JP2004205695A - 光学機器のレンズ駆動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】送りネジのネジ部と送り台のネジ穴とが食い付いてレンズが移動しなくなるのを自動的に解除する。
【解決手段】合焦時に被写体距離に応じたパルス信号をドライバに供給してステップモータを駆動する。モータの回転は送りねじに伝達される。送りねじの回転よりレンズが移動する。モータ、送りネジ、及びレンズは移動筒に組み込まれている。移動筒を収納位置に移動したときに送りネジの一端に当接する当接部材が設けられている。原点出し動作のときにレンズが移動していないことを検知すると、移動筒を収納位置に移動する動作と、合焦動作時とは異なる振幅の大きなかつ短い周期のパルス信号を送ってモータを高トルクで駆動する動作とを交互に行って食い付きを解除する。
【選択図】 図5

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、送りネジ(リードスクリュー)を用いてレンズを移動する光学機器のレンズ駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
送りネジを用いてレンズを移動するレンズ駆動装置には、送り台とレンズ保持部材とを備えている。送り台には、送りネジのネジ部に噛合するネジ穴が形成されている。レンズ保持部材は、送り台と一緒に移動する。モータの駆動は送りネジに伝達される。送りネジが回転すると、ネジ部のリードに従って送り台とともにレンズ保持部材が移動する。
【0003】
モータの駆動は、送り台がネジ部のうちの所定の範囲内で移動するように、カメラのマイコン(制御部)によって制御されている。しかし、マイコンの暴走によりモータの駆動を制御することができない場合がある。このような不都合が生じたときには、送り台が送りネジの端まで移動して送りネジを支持する支持部材に当接する。送り台が支持部材に当接すると、それ以上送りが行えないため、ネジ部のネジ山がネジ穴のネジ溝に食い付いてしまい、その後、送りネジを逆方向に回転しても送り台を移動することができない状態となる。
【0004】
そこで、特開平6−214282号公報に記載の発明では、送り台が所定の範囲を超えて移動したときに、送り台に設けた凸部を支持部材に設けた凸部に当接して前述した食い付きを解除するようにしている。
【0005】
【発明が解決するための課題】
しかしながら、前述した食い付き現象は、送り台が所定の範囲を超えたときだけでなく、例えばカメラを落としたときなどの強い衝撃がレンズ保持枠にかかった場合など、送り台が所定の範囲内に位置しているときにも生じるおそれがある。送り台が所定の範囲内に位置しているときに食い付き現象が生じた場合、送り台が所定の範囲を超えて移動しないため、上記公報記載の発明でもその食い付きを自動的に解除することができない欠点があった。
【0006】
本発明は、上記課題を考慮してなされたもので、送り台が所定の範囲内に位置しているときに生じる食い付き現象を自動的に解除することができるレンズ駆動装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のレンズ駆動装置では、移動筒を移動可能範囲のうちの端位置に移動したときに、送り台の一部、又はその移動筒の移動方向に沿った送りネジの端に当接する当接部材と、駆動信号発生回路を制御してレンズを移動する通常動作時よりも高トルクとなる駆動信号を発生させる制御手段と、検知手段を用いてレンズが移動しているか否かを判断する判断手段と、レンズが移動していないことを前記判断手段が判断した場合に前記駆動手段及び制御手段を時間的に組み合わせて実行するリセット手段とを具備したものである。
【0008】
リセット手段としては、前記駆動手段及び制御手段を時系列に組み合わせて実行する間に予め決められた時間だけ休止するように制御してもよい。この場合、リセット手段の次の実行を一定時間だけ遅延させる遅延手段を設ける。このように駆動手段又は制御手段の実行を連続的に行うよりも、間に休止を入れてから次の実行を行う方が食い付き現象を解除する効果が大きくなる場合もある。なお、連続的に実行する間に必ず休止を入れる必要はなく、例えば3回実行した後に1回休止してまた3回実行するように、遅延するタイミングをランダムに設定してもよい。また、遅延時間も一定時間に限らず、レンズが移動していないことに応じてランダムに変化させるようにしてもよい。このような遅延タイミングや遅延時間はその時点でのレンズが移動しているか否かの判断に応じて決めるのが好適である。
