JP2004201526A - 被検物質の体内残留性を検出する方法、核酸、蛋白質、細胞およびプローブ固定化チップ - Google Patents

被検物質の体内残留性を検出する方法、核酸、蛋白質、細胞およびプローブ固定化チップ Download PDF

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Abstract

【課題】被検物質の体内残留性を検出する方法、核酸、蛋白質、細胞およびプローブ固定化チップを提供する。
【解決手段】(1)被検物質と小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質との結合性の存在を検出することと、(2)その検出の結果から前記被検物質の体内残留性の有無および/または程度を判定し、それによって被検物質の体内残留性を検出すること、を具備する被検物質の体内残留性を検出する方法。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被検物質の体内残留性を検出する方法、核酸、蛋白質、細胞およびプローブ固定化チップに関する。
【0002】
【従来の技術】
残留性有機汚染物質(persistent organic pollutants;以下、POPsと略す)は、生物蓄積性を有し、且つ微量でも高い毒性を示す新しいカテゴリーの環境汚染物質として社会的に注目されている。POPsは、強い毒性を有する上に、化学的に非常に安定しているため、自然環境中においても分解され難いという性質(難分解性)を有している。例えば、農薬として、POPsが使用され環境中に放出された場合、大気や海流などにより運ばれ、発生源以上の高濃度が特定の地域で観測されている(即ち、長距離移動性を有する)。また、POPsが海洋生物などに取り込まれた場合には、食物連鎖により生物体内において高濃度に蓄積(即ち、生物濃縮)される高蓄積性を示し、地球的規模での汚染が生じることも報告されている。そのため、POPsによる汚染に対する対策が広く求められている。
【0003】
POPs対象物質は、ごみ焼却過程で発生するダイオキシンなどの「非意図的生産物」、DDTなどの「農薬」、PCBなどの「工業原料」の3つに分類される。また、現在、POPsとして規制されている物質は、アルドリン(殺虫剤)、ディルドリン(殺虫剤)、エンドリン(殺虫剤)、クロルデン(殺虫剤)、ヘプタクロル(殺虫剤)、トキサフェン(殺虫剤)、マイレックス(殺虫剤)、ヘキサクロロベゼン(殺虫剤)、PCB(絶縁油、熱媒体など)、DDT(殺虫剤)、ダイオキシン類、フラン類の12物質である。しかしながら、他の化学物質の中にも同様の性質を持つものがあり、そのような物質が特定されないままに人間やその他の生物の生体に悪影響を与えていることが懸念される。そのような状況で、POPsを検出するための手段の提供は急務である。
【0004】
現在、POPsを検出するための手段としては、化学物質の生体内での蓄積性を評価する手段が用いられている。従来のそのような手段は、化学物質の魚類への濃縮性を流水試験システムを用いて試験するインビトロ系が主に使用されている。それは以下のようなものである。先ず、魚体内と水中の化学物質濃度が平衡に達するまでの最長60日間に亘って、例えば、コイなどの魚類を化学物質に曝露し、その後、化学物質が充分に排出できるまで清浄水で飼育する。その間に、魚と水について化学物質の測定を数回以上行い、平衡時の濃縮係数(即ち、BCF)を算出する。このような方法はOECDテストガイドライン305に示されている。しかしながら、上記の方法などの従来の方法では、個体を用いるために時間がかかる上に操作が煩雑である。
【0005】
【特許文献1】
特表2001−522454号
【0006】
【特許文献2】
特開2002−257814号公報
【0007】
【非特許文献1】
J.Biol.Chem.277、3666−3672、2002、
【0008】
【非特許文献2】
Life Science News(Japan.ed)3 2001 Amersham Pharmacia Biotech、12−13
【0009】
【非特許文献3】
J.Pharm.Pharmacol.49、796−801
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述の状況に鑑み、本発明の目的は、被検物質の体内残留性を検出する方法、核酸、蛋白質、細胞およびプローブ固定化チップを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は鋭意研究の結果、上記の目的を解決するための以下のような手段を見出した。
【0012】
本発明の第1の態様に従うと、(1)被検物質と小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質との結合性の存在を検出することと、(2)その検出の結果から前記被検物質の体内残留性の有無および/または程度を判定し、それによって被検物質の体内残留性を検出すること、を具備する被検物質の体内残留性を検出する方法が提供される。
【0013】
本発明の第2の態様に従うと、被検物質の体内残留性物質を検出するための蛋白質をコードし、以下により決定される塩基配列を有する核酸;
(i)適切なハイブリダイゼーションが得られる条件下で、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10および配列番号11からなる群より選択される少なくとも1の塩基配列を含む少なくとも1種類の核酸に対して、小腸mRNA由来の一本鎖cDNAを反応させること、
(ii)前記(i)において何れかの核酸にハイブリダイズした一本鎖cDNAを回収し、大腸菌に導入することと、
(iii)前記(ii)で導入されたcDNAが前記大腸菌で発現された状態で、残留性有機汚染物質を反応させることと、
(iv)前記(iii)の反応の後に、前記大腸菌への前記残留性有機汚染物質の結合の存在を検出することと、
(v)前記(iv)の存在が検出された大腸菌に導入された小腸mRNA由来のcDNAの塩基配列を決定すること;
が提供される。
【0014】
本発明の第3の態様に従うと、第2の態様に記載の核酸によりコードされる蛋白質が提供される。
【0015】
本発明の第4の態様に従うと、配列番号1で表される核酸を遺伝子として機能可能に導入された被検物質の体内残留性物質を検出するための細胞が提供される。
【0016】
