JP2004201026A - プログラマブル・アナログ・デジタル変換器 - Google Patents

プログラマブル・アナログ・デジタル変換器 Download PDF

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Abstract

【課題】外部からの制御信号によって分解能や変換速度を可変にすることができるプログラマブル・アナログ・デジタル変換器を提供する。
【解決手段】複数個のアナログ信号入力チャンネル101とサンプル/ホールド(S/H回路)102を第1のスイッチ群110により接続し、S/H回路102とコンパレータ103とを第2のスイッチ群120により接続し、外部からの動作モード設定信号8に応じて、第1及び第2のスイッチ群110,120の動作をスイッチ制御部40により制御する。これにより、入力チャンネル数のアナログ信号が可変な変換速度でもってサンプル/ホールドされ、サンプル/ホールド値が逐次変換方式により可変なビット数のデジタル値に変換され、入力チャンネル数と変換速度と分解能はフレシキブルに相互に可変となる。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、外部からの制御信号により変換特性をプログラマブルにできるアナログ・デジタル変換器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、アナログ・デジタル変換器(以下、A/D変換器と記す)は、アナログ信号をデジタル信号に変換してコンピュータ等に取り込むインタフェース回路ボードに広く用いられている。A/D変換器の回路方式には、並列比較方式、直並列方式、パイプライン方式、逐次比較方式、ノイズシェーピング方式などの方式が存在する。これらの回路方式によって実現しうる変換速度及び分解能は、異なる(特許文献1,2参照)。例えば、逐次変換方式においては、高精度の分解能を実現することが可能であるが、変換に時間がかかるため、変換速度は最大でも2Mサンプル/秒(sps)程度である。一方、並列比較方式においては、変換速度は100Msps以上を実現することも可能であるが、高分解能を実現することは難しい。
また、変換方式によって構成する回路の規模も異なる。例えば、k bit(kは正整数)の分解能のA/D変換回路を実現する場合、各変換方式におけるコンパレータの数は、並列比較方式では2個、パイプライン方式ではk個、逐次変換方式では1個である。従って、並列比較方式が最も回路規模が大きく、逐次変換方式が最も小さい。
【0003】
【特許文献1】特開平5−244003号公報
【特許文献2】特開平7−183807号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前述したように、従来のA/D変換器は、回路方式ごとに最適な性能領域及び回路規模が異なるため、多品種生産となる。このため、広範囲の性能領域をカバーするインタフェースボードを作成するには、複数種のA/D変換器が必要となり、広範囲な性能領域をカバーするインタフェースボードは大型で高価となるなどの問題が生じる。
【0005】
本発明は、上記問題を解消するものであり、外部からの制御信号によって分解能、変換速度及び入力チャンネル数を可変にすることができるプログラマブルなA/D変換器を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、複数個のアナログ信号入力チャンネルと、複数個のサンプル/ホールド回路(以下S/H回路と記す)と、複数個の比較器(以下コンパレータと記す)と、前記複数個のアナログ信号入力チャンネルとS/H回路を接続する第1のスイッチ群と、前記第1のスイッチ群とは異なる、前記S/H回路とコンパレータを接続する第2のスイッチ群と、これら第1及び第2のスイッチ群の各スイッチの開閉を制御するためのスイッチ制御部と、前記コンパレータに逐次比較のための参照電圧を出力するためのデジタル・アナログ変換器(以下DACと記す)と、前記コンパレータでの比較結果を蓄えて前記DACに出力するための逐次比較レジスタ(以下SARと記す)と、前記SARにおいて蓄えたコンパレータでの比較結果を入力しパラレル又はシリアルでデジタル値を出力する出力処理回路と、前記スイッチ制御部、SAR及び出力処理回路の動作タイミングを制御するタイミング制御部とを備え、外部からの動作モード設定信号に応じて、変換速度、分解能及び入力チャンネル数を任意に可変としたものである。
【0007】
