JP2004201064A - オペアンプ - Google Patents

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Abstract

【課題】オペアンプのTHD特性、CMRR特性等を向上する。
【解決手段】Pチャネル型のメイントランジスタ・ペア(MP1,MP2)に対応して、Pチャネル型MOSトランジスタ)のダミートランジスタ・ペア(MDP1,MDP2)を設け、同様に、Nチャネル型のメイントランジスタ・ペア(MN1,MN2)に対応して、Nチャネル型MOSトランジスタのダミートランジスタ・ペア(MDN1,MDN2)を設けた。更に、これらのメイントランジスタ・ペア(MP1,MP2)、(MDP1,MDP2)とダミートランジスタ・ペア(MN1,MN2)、(MDN1,MDN2)とをコモンモード入力電圧VCMに応じて、相補的に動作させる制御回路を設けた。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オペアンプ(Operational Amplifier)に関し、特にレール・ツー・レール(Rail to Rail)型オペアンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
レール・ツー・レール(Rail to Rail)型オペアンプは、入力信号及び出力信号を低い側の供給電圧(VSS)から高い側の供給電圧(VDD)までスイングするようにしたオペアンプである。このレール・ツー・レール型オペアンプによれば、高い信号振幅を供給できるため、多くのアプリケーションを持った重要な回路を構成することが可能になる。
【0003】
ところで、電力がその主な課題である、電池によって駆動される装置に将来がかかっている。そのような装置の消費電力を低減するために、高い側の供給電圧(VDD)がしだいに低減されつつある。供給電圧を低減する他の理由は、MOSFET(以下、MOSトランジスタという)の大きさを縮小化するためである。MOSトランジスタの大きさが縮小化されれば、レイアウト面積も小さくなり、その結果製造コストも削減される。
【0004】
MOSトランジスタのしきい値電圧(V)は、VDDの低減と比較すれば、ほとんど低減されていない。しきい値電圧(V)を下げ過ぎるとトンネル効果によりリーク電流が増加し、MOSFETの特性が劣化してしまうことが、しきい値電圧(V)の低減の制限となっている。
【0005】
このようにVDDとVとが比例して低減されないために、従来のオペアンプにおいてはコモンモード入力電圧レンジ(common mode input voltage range)が狭くなっていた。従来のオペアンプは、入力回路に一種類の入力ペア(Pチャネル型MOSトランジスタ又はNチャネル型MOSトランジスタ)しか用いていなかったので、入力電圧信号の振幅が限られていた。信号振幅が低くなると、信号ノイズ比(SN比)が悪くなり、ノイズ感度が高くなってしまう。
【0006】
今日では、アナログ回路とデジタル回路を同一のチップ上に形成した混合信号回路(Mixed signal circuits)が普及している。そして、チップ上のデジタル部の割合は増加し、アナログ部の割合は減少しつつある。デジタル回路はノイズの主な発生源となっており、そのノイズの割合は最近の回路では増加しつつある。この過剰なノイズは反対にアナログ回路の特性に悪影響を与えている。この問題を解決するためには、信号振幅を高くすることが望まれる。そこで、高い信号振幅を与えることができるレール・ツー・レール型オペアンプが今日の回路設計において非常に重要となっている。
【0007】
レール・ツー・レール型オペアンプは、相補的な入力ペアを用いることによってレール・ツー・レールの入力信号振幅を得ることができる。すなわち、図7に示すように、このオペアンプは、電流源50から電流IPが供給されたPチャネル型MOSトランジスタ・ペア(MP1,MP2)と、電流源51から電流INが供給されたNチャネル型MOSトランジスタ・ペア(MN1,MN2)を入力トランジスタとして用いている。
【0008】
2つのトランジスタ・ペアからの出力電流は電流加算回路52で加算される。そして、この電流加算回路52によって駆動された出力段53から出力電圧Voutが出力される。
【0009】
レール・ツー・レール型オペアンプについては、以下の非特許文献1,2に詳しく記載されている。
【0010】
【非特許文献1】
アール.ホガーボースト他「コンパクトな電力効率の良い、VLSIライブラリーのための、3VCMOS レール・ツー・レール 入力/出力 オペアンプ」アイ・イー・イー・イー ジェイ・エス・エス・シー 第29巻、1505−1513頁、1994年12月
R.Hogervorst et al.,”A compact power-efficient 3V CMOS rail-to-rail
Input/output operational amplifier for VLSI libraries,”IEEE JSSC,Vol.29,PP.1505-1513,Dec.1994
【0011】
【非特許文献2】
ダブリュー.レッドマン−ホワイト「高いバンド幅で一定のgmとスリューレートを有したレール・ツー・レールCMOS入力回路及び、低電圧のVLSIシステムのためのアナログセルへの適用」アイ・イー・イー・イー ジェイ・エス・エス・シー 第32巻、701−712頁、1997年5月
W.Redman-White,”A high bandwidth constant gm and slew rate rail-to-rail
CMOS input circuit and its application to analog cells for low voltage VLSI systems”IEEE JSSC,Vol.32 PP.701-712,May 1997.
