JP2004206378A - 磁気マーカーと、それを用いた物品監視装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】商品等に目立たないように取付けることができる磁気マーカーを備えた自鳴式の物品監視装置を提供する。
【解決手段】自鳴式物品監視装置10は、ケース20に収容された警報器21と、電池22と、回路部23と、アンテナとして機能する取付け紐を兼ねた磁気マーカー12などを備えている。磁気マーカー12は、交番磁界が印加されたときに急峻な磁化反転を生じる磁性材料からなる磁性素子15と、磁化反転時に発生するパルスをとらえる検出用コイル16と、磁性素子15および検出用コイル16を覆う可撓性の外装材17とによって構成されている。磁性素子15の樹枝状晶の一次アームは、磁性素子15の軸線に対し10度以下に配向している。検出用コイル16は磁性素子15に巻かれている。磁性素子15の磁化反転が検出用コイル16によって検出されたとき、警報器21が作動する。
【選択図】 図1
【解決手段】自鳴式物品監視装置10は、ケース20に収容された警報器21と、電池22と、回路部23と、アンテナとして機能する取付け紐を兼ねた磁気マーカー12などを備えている。磁気マーカー12は、交番磁界が印加されたときに急峻な磁化反転を生じる磁性材料からなる磁性素子15と、磁化反転時に発生するパルスをとらえる検出用コイル16と、磁性素子15および検出用コイル16を覆う可撓性の外装材17とによって構成されている。磁性素子15の樹枝状晶の一次アームは、磁性素子15の軸線に対し10度以下に配向している。検出用コイル16は磁性素子15に巻かれている。磁性素子15の磁化反転が検出用コイル16によって検出されたとき、警報器21が作動する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、盗難防止システム等に使用されるパルス発生用の磁気マーカーと、それを用いた物品監視装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
店舗等において商品の盗難を防止するために、磁気マーカー(タグとも呼ばれる)が使用されることがある。磁気マーカーには、交番磁界を与えた時に磁化反転を生じる線状の磁性素子が使用される。この磁気マーカーを物品に取付け、交番磁界を与えた時に生じる磁化反転に伴うパルス状の出力を検出用のコイル(アンテナ)によって検出することにより、商品が店舗から不正に持ち出されることを抑制している。
【0003】
従来より、店舗の精算所あるいは出口付近に設置されたゲートに、交番磁界発生用のコイルを設けるとともに、このゲートに検出用コイル(アンテナ)を設けた盗難防止システムが知られている。この盗難防止システムでは、磁気マーカーの磁化反転がゲート側の検出用コイルによって検出され、ゲート側の警報器が作動するようになっている。このため、複数の商品が同時にゲートを通る際に、未清算の商品が1つでも含まれていると、ゲート側に設けた警報器が作動する。このため未清算の商品を特定しにくく、ゲート付近が混乱する懸念がある。
【0004】
このような問題を解決するために、下記特許文献1に示すように、自鳴式の物品監視装置が提案されている。特許文献1の自鳴式物品監視装置は、中空チューブ内に自由運動ができる状態で挿入されたアモルファス磁性材料からなる磁性素子を備えた磁気マーカーと、タグ本体に内蔵された警報器および電池と、回路部などを備えている。この自鳴式物品監視装置は、外部から印加される交番磁界によって前記磁性素子が磁化反転を生じたときに、磁化反転が検出用コイルによって検出され、タグ本体の警報器が作動する。このため、未清算の商品を特定することが容易である。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−147252号公報(図1,4,5)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
アモルファス磁性材料を用いた磁性素子は、磁化反転時に比較的大きな磁歪が発生する。磁歪を阻止するとパルス出力が極端に低下してしまうため、図14に示すように、磁性素子100を拘束しないよう比較的大きな内径のチューブ101内に、隙間を設けて磁性素子100を収容する必要がある。チューブ101の外周に検出用コイル102が巻かれている。しかもアモルファス磁性材料からなる磁性素子100は、曲げなどの応力が加わると、いわゆる磁歪の逆効果によって磁気特性が劣化しやすく、所望のパルスを発生させるには、ほぼ直線形状に保たれている必要がある。
【0007】
これらの理由から、アモルファス磁性材料からなる磁性素子を用いる従来の自鳴式物品監視装置は、磁性素子を収容するチューブの分だけ磁気マーカーの寸法が大きくなり、剛性が大きく、しかも部品数が多いという問題がある。しかも磁気マーカーの形状の制約が大きく可撓性に乏しいため、商品の一部に目立たないように設けたり、円弧状に曲げられた状態の取付け紐のような外観にすることが難しいなどの問題もある。
【0008】
従ってこの発明の目的は、商品等に目立たないように取付けることができ、特に自鳴式の物品監視装置に適した磁気マーカーと、それを用いた物品監視装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の磁気マーカーは、Feを主成分として(3〜7)mass%のSiを含有する線状の磁性材料からなりかつ樹枝状晶の一次アームが該磁性材料の軸線に対して10度以下に配向し、該磁性材料の保磁力を超える交番磁界が印加されたときに急峻な磁化反転を生じる磁性素子と、前記磁性素子に巻かれた検出用コイルと、前記磁性素子および前記検出用コイルを覆う可撓性の外装材とを具備している。
【0010】
