JP2004207131A - 画像形成装置の製造方法 - Google Patents
画像形成装置の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004207131A JP2004207131A JP2002377087A JP2002377087A JP2004207131A JP 2004207131 A JP2004207131 A JP 2004207131A JP 2002377087 A JP2002377087 A JP 2002377087A JP 2002377087 A JP2002377087 A JP 2002377087A JP 2004207131 A JP2004207131 A JP 2004207131A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- electron
- wiring
- image forming
- electrode
- substrate
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Withdrawn
Links
Images
Landscapes
- Cold Cathode And The Manufacture (AREA)
Abstract
【課題】配線金属が導電性薄膜と接触することなく、結果的に配線金属の導電性薄膜への拡散による電子放出素子の電子放出特性の劣化や変動を防止した、高性能な電子源基板を提供する。
【解決手段】基板上に、一対の素子電極と電子放出部を有する導電性薄膜からなる電子放出素子と、該素子電極に接続された金属配線と、を有する電子源基板であって、前記素子電極は、表面にルテニウムの酸化物を具備する。
【選択図】 図1
【解決手段】基板上に、一対の素子電極と電子放出部を有する導電性薄膜からなる電子放出素子と、該素子電極に接続された金属配線と、を有する電子源基板であって、前記素子電極は、表面にルテニウムの酸化物を具備する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ルテニウム電極とこれにつながる金属配線を用いた画像形成装置、特に、ルテニウム電極を用いた電子放出素子を応用した画像形成装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子放出素子としては熱電子源と冷陰極電子源の2種類が知られている。冷陰極電子源には電界放出型素子(以下FE型素子と略す)、金属/絶縁層/金属型素子(以下MIM素子と略す)、表面伝導型電子放出素子(以下SCE素子と略す)等がある。
【0003】
発明者らは上記電子放出素子を多数配列した電子源の応用として、平板型画像表示装置についての研究を行ってきた。複数の電子放出素子を配線でつないだ電子源において、配線に要求される性能は、低抵抗であること、安価であること等様様有り、これらの理由から、銀配線を用いることがあり、これについては、例えば、特許文献1に開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−243229号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、銀をはじめとする様様な金属配線と、これと異なる組成をからなる電極を用いた電子放出素子とを接続すると、製造工程中の熱処理や、駆動中の発熱等によって、配線金属が電子放出素子の電極に拡散し、電子放出素子の特性が変化するという問題が発生する場合があり、我々は、鋭意検討の結果、ルテニウムを主成分として有する素子電極を用いることを検討している。しかし、ルテニウム主成分として有する電極を用いた場合、銀の拡散防止効果が期待できるものの、電極の抵抗値が経時的に変化するという新たな問題点があることを我々は見出した。本発明は、この点に鑑み、電子放出素子の電極に限らず、熱処理を有する画像形成装置の製造方法において、抵抗値の経時的変化の少ない、ルテニウム主成分として有する電極を提供しえる新規な製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ルテニウムを主成分として有する電極と、該電極に接続された金属配線とを有する画像形成装置の製造方法であって、
ルテニウムを主成分として有する電極パターンを形成する工程と、
電極パターンを窒素雰囲気中で焼成する工程と、
焼成された電極パターンを用いて、画像形成装置を仕上げる工程とを有し、
前記焼成工程の温度が、前記仕上げる工程の温度よりも高いことを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
以下、図面を参照しながら本実施例を説明する。
【0008】
図1は、本発明の電子源基板の一例を示す概略構成図(平面図)で、電子源基板の一部のみを示している。また、図2は、図1に示した電子源基板の一つの電子放出素子を拡大した鳥瞰図であり、図3は図2のA−A'断面図である。図1、図2において、1は基体、2,3は素子電極、4は導電性薄膜、5は電子放出部、6,7はそれぞれ素子電極2,3に接続された配線、8は配線6と配線7を電気的に絶縁するための層間絶縁層、9はナトリウム拡散防止層である。なお、配線6,7はそれぞれ、図1中の座標に照らして、Y方向配線、X方向配線と呼び、また層間絶縁層8との位置関係により、それぞれ下配線、上配線と呼ぶ。
【0009】
基体1は、一般に青板ガラスと呼ばれるソーダライムガラスが安価であるため好ましく用いられるが、ソーダライムガラス中に含有されるナトリウムを一部カリウムに置換して歪み点を上昇させた、高歪み点ガラスを用いることができる。いずれの場合も、本発明で用いられるガラス基体はナトリウムを含有するため、大量生産可能なフロート法を用いて基体を形成することができ、例えば、対角1m以上の大面積の基体も安価に作製することができるものである。なお、本発明の電子源基板及びそれを用いた画像形成装置は、その製造過程で何度かの熱処理工程を行なう。この時の熱処理温度の設定、及びその熱処理温度における基板の歪みの許容値に応じて上記基体の材料を選択すればよい。
【0010】
ナトリウム拡散防止層9は、基体1から電子放出素子へのナトリウムの拡散を防止する役割と、電子放出素子に電流が流れるときの発熱を基体1に伝え難くする役割をもった被膜層である。上記の役割を満足するために、ナトリウム拡散防止層9として、シリカを主成分とした被膜層を好ましく用いることができる。
【0011】
以下、本発明の実施例を電子源基板の作成工程にしたがって説明する。
【0012】
<工程−a>(図4(a))