【0009】
当接部材としては、移動筒の移動可能範囲のうちの一方又は他方の端に1個だけ設ける構成としてもよいし、両方の端にそれぞれ設ける構成としてもよい。リセット手段の実行として駆動手段及び制御手段を時間的に組み合わせる例としては、先に駆動手段を実行したのちに制御手段を実行する例、その順番の逆の例、及び駆動手段を実行してから制御手段を複数回実行してその後に再び駆動手段を実行するなどでもよい。
【0010】
レンズを、例えばカメラの撮影レンズの一部として用いる場合には、フォーカス時又は変倍時さらにそれら両方のときに移動するレンズとする。移動筒としては、変倍時に移動する筒とする。また、移動筒をカメラボディに収納する収納位置を端位置とするのが撮影に使用しない位置であるから望ましい。
【0011】
送りネジを回転する機構としては、モータの軸を送りネジとする機構と、ギヤ列やベルトなどの駆動伝達機構を介してモータの駆動を送りネジに伝達する機構とがある。いずれの機構でも、軸方向に遊びを持たせて送りネジを支持し、付勢手段の付勢でその遊びをなくすように付勢しておく。そして、当接したときに付勢手段の付勢に抗する方向に沿って送りネジを遊びの範囲内で押すように当接部材を配置すればよい。
【0012】
レンズ駆動装置には、レンズの移動を検知する検知手段を備えている。電子カメラやビデオカメラ等には、検知手段として、接触又は非接触でメカ的にレンズの位置を検知する位置検知手段と、CCD等の撮像素子でレンズを通した被写体画像を撮像し、レンズ(フォーカスレンズ)を前後に駆動させ、CCD各セルの相互間の起電力の差の最大点をジャストフォーカスとするコントラスト検出方式のオートフォーカス手段とがある。どちらを利用しても移動筒に対するレンズの移動を検知することができる。
【0013】
一般的にモータを高トルクにするためには定格電圧での動作時又はレンズを移動させる通常動作時よりも低速にすればよい。また、ステッピングモータを用いる場合、高トルクにするためには、パルス信号の振幅又は周波数並びにこれら両方を変えるようにするのが望ましい。振幅を変える場合には、パルス信号の振幅を定格電圧での動作時又は通常動作時よりも高くして高い駆動電圧で駆動する。周波数を変える場合にはパルス信号の周波数を通常動作時よりも短くして低速で駆動する。
【0014】
この場合、モータをサイン波によって駆動する。サイン波は、予めROMに記憶したデータに基づいて生成する。ROMには、適当な間隔でサンプリングしたサイン波に対応した矩形波のデューティ比を指示するデータを記憶する。異なる振幅のサイン波のデータを複数のメモリに記憶し、通常動作時とレンズが移動していないことを判断手段が判断したときとでデータ(メモリ)を選択することによって駆動電圧又は駆動電流を制御する。周波数を変える場合には、周波数の異なるサイン波のデータを複数のメモリに記憶しておけばよい。振幅及び周波数の両方を変える場合には、振幅と周波数との組み合わせを変えたサイン波のデータを複数のメモリにそれぞれ記憶しておけばよい。なお、サイン波のデータを振幅制御手段によって制御することで駆動電圧又は駆動電流を制御してもよい。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1ないし図3に示すように、電子カメラ10は、撮影レンズ11の結像面に配したCCD撮像素子(以下、CCD)12で被写体画像を撮像する。撮影レンズ11は移動筒13に組み込まれており、移動筒13は固定筒14に撮影光軸11aの方向に移動自在に取り付けられている。固定筒14はベース部材15に固定され、ベース部材15はカメラボディに固定されている。そのベース部材15には、CCD12が固定されている。移動筒13の移動は、変倍移動手段16によって行われる。変倍移動手段16は、変倍用モータ17と、その駆動を利用して移動筒13を移動するラック18とピニオン19とからなる。
【0016】
移動筒13は、カメラ10の不使用状態のときに、図1に示すように、固定筒14の内部に収納される収納位置に移動し、またカメラ10の使用状態のときには、固定筒14から被写体側に向けて繰り出した撮影位置に移動する。この移動筒13は、撮影位置とこれから被写体側に向けて移動したテレ位置(図2に示した位置)との間で変倍移動する。なお、撮影位置はワイド位置となっている。
【0017】
撮影レンズ11は、被写体側から順に前レンズ20と後レンズ21との2枚構成となっている。後レンズ21はレンズ保持部材22に保持されており、また前レンズ20は移動筒13に固定されている。変倍時には、移動筒13の移動により前・後レンズ20,21が一緒に撮影光軸11aの方向に移動する。