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
次に、レール・ツー・レール型オペアンプの幾つかの課題について説明する。
(1)トランスコンダクタンスgm
図7に示されたオペアンプは、トランスコンダクタンスgmが一定ではないという問題を有する。このオペアンプのgmは、図8に示すように、コモンモード入力電圧VCMレンジに依存して変動してしまう。レール・ツー・レール型オペアンプでは、トランスコンダクタンスgmが一定であることが非常に望まれる。それは、gmが入力電圧VCMレンジに依存して変動すると、オペアンプの単一ゲインバンド幅(Unity Gain Bandwidth)[UGB]もVCMに伴って変動してしまうからである。UGBは、次の数1で与えられる。
【0013】
【数1】
Figure 2004201064
【0014】
UGB=gm/Cc
ここで、Ccはオペアンプの補償キャパシタの容量値である。通常、この補償キャパシタはチップの内部に設けられるが、その容量値は一定であるため、UGBはgmに比例して変動してしまう。このUGBの変動はVCMに依存した位相マージン(phase margin)の変化を引き起こし、回路を不安定にするおそれがある。
(2)入力オフセット(Input Referred Offset)
入力オフセットは、オペアンプの重要なパラメーターである。入力オフセットは全てのVCMレンジで一定であることが望まれる。オフセット変動の影響を説明するための回路である、非反転バッファを図9に示す。入力オフセットが一定の場合、図10に示すように出力信号のレベルシフトが起きるが、信号のひずみは生じない。一方、入力オフセットがVCMレンジで変動すると出力信号は図11に示すように大きなひずみを生じる。
【0015】
図7のオペアンプにおいて、低VCMレンジではPチャネル型MOSトランジスタ・ペア(MP1,MP2)のみオンになり、それを流れる電流が電流加算回路52に寄与する。同様に、高VCMレンジではNチャネル型MOSトランジスタ・ペア(MN1,MN2)のみオンになり、それを流れる電流が電流加算回路52に寄与する。しかし、中間VCMレンジでは、Pチャネル型MOSトランジスタ・ペア(MP1,MP2)とNチャネル型MOSトランジスタ・ペア(MN1,MN2)の両方が、オンになり、それらを流れる電流が電流加算回路52に寄与する。
【0016】
その様子を図12に示す。入力ペアを構成する2つのトランジスタのミスマッチがオペアンプの入力オフセットの主な原因である。中間VCMレンジのオフセットは低VCMレンジ及び高VCMレンジに比べて大きくなる。これは、中間VCMレンジでは2つのペアが寄与するためである。更に、低VCMレンジと高VCMレンジのオフセットも等しくない。これは、これらのレンジでは異なるタイプ(Pチャネル型とNチャネル型)のトランジスタ・ペアが寄与するからである。
【0017】
Pチャネル型MOSトランジスタとNチャネル型MOSトランジスタとは、レイアウトや製造プロセスの相違のために、これらをマッチングさせることは不可能である。したがって、図7の回路は高調波ひずみ(Total Harmonic Distortion)[THD]が高いという問題を有していた。
(3)コモンモード・リジェクション比[CMMR]
オペアンプ設計の他の要求事項は、一定でかつ高いコモンモード・リジェクション比(Common Mode Rejection Ratio)[CMMR]を有していることである。CMMRは、次式のようにコモンモードゲイン(ACM)に対するオペアンプの差動ゲイン(A)の比で定義される。
【0018】
【数2】
Figure 2004201064
【0019】
CMMR=A/ACM
オペアンプのオフセットは、AとACMに依存する。もしこれらのパラメータが変動すればオフセットも変動し、上述したようにTHDが増加してしまう。レール・ツー・レール型オペアンプでは、Aの変動を抑制することはできるが、ACMは大きく変動する。ACMの変動は回路アーキテクチャーによって引き起こされるので、回路アーキテクチャーを変更しない限りコントロールできない。
【0020】
図13は一般的なオペアンプを示す図である。このオペアンプの出力信号Voutは次式で与えられる。
【0021】
【数3】