本実施例では、清浄化した青板ガラス基体1上に、ナトリウム拡散防止層9として厚さ1.0μmのSiO2膜をスパッタ法で形成する。なおナトリウム拡散防止層9の形成法は、スパッタ法に限るものではなく、他の真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、CVD法等、有機金属系塗布材によって形成される場合もある。
【0013】
<工程−b>(図4(b))
素子電極材料としてスパッタ法で形成してルテニウム薄膜を用いている。
基板1上に、スパッタ法により厚さ5nmの金属チタン、続いて50nmの金属ルテニウムを堆積する。その後、通常のフォトリソグラフィーにより素子電極2,3の電極パターンレジスト像を形成した後、ドライエッチング処理によって素子電極2,3のパターン以外のルテニウム、チタニウム積層膜を除去する。その後、有機溶剤等でフォトレジストを除去し素子電極2,3を形成する。尚、上記チタニウムは密着層としての目的だけなので省略しても構わない。
【0014】
<工程−c>
素子電極2,3を形成した基板を窒素雰囲気中にて500℃、2時間の焼成をオーブンを用いて行った。このとき500℃までの昇温レートを5℃/minの徐加熱で実施した。焼成温度は、後工程の熱処理最高温度以上であれば500℃に限る必要はなく、昇温レートも5℃/minに限ることないが、より小さいほうが望ましい。
【0015】
対向する素子電極2,3は、以後の熱処理工程を経ても安定した導電性を有するものが好ましい。従って、工程−cでの焼成条件は後工程の熱処理において、素子電極2,3の抵抗値、表面構造、ルテニウム/酸化ルテニウム比などの変化を最小限に抑える目的で決定される。
【0016】
<工程−d>(図4(c))
次にスクリーン印刷により、配線6のパターンをAgペーストを用いて形成し、乾燥後、500℃で焼成し、Agからなる20μm〜50μmとなるような所望の形状の配線6を形成する。
【0017】
配線6としては、熱処理工程を経ても安定した導電性を有する金属が好ましいが、特に、大面積の基板を安価に形成できる印刷法が適用できるものが望ましい。金属ぺーストをスクリーン印刷によってパターン形成し、熱処理して得られる金属膜は、数ミクロン以上の厚膜で低抵抗配線を大面積に形成するのに適しているため、印刷可能な金属ペーストが比較的安価に得られる、Ag、Cu、Auのぺースト、すなわち、それを熱処理して得られるAg、Cu、Auが好ましく用いられる。尚、本工程を含め、以降の工程を総称して、画像形成装置を仕上げる工程とする。本発明は、上記工程c(電極の窒素雰囲気での焼成)が、上述のとおり、それ以降の工程(画像形成装置の仕上げ工程)の熱処理温度以上温度でなされることを特徴とする。
【0018】
<工程−e>(図4(d))
下配線6上の所望の位置、すなわち、以後の工程で形成する上配線7と交差する位置に層間絶縁層8のパターンを、スクリーン印刷により、ガラスペーストを用いて形成し、乾燥後、500℃で焼成する。十分な絶縁性を得るために、再度、ガラスペーストを印刷、乾燥、焼成を繰り返して、ガラスからなる所望の形状の層間絶縁層8を形成する。なお、層間絶縁層8に十分な絶縁性を付与するために膜厚を厚くしたい場合は、上記印刷、焼成を所望の回数繰り返すこともできる。
【0019】
<工程−f>(図4(e))
上配線7のパターンを、スクリーン印刷により、Agペーストを用いて形成し、乾燥後、450℃で焼成し、Agからなる所望の形状の上配線7を形成する。配線7の材料としても、配線6と同様にAg、Cu、Auのぺースト、すなわち、それを熱処理して得られるAg、Cu、Auが好ましく用いられる。
【0020】
<工程−g>(図4(f))
導電性薄膜4を素子電極2,3のギャップ間にまたがるように有機パラジウム溶液をインクジェット法により所望の位置に塗布し、導電性薄膜4を形成する。本実施例では、素子膜としてパラジウム膜を得る目的で、先ず水85:イソプロピルアルコール(IPA)15からなる水溶液に、パラジウム−プロリン錯体0.15重量%を溶解し、有機パラジウム含有溶液を得た。この他若干の添加剤を加えた。この溶液の液滴を、液滴付与手段として、インクジェット噴射装置を用い、ドット径が60〜80μmとなるように調整して電極間に付与した。その後350℃で10分間の加熱焼成処理をする。こうして得られた導電性薄膜4はPdOが主成分となり、膜厚は約10nmであった。ここでは、インクジェット法により説明したが、これに限るものでなく、有機金属溶液の塗布法、真空蒸着法、スパッタ法、CVD法、分散塗布法、ディッピング法、スピンナー法等によって形成される場合もある。
【0021】
以上の工程により、基体1上にナトリウム拡散防止層9、下配線6、層間絶縁層8、上配線7、素子電極2,3、導電性薄膜4を形成し、電子源基板を作製した。
【0022】
図1に示した構成、すなわちマトリクス配置の構成において、X方向配線7には、X方向に配列した電子放出素子5の行を選択するための走査信号を印加する不図示の走査信号印加手段が接続され、Y方向配線6には、Y方向に配列した電子放出素子の各列を入力信号に応じて、変調するための不図示の変調信号発生手段が接続される。各電子放出素子に印加される駆動電圧は、当該素子に印加される走査信号と変調信号の差電圧として供給され、電子放出素子の非線形特性を利用することで単純なマトリクス配線を用いて、個別の素子を選択し、独立に駆動可能とすることができる。
【0023】
以上のようにして作製した電子源基板にフォーミングと呼ぶ通電処理工程、活性化と呼ぶ炭素あるいは炭素化合物を堆積させる工程、安定化工程を行うことによって良好な電子放出素子を形成することができる。
【0024】
フォーミングと呼ばれる通電処理は、素子電極2,3間、すなわち配線6,7間に電圧を不図示の電源によりパルス状電圧あるいは、昇電圧の印加により行い、導電性薄膜4の部位に構造の変化した電子放出部5を形成する。この通電処理により導電性薄膜4を局所的に破壊、変形もしくは変質せしめて亀裂構造の形成された部位を電子放出部5と呼ぶ。
【0025】
具体的な方法は、上記基板の周囲の取り出し電極部を残して、基板全体を覆うようにフード状の蓋をかぶせて基板との間で内部に真空空間を作り、外部電源より電極端子部からXY配線間に電圧を印加し、素子電極間に通電する事によって、導電性薄膜を局所的に破壊、変形もしくは変質させることにより、電気的に高抵抗な状態の電子放出部を形成する。
【0026】
この時若干の水素ガスを含む真空雰囲気下で通電加熱すると、水素によって還元が促進され酸化パラジウムPdOがパラジウムPd膜に変化する。この変化時に膜の還元収縮によって、一部に亀裂が生じるが、この亀裂発生位置、及びその形状は元の膜の均一性に大きく影響される。多数の素子の特性ばらつきを抑えるのに、上記亀裂は中央部に起こり、かつなるべく直線状になることがなによりも望ましい。
【0027】
尚、このフォーミングにより形成した亀裂付近からも、所定の電圧下では電子放出が起こるが、現状の条件ではまだ発生効率が非常に低いものである。また得られた導電性薄膜4の抵抗値Rsは、102から107Ωの値である。