【0018】
レンズ保持部材22は、レンズ駆動手段23の駆動を利用して前レンズ20との間の間隔が変わるように撮影光軸11aの方向に移動する。この移動により被写体距離に応じて撮影レンズ11のピント調節が行える。レンズ駆動手段23は、ガイド手段、送りネジ25、送り台26、及びフォーカス用のモータ27などで構成されており、これらは移動筒13に組み込まれている。
【0019】
ガイド手段は、一対のガイド棒28,29、スライド軸受け30、及び回転止め部材31とから構成されている。一対のガイド棒28,29は、撮影光軸11aと平行に固定されている。スライド軸受け30は、レンズ保持部材22に一体に設けられており、一方のガイド棒28にスライド自在に係合している。回転止め部材31もレンズ保持部材22に一体に設けられている。この回転止め部材は、他方のガイド棒29を両側から挟み込むフォーク形状となっており、レンズ保持部材22がガイド棒28を軸として回転するのを阻止する。
【0020】
レンズ保持部材22には、送り台26に係合する係合部34が一体に形成されている。係合部34は、送り台26を撮影光軸11aの方向の前後で挟む一対のフォーク部35,36を有しており、送りネジ25を軸とする周方向に遊びをもった状態で撮影光軸11aの前後方向でのみ送り台26に係合する。なお、係合部34は、フォーク部35,36の底面が送り台26の底面に当接して、送りネジ25の回転と一緒に送り台26が回転するのを阻止している。
【0021】
送り台26には、送りネジ25のネジ部37に係合するネジ穴38が形成されている。送りネジ25は、一端部39がモータ27に支持され、他端部40が移動筒13に設けた支持部材41に支持されている。ネジ部37はモータ27と支持部材41との間に形成され、送り台26はそのネジ部37の範囲のうちの一部の範囲でフォーカス時に移動する。モータ27は、周知のステッピングモータとなっており、移動筒13の内部に固定され、移動筒13と一緒に移動する。
【0022】
カメラの制御部42は、ドライバ(駆動信号発生回路)43を介して駆動信号(パルス信号)を送ることで、トルク、回転方向、回転速度、及び回転角からなるモータ27の駆動を制御する。ここで、モータ27を正転したときのレンズ保持部材22の移動方向を順方向、また逆転したときの移動方向を逆方向とする。順方向はレンズ保持部材22が被写体側に向けて移動する方向である。
【0023】
モータ27の内部には、詳しくは図4に示すように、複数のマグネットを送りネジ25の一端部39に歯列状に固定するロータコア45が組み込まれている。ロータコア45は、その周りのステータコア46に巻いた2個のコイルに流す電流を順番に切り替えることで生じる回転磁界によって送りネジ25をステップ状に回転する。ロータコア45の軸方向の前後には、所定の隙間を空けて軸受け部材47,48がそれぞれ配されている。軸受け部材47,48は、送りネジ25を回転自在に支持するとともに、送りネジ25を前記隙間の分だけ軸方向に遊びをもって支持している。
【0024】
モータ27の外部には、送りネジ25の一端部39のうちの最端面50が露呈している。この最端面50には、モータ17の外部に設けた板バネ51が当接している。板バネ51は、送りネジ25を逆方向に向けて付勢する。その板バネ51の付勢によりロータコア45の一側面45aが一方の軸受け部材47の端面47aに当接し、送りネジ25が遊びの無い状態となる。なお、板バネ51の代わりに圧縮又は引っ張りバネを用いても良いし、ゴムなどの弾性部材を押し当てるようにしてもよい。
【0025】
送りネジ25の他端部40のうちの最端面53は、支持部材41から露呈している。その最端面53に対向するベース部材15の壁には、当接部材54が固定されている。当接部材54は、移動筒13が収納位置に移動したときに送りネジ25の最端面53に当接し、送りネジ25を板バネ51の付勢に抗して順方向に向けて押す。これにより、送り台26のネジ穴38と送りネジ25のネジ部37との食い付きを解除する。
【0026】
移動筒13には、レンズ保持部材22の原点位置を検知する検知手段が設けられている。検知手段は、遮蔽板55と馬蹄形の透過型フォトセンサ56とで構成されている。遮蔽板55はレンズ保持部材22に設けられており、またフォトセンサ56は遮蔽板55の移動路のうちの結像面寄りに配されている。
【0027】
制御部42は、カメラ10を統括的に制御する。制御部42にはメモリ57が接続されている。メモリ57には各種プログラムが記憶されている。プログラムは、図5に示すように、初期動作、AF・AE動作、フォーカス異常動作、リセット動作、撮影動作、及び原点出し動作などで構成されている。初期動作は、カメラ10の電源ONに応答して移動筒13を収納位置から撮影位置に移動させる。