Figure 2004201064
【0022】
この数3は、オペアンプのオフセットVOFFがコモンモードゲイン(ACM)及び差動ゲイン(A)に依存することを示している。オペアンプは理想的にはコモンモード値にかかわらず、2つの異なる入力電位の差を増幅するものであるから、ACM=0であることが望まれる。加えて、オフセットVOFF=0であることが望まれる。これらの理想的な条件を実現するためには、A=∞でなければならない。これらの理想的な条件を代入することにより、数2,数3は次の式に還元される。すなわち、CMMR=∞、VOFF=0である。
(4)一定の出力電流
入力トランジスタ・ペアの電流出力は、電流加算回路に供給される。図14の回路は、電流加算回路及び、レール・ツー・レール出力スイングを可能にするAB級出力回路を示している。トランジスタ・ペア(MPM1,MPM2)は第1のカレントミラーを形成し、トランジスタ・ペア(MNM1,MNM2)は第2のカレントミラーを形成する。
【0023】
更に、トランジスタ・ペア(MFP1,MFN1)は、これらのトランジスタを流れる電流Iの加算値が一定となるように、浮遊電流源を形成している。同様に、トランジスタ・ペア(MFP2,MFN2)は他の浮遊電流源を形成している。
【0024】
この回路の上記2つのカレントミラーは入力オフセットに寄与する。これらのカレントミラーによるオフセットは全てのコモンモード入力電圧VCMレンジにおいて一定であることが望まれる。図14において、トランジスタMPM1の電流は、Nチャネル型MOSトランジスタの入力ペアの電流Iと電流IN1の和であることがわかる。同様に、図14において、トランジスタMPM2の電流は、Nチャネル型MOSトランジスタの入力ペアの電流Iと電流IN2の和であることがわかる。このカレントミラーによって寄与されるオフセットは、それを流れるバイアス電流に依存する。すなわち、オフセットへの寄与は、カレントミラーを形成するトランジスタを流れる電流の変化に伴って変化する。
【0025】
従来のレール・ツー・レールの入力段は、入力段の電流IN1,IN2,IP1,IP2によって供給される電流はVCMのレンジによって変化してしまう。このため、
カレントミラーのオフセットへの寄与は、VCMレンジと共に変化し、THDを大きくしてしまう原因となっていた。
【0026】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明のオペアンプの主な特徴構成は、コモンモード入力電圧VCMが供給されたメイントランジスタ・ペアに対応して、同じ導電型(Pチャネル型MOSトランジスタ又はPチャネル型MOSトランジスタ)のダミートランジスタ・ペアを設け、更にメイントランジスタ・ペアとダミートランジスタ・ペアとはコモンモード入力電圧VCMに応じて、相補的に動作させる制御回路を設けた。
【0027】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
図1は本発明のオペアンプの基本的スキームを示す図である。この基本的なスキームによれば、低い高調波ひずみTHDと一定のトランスコンダクタンスgmを実現することができる。
【0029】
図1は、コモンモード入力電圧VCMレンジを3つのフェーズ(相)に分け、それぞれのフェーズで動作するトランジスタ・ペアを示している。図において、PチャネルMOSトランジスタから成るメイントランジスタ・ペア(MP1,MP2)に対応して、ダミートランジスタ・ペア(MDP1,MDP2)が設けられ、PチャネルMOSトランジスタから成るメイントランジスタ・ペア(MP3,MP4)に対応して、ダミートランジスタ・ペア(MDP3,MDP4)が設けられている。
【0030】
同様に、NチャネルMOSトランジスタから成るメイントランジスタ・ペア(MN1,MN2)に対応して、ダミートランジスタ・ペア(MDN1,MDN2)が設けられ、NチャネルMOSトランジスタから成るメイントランジスタ・ペア(MN3,MN4)に対応して、ダミートランジスタ・ペア(MDN3,MDN4)が設けられている。
【0031】
図1からわかるように、各フェーズで、2つのPチャネルMOSトランジスタのペアと2つのNチャネルトランジスタのペアが動作している。各ペアは電流加算回路に等しい電流を供給する。これにより、オフセット変動が低減され、低いTHDが実現できる。