本発明においては、外部からの動作モード設定信号に応じて、アナログ信号入力チャンネルとS/H回路との接続が、タイミング制御部による第1のスイッチ群の開閉動作により切り替わって逐次、任意に設定可能な入力チャンネル数のアナログ信号が可変な変換速度でもってサンプル/ホールドされ、また、S/H回路とコンパレータとの接続が、タイミング制御部による第2のスイッチ群の開閉動作により切り替わってサンプル/ホールド値が逐次変換方式により可変なビット数のデジタル値に変換される。ここに、入力チャンネル数と変換速度と分解能とは、フレシキブルに相互に可変なものとなり、もって、外部からプログラマブルなものとなる。
【0008】
また、上記において、外部からの動作モード設定信号を、前記タイミング制御部、DAC及びデジタル信号出力用レジスタに与えて、これら各部の動作を決定するものとすればよい。
【0009】
また、上記において、基本モードでのアナログ入力チャンネル数をC0、変換速度をf0、分解能をn0としたとき、(入力チャンネル数)×(変換速度)×(分解能)≦C0 ×f0 ×n0となるように、外部から動作モード設定信号を与えるものとすればよい。
【0010】
また、上記において、S/H回路の数はコンパレータの数の少なくとも2倍備えており、1つの入力チャンネル当り少なくとも2個のS/H回路を第1のスイッチ群のスイッチ切り替えにより連続的に交互に用いてサンプリングするものとすればよい。これにより、入力アナログ値についてインターリーブ動作が可能となり、変換速度を上げることができる。
【0011】
また、上記において、S/H回路の数はコンパレータの数の少なくとも2倍備えており、少なくとも2個のコンパレータを第2のスイッチ群のスイッチ切り替えにより交互に用いて上位ビットと下位ビットとに分けて変換するものとすればよい。これにより、複数のコンパレータを切り替え使用して、逐次比較をパイプライン方式で行うことができるので、変換速度を高くできる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した実施形態に係るプログラマブル・アナログ/デジタル変換器(PA/DCと記す)について図面を参照して説明する。図1はアナログ信号入力がiチャンネル、デジタル変換出力がnビットのアナログ・デジタル変換器(A/D変換器)の構成を示す。i,nは正整数である。
【0013】
図1において、1はi個のアナログ信号入力チャンネル(CH1〜CHi)、2は2m個のサンプル/ホールド回路(S/H回路)、3はm個の比較器(コンパレータ;Cmp1〜Cmpm)、34はコンパレータでの比較結果を蓄えて後述のDACに出力する逐次比較レジスタ(SARという:Successive Approximation Register)、5はi×n個の出力端子を持つ出力処理回路、6はnビットパラレルのデジタル信号出力チャンネル(i×n本)、10はアナログ信号入力チャンネルとS/H回路を接続し信号経路を制御する第1のスイッチ群、20はS/H回路2とコンパレータ3を接続し信号経路を制御する第2のスイッチ群、40は第1及び第2のスイッチ群10,20の動作を制御するための制御信号発生回路(具体的にはスイッチ制御信号を発生するスイッチ制御部及びその動作タイミング制御信号を発生するタイミング制御部とがある)、50はコンパレータ5に逐次比較のための参照電圧を出力するための最大分解能がnビットであるデジタル・アナログ変換器(DAC)である。
【0014】
本実施例のA/D変換器は、外部からの動作モード設定信号8が入力され、それに応じて、S/H回路2、コンパレータ3、及びスイッチ群10,20の数とDAC50の分解能を設定可能(プログラマブル)であり、もって、変換速度、分解能、及び入力チャンネル数を可変としている。すなわち、制御信号発生回路40、逐次変換レジスタ(SAR)34、DAC50、及び出力処理回路5には外部から動作モード設定信号8が与えられる。この動作モード設定信号8に応じて、制御信号発生回路40は、スイッチ群10内の各スイッチ開閉のタイミングを制御する信号41、及びスイッチ群20内の各スイッチ開閉のタイミングを制御する信号42の設定を変えることにより信号経路を制御し、また、動作モード設定信号8に応じて、制御信号発生回路40からの信号43,44が逐次変換レジスタ(SAR)34及び出力処理回路5に与えられ、DAC50内のSAR及び出力処理回路5の設定が変えられる。これらにより、A/D変換器全体の特性が可変となっている。
【0015】
なお、35はSAR34からDAC50への入力ポート、45はクロック信号、46はリセット信号、51はコンパレータ3からSAR34へのデジタル入力、52はDAC50からコンパレータ3へのアナログ参照電圧出力、53はDAC50に与えるデジタル変換のための基準電圧Vrefである。
【0016】
(PA/DCの基本特性)
次に、PA/DCの“基本特性”がどの様に決まるかを説明する。“基本特性”とは、構成したPA/DCにおいて、最大分解能を持つ逐次変換回路方式を実現した際の、チャンネル数並びに変換速度のことを指す。図1のブロック図を参照して説明する。nビットの分解能であるDACを持つA/D変換回路を構成すると、基本構成として、チャンネル数がmチャンネル、最大分解能がnビットである逐次変換回路方式のアナログ/デジタル変換器(以後A/D変換器と記す)を構成することができる。