【0028】
AE動作は、測光機構58から得られる被写体輝度に応じて露出を制御する。AF動作は、後レンズ21を原点位置に移動する原点出し動作を行った後に、測距機構59から得られる被写体距離に応じて後レンズ21を原点位置から順方向に向けて移動してピント調節を行う。撮影動作は、シャッタレリーズに応答してCCD12で撮像した画像信号をA/D変換器60、及び画像処理部61を通して画像データとして取り込み、記録部62に送って画像データを記録部62にセットされる例えばメモリーカードなどの記録媒体に記録する。
【0029】
原点出し動作は、被写体距離に応じたレンズ移動の開始位置を常に一定の位置にするための動作である。この原点出し動作を説明すると、まず、モータ27を逆転してレンズ保持部材22を逆方向に移動し、フォトセンサ56が遮蔽板55を検知するのを監視する。そして、遮蔽板55の検知を確認してから遮蔽板55の検知がOFFするまでモータ27の逆転駆動を継続し、遮蔽板55の検知がOFFした時点から一定時間経過後にモータ27の逆転駆動を停止する。次にモータ27を正転駆動してレンズ保持部材22を順方向に移動し、再びフォトセンサ56が遮蔽板55を検知するのを監視する。そして、遮蔽板55の検知を確認してから遮蔽板55の検知がOFFした時点でモータ27の正転駆動を停止する。これにより、レンズ保持部材22の原点位置は、遮蔽板55がフォトセンサ56から順方向に向けて僅かに抜け出た位置となる。
【0030】
フォーカス異常動作は、AF動作中の原点出し動作を行っている間に、フォトセンサ56が遮蔽板55を検知するのを監視し、予め決められた一定の時間内に遮蔽板55の検知が得られない場合にフォーカス異常と判断し、リセット動作を行う。ネジ部37とネジ穴38との食い付き現象は、このフォーカス異常動作によって判断される。
【0031】
リセット動作は、ネジ部37とネジ穴38との食い付きを解除するために実行されるものであり、高トルクでモータ27を駆動する高トルク駆動動作、沈胴動作、繰り出し動作、高トルク駆動動作、及びエラーカウント動作の順に実行される。最初の高トルク駆動動作は、AF動作時よりも高いトルクとなるパルス信号を発生させるようにドライバ43を制御してモータ27を所定時間又は所定パルスだけ正転駆動する。
【0032】
沈胴動作は、移動筒13を収納位置に移動する。繰り出し動作は、移動筒13を撮影位置に繰り出す。最後の高トルク駆動動作は、モータ27を所定時間又は所定パルスだけ逆転駆動する。移動筒13を進退する動作の前後で高トルク駆動動作を行うのは、単に移動筒13を収納位置に移動して送りネジ25の最端面53を当接部材54に当接しても食い付きが解除されない場合を考慮して行っている。このようなリセット動作は、AF動作時にフォーカス異常と判断されるごとに行われる。
【0033】
制御部42は、最後の高トルク駆動動作中に、センサ56を監視し、遮蔽板55を検知したか否かを判断する。本実施形態では、最初の高トルク駆動動作からセンサ56を監視して遮蔽板55の検知を判断する動作までの1サイクルを所定回数、例えば3回行い、3回トライして遮蔽板55の検知が行えない場合には、沈胴動作を行った後にカメラ10の外部に異常警告を表示してカメラ10の電源をOFFして強制停止する。
【0034】
図6は、本実施例におけるステッピングモータのドライバ43(駆動回路)の構成の一例を示す。ドライバ43は、アドレスカウンタ63、第1ROM64、第2ROM65、セレクタ66、及びモータドライバ67などで構成される。アドレスカウンタ63、第1ROM64、第2ROM65、及びセレクタ66は、制御部42から供給されるパルス数に基づいて、AF動作時又はリセット動作時に応じた振幅及び周波数のパルス波形のデータを生成してモータドライバ67に供給する。
【0035】
セレクタ66には、制御部42からAF動作時又はリセット動作時に応じた選択信号が供給される。セレクタ66は、選択信号に基づいて第1又は第2ROM64,65に繋がる信号経路を選択し、選択した信号経路にあるROMから入力されるサイン/コサイン波に応じた矩形波データをモータドライバ67に送る。なお、モータ27は2相励磁方式となっており、モータドライバ67は正負二電源でハーフブリッジを用いるバイポーラ駆動方式となっている。
【0036】