本発明の第5の態様に従うと、基体と、前記基体の表面に固定され、第4の態様に従う細胞をプローブとして具備する被検物質の体内残留性物質を検出するためのプローブ固定化チップが提供される。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明は、被検物質の体内残留性を検出する方法、核酸、蛋白質、細胞およびプローブ固定化チップに関する。
【0018】
化学物質などの体内から吸収された薬物などの異物は、主に肝臓において薬物代謝による作用を受ける。例えば、経口により体内に取り入れられた脂溶性の化学物質は、先ず、腸管から吸収され肝門脈を経て肝臓に至る。肝臓では、そのような化学物質は、チトクロームP450酵素類による酸化反応とそれに続く抱合酵素類による酵素反応によって代謝を受けて水溶化されて尿中または胆汁中へ排泄される。しかしながら、POPsの場合には、水溶化される割合が少なかったり、脱抱合されたりなどの理由から、一旦胆汁中へ排泄されても、腸管から再吸収されてしまうことがある。このような動態は腸肝循環と呼ばれるが、これまでのところそのメカニズムは明確にはされていない。
【0019】
本発明者は、このような腸肝循環がPOPs類の体内蓄積性の要因であり、またこのような腸肝循環は、小腸での分子間相互作用による特異的吸収に基づくと推測した。
【0020】
小腸では、多くの薬物や化学物質が小腸上皮の刷子縁膜構造から吸収されている。残留性有機汚染物質を含む多くの脂溶性化学物質は、単純拡散で、細胞膜を通過することができる。しかしながら、小腸上皮には、非常に多くの担体が存在することが知られている。即ち、脂溶性化学物質の多くは、担体によって積極的に取り込まれている可能性もあるのである。そのような担体のひとつが、例えば、薬物トランスポーターと言われるものである。最近では、薬物トランスポーターのいくつか単離され、特定の化学物質の吸収に関与していることが明らかになってきている。例えば、H+駆動型オリゴヌクレオチドペプチドトランスポーターPepT1は小腸膜に発現しており、α-ラクタム系抗生物質の吸収に関係している。しかしながら、薬物や残留性有機汚染物質の吸収、再吸収を担う膜トランスポーターや膜蛋白質は多くのものが未知であることから、残留性有機汚染物質の選択的再吸収に関るトランスポーターが膜上に存在する可能性はきわめて高い。
【0021】
本発明は、上述の推測に基づき研究を行った結果達成された。例えば、本発明の1態様は、特定の化学物質の特異的吸収に寄与する小腸の膜蛋白質を特定したことによって得られた蛋白質およびそれをコードする核酸である。また、本発明の更なる態様は、そのような該膜蛋白質と被検物質との結合性の存在を検出することにより、被検物質の体内残留性を検出する方法である。
【0022】
1.特異的吸収に寄与する小腸の膜蛋白質およびその蛋白質をコードする核酸の特定
小腸における残留性有機汚染物質の特異的吸収に寄与する膜蛋白質の特定は、例えば、以下のように行うことが可能である。
【0023】
先ず、膜蛋白質であることは、細胞膜蛋白質特有のシグナルペプチド(即ち、リーダーシーケンス)を有することで確認すればよい。
【0024】
たとえばそのようなシグナルペプチドは、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10および配列番号11で表される核酸でコードされているポリペプチドであってよい。これらの核酸配列を表1に纏めて記載した。
【0025】
【表1】
Figure 2004201526
【0026】
このようなシグナルペプチドを有する蛋白質を、小腸において発現している蛋白質の中から選び出す。次に、それらの蛋白質の中から、少なくとも残留性有機汚染物質への結合性を有する蛋白質を選択すれば、小腸における残留性有機汚染物質の特異的吸収に寄与する膜蛋白質を特定することが可能である。即ち、小腸における残留性有機汚染物質の特異的吸収には、その最初の工程としてそのような膜蛋白質への残留性有機汚染物質の結合が考えられるからである。
【0027】
そのような結合性を解析するためには、当該シグナルペプチドを含む蛋白質をコードする遺伝子を大腸菌などの宿主において機能可能に発現させ、それにより産生された蛋白質に対して、公知のPOPsなどの残留性有機汚染物質を接触させて、結合するか否かを調べればよい。
【0028】
シグナルペプチドをコードする核酸を検出するためのこれらの核酸を用いて、例えば、以下の(i)から(v)までの手順により、小腸における残留性有機汚染物質の特異的吸収に寄与する膜蛋白質およびこれをコードする核酸を特定することが可能である。
【0029】
(i)先ず、哺乳類から小腸を摘出し、そこからmRNAを抽出する。次に、抽出されたmRNAを逆転写反応に供してcDNAを合成し、これを一本鎖cDNAに解離する。得られた一本鎖cDNAを、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10および配列番号11で示される核酸と、適切なハイブリダイゼーションが得られる条件下で反応させる。
【0030】
ここでいう「哺乳類」とは、例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、イヌ、ウシ、ブタ、ヒツジおよびヒトなどを含み、それ以外の何れの哺乳動物であってもよい。mRNAの抽出、逆転写反応および二本鎖cDNAの一本鎖cDNAへの解離は、それ自身公知の何れの手段によって行ってよい。配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10および配列番号11で示される核酸は、それらの塩基配列で表される核酸または何れの核酸類似物質であってもよく、それらはそれ自身公知の方法により合成されてもよい。
【0031】
また更に、小腸に特異的に存在する蛋白質を特定するために、脳などの他の臓器または器官から抽出したmRNAから合成したcDNAと、小腸に由来するcDNAとを、例えば、サブトラクションなどの手段により比較し、小腸に特異的に存在するcDNAを単離し、それについて上述と同様の操作を行ってもよい。
【0032】
(ii)次に、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10および配列番号11で示される核酸の何れかの核酸にハイブリダイズした一本鎖cDNAを回収し、それを動物細胞や大腸菌などの宿主に、遺伝子として機能可能に導入する。
【0033】