【0032】
更に説明すれば、コモンモード入力電圧VCMが低入力電圧から中間入力電圧に変化すると、PチャネルMOSトランジスタから成るメイントランジスタ・ペア(MP3,MP4)は動作を停止し(すなわち、オフし)、その代わりにダミートランジスタ・ペア(MDP3,MDP4)が動作(すなわち、オン)する。つまり、メイントランジスタ・ペア(MP3,MP4)とダミートランジスタ・ペア(MDP3,MDP4)とは入力電圧のレベルに応じて相補的に動作する。また、NチャネルMOSトランジスタから成るダミートランジスタ・ペア(MDN1,MDN2)は動作を停止し(すなわち、オフし)、その代わりにメイントランジスタ・ペア(MN1,MN2)が動作(すなわち、オン)する。
【0033】
このようにフェーズの遷移に伴い、PチャネルMOSトランジスタ・ペアが別のPチャネルMOSトランジスタ・ペアに置き換えられ、NチャネルMOSトランジスタ・ペアが別のNチャネルMOSトランジスタ・ペアに置き換えられる。
【0034】
同様に、コモンモード入力電圧VCMが中間入力電圧から高入力電圧に変化すると、PチャネルMOSトランジスタから成るメイントランジスタ・ペア(MP1,MP2)は動作を停止し(すなわち、オフし)、その代わりにダミートランジスタ・ペア(MDP1,MDP1)が動作(すなわち、オン)する。つまり、メイントランジスタ・ペア(MP1,MP2)とダミートランジスタ・ペア(MDP1,MDP2)とは入力電圧のレベルに応じて相補的に動作する。また、NチャネルMOSトランジスタから成るダミートランジスタ・ペア(MDN3,MDN4)は動作を停止し(すなわち、オフし)、その代わりにメイントランジスタ・ペア(MN3,MN4)が動作(すなわち、オン)する。
【0035】
すなわち、メイントランジスタ・ペアとダミートランジスタ・ペアとが置き換えられるが、それらのペアはいずれも同じ導電型(PチャネルMOSトランジスタ又はNチャネルMOSトランジスタ)であるため、これらのペアをレイアウト上で精密にマッチングさせることができる。メイントランジスタ・ペアとダミートランジスタ・ペアとをマッチングさせれば、メイントランジスタ・ペアとダミートランジスタ・ペアによるオフセットへの寄与は同じになる。従って、すべてのコモンモード入力電圧VCMレンジで、入力段のオフセットは一定となる。
【0036】
次に、上述した本発明のオペアンプの基本的スキームを実現する具体的な回路例について説明する。図2は本発明の実施形態に係るオペアンプを示した回路図である。
【0037】
図2において、(MP1,MP2)、(MP3,MP4)はPチャネルMOSトランジスタから成るメイントランジスタ・ペアである。(MDP1,MDP2)、(MDP3,MDP4)は、PチャネルMOSトランジスタから成る、対応するダミートランジスタ・ペアである。同様に、(MN1,MN2)、(MN3,MN4)はNチャネルMOSトランジスタから成るメイントランジスタ・ペアである。(MDN1,MDN2)、(MDN3,MDN4)は、NチャネルMOSトランジスタから成る、対応するダミートランジスタ・ペアである。
【0038】
各メイントランジスタ・ペアには、各トランジスタのゲートに正入力電圧VP及び負入力電圧VNが入力されている。コモンモード入力では、VP=VNである。また、PチャネルMOSトランジスタのダミートランジスタ・ペア(MDP1,MDP2)については、各トランジスタのゲートにVSS(接地電位)が供給され、NチャネルMOSトランジスタのダミートランジスタ・ペア(MDN1,MDN2)については、各トランジスタのゲートにVDD(電源電位)が供給されている。
【0039】
各メイントランジスタ・ペア及びダミートランジスタ・ペアには電流源から電流が供給されている。特に、ダミートランジスタ・ペアの電流源については、電流制御回路により電流が制御されている。すなわち、PチャネルMOSトランジスタのダミートランジスタ・ペア(MDP1,MDP2)、(MDP3,MDP4)の電流源10,11は第1の電流制御回路13によって電流が制御されている。第1の電流制御回路13は、電流源14,15とNチャネル型MOSトランジスタ・ペアから成るバイアス電流制御トランジスタ(MNC1,MNC2)から構成され、電流源14は、電流源10,11とカレントミラーを構成している。