【0017】
ここで、逐次変換回路方式とは、1個のコンパレータを用いてアナログ入力信号を逐次比較でデジタル信号に変換する方式を意味する。この逐次変換回路方式でnビットの変換を行うのに必要な変換時間tc[s]は、一般に、コンパレータを用いて1ビットを確定する時間tb[s]と、S/H回路の動作時間ts[s]を用いると、tc=ts+n・tb[s]で表せる。従って、逐次変換回路方式における変換速度fs[sps:Sample Per Secの略]は、fs = 1/tc = 1/(ts+ n・tb)[sps]となる。
【0018】
しかし、図1の様な回路方式で入力がmチャンネルの逐次変換回路方式の変換器を構成した場合、コンパレータ1個に対して、2個のS/H回路を利用することが可能であり、2つのS/H回路でサンプルした信号を交互にコンパレータで変換する、いわゆるインターリーブ方式を実現することができる。従って、1個のS/H回路(S/H1)でサンプリングしたアナログ信号を変換する間、もう一方のS/H回路(S/H2)でアナログ信号をサンプリングすることで、変換時間の見積もりにS/H回路の動作時間を考慮する必要がなくなり、変換時間はコンパレータにおいてデータを変換する時間のみとなる。
【0019】
かくして、図1の回路構成において、分解能が最大となる逐次変換回路方式を実現した際の、チャンネル数は回路に備わっているコンパレータの個数、分解能は回路に備わっているDACの最大分解能、変換速度は回路に備わっているコンパレータの動作時間で決定されることになる。従って、これらの値は回路の構成要素から一意に決まる値であり、これを回路の“基本特性”として与える。図1の場合の基本特性は、コンパレータ数がm[個]であることから、チャンネル数C0はC0=m[CH]、分解能n0はDACの最大分解能がn[bit]よりn0=n[bit]、また、コンパレータの動作時間をtb[s]とおいた場合、変換速度fsはfs=1/(n・tb)[sps]となる。
【0020】
(A/D変換器の特性可変に関して)
本実施例のA/D変換器は、外部からプログラムを用いて以下に示す関係式を満たすように、A/D変換器の特性(チャンネル数、変換速度及び分解能)を可変できる。基本モードでのアナログ入力チャンネル数をC0、変換速度をf0、分解能をn0としたとき(C0 ,n0は正整数)、
(入力チャンネル数)×(変換速度)×(分解能)≦C0 ×f0 ×n0
(これを「関係式1」という)となるように、外部から動作モード設定信号8を与える。この動作モード設定信号8は、予めプログラムされたコンピュータから与えればよい。
【0021】
本実施例のA/D変換器においては、コンパレータ3は、最大入力チャンネル数だけ備え、S/H回路2はコンパレータ数の2倍だけ備えている。そして、所望の入力チャンネル数と分解能とに応じて、詳細は後述するが、例えば、1つの入力チャンネル当り2個のS/H回路を第1のスイッチ群10のスイッチ切り替えにより連続的に交互に用いてサンプリングするものとし、しかも各入力チャンネルからの入力に対して並列的にパイプライン方式で処理するものとする。
【0022】
また、例えば、入力チャンネルからの入力が最大入力チャンネル数より少ないときに、1つの入力チャンネル当りデジタル信号出力ビット数だけのS/H回路を第1のスイッチ群10のスイッチ切り替えにより入力チャンネル毎に交代で用いてサンプリングし、かつ、2個のコンパレータを第2のスイッチ群20のスイッチ切り替えにより交互に用いて上位ビットと下位ビットとに分けて変換するといった、いわばインターリーブ方式で処理するものとする。
【0023】
このような回路方式を用いることで、入力チャンネルが少なくなると変換速度は速くなり、その最大値は、コンパレータを1回用いて1ビット確定する時の時間(tb)の逆数程度となる。従って、変換速度は逐次比較方式に近似であるにも関わらず並列比較方式程度の速度を実現することが可能となる。また、入力信号は逐次変換方式と同様に入力部で1回のみサンプルするだけであるから、変換精度は逐次変換方式程度の精度を実現することが可能となる。さらに、入力チャンネルとS/H回路2との信号経路や、S/H回路2とコンパレータ3との信号経路などのスイッチを、外部からプログラミングで制御することにより、変換速度、変換精度及び入力チャンネル数を可変にすることができる。従って、幅広い分解能と変換速度、及びチャンネル数を可変にすることができるようになり、汎用性の高いA/D変換器が単一のLSIで生産可能となる。
【0024】
(関係式1の実現方法)