ここでいう「遺伝子として機能可能に導入」されるとは、導入された核酸が遺伝子として本来的に提供し得る作用を発揮し得る状態で導入されることをいう。即ち、残留性有機汚染物質に特異的に結合する膜蛋白質をコードする遺伝子が、遺伝子として機能可能に宿主に導入された場合、そのような蛋白質が宿主表面または宿主の外に適切に配置されればよいことを意味する。
【0034】
(iii)当該cDNAが適切に発現された状態で、当該宿主に対して公知のPOPsなどの残留性有機汚染物質を接触させる。このような接触によって、当該宿主において産生され、宿主表面に配置された残留性有機汚染物質に特異的に結合する膜蛋白質が存在するならば、そのような膜蛋白質に当該残留性有機汚染物質は結合する。
【0035】
ここで、小腸における残留性有機汚染物質の特異的吸収に寄与する膜蛋白質は、その1つの性質として、残留性有機汚染物質に特異的に結合する性質を有していると考えられる。即ち、小腸における残留性有機汚染物質の特異的吸収に寄与する膜蛋白質は、残留性有機汚染物質に特異的に結合する性質を有していると考えられる。従って、ここでは、残留性有機汚染物質に特異的に結合する蛋白質を産生することを選択すべき遺伝子の指標とした。
【0036】
ここにおいて使用することが可能な残留性有機汚染物質の例は、POPsであることが機知である化合物や体内蓄積性が高いことが機知の化合物であればよく、例えば、アルドリン、ディルドリン、エンドリン、クロルデン、ヘプタクロル、トキサフェン、マイレックス、ヘキサクロロベゼン、PCB、DDT、ダイオキシン類およびフラン類などであればよい。また、ダイオキシンやフラン、PCB類などの多くのPOPs的作用が疑われる物質は、多環芳香族炭化水素(以下、PAHと記す)としても分類されるが、一般にこのようなPAHと称される何れの物質も本発明の残留性有機汚染物質に含まれる。
【0037】
(iv)次に、上述のような接触の結果として得られた宿主への当該化学物質の結合の存在を検出する。そのような検出は、例えば、抗原抗体反応を利用するなど、それ自身公知の手段により行えばよい。例えば、先ず、当該化学物質を特異的に認識する一次抗体を当該宿主と接触し、続いて、検出可能に標識した当該一次抗体を認識する二次抗体を接触させ、その後、当該標識を検出することにより、当該結合の存在を検出することが可能である。
【0038】
(v)当該結合の存在が検出された宿主に導入された核酸について、シーケンシングを行う。それにより得られた塩基配列によって残留性有機汚染物質に特異的に結合する蛋白質をコードする遺伝子が特定される。また、そのような塩基配列を基にホモロジー検索を行うことにより、残留性有機汚染物質に特異的に結合する蛋白質が特定される。
【0039】
本発明は、以上のような工程により特定された残留性有機汚染物質に特異的に結合する蛋白質をコードする遺伝子の1例を、配列番号1で表される核酸として提供する。また、配列番号1で表される核酸を表2にも示した。
【0040】
【表2】
Figure 2004201526
【0041】
配列番号1で表される核酸は、詳しくは後述の実施例1から3に示すように、残留性有機汚染物質としてダイオキシンを用いて、大腸菌に導入した小腸由来cDNAについて、上述のような方法に従って特定されたダイオキシン結合性小腸膜蛋白質をコードする核酸である。当該核酸によりコードされる蛋白質は、ホモロジー検索の結果、transmembrane molecule withthronbospondin moduleであった。
【0042】
2.被検物質の体内残留性を検出する方法
上述において特定された蛋白質および核酸を利用し、被検物質の体内残留性を検出することが可能である。本発明に従う被検物質の体内残留性を検出する方法は、例えば、以下のような方法であってよい。
【0043】
本発明の第1の態様に従うと、
(i)被検物質と小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質との結合性の存在を検出することと、
(ii)その検出の結果から前記被検物質の体内残留性の有無および/または程度を判定し、それによって被検物質の体内残留性を検出すること、
を具備する被検物質の体内残留性を検出する方法が提供される。
【0044】
更なる態様に従うと、前記小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質の一部が、以下の(i)から(v)により決定される塩基配列によってコードされることを特徴とする前記第1の態様に記載の方法であってもよい;
(i)適切なハイブリダイゼーションが得られる条件下で、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10および配列番号11からなる群より選択される少なくとも1の塩基配列を含む少なくとも1種類の核酸に対して、小腸mRNA由来の一本鎖cDNAを反応させることと、
(ii)前記(i)において前記何れかの核酸に対してハイブリダイズした一本鎖cDNAを回収し、大腸菌に導入することと、
(iii)前記(ii)で導入されたcDNAが前記大腸菌で発現された状態で、残留性有機汚染物質を反応させることと、
(iv)前記(iii)の反応の後に、前記大腸菌への前記残留性有機汚染物質の結合の存在を検出することと、
(v)前記(iv)の存在が検出された大腸菌に導入された小腸mRNA由来のcDNAの塩基配列を決定すること。
【0045】
また更には、更なるもう1つの更なる態様に従うと、前記小腸の膜蛋白質が、配列番号1で表される核酸によりコードされる蛋白質であることを特徴とする大1の態様に記載の被検物質の体内残留性を検出する方法であってもよい。
【0046】
また、被検物質と小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質との結合性の存在を検出するためには、例えば、以下のような手段を使用することが可能である。
【0047】
(a)細胞外での当該蛋白質と被検物質との結合を検出する方法
本発明による検出は、上述のように特定される小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質を細胞の外において用いて、これに対して、被検物質を結合させ、得られた結合を検出する方法であってもよい。
【0048】