【0040】
同様にNチャネルMOSトランジスタのダミートランジスタ・ペア(MDN1,MDN2)、(MDN3,MDN4)の電流源20,21は第2の電流制御回路13によって電流が制御されている。第2の電流制御回路23は、電流源24,25とPチャネル型MOSトランジスタ・ペアから成るバイアス電流制御トランジスタ(MPC1,MPC2)から構成され、電流源24は、電流源20,21とカレントミラーを構成している。
【0041】
また、30は各メイントランジスタ・ペア及びダミートランジスタ・ペアからの電流を加算する電流加算回路であり、図14に示した回路と同じ回路を用いることができる。
【0042】
以下、この回路の動作を低コモンモード入力電圧VCM、中間コモンモード入力電圧VCM、高コモンモード入力電圧VCMに分けて説明する。
【0043】
(1)低コモンモード入力電圧VCMにおける動作
Pチャネル型MOSトランジスタから成るメイントランジスタ・ペア(MP1,MP2)及び(MP3,MP4)が動作し、それぞれ電流を電流加算回路30に供給する。Pチャネル型MOSトランジスタから成るトランジスタ・ペア(MP5,MP6)も動作するが、その電流はバイパスされ、電流加算回路30には供給されない。Nチャネル型MOSトランジスタから成るトランジスタ・ペア(MN1,MN2)、(MN3,MN4)及び(MN5,MN6)は動作せず、電流加算回路30に電流を供給しない。
【0044】
また、バイアス電流制御トランジスタ(MNC1,MNC2)は動作しないので、Pチャネル型MOSトランジスタから成るダミートランジスタ・ペア(MDP1,MPD2)、(MDP3,MPD4)及び(MDP5,MPD6)は、動作せず、電流加算回路30に電流を供給しない。
【0045】
一方、バイアス電流制御トランジスタ(MPC1,MPC2)は動作する。これにより、Nチャネル型MOSトランジスタから成るダミートランジスタ・ペア(MDN1,MDN2)、(MDN3,MDN4)だけが動作し、電流加算回路30に電流を供給する。
【0046】
従って、低コモンモード入力電圧VCMレンジにおいて、Pチャネル型MOSトランジスタから成るメイントランジスタ・ペア(MP1,MP2)及び(MP3,MP4)が動作し、Nチャネル型MOSトランジスタから成るダミートランジスタ・ペア(MDN1,MDN2)、(MDN3,MDN4)が動作し、それぞれのペアが等しい電流Iを供給する。
【0047】
このフェーズでのトランスコンダクタンスgmは次式で与えられる。
【0048】
【数4】
Figure 2004201064
【0049】
(2)中間コモンモード入力電圧VCMにおける動作
Pチャネル型MOSトランジスタから成るメイントランジスタ・ペア(MP1,MP2)が動作し、その電流を電流加算回路30に供給する。Nチャネル型MOSトランジスタから成るトランジスタ・ペア(MN5,MN6)は、メイントランジスタ・ペア(MP3,MP4)のバイアス電流Iをバイパスするので、電流加算回路30には何ら寄与しない。
【0050】
同様に、Nチャネル型MOSトランジスタから成るメイントランジスタ・ペア(MN1,MN2)が動作し、その電流を電流加算回路30に供給する。Pチャネル型MOSトランジスタから成るトランジスタ・ペア(MP5,MP6)は、メイントランジスタ・ペア(MN3,MN4)のバイアス電流Iをバイパスするので、電流加算回路30には何ら寄与しない。
【0051】
バイアス電流制御トランジスタ(MNC1,MNC2)及び(MPC1,MPC2)は動作し、すべてのダミートランジスタ・ペアにバイアス電流を供給する。Pチャネル型MOSトランジスタから成るダミートランジスタ・ペア(MDP3,MDP4)とNチャネル型MOSトランジスタから成るダミートランジスタ・ペア(MDN3,MDN4)のみがその電流を電流加算回路30に供給する。というのは、ダミートランジスタ・ペア(MDP1,MDP2)及び(MDN1,MDN2)のバイアス電流はバイパスされるからである。
【0052】