次に、上述した関係式1を満たすように特性可変できるA/D変換器の構成及び制御方法を説明する。以下では説明を簡単にするために、図2に示すように、A/D変換器は、8個のアナログ入力チャンネル101、16個のS/H回路102、8個の比較器103、出力処理回路105、デジタル出力端子106、最大分解能が8ビットであるDAC50、入力チャンネル101とS/H回路102の信号経路を制御するスイッチ群110、S/H回路102と比較器103の信号経路を制御するスイッチ群120、及び制御信号発生回路40で構成される。なお、以下に説明する制御方法は一般的な場合にも容易に拡張できる。
【0025】
図1及び図2に示したように、本発明のA/D変換器は、S/H回路102(図2の番号で記す、以下同様)、コンパレータ103、逐次比較レジスタ(SAR)34、基準電圧を発生するデジタル・アナログ変換器(DAC)50、出力処理回路105に加え、入力チャンネル101とS/H回路102との信号経路を制御する第1のスイッチ群110、S/H回路102とコンパレータ103との信号経路を制御する第2のスイッチ群120、並びに第1のスイッチ群110、第2のスイッチ群120の各スイッチの開閉タイミング及びSAR34の動作タイミングを制御する制御信号発生回路40で構成されている。回路の特性(チャンネル数、分解能、変換速度)の可変は、制御信号発生回路40、SAR34に外部からコンピュータなどを用いて動作モード設定信号8を与えて、スイッチ群の各スイッチの開閉タイミングやSAR34の動作を切り換えることで行う。以後、スイッチ群の各スイッチの開閉タイミング制御で所望の特性を得る方法を説明し、その後、SAR34の動作制御の方法を説明する。
【0026】
図3に第1及び第2のスイッチ群110、120の構成例を示す。図3(a)は、第1のスイッチ群の内、入力チャンネルCHnと各S/H回路とを接続を制御するスイッチ111を示す。図2の回路構成の場合、CH1からCH8まで全てのチャンネルにスイッチが付加されるので、第1のスイッチ群のスイッチの総数は、8×16=128個となる。また、図3(b)は、第2のスイッチ群の内、コンパレータ3と各S/H回路2との接続を制御するスイッチ121を示す。図2の回路構成の場合、第2のスイッチ群のスイッチの総数も128個となる。
【0027】
図4に逐次比較レジスタ(SAR)34の構成例を示す。一般的に、SARは逐次変換回路方式に用いられており、SARの出力をDACへ入力させて基準電圧を発生させる。SAR(SAR1〜SAR16)は、まず、変換を開始する前にリセットされ、それまでにラッチしておいた値を初期化する。次に、リセットされたSARは、変換のスタートを知らせる信号を受け取ると、最上位ビットの比較に用いる基準電圧に相当するデジタル値を生成する。このデジタル信号をDACへ入力させて、最上位ビットの判定に用いる基準電圧として、フルスケールの半分の値を生成する。SARは、生成した基準電圧とアナログ値との判定結果を用いて、次の基準電圧を生成するデジタル値を生成する。この動作を最下位ビットまで繰り返す。本発明では、このような動作原理に基づくSARを、複数個(この例では16個)用いる。ただし、各SARとDACの入力の間にスイッチを置き、このスイッチの開閉を、制御信号を用いて制御し、DACで生成する基準電圧の値を制御する。なお、SARは、コンパレータ出力D1〜D8が入力されるスイッチ群と、各SAR1〜SAR16と、出力処理回路105への出力SA01〜SA016と、各SAR1〜SAR16に対するタイミングコントロール回路と、DACへの出力回路とから成る。
【0028】
(図2の回路の基本特性)
図2に示した回路構成における基本特性を求める。前述したように、回路の基本特性は、回路に備わるコンパレータの個数と動作時間及び、DACの最大分解能から求まる。図2の構成では、回路に備わるコンパレータの数は8個、DACの最大分解能は8[bit]である。また、コンパレータの動作時間は、本説明においては全てtb[s]とする。このとき、図2における回路の基本特性は、8[CH]、8[bit]及び1/(8・tb)[sps]となる。これと関係式1を用いて、回路の特性を求めることができる。
【数1】
Figure 2004201026
下記の表1は、上の特性式において、等式が成り立つ場合に実現できる特性値を示している。ここで、表1にあるf0はf0=1/(8・tb) [sps]である。
【0029】
【表1】
Figure 2004201026
【0030】
上記のように構成されたA/D変換器においては、基本モードとして、アナログ入力が8チャンネル、分解能が8ビットである逐次比較A/D変換器を構成することができる。このときの変換速度fsは、逐次比較において1ビットを確定する時間tbを用いるとfs=1/(8tb)となる。このとき、上述した関係式1は以下となる。
C×fs×n=8×1/(8tb)×8=8/ tb
【0031】
(回路特性の可変)
以降では、表1にある特性値を実現する方法、特にスイッチの制御方法について、チャンネル数が8CH、1CH並びに6CHの場合を例にして具体的に説明する。
