JP2004200081A - 陰極線管及びその色選別機構 - Google Patents

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Abstract

【課題】カラー陰極線管におけるビームランディングの温度ドリフトの改善を図り、且つ色選別機構のフレームの軽量化、剛性化を図る。
【解決手段】1対の支持部材と1対の弾性付与部材44、45とからなる枠状のフレームを有し、1対の支持部材間に色選別用マスクが架張され、1対の弾性付与部材44、45が平板材で形成され且つ互いの板面が対向するように設けられ、弾性付与部材44、45の平板材に、板厚方向に膨出する1つ以上の膨出部100が設けられてなる色選別機構を備えて成る。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばカラーテレビ受像機、コンピュータディスプレイ、その他の表示装置に適用される陰極線管及びその色選別機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
図20は、従来のカラー陰極線管の概略構成を示す。このカラー陰極線管1は、パネル2とネック部3を有するファンネル4とからなる陰極線管体5を有し、パネル2の内面に赤、緑及び青の各色蛍光体層からなるカラー蛍光面6を形成すると共に、カラー蛍光面6に対向して色選別機構7を配置し、ネック部3内に電子銃8を配置して構成される。カラー蛍光面6は、例えばストライプ状の各色蛍光体層を配列して形成される。管体5の外側には偏向ヨーク9が設けられる。色選別機構7は、図21に示すように、断面L字形状をなす1対の支持部材12及び13と、支持部材12及び13の両端間に接合されたコ字状をなす1対の弾性付与部材14及び15とからなる枠状の金属フレーム16を有し、このフレーム16の1対の支持部材12及び13間に、薄板鋼板に画面水平方向に配列するように多数のスリット(ビーム透過孔)17を形成し、隣り合うスリット17間に微細帯状の所謂グリッド素体18を形成してなる色選別用マスク19が架張されて成る(特許文献1参照)。
【0003】
フレーム16を構成するコ字状の弾性付与部材14及び15は、例えば角材で形成され、その両端が水平部及びこれに連続する垂直部からなる断面略L字形状の支持部材12及び13の該水平部の底面に溶接される。この色選別機構7を組み立てるときは、図22に示すように、1対の支持部材12及び13を外側から加圧し、所謂ターンバックルを掛けてフレーム16を変形させた状態で色選別用マスク19を支持部材12、13の断面略L字形状の各垂直部の端面上に溶接し、その後、加圧を解除する。これによって、色選別用マスク19は所定の張力をもってフレーム上に架張される。従って、色選別機構7の組立後の状態は、フレーム16が図22の太線で示すように、組立前のフレームの状態(細線図示)よりも支持部材12及び13の色選別用マスク溶接面12a,13aが蛍光面側に移動することになる。
この色選別機構7は、パネル2の内側面に固着されたパネルピン(図示せず)に支持されるように、例えば4点支持の場合にはフレーム16の4辺に対応する支持部材12、13及び弾性付与部材14、15にそれぞれスプリングホルダ21を介して端部にピン係合孔22を設けた支持スプリング23が取り付けられている。
【0004】
この陰極線管1では、電子銃8から出射した赤(R)、緑(G)及び青(B)に対応した3つの電子ビームB〔BR ,BG ,BB 〕が色選別機構7のスリット(ビーム透過孔)17を通過して、カラー蛍光面6の各色蛍光体層に照射され、蛍光体層が発光し、該電子ビームBR ,BG ,BB が偏向ヨーク9にて水平、垂直方向に走査されて所要のカラー画像を表示するようになされる。
【0005】
色選別機構としては、上例の他、例えば特許文献2に示すような色選別機構も知られている。この色選別機構131は、シャドウマスク型であり、図25に示すように、相対向する1対の支持部材132及び133と、支持部材132及び133の両端間に接合された平板状の弾性付与部材34及び35とから成る枠状のフレーム136が設けられ、支持部材132及び133間に図示せざるも色選別用マスクが架張されて成る。弾性付与部材134及び135は、平板状の面134a,135aが蛍光面側に向き且つ蛍光面側に凸となるように弾性的に湾曲させて支持部材132及び133に接合される。符号138は支持スプリングを示す。この色選別機構131は、後述するように、温度ドリフトの改善を図る構成であり、色選別用マスクが熱膨張した時にフレーム136自体を蛍光面側へ移動させて電子ビームのミスランディングを補正している。
【0006】
【特許文献1】
特開平10ー106449号公報
【特許文献2】
特開平8ー273552号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図20及び図21に示すカラー陰極線管1の動作時、上述したように電子銃8からの電子ビーム〔BR ,BG ,BB 〕は、色選別機構7のスリット(17を通過して蛍光面6上に照射される。このとき、色選別機構7を通過できなかった電子ビームBのエネルギーは主に熱に変わる。この熱を受けた色選別機構7は、熱膨張し、温度上昇前の位置から動く。これにより電子ビームの通過する位置が変わり、色欠けや色ずれを引き起こす。この温度上昇による電子ビームのずれを「ビームランディングの温度ドリフト」と呼ぶ。特に、色選別機構7の色選別用マスク19は薄板鋼板で作られているので、熱容量が小さく、陰極線管1への映像入力の電流レベルが変わると短時間(数分)で大幅に温度上昇又は降下する。熱膨張による色選別用マスク19の伸びは、主として微細帯状のグリッド素体18の長手方向に大きく伸びる。このため、色選別用マスク19の熱膨張・収縮に伴う温度ドリフトは、短時間に大きな量で発生し、制御が難しい。因みに、フレーム16は数時間かけてゆっくり熱膨張する。
【0008】
この温度ドリフトの現象を詳述する。
前述したように色選別機構7は、色選別用マスク19に張力を与えるために、組立の段階でフレーム16を加圧し変形させた上で色選別用マスク19を溶接する(図22参照)。このため、陰極線管1の動作時に温度が上昇して色選別用マスク19が熱膨張すると、色選別用マスク19の張力が開放され、フレームは組立て前の形に戻ろうとする。この時、図23に示すように、色選別用マスク19は蛍光面6から離れる方向に変位し、パネルと色選別機構の距離、即ち蛍光面6と色選別用マスク19間の距離(いわゆるグリルハイト)GHが変化してしまう(ΔGHだけ蛍光面6から離れる方向に変化する)。グリルハイトGHが変化すると、色選別用マスク19のスリット17の位置が変化するため、スリット17を通過した電子ビームの到達位置も変化し、蛍光面6上の正しい位置に照射しなくなる。図24は、この状態を示す。蛍光面6は、例えば赤(R)、緑(G)及び青(B)の蛍光体ストライプ6R、6G及び6Bの各色間にカーボンストライプ 6BLが形成されている。熱膨張前の色選別機構71 を通過した電子ビームB1 は、例えば緑蛍光体ストライプ6Gに照射されるが、熱膨張後にはグリルハイトGHがΔGHだけ大きくなる方向に変化(GH+ΔGH)するため、熱膨張後の色選別機構72 を通過した電子ビームB2 は、異なる色、例えば青蛍光体ストライプ6Bに照射されミスランディングが生じる。