例えば、そのような検出は、当該小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質を溶液中に保持した状態で液相として使用して検出を行ってもよく、当該小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質を従来公知の何れかの担体または基板に固定した状態で固相として使用して検出を行ってもよい。
【0049】
液相および固相の何れとして使用する場合も、被検物質と当該蛋白質との結合、即ち、相互作用の検出は、例えば、当該被検物質を抗原として認識する抗体を用いて、当該蛋白質と被検物質の結合を検出してもよい。また検出は、使用する抗体について検出可能な標識を予め行い、この標識による検出可能な信号を検出することにより行っても、或いは前記抗体を一次抗体として使用し、更に前記抗体を認識する標識された二次抗体を使用することにより行ってもよい。例えば、そのような標識は、蛍光物質、化学発光物質および放射性同位元素など、従来公知の何れの標識物質を付加して行ってもよく、または酵素反応などの反応を利用する手段を利用してもよい。
【0050】
また、予め被検物質を直接に標識してもよい。例えば、そのような標識は、蛍光物質、化学発光物質および放射性同位元素など、従来公知の何れの標識物質を付加して行ってもよく、または酵素反応などの反応を利用する手段を用いてもよい。また、例えば、アリルハイドロカーボン受容体(以下、AhRと記す)を利用して以下のように被検物質に標識してもよい。即ち、上述したように生体残留性が疑われる物質の多くは、PAHであると考えられる。AhRは、PAHに高い結合性を有し、且つ基質特異性が低いため、非常に広い範囲のPAH類と結合する。従って、標識物質を付加したAhRに被検物質を結合することによって、被検物質を標識することも可能である。
【0051】
そのような標識は、例えば、以下のように行ってよい。先ず、AhRのcDNAをPCRにより増幅するか、または公知の塩基配列を基に人工的にAhRのcDNAを合成する。このcDNAを発現ベクターに挿入する。当該ベクターは、挿入部位3’側または5’側に標識分子の配列を含ませる。AhRのcDNAを挿入した発現ベクターを動物細胞または大腸菌などの細菌などの宿主にトランスフェクションまたはトランスフォームする。続いて、当該宿主においてベクターのプロモーターを発現させることにより標識化AhRを発現させる。標識化AhRは、宿主内または外の水溶液中で被検物質と結合し、その結果、被検物質は標識される。ここで使用される標識分子は、例えば、GFP、YFP、EFPなどの公知の標識分子であってよく、それらをコードする核酸を当該ベクターに含ませればよい。
【0052】
また、当該蛋白質を固相として使用する場合、ガラス、金属およびシリコンなどの樹脂でできた基板上、またはマイクロタイタープレート、シャーレなどに当該蛋白質を塗布して用いればよい。固相化された当該蛋白質を、予め蛍光物質、電流感受性物質および化学発光物質などで標識した被検物質に一定時間曝露し、洗浄して未結合分子を取り除いた後で、標識物質に応じてレーザー、電極および表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance;SPR)など、それ自身公知の方法により、分子の結合の存在を検出すればよい。例えば、蛍光強度、化学発光量の変化、電流変化、質量変化およびエネルギートランスファーなどを検出することにより、分子の結合の存在を確認することが可能である。
【0053】
エネルギートランスファーを利用する方法は、例えば、蛍光共鳴エネルギー転移(fluorescence resonance energy transfer;以下、FRETと記す。J.Biol.Chem.277、3666−3672、2002、およびLife Science News(Japan.ed)3 2001 Amersham Pharmacia Biotechを参照されたい)を利用すればよい。FRETは、2種類の標識分子間のエネルギートランスファーの存在を検出することによって、当該蛋白質と被検物質との結合を検出する方法である
詳しくは、FRETは、ドナーおよびアクセプターと称される2種類の蛍光物質間のエネルギー転移を利用した手法である。エネルギー転移によってドナーのエネルギーは減少する一方で、アクセプターの蛍光シグナルは増加することを利用している。FRETは、ドナーとアクセプターが近い位置(例えば、50Å〜100Å)にある場合、或いは両者が結合している場合、ドナーを励起したにも関わらず、アクセプターからの蛍光が観察されるという現象を利用する。
【0054】
図2および図3を用いて、FRET検出により細胞を用いずに行う被検物質と小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質との結合を検出する方法の例を説明する。
【0055】
先ず、図1を用いて、小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質のYFPによる標識化の例を概説する。
【0056】
哺乳類から小腸を摘出し、そこから小腸mRNAを抽出する。抽出された小腸mRNAから、一本鎖cDNAを合成し、と、表1に示したリーダーシーケンスに相当する合成DNAとをハイブリダイズする。例えば、抽出された小腸一本鎖cDNAを含む溶液を表1に示したリーダーシーケンスに相当するオリゴヌクレオチドを固定したカラムに通液し、ハイブリダイズを行ってもよい。
【0057】
続いて、当該ハイブリダイゼーションにより得られた二本鎖核酸を抽出し、それを基に小腸cDNAを合成する。
【0058】
得られたcDNAを適切なベクター1に組み込む。このとき、当該cDNAのC末端またはN末端にYFP遺伝子を同時に組み込む。図1では3’側にYFP遺伝子を配置している例を示した。このベクターを所望の細胞または大腸菌などの宿主にトランスフェクションまたはトランスフォームする。当該宿主においてベクターのプロモーターを発現させることによりYFP4が融合した小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質3からなるYFP融合小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質2が発現される。
【0059】