【0028】
フォーミング処理は、パルス波高値が定電圧のパルスを印加する場合とパルス波高値を増加させながら、電圧パルスを印加する場合とがある。まず、パルス波高値が定電圧のパルスを印加する場合の電圧波形を図5(a)に示す。図5(a)中、T1及びT2は電圧波形のパルス幅とパルス間隔であり、T1を1μsec〜10msec、T2を10μsec〜100msecとし、三角波の波高値(フォーミング時のピーク電圧)は適宜選択する。
【0029】
次に、パルス波高値を増加させながら、電圧パルスを印加する場合の電圧波形を、図5(b)に示す。図5(b)中、T1及びT2は電圧波形のパルス幅とパルス間隔であり、T1を1μsec〜10msec、T2を10μsec〜100msecとし、三角波の波高値(フォーミング時のビーク電圧)は、例えば0.1Vステップ程度づつ、増加させる。なお、フォーミング処理は、フォーミング用パルスの間に、導電性薄膜4を局所的に破壊、変形しない程度の電圧例えば0.1V程度のパルス電圧を挿入して素子電流を測定し、その電流が所定の値以下に減少したところで終了する。
【0030】
次に、フォーミングが終了した素子に活性化処理を施す。先に述べたように、この状態では電子発生効率は非常に低いものである。よって電子放出効率を上げるために、上記素子に活性化と呼ばれる処理を行なうことが望ましい。
【0031】
活性化処理の工程は、上記フォーミング処理同様、フード状の蓋をかぶせて形成した有機物質を含有する減圧雰囲気下において、外部からXY配線を通じてパルス電圧を素子電極に繰り返し印加することによって行う。この減圧雰囲気は、電子源基板を真空容器内に配し、カーボンを含む適当な有機物質を導入することによって得られる。なお、後述する画像形成装置のように、電子源基板を用いて真空外囲器を形成する場合は、その真空外囲器内に有機物質を導入することで活性化処理を行なうことができる。
【0032】
本工程では有機物質としてトリニトリルを用い、スローリークバルブを通して真空空間内に導入し、1.3×10−4Paを維持した。導入するトリニトリルの圧力は、真空装置の形状や真空装置に使用している部材等によって若干影響されるが、1×10−5Pa〜1×10−2Pa程度が好適である。
【0033】
この処理により、雰囲気中に存在する有機物質から、炭素あるいは炭素化合物が素子上に堆積し、素子電流If、放出電流Ieが、著しく変化するようになる。活性化工程の終了判定は、素子電流Ifおよび/または放出電流Ieを測定しながら、適宜行なう。なおパルス幅、パルス間隔、パルス波高値などは適宜設定される。
【0034】
炭素及び炭素化合物とは、例えばグラファイト(いわいるHOPG、PG、GCを包含する;HOPGはほぼ完全なグラファイトの結晶構造、PGは結晶粒が20nm程度で結晶構造がやや乱れたもの、GCは結晶粒が2nm程度になり結晶構造の乱れがさらに大きくなったものを指す。)、非晶質カーボン(アモルファスカーボン及びアモルファスカーボンと前記グラファイトの微結晶の混合物を指す)である。以上のようにして、図4(g)に示す表面伝導型放出素子を作成した。
【0035】
こうして作製した電子源基板に、好ましくは、安定化工程を行う。この工程は、活性化処理時に導入した有機物質の残留物を排気する工程である。真空容器内の圧力は、1.3〜4.0×10−5Pa以下が好ましく、更に1.3×10−6Pa以下が特に好ましい。真空容器を排気する真空排気装置は、装置から発生するオイルが素子の特性に影響を与えないように、オイルを使用しないものを用いるのが好ましい。
【0036】
具体的には、ソープションポンプ、イオンポンプ等の真空排気装置を挙げることができる。さらに、真空容器内を排気するときには、真空容器全体を加熱して、真空容器内壁や、電子源基板に吸着した有機物質分子を排気しやすくするのが好ましい。このときの加熱条件は、80〜300℃、好ましくは150℃以上でできるだけ長時間行なうのが望ましいが、特にこの条件に限るものではなく、真空容器の大きさや形状、電子源基板の構成などの諸条件により適宜選ばれる条件により行う。
【0037】
安定化工程を行った後の、駆動時の雰囲気は、上記安定化処理終了後の雰囲気を維持するのが好ましいが、これに限るものではなく、有機物質が十分除去されていれば、圧力自体は多少上昇しても十分安定な特性を維持することができる。
【0038】
このような真空雰囲気を採用することにより、新たな炭素あるいは炭素化合物の堆積を抑制でき、結果として素子電流If、放出電流Ieが安定する。
【0039】
以上が、本発明における電子源基板の製造工程であるが、該電子源基板を用いて画像形成装置を構成した例を、図6と図7を用いて以下に説明する。図6は、画像形成装置の画像形成部材による基本構成図であり、図7は蛍光膜である。
【0040】
図6において、61は電子放出素子を複数配した電子源基板、62は電子源基板61を固定したリアプレート、67はガラス基板64の内面に蛍光膜65とメタルバック66等が形成されたフェースプレートである。63は支持枠であり、該支持枠63には、リアプレート62、フェースプレート67がフリットガラス等を用いて接続されている。69は外囲器であり、例えば大気中あるいは窒素中で、300〜500℃弱の温度範囲で10分間以上焼成することで、封着して構成される。
【0041】
本実施例においては、作製した電子源基板61をリアプレート62上に固定した後、電子源基板61の2〜8mm上方に、フェースプレート67(ガラス基板64の内面に蛍光膜65とメタルバック66が形成されて構成される)を、支持枠63を介して配置し、フェースプレート67、支持枠63、リアプレート62の接合部にフリットガラスを塗布し、大気中で400℃で10分焼成することで行った。またリアプレート62への電子源基板61の固定もフリットガラスで行った。
【0042】
図7は、蛍光膜である。蛍光膜は、モノクロームの場合は蛍光体のみから成るが、カラーの蛍光膜の場合は、蛍光体の配列によりブラックストライプあるいはブラックマトリクスなどと呼ばれる黒色導電材71と蛍光体72とで構成される。
【0043】
本発明の画像形成装置において、各電子放出素子に容器外端子Dx1ないしDxm,Dy1ないしDynを通じ、走査信号及び変調信号を不図示の信号発生手段よりそれぞれ印加することにより、電子放出させ、高圧端子Hvを通じ、メタルバック66、あるいは透明電極(不図示)に1kVの高圧を印加し、電子ビームを加速し、蛍光膜65に衝突させ、画像を表示する。
【0044】
なお、以上述べた構成は、表示等に用いられる好適な画像形成装置を作製する上で必要な概略構成であり、例えば各部材の材料等、詳細な部分は上述内容に限られるものではなく、画像形成装置の用途に適するよう適宜選択する。
【0045】