この磁気マーカーは、検査ゲート等において前記磁性材料の保磁力を越える交番磁界が印加された時に、大バルクハウゼン効果(大バルクハウゼンジャンプ)により、急峻な磁化反転を生じる。従ってこの磁化反転に伴なう磁界変化を検出用コイルによってとらえることにより、パルス状の出力が検出される。このパルス状出力に基いて、警報器を作動させることができる。
【0011】
前記磁性材料は、例えば(3〜7)mass%Si−残部Fe、または(3〜5)mass%Si−(1〜3)mass%Ni−残部Fe、または(3〜5)mass%Si−(3〜6)mass%Mo−残部Fe、または(3〜5)mass%Si−(1〜3)mass%Coのいずれか1つから選択された磁性材料など、大バルクハウゼン不連続を示す磁性材料である。
【0012】
このような組成の磁性材料でも、樹枝状晶の一次アームが10度を越えていると、軸線方向の磁気異方性および抗磁力が弱まり、角形性のないヒステリシスループとなり、大バルクハウゼン不連続を示さなくなる。このため本発明の目的にかなう磁性素子は、樹枝状晶の一次アームが該磁性素子の軸線に対して10度以下に配向している必要がある。この磁性素子は磁化曲線が角形性の良好なヒステリシスループを有し、交番磁界が印加されたときに急峻な磁気パルスを発生することができるため検出が容易である。
【0013】
アンテナのコアとして機能する前記磁性素子の透磁率は10000以上が望ましい。この磁性素子のサイズは、好ましくは(長さ/断面積)が3000以上、外径φ70〜110μm、長さ4cm以下である。このような磁性素子は、通路幅が90cm以上の検出ゲートにおいて、通路中央付近の磁界振幅が240A/m以下でも良好に検出することができる。
【0014】
前記磁性素子は、ガス中溶融紡糸法によって製造することができる。ガス中溶融紡糸法では、合金を溶解し、この合金溶湯をノズルから噴射させつつ、この合金溶湯のジェットを冷却ガス中にて冷却し凝固させることにより、線状の磁性材料を得る。ガス中溶融紡糸法によって製造された線状の磁性材料は、樹枝状晶の一次アームが磁性材料の軸線方向に配向成長しやすく、樹枝状晶の一次アームが軸線に対し10度以下に整列した内部組織を得ることができる。
【0015】
この発明において、残径率が85〜98%となるように線引き加工(スキンパス)された前記磁性材料を用いることによって、さらに急峻な磁気パルスを発生することが可能である。この明細書で言う残径率は、[(加工後直径/加工前直径)×100]で与えられる値(%)である。このように小さな減面率で線引き加工された前記磁性材料は、その表面付近のみに生じる歪みにより、表面部の抗磁力が僅かに高くなるが、内部は線引き加工前の抗磁力および大バルクハウゼン不連続特性が維持される。
【0016】
線引き加工時の残径率を85%よりも小さくすると、加工歪が磁性材料の断面の内部にまで及び、元々持っていた大バルクハウゼン不連続特性が損なわれてしまう。逆に残径率を98%よりも大きくすると、表面部の歪が少ないために所望の効果が得られない。すなわち残径率が85%未満では検査ゲートでの検知率が極端に低下するため、好ましくない。残径率が98%を越えても、検査ゲートでの検知率が極端に低下するため、好ましくない。残径率が85〜98%の範囲では、ほぼ一定の高いレベルの検知率が得られる。
【0017】
前記線引き加工によって、前記磁性材料の表面部と内部とで抗磁力が異なるようになり、表面部と内部の磁気的な相互作用により、磁化反転速度が速くなり、パルスが鋭くかつ大きくなる。その結果、検査ゲートで精度良く検知可能な磁気マーカーとして使用可能となる。
【0018】
前記磁気マーカーにキャンセル用素子を設け、必要に応じてキャンセル用素子に着磁することができるようにしてもよい。このキャンセル用素子に着磁することによって前記磁性素子にバイアス磁界を与えれば、磁性素子の磁化反転を阻止することができる。これにより磁性素子の磁化反転機能がキャンセルされ、検査ゲート等において交番磁界が印加されてもパルス状の出力は検出されなくなる。
【0019】
キャンセル用素子の材料は、保磁力が10〜1000エルステッド程度の硬質あるいは半硬質の強磁性材料(例えばFe−Co−V,Fe−Co−Ni,Fe−Cu,Fe−Cr−Co,Cu−Ni−Fe,Cu−Ni−Co,Pt−Coなど)が適している。
【0020】
本発明の自鳴式物品監視装置は、ケースに収容された電池および警報器と、前記磁気マーカーと、前記磁気マーカーの検出用コイルに接続され前記磁化反転によるパルスが検出されたとき該パルスに基いて前記警報器を作動させる回路部とを具備している。
【0021】
本発明の自鳴式物品監視装置において、好ましい形態として、前記磁性素子と前記検出用コイルと前記外装材とによって、取付け紐を兼ねるアンテナとしての紐状の磁気マーカーが構成され、該紐状の磁気マーカーが前記ケースの外部に引き出されている。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下にこの発明の一実施形態について、図1〜図8および図11,図12を参照して説明する。
図1は、商品等の物品に取付けるタグ状の自鳴式物品監視装置10を示している。この自鳴式物品監視装置10は、タグ本体11と、アンテナとして機能する取付け紐を兼ねる磁気マーカー12とを備えている。
【0023】
図2に磁気マーカー12が模式的に示されている。磁気マーカー12は、線状の磁性材料15aからなる磁性素子15と、磁性素子15の外周に巻かれた検出用コイル16と、これら磁性素子15と検出用コイル16を覆う可撓性の外装材(紐本体)17などからなる。
【0024】
外装材17は、木綿や麻等の天然繊維あるいは合成繊維を細い筒状に織るか、あるいは組紐のように編組したもので、その内部に磁性素子15と検出用コイル16が収容されている。検出用コイル16の短絡を防ぐために、磁性素子15と検出用コイル16との間に絶縁材を設けるか、あるいは図11に示すように検出用コイル16の素線16a自身にエナメル線のように絶縁被覆16bがコーティングされている。
【0025】