従って、中間コモンモード入力電圧VCMレンジにおいて、Pチャネル型MOSトランジスタから成るメイントランジスタ・ペア(MP1,MP2)、Nチャネル型MOSトランジスタから成るメイントランジスタ・ペア(MN1,MN2)、Pチャネル型MOSトランジスタから成るダミートランジスタ・ペア(MDP3,MDP4)、Nチャネル型MOSトランジスタから成るダミートランジスタ・ペア(MDN3,MDN4)が動作し、それぞれのペアが等しい電流Iを供給する。
【0053】
このフェーズでのトランスコンダクタンスgmは次式で与えられる。
【0054】
【数5】
Figure 2004201064
【0055】
(3)高コモンモード入力電圧VCMにおける動作
Nチャネル型MOSトランジスタから成るメイントランジスタ・ペア(MN1,MN2)及び(MN3,MN4)が動作し、それぞれ電流を電流加算回路30に供給する。Nチャネル型MOSトランジスタから成るトランジスタ・ペア(MN5,MN6)も動作するが、その電流Iはバイパスされ、電流加算回路30には供給されない。Pチャネル型MOSトランジスタから成るトランジスタ・ペア(MP1,MP2)、(MP3,MP4)及び(MP5,MP6)は動作せず、電流加算回路30に電流を供給しない。
【0056】
また、バイアス電流制御トランジスタ(MPC1,MPC2)は動作しないので、Nチャネル型MOSトランジスタから成るダミートランジスタ・ペア(MDN1,MDN2)、(MDN3,MDN4)及び(MDN5,MDN6)は、動作せず、電流加算回路30に電流を供給しない。
【0057】
一方、バイアス電流制御トランジスタ(MCN1,MCN2)は動作する。これにより、Pチャネル型MOSトランジスタから成るダミートランジスタ・ペア(MDP1,MDP2)、(MDP3,MDP4)だけが動作し、電流加算回路30に電流を供給する。
【0058】
従って、高コモンモード入力電圧VCMレンジにおいて、Nチャネル型MOSトランジスタから成るメイントランジスタ・ペア(MN1,MN2)及び(MN3,MN4)が動作し、Pチャネル型MOSトランジスタから成るダミートランジスタ・ペア(MDP1,MDP2)、(MDP3,MDP4)が動作し、それぞれのペアが等しい電流Iを供給する。
【0059】
このフェーズでのトランスコンダクタンスgmは次式で与えられる。
【0060】
【数6】
Figure 2004201064
【0061】
この回路は次式を満たすように設計される。
【0062】
【数7】
Figure 2004201064
【0063】
また、トランジスタ・ペアは次式のサイズに設計される。
【0064】
【数8】
Figure 2004201064
【0065】
数7、数8を用いると、数4,数5,数6は次のようになる。
【0066】
【数9】
Figure 2004201064
【0067】
したがって、この回路によれば、レール・ツー・レール型オペアンプのトランスコンダクタンスは一定に保たれる。
【0068】
次に、本発明者は上述した回路のTHD特性を検証するためにHSPICEを用いたモンテカルロ・シミュレーションを行ったので、その結果について説明する。次式は、β(トランスコンダクタンス・パラメータ)、V(しきい値電圧)に対するマッチングを決定するために用いられる。
【0069】
Pチャネル型MOSトランジスタについては、
【0070】
【数10】
Figure 2004201064
【0071】
Nチャネル型MOSトランジスタについては、
【0072】
【数11】
Figure 2004201064
【0073】
これらの数10,数11は電源電圧3.3V、デザインルール0.35μmのプロセスに基づいており、レイアウト上近接して配置された同じ導電型のトランジスタ(Pチャネル型MOSトランジスタ又はNチャネル型MOSトランジスタ)のミスマッチ誤差(mismatch error)を表している。
【0074】
比較のため及び本発明の設計技術の改良効果を明らかにするために、本発明の図2に示した入力段を用いたレール・ツー・レール型オペアンプ、並びに図3に示すようなオペアンプの入力段を用いたレール・ツー・レール型オペアンプについて、シミュレーションを行った。図3の回路は図2の回路のメイントランジスタ・ペアによって構成されている。また、シミュレーションにおいて、電流加算回路30及び出力段回路は同じ回路を用いた。
【0075】