【0009】
前述の図25の先行技術は、温度ドリフト対策として、例えば熱膨張したときに色選別機構をグリルハイトGHの変化分ΔGHだけ蛍光面側へ移動させて、電子ビーム軌道を補正するようにしており、グリルハイトGHと孔位置の両方のずれを同時に補正のために、弾性付与部材34、35を弓状に加工して熱膨張時に色選別用マスクを蛍光面側へ移動するようにしている。
【0010】
しかし、近年、カラーテレビ受像機は大型化、高精細化が進み、温度ドリフト量をさらに極小にすることが求められている。
【0011】
一方、本発明者は、先に特願2002ー128732号において色選別機構を構成するフレームの弾性付与部材を平板材で形成し、ビームランディングの温度ドリフト量をより極小に抑制できるようにした陰極線管及びその色選別機構を提案した。しかし、平板材の板厚が薄くなると、コストが低減できる利点がある反面、反り方向(長手方向の反り)、ねじれ方向に対して剛性が低くなる。そこで、かかる色選別機構においては、平板材を薄くしてコスト低減と共に軽量化を図り、且つ剛性が得られるもとが望まれている。
【0012】
本発明は、上述の点に鑑み、ビームランディングの温度ドリフト量をより極小に抑制できるようにし、且つ色選別機構を構成する平板材からなる弾性付与部材を薄く軽量のままで剛性を高めるようにし、低コスト化、高信頼性化を可能にした陰極線管及びその色選別機構を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る色選別機構は、1対の支持部材と1対の弾性付与部材とからなる枠状のフレームを有し、1対の支持部材間に色選別用マスクが架張され、1対の弾性付与部材が、平板材で形成され且つ互いの板面が対向するように設けられ、弾性付与部材の平板材に、板厚方向に膨出する1つ以上の膨出部が設けられて成る。
1対の弾性付与部材は、板厚方向に段差を有する平板材で形成することができる。また、1対の弾性付与部材は、弾性付与部材の弾性変形する面が色選別用マスクの中央の法線に対して傾斜して支持部材に取付ける構成とすることができる。
【0014】
膨出部としては、弾性付与部材の長手方向に複数設けられるのがこの好ましい。複数の膨出部は、弾性付与部材の長手方向に1列に設け、各膨出部の凸の向きを同じにして形成することができる。複数の膨出部は、弾性付与部材の長手方向に上下2列に設け、各膨出部の凸の向きを同じにして形成することができる。複数の膨出部は、弾性付与部材の長手方向に上下2列に設け、上下2列間で互いに膨出部の凸の向きが逆になるように形成することができる。さらに、複数の膨出部は、弾性付与部材の長手方向に上下2列に設け、上下2列間で互いに膨出部の凸の向きが逆になるようにすると共に、各列の膨出部の凸の向きが弾性付与部材の長手方向に交互に逆になるように形成することができる。
【0015】
膨出部は、膨出部の一部が弾性付与部材の平板材の辺を形成するか、又は弾性付与部材の平板材の辺より内側に形成することができる。膨出部は、平面形状が三角形状、四角形状、多角形状、円形状、半楕円形状又は卵形状に形成することができる。
さらに、弾性付与部材が、弾性付与部材の弾性変形する面を色選別用マスクの中央の法線に対して傾斜させて支持部材に取付けられる場合、弾性付与部材の一部に陰極線管の管軸に平行な面を有するスプリングホルダー取付け用、あるいはダンパー線取付け用の押し出し部を設けることができる。
【0016】
本発明の色選別機構によれば、フレームを構成する弾性付与部材を平板材で形成し、且つこの平板材が互いの板面を対向するように配置されるので、色選別用マスクが熱膨張してもフレームの支持部材は管軸方向に変位しにくい。このため、グリルハイトの変化量が可及的に零に近づき、ビームランディングの温度ドリフト量を極小に抑制できる。
そして、平板材による弾性付与部材に膨出部が形成されるので、弾性付与部材の反り方向やねじれ方向の剛性が高められ、平板材の板厚を薄くしても十分に耐えることができる。凹凸状に複数の膨出部を弾性付与部材の長手方向に2列にして設け、膨出部の平面形状を三角形状、半楕円形状にするときは、膨出部が上下2列間で入れ子状に配置でき、膨出部を多く配置することができる。複数の膨出部をその凸の向きが上下又は/及び左右(弾性付与部材の長手方向)で交互になるように形成するときは、弾性付与部材の全体の剛性のバランスがとれて良好である。
弾性付与部材の膨出部の一部又は全部が、陰極線管の管軸に平行な面を有するときは、スプリングホルダー、あるいはダンパー線を真っ直ぐに取付けることができる。
【0017】
本発明に係る陰極線管は、上述の色選別機構を備えて成る。
本発明の陰極線管によれば、上述の色選別機構を備えることにより、ビームランディングの温度ドリフト量が極小に抑制される。且つ色選別機構を構成するフレームの弾性付与部材の薄板化、軽量化が可能になり、コスト低減が図れる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明を説明する。
【0019】
先ず、本発明の基本技術である弾性付与部材を平板材で形成した色選別機構及びこの色選別機構を備えたカラー陰極線管について説明する。
図8は、本発明に係るカラー陰極線管の一実施の形態を示す。本実施の形態に係るカラー陰極線管31は、パネル32とネック部33を有するファンネル34とからなる陰極線管体35を有し、パネル32の内面に赤、緑及び青の各色蛍光体層からなるカラー蛍光面36を形成すると共に、カラー蛍光面36に対向して後述する本発明の色選別機構37を配置し、ネック部33内に電子銃38を配置して構成される。カラー蛍光面36は、例えばストライプ状の各色蛍光体層を配列して形成される。管体35の外側には偏向ヨーク39が配置される。
【0020】
この陰極線管31では、電子銃38から出射した赤(R)、緑(G)及び青(B)に対応した3つの電子ビームB〔BR ,BG ,BB 〕が色選別機構37の色選別用マスクを通過して、カラー蛍光面36の所要の各色蛍光体層に照射され、蛍光体層が発光し、該電子ビームBR ,BG ,BB が偏向ヨーク39にて水平、垂直方向に走査されて所要のカラー画像を表示するようになされる。
【0021】
本発明の色選別機構は、基本的には1対の支持部材と1対の弾性付与部材とからなる枠状のフレームを有し、1対の支持部材間に色選別用マスクが架張され、弾性付与部材が色選別用マスクの中央の法線を含む面と交叉する面内で弾性変形する部材で形成された構成とする。