【0032】
(チャンネル数8CHの場合)
始めに、アナログ入力が8チャンネルのA/D変換器の設定方法から説明する。図5はアナログ入力が8チャンネルであるA/D変換器を示す。ここに、16個のS/H回路は、S/HからS/H16として示し、8個の比較器は、Cmp1〜Cmp8として示している。外部から動作モード設定信号8を用いて、図示の第1のスイッチ群200及び第2のスイッチ群201以外はすべて開放するように制御信号41、42を設定する。この様な信号経路を設定すると、8個の逐次変換回路を実現することができる。さらに、外部から加えるクロック45に同期して図6に示すタイミングで、第1及び第2のスイッチ群200、201(図6の上半分及び下半分が対応、以下同様)を開閉するように制御信号41、42を設定する。これにより、分解能8ビット、変換速度1/(8tb)を実現することができる。なお、第1のスイッチ群200は、各1チャンネルを各2つのS/H回路に切り換え接続する各2つのスイッチを有し、CH1S1、CH1S2、CH2S3、CH2S4、…CH8S16から成る。第2のスイッチ群201は、各チャンネルに対応した各2つのS/H回路を各1つの比較器に切り換え接続するスイッチを有し、スイッチS1C1、S2C1、S3C2、S4C2、…S16C8から成る。
【0033】
上記設定において、8ビットの変換を行う際の変換手順を、CH1に入力したアナログ信号を変換する場合を例にして説明する。ある時刻に、スイッチCH1S1を閉じてCH1とS/H回路S/Hとを接続する。その後、CH1S1を開放すれば、S/Hで信号がサンプリングされる。以降の説明においても、信号のサンプルは第1のスイッチ群のスイッチがONからOFFへ切り替わるときにされるとする。信号がサンプリングされた後、コンパレータにつながるスイッチS1C1を閉じてS/HとコンパレータCmp1を接続する。S/HとコンパレータCmp1を接続すると同時に、DACで生成した最上位ビットの判定を行う基準電圧をコンパレータに入力して、最上位ビットの変換を行う。その後、コンパレータCmp1において、最下位ビットまで逐次比較を行い、8ビットのデジタル値に変換する。また、S/H1でサンプルしたアナログ信号の変換を行う間に、CH1S2を閉じてCH1とS/H2を接続し、S/H1でサンプルしてから8・tb秒後にCH1S2を開放しアナログ信号をサンプリングする。そして、S/Hのサンプリング値の変換が終了して、S/H1とコンパレータCmp1との接続を切ると同時に、S/H2とCmp1とを接続して、S/H1の場合と同様に逐次比較を行う。図6に、上記の8ビット、8チャンネルの作業手順を行うための各スイッチの開閉タイミングを示す。この様にスイッチの開閉タイミングを制御すると、8CH、8ビット、1/(8・tb)spsの逐次変換回路を実現することができる。
【0034】
上述では、スイッチの開閉タイミングを説明したが、各変換における基準電圧は、各SARを用いて生成する。まず、S/H1の信号値の変換にSAR1を用いるとする。変換開始前に、SAR1とDACの入力ポートC[8..1]DT[8..1]の内、Cmp1への出力(A1)につながるポートC1DT[8..1]とを接続する。S/H1の変換が終了すると、この接続を絶ち、これと同時にSAR2とC1DT[8..1]の入力とを接続して、Cmp1に新たな基準電圧を発生させる。これを繰り返して、変換を行う。分解能が6ビット及び4ビットの場合も、同様に上記の手順を行う。異なるのは、S/H回路におけるサンプリング間隔と、コンパレータにおける変換の回数だけである。図7には4ビット、8チャンネルの作業手順を行うための各スイッチの開閉タイミングを示す。
【0035】
(チャンネル数1CHの場合)
次に、アナログ入力が1CHの変換器の場合について説明する。この場合の信号経路の例を図8に示す。同図において、第1のスイッチ群400は、CH1S1、CH1S2、CH1S3、…CH1S16の各スイッチから成り、第2のスイッチ群401は、S/H〜S/H16に対応してS1C1、S2C2、S3C3、…S16C8の各スイッチから成る。これら各スイッチのスイッチタイミングを後述の図9に示している。この構成例を用いたアナログ・デジタル変換は、以下の2通りの変換原理のいずれかを用いて行う。
▲1▼パイプライン型
▲2▼逐次変換回路のインターリーブ
【0036】