磁性素子15は、外径がφ70〜110μmと細いため、しなやかである。図12に示すように、磁性素子15と、この磁性素子15に巻かれた検出用コイル16とによって、可撓性に富む線状の感磁性ユニット18が構成される。このため磁性素子15と検出用コイル16とが一体となって径方向にしなやかに撓むことができる。そして外装材17も十分しなやかである。このためこの紐状の磁気マーカー(アンテナ)12の外観(風合い)や手触りは、繊維のみからなる通常の取付け紐と変わりがない。
【0026】
図3に示すようにタグ本体11は、ケース20の内部に収容された警報器(例えばブザー)21と、内蔵電源としての電池22と、回路部23などを含んでいる。回路部23は、固定具を兼ねたコネクタ24を介して検出用コイル16に接続され、検出用コイル16の出力が回路部23に入力されるようになっている。
【0027】
回路部23は、フィルタ25と、増幅回路26と、波形整形回路27と、判定回路28などを含んでいる。フィルタ25は、検出用コイル16が受信した出力信号のうち、磁性素子15の急峻な磁化反転によるパルス状の出力信号の高周波成分を取出すようにしている。図4に示すように交番磁界Gの正負が変わるたびに、パルス状の出力Sが周期的に発生する。
【0028】
判定回路28は、検出されたパルス状出力を、予め用意された基準データと比較することにより、一定数以上のパルス状の出力が生じたか否か(磁性素子15が磁化反転したか否か)の判定を行なう。判定回路28の判定結果に応じて警報器21が作動し、例えば報知音が鳴るようになっている。
【0029】
図5に示す検査ゲート30は、磁性素子15に交番磁界を印加するための磁界印加手段として電磁コイル31を備えている。検査ゲート30の間口(通路幅)の一例は120cm、投入電力100W、励磁周波数1kHzである。
【0030】
[磁気マーカーの実施例1]
前記磁気マーカー12に使われる磁性素子15は、長尺な線状の磁性材料15aを所定長さ(例えば4cm以下)に切断したものである。磁性材料15aの一例は、Si:4%,Ni:2%,残部Fe(いずれもmass%)からなり、図6に模式的に示すガス中溶融紡糸装置40によって製造することができる。
【0031】
ガス中溶融紡糸装置40は、高周波加熱コイル41を備えた紡糸用るつぼ42と、紡糸用るつぼ42の下部に設けられたノズル孔43aを備えた紡糸ノズル43と、ガス整流筒44と、ガス整流筒44の下方に配された巻取り用ドラム45などを備えている。巻取り用ドラム45は、図示しない回転機構によって、矢印Rで示す方向に回転する。紡糸用るつぼ42の内部に、磁性材料15aの合金原料46が収容される。
【0032】
合金原料46が高周波加熱コイル41によって加熱されて溶解する。紡糸用るつぼ42には、溶解した合金原料46の噴射圧力源としてのアルゴン等の不活性ガスを供給するためのガス導入管50が接続されている。ガス整流筒44には、ガス整流筒44の内部にヘリウムガスを導入するためのヘリウムガス供給管51と、ガス整流筒44の内部に酸素ガスを導入するための酸素供給管52が接続されている。
【0033】
ノズル孔43aから、溶解した合金原料46がガス整流筒44の内部に噴射される。その溶解した合金原料46のジェットJが、ガス整流筒44の内部で冷却され凝固することにより、磁性材料15aが連続して形成される。この磁性材料15aは、巻取り用ドラム45に連続的に投入される。
【0034】
このようにして製造された磁性材料15a(直径φ90μm)の組織は、図7に模式的に示すように、樹枝状晶の一次アーム55が磁性材料15aの軸線Xに対し4度以内の角度θで配向整列していた。
【0035】
磁性材料15aを、図8に示す線引き加工装置60を用いて、残径率96%となるように線引き加工することにより、磁性材料15aの直径をφ86μmに減少させた。線引き加工装置60は、材料供給部61と、巻取り装置62と、ダイス固定部63と、線引用ダイス64などを備えている。
【0036】
前記スキンパス後の磁性材料15aを長さ25mmに切断することにより、前記磁性素子15を得た。この磁性素子15は、抗磁力が48A/mで、磁化曲線が大バルクハウゼン不連続を示し、検査ゲート30において精度良く検出することができた。
【0037】
[磁気マーカーの実施例2]
ガス中溶融紡糸法により、直径φ80μmのFe−4mass%Siからなる磁性材料15aを得た。得られた磁性材料15aの組織は、樹枝状晶の一次アーム(図7に示す)55が磁性材料15aの軸線Xに対し6度以内の角度θで配向整列していた。
【0038】
この磁性材料15aを前記線引き加工装置60によって線引き加工し、直径をφ72μm(残径率90%)とした。そののち、磁性材料15aを長さ30mmに切断することにより、磁性素子15を得た。この磁性素子15の抗磁力は70A/mであり、大バルクハウゼン不連続を示し、検査ゲート30において精度良く検知することができた。
【0039】
[磁気マーカーの実施例3]
ガス中溶融紡糸法により、直径φ90μmのFe−4mass%Si−2mass%Niからなる磁性材料15aを得た。得られた磁性材料15aの組織は、樹枝状晶の一次アーム(図7に示す)55が磁性材料15aの軸線Xに対し4度以内の角度θで配向整列していた。
【0040】
この磁性材料15aを前記線引き加工装置60によって線引き加工し、直径をφ86μm(残径率96%)とした。そののち磁性材料15aを長さ25mmに切断することにより、磁性素子15を得た。この磁性素子15の抗磁力は80A/mで、磁化曲線において大バルクハウゼン不連続を示した。
【0041】
図9に示すように、磁性素子15の近傍にチップ状のキャンセル用素子70を複数(例えば2個)並べて取付けた。キャンセル用素子70はFe−Cr−Coからなり、寸法の一例は、板厚75μm、幅1.5mm、長さ6mmである。
【0042】