図9〜図15は、本発明の色選別機構37の一実施の形態を示す。この色選別機構371 は、後述の断面略L字形状をなす1対の支持部材42及び43と、支持部材42及び43の両端間に接合された平板材で形成され且つ互いの板面が対向するように設けられた1対の弾性付与部材44及び45とからなる枠状の金属フレーム46を有し、このフレーム46の1対の支持部材42及び43間に、薄板鋼板に画面水平方向に配列するように多数のスリット(ビーム透過孔)47が形成され、隣り合うスリット47間に微細帯状の所謂グリッド素体48が形成された色選別用マスク49を架張して構成される。
【0022】
本例では弾性付与部材44及び45は、その平板材の板面が色選別用マスク49の中央の法線に平行になるように支持部材42及び43に取り付けられる。
支持部材42及び43は、色選別用マスク49に溶接される垂直部51Vとこれに連続する水平部51Hからなる断面略L字形状をなしている。弾性付与部材44及び45の夫々の端部には、図12に示すように、板面に沿って支持部材42及び43の断面略L字形状の水平部51Hの係合する係合溝52が形成される。なお、本例では係合溝52に支持部材42、43の断面略L字形状の折り曲げ部に対応する部分に折り曲げ部を逃げるための切欠き部54が形成される。
【0023】
各弾性付与部材44及び45は、夫々係合溝52を支持部材42及び43の水平部51Hに係合した状態で支持部材42及び43の垂直部51Vとこれに当接する弾性付与部材44及び45の端辺との境界部分を、及び支持部材42及び43の水平部51Vと弾性付与部材44及び45の係合溝52の縁辺との境界部分を夫々溶接(例えばアーク溶接)して両部材42、43及び44、45を接合する。溶接領域65としては、例えば図12の斜線で示すように、支持部材42及び43の垂直部51V側ではこれに当接する弾性付与部材44及び45の端辺の上部から両側部にかけて逆U字状に溶接し、支持部材42及び43の水平部51H側では水平部51Hに沿うように且つ水平部51Hの色選別用マスク側の内面と反対の外面に少なくとも互いに対角位置(即ち、図12の実線部分又は/及び破線部分)に線状に溶接する。この水平部51Hにおいて一方の対角位置のみに溶接する場合は、後述するように平板材で形成した弾性付与部材44及び45を傾斜して支持部材42及び43に接合する場合に溶接作業をし易くし、且つ接合強度が得られるので好ましい。
【0024】
色選別用マスク49は、相対向する支持部材42及び43の垂直部51Vの上面間に架張され、この垂直部51Vの上端面に溶接により固着される。色選別機構371 の組立ては、通常のように1対の支持部材42及び43を外側から加圧し、所謂フレーム46にターンバックルを掛けて変形させた状態で色選別用マスク49を支持部材42、43のL字状の各垂直部51Vの上端面に溶接し、その後、加圧を解除する。支持部材42、43に対する加圧は、例えば2点イコライズ(片側計4か所の加圧)、或いは3点イコライズ(片側計6か所の加圧)で行うことができる。
ここで、平板状の弾性付与部材44及び45を有するフレーム46は、フレーム46にターンバックルを掛けたときの弾性付与部材44及び45が板厚t方向に変形し易く、板幅w方向に変形しにくい構造となる。従って、組立て時のフレーム46にターンバックルを掛けて状態では、弾性付与部材44及び45は、図10A〜Cに示すように、色選別用マスクの中央の法線に対して直交する面内で弯曲するように変形する。このとき、支持部材42、43の垂直部51Vの上端面は、上記法線方向に殆ど変位しない。図10A,Bにおいて、実線は加圧前のフレーム形状を、破線は加圧後のフレーム形状を夫々示す。
これによって、色選別用マスク49は所定の張力をもってフレーム上に架張される。色選別用マスク49の架張後の状態を見ると、図11に示すように、弾性付与部材44、45の重心軸(幅方向の中心にある)Oと色選別用マスク49の重心軸O′がずれた位置にあるので、色選別用マスク49を架張したときに平板状の弾性付与部材44、45には色選別用マスク49側へ向くモーメントMが働き、板幅w方向に極微小量のたわみ変形が生じる。しかし、従来の色選別機構と比べればそのたわみ変形量mは極めて小さい。
【0025】
色選別機構371 は、パネル32の内側面に固着されたパネルピン(図示せず)に支持されるように、複数点支持、例えば4点支持の場合には枠状のフレーム46を構成する4辺に対応する支持部材42、43及び弾性付与部材44、45に夫々これらに溶接されたスプリングホルダ55〔551 、552 、553 、554 〕と、各スプリングホルダ55に溶接された端部にピン係合孔56を有する支持スプリング57〔571 、572 、573 、574 〕とからなる支持手段が取り付けられる。3点支持の場合は、例えば1つの支持部材42と1対の弾性付与部材44、45に支持手段が取付けられる。色選別用マスク49上には、これに接触するように振動防止用のダンパー線が架張される。
【0026】
本実施の形態に係る色選別機構371 を備えたカラー陰極線管31によれば、動作時に電子ビームによって色選別用マスク49が熱膨張した場合、フレーム46の弾性付与部材44及び45の応力が開放されるが、弾性付与部材44及び45は平板材で形成され且つ板面が色選別用マスク49の中央の法線に平行するように設けられているので、支持部材42及び43自体の上記法線方向への変位は殆どない。従って、熱膨張前後グリルハイトGHの変化量を可及的に零に近づけすることができ、温度ドリフト特性を改善することができる。
【0027】
弾性付与部材44及び45が平板材で形成され且つ板面を互いに対向するように配され、つまり弾性付与部材44及び45が色選別用マスク49に近い位置に設けられるので、弾性付与部材44及び45が色選別用マスク49付近に対して磁気遮蔽効果をもたらす。この為、地磁気の変化に伴う電子ビームの軌道の変化による色ずれ(いわゆる地磁気ドリフト)を小さくすることができる。この効果は弾性付与部材44及び45の材料磁気特性を適切に選択することで、より大きな効果が得られる。
温度ドリフト、地磁気ドリフトが改善されることにより、ビームランディングの電磁補正回路を廃止できる可能性がある。その結果、陰極線管を備えたテレビセット、コンピュータディスプレイ等の表示装置を安価に提供することができる。
【0028】
弾性付与部材44及び45に平板材を用いているため、角材を使用した従来のフレームと比較して、材料費を大幅に削減することができる。弾性付与部材44及び45に平板材を用いているので、角材と比較して溶接性に優れている。スプリングホルダ55等を溶接する際、小電流で安定した溶接ができ、溶接電極の消耗も押えられる。
弾性付与部材44及び45に用いる平板材は、角材と比較して体積に対する表面積の割合が大きく、放熱性に優れている。この為、陰極線管製造工程における色選別機構の温度コントロールが容易となる。例えば、スプリングホルダの溶接後、溶接部は室温まで冷却されるが、この時間を短縮できる。或いは色選別機構は黒化処理を高温の炉で行われ、その後室温まで冷却されるが、この時間を短縮できる。