第1及び第2ROM64,65には、サイン/コサイン波の1/4周期分、すなわち、0〜π/2までのデータが記憶される。ここで、第1ROM64には、AF動作時に使用するデータが、また第2ROM65には、AF動作時に対して振幅を大きくしたサイン/コサイン波のデータ、すなわちリセット動作時に使用するデータが記憶されている。例えば、第1ROM64には、振幅50%のサイン/コサイン波のデータが記憶され、また第2ROM65には、第1ROM64に記憶されているデータに対し、振幅が100%となっているデータが記憶されている。
【0037】
アドレスカウンタ63からの読み出しアドレスによって第1又は第2ROM64,65からデータが読み出される。このアドレスカウンタ63は、制御部42から供給されるUP/DOWN信号及び読み出しクロック信号によって制御される。
【0038】
ここで、読み出しクロックは、第1又は第2ROM64,65から読み出すサイン/コサイン波のデータの周波数を決めるものである。したがって、読み出しクロックの間隔が短ければサイン/コサイン波の周波数が高くなり高速駆動となり、また、読み出しクロックの間隔が長ければサイン/コサイン波の周波数が低くなって低速駆動となる。制御部42は、AF動作の場合にはサイン/コサイン波の周波数が高くなるように読み出しクロックを、またリセット動作のときには周波数が低くなるように読み出しクロックを送る。UP/DOWN信号は、第1又は第2ROM64,65から読み出すサイン/コサイン波データの正負の符号を逆転し、ステッピングモータ27の回転方向を制御するためのものである。
【0039】
前述したように、第1及び第2ROM64,65には、1/4周期の範囲のサイン/コサイン波に対応した矩形波のデューティ(Duty)比のデータが記憶されている。したがって、第1又は第2ROM64,65からデータが読み出される際に、アドレスカウンタ63によって、所定の周期範囲におけるデータの読み出し順の制御および正負の符号の付加がなされ、1周期分、すなわち、0〜2πのデータが生成されて出力される。
【0040】
図7には、通常動作であるAF動作とリセット動作とでのサイン波のデータの周期及び振幅の違いを示している。リセット動作ではAF動作時に比べて周期の長い周波数となり低速駆動となる。また、サイン波の振幅は、AF動作に対してリセット動作の方が大きくなっている。これにより、AF動作時よりもリセット動作時の方が高い駆動電圧でかつ低速で制御される。AF動作時にはモータ27の定格電圧又はそれよりも低い駆動電圧で、またリセット動作時には定格電圧を超える駆動電圧でモータ27が駆動される。
【0041】
一般的にモータは、低速にするだけでトルクが上がる。スッテピングモータの場合には、図8に示す定格電圧又はそれよりも低い電圧で駆動したときの周波数に対するトルクを表した線Aと、定格電圧を超える高い電圧で駆動したときの周波数に対するトルクを表した線Bとで示したように、駆動電圧を高く制御することでトルクが上がり、また、サイン波のデータの周波数を短くすることでさらにトルクを上げることができる。なお、周波数としては、AF動作時のときには700〜1000ppsを、またリセット動作時には10〜100ppsの範囲を用いるのが望ましい。
【0042】
次に、上記構成の作用を説明する。カメラ10の電源をONすると、移動筒13を収納位置から撮影位置に移動する。ズームスイッチ80を操作すると、これに応答してドライバ81を介して変倍用のモータ17を駆動する。これにより移動筒13が撮影光軸11aの方向に移動する。なお、レンズ保持部材22は、遮蔽板55がフォトセンサ56から順方向側に抜け出た原点位置に位置している。
【0043】
ズーミング後に構図を決めてシャッタボタン82を半押し操作する。これにより、AE・AF動作が行われる。AE動作が実行されると、測光機構58から得られる被写体輝度に応じて露出が制御され、また、AF動作が実行されると、後レンズ21を原点位置に移動する原点出し動作を行った後に、測距機構59から得られる被写体距離に応じたパルス数のパルス信号がドライバ43に送られてモータ27が駆動される。
【0044】
原点出し動作を含むAF動作を詳しく説明すると、遮蔽板55がフォトセンサ56を通過するまでいったんモータ27を逆転し、フォトセンサ56を遮蔽板55が通過してから一定時間経過後にモータ27の逆転駆動を停止する。次にモータ27を正転駆動して再び遮蔽板55がフォトセンサ56を通過するのを確認し、遮蔽板55がフォトセンサ56を通過した時点から被写体距離に応じたパルス信号を送ってモータ27を正転駆動してレンズ保持部材22を被写体距離に応じた分だけ繰り出す。
【0045】