このキャンセル用素子70に時効焼鈍処理を行なうことにより、保磁力を7kA/mに調整した。キャンセル用素子70を電磁コイルによって磁化させたところ、前記検査ゲート30では検知されなかった。消磁器を用いてキャンセル用素子70を消磁したところ、検査ゲート30において磁性素子15の磁化反転によるパルスを検知することができた。
【0043】
例えば商店等において商品を監視するために自鳴式物品監視装置10を用いる場合、予め商品に自鳴式物品監視装置10を取付けておく。また、店の出口、例えば精算所(いわゆるレジ)の出口側に検査ゲート30を設置する。精算所にはキャンセル用素子70に着磁処理を行なうための磁界発生器(図示せず)を設けておく。この精算所において客が商品の代金を支払うと、キャンセル用素子70に前記磁界発生器によって着磁処理を行なう。
【0044】
精算済みの商品が検査ゲート30を通る際には、磁性素子15が磁化反転を生じないから、この商品が検査ゲート30から出ることが許可される。未精算の商品が検査ゲート30を通ろうとすると、商品に付けられている自鳴式物品監視装置10の磁性素子15が磁化反転を生じる。このためパルス状の出力が自鳴式物品監視装置10の検出用コイル16によって検出され、警報器21が鳴ることにより、未清算の商品を容易に特定することができる。
【0045】
[磁気マーカーの実施例4]
図10に示すキャンセル用素子80は、磁気的に硬質または半硬質な磁性材料からなる箔状の磁性金属を、磁性素子15の外周に円筒状に巻付けている。キャンセル用素子80の長手方向に所定間隔で部分的に熱処理を行なうことにより、熱処理部81と、非熱処理部82とが交互に形成されている。
【0046】
熱処理部81の磁気的性質は、非熱処理部82とは異なっている。非熱処理部82は、キャンセル用素子80本来の磁気的性質を有しているため、複数対の磁極(NS)を磁性素子15の長手方向に交互に着磁させることができる。このようなキャンセル用素子80を有する磁気マーカーは、不活性化のための着磁処理(キャンセル処理)を非接触で効率良く行なうことができる。
【0047】
[検出用コイルの他の実施例]
本発明の磁気マーカーに図13に示すような8の字形検出用コイル16´が使用されてもよい。この検出用コイル16´は、2つのループ16a,16bの巻線方向が互いに逆向きであるため、外部ノイズによる誘導電圧をキャンセルすることができる。このような8の字形検出用コイル16´をプリント配線基板に形成すれば、薄型で低コストなタグを提供することが可能である。
【0048】
検出用コイル16´と電気回路部11´(前記回路部23を含む)とを合わせたユニットを、自鳴式ではないタグ(磁性素子15のみを有していて検査ゲートから警報が出る物品監視システム)の磁性素子に沿うよう設け、かつ、前記警報器21と電池22等を内蔵すれば、必要に応じて自鳴式タグにすることができる。
【0049】
【発明の効果】
請求項1〜3に記載された発明によれば、細くしなやかな紐状の磁気マーカーを、目立たないように商品等に設けることができる。
請求項4に記載された発明によれば、請求項1〜3による効果に加えて、必要に応じて磁気マーカーの磁化反転機能をキャンセルすることができる。
【0050】
請求項5〜7に記載された発明によれば、自鳴式の物品監視装置において、細くしなやかな紐状の磁気マーカーを目立たないように商品等に設けることができる。
【0051】
請求項8に記載された発明によれば、磁気マーカーが取付け紐を兼ねることにより、磁気マーカーをさらに目立ちにくくすることができる。
請求項9に記載された発明によれば、必要に応じて自鳴式物品監視装置の磁気マーカーの磁化反転機能をキャンセルすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す自鳴式物品監視装置の正面図。
【図2】図1に示された自鳴式物品監視装置の磁気マーカーを一部切欠いて示す正面図。
【図3】図1に示された自鳴式物品監視装置の電気回路を示す図。
【図4】図1に示された自鳴式物品監視装置の励起磁界とパルス出力との関係を示す図。
【図5】検査ゲートを示す斜視図。
【図6】磁気マーカー用の磁性材料を製造するガス中溶融紡糸装置の概略を示す斜視図。
【図7】図2に示された磁性素子の樹枝状晶を示す概略図。
【図8】スキンパスを行なう線引き加工装置の正面図。
【図9】キャンセル用素子を備えた磁気マーカーの正面図。
【図10】キャンセル用素子の他の例を示す斜視図。
【図11】絶縁被覆を有する検出用コイルの素線の径方向の断面図。
【図12】図2に示された磁性素子と検出用コイルを示す断面図。
【図13】本発明の他の実施形態を示す8の字形検出用コイルの斜視図。
【図14】従来のアモルファス磁性材料からなる磁性素子を用いた磁気マーカーの断面図。
【符号の説明】
10…自鳴式物品監視装置
11…タグ本体
12…磁気マーカー
15…磁性素子
15a…磁性材料
16…検出用コイル
17…外装材
20…ケース
21…警報器
22…電池
23…回路部
70,80…キャンセル用素子
【発明の属する技術分野】
本発明は、盗難防止システム等に使用されるパルス発生用の磁気マーカーと、それを用いた物品監視装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
店舗等において商品の盗難を防止するために、磁気マーカー(タグとも呼ばれる)が使用されることがある。磁気マーカーには、交番磁界を与えた時に磁化反転を生じる線状の磁性素子が使用される。この磁気マーカーを物品に取付け、交番磁界を与えた時に生じる磁化反転に伴うパルス状の出力を検出用のコイル(アンテナ)によって検出することにより、商品が店舗から不正に持ち出されることを抑制している。
【0003】
従来より、店舗の精算所あるいは出口付近に設置されたゲートに、交番磁界発生用のコイルを設けるとともに、このゲートに検出用コイル(アンテナ)を設けた盗難防止システムが知られている。この盗難防止システムでは、磁気マーカーの磁化反転がゲート側の検出用コイルによって検出され、ゲート側の警報器が作動するようになっている。このため、複数の商品が同時にゲートを通る際に、未清算の商品が1つでも含まれていると、ゲート側に設けた警報器が作動する。このため未清算の商品を特定しにくく、ゲート付近が混乱する懸念がある。