【0029】
図13〜図14は、本発明の色選別機構37の他の実施の形態を示す。本実施の形態に係る色選別機構372 は、特に、フレームを構成する弾性付与部材44及び45を、板厚t方向に段差61を有する平板材で形成して構成される。その他の構成は、前述の色選別機構371 と同様であるので、詳細説明は省略する。
段差61は、1つ又は複数設けることができ、弾性付与部材44及び45としては、種々の形状が考えられる。段差61は、1対の弾性付与部材44及び45の夫々対称的に設けるのが好ましい。本例では段差61は、弾性付与部材44及び45の平面部のうち、最も両端に近い部位60Aを基準として、1対の弾性付与部材44及び45の相対向する側に突出する中央部の折曲部60Bで形成される。実線はフレーム加圧前の状態を示し、破線はフレーム加圧後の状態を示す。
【0030】
本実施の形態に係る色選別機構372 によれば、弾性付与部材44及び45を、板厚方向に段差61を有する平板材で形成するときは、段差61により力のモーメントが加わり、フレーム46にターンバックルを掛けたときの弾性付与部材44及び45の板厚方向への変形をさらに助長させることができる。従って、前述の色選別機構371 に比べてフレーム46の弾性付与部材44及び45をしなやかに変形させることが可能になる。その他、前述の色選別機構371 と同様の効果を奏するものである。
【0031】
図15及び図16は、本発明の色選別機構37の更に他の実施の形態を示す。本実施の形態に係る色選別機構373 は、特に、フレーム46を構成する1対の弾性付与部材44及び45を、板厚方向に段差61を有する平板材で形成すると共に、平板材の板面と色選別用マスクの中央の法線との成す角度θが所要の角度となるように、傾斜して支持部材42及び43に取り付けて構成される。
角度θとしては、0°<θ<90°の範囲とすることができる。好ましくは、弾性付与部材の強度を確保するために、角度θを0°<θ<60°の範囲とする。より好ましくは、ビームの入射を妨げないようにするために角度θを0°<θ<45°の範囲とする。更に好ましくは、グリルハイトGH方向の変化をコントロールしやすくするために、角度θを10°<θ<45°の範囲とする。
その他、例えば支持部材42、43の形状、弾性付与部材44及び45と支持部材42及び43との溶接、色選別用マスクの架張の仕方等の構成は、前述の図9〜図12で説明した色選別機構371 と同様であるので、重複説明を省略する。
【0032】
一例では弾性付与部材44及び45を、前述の図13及び図14と同様に平板材よりなり、夫々対称的に中央部において弾性付与部材44及び45の相対向する側に所要の幅で凸状に突出する折曲部60Bによる段差61を有して形成し、この弾性付与部材44及び45を角度θが30°となるように傾斜させて支持部材42及び43に溶接してフレーム46が構成される。このフレーム46にターンバックルを掛けて色選別用マスク49が架張される。
【0033】
本実施の形態の色選別機構373 においては、フレーム46の加圧変形後、即ち、色選別用マスク49の架張後のフレーム46の状態を見ると、図16Aの破線で示するように(実線は加圧前のフレーム形状)、例えば、弾性付与部材44及び45の中央は板厚方向に弾性付与部材44及び45の相対向する側に凸となるように撓み変形する。両端部は支持部材42及び43の変形に応じて板厚方向に中央と同じ側又は逆側に凸となるように撓み変形する。これを図16Aの矢印B方向から見ると、図16Bに示すように、弾性付与部材44及び45の中央部の折曲部60Bは色選別用マスク49に近づく方向に変形する。一方、前述したように、弾性付与部材44及び45の重心軸Oと色選別用マスク49の重心軸O′がずれた位置にあることから色選別用マスク49を架張したときに、弾性付与部材44及び45にモーメントが働き、弾性付与部材44及び45の全体が板幅方向に且つ色選別用マスク49と反対側に凸となるたわみ変形が生じる。従って、弾性付与部材44及び45では、ターンバックルをかけたときの撓み変形量と、色選別用マスク49を架張したときの逆対方向への撓み変形量とが相殺され、変形量が零の位置が存在する。この変形量が零の位置は、中央の折曲した領域60B或いは両端領域60Cに存在する。主として中央の折曲した領域60Bに存在する。
【0034】
本実施の形態では、色選別機構373 のフレームにパネルに対する支持手段、例えばスプリングホルダを介して支持スプリングを溶接するが、弾性付与部材に対しては支持手段、本例ではスプリングホルダを、上記の変形量が零の位置に溶接するようになす。但し、支持スプリングは、従来と同様に支持スプリングの板面が管軸に沿うように取り付けられる。
【0035】
本実施の形態に係る色選別機構373 を備えたカラー陰極線管31によれば、動作時に電子ビームによって色選別用マスク49が熱膨張した場合、フレーム46の弾性付与部材44及び45の応力が開放されるが、弾性付与部材44及び45のスプリングホルダは弾性付与部材44及び45の変形零の位置に取り付けられているので、熱膨張前後で色選別用マスクの管軸方向の位置が変わらず、グリルハイトGHの変化を零にすることができる。従って、温度ドリフト特性をさらに改善することができる。その他、前述の色選別機構371 で説明したと同様の効果を奏するものである。
【0036】
上例では、フレームに対してスプリングホルダを介して支持スプリングを取り付けるようにしたが、その他の支持手段として、支持スプリングを直接フレームに取り付けるようにすることもできる。
【0037】
上述した実施の形態において、弾性付与部材44及び45の条件、即ち主たる設計パラメータは、次の6つがある。この設計パラメータは、図17A,Bに示す弾性付与部材44及び45を形成する平板材の板厚t、板幅w、段差の折り曲げ量d、段差の折り曲げ位置色選別用マスク中央の法線と弾性付与部材の板面との成す角度θ、弾性付与部材の支持部材への取り付け高さhである。
これらの設計パラメータを適宜選択することにより、フレーム加圧時の支持部材42及び43のパネル方向に近づく変形量mをコントロールでき、最適の温度ドリフト特性を有する色選別機構の設計が可能になる。
【0038】
上述の各実施の形態に係るフレーム46を用いると、ターンバックル工程の加圧時、支持部材42及び43のパネル方向に近づく変形量mを自由に設計できる。理論的にはこの変形量を0にすることができる。この為、カラー陰極線管内で色選別用マスク46が熱膨張しても、グリルハイトGHが変化することなく、変化しても極微小量であり、グリルハイトGHの変化に伴う温度ドリフトを可及的に零に近づけることができる。
本発明の色選別機構は、大型化、高精細化のカラー陰極線管に適用して好適である。
【0039】