ここで、これらの変換原理を簡単に説明する。パイプライン型の変換器では、1ビット分解能を持つ変換器を分解能分だけ用意し、それをパイプライン化することにより変換を行う。従って、この変換器では、上位ビットから順に下位ビットまで1ビットずつ、各変換器で変換を行う。よって、空いた1ビット変換器に新たなアナログ信号を入力することが可能となり、変換速度は向上する。このパイプライン変換器に利用する1ビット変換器は通常、コンパレータ、1ビットDAC、減算器並びにS/H機能を持つ誤差アンプで構成される。この1ビット変換器における作業は以下の様になる。まず、入力した信号と基準電圧との比較をコンパレータにて行う。そして、この変換結果をDACに入力し、その出力結果を入力信号から差し引き、これを誤差アンプで2倍にして、次の1ビット変換器に受け渡す。この方法では、各1ビット変換器で利用する基準電圧は固定し、入力したアナログ信号と基準電圧との差を取り、その差を増幅して次段に受け渡し、変換を行っていく。
【0037】
本発明のA/D変換器においては、S/H回路とコンパレータとの接続を切り換えて、各コンパレータにおいて、DACで発生させた基準電圧と比較して変換する。DACで発生させる基準電圧は、前段までの比較結果を基に生成された値となる。ここに、入力するアナログ信号は一定のままで基準電圧が変化する、いわゆる逐次比較を行う。
【0038】
この変換原理を実現するには、図9に示したような開閉タイミングでスイッチの開閉を制御する。まず、ある時刻においてCH1S1を閉じて、その後、CH1S1を開放してS/H1で信号をサンプリングする。その後、Cmp1とS/H1とを接続して1ビット分変換する。これが終了した後、Cmp1との接続を断ち、Cmp2と接続し、2ビット目の変換を行う。この作業を最下位ビットまで繰り返して、8ビットの変換を行う。
【0039】
次に、SARの制御について説明する。SARの構成については図4に示した通りである。まず、S/H1の変換を開始する前に、SAR1とDACの入力ポートC1DT[8..1]とを接続する。これにより、最上位ビットの判定に用いる基準電圧を発生し、Cmp1に入力させる。この判定結果をSAR1に入力させる前に、C1DT[8..1]との接続を切り、ポートC2DT[8..1]と接続する。その後、Cmp1の判定結果をSAR1へ入力して、Cmp2へ第2ビットの判定に利用する基準電圧を出力させる。これを、最下位ビットまで繰り返す。こうして、パイプライン型の変換器を構成することができる。
【0040】
次に、もう一つの方法であるインターリーブ方式について説明する。このインターリーブ方式では、複数個の逐次変換器を用意して、これを並列接続にして変換速度を向上させることができる。分解能に等しい個数の逐次変換器を用意すれば、パイプラインと同程度の変換速度を得ることが原理的に可能となる。よって、上述した8CHの場合と同様の接続を行って、8個の逐次変換器を構成する。8CHの場合とは、入力チャンネルとS/H回路とを接続するスイッチだけが異なる。変換手順は8CHの場合と同様に行うので、詳細説明は省略する。
【0041】
(チャンネル数6CHの場合)
8CHや1CH以外のCH数における変換は、上記2つの場合より、少々動作が複雑となる。この場合の変換原理は、直並列型の変換器の変換原理を応用している。直並列型の変換器は、並列比較変換器を直列に接続して、例えば分解能がk=m+nビットの変換を行う場合、上位mビットと下位nビットの変換に分けて変換を行う。直並列型の変換器の場合は、並列比較型変換器を用いるが、本発明においては逐次変換回路を直列に接続して、変換を行う。以降では、6CHの場合の変換について、変換原理を説明する。
【0042】
(6CH、8ビットの場合)
6CH、8ビットの場合、表1に従うと変換速度は1/(6・tb)[sps]となる。これまでに示したように、本発明に係るA/D変換器の変換速度は、1つのコンパレータを用いて変換を行うビット数の最大値に比例する。従って、この場合においては、1つのコンパレータで行う変換は最大6ビットまでとなる。よって、入力が6CH、分解能が8ビットである変換器の場合は、上位6ビットの変換を行う逐次変換回路と、残り2ビットの変換を行う変換回路を直列に接続させるように、スイッチの開閉により変換器を構成する。図10は、6CH、8ビットの場合のA/D変換器の信号経路を示す。
【0043】
同図において、例えば、ある時刻にCH1に入力されたアナログ信号をS/H1でサンプリングし、それをCmp1に移し、変換を始めたとする。このとき、上位6ビットの変換をこのCmp1で行い、残り2ビット分を他のコンパレータで行う。そうすれば、コンパレータCmp1は、6・tb秒毎に開放されるので、新たにアナログ信号を入力して変換することが可能となり、6CH、8ビットの変換器を構成することができる。このような変換原理を実現するために、図11に示したタイミングで各スイッチを開閉制御する。なお、図11における上半分及び下半分のスイッチは(一部のみを示している)、図10の第1及び第2のスイッチ群400、401の各スイッチに上から順に対応している。
【0044】