AF動作時のモータ27の駆動制御を詳しく説明すると、制御部42は、AF動作に応じた選択信号をセレクタ66に送る。セレクタ66は、選択信号に基づき第1ROM64までの信号経路を選択する。それと同時に制御部42が、AF動作に応じた周波数となるように読み出しクロック信号を供給し、また、回転方向に対してはUP又はDOWN信号をアドレスカウンタに供給する。アドレスカウンタ63は、これらクロック読み出し信号及びUP又はDOWN信号の供給に応じて、選択された信号経路の第1ROM64に予め記憶されているサイン波/コサイン波とに対応した矩形波のデータを読み出し、セレクタ66は読み出された矩形波のデータをモータドライバ67にそれぞれ供給する。
【0046】
なお、図示していないが、モータをPM(パーマネント・マグネット)型2相励磁バイポーラ駆動とする場合、モータ27及びモータドライバ67は、PWM発生回路、ハーフブリッジ回路及びコイルを一対設けた構成となる。サイン波データは一方のPWM発生回路、及びハーフブリッジ回路を通してコイルに、コサイン波は他方のPWM発生回路及びハーフブリッジ回路を通してコイルにそれぞれ供給される。これらハーフブリッジ回路及びコイルによって矩形波データが平滑されてサイン波又はコサイン波となる。
【0047】
モータ27が被写体距離に応じた分だけ駆動することで、レンズ保持部材22が原点位置から順方向に向けて繰り出されてピント調節が行われる。なお、被写体距離に応じたモータ27の駆動量は変倍位置ごとで異なっており、これらは予めメモリ57にテーブルとして記憶されている。
【0048】
その後、シャッタボタン82の全押し操作が行われると、撮影動作が実行され、CCD12を駆動して得られた画像信号をA/D変換器60、及び画像処理部61を通して画像データとして記録部62に取り込み、その画像データを記録部62にセットした例えばメモリーカードなどの記録媒体に記録する。記録後には、再び原点出し動作が行われ、レンズ保持部材22を原点位置に戻す。
【0049】
ここで、例えばカメラ10を落としたり、カメラ10に強い衝撃を加えたりすると、このときに加わる衝撃や振動によって送り台26のネジ穴38が送りネジ25のネジ部37に食い付く現象が生じる。この場合、原点出し動作やピント調節時に移動する所定の範囲内に位置していても食い付き現象が生じ、その後のAF動作でレンズ保持部材22が移動しなくなる。
【0050】
このような食い付き現象が生じているか否かは、AF動作中の原点出し動作中に制御部42が判断する。原点出し動作では、モータ27が逆回転・正回転の順で駆動する。制御部42は、これら各駆動を行う毎にフォトセンサ56から得られる信号を監視し、予め決められた時間内に遮蔽板55を検知した信号が入力されない場合にフォーカス異常と判断する。フォーカス異常と判断した場合には直ちにモータ27の駆動を停止し、その後にリセット動作を行う。
【0051】
リセット動作が実行されると、高トルクで駆動させるパルス信号をドライバ43で発生させてモータ27を駆動する。すなわち、制御部42は、リセット動作に応じた選択信号をセレクタ66に送る。セレクタ66は、選択信号に基づき第2ROM65までの信号経路を選択する。これと同時に、制御部42が、リセット動作に応じた周波数となるように読み出しクロック信号をアドレスカウンタ63に供給し、また、回転方向に対しては逆転駆動に対応したDOWN信号をアドレスカウンタ63に供給する。これらクロック読み出し信号及びDOWN信号を供給したアドレスカウンタ63によって、第2ROM65に予め記憶されている、サイン/コサイン波に対応した矩形波データが読み出されてセレクタ66にそれぞれ供給され、セレクタ66はサイン/コサイン波に対応した矩形波データをモータドライバ67に供給する。
【0052】
モータドライバ67は、矩形波データに基づいてAF動作時よりも高い駆動電圧でかつ低速でモータ27を駆動する。このときの駆動は、レンズ21を順方向に向けて移動する正回転で、かつ所定の供給パルス数の分だけ行われる。
【0053】
最初の高トルク駆動動作が完了した後には、移動筒13が収納位置に移動される。移動筒13が収納位置に移動すると、送りネジ25の他端部40の最端面53が当接部材54に当接する。このときの送りネジ25に加わる衝撃や振動により食い付きを解除する。なお、送りネジ25は、当接部材54に押された分だけ遊びの範囲内で板バネ51の付勢に抗して移動し、モータ27に加わる衝撃を吸収する。
【0054】