図18は、本発明に係るカラー陰極線管を複数電子銃型カラー陰極線管に適用した場合の他の実施の形態を示す。本例では2つの電子銃を有したカラー陰極線管である。
本実施の形態に係るカラー陰極線管71は、複数、本例では2つのネック部74〔741 、742 〕を有して夫々電子銃76〔761 、762 〕を備えて成る。即ち、大画面領域を形成するパネル72と、このパネル72に接合されたファンネル73と、このファンネル73に接合された2つのネック部74〔741 、742 〕とからなる管体75が設けられる。各ネック部741 及び742 内に夫々電子銃761 及び762 が配置される共に、パネル72の内面のカラー蛍光面77に対向して色選別機構78、例えばアパーチャグリル、シャドウーマスク(スロットマスク)等が配置される。この陰極線管71は、複数、本例では2つの小画像領域を合成した大画面領域に全体画像を表示できるように構成される。管体75の外側には、各ネック部741 、742 からファンネル73にかけて夫々偏向ヨーク80〔801 、802 〕が配置される。
【0040】
パネル72は、一体成形され、画面水平方向を長軸とし、画面垂直方向を短軸とする横長形状に形成される。パネル72内面では、各電子銃76から出射した電子ビームによって走査される小画像領域81が電子銃76の数に対応して複数形成される。本例では2つの小画像領域811 、812 が形成され、この2つの小画像領域811 、812 の合成で大画像領域82が形成される。本例では、各電子銃761 、762 からの電子ビーム791 、792 が隣り合う小画像領域との近傍、即ち2つの小画像領域811 、812 との境界付近で夫々隣の小画像811 、812 に一部重複して走査するように構成される。色選別機構78は、パネル72の大画像領域82に対して共通に形成される。この場合、蛍光面77は、大画像領域82の水平方向に長いストライプ状の各色蛍光体層を垂直方向に沿って配列して構成される。色選別機構78の色選別用マスクは後述するように、大画像領域82の水平方向に長いスリット又は長孔(いずれもビーム透過孔)を有して構成される。
【0041】
このような2つの電子銃を有したカラー陰極線管71では、夫々電子銃761 、762 の夫々から電子ビーム791 、792 が概ね画面の半分の画像を表示するように出射される。電子ビーム791 、792 は、夫々垂直方向にライン走査されながら画面水平方向に夫々画面の端部から中央に向かってフィールド走査され、中央付近で互いに重複するようになされる。この陰極線管71では、電子ビーム791 、792 の垂直偏向がいわゆるライン偏向に相当し、水平偏向がいわゆるフィールド偏向に相当する。
【0042】
ここで、2つの電子銃を有したカラー陰極線管71では、色選別機構(本例ではアパーチャグリル)の色選別用マスクの各グリッド素体の長さが通常の2倍であり、しかも動作時には2つの電子銃からの電子ビームにより、色選別用マスクに与えられる熱量も通常の2倍になるため、色選別用マスクの熱膨張は通常のアパーチャグリルに比べて単純にみて4倍になり、温度ドリフト対策は通常よりも非常に厳しくなる。
【0043】
本実施の形態においては、この2つの電子銃を有したカラー陰極線管71の色選別機構78を上述の本発明に係る色選別機構で構成する。即ち、この色選別機構78、本例ではアパーチャグリルは、図19に示すように、相対向する1対の支持部材85及び86とその両端間に接合された平板材で形成された弾性付与部材87及び88とからなる金属フレーム89上に色選別用マスク90が架張されて成る。色選別用マスク40は、画面水平方向に長い微細帯状のグリッド素体91が画面垂直方向に沿って多数配列され、この各隣り合うグリッド素体91間に画面水平方向に長いスリット(ビーム透過孔)92が形成される。本例のフレーム89は、前述の図16で説明したと同様の構成を有してなる。即ち、断面略L字形状の支持部材85及び86に対して、平板材からなり且つ平面部のうち最も端部に近い部位94Aを基準として弾性付与部材88及び89の相対向する側に突出する折曲部94Bを有してなる、いわゆる段差を有してなる弾性付与部材88及び89を、例えば角度θが30°となるように傾斜して接合して構成される。
【0044】
かかる色選別機構78を備えた2つの電子銃を有するカラー陰極線管71によれば、動作時に色選別用マスク90が熱膨張しても、前述したようにグリルハイトGHが熱膨張前と変わらないので、温度ドリフト特性を改善することができる。その他、地磁気ドリフトの改善等、前述と同様の効果を奏する。
【0045】
本発明の色選別機構は、アパーチャグリル以外にも、シャドウマスク(スロットマスク)にも適用できる。
【0046】
以上は本発明に係るカラー陰極線管及び色選別機構の基本技術である。
次に、図1〜図7を用いて上述した色選別機構の平板材による弾性付与部材の軽量化、剛性化を図った本発明の実施の形態を説明する。なお、各図は弾性付与部材の構造のみを示す。
【0047】
図1は、本発明に係る色選別機構、即ち前述した図9、図13、図15、図19に対応した色選別機構371 、372 、373 、78に適用される平板材による弾性付与部材44、45(または87、88)の要部を示す実施の形態を示す。
本実施の形態に係る色選別機構は、そのフレームを構成する弾性付与部材44、45(87、88)の平板材に、弾性付与部材44、45(87、88)の長手方向に沿って上下2列に板厚方向に膨出する複数の膨出部100を設けて構成される。膨出部100は、上下に隣合う膨出部100の凸の向きが互いに逆になるように形成されると共に、長手方向に隣合う膨出部100の凸の向きが互いに逆になるように形成される。即ち、2列に配列された上下の膨出部100では、同一面で見ると一方が凸状に形成され、他方が凹状に形成される。また、各列において長手方向に配列された膨出部100では、同一面で見ると長手方向に隣り合って交互に凸状と凹状が形成される。膨出部100の平面形状は、本例では四角形状に形成される。四角形状の膨出部100は平板材の辺縁を残して内側に形成される。
【0048】
本実施の形態の色選別機構によれば、フレームを構成する平板材による弾性付与部材44、45(87、88)に凹凸状に膨出部100が設けられているので、板厚を薄くしてもねじれ方向と反り方向の両方の剛性を高めることができる。これによりフレーム自体、したがって色選別機構の軽量化が図られコスト低減を可能にする。膨出部100が上下2列に配列され、上下、左右共に交互に膨出部100の凸の向きが逆になっているので、剛性向上の効果が高い。
【0049】
図2は、本発明に係る色選別機構、即ち前述した図9、図13、図15、図19に対応した色選別機構371 、372 、373 、78に適用される平板材による弾性付与部材44、45(または87、88)の要部を示す他の実施の形態を示す。