【0004】
このような問題を解決するために、下記特許文献1に示すように、自鳴式の物品監視装置が提案されている。特許文献1の自鳴式物品監視装置は、中空チューブ内に自由運動ができる状態で挿入されたアモルファス磁性材料からなる磁性素子を備えた磁気マーカーと、タグ本体に内蔵された警報器および電池と、回路部などを備えている。この自鳴式物品監視装置は、外部から印加される交番磁界によって前記磁性素子が磁化反転を生じたときに、磁化反転が検出用コイルによって検出され、タグ本体の警報器が作動する。このため、未清算の商品を特定することが容易である。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−147252号公報(図1,4,5)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
アモルファス磁性材料を用いた磁性素子は、磁化反転時に比較的大きな磁歪が発生する。磁歪を阻止するとパルス出力が極端に低下してしまうため、図14に示すように、磁性素子100を拘束しないよう比較的大きな内径のチューブ101内に、隙間を設けて磁性素子100を収容する必要がある。チューブ101の外周に検出用コイル102が巻かれている。しかもアモルファス磁性材料からなる磁性素子100は、曲げなどの応力が加わると、いわゆる磁歪の逆効果によって磁気特性が劣化しやすく、所望のパルスを発生させるには、ほぼ直線形状に保たれている必要がある。
【0007】
これらの理由から、アモルファス磁性材料からなる磁性素子を用いる従来の自鳴式物品監視装置は、磁性素子を収容するチューブの分だけ磁気マーカーの寸法が大きくなり、剛性が大きく、しかも部品数が多いという問題がある。しかも磁気マーカーの形状の制約が大きく可撓性に乏しいため、商品の一部に目立たないように設けたり、円弧状に曲げられた状態の取付け紐のような外観にすることが難しいなどの問題もある。
【0008】
従ってこの発明の目的は、商品等に目立たないように取付けることができ、特に自鳴式の物品監視装置に適した磁気マーカーと、それを用いた物品監視装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の磁気マーカーは、Feを主成分として(3〜7)mass%のSiを含有する線状の磁性材料からなりかつ樹枝状晶の一次アームが該磁性材料の軸線に対して10度以下に配向し、該磁性材料の保磁力を超える交番磁界が印加されたときに急峻な磁化反転を生じる磁性素子と、前記磁性素子に巻かれた検出用コイルと、前記磁性素子および前記検出用コイルを覆う可撓性の外装材とを具備している。
【0010】
この磁気マーカーは、検査ゲート等において前記磁性材料の保磁力を越える交番磁界が印加された時に、大バルクハウゼン効果(大バルクハウゼンジャンプ)により、急峻な磁化反転を生じる。従ってこの磁化反転に伴なう磁界変化を検出用コイルによってとらえることにより、パルス状の出力が検出される。このパルス状出力に基いて、警報器を作動させることができる。
【0011】
前記磁性材料は、例えば(3〜7)mass%Si−残部Fe、または(3〜5)mass%Si−(1〜3)mass%Ni−残部Fe、または(3〜5)mass%Si−(3〜6)mass%Mo−残部Fe、または(3〜5)mass%Si−(1〜3)mass%Coのいずれか1つから選択された磁性材料など、大バルクハウゼン不連続を示す磁性材料である。
【0012】
このような組成の磁性材料でも、樹枝状晶の一次アームが10度を越えていると、軸線方向の磁気異方性および抗磁力が弱まり、角形性のないヒステリシスループとなり、大バルクハウゼン不連続を示さなくなる。このため本発明の目的にかなう磁性素子は、樹枝状晶の一次アームが該磁性素子の軸線に対して10度以下に配向している必要がある。この磁性素子は磁化曲線が角形性の良好なヒステリシスループを有し、交番磁界が印加されたときに急峻な磁気パルスを発生することができるため検出が容易である。
【0013】
アンテナのコアとして機能する前記磁性素子の透磁率は10000以上が望ましい。この磁性素子のサイズは、好ましくは(長さ/断面積)が3000以上、外径φ70〜110μm、長さ4cm以下である。このような磁性素子は、通路幅が90cm以上の検出ゲートにおいて、通路中央付近の磁界振幅が240A/m以下でも良好に検出することができる。
【0014】
前記磁性素子は、ガス中溶融紡糸法によって製造することができる。ガス中溶融紡糸法では、合金を溶解し、この合金溶湯をノズルから噴射させつつ、この合金溶湯のジェットを冷却ガス中にて冷却し凝固させることにより、線状の磁性材料を得る。ガス中溶融紡糸法によって製造された線状の磁性材料は、樹枝状晶の一次アームが磁性材料の軸線方向に配向成長しやすく、樹枝状晶の一次アームが軸線に対し10度以下に整列した内部組織を得ることができる。
【0015】
この発明において、残径率が85〜98%となるように線引き加工(スキンパス)された前記磁性材料を用いることによって、さらに急峻な磁気パルスを発生することが可能である。この明細書で言う残径率は、[(加工後直径/加工前直径)×100]で与えられる値(%)である。このように小さな減面率で線引き加工された前記磁性材料は、その表面付近のみに生じる歪みにより、表面部の抗磁力が僅かに高くなるが、内部は線引き加工前の抗磁力および大バルクハウゼン不連続特性が維持される。
【0016】