沈胴動作を実行した後には、移動筒13を撮影位置に繰り出す。その後、再び高トルクで駆動させるパルス信号をドライバ43で発生させてモータ27を駆動する。このときの駆動は、レンズ21を逆方向に向けて移動する逆回転で行われる。そして、レンズ21を逆方向に向けて移動するモータ27の駆動中に、制御部42はセンサ56を監視し、遮蔽板55を検知した場合には、撮影準備状態に戻る。検知しない場合には、エラーをカウントし、再びリセット動作を繰り返し行う。このようにレンズ21の移動を検知できない場合には、リセット動作を例えば3回トライし、それでもレンズ21の移動を検知できない場合には、移動筒13を収納位置に戻した後にカメラ10の外部に異常警告を表示してカメラ10の動作を強制停止する。
【0055】
このように、AF動作時の原点出し動作中にレンズ21が移動しているか否かを判断し、移動していないと判断した場合には、沈胴動作と高トルク駆動動作との2種類の食い付き解除動作を交互に行うようにしたから、ピント調節が狂ったまま撮影を行う失敗撮影を未然に防ぐことができる。
【0056】
なお、2種類の食い付き解除動作の順番を変えて行うようにしても良い。また、一方の食い付き解除動作を行った後に、レンズが移動するか否かを判断し、判断した結果に基づいて他方の食い付き解除動作を行うようにしてもよい。
【0057】
上記実施形態では、2群ズームレンズとしているが、2群ズームレンズに限らず、3群以上のズームレンズとし、このうち隣り合う2つのレンズ群を移動筒に内蔵する構成としてもよし、1つのレンズ群を移動筒に内蔵する構成としてもよい。また、本発明のレンズ駆動装置は、撮影レンズ以外に、ファインダ光学系にも採用することができ、さらにデジタルビデオカメラ、写真用カメラなどのカメラや、顕微鏡、双眼鏡、及び天体望遠鏡などあらゆる光学機器にも採用することができる。
【0058】
また、上記実施形態では、送りネジ25の最端面53を当接部材54に当接する位置を収納位置としているが、これに限らず、例えば移動筒13を変倍位置から収納位置に向けて移動してさらに収納位置を超えた位置に移動したときに当接する構成としてもよい。
【0059】
さらに、上記実施形態では、送りネジ25に遊びを持たせてモータ27に与える衝撃を和らげているが、これの代わりに、送りネジ25の遊び無くし、かつ弾性変形を有する材料で当接部材54を形成しても、モータ27に伝わる衝撃を当接部材54で吸収して和らげることができる。さらに送りネジ25を軸方向に遊びをもって支持しているが、送りネジ25を遊び無く支持して板バネ51を省略して当接時の衝撃や振動だけで食い付きを解除する構成としてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、送りネジ25に当接する当接部材を用いているが、これの代わりに、固定筒に当接部材となるピンを設け、移動筒13が例えば収納位置に移動したときにピンが移動筒13の内部に入り込み、ピンの先端が送り台の一部に当接する構成としてもよい。
【0061】
さらに、上記実施形態では、モータ27の駆動を定電圧駆動としているが、これに限らず、ハーフブリッジにモータコイルを流れる電流検出抵抗を設け、PWM発生器に帰還する構成にすることで定電流駆動にしてもよい。また、2相励磁方式としているが、1−2相励磁方式を採用してもよい。
【0062】
さらにまた、ROM64、65を2種類に限らず、さらにROMを増やし、リセット動作時のエラー回数に応じて振幅が60%、70%、・・・、というように段階的に変えたサイン波のデータをそれぞれ記憶させて利用してもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、リセット動作時にモータ27を高電圧又は電流駆動で、かつ低速で制御するために、パルスの振幅と周波数とを変更しているが、これに限らず、高電圧又は電流駆動するためにパルスの振幅のみを変更してAF動作時よりも低速でモータ27を駆動するようにしてもよし、周波数のみを変えて駆動するようにしてもよい。また、モータ27としてはステッピングモータに限らず、DCモータなど一般的なモータを用いてもよい。この場合には、駆動電圧を下げて回転数を遅くすることで高トルクが得られる。
【0064】
さらに、上記実施形態では、原点出し動作をAF動作の中で行ってフォーカス異常を判断するようにしているが、フォーカス異常を判断するタイミングとしては、カメラ10の撮影準備中に一定のサイクルでフォーカス異常を自動的に判断するようにしてもよい。フォーカス異常の判断をAF動作中に行うようにするとフォーカス異常を判断したときに撮影が行えないが、撮影準備中に自動的に行うようにすれば、シャッタレリーズのときに必ず撮影を行うことができる。
【0065】