本実施の形態に係る色選別機構は、そのフレームを構成する弾性付与部材44、45(87、88)の平板材に、弾性付与部材44、45(87、88)の長手方向に沿って上下2列に板厚方向に膨出する複数の膨出部100を設けて構成される。膨出部100は、本例では全て凸の向きが同じ方向となるように形成される。なお、上下に隣合う膨出部100、あるいは長手方向に隣合う膨出部100の凸の向きが互いに逆になるように形成することもできる。即ち、2列に配列された上下の膨出部100では、同一面で見ると一方の列が凸状に形成し、他方の列が凹状に形成することができる。また、各列において長手方向に配列された膨出部100では、同一面で見ると長手方向に隣り合って交互に凸状と凹状に形成することができる。
そして、本実施の形態では、特に膨出部100の平面形状を、三角形状(厳密には三角の頂部が直線又は曲線になっている)にし、上列の互いに隣合う三角形状の膨出部100の間に下列の各三角形状の膨出部100が一部が入り込む、いわゆる入れ子状に形成される。三角形状の膨出部100はその底辺が平板材の辺に一致するように形成される。
【0050】
本実施の形態の色選別機構によれば、図1と同様にフレームを構成する平板材による弾性付与部材44、45(87、88)に凹凸状に膨出部100が設けられているので、板厚を薄くしてもねじれ方向や反り方向の剛性(特にねじれ方向の剛性)を高めることができる。これによりフレーム自体、したがって色選別機構の軽量化が図られコスト低減を可能にする。膨出部100を全て凸の向きが同じになるように形成すると共に、その三角形状の底辺が平板材の辺に一致するように形成することにより、プレス加工が容易になり、精度の良い加工ができる。さらに、膨出部100の平面形状を三角形状にし、上下列の膨出部100を入れ子状に配置するので、膨出部100の数を多く設けることができ、よりねじれ、反りに強い弾性付与部材44、45(87、88)が得られる。
【0051】
図3は、本発明に係る色選別機構、即ち前述した図9、図13、図15、図19に対応した色選別機構371 372 、373 、78に適用される平板材による弾性付与部材44、45(または87、88)の要部を示す他の実施の形態を示す。
本実施の形態に係る色選別機構は、そのフレームを構成する弾性付与部材44、45(87、88)の平板材に、弾性付与部材44、45(87、88)の長手方向に沿って上下2列に板厚方向に膨出する複数の膨出部100を設けて構成される。膨出部100は、一方の列の膨出部100の凸の向きと他方の列の膨出部100の凸の向きを互いに逆にして形成される。本例では上列の膨出部100の凸の向きを外側にし、下列の膨出部100の凸の向きを内側になるように、膨出部100が形成される。膨出部100の平面形状は台形状である。台形状の膨出部100は、その底辺が平板材の辺に一致するように形成される。
【0052】
本実施の形態の色選別機構によれば、図1と同様にフレームを構成する平板材による弾性付与部材44、45(87、88)に凹凸状に膨出部100が設けられているので、板厚を薄くしてもねじれ方向と反り方向の両方の剛性を高めることができる。これによりフレーム自体、したがって色選別機構の軽量化が図られコスト低減を可能にする。台形状の膨出部100をその底辺が平板材の辺に一致するように形成することにより、精度の良い加工ができる。
なお、複数の膨出部100を2列の配置し、全ての膨出部100の凸の向きを同じにして構成することもできる。この場合も同様に板厚を薄くしてもねじれ方向や反り方向の剛性を高めることができる。これによりフレーム自体、したがって色選別機構の軽量化が図られコスト低減を可能にする。全ての膨出部100の凸の向きを同じにするので、プレス加工も容易になる。
【0053】
図4は、本発明に係る色選別機構、即ち前述した図9、図13、図15、図19に対応した色選別機構371 、372 、373 、78に適用される平板材による弾性付与部材44、45(または87、88)の要部を示す他の実施の形態を示す。
本実施の形態に係る色選別機構は、そのフレームを構成する弾性付与部材44、45(87、88)の平板材に、弾性付与部材44、45(87、88)の長手方向に沿って1列に板厚方向に膨出する複数の膨出部100を設けて構成される。複数の膨出部100は、凸の向きを全て同じ向きにして形成される。膨出部100の平面形状は四角形状であり、その一辺が平板材の辺に一致するように形成される。
【0054】
本実施の形態の色選別機構によれば、図1と同様にフレームを構成する平板材による弾性付与部材44、45(87、88)に凹凸状に膨出部100が設けられているので、板厚を薄くしてもねじれ方向と反り方向の両方向の剛性を高めることができる。これによりフレーム自体、したがって色選別機構の軽量化が図られコスト低減を可能にする。膨出部100が1列に配列され、各膨出部100の凸の向きが同じであり、しかも膨出部100の底辺が平板材の辺に一致するので、プレス成形による加工がし易く、精度の良い加工ができる。 なお、複数の膨出部100を1列に配置し、隣合う膨出部100の凸の向きを互いに逆にした構成とすることもできる。この場合も同様に板厚を薄くしてもねじれ方向や反り方向の剛性を高めることができる。これによりフレーム自体、したがって色選別機構の軽量化が図られコスト低減を可能にする。
【0055】
図5は、本発明に係る色選別機構、即ち前述した図9、図13、図15、図19に対応した色選別機構371 、372 、373 、78に適用される平板材による弾性付与部材44、45(または87、88)の要部を示す他の実施の形態を示す。
本実施の形態に係る色選別機構は、そのフレームを構成する弾性付与部材44、45(87、88)の平板材に、弾性付与部材44、45(87、88)の長手方向に沿って筋状の1つの膨出部101を設けて構成される。本例では凸の向きが外側に向くように形成される。
【0056】
本実施の形態の色選別機構においても、弾性付与部材44、45(87、88)の長手方向に沿って筋状の1つの膨出部101を設けることにより、板厚を薄くしてもねじれ方向や反り方向の剛性(特に反り方向の剛性)を高めることができる。これによりフレーム自体、したがって色選別機構の軽量化が図られコスト低減を可能にする。筋状に膨出させるので、プレス成形がし易く精度良く加工ができる。この例では特に反り方向に関しての剛性が強く、さらにねじれ方向に剛性を持たせるためには膨出部100を適当な位置に設けることができる。
【0057】
図6は、本発明に係る色選別機構、即ち前述した図9、図13、図15、図19に対応した色選別機構371 、372 、373 、78に適用される平板材による弾性付与部材44、45(または87、88)の要部を示す他の実施の形態を示す。
本実施の形態に係る色選別機構は、そのフレームを構成する弾性付与部材44、45(87、88)の平板材に、弾性付与部材44、45(87、88)の幅方向に段差を付けた膨出部102を設けて構成される。段差による膨出部102は、弾性付与部材44、45(87、88)の長手方向に沿って筋状に1つ形成される。