また、本発明の画像形成装置は、テレビジョン放送の表示装置、テレビ会議システムやコンピューター等の表示装置の他、感光性ドラム等を用いて構成された光プリンターとしての画像形成装置等としても用いることができ、本実施例における画像形成装置は、テレビジョンとして十分満足できる輝度(約150fL)で良好な画像を長時間にわたって安定に表示することができた。
【0046】
ここで、図2中のA−A'の線に沿って、エレクトロンプローブマイクロアナリシス(EPMA)の手法により、Ag元素の分布を計測した結果の例を、図8に示す。尚、図8は、計測値と素子の構成部材との関係を表すため、グラフの上に、図2のA−A'断面の簡略図を合わせて(ただし導電性薄膜は省略)示す。また、比較のため、素子電極2,3をPtで、配線6,7をAgで形成した場合の、同様のAg元素の分布を計測した結果の例を、図9に示す。図8、図9から分かるように、ルテニウムを電極として使用することで、配線6,7からのAgの素子電極2,3への拡散が抑えられていることがわかる。
【0047】
また、素子電極表面を走査型電子顕微鏡で観察すると、均一な表面構造が工程dからfで維持されていることが観察でき、抵抗値の変化もほとんど見られなかった。また、比較例として工程cを賭さなかった場合の電極は、工程cを施した電極に比較して、抵抗値の変動が確認され、安定な抵抗値が得られなかった。本発明の製造方法により、表面構造、ルテニウム/酸化ルテニウム比などの変化を最小限に抑えることが可能である。
【0048】
(実施例2)
本実施例にかかわる基本的な電子源基板の構成は実施例1と同様である。作成工程のうち以下の工程を下記のとおり変更して行った。
【0049】
以下、本発明の実施例を電子源基板の作成工程にしたがって説明する。
【0050】
<工程−a>
本実施例では、清浄化した青板ガラス基体1上に、ナトリウム拡散防止層9として厚さ0.5μmのSiO2膜をCVD法で形成する。
【0051】
<工程−b>
素子電極材料として真空蒸着法で形成したルテニウム薄膜を用いている。
基体1上に、真空蒸着法により50nmの金属ルテニウムを堆積する。その後、通常のフォトリソグラフィーにより素子電極2,3の電極パターンレジスト像を形成した後、ウェットエッチング処理によって素子電極2,3のパターン以外のルテニウム膜を除去する。その後、有機溶剤等でフォトレジストを除去し素子電極2,3を形成する。尚、ルテニウム膜のウェットエッチング処理液としては硝酸セリウム・アンモニウムを用いることができる。
【0052】
<工程−c>
素子電極2,3を形成した基板を窒素雰囲気中にて550℃、1時間の焼成を行った。このときの窒素濃度は95%以上で実施した。焼成温度は、後工程の熱処理最高温度以上であれば550℃に限る必要はない。このときの昇温レートは、10℃/minとした。焼成温度は、後工程の熱処理最高温度以上であれば550℃に限る必要はない。
【0053】
電子源基板作成工程<工程−e>〜<工程−g>、フォーミング工程、活性化工程、安定化工程および画像形成装置作成工程は実施例1と同様なので省略する。
【0054】
ここで、図2中のA−A’の線に沿って、エレクトロンプローブマイクロアナリシス(EPMA)の手法により、Ag元素の分布を計測したところ、図8と同様の結果を得、窒素雰囲気中で高温処理したルテニウムを電極に使うことにより、配線6,7からのAgの素子電極2,3への拡散が抑えられ、また抵抗値変化の抑制された素子電極を提供しえることが確認できた。
【0055】
以後、実施例1と同様に、本実施例の電子源基板を用いて画像形成装置を構成したところ、本実施例における画像形成装置においても、テレビジョンとして十分満足できる輝度(約150fL)で良好な画像を長時間にわたって安定に表示することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子源基板の一例を示す平面図である。
【図2】本発明の電子源基板の電子放出素子近傍の鳥瞰図である。
【図3】図2におけるA−A’断面図である。
【図4】本発明に係る電子源基板の基本的な製造方法を説明するための図である。
【図5】本発明に係るフォーミング処理における電圧波形の一例を示す図である。
【図6】本発明に係る画像形成装置の基本構成を示す図である。
【図7】図7の画像形成装置に用いられる蛍光膜を示す図である。
【図8】ルテニウム電極によるAg拡散防止効果を説明する図である。
【図9】ルテニウム電極によるAg拡散防止効果を説明する比較図である。
【図10】従来の電子源基板の構成を示す平面図である。
【図11】従来の電子源基板の構成を示す鳥瞰図である。
【符号の説明】
1 基体
2,3 素子電極
4 導電性薄膜
5 電子放出部
6 配線(下配線、Y方向配線)
7 配線(上配線、X方向配線)
8 層間絶縁層
9 被覆膜(ナトリウム拡散防止膜)
61 電子源基板
62 リアプレート
63 支持枠
64 ガラス基板(フェースプレート基板)
65 蛍光膜
66 メタルバック
67 フェースプレート
68 高圧端子
69 外囲器
71 黒色導電体
72 蛍光体
101 表面伝導型電子放出素子
【発明の属する技術分野】
本発明は、ルテニウム電極とこれにつながる金属配線を用いた画像形成装置、特に、ルテニウム電極を用いた電子放出素子を応用した画像形成装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子放出素子としては熱電子源と冷陰極電子源の2種類が知られている。冷陰極電子源には電界放出型素子(以下FE型素子と略す)、金属/絶縁層/金属型素子(以下MIM素子と略す)、表面伝導型電子放出素子(以下SCE素子と略す)等がある。
【0003】
発明者らは上記電子放出素子を多数配列した電子源の応用として、平板型画像表示装置についての研究を行ってきた。複数の電子放出素子を配線でつないだ電子源において、配線に要求される性能は、低抵抗であること、安価であること等様様有り、これらの理由から、銀配線を用いることがあり、これについては、例えば、特許文献1に開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−243229号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、銀をはじめとする様様な金属配線と、これと異なる組成をからなる電極を用いた電子放出素子とを接続すると、製造工程中の熱処理や、駆動中の発熱等によって、配線金属が電子放出素子の電極に拡散し、電子放出素子の特性が変化するという問題が発生する場合があり、我々は、鋭意検討の結果、ルテニウムを主成分として有する素子電極を用いることを検討している。しかし、ルテニウム主成分として有する電極を用いた場合、銀の拡散防止効果が期待できるものの、電極の抵抗値が経時的に変化するという新たな問題点があることを我々は見出した。本発明は、この点に鑑み、電子放出素子の電極に限らず、熱処理を有する画像形成装置の製造方法において、抵抗値の経時的変化の少ない、ルテニウム主成分として有する電極を提供しえる新規な製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ルテニウムを主成分として有する電極と、該電極に接続された金属配線とを有する画像形成装置の製造方法であって、