線引き加工時の残径率を85%よりも小さくすると、加工歪が磁性材料の断面の内部にまで及び、元々持っていた大バルクハウゼン不連続特性が損なわれてしまう。逆に残径率を98%よりも大きくすると、表面部の歪が少ないために所望の効果が得られない。すなわち残径率が85%未満では検査ゲートでの検知率が極端に低下するため、好ましくない。残径率が98%を越えても、検査ゲートでの検知率が極端に低下するため、好ましくない。残径率が85〜98%の範囲では、ほぼ一定の高いレベルの検知率が得られる。
【0017】
前記線引き加工によって、前記磁性材料の表面部と内部とで抗磁力が異なるようになり、表面部と内部の磁気的な相互作用により、磁化反転速度が速くなり、パルスが鋭くかつ大きくなる。その結果、検査ゲートで精度良く検知可能な磁気マーカーとして使用可能となる。
【0018】
前記磁気マーカーにキャンセル用素子を設け、必要に応じてキャンセル用素子に着磁することができるようにしてもよい。このキャンセル用素子に着磁することによって前記磁性素子にバイアス磁界を与えれば、磁性素子の磁化反転を阻止することができる。これにより磁性素子の磁化反転機能がキャンセルされ、検査ゲート等において交番磁界が印加されてもパルス状の出力は検出されなくなる。
【0019】
キャンセル用素子の材料は、保磁力が10〜1000エルステッド程度の硬質あるいは半硬質の強磁性材料(例えばFe−Co−V,Fe−Co−Ni,Fe−Cu,Fe−Cr−Co,Cu−Ni−Fe,Cu−Ni−Co,Pt−Coなど)が適している。
【0020】
本発明の自鳴式物品監視装置は、ケースに収容された電池および警報器と、前記磁気マーカーと、前記磁気マーカーの検出用コイルに接続され前記磁化反転によるパルスが検出されたとき該パルスに基いて前記警報器を作動させる回路部とを具備している。
【0021】
本発明の自鳴式物品監視装置において、好ましい形態として、前記磁性素子と前記検出用コイルと前記外装材とによって、取付け紐を兼ねるアンテナとしての紐状の磁気マーカーが構成され、該紐状の磁気マーカーが前記ケースの外部に引き出されている。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下にこの発明の一実施形態について、図1〜図8および図11,図12を参照して説明する。
図1は、商品等の物品に取付けるタグ状の自鳴式物品監視装置10を示している。この自鳴式物品監視装置10は、タグ本体11と、アンテナとして機能する取付け紐を兼ねる磁気マーカー12とを備えている。
【0023】
図2に磁気マーカー12が模式的に示されている。磁気マーカー12は、線状の磁性材料15aからなる磁性素子15と、磁性素子15の外周に巻かれた検出用コイル16と、これら磁性素子15と検出用コイル16を覆う可撓性の外装材(紐本体)17などからなる。
【0024】
外装材17は、木綿や麻等の天然繊維あるいは合成繊維を細い筒状に織るか、あるいは組紐のように編組したもので、その内部に磁性素子15と検出用コイル16が収容されている。検出用コイル16の短絡を防ぐために、磁性素子15と検出用コイル16との間に絶縁材を設けるか、あるいは図11に示すように検出用コイル16の素線16a自身にエナメル線のように絶縁被覆16bがコーティングされている。
【0025】
磁性素子15は、外径がφ70〜110μmと細いため、しなやかである。図12に示すように、磁性素子15と、この磁性素子15に巻かれた検出用コイル16とによって、可撓性に富む線状の感磁性ユニット18が構成される。このため磁性素子15と検出用コイル16とが一体となって径方向にしなやかに撓むことができる。そして外装材17も十分しなやかである。このためこの紐状の磁気マーカー(アンテナ)12の外観(風合い)や手触りは、繊維のみからなる通常の取付け紐と変わりがない。
【0026】
図3に示すようにタグ本体11は、ケース20の内部に収容された警報器(例えばブザー)21と、内蔵電源としての電池22と、回路部23などを含んでいる。回路部23は、固定具を兼ねたコネクタ24を介して検出用コイル16に接続され、検出用コイル16の出力が回路部23に入力されるようになっている。
【0027】
回路部23は、フィルタ25と、増幅回路26と、波形整形回路27と、判定回路28などを含んでいる。フィルタ25は、検出用コイル16が受信した出力信号のうち、磁性素子15の急峻な磁化反転によるパルス状の出力信号の高周波成分を取出すようにしている。図4に示すように交番磁界Gの正負が変わるたびに、パルス状の出力Sが周期的に発生する。
【0028】
判定回路28は、検出されたパルス状出力を、予め用意された基準データと比較することにより、一定数以上のパルス状の出力が生じたか否か(磁性素子15が磁化反転したか否か)の判定を行なう。判定回路28の判定結果に応じて警報器21が作動し、例えば報知音が鳴るようになっている。
【0029】
図5に示す検査ゲート30は、磁性素子15に交番磁界を印加するための磁界印加手段として電磁コイル31を備えている。検査ゲート30の間口(通路幅)の一例は120cm、投入電力100W、励磁周波数1kHzである。
【0030】
[磁気マーカーの実施例1]
前記磁気マーカー12に使われる磁性素子15は、長尺な線状の磁性材料15aを所定長さ(例えば4cm以下)に切断したものである。磁性材料15aの一例は、Si:4%,Ni:2%,残部Fe(いずれもmass%)からなり、図6に模式的に示すガス中溶融紡糸装置40によって製造することができる。
【0031】
ガス中溶融紡糸装置40は、高周波加熱コイル41を備えた紡糸用るつぼ42と、紡糸用るつぼ42の下部に設けられたノズル孔43aを備えた紡糸ノズル43と、ガス整流筒44と、ガス整流筒44の下方に配された巻取り用ドラム45などを備えている。巻取り用ドラム45は、図示しない回転機構によって、矢印Rで示す方向に回転する。紡糸用るつぼ42の内部に、磁性材料15aの合金原料46が収容される。
【0032】