【0058】
本実施の形態の色選別機構においても、弾性付与部材44、45(87、88)の幅方向に段差となるように折曲し、弾性付与部材44、45(87、88)の長手方向に沿って筋状の1つの膨出部102を形成することにより、板厚を薄くしてもねじれ方向や反り方向の剛性(特に反り方向の剛性)を高めることができる。これによりフレーム自体、したがって色選別機構の軽量化が図られコスト低減を可能にする。折曲させて膨出させるので、プレス成形がし易く精度良く加工ができる。
【0059】
一方、上述の平板材による弾性付与部材44、45(87、88)を支持部材42、43(85、86)に対して傾けて接合した色選別機構においては、その弾性付与部材44、45(87、88)にスプリングホルダーを取り付ける面、ダンパー線を取り付ける面を形成する必要がある。図7は、その一例を示す。本実施の形態は、前記した弾性付与部材の膨出部100の一部又は全部が、例えばスプリングホルダーの取付け、あるいはダンパー線の取付けを容易にするための、カラー陰極線管の管軸に平行な面103を有した形状に形成される。膨出部101、102にも、このような面103を有するように形成することも可能である。
【0060】
このように、弾性付与部材44、45(87、88)の膨出部100(101、102)の一部又は全部を、カラー陰極線管の管軸に平行な面103を有した形状にすることにより、この膨出部の103を利用してスプリングホルダー、あるいはダンパー線を取付けることができる。
【0061】
膨出部100の平面形状としては、上例の四角形状、三角形状、台形状の他に、例えば多角形状、円形状、半楕円形状、卵形状等の形状とすることができる。上例では、膨出部100の平面形状の一辺を平板材の辺に一致させたが、その他、膨出部100を平板材の内側に形成するようにしても良い。
複数の膨出部100を上下2列間、列方向に配列する際に、凸の向きの配列は上例に限らず、適宜選択できる。
図13、図15、図19の弾性付与部材を全体として折曲した構造に、上述した複数の膨出部100を形成する場合、先にプレスにより平板材を折曲加工し、その後に膨出部100をプレス加工しても良い。また、先に膨出部100をプレス加工し、その後でプレスによる折曲加工を行っても良い。
【0062】
【発明の効果】
本発明の色選別機構によれば、フレームを構成する弾性付与部材を平板材で形成し、且つこの平板材が互いの板面を対向するように配置されるので、色選別用マスクが熱膨張してもフレームの支持部材は管軸方向に変位しにくい。このため、グリルハイトの変化量が可及的に零に近づき、ビームランディングの温度ドリフト量を極小に抑制できる。そして、フレームを構成する平板材による弾性付与部材に凹凸状に膨出部を設けるので、板厚を薄くしてもねじれ方向や反り方向の剛性を高めることができる。これによりフレーム自体、したがって色選別機構の軽量化を図り、コスト低減を可能にする。
【0063】
複数の膨出部を上下2列に配列し、上下2列間で膨出部の凸の向きを逆にし、且つ弾性付与部材の長手方向に交互に膨出部の凸の向きを逆にするときは、弾性付与部材全体をバランス良く剛性化することができる。
複数の膨出部を上下2列に配列し、上下2列間で各膨出部の凸の向きを逆にするときは、同様に弾性付与部材全体をバランス良く剛性化することができる。
複数の膨出部を上下2列に配列し、上下2列間で各膨出部の凸の向きを同じにするときは、プレス加工を容易にする。
複数の膨出部を1列に配列し、各膨出部の凸の向きが同じにするときは、プレス加工を容易にする。
【0064】
膨出部をその一辺が平板材の辺に一致するように形成することにより、精度の良い加工ができる。
膨出部の平面形状を三角形状、半楕円形状にすると、膨出部を上下2列間で入れ子状に配置でき、膨出部の配置が多くできる。
膨出部の一部又は全文を、陰極線管の管軸に平行な面を有する形状にすることにより、この膨出部の面を利用してスプリングホルダー、あついはダンパー線を真っ直ぐに取付けることができる。
【0065】
本発明の陰極線管によれば、上述の色選別機構を備えることにより、ビームランディングの温度ドリフト量が極小に抑制される。且つ色選別機構を構成するフレームの弾性付与部材の薄板化、軽量化が可能になり、コスト低減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】A 本発明に係る色選別機構のフレームを構成する弾性付与部材の実施の形態の要部を示す構成図である。
B 図1AのAーA線上の断面図である。
C 図1AのBーB線上の断面図である。
【図2】A 本発明に係る色選別機構のフレームを構成する弾性付与部材の他の実施の形態の要部を示す構成図である。
B 図2Aの側面図である。
【図3】A 本発明に係る色選別機構のフレームを構成する弾性付与部材の他の実施の形態の要部を示す構成図である。
B 図1Aの一方の側から見た側面図である。
C 図1Aの他方の側から見た側面図である。
【図4】A 本発明に係る色選別機構のフレームを構成する弾性付与部材の他の実施の形態の要部を示す構成図である。
B 図1Aの一方の側から見た側面図である。
C 図1Aの他方の側から見た側面図である。
【図5】本発明に係る色選別機構のフレームを構成する弾性付与部材の他の実施の形態の要部を示す構成図である。
【図6】本発明に係る色選別機構のフレームを構成する弾性付与部材の他の実施の形態の要部を示す構成図である。
【図7】本発明に係る色選別機構のフレームを構成する弾性付与部材の他の実施の形態の要部を示す構成図である。
【図8】本発明に係る陰極線管の一実施の形態を示す構成図である。
【図9】本発明に係る色選別機構の一実施の形態を示す斜視図である。
【図10】A 図9の色選別機構を構成するフレームの加圧前後の形状を示す平面図である。
B 図9Aの矢印B方向から見た側面図である。
C 図9Aの矢印C方向から見た側面図である。
【図11】図9の説明に供する拡大側面図である。
【図12】A 支持部材と弾性付与部材の接合部を示す要部の側面図である。
B 図12Aの90°方向から見た側面図である。
【図13】本発明に係る色選別機構の他の実施の形態を示す斜視図である。
【図14】図13の色選別機構のフレームの加圧前後の形状を示す平面図である。
【図15】本発明に係る色選別機構の他の実施の形態を示す斜視図である。
【図16】A 図15の色選別機構を構成するフレームの加圧前後の形状を示す平面図である。
B 図15Aの矢印B方向から見た側面図である。
C 図15Aの矢印C方向から見た側面図である。
【図17】A,B 本発明に係る色選別機構の設計パラメータの説明に領する説明図である。
【図18】本発明に係る陰極線管の他の実施の形態を示す構成図である。
【図19】図18の陰極線管に用いられる色選別機構の斜視図である。
【図20】従来の陰極線管の例を示す構成図である。
【図21】従来の色選別機構を示す斜視図である。