ルテニウムを主成分として有する電極パターンを形成する工程と、
電極パターンを窒素雰囲気中で焼成する工程と、
焼成された電極パターンを用いて、画像形成装置を仕上げる工程とを有し、
前記焼成工程の温度が、前記仕上げる工程の温度よりも高いことを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
以下、図面を参照しながら本実施例を説明する。
【0008】
図1は、本発明の電子源基板の一例を示す概略構成図(平面図)で、電子源基板の一部のみを示している。また、図2は、図1に示した電子源基板の一つの電子放出素子を拡大した鳥瞰図であり、図3は図2のA−A'断面図である。図1、図2において、1は基体、2,3は素子電極、4は導電性薄膜、5は電子放出部、6,7はそれぞれ素子電極2,3に接続された配線、8は配線6と配線7を電気的に絶縁するための層間絶縁層、9はナトリウム拡散防止層である。なお、配線6,7はそれぞれ、図1中の座標に照らして、Y方向配線、X方向配線と呼び、また層間絶縁層8との位置関係により、それぞれ下配線、上配線と呼ぶ。
【0009】
基体1は、一般に青板ガラスと呼ばれるソーダライムガラスが安価であるため好ましく用いられるが、ソーダライムガラス中に含有されるナトリウムを一部カリウムに置換して歪み点を上昇させた、高歪み点ガラスを用いることができる。いずれの場合も、本発明で用いられるガラス基体はナトリウムを含有するため、大量生産可能なフロート法を用いて基体を形成することができ、例えば、対角1m以上の大面積の基体も安価に作製することができるものである。なお、本発明の電子源基板及びそれを用いた画像形成装置は、その製造過程で何度かの熱処理工程を行なう。この時の熱処理温度の設定、及びその熱処理温度における基板の歪みの許容値に応じて上記基体の材料を選択すればよい。
【0010】
ナトリウム拡散防止層9は、基体1から電子放出素子へのナトリウムの拡散を防止する役割と、電子放出素子に電流が流れるときの発熱を基体1に伝え難くする役割をもった被膜層である。上記の役割を満足するために、ナトリウム拡散防止層9として、シリカを主成分とした被膜層を好ましく用いることができる。
【0011】
以下、本発明の実施例を電子源基板の作成工程にしたがって説明する。
【0012】
<工程−a>(図4(a))
本実施例では、清浄化した青板ガラス基体1上に、ナトリウム拡散防止層9として厚さ1.0μmのSiO2膜をスパッタ法で形成する。なおナトリウム拡散防止層9の形成法は、スパッタ法に限るものではなく、他の真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、CVD法等、有機金属系塗布材によって形成される場合もある。
【0013】
<工程−b>(図4(b))
素子電極材料としてスパッタ法で形成してルテニウム薄膜を用いている。
基板1上に、スパッタ法により厚さ5nmの金属チタン、続いて50nmの金属ルテニウムを堆積する。その後、通常のフォトリソグラフィーにより素子電極2,3の電極パターンレジスト像を形成した後、ドライエッチング処理によって素子電極2,3のパターン以外のルテニウム、チタニウム積層膜を除去する。その後、有機溶剤等でフォトレジストを除去し素子電極2,3を形成する。尚、上記チタニウムは密着層としての目的だけなので省略しても構わない。
【0014】
<工程−c>
素子電極2,3を形成した基板を窒素雰囲気中にて500℃、2時間の焼成をオーブンを用いて行った。このとき500℃までの昇温レートを5℃/minの徐加熱で実施した。焼成温度は、後工程の熱処理最高温度以上であれば500℃に限る必要はなく、昇温レートも5℃/minに限ることないが、より小さいほうが望ましい。
【0015】
対向する素子電極2,3は、以後の熱処理工程を経ても安定した導電性を有するものが好ましい。従って、工程−cでの焼成条件は後工程の熱処理において、素子電極2,3の抵抗値、表面構造、ルテニウム/酸化ルテニウム比などの変化を最小限に抑える目的で決定される。
【0016】
<工程−d>(図4(c))
次にスクリーン印刷により、配線6のパターンをAgペーストを用いて形成し、乾燥後、500℃で焼成し、Agからなる20μm〜50μmとなるような所望の形状の配線6を形成する。
【0017】
配線6としては、熱処理工程を経ても安定した導電性を有する金属が好ましいが、特に、大面積の基板を安価に形成できる印刷法が適用できるものが望ましい。金属ぺーストをスクリーン印刷によってパターン形成し、熱処理して得られる金属膜は、数ミクロン以上の厚膜で低抵抗配線を大面積に形成するのに適しているため、印刷可能な金属ペーストが比較的安価に得られる、Ag、Cu、Auのぺースト、すなわち、それを熱処理して得られるAg、Cu、Auが好ましく用いられる。尚、本工程を含め、以降の工程を総称して、画像形成装置を仕上げる工程とする。本発明は、上記工程c(電極の窒素雰囲気での焼成)が、上述のとおり、それ以降の工程(画像形成装置の仕上げ工程)の熱処理温度以上温度でなされることを特徴とする。
【0018】
<工程−e>(図4(d))
下配線6上の所望の位置、すなわち、以後の工程で形成する上配線7と交差する位置に層間絶縁層8のパターンを、スクリーン印刷により、ガラスペーストを用いて形成し、乾燥後、500℃で焼成する。十分な絶縁性を得るために、再度、ガラスペーストを印刷、乾燥、焼成を繰り返して、ガラスからなる所望の形状の層間絶縁層8を形成する。なお、層間絶縁層8に十分な絶縁性を付与するために膜厚を厚くしたい場合は、上記印刷、焼成を所望の回数繰り返すこともできる。
【0019】
<工程−f>(図4(e))
上配線7のパターンを、スクリーン印刷により、Agペーストを用いて形成し、乾燥後、450℃で焼成し、Agからなる所望の形状の上配線7を形成する。配線7の材料としても、配線6と同様にAg、Cu、Auのぺースト、すなわち、それを熱処理して得られるAg、Cu、Auが好ましく用いられる。
【0020】
<工程−g>(図4(f))
