2.5μm/分、2.5μm/分、2.5μm/分であった。4回の平均速度が2.5μm/分である。研磨速度が速くて優れた研磨液だということがわかる。コロイダルシリカが物理的な力でウエハの表面を削っているだろうということは容易に推測できる。
【0040】
ジクロロイソシアヌール酸は化学的に表面を削っているのかもしれないが、よくわからない。硫酸ナトリウムは前記の従来例▲2▼、▲3▼、▲4▼にも現れたものである。これはpH調整用のように思えるが、その他の作用があるのかもしれない。塩化カリウムは塩素を含み塩素自体は活性であるがKClという安定な化合物に含まれる塩素が研磨に寄与しているのかどうかわからない。そのように研磨の主体が何であるのかハッキリしない。それらの作用が複合しているのであろうが、どれが必須でどれが必須でないのか?というところが今一つよく分からない。
【0041】
[研磨液1(コロイダルシリカだけ)]
これは4%のコロイダルシリカ500mlだけを含む研磨液である。研磨液1によって4回、InPウエハ(2インチ)の研磨実験を行った。それぞれの回における研磨速度の平均値は0.4μm/分、0.2μm/分、0.2μm/分、0.4μm/分であった。4回の平均速度が0.3μm/分である。研磨速度が遅すぎるという明白な欠点がある。
【0042】
[研磨液2(コロイダルシリカ+ジクロロイソシアヌール酸)]
これは4%のコロイダルシリカ500mlと、43.2gのジクロロイソシアヌール酸だけを含む研磨液である。研磨液2によって4回、InPウエハ(2インチ)の研磨実験を行った。それぞれの回における研磨速度の平均値は2.4μm/分、2μm/分、2.2μm/分、2.2μm/分であった。4回の平均速度が2.2μm/分である。標準研磨液の研磨速度が2.5μmなのだから、研磨液2の2.2μm/分という研磨速度は満足できるものである。研磨速度が速くて、これは使いものになる。研磨液1と研磨液2を比べてみると、ジクロロイソシアヌール酸はどうも必須の薬剤のように見える。
【0043】
[研磨液3(コロイダルシリカ+硫酸ナトリウム)]
これは4%のコロイダルシリカ500mlと、24gの硫酸ナトリウムを含む研磨液である。これも標準研磨液の4成分のうち2成分だけを含むものである。研磨液4と3は硫酸ナトリウムがあるか塩化カリウムがあるかという違いである。研磨液3によって4回、InPウエハの研磨実験を行った。それぞれの回における研磨速度の平均値は0.6μm/分、0.6μm/分、0.4μm/分、0.4μm/分であった。4回の平均速度が0.5μm/分である。標準研磨液の研磨速度が2.5μmなのだから、その1/5程度ということである。0.5μm/分というのでは使いものにならない。これは全く研磨液として不適当である。
【0044】
この結果から硫酸ナトリウムには研磨の作用はないのだということがわかる。硫酸ナトリウムは従来例▲2▼、▲3▼、▲4▼などで必須のものとして提案されたものであるが、それにも拘らず硫酸ナトリウムには研磨の作用がない。これもコロイダルシリカを含む研磨液なのだからコロイダルシリカによる物理的な研磨作用ぐらいはあるように予想される。しかし0.5μm/分という研磨速度はコロイダルシリカがあっても、それだけではInPウエハを削ることはできないのだということを強く示唆する。これは研磨に必須のものが、イソシアヌール酸C、塩化カリウムEのいずれかに違いないということをも暗示する。
【0045】
[研磨液4(コロイダルシリカ+塩化カリウム)]
これは4%のコロイダルシリカ500mlと、14.4gの塩化カリウムを含む研磨液である。つまり標準研磨液の4成分のうち2成分だけを含むものである。研磨液4によって4回、InPウエハの研磨実験を行った。それぞれの回における研磨速度の平均値は0μm/分、0μm/分、0.2μm/分、0.2μm/分であった。4回の平均速度が0.1μm/分である。標準研磨液9の研磨速度が2.5μmなのだから、その1/25程度ということである。0μm/分というのは全く削れなかったということである。それは全く研磨液として不適当である。この結果から塩化カリウムには研磨の作用はないのだということがわかる。