【図22】従来の色選別機構の組立て前後のフレーム形状を示す側面図である。
【図23】従来の色選別機構の色選別用マスクの熱膨張前後のグリルハイトの変化を示す陰極線管の要部の断面図である。
【図24】ビームランディングの温度ドリフトの説明に供する説明図である。
【図25】従来の色選別機構の他の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
31・・・カラー陰極線管、32・・・パネル、33・・・ネック部、34・・・ファンネル、35・・・管体、36・・・蛍光面、37〔371 、372 、373 〕・・・色選別機構、38・・・電子銃、39・・・偏向ヨーク、42、43・・・支持部材、44、45・・・弾性付与部材、46・・・フレーム、47・・・スリット(ビーム透過孔)、48・・・グリッド素体、49・・・色選別用マスク、52・・・係合溝、60A・・・基準の部位、60B、60C・・・折曲部、61・・・段差、65・・・溶接領域、71・・・ダブルネック型陰極線管、72・・・パネル、73・・・ファンネル、741 、742 ・・・ネック部、75・・・管体、761 、762 ・・・電子銃、77・・・蛍光面、78・・・色選別機構、85、86・・・支持部材、87、88・・・弾性付与部材、89・・・フレーム、90・・・色選別用マスク、91・・・スリット(ビーム透過孔)、92・・・グリッド素体、100、101、102・・・膨出部、103・・・押し出し部

Claims (22)

  1. 1対の支持部材と1対の弾性付与部材とからなる枠状のフレームを有し、前記1対の支持部材間に色選別用マスクが架張され、
    前記1対の弾性付与部材が、平板材で形成され且つ互いの板面が対向するように設けられ、
    前記弾性付与部材の平板材に、板厚方向に膨出する1つ以上の膨出部が設けられてなる色選別機構を備えて成る
    ことを特徴とする陰極線管。
  2. 前記弾性付与部材の平板材に、該弾性付与部材の長手方向に複数の前記膨出部が設けられて成る
    ことを特徴とする請求項1記載の陰極線管。
  3. 前記1対の弾性付与部材が、板厚方向に段差を有する平板材で形成されて成る
    ことを特徴とする請求項2記載の陰極線管。
  4. 前記弾性付与部材は、該弾性付与部材の弾性変形する面が色選別用マスクの中央の法線に対して傾斜して支持部材に取付けられて成る
    ことを特徴とする請求項2記載の陰極線管。
  5. 前記複数の膨出部が、該弾性付与部材の長手方向に1列に設けられ、前記複数の膨出部が凸の向きを同じにして形成されて成る
    ことを特徴とする請求項2、3又は4記載の陰極線管。
  6. 前記複数の膨出部が、該弾性付与部材の長手方向に上下2列に設けられ、前記複数の膨出部が凸の向きを同じにして形成されて成る
    ことを特徴とする請求項2、3又は4記載の陰極線管。
  7. 前記複数の膨出部が、該弾性付与部材の長手方向に上下2列に設けられ、
    前記複数の膨出部が上下2列間で互いに凸の向きを逆にして成る
    ことを特徴とする請求項2、3又は4記載の陰極線管。
  8. 前記複数の膨出部が、該弾性付与部材の長手方向に上下2列に設けられ、
    前記複数の膨出部が上下2列間で互いに凸の向きを逆にし、且つ前記各列の膨出部が前記弾性付与部材の長手方向に交互に凸の向きを逆にして成る
    ことを特徴とする請求項2、3又は4記載の陰極線管。
  9. 前記膨出部は、膨出部の一部が弾性付与部材の平板材の辺を形成するか、又は膨出部が弾性付与部材の平板材の辺より内側に形成して成る
    ことを特徴とする請求項2、3又は4記載の陰極線管。
  10. 前記膨出部の平面形状が、三角形状、四角形状、多角形状、円形状、半楕円形状又は卵形状である
    ことを特徴とする請求項2、3、4、5、6、7、8又は9記載の陰極線管。
  11. 前記弾性付与部材の前記膨出部の一部又は全部が、スプリングホルダー取付け、あるいはダンパー線取付けを容易にするための、陰極線管の管軸に平行な面を有して成る
    ことを特徴とする請求項4記載の陰極線管。
  12. 1対の支持部材と1対の弾性付与部材とからなる枠状のフレームを有し、前記1対の支持部材間に色選別用マスクが架張され、
    前記1対の弾性付与部材が、平板材で形成され且つ互いの板面が対向するように設けられ、
    前記弾性付与部材の平板材に、板厚方向に膨出する1つ以上の膨出部が設けられて成る
    ことを特徴とする色選別機構。
  13. 前記弾性付与部材の平板材に、該弾性付与部材の長手方向に複数の前記膨出部が設けられて成る
    ことを特徴とする請求項12記載の色選別機構。
  14. 前記1対の弾性付与部材が、板厚方向に段差を有する平板材で形成されて成る
    ことを特徴とする請求項13記載の色選別機構。
  15. 前記弾性付与部材は、該弾性付与部材の弾性変形する面が色選別用マスクの中央の法線に対して傾斜して支持部材に取付けられて成る
    ことを特徴とする請求項13記載の色選別機構。
  16. 前記複数の膨出部が、該弾性付与部材の長手方向に1列に設けられ、前記複数の膨出部が凸の向きを同じにして形成されて成る
    ことを特徴とする請求項13、14又は15記載の色選別機構。
  17. 前記複数の膨出部が、該弾性付与部材の長手方向に上下2列に設けられ、前記複数の膨出部が凸の向きを同じにして形成されて成る
    ことを特徴とする請求項13、14又は15記載の色選別機構。
  18. 前記複数の膨出部が、該弾性付与部材の長手方向に上下2列に設けられ、
    前記複数の膨出部が上下2列間で互いに凸の向きを逆にして成る
    ことを特徴とする請求項13、14又は15記載の色選別機構。
  19. 前記複数の膨出部が、該弾性付与部材の長手方向に上下2列に設けられ、
    前記複数の膨出部が上下2列間で互いに凸の向きを逆にし、且つ前記各列の膨出部が前記弾性付与部材の長手方向に交互に凸の向きを逆にして成る
    ことを特徴とする請求項13、14又は15記載の色選別機構。
  20. 前記膨出部は、膨出部の一部が弾性付与部材の平板材の辺を形成するか、又は膨出部が弾性付与部材の平板材の辺より内側に形成して成る
    ことを特徴とする請求項13、14又は15記載の色選別機構。
  21. 前記膨出部の平面形状が、三角形状、四角形状、多角形状、円形状、半楕円形状又は卵形状である
    ことを特徴とする請求項13、14、15、16、17、1819又は20記載の色選別機構。
  22. 前記弾性付与部材の前記膨出部の一部又は全部が、スプリングホルダー取付け、あるいはダンパー線取付けを容易にするための、陰極線管の管軸に平行な面を有して成る
    ことを特徴とする請求項15記載の色選別機構。
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