導電性薄膜4を素子電極2,3のギャップ間にまたがるように有機パラジウム溶液をインクジェット法により所望の位置に塗布し、導電性薄膜4を形成する。本実施例では、素子膜としてパラジウム膜を得る目的で、先ず水85:イソプロピルアルコール(IPA)15からなる水溶液に、パラジウム−プロリン錯体0.15重量%を溶解し、有機パラジウム含有溶液を得た。この他若干の添加剤を加えた。この溶液の液滴を、液滴付与手段として、インクジェット噴射装置を用い、ドット径が60〜80μmとなるように調整して電極間に付与した。その後350℃で10分間の加熱焼成処理をする。こうして得られた導電性薄膜4はPdOが主成分となり、膜厚は約10nmであった。ここでは、インクジェット法により説明したが、これに限るものでなく、有機金属溶液の塗布法、真空蒸着法、スパッタ法、CVD法、分散塗布法、ディッピング法、スピンナー法等によって形成される場合もある。
【0021】
以上の工程により、基体1上にナトリウム拡散防止層9、下配線6、層間絶縁層8、上配線7、素子電極2,3、導電性薄膜4を形成し、電子源基板を作製した。
【0022】
図1に示した構成、すなわちマトリクス配置の構成において、X方向配線7には、X方向に配列した電子放出素子5の行を選択するための走査信号を印加する不図示の走査信号印加手段が接続され、Y方向配線6には、Y方向に配列した電子放出素子の各列を入力信号に応じて、変調するための不図示の変調信号発生手段が接続される。各電子放出素子に印加される駆動電圧は、当該素子に印加される走査信号と変調信号の差電圧として供給され、電子放出素子の非線形特性を利用することで単純なマトリクス配線を用いて、個別の素子を選択し、独立に駆動可能とすることができる。
【0023】
以上のようにして作製した電子源基板にフォーミングと呼ぶ通電処理工程、活性化と呼ぶ炭素あるいは炭素化合物を堆積させる工程、安定化工程を行うことによって良好な電子放出素子を形成することができる。
【0024】
フォーミングと呼ばれる通電処理は、素子電極2,3間、すなわち配線6,7間に電圧を不図示の電源によりパルス状電圧あるいは、昇電圧の印加により行い、導電性薄膜4の部位に構造の変化した電子放出部5を形成する。この通電処理により導電性薄膜4を局所的に破壊、変形もしくは変質せしめて亀裂構造の形成された部位を電子放出部5と呼ぶ。
【0025】
具体的な方法は、上記基板の周囲の取り出し電極部を残して、基板全体を覆うようにフード状の蓋をかぶせて基板との間で内部に真空空間を作り、外部電源より電極端子部からXY配線間に電圧を印加し、素子電極間に通電する事によって、導電性薄膜を局所的に破壊、変形もしくは変質させることにより、電気的に高抵抗な状態の電子放出部を形成する。
【0026】
この時若干の水素ガスを含む真空雰囲気下で通電加熱すると、水素によって還元が促進され酸化パラジウムPdOがパラジウムPd膜に変化する。この変化時に膜の還元収縮によって、一部に亀裂が生じるが、この亀裂発生位置、及びその形状は元の膜の均一性に大きく影響される。多数の素子の特性ばらつきを抑えるのに、上記亀裂は中央部に起こり、かつなるべく直線状になることがなによりも望ましい。
【0027】
尚、このフォーミングにより形成した亀裂付近からも、所定の電圧下では電子放出が起こるが、現状の条件ではまだ発生効率が非常に低いものである。また得られた導電性薄膜4の抵抗値Rsは、102から107Ωの値である。
【0028】
フォーミング処理は、パルス波高値が定電圧のパルスを印加する場合とパルス波高値を増加させながら、電圧パルスを印加する場合とがある。まず、パルス波高値が定電圧のパルスを印加する場合の電圧波形を図5(a)に示す。図5(a)中、T1及びT2は電圧波形のパルス幅とパルス間隔であり、T1を1μsec〜10msec、T2を10μsec〜100msecとし、三角波の波高値(フォーミング時のピーク電圧)は適宜選択する。
【0029】
次に、パルス波高値を増加させながら、電圧パルスを印加する場合の電圧波形を、図5(b)に示す。図5(b)中、T1及びT2は電圧波形のパルス幅とパルス間隔であり、T1を1μsec〜10msec、T2を10μsec〜100msecとし、三角波の波高値(フォーミング時のビーク電圧)は、例えば0.1Vステップ程度づつ、増加させる。なお、フォーミング処理は、フォーミング用パルスの間に、導電性薄膜4を局所的に破壊、変形しない程度の電圧例えば0.1V程度のパルス電圧を挿入して素子電流を測定し、その電流が所定の値以下に減少したところで終了する。
【0030】
次に、フォーミングが終了した素子に活性化処理を施す。先に述べたように、この状態では電子発生効率は非常に低いものである。よって電子放出効率を上げるために、上記素子に活性化と呼ばれる処理を行なうことが望ましい。
【0031】
活性化処理の工程は、上記フォーミング処理同様、フード状の蓋をかぶせて形成した有機物質を含有する減圧雰囲気下において、外部からXY配線を通じてパルス電圧を素子電極に繰り返し印加することによって行う。この減圧雰囲気は、電子源基板を真空容器内に配し、カーボンを含む適当な有機物質を導入することによって得られる。なお、後述する画像形成装置のように、電子源基板を用いて真空外囲器を形成する場合は、その真空外囲器内に有機物質を導入することで活性化処理を行なうことができる。
【0032】
本工程では有機物質としてトリニトリルを用い、スローリークバルブを通して真空空間内に導入し、1.3×10−4Paを維持した。導入するトリニトリルの圧力は、真空装置の形状や真空装置に使用している部材等によって若干影響されるが、1×10−5Pa〜1×10−2Pa程度が好適である。
【0033】
この処理により、雰囲気中に存在する有機物質から、炭素あるいは炭素化合物が素子上に堆積し、素子電流If、放出電流Ieが、著しく変化するようになる。活性化工程の終了判定は、素子電流Ifおよび/または放出電流Ieを測定しながら、適宜行なう。なおパルス幅、パルス間隔、パルス波高値などは適宜設定される。
【0034】
炭素及び炭素化合物とは、例えばグラファイト(いわいるHOPG、PG、GCを包含する;HOPGはほぼ完全なグラファイトの結晶構造、PGは結晶粒が20nm程度で結晶構造がやや乱れたもの、GCは結晶粒が2nm程度になり結晶構造の乱れがさらに大きくなったものを指す。)、非晶質カーボン(アモルファスカーボン及びアモルファスカーボンと前記グラファイトの微結晶の混合物を指す)である。以上のようにして、図4(g)に示す表面伝導型放出素子を作成した。
【0035】
こうして作製した電子源基板に、好ましくは、安定化工程を行う。この工程は、活性化処理時に導入した有機物質の残留物を排気する工程である。真空容器内の圧力は、1.3〜4.0×10−5Pa以下が好ましく、更に1.3×10−6Pa以下が特に好ましい。真空容器を排気する真空排気装置は、装置から発生するオイルが素子の特性に影響を与えないように、オイルを使用しないものを用いるのが好ましい。
【0036】
具体的には、ソープションポンプ、イオンポンプ等の真空排気装置を挙げることができる。さらに、真空容器内を排気するときには、真空容器全体を加熱して、真空容器内壁や、電子源基板に吸着した有機物質分子を排気しやすくするのが好ましい。このときの加熱条件は、80〜300℃、好ましくは150℃以上でできるだけ長時間行なうのが望ましいが、特にこの条件に限るものではなく、真空容器の大きさや形状、電子源基板の構成などの諸条件により適宜選ばれる条件により行う。