次に、図2を用いて、被検物質の結合性の検出の概要について説明する。被検物質は、予め、共有結合によりCFP12を付与するか、CFP12をC末端に組換えて付与したAhRと結合させ標識しておく。何れかの手段によりCFP12で標識された被検物質11を、上述で発現されたYFP融合小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質に対して曝露する。その後、蛍光強度を測定し、当該YFP融合小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質2に対して被検物質が結合したか否かを検出する。
【0060】
被検物質11が、YFP融合小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質2に結合した状態の結合蛋白質13では、被検物質11が受容体である小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質3に結合し、それによって被検物質11に標識されたCFP12は、YFP4から近い位置に配置される。このような結合蛋白質13について、ドナーを励起するための波長で励起すれば、アクセプターからの蛍光が検出される。従って、蛍光の検出を基に被検物質の小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質への結合の存在を検出することが可能である。
【0061】
図2では、YFP融合小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質2を基板14に固定化したプロテインチップ15を用いる例を示した。プロテインチップ15は、基体としての基板14と、当該基体に固定化されたプローブとしての蛋白質、即ち、1例ではあるが、YFP融合小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質が具備されている。
【0062】
また、上述したエネルギートランスファーを利用した方法は、これに限定するものではなく、液相でも同様に反応を行うことが可能である。
【0063】
また、以下で説明する細胞内での検出に、これらの検出方法を利用することも可能である。その場合は、当該YFP融合小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質を所望の宿主に発現させればよい。その場合も当該蛋白質を細胞外で用いる場合と同様に、液相で細胞を用いて検出を行っても、何れかの基体に固定化した細胞を用いてもよい。本発明として、そのような基体と、基体に固定化されたプローブとしての遺伝子導入細胞とを具備するプローブ固定化チップとして提供されてもよい。このような方法およびプローブ固定化チップも本発明の範囲内である。
【0064】
(b)細胞上の当該蛋白質と被検物質との結合を検出する方法
本発明による検出は、上述のように特定される小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質をコードする核酸を機能可能に導入された細胞を用いて、これに対して、被検物質を結合させ、得られた結合を検出する方法であってもよい。
【0065】
このように細胞内に導入した遺伝子により産生された当該蛋白質を用いて、被検物質のスクリーニングする場合には、細胞上の当該蛋白質と被検物質との結合を検出するために、細胞を用いない上述の蛋白質と被検物質との結合を検出する方法について記載したのと同様な方法により検出を行ってもよい。
【0066】
本発明に従い小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質をコードする核酸を導入することが可能な細胞は、当該遺伝子を機能可能に導入することが可能な細胞であれば、それ自身公知の何れの細胞であってもよい。例えば、CHO、Hela、およびCaco−2などが挙げられる。また、そのような導入は、当該遺伝子を機能可能に導入することが可能な方法であれば、それ自身公知の何れの方法であってもよい。
【0067】
また、以下に説明するように、FRETなどを利用して、2種類の標識分子間のエネルギートランスファーの存在を検出することによって、当該蛋白質と被検物質との結合を検出してもよい。以下の(i)から(iii)に、エネルギートランスファーを利用した検出方法の例を記載する。
【0068】
(i)小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質をコードする配列を含むベクターの作成
先ず、ラットなどの哺乳類から小腸を摘出し、そこからmRNAを抽出する。このmRNAについて逆転写反応を行い、cDNAを合成する。cDNAの5’末端部分に特定のリーダーシーケンスが存在するものを選別する。(また、所望に応じて、次に、以下の操作を行ってもよい。ラットから脳を摘出し、そのmRNAを抽出して、逆転写反応を行いcDNAを合成する。小腸由来のcDNAと脳由来のcDNAをサブトラクションし、小腸に特異的に存在するcDNA溶液だけを単離する。この括弧内に記載した操作は省略することも可能である。)
次に、小腸からのcDNAを、発現ベクターに挿入する。挿入断片のc末端側またはN末端側に、標識分子の配列があってもよい。
【0069】
(ii)AhRのcDNAを含むベクターの作成
先ず、AhRのcDNAをPCRにより増幅するか、または公知の塩基配列を基に人工的にAhRのcDNAを合成する。このcDNAを発現ベクターに挿入する。当該ベクターは、挿入部位3’側または5’側に標識分子の配列を含ませる。
【0070】
(iii)小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質と被検物質との結合の検出
上記の(i)と(ii)で作成したベクターを同一宿主内にコトランスフェクトして共存させる。そして、両ベクターを発現させた上で、被検物質に曝露し、被検物質と小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質との相互作用を両分子の標識分子間のエネルギートランスファーによって検出する。更に詳しくは以下のように説明される。
【0071】