上記のスイッチ開閉制御により、ある時刻にCH1とS/H1とを接続し信号をサンプルする。その後、これをコンパレータCmp1に移して、上位6ビットの変換を行う。この変換が終了した後に、コンパレータCmp4に移して、残り2ビットの変換を行う。また、S/H1で信号をサンプルしてから、6・tb後に、S/H2で信号をサンプルし、S/H1の信号の上位6ビット変換が終了した後に、S/H2の信号の変換を開始する。これを繰り返して、CH1に入力した信号の変換を行う。
【0045】
さて、6CHの場合は、上位ビットの変換に利用するコンパレータは6つ必要であるが、下位ビットの変換に関しては、残り2つのコンパレータを共有する。例えば、CH1からCH3のアナログ信号に関しては、上位ビットの変換は、それぞれCmp1からCmp3のコンパレータでそれぞれ行い、残り2ビットの変換をCmp4で行う。このとき、Cmp4においては、まず、CH1の変換を行い、その後CH2、CH3と順番に変換を行うように設定する。
【0046】
次に、SARの制御方法を説明する。まず、変換開始前にSAR1をC1DT[8..1]に接続して、変換を始める。その後、上位6ビットの変換が終了する前にSAR1とC1DT[8..1]との接続を切り、C4DT[8..1]とを接続する。そして、残り2ビットの変換を行う。先に述べたように、6CHの場合は、残り2ビットの変換に関しては、同じコンパレータを共有して、変換を行う。従って、CH1の変換を行っている間は、CH2及びCH3に利用しているSARの値はそのまま保持しておき、それぞれの変換タームが来たときに、新たにラッチを開始するように、クロックを入力する。こうして、6CH、8ビットの場合の変換を行うことができる。
【0047】
(6CH、6ビットの場合)
次に、6CH、6ビットの場合について説明する。この場合のA/D変換器の変換速度は1/(4.5・tb)[sps]である。従って、1つのコンパレータにおいて変換できる最大ビット数は4.5ビットとなる。しかし、このような端数を持つビット数の変換を行うことはできない。これを解決する方法として、1つのコンパレータにおいて4ビット変換を行い、残り2ビットを他のコンパレータで行うタームと、5ビット変換を行った後に、残り1ビットの変換を行うターム、とを交互に行うようにする。こうすると、2つのタームを1セットと見なせば、形式上、4.5ビット変換を行うように振る舞う。図12にあるタイミングで、各スイッチを開閉すると、このような変換原理を実現することができる。
【0048】
今まで説明してきたいずれの場合も、第1及び第2のスイッチ群のタイミングクロックは同じ周期としていた。しかし、6ビットの場合は、第1のスイッチ群のクロックは、周期が第2のスイッチ群の半分のものを用いる。これはサンプリング間隔(変換速度の逆数)が変換時間の整数倍ではなく、半整数を含んでいるためである。一般に、表1の中で、サンプリング間隔が変換時間の半整数の場合は、第1のスイッチ群のクロックは第2のスイッチ群のクロック周期の半分の周期を持つものを利用する。
【0049】
SARの制御方法は、8ビットの場合と同様に行う。異なるのは、DACのポートとの接続するタイミングだけである。例えば、上位4ビットをCmp1で行い、下位2ビットの変換をCmp4で行う場合、まず、C1DT[8..1]と接続して、4ビット目の判定が終わる前にC4DT[8..1]と接続し、その後、判定結果を入力して5ビット目の基準電位をCmp4に出力させる。これは、5ビット+1ビットの場合も同様である。図10に示した6チャンネルの場合の第1及び第2のスイッチ群400,401は、図13に示されるように開閉される。ここでは、入力チャンネル(1〜6)とS/H回路i(1〜4,5〜8)とコンパレータCmp1〜Cmp8との接続関係を示している。S/H回路i(9〜16)についても同様である。
【0050】
(その他のチャンネル数の場合)
その他のチャンネル数の場合も、6CHの場合と同様に、上位ビットの変換と下位ビットの変換に分けて変換を行い、下位ビットの変換は空いているコンパレータで変換する。例えば、4ビットの場合は、Cmp1からCmp4を上位ビットの変換に割り当て、Cmp5からCmp8を下位ビットの変換に割り当てる、といった変換方法を取って実現させる。
なお、本発明は、上記実施例の構成に限られることなく、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のプログラマブル・アナログ・デジタル変換器によれば、外部からプログラムを用いて、幅広い分解能と変換速度、及びチャンネル数を可変にすることができるようになり、汎用性の高いA/D変換器が単一のLSIで生産可能となる。従って、これまでのA/D変換器が抱えていた、多品種生産という問題を解消することができ、A/D変換器の低価格化を実現可能となる。また、単一のLSIで幅広い領域をカバーし得るので、インタフェースの小型化も可能となる。
【0052】