【0037】
安定化工程を行った後の、駆動時の雰囲気は、上記安定化処理終了後の雰囲気を維持するのが好ましいが、これに限るものではなく、有機物質が十分除去されていれば、圧力自体は多少上昇しても十分安定な特性を維持することができる。
【0038】
このような真空雰囲気を採用することにより、新たな炭素あるいは炭素化合物の堆積を抑制でき、結果として素子電流If、放出電流Ieが安定する。
【0039】
以上が、本発明における電子源基板の製造工程であるが、該電子源基板を用いて画像形成装置を構成した例を、図6と図7を用いて以下に説明する。図6は、画像形成装置の画像形成部材による基本構成図であり、図7は蛍光膜である。
【0040】
図6において、61は電子放出素子を複数配した電子源基板、62は電子源基板61を固定したリアプレート、67はガラス基板64の内面に蛍光膜65とメタルバック66等が形成されたフェースプレートである。63は支持枠であり、該支持枠63には、リアプレート62、フェースプレート67がフリットガラス等を用いて接続されている。69は外囲器であり、例えば大気中あるいは窒素中で、300〜500℃弱の温度範囲で10分間以上焼成することで、封着して構成される。
【0041】
本実施例においては、作製した電子源基板61をリアプレート62上に固定した後、電子源基板61の2〜8mm上方に、フェースプレート67(ガラス基板64の内面に蛍光膜65とメタルバック66が形成されて構成される)を、支持枠63を介して配置し、フェースプレート67、支持枠63、リアプレート62の接合部にフリットガラスを塗布し、大気中で400℃で10分焼成することで行った。またリアプレート62への電子源基板61の固定もフリットガラスで行った。
【0042】
図7は、蛍光膜である。蛍光膜は、モノクロームの場合は蛍光体のみから成るが、カラーの蛍光膜の場合は、蛍光体の配列によりブラックストライプあるいはブラックマトリクスなどと呼ばれる黒色導電材71と蛍光体72とで構成される。
【0043】
本発明の画像形成装置において、各電子放出素子に容器外端子Dx1ないしDxm,Dy1ないしDynを通じ、走査信号及び変調信号を不図示の信号発生手段よりそれぞれ印加することにより、電子放出させ、高圧端子Hvを通じ、メタルバック66、あるいは透明電極(不図示)に1kVの高圧を印加し、電子ビームを加速し、蛍光膜65に衝突させ、画像を表示する。
【0044】
なお、以上述べた構成は、表示等に用いられる好適な画像形成装置を作製する上で必要な概略構成であり、例えば各部材の材料等、詳細な部分は上述内容に限られるものではなく、画像形成装置の用途に適するよう適宜選択する。
【0045】
また、本発明の画像形成装置は、テレビジョン放送の表示装置、テレビ会議システムやコンピューター等の表示装置の他、感光性ドラム等を用いて構成された光プリンターとしての画像形成装置等としても用いることができ、本実施例における画像形成装置は、テレビジョンとして十分満足できる輝度(約150fL)で良好な画像を長時間にわたって安定に表示することができた。
【0046】
ここで、図2中のA−A'の線に沿って、エレクトロンプローブマイクロアナリシス(EPMA)の手法により、Ag元素の分布を計測した結果の例を、図8に示す。尚、図8は、計測値と素子の構成部材との関係を表すため、グラフの上に、図2のA−A'断面の簡略図を合わせて(ただし導電性薄膜は省略)示す。また、比較のため、素子電極2,3をPtで、配線6,7をAgで形成した場合の、同様のAg元素の分布を計測した結果の例を、図9に示す。図8、図9から分かるように、ルテニウムを電極として使用することで、配線6,7からのAgの素子電極2,3への拡散が抑えられていることがわかる。
【0047】
また、素子電極表面を走査型電子顕微鏡で観察すると、均一な表面構造が工程dからfで維持されていることが観察でき、抵抗値の変化もほとんど見られなかった。また、比較例として工程cを賭さなかった場合の電極は、工程cを施した電極に比較して、抵抗値の変動が確認され、安定な抵抗値が得られなかった。本発明の製造方法により、表面構造、ルテニウム/酸化ルテニウム比などの変化を最小限に抑えることが可能である。
【0048】
(実施例2)
本実施例にかかわる基本的な電子源基板の構成は実施例1と同様である。作成工程のうち以下の工程を下記のとおり変更して行った。
【0049】
以下、本発明の実施例を電子源基板の作成工程にしたがって説明する。
【0050】
<工程−a>
本実施例では、清浄化した青板ガラス基体1上に、ナトリウム拡散防止層9として厚さ0.5μmのSiO2膜をCVD法で形成する。
【0051】
<工程−b>
素子電極材料として真空蒸着法で形成したルテニウム薄膜を用いている。
基体1上に、真空蒸着法により50nmの金属ルテニウムを堆積する。その後、通常のフォトリソグラフィーにより素子電極2,3の電極パターンレジスト像を形成した後、ウェットエッチング処理によって素子電極2,3のパターン以外のルテニウム膜を除去する。その後、有機溶剤等でフォトレジストを除去し素子電極2,3を形成する。尚、ルテニウム膜のウェットエッチング処理液としては硝酸セリウム・アンモニウムを用いることができる。
【0052】
<工程−c>
素子電極2,3を形成した基板を窒素雰囲気中にて550℃、1時間の焼成を行った。このときの窒素濃度は95%以上で実施した。焼成温度は、後工程の熱処理最高温度以上であれば550℃に限る必要はない。このときの昇温レートは、10℃/minとした。焼成温度は、後工程の熱処理最高温度以上であれば550℃に限る必要はない。
【0053】
電子源基板作成工程<工程−e>〜<工程−g>、フォーミング工程、活性化工程、安定化工程および画像形成装置作成工程は実施例1と同様なので省略する。
【0054】
ここで、図2中のA−A’の線に沿って、エレクトロンプローブマイクロアナリシス(EPMA)の手法により、Ag元素の分布を計測したところ、図8と同様の結果を得、窒素雰囲気中で高温処理したルテニウムを電極に使うことにより、配線6,7からのAgの素子電極2,3への拡散が抑えられ、また抵抗値変化の抑制された素子電極を提供しえることが確認できた。
【0055】
以後、実施例1と同様に、本実施例の電子源基板を用いて画像形成装置を構成したところ、本実施例における画像形成装置においても、テレビジョンとして十分満足できる輝度(約150fL)で良好な画像を長時間にわたって安定に表示することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子源基板の一例を示す平面図である。
【図2】本発明の電子源基板の電子放出素子近傍の鳥瞰図である。