合金原料46が高周波加熱コイル41によって加熱されて溶解する。紡糸用るつぼ42には、溶解した合金原料46の噴射圧力源としてのアルゴン等の不活性ガスを供給するためのガス導入管50が接続されている。ガス整流筒44には、ガス整流筒44の内部にヘリウムガスを導入するためのヘリウムガス供給管51と、ガス整流筒44の内部に酸素ガスを導入するための酸素供給管52が接続されている。
【0033】
ノズル孔43aから、溶解した合金原料46がガス整流筒44の内部に噴射される。その溶解した合金原料46のジェットJが、ガス整流筒44の内部で冷却され凝固することにより、磁性材料15aが連続して形成される。この磁性材料15aは、巻取り用ドラム45に連続的に投入される。
【0034】
このようにして製造された磁性材料15a(直径φ90μm)の組織は、図7に模式的に示すように、樹枝状晶の一次アーム55が磁性材料15aの軸線Xに対し4度以内の角度θで配向整列していた。
【0035】
磁性材料15aを、図8に示す線引き加工装置60を用いて、残径率96%となるように線引き加工することにより、磁性材料15aの直径をφ86μmに減少させた。線引き加工装置60は、材料供給部61と、巻取り装置62と、ダイス固定部63と、線引用ダイス64などを備えている。
【0036】
前記スキンパス後の磁性材料15aを長さ25mmに切断することにより、前記磁性素子15を得た。この磁性素子15は、抗磁力が48A/mで、磁化曲線が大バルクハウゼン不連続を示し、検査ゲート30において精度良く検出することができた。
【0037】
[磁気マーカーの実施例2]
ガス中溶融紡糸法により、直径φ80μmのFe−4mass%Siからなる磁性材料15aを得た。得られた磁性材料15aの組織は、樹枝状晶の一次アーム(図7に示す)55が磁性材料15aの軸線Xに対し6度以内の角度θで配向整列していた。
【0038】
この磁性材料15aを前記線引き加工装置60によって線引き加工し、直径をφ72μm(残径率90%)とした。そののち、磁性材料15aを長さ30mmに切断することにより、磁性素子15を得た。この磁性素子15の抗磁力は70A/mであり、大バルクハウゼン不連続を示し、検査ゲート30において精度良く検知することができた。
【0039】
[磁気マーカーの実施例3]
ガス中溶融紡糸法により、直径φ90μmのFe−4mass%Si−2mass%Niからなる磁性材料15aを得た。得られた磁性材料15aの組織は、樹枝状晶の一次アーム(図7に示す)55が磁性材料15aの軸線Xに対し4度以内の角度θで配向整列していた。
【0040】
この磁性材料15aを前記線引き加工装置60によって線引き加工し、直径をφ86μm(残径率96%)とした。そののち磁性材料15aを長さ25mmに切断することにより、磁性素子15を得た。この磁性素子15の抗磁力は80A/mで、磁化曲線において大バルクハウゼン不連続を示した。
【0041】
図9に示すように、磁性素子15の近傍にチップ状のキャンセル用素子70を複数(例えば2個)並べて取付けた。キャンセル用素子70はFe−Cr−Coからなり、寸法の一例は、板厚75μm、幅1.5mm、長さ6mmである。
【0042】
このキャンセル用素子70に時効焼鈍処理を行なうことにより、保磁力を7kA/mに調整した。キャンセル用素子70を電磁コイルによって磁化させたところ、前記検査ゲート30では検知されなかった。消磁器を用いてキャンセル用素子70を消磁したところ、検査ゲート30において磁性素子15の磁化反転によるパルスを検知することができた。
【0043】
例えば商店等において商品を監視するために自鳴式物品監視装置10を用いる場合、予め商品に自鳴式物品監視装置10を取付けておく。また、店の出口、例えば精算所(いわゆるレジ)の出口側に検査ゲート30を設置する。精算所にはキャンセル用素子70に着磁処理を行なうための磁界発生器(図示せず)を設けておく。この精算所において客が商品の代金を支払うと、キャンセル用素子70に前記磁界発生器によって着磁処理を行なう。
【0044】
精算済みの商品が検査ゲート30を通る際には、磁性素子15が磁化反転を生じないから、この商品が検査ゲート30から出ることが許可される。未精算の商品が検査ゲート30を通ろうとすると、商品に付けられている自鳴式物品監視装置10の磁性素子15が磁化反転を生じる。このためパルス状の出力が自鳴式物品監視装置10の検出用コイル16によって検出され、警報器21が鳴ることにより、未清算の商品を容易に特定することができる。
【0045】
[磁気マーカーの実施例4]
図10に示すキャンセル用素子80は、磁気的に硬質または半硬質な磁性材料からなる箔状の磁性金属を、磁性素子15の外周に円筒状に巻付けている。キャンセル用素子80の長手方向に所定間隔で部分的に熱処理を行なうことにより、熱処理部81と、非熱処理部82とが交互に形成されている。
【0046】
熱処理部81の磁気的性質は、非熱処理部82とは異なっている。非熱処理部82は、キャンセル用素子80本来の磁気的性質を有しているため、複数対の磁極(NS)を磁性素子15の長手方向に交互に着磁させることができる。このようなキャンセル用素子80を有する磁気マーカーは、不活性化のための着磁処理(キャンセル処理)を非接触で効率良く行なうことができる。
【0047】
[検出用コイルの他の実施例]
本発明の磁気マーカーに図13に示すような8の字形検出用コイル16´が使用されてもよい。この検出用コイル16´は、2つのループ16a,16bの巻線方向が互いに逆向きであるため、外部ノイズによる誘導電圧をキャンセルすることができる。このような8の字形検出用コイル16´をプリント配線基板に形成すれば、薄型で低コストなタグを提供することが可能である。
【0048】
検出用コイル16´と電気回路部11´(前記回路部23を含む)とを合わせたユニットを、自鳴式ではないタグ(磁性素子15のみを有していて検査ゲートから警報が出る物品監視システム)の磁性素子に沿うよう設け、かつ、前記警報器21と電池22等を内蔵すれば、必要に応じて自鳴式タグにすることができる。
【0049】
【発明の効果】