上記(i)に示したベクター、即ち、小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質とそのC末端またはN末端にエネルギートランスファーを生じ得る第1の標識物質(例えば、ドナー)を挿入したベクターと、上記(ii)に示したベクター、即ち、AhRとそのC末端またはN末端にエネルギートランスファーを起こし得る第2の標識物質(例えば、アクセプター)を挿入したベクターを動物細胞または大腸菌などの細菌などの宿主内にダブルトランスフェクトまたはトランスフォームする。ここで、エネルギートランスファーを起こす第1の標識物質(例えば、ドナー)と、第2の標識物質(例えば、アクセプター)の組み合わせは、使用する一方の標識物質を決定すれば、それに適切なもう一方の標識物質は自ずと決定される。例えば、エネルギートランスファーを起こす標識分子としては、CFPとYFPを、それぞれドナーとアクセプターとして使用することが可能である。しかしながら、標識物質はこれらに限定されるものでない。
【0072】
また、当該組換え細胞を固相として使用する場合、ガラス、金属およびシリコンなどの樹脂でできた基板上、またはマイクロタイタープレート若しくはシャーレなどに当該組換え細胞を固定して用いればよい。
【0073】
細胞をプローブとして固定化したプローブ固定化チップの1例の概要を示す模式図を図3に示す。プローブ固定化チップ18は、基体14と、当該基体14の表面に固定化されたプローブとしての細胞16を具備する。また、当該細胞は、本発明に従う小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質をコードする遺伝子を組み込まれた遺伝子導入細胞であり、本発明に従う被検物質の体内残留性を検出する方法を実施する際には、当該細胞の表面に小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質が配置される。或いは、所望に応じて、本発明に従う被検物質の体内残留性を検出する方法を実施する際に、当該細胞から小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質が細胞外に放出されてもよい。
【0074】
また、このような組換え細胞において発現される所望の標識化蛋白質は、当該細胞の膜上に発現されても、また、当該細胞から培養液などの溶液中に分泌されてもよく、その何れの場合も、本発明の方法において利用することが可能である。それらを利用した方法、細胞、蛋白質およびプローブ固定化基体は、全て本発明の範囲に含まれる。
【0075】
実施例
実施例1 小腸膜蛋白質のmRNAの単離
SDラットをエーテル麻酔し、小腸を摘出した。摘出した小腸をPBSで洗浄し、グアニジンチオシアネート・Nラウリルサルコシン・EDTAを含む抽出バッファー中でホモジナイズした。得られたホモジネートから、TRIZOL試薬(Invitrogen社製)を用いて、全RNAを抽出した。その後、Message Makaer(Invitrogen社製)を用いたOligodTセルロースフィルターに通すことによって、全RNAからmRNAを選択的に抽出した。これを小腸mRNA溶液とした。この小腸mRNAについて、逆転写酵素SuperscriptII(Invtrogen社製)を用いて逆転写を行い、RnaseHと反応させることによって、1本鎖小腸cDNA溶液とした。
【0076】
一方、表1に示した核酸配列、即ち、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10および配列番号11、を基に合成DNAを合成した。合成DNAの5’末端にはビオチンを結合した。ビオチン化合成DNAと小腸cDNA溶液を、室温で30分間静置して、即ち、適切なハイブリダイゼーションを得られる条件下で反応を行った。当該反応の結果、互いに相補性を有する核酸鎖が存在すればハイブリダイゼーションが生じる。反応を行った後、PBS緩衝液中でストレプトアビジンコーティングビーズ(ピアス社製)と室温で反応させた。その後、遠心によってビーズを回収した。回収されたビーズから得られたcDNA溶液を小腸膜蛋白質cDNA溶液とした。
【0077】
実施例2 ダイオキシン結合性小腸膜蛋白質の単離
前記実施例1で得られた小腸膜蛋白質cDNAを、λgt11ベクターに以下の手順で挿入した。先ず、DNAポリメラーゼIにより、完全DNAを合成した後、T4DNAポリメラーゼによってDNAの平滑化を行った。平滑化を行ったDNAをEcoRVで切断したλgt11ベクターにLigaseを用いて連結した。連結したDNAをファージ粒子中にパッケージングキット(Stratagene社製)を用いてパッケージングした。
【0078】
次に、以下の手順により、λベクター中に挿入された小腸膜蛋白質遺伝子を大腸菌で発現させた。先ず、大腸菌Y1090株をLBM培地中で一晩培養した。その培養液0.2mLと、1x10程度に希釈したファージ液とを混合した。これを37℃で10分間インキュベートし、前記ファージにパッケージされたDNAを当該大腸菌に導入した。この大腸菌液に対して溶融状態のLBMアガロースを添加して素早く撹拌し、更に、予め用意しておいたボトムアガー(ここではLBMアガーを使用した)入りのシャーレに素早く広げた。このLBMアガロースが固まった後、43.5℃で3.5時間インキュベートし、プラークを形成させた。
【0079】
続いて、得られた各プラークで発現された蛋白質の性質をニトロセルロース膜を使用して以下のように判定した。予め10mMPTG(即ち、イソプロピルチオガラクトピラノシド)に浸して乾燥させたニトロセルロース膜を、当該プラークを形成したプレートに重ねた。これを37℃で3.5時間インキュベートし、大腸菌に導入したcDNAを発現させた。インキュベートの後、当該ニトロセルロース膜を、TBS緩衝液で洗浄し、ダイオキシンとの結合に使用した。このニトロセルロース膜を、1μMのダイオキシン(2,3,7,8−TCDD)を含み、且つ1%BSAを含むPBS緩衝液中に浸し、室温で24時間反応させた。その後、当該ニトロセルロース膜をPBS緩衝液で洗浄した。
【0080】
続いて、以下のような抗原抗体による常法により、ニトロセルロース膜上の蛋白質に対するダイオキシン結合の存在の検出を行った。先ず、ニトロセルロース膜を一次抗体である抗ダイオキシン抗体(Stratagegic Diagnostic社製)と混合し、室温で1時間反応させた。続いて洗浄し、二次抗体であるHRPラベル化ヤギ抗マウス抗体(BioRad社製)と1時間反応させた。その後洗浄し、100μg/mLのDAB溶液と過酸化水素水による発色液で発色させた。それによりダイオキシンの結合したニトロセルロース膜上のスポットが特定された。
【0081】
特定されたニトロセルロース膜上のスポットに対応するプラークを、アガーごと回収し、これをSM緩衝域中に懸濁し、ダイオキシン結合性小腸蛋白質cDNAを含むλファージの懸濁液とした。
【0082】