また、カメラ10の外部にリセットボタンを設け、撮影者がリセットボタンを操作したときに原点出し動作を行ってフォーカス異常の判断を行うようにしてもよい。さらに、リセットボタンの操作に応答してリセット動作を行うようにしてもよい。
【0066】
上記実施形態では、検出手段を、遮蔽板55とフォトセンサ56などで構成しているが、これらの代わりに、例えばレンズ保持部材22に設けた摺動子と、その摺動子が摺動することで出力抵抗値が可変する抵抗板とを用いてレンズの位置を検出する構成を採用してもよい。また、モータ27の軸にロータリエンコーダを取り付け、そのエンコーダから得られるパルスをフィードバックしてレンズの位置を検知する構成を採用してもよい。
【0067】
また、検知手段として、CCD等の撮像素子でレンズを通した被写体画像を撮像し、フォーカス時にレンズ(フォーカスレンズ)を前後に駆動させ、CCD各セルの相互間の起電力の差の最大点をジャストフォーカスとするコントラスト検出方式のオートフォーカス手段を用いてもよい。この場合には、判断手段が、レンズを前後に駆動させたときに、CCD各セルの相互間の起電力の差がない又は予め決めた値より少ない場合にレンズが移動していないことを判断するように構成する。
【0068】
【発明の効果】
以上のように、本発明のレンズ駆動装置では、レンズが移動していないときに、移動筒を移動可能範囲のうちの端位置に移動して送りネジの端又は送り台の一部に当接部材を当接する動作と、モータを高トルク駆動する動作とを時間的に組み合わせて実行するため、レンズが移動範囲のうちのどこにいても食い付き現象を確実に解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】移動筒を収納位置に移動した状態のカメラの鏡筒を示す断面図である。
【図2】移動筒をテレ位置に移動した状態のカメラの鏡筒を示す断面図である。
【図3】本発明のレンズ移動装置の概略を示す説明図である。
【図4】フォーカス用のモータの内部の構造を説明した説明図である。
【図5】カメラの制御部の動作を示すフローチャート図である。
【図6】フォーカス用モータを駆動するドライバの電気的概略を示すブロック図である。
【図7】通常動作時とリセット動作時とでのパルス信号の波形の違いを示す説明図である。
【図8】パルス周波数に対するトルクの変化を示したグラフである。
【符号の説明】
10 電子カメラ
14 固定筒
13 移動筒
22 レンズ保持部材
25 送りネジ
26 送り台
27 モータ
54 当接部材
51 板バネ
55 遮蔽板
56 フォトセンサ

Claims (4)

  1. モータと、そのモータを駆動する駆動信号を発生する駆動信号発生回路と、レンズの光軸と平行に配されており、前記モータの駆動を利用して回転する送りネジと、前記送りネジに噛合するネジ穴が設けられており、前記送りネジが回転することで送りネジのリードに従って前記レンズを移動する送り台と、前記モータ、送りネジ、送り台、及びレンズとを一緒に光軸方向に移動する移動筒と、前記移動筒を移動可能範囲の端に移動させる駆動手段と、前記移動筒に対して前記レンズの移動を検知する検知手段とを備えた光学機器のレンズ駆動装置において、
    前記移動筒を移動可能範囲のうちの端位置に移動したときに、前記送り台の一部、又はその移動筒の移動方向に沿った前記送りネジの端に当接する当接部材と、
    前記駆動信号発生回路を制御して前記レンズを移動する通常動作時よりも高トルクとなる駆動信号を発生させる制御手段と、
    前記検知手段を用いてレンズが移動しているか否かを判断する判断手段と、
    前記レンズが移動していないことを前記判断手段が判断した場合に前記駆動手段及び制御手段を時間的に組み合わせて実行するリセット手段とを具備したことを特徴とする光学機器のレンズ駆動装置。
  2. 前記モータをステッピングモータとし、前記制御手段は、前記駆動信号発生回路を制御して前記通常動作時よりも高い駆動電圧又は駆動電流となるパルス信号を発生させることを特徴とする請求項1記載の光学機器のレンズ駆動装置。
  3. 前記モータをステッピングモータとし、前記制御手段は、前記駆動信号発生回路を制御して前記通常動作時よりも低い周波数となるパルス信号を発生させることを特徴とする請求項1記載の光学機器のレンズ駆動装置。
  4. 前記リセット手段は、前記レンズが移動していないことを前記判断手段が判断した場合に、前記駆動手段及び制御手段を時間的に組み合わせて実行する間で次の実行を遅延させることを特徴とする請求項1記載の光学機器のレンズ駆動装置。
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