また、本発明のプログラマブル・アナログ・デジタル変換器をアナログインタフェースに搭載した場合、小型で低価格の高機能アナログインタフェースが得られ、計測・制御ボード、医療用システムや無線通信領域などに広く利用可能である。産業上において、あるシステムを開発する際に、汎用性の高いチップを用いれば、設計、製造及び調整コストを低く抑えて開発することが可能となり、価格競争力の高い製品を開発することが可能となる。また、計測器の応用例としては、小型で高機能なポータブル計測器の開発などが可能となる。医療面に関しては、低コストで高精度の心電図といった診断用計測器やペースメーカーの開発が可能となる。さらに、通信領域においては、数kHz帯域から数10MHz帯域までの幅広い帯域をカバーすることができる小型の通信システムを開発することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例によるA/D変換器の構成図。
【図2】本発明の実施例による8個のアナログ入力チャンネル、最大分解能が8ビットとなるA/D変換器の構成図。
【図3】(a)(b)はスイッチ群を構成するスイッチの構成図。
【図4】SARの構成図。
【図5】アナログ入力が8チャンネルであるA/D変換器の構成図。
【図6】アナログ入力8チャンネル、8ビット出力の変換手順のタイミングチャート。
【図7】アナログ入力8チャンネル、4ビット出力の変換手順のタイミングチャート。
【図8】アナログ入力が1チャンネルであるA/D変換器の構成図。
【図9】アナログ入力1チャンネル、8ビット出力の変換手順のタイミングチャート。
【図10】アナログ入力が6チャンネルであるA/D変換器の構成図。
【図11】アナログ入力6チャンネル、8ビット出力の変換手順のタイミングチャート。
【図12】6チャンネル、6ビット出力の変換手順のタイミングチャート。
【図13】図10の構成における第1及び第2スイッチ群の構成図。
【符号の説明】
1 アナログ信号入力チャンネル
2 サンプル/ホールド回路(S/H回路)
3 比較器(コンパレータ)
5 出力処理回路
6 デジタル信号出力チャンネル
8 動作モード設定信号
10 第1のスイッチ群
20 第2のスイッチ群
34 逐次比較レジスタ(SAR)
40 制御信号発生回路(スイッチ制御部及びタイミング制御部)
50 デジタル・アナログ変換器(DAC)

Claims (5)

  1. 複数個のアナログ信号入力チャンネルと、
    複数個のサンプル/ホールド回路(以下S/H回路と記す)と、
    複数個の比較器(以下コンパレータと記す)と、
    前記複数個のアナログ信号入力チャンネルとS/H回路を接続する第1のスイッチ群と、
    前記第1のスイッチ群とは異なる、前記S/H回路とコンパレータを接続する第2のスイッチ群と、
    これら第1及び第2のスイッチ群の各スイッチの開閉を制御するためのスイッチ制御部と、
    前記コンパレータに逐次比較のための参照電圧を出力するためのデジタル・アナログ変換器(以下DACと記す)と、
    前記コンパレータでの比較結果を蓄えて前記DACに出力するための逐次比較レジスタ(以下SARと記す)と、
    前記SARにおいて蓄えたコンパレータでの比較結果を入力しパラレル又はシリアルでデジタル値を出力する出力処理回路と、
    前記スイッチ制御部、SAR及び出力処理回路の動作タイミングを制御するタイミング制御部とを備え、
    外部からの動作モード設定信号に応じて、変換速度、分解能及び入力チャンネル数を任意に可変としたことを特徴とするアナログ・デジタル変換器。
  2. 外部からの動作モード設定信号を、前記タイミング制御部、SAR及び出力処理回路に与えて、これら各部の動作を決定することを特徴とする請求項1記載のアナログ・デジタル変換器。
  3. C0[個]のアナログ入力チャンネル、f0[サンプル/秒]の変換速度、n0[bit]の分解能を備え、外部から動作モード設定信号を与えて、
    (入力チャンネル数)×(変換速度)×(分解能)≦C0 ×f0 ×n0となる範囲で、入力チャンネル数、変換速度及び分解能を可変とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアナログ・デジタル変換器。
  4. S/H回路の数はコンパレータの数の少なくとも2倍備えており、1つの入力チャンネル当り少なくとも2個のS/H回路を第1のスイッチ群のスイッチ切り替えにより連続的に交互に用いてサンプリングすることを特徴とする請求項3に記載のアナログ・デジタル変換器。
  5. S/H回路の数はコンパレータの数の少なくとも2倍備えており、少なくとも2個のコンパレータを第2のスイッチ群のスイッチ切り替えにより交互に用いて上位ビットと下位ビットとに分けて変換することを特徴とする請求項3に記載のアナログ・デジタル変換器。
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