実施例3 ダイオキシン結合性小腸膜蛋白質の同定
上述の実施例2で得られたダイオキシン結合性小腸蛋白質cDNAを含むλファージの懸濁液を1x10程度に希釈した。この希釈した懸濁液を、LBM培地中で一晩培養した大腸菌Y1090株を含む培養液0.2mLと混合した。これを37℃で10分間インキュベートして、当該DNAを当該大腸菌に導入した。
【0083】
この大腸菌液に対して溶融状態のLBMアガロースを添加して素早く撹拌し、これを、予め用意しておいたボトムアガー(ここではLBMアガーを使用した)入りのシャーレに素早く広げた。このLBMアガロースが固まった後、43.5℃で3.5時間インキュベートし、プラークを形成させた。このプラークを充分に形成したプレート上にSM緩衝液および少量のクロロホルムを添加してプレートライセートを行い、λファージの懸濁液を回収した。回収されたλファージ液に、RNaseAおよびDNaseIをそれぞれ5μL/mLとなるように添加し、37℃で30分間インキュベートした。次に、同量のPEG6000・2.5MのNaCl溶液を加え、混合後0℃で1時間塩析した。この混合液を4℃で遠心した後、上清を完全に除去した。得られた沈殿物をSM緩衝液に懸濁した。更に、この液を8000rpmで遠心して大腸菌の断片を除き、上清にEDTAとSDSをそれぞれ10mMと0.1%になるように加えた。これを65℃で5分間インキュベートした。その後、フェノール抽出とエタノール沈殿を行って、λDNA溶液を得た。このλDNAに対して、常法により、挿入DNAのシーケンシングを行った。その結果、配列番号1に示す塩基配列が得られた。ホモロジー検索により、この配列は、transmembrane molecule with thronbospondin moduleであることが明らかとなった。
【0084】
実施例4 組換えtransmembrane molecule withthronbospondin module蛋白質のCFP標識ベクターの構築
上述の実施例3で得られたλDNAをAceIで切断した。これを、EcoRIアダプター(GGAATTCC)と同時に、AccIとEcoRIで予め切断したCFPとを含むベクターであるpECFP−F1(クローンテック社製)に対して、Ligaseを用いて連結した。このように組み換えたベクターを、大腸菌XL1−Blueにトランスフォームした。組換え体の選択は、カナマイシンを含むSuper−Agar培地(この培地の組成は以下の通りである;3.5%のBactotryptone、2%のYeast Extract、0.5%のNaCl、pH7.4、1.5%のAgarである)上で行った。当該組み換えられたベクターはpECFP−TMとした。
【0085】
実施例5 組換えAHR蛋白質のYFP標識ベクターの構築
SDラットをエーテル麻酔し、肝臓を摘出した。これをPBSで洗浄し、グアニジンチオシアネート・Nラウリルサルコシン・EDTAを含む抽出バッファー中でホモジナイズした。ホモジネートから、TRIZOL試薬(Invitrogen社製)を用いて、全RnaseA,DnaseIを抽出した。その後、Messenge Makaer(Invitrogen社製)を用いて、OligodTセルロースフィルターに通液することによって、全RNAからmRNAを選択的に抽出した。mRNAは、逆転写酵素SuperscriptII(Invitrogen)を用いて逆転写を行い、肝臓cDNA溶液とした。
【0086】
この肝臓cDNA溶液溶液について、配列番号21および配列番号22に示される塩基配列を含むプライマーと、LA−Taqを用いてPCR反応を行い、それによりAHR遺伝子を増幅した。
【0087】
【表3】
Figure 2004201526
【0088】
続いて、AHRDNAをEcoRIで切断し、これを、EcoRIで予め切断したYFPを含むベクターであるpEYFP−N1(クローンテック社製)に対して、Ligaseを用いて連結した。この組み換えたベクターをXL1−Blueにトランスフォームした。組換え体の選択は、カナマイシンを含むSuper−Agar培地(この培地の組成は以下の通りである;3.5%のBactotryptone、2%のYeast Extract、0.5%のNaCl、pH7.4、1.5%のAgar)上で行った。当該組み換えられたベクターをpEYFP−AHRとした。
【0089】
実施例6 transmembrane molecule with thronbospondin moduleを用いたダイオキシンの検出
上述の実施例4および実施例5で得られたpECFP−TMとpEYFP−AHRをリポフェクトアミン(Invitrogen社製)によりCHO細胞にトランスフェクションした。詳しくは、以下の通りである。
【0090】
先ず、F12培地(Invitrogen社製)の25μL中に各々0.2μgのplasmid DNAを混合したものと、25μLのF12培地中にリポフェクトアミン1μLを混合したものとを混合し、室温で45分間反応させた。これと、上清を回収してF12培地に懸濁したCHO細胞とを混合し、5時間培養した。その後、G418を含む5%FCS含有F12培地中で培養し、プラスミドの入っている遺伝子導入CHO細胞を選択した。得られた2種類の遺伝子導入CHO細胞をそれぞれCHO/TM細胞とCHO/AHR細胞とした。
【0091】
これらのCHO/TM細胞およびCHO/AHR細胞を、10%FCSを含むD/F培地に1x10個の濃度に懸濁し、3センチシャーレに播種し、24時間培養した。この培養の後、上清を回収し、イメージング緩衝液(この組成は以下の通りである;136mMのNaCl、4.7mMのKCl、1.25mMのMgSO、1.25mMのCaCl、2mMのHaHCO、5mMのリン酸ナトリム、25mMのHepes、PH7.4)を1mL加え、更に1μMのTCDDを添加して24時間37℃で培養した。その後、460nmで励起し、480nmと535nmの蛍光シグナルの有無を観察し、535nmのシグナルの増加からダイオキシンの検出を行った。
【0092】
実施例7 細胞固定化チップの作製