HSPICEシミュレーションでは、誤差を導入するためにガウス分布を用い、ガウスの誤差曲線の標準偏差σは数10,数11で計算された最大誤差に設定した。第1セットのシミュレーションは、メイントランジスタ・ペアとダミートランジスタ・ペアの間のミスマッチの影響をチェックすることを目的とした。この目的のために、メイントランジスタ・ペアM1,M2に対応するM1D、M2Dをダミートランジスタ・ペアと考え、M2とM2Dに対するしきい値電圧の変動をゼロとした。M2に対するM1の変動はガウス分布を用い、数10,数11によって決定された。
【0076】
簡単には以下の式で与えられる。
【0077】
【数12】
Figure 2004201064
【0078】
ここで、Z=GAUSS(X,σ)はZ=σを標準偏差とする参照値Z=Xのガウス分布を表している。Δ12は数10,数11で計算されたM1とM2との間のミスマッチを表している。M1Dは、メイントランジスタ・ペアとダミートランジスタ・ペアの間のミスマッチを導入するために、M1に対して異なる誤差百分率値だけ変動する。同様に、βの変動は、図2及び図3の両方のオペアンプに対して導入された。
【0079】
表1はモンテカルロ解析の結果を示す表である。全部で400のサンプルが各シミュレーションに用いられた。M1とM1Dの間に80%のミスマッチがあっても、そのシミュレーション結果を見ると、本発明のレール・ツー・レール型オペアンプ(図2)の方が、対比されるオペアンプ(図3)よりも優れている。
【0080】
【表1】
Figure 2004201064
【0081】
また、本発明の回路のCMRR特性を検証するために、第2セットのシミュレーションを行った。比較のために、図3のオペアンプの入力段を用いたレール・ツー・レール型オペアンプについてもシミュレーションを行った。
【0082】
シミュレーションの結果を図4及び図5に示す。図4は対比されるオペアンプ(図3の回路)のCMRRのコモンモード入力電圧VCMに対する依存性を示す。図5は本発明のオペアンプ(図2の回路)のCMRRのコモンモード入力電圧VCMに対する依存性を示す。
【0083】
図4から明らかなように、対比されるオペアンプ(図3の回路)はVCMレンジの中で2つの領域に減衰を示している。これらの領域はトランジスタ・ペアがターンオン又はターンオフする領域である。また、図5から明らかなように、本発明のオペアンプでは、すべてのVCMレンジでCMRRは、ほぼ一定であり減衰を示すことはない。CMRRがほぼ一定で、かつ高いことは、前述したようにオペアンプに要求される特性である。
【0084】
また、電流加算回路30のカレントミラー・トランジスタのバイアス電流のVCMに伴う変動による、オペアンプの入力オフセットへの影響をチェックするために、第3セットのシミュレーションを行った。
【0085】
図6はそのシミュレーション結果を示す図である。この図から明らかなように、カレントミラー・トランジスタ(MNM1,MNM2,MPM1及びMPM2)に対するバイアス電流は、本発明の回路では一定である。システマティック・オフセット(Systematic Offset)をプロットすると、本発明の回路では、対比される回路(図3)に比べてその変動が小さい。
【0086】
上述した実施形態では、メイントランジスタ・ペアに対応して相補的に動作するダミートランジスタ・ペアを導入した1つの回路例を示したが、これに限定されることなく、本発明の思想は他の回路の形態にも適用することができるものである。
【0087】
【発明の効果】
本発明のオペアンプによれば、メイントランジスタ・ペアに対応して相補的に動作するダミートランジスタ・ペアを導入したので、オペアンプのTHD特性、CMRR特性等を向上することができる。また、モンテカルロ・シミュレーションによれば、これらの特性が向上することが検証された。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る本発明のオペアンプの基本的スキームを示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るオペアンプを示す回路図である。
【図3】本発明の実施形態に係るオペアンプと対比されるオペアンプを示す回路図である。