【図3】図2におけるA−A’断面図である。
【図4】本発明に係る電子源基板の基本的な製造方法を説明するための図である。
【図5】本発明に係るフォーミング処理における電圧波形の一例を示す図である。
【図6】本発明に係る画像形成装置の基本構成を示す図である。
【図7】図7の画像形成装置に用いられる蛍光膜を示す図である。
【図8】ルテニウム電極によるAg拡散防止効果を説明する図である。
【図9】ルテニウム電極によるAg拡散防止効果を説明する比較図である。
【図10】従来の電子源基板の構成を示す平面図である。
【図11】従来の電子源基板の構成を示す鳥瞰図である。
【符号の説明】
1 基体
2,3 素子電極
4 導電性薄膜
5 電子放出部
6 配線(下配線、Y方向配線)
7 配線(上配線、X方向配線)
8 層間絶縁層
9 被覆膜(ナトリウム拡散防止膜)
61 電子源基板
62 リアプレート
63 支持枠
64 ガラス基板(フェースプレート基板)
65 蛍光膜
66 メタルバック
67 フェースプレート
68 高圧端子
69 外囲器
71 黒色導電体
72 蛍光体
101 表面伝導型電子放出素子
Claims (1)
- ルテニウムを主成分として有する電極と、該電極に接続された金属配線とを有する画像形成装置の製造方法であって、
ルテニウムを主成分として有する電極パターンを形成する工程と、
電極パターンを窒素雰囲気中で焼成する工程と、
焼成された電極パターンを用いて、画像形成装置を仕上げる工程とを有し、
前記焼成工程の温度が、前記仕上げる工程の温度よりも高いことを特徴とする画像形成装置の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002377087A JP2004207131A (ja) | 2002-12-26 | 2002-12-26 | 画像形成装置の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002377087A JP2004207131A (ja) | 2002-12-26 | 2002-12-26 | 画像形成装置の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004207131A true JP2004207131A (ja) | 2004-07-22 |
Family
ID=32814368
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002377087A Withdrawn JP2004207131A (ja) | 2002-12-26 | 2002-12-26 | 画像形成装置の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004207131A (ja) |
-
2002
- 2002-12-26 JP JP2002377087A patent/JP2004207131A/ja not_active Withdrawn
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR20070013232A (ko) | 전자방출소자 및 그것을 이용한 전자원과 표시장치 및이들의 제조방법 | |
JP3135118B2 (ja) | 電子源形成用基板、電子源及び画像形成装置並びにそれらの製造方法 | |
KR100395602B1 (ko) | 전자 방출 디바이스의 제조 방법, 전자원의 제조 방법, 및 화상 형성 장치의 제조 방법 | |
US6617773B1 (en) | Electron-emitting device, electron source, and image-forming apparatus | |
JP3372835B2 (ja) | 電子源及び画像形成装置の製造方法 | |
JP3217949B2 (ja) | 電子放出素子、電子源、表示素子及び画像形成装置の製造方法 | |
JP2000243327A (ja) | 電子源基板及びその製造方法及び電子源基板を用いた画像形成装置 | |
JP3397569B2 (ja) | 表面伝導型電子放出素子およびその製造方法、ならびに同電子放出素子を備えた電子源、画像形成装置 | |
JP2004207131A (ja) | 画像形成装置の製造方法 | |
JP3943864B2 (ja) | 電子源基板及びその製造方法並びに電子源基板を用いた画像形成装置 | |
JP3416376B2 (ja) | 表面伝導型電子放出素子の製造方法並びにそれを用いた電子源基板および画像形成装置の製造方法 | |
JP2000021305A (ja) | 画像表示装置の製造方法 | |
JP2003045321A (ja) | 電子放出素子、電子源および画像形成装置の製造方法 | |
JP2002313220A (ja) | 電子放出素子、電子源および画像形成装置の製造方法 | |
JP3241599B2 (ja) | 電子放出素子、電子源基板、電子源、表示パネルおよび画像形成装置の製造方法 | |
JP2000243230A (ja) | 電子源基板及びその製造方法及び電子源基板を用いた画像形成装置 | |
JPH1012135A (ja) | 電子放出素子、電子源、表示パネルおよび画像形成装置の製造方法 | |
JPH09245698A (ja) | 電子放出素子、電子源基板、及び画像形成装置の製造方法 | |
JP3416377B2 (ja) | 電子放出素子、電子源、表示パネルおよび画像形成装置の製造方法 | |
JP2002216614A (ja) | 電子源基板及びその製造方法並びに電子源基板を用いた画像形成装置 | |
JP3423527B2 (ja) | 電子放出素子、電子源基板、電子源、表示パネル、および画像形成装置の製造方法 | |
JP2003157775A (ja) | 電子源基板及びその製造方法、及び電子源基板を用いた画像形成装置 | |
JPH09115431A (ja) | 凹凸を有する基板、並びにそれを用いた電子放出素子、電子源、表示パネルおよび画像形成装置の製造方法 | |
JP2000231876A (ja) | 電子放出素子、電子源、画像形成装置及びそれらの製造方法 | |
JP2000243229A (ja) | 電子源基板及びその製造方法及び電子源基板を用いた画像形成装置 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Application deemed to be withdrawn because no request for examination was validly filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20060307 |