【0046】
塩化カリウムは塩素を含むのであるがアルカリ金属との化合物になった塩素は極めて安定で反応性に乏しい。それだけではない。コロイダルシリカを含む研磨液なのだからコロイダルシリカによる物理的な研磨作用ぐらいはあるように予想される。しかし0μm/分という研磨速度はコロイダルシリカがあっても、それだけではInPウエハを削ることはできないのだということを強く示唆する。しかも研磨に必須のものが、ジクロロイソシアヌール酸C、硫酸ナトリウムDのいずれかに違いないということをも暗示する。
【0047】
[研磨液5(コロイダルシリカ+硫酸ナトリウム+塩化カリウム)]
これは4%のコロイダルシリカ500mlと、24gの硫酸ナトリウム、14.4gの塩化カリウムを含む研磨液である。つまり標準研磨液の4成分のうち3成分だけを含むものである。研磨液5によって4回、InPウエハの研磨実験を行った。それぞれの回における研磨速度の平均値は0.2μm/分、0.2μm/分、0.2μm/分、0μm/分であった。4回の平均速度が0.15μm/分である。標準研磨液9の研磨速度が2.5μmなのだから、その1/16程度ということである。4回目の実験の0μm/分というのは全く削れなかったということである。それは研磨液として不適当である。
【0048】
この結果は重要である。標準研磨液の4要素の内3要素を含むのであるから、これは標準液に近い良好な結果をもたらすことが予想される。しかし結果はとてもそうではなかった。コロイダルシリカを含む研磨液なのだからコロイダルシリカによる物理的な研磨作用ぐらいはあるように予想される。しかし0.15μm/分という研磨速度はコロイダルシリカがあっても、それだけではInPウエハを削ることはできないのだということを重ねて示唆する。Si研磨で頻用されているコロイダルシリカをInPに使うとスクラッチが出たり割れたりするからいけないのだと思われてきたがそれだけでなくて、ある場合には研磨できないという理由もあるということが分かる。
【0049】
研磨液5に欠けているものはジクロロイソシアヌール酸だけなのだから、これが研磨液成分として不可欠のものだということがこれで明らかになる。ジクロロイソシアヌール酸は塩素を含み、この塩素は本体から離れ易くて活性が高いので化学的作用が強く、それがウエハ表面を削る作用があるのであろう。それはそうであるが、これだけではコロイダルシリカとジクロロイソシアヌール酸の関係がよくわからない。
【0050】
[研磨液6(コロイダルシリカ+ジクロロイソシアヌール酸+硫酸ナトリウム)]
これは4%のコロイダルシリカ500mlと、43.2gのジクロロイソシアヌール酸、24gの硫酸ナトリウムを含む研磨液である。つまり標準研磨液の4成分のうち塩化カリウム以外の3成分を含むものである。研磨液6によってInPウエハの研磨実験を4回行った。それぞれの回における研磨速度の平均値は2μm/分、2μm/分、2μm/分、2.2μm/分であった。4回の平均速度が2.05μm/分である。標準研磨液9の研磨速度が2.5μmなのだから、それとほぼ同等だということである。
【0051】
もう少し条件を最適化すれば4成分を含む標準研磨液9と比肩することができる性能を発揮できよう。それは研磨液として研磨液6が利用可能だということを示唆する。つまり、この結果は塩化カリウムは必須の成分でないということである。塩化カリウムの塩素はハロゲンであるがカリウムと化合物を形成しているので不活性になっているのである。この塩素にはハロゲンとしての活性はなくて研磨には殆ど寄与しないものと思われる。それは研磨液2の実験結果とも整合するものであるといえよう。そうなると残る問題は硫酸ナトリウムは何をしているのか?ということである。