請求項1〜3に記載された発明によれば、細くしなやかな紐状の磁気マーカーを、目立たないように商品等に設けることができる。
請求項4に記載された発明によれば、請求項1〜3による効果に加えて、必要に応じて磁気マーカーの磁化反転機能をキャンセルすることができる。
【0050】
請求項5〜7に記載された発明によれば、自鳴式の物品監視装置において、細くしなやかな紐状の磁気マーカーを目立たないように商品等に設けることができる。
【0051】
請求項8に記載された発明によれば、磁気マーカーが取付け紐を兼ねることにより、磁気マーカーをさらに目立ちにくくすることができる。
請求項9に記載された発明によれば、必要に応じて自鳴式物品監視装置の磁気マーカーの磁化反転機能をキャンセルすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す自鳴式物品監視装置の正面図。
【図2】図1に示された自鳴式物品監視装置の磁気マーカーを一部切欠いて示す正面図。
【図3】図1に示された自鳴式物品監視装置の電気回路を示す図。
【図4】図1に示された自鳴式物品監視装置の励起磁界とパルス出力との関係を示す図。
【図5】検査ゲートを示す斜視図。
【図6】磁気マーカー用の磁性材料を製造するガス中溶融紡糸装置の概略を示す斜視図。
【図7】図2に示された磁性素子の樹枝状晶を示す概略図。
【図8】スキンパスを行なう線引き加工装置の正面図。
【図9】キャンセル用素子を備えた磁気マーカーの正面図。
【図10】キャンセル用素子の他の例を示す斜視図。
【図11】絶縁被覆を有する検出用コイルの素線の径方向の断面図。
【図12】図2に示された磁性素子と検出用コイルを示す断面図。
【図13】本発明の他の実施形態を示す8の字形検出用コイルの斜視図。
【図14】従来のアモルファス磁性材料からなる磁性素子を用いた磁気マーカーの断面図。
【符号の説明】
10…自鳴式物品監視装置
11…タグ本体
12…磁気マーカー
15…磁性素子
15a…磁性材料
16…検出用コイル
17…外装材
20…ケース
21…警報器
22…電池
23…回路部
70,80…キャンセル用素子
Claims (9)
- Feを主成分とし(3〜7)mass%のSiを含有する線状の磁性材料からなりかつ樹枝状晶の一次アームが該磁性材料の軸線に対して10度以下に配向し、該磁性材料の保磁力を超える交番磁界が印加されたときに急峻な磁化反転を生じる磁性素子と、
前記磁性素子に巻かれた検出用コイルと、
前記磁性素子および前記検出用コイルを覆う可撓性の外装材と、
を具備したことを特徴とする磁気マーカー。 - 前記磁性素子が、(3〜7)mass%Si−残部Fe、または(3〜5)mass%Si−(1〜3)mass%Ni−残部Fe、または(3〜5)mass%Si−(3〜6)mass%Mo−残部Fe、または(3〜5)mass%Si−(1〜3)mass%Coのいずれか1つから選択された磁性材料からなることを特徴とする請求項1に記載の磁気マーカー。
- 前記磁性素子が、残径率[(加工後直径/加工前直径)×100]%が85〜98%となるよう線引き加工されていることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気マーカー。
- 磁気的に硬質または半硬質な磁性材料からなり、着磁された状態において前記磁性素子の磁化反転を阻止すべくバイアス磁界を生じるキャンセル用素子をさらに備えていることを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の磁気マーカー。
- ケースに収容された電池および警報器と、
Feを主成分とし(3〜7)mass%のSiを含有する線状の磁性材料からなりかつ樹枝状晶の一次アームが該磁性材料の軸線に対して10度以下に配向し、該磁性材料の保磁力を超える交番磁界が印加されたときに急峻な磁化反転を生じる磁性素子と、
前記磁性素子に巻かれた検出用コイルと、
前記磁性素子および前記検出用コイルを覆う可撓性の外装材と、
前記検出用コイルに接続され前記磁化反転によるパルスが検出されたとき該パルスに基いて前記警報器を作動させる回路部と、
を具備したことを特徴とする自鳴式の物品監視装置。 - 前記磁性素子が、(3〜7)mass%Si−残部Fe、または(3〜5)mass%Si−(1〜3)mass%Ni−残部Fe、または(3〜5)mass%Si−(3〜6)mass%Mo−残部Fe、または(3〜5)mass%Si−(1〜3)mass%Coのいずれか1つから選択された磁性材料からなることを特徴とする請求項5に記載の自鳴式の物品監視装置。
- 前記磁性素子が、残径率[(加工後直径/加工前直径)×100]%が85〜98%となるよう線引き加工されていることを特徴とする請求項5または6に記載の自鳴式の物品監視装置。
- 前記磁性素子と前記検出用コイルと前記外装材とによって、取付け紐を兼ねるアンテナとしての紐状の磁気マーカーが構成され、該紐状の磁気マーカーが前記ケースの外部に引き出されていることを特徴とする請求項5ないし7のうちいずれか1項に記載の自鳴式の物品監視装置。
- 磁気的に硬質または半硬質な磁性材料からなり、着磁された状態において前記磁性素子の磁化反転を阻止すべくバイアス磁界を生じるキャンセル用素子をさらに備えていることを特徴とする請求項5ないし8のうちいずれか1項に記載の自鳴式の物品監視装置。
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JP2008052411A (ja) * | 2006-08-23 | 2008-03-06 | Uchida Yoko Co Ltd | 通過検知システム、通過検知システム用制御装置およびデータ書き換え装置 |
WO2009008228A1 (ja) * | 2007-07-06 | 2009-01-15 | Hst Co., Ltd. | 検出装置 |
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