【図4】図3に示されたオペアンプのCMRRのコモンモード入力電圧VCMに対する依存性を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係るオペアンプのCMRRのコモンモード入力電圧VCMに対する依存性を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係るオペアンプの入力オフセットのシミュレーション結果を示す図である。
【図7】従来例のレール・ツー・レール型オペアンプを示す図である。
【図8】従来例のレール・ツー・レール型オペアンプのトランスコンダクタンス特性を示す図である。
【図9】オフセット変動の影響を説明するための回路である非反転バッファを示す図である。
【図10】一定の入力オフセットを説明する波形図である。
【図11】変動する入力オフセットを説明する波形図である。
【図12】図7の回路の動作を説明する図である。
【図13】一般的なオペアンプを示す図である。
【図14】電流加算回路及び、レール・ツー・レール出力スイングを可能にするAB級出力回路を示す図である。
【符号の説明】
10,11 電流源 13 第1の電流制御回路 14,15電流源
20,21 電流源 23 第2の電流制御回路 24,25電流源
30 電流加算回路

Claims (8)

  1. 入力電圧が供給された第1導電型の第1メイントランジスタ・ペアと、
    前記第1メイントランジスタ・ペアに対応して設けられた第1導電型の第1ダミートランジスタ・ペアと、
    前記入力電圧が供給された第2導電型の第2メイントランジスタ・ペアと、
    前記第2メイントランジスタ・ペアに対応して設けられた第2導電型の第2ダミートランジスタ・ペアと、
    前記入力電圧のレベルに応じて、前記第1メイントランジスタ・ペアと第1ダミートランジスタ・ペアとを相補的に動作させ、かつ前記第2メイントランジスタ・ペアと第2ダミートランジスタ・ペアとを相補的に動作させる制御回路と、を具備することを特徴とするオペアンプ。
  2. 前記制御回路は、前記入力電圧が低レベルのときは前記第1メイントランジスタ・ペア及び第2ダミートランジスタ・ペアを動作させ、前記入力電圧が高レベルのときは前記第1ダミートランジスタ・ペア及び第2メイントランジスタ・ペアを動作させるように制御することを特徴とする請求項1記載のオペアンプ。
  3. 前記制御回路は、前記入力電圧が低レベルのときは前記第1メイントランジスタ・ペア及び第2ダミートランジスタ・ペアを動作させ、前記入力電圧が中間レベルのときは前記第1メイントランジスタ・ペア及び第2メイントランジスタ・ペア、前記第1ダミートランジスタ・ペア及び第2ダミートランジスタ・ペアを動作させ、前記入力電圧が高レベルのときは前記第1ダミートランジスタ・ペア及び第2メイントランジスタ・ペアを動作させるように制御することを特徴とする請求項1記載のオペアンプ。
  4. 前記制御回路は、前記第1ダミートランジスタ・ペアに動作電流を供給する第1電流源と、該第1電流源に流す電流を前記入力電圧のレベルに応じて制御する第1電流制御回路を有することを特徴とする請求項3記載のオペアンプ。
  5. 前記制御回路は、前記第2ダミートランジスタ・ペアに動作電流を供給する第2電流源と、該第2電流源に流す電流を前記入力電圧のレベルに応じて制御する第2電流制御回路を有することを特徴とする請求項3記載のオペアンプ。
  6. 前記第1メイントランジスタ・ペア、第1ダミートランジスタ・ペア、第2メイントランジスタ・ペア及び第2ダミートランジスタ・ペアの電流を加算する電流加算器を有することを特徴とする請求項1,2,3,4,5のいずれかに記載のオペアンプ。
  7. 前記第1メイントランジスタ・ペア及び第1ダミートランジスタ・ペアがPチャネル型MOSトランジスタで形成されていることを特徴とする請求項1,2,3,4,5のいずれかに記載のオペアンプ。
  8. 前記第2メイントランジスタ・ペア及び第2ダミートランジスタ・ペアがNチャネル型MOSトランジスタで形成されていることを特徴とする請求項7記載のオペアンプ。
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CN101841309A (zh) * 2010-06-07 2010-09-22 西安交通大学 一种轨对轨运算放大器
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