【0052】
[研磨液7(コロイダルシリカ+ジクロロイソシアヌール酸+塩化カリウム)]これは4%のコロイダルシリカ500mlと、43.2gのジクロロイソシアヌール酸、14.4gの塩化カリウムを含む研磨液である。つまり標準研磨液の4成分のうち硫酸ナトリウム以外の3成分を含むものである。研磨液7によってInPウエハの研磨実験を4回行った。それぞれの回における研磨速度の平均値は2.4μm/分、2.4μm/分、2.4μm/分、2.4μm/分であった。4回の平均速度が2.4μm/分である。標準研磨液の研磨速度が2.5μmなのだから、それと同等だということである。もう少し条件を最適化すれば4成分を含む標準研磨液9と研磨速度を同じにすることができよう。
【0053】
それは研磨液として研磨液7が利用可能だということを示唆する。つまり、この結果は硫酸ナトリウムは必須の成分でないということである。硫酸ナトリウムは従来例▲2▼、▲3▼、▲4▼には必須のものとして出ているが、それは他の成分が違う(コロイダルシリカを含まない)からであろう。コロイダルシリカを有する研磨液においては硫酸ナトリウムは必須でないということを意味している。研磨液5、研磨液6、研磨液7によって硫酸ナトリウム、塩化カリウムが必須でないということが分かる。それではジクロロイソシアヌール酸はどうだろうか?それが最後の問題である。
【0054】
[研磨液8(ジクロロイソシアヌール酸だけ)]
これは43.2gのジクロロイソシアヌール酸だけ含む研磨液である。コロイダルシリカを含まない研磨液である。これまでの実験から硫酸ナトリウムや塩化カリウムが必須不可欠のものでないということが分かったが、ジクロロイソシアヌール酸はどうだろうか?ということである。研磨液2はコロイダルシリカとジクロロイソシアヌール酸を含むものであり、それは充分な研磨能力があることが確かめられている。そうするとジクロロイソシアヌール酸単独での能力はどうかということである。
【0055】
研磨液8によってInPウエハの研磨実験を4回行った。それぞれの回における研磨速度の平均値は0.2μm/分、0.2μm/分、0.2μm/分、0.2μm/分であった。4回の平均速度が0.2μm/分である。標準研磨液9の研磨速度が2.5μmなのだから、とても及ばない。それはジクロロイソシアヌール酸に含まれる塩素が化学反応によって研磨する作用がわずかだということを意味する。塩素が解離しても、それだけでは強い化学反応性を発揮できずコロイダルシリカの物理的な力も必要だということを意味している。研磨液2、研磨液6、研磨液7と比較してみれば、ジクロロイソシアヌール酸とコロイダルシリカが共通して存在するということが研磨液にとって必須の条件だということが明白になる。それは重要な結果である。研磨液8はコロイダルシリカを含まないからInPを研磨できないのである。
【0056】
塩素化イソシアヌール酸を用いるというのが従来例▲2▼、▲3▼、▲4▼の主張であるが、本発明は塩素化しないイソシアヌール酸を用いる。その代わりに物理作用をもつコロイダルシリカを本発明は採用する。コロイダルシリカの物理作用によってスクラッチや割れが出てはいけないから、それを緩和する作用がイソシアヌール酸にあるようである。単にコロイダルシリカの作用を矯めるということだけでなくてジクロロイソシアヌール酸にも研磨作用があるということは研磨液1の結果からわかる。イソシアヌール酸に付属する塩素が活性であって、これが化学作用でInPを削るのであろう。これらの実験の組み合わせから、InPの研磨において必須のものがコロイダルシリカとイソシアヌール酸だということが分かる。
【0057】