実施例6で作製したCHO/TM細胞を10%kFCSを含むD/F培地に1x10個の濃度に懸濁し、底面が無蛍光ガラスで、壁面が遮光プラスチックで出来ている直径5mm、深さ5mmのマイクロタイタープレート状基板の各ウェルに50μLずつ播種した。続いて、CHO/AHR細胞も同様に10%kFCSを含むD/F培地に1x10個の濃度に懸濁して、各ウェルに50μLずつ播種した。24時間培養した後、上清を回収し、イメージング緩衝液(この組成は以下の通りである;136mMのNaCl、4.7mMのKCl、1.25mMのMgSO、1.25mMのCaCl、2mMのHaHCO、5mMのリン酸ナトリム、25mMのHepes、PH7.4)を0.1mLと被検物質を加え、24時間37℃で培養した。その後、460nmで励起し、480nmと535nmMの蛍光シグナルの有無を観察し、535nmのシグナルの増加から結合性の検出を行った。
【0093】
【発明の効果】
本発明によると、被検物質の小腸蛋白質との結合性を容易に検出することが可能である。このような被検物質の小腸蛋白質との結合性の検出によって、被検物質の体内残留性を簡易に検出することが可能になる。本発明によれば、例えば、POPsの検出に有利に使用することが可能となること、並びに多くの物質についてのスクリーニングを簡易におよび/または短時間に行うことが可能となると期待される。
【0094】
【配列表】
Figure 2004201526
Figure 2004201526
Figure 2004201526
Figure 2004201526
Figure 2004201526

【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の態様において使用され得る小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質の標識方法の例を示すフローチャート。
【図2】本発明の態様において使用され得る被検物質の結合性の検出方法の例を示すフローチャート。
【図3】本発明の態様に従う1例であるプローブ固定化チップを示す図。
【符号の説明】
1.ベクター 2.YFP融合残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質 3.残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質 4.YFP 11.被検物質 12.CFP 13.結合蛋白質 14.基板 15.プローブ固定化チップ(プロテインチップの例) 16.遺伝子導入細胞 17.残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質 18.プローブ固定化チップ(細胞チップの例)

Claims (8)

  1. (1)被検物質と小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質との結合性の存在を検出することと、
    (2)その検出の結果から前記被検物質の体内残留性の有無および/または程度を判定し、それによって被検物質の体内残留性を検出すること、
    を具備する被検物質の体内残留性を検出する方法。
  2. 前記膜蛋白質が以下の(i)から(v)までにより決定される塩基配列によってコードされることを特徴とする請求項1に記載の方法;
    (i)適切なハイブリダイゼーションが得られる条件下で、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10および配列番号11からなる群より選択される少なくとも1の塩基配列を含む少なくとも1種類の核酸に対して、小腸mRNA由来の一本鎖cDNAを反応させることと、
    (ii)前記(i)において前記何れかの核酸に対してハイブリダイズした一本鎖cDNAを回収し、大腸菌に導入することと、
    (iii)前記(ii)で導入されたcDNAが前記大腸菌で発現された状態で、残留性有機汚染物質を反応させることと、
    (iv)前記(iii)の反応の後に、前記大腸菌への前記残留性有機汚染物質の結合の存在を検出することと、
    (v)前記(iv)の存在が検出された大腸菌に導入された小腸mRNA由来のcDNAの塩基配列を決定すること。
  3. 前記膜蛋白質が、配列番号1で表される核酸によりコードされる蛋白質であることを特徴とする請求項1または2の何れか1項に記載の被検物質の体内残留性を検出する方法。
  4. 前記(1)の検出よりも前に、前記被検物質が第1の蛍光標識物質で標識され、且つ前記小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質が第2の蛍光標識物質で標識され、当該(1)の検出することが、前記被検物質と前記小腸の残留性有機汚染物質結合性膜蛋白質とを接触させた後で、第1の蛍光標識物質または第2の蛍光標識物質のうち、エネルギートランスファーのためのドナーである何れか一方の励起波長で励起し、アクセプターである他方の蛍光波長を測定することによって行われ、更に、前記(1)の検出でエネルギートランスファーが検出された場合に、前記(2)において前記被検物質は体内残留性を有すると判定されることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の被検物質の体内残留性を検出する方法。
  5. 被検物質の体内残留性物質を検出するための蛋白質をコードし、以下により決定される塩基配列を有する核酸;
    (i)適切なハイブリダイゼーションが得られる条件下で、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10および配列番号11からなる群より選択される少なくとも1の塩基配列を含む少なくとも1種類の核酸に対して、小腸mRNA由来の一本鎖cDNAを反応させること、
    (ii)前記(i)において何れかの核酸にハイブリダイズした一本鎖cDNAを回収し、大腸菌に導入することと、
    (iii)前記(ii)で導入されたcDNAが前記大腸菌で発現された状態で残留性有機汚染物質を反応させることと、
    (iv)前記(iii)の反応の後に、前記大腸菌への前記残留性有機汚染物質の結合の存在を検出することと、
    (v)前記(iv)の存在が検出された大腸菌に導入された小腸mRNA由来のcDNAの塩基配列を決定すること。
  6. 請求項5に記載の核酸によりコードされる蛋白質。
  7. 配列番号1で表される核酸を遺伝子として機能可能に導入された被検物質の体内残留性物質を検出するための細胞。
  8. 基体と、前記基体の表面に固定され、請求項7に記載の細胞をプローブとして具備する被検物質の体内残留性物質を検出するためのプローブ固定化チップ。
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