硫酸ナトリウムは塩素化イソシアヌール酸を用いるときは必須であると従来例▲2▼、▲3▼、▲4▼が主張しているが、本発明者のようにコロイダルシリカを用いるときは硫酸ナトリウムは省くことができる。
【0058】
また、塩化カリウムの塩素はハロゲンであるが、それには活性がないようである。カリウムと化合物を形成しているので不活性になっているのである。この塩素にはハロゲンとしての活性はなくて研磨には殆ど寄与しない。
【0059】
そのようなことがハッキリしてきた。だから本発明は、InPの研磨液としてコロイダルシリカ+イソシアヌール酸の組み合わせを提案する。
【0060】
純水に対する割合は、コロイダルシリカ液が5%〜20%であり、コロイダルシリカ重量を1として、塩素化イソシアヌール酸の重量比は0.5〜1.5である。コロイダルシリカのpHは7〜14であり特に8〜11が望ましい。
硫酸ナトリウム、塩化カリウムの含まれる量は5%の時よりも1%にした時の方が、研磨レートが1.5倍になることが分かっている。よって、塩化カリウムと硫酸ナトリウムは入っていても1%以下にしておかなくてはならない。
【0061】
【発明の効果】
本発明は臭素を使うことなくInPウエハを研磨することができる。臭素による装置や治具の不測の腐食や事故を防ぐことができる。本発明はInPをコロイダルシリカによって物理作用で研磨するようにしている。コロイダルシリカといってもInPに適するものと適さないものがある。粒子表面の突起の高さhの最大値hmaxが5nm以上のものを選ぶのが必須だということを見出している。
【0062】
さらに本発明は、従来4種類の薬剤を使っていたものを、2種類の薬剤だけで研磨できることを主張する。コロイダルシリカと塩素化イソシアヌール酸だけで足りる。つまり硫酸ナトリウムと塩化カリウムを省くことができる。薬剤の数が少なくなるので研磨に要するコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】InPウエハの研磨装置の概略断面図。
【図2】比較例にかかるコロイダルシリカの5万倍の顕微鏡写真。
【図3】比較例にかかるコロイダルシリカの20万倍の顕微鏡写真。
【図4】実施例にかかるコロイダルシリカの5万倍の顕微鏡写真。
【図5】実施例にかかるコロイダルシリカの20万倍の顕微鏡写真。
【図6】コロイダルシリカ粒子表面の凹凸の突起の高さの定義を示すための図。局所平均球面からの凹凸の高さとして突起高さを定義する。
【符号の説明】
2 研磨プレート
3 ワックス
4 InPウエハ
5 研磨液
6 研磨布
7 研磨定盤
8 回転軸
9 研磨液供給管
20 研磨ヘッド
22 シャフト
Claims (4)
- 粒径が10nm〜300nmであって5nm以上の高さの突起を持つコロイダルシリカと、塩素化イソシアヌール酸を含み、1.0重量%以下の硫酸ナトリウムと1.0重量%以下の塩化カリウムを含むことを特徴とするInPウエハの研磨液。
- 粒径が10nm〜300nmであって5nm以上の高さの突起を持つコロイダルシリカと、塩素化イソシアヌール酸を含み、硫酸ナトリウム、塩化カリウムを含まないことを特徴とするInPウエハの研磨液。
- 粒径が10nm〜300nmであって5nm以上の高さの突起を持つコロイダルシリカと、塩素化イソシアヌール酸を含み、1.0重量%以下の硫酸ナトリウムと1.0重量%以下の塩化カリウムを含む研磨液を用いてInPウエハを一次研磨することを特徴とするInPウエハの研磨方法。
- 粒径が10nm〜300nmであって5nm以上の高さの突起を持つコロイダルシリカと、塩素化イソシアヌール酸を含み、硫酸ナトリウム、塩化カリウムを含まない研磨液を用いてInPウエハを一次研磨するInPウエハの研磨方法。
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