JP3341676B2 - カラー陰極線管 - Google Patents

カラー陰極線管

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JP3341676B2 JP12853698A JP12853698A JP3341676B2 JP 3341676 B2 JP3341676 B2 JP 3341676B2 JP 12853698 A JP12853698 A JP 12853698A JP 12853698 A JP12853698 A JP 12853698A JP 3341676 B2 JP3341676 B2 JP 3341676B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コンピュータディ
スプレイやテレビジョンセットに用いられるカラー陰極
線管に関し、特に、そのスプリングに関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】カラー陰極線管の動作中に電子ビームが
色選別電極であるシャドウマスクに射突することによ
り、シャドウマスクおよびフレームが熱膨張してシャド
ウマスクの孔位置がその沿面方向に移動する。このため
に生じる画面の色ずれを補正するために、シャドウマス
ク構体の支持機構に色ずれ補正手段をもたせることが一
般に行われている。
【0003】このような色ずれ補正手段の一つとして、
断面が蛍光面側に頂点を有する略V字型のスプリングで
構成された支持機構がある。V字型スプリングと呼ばれ
るこの技術によれば、カラー陰極線管動作中のフレーム
の熱膨張によるスプリングの弾性変形が直接シャドウマ
スクを蛍光面に近づけるように働くため、他の支持機
構、例えばバイメタルスプリングを用いた場合に生じる
シャドウマスクの回転がないという長所がある。
【0004】このようなV字型スプリングにおいて、シ
ャドウマスクを蛍光面に近づける移動量を最適化する技
術として、特開昭62−2432号には、電子ビームの
偏向半角に対応させて、スプリングと管軸とのなす角度
を規定することが開示されている。この技術は、図11
に示すように、可動部1を有するスプリング2を介して
シャドウマスク構体3をパネル4の内壁のパネルピン5
に掛止させるにおいて、スプリング2の可動部1と管軸
6とのなす角度αと、シャドウマスク有孔領域末端に到
着する電子ビーム7と管軸6とのなす角度βとの間に、
シャドウマスクとフレームの熱膨張係数をそれぞれ
αm、αfとしたとき、tanα>αm/αf×tan(9
0度−β)の関係を有することが望ましいというもので
ある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の技術によれば、例えばαm≧αfのとき、最適な補正
を行うためには、α>90度−βすなわちα+β>90
度にする必要がある。このため、例えば、90度偏向の
カラー陰極線管では、βが最大となるフレームコーナー
部でもβは45度であるため、αはフレームコーナー部
では45度、それ以外の箇所では45度以上に設定され
なければならない。
【0006】一方で、カラー陰極線管の高精細度化を図
るためにシャドウマスクの孔ピッチを微細化するために
は、シャドウマスクと蛍光面との距離を広くすることが
できない。シャドウマスクと蛍光面との距離を広くする
ことができない場合は、蛍光面の有効領域を確保するべ
くシャドウマスクの有孔領域を拡大する必要があり、こ
のため必然的にフレームも拡大されるため、パネル内壁
とフレーム側壁との間隔は狭くなってしまう。
【0007】このようにパネル内壁とフレーム側壁との
間隔が狭い場合に、前記従来のV字型スプリングを適用
するためにαを大きくしなければならないとすると、シ
ャドウマスク構体をパネルに着脱する際にスプリングの
V字の頂点付近にかかる力が、パネル内壁とフレーム側
壁との間隔が広い場合に比べて大きくなり、その程度に
よってはスプリングが塑性変形してしまう。特にαを4
5度以上となるよう規定するときにはこの塑性変形が起
きやすく、スプリングが塑性変形すると着脱を繰り返し
た後のシャドウマスク構体の位置再現性が乏しくなり、
カラー陰極線管の色純度を保証できなくなるという問題
があった。
【0008】また、カラー陰極線管のフラット化を実現
する技術として、シャドウマスクに張力を与えてフレー
ムに支持するシャドウマスク構体を採用したマスク架張
型のカラー陰極線管が開発されているが、この場合にフ
レームはマスクの張力を維持できるように高剛性なもの
が必要とされるので必然的にその重量が増す。このよう
な重量のあるシャドウマスク構体を支持する場合、スプ
リングにかかる力が大きくなり、スプリングに求められ
る強度も高いものとなる。しかし、前記従来の技術のよ
うにαが一定の値以上必要であるとすると、シャドウマ
スク構体を支持するための強度を保つことができず、外
部からの衝撃により簡単に掛止が外れてしまうという問
題があった。
【0009】従って、最適な色ずれ補正を行うためにス
プリングと管軸とのなす角度に制約のあるV字型スプリ
ングを、高精細度なカラー陰極線管や、架張マスク型の
カラー陰極線管に採用することは困難であった。
【0010】本発明は上記従来の課題を解決するもの
で、シャドウマスク構体の回転等が生じないV字型スプ
リングの長所を活かしつつ、パネル内壁とフレーム側壁
との間隔が狭い場合や、重量のあるフレームを用いた場
合に、色ずれ補正ならびにシャドウマスク構体の支持を
確実に行え、高精細度なカラー陰極線管やフラットな画
面を有するカラー陰極線管を提供することを目的とす
る。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明のカラー陰極線管
は、内面に蛍光面が形成されたパネルと、蛍光面を照射
する電子ビームを射出する電子銃をネック部に有するフ
ァンネルとからなり、蛍光面に対向して位置する色選別
電極と色選別電極を保持するフレームとから形成される
色選別電極構体が、パネル内面に植設されたパネルピン
に、フレームに固着された支持機構を介して掛止される
カラー陰極線管において、支持機構は、蛍光面に近い位
置に頂点を有する略V字型スプリングを有し、略V字型
スプリングの頂点からフレーム側に位置する固定部の熱
膨張係数は、フレーム側で固定部に隣接する部材の熱膨
張係数よりも小さく、かつ、固定部と部材とが頂点より
も蛍光面から遠い位置で溶接されている。
【0012】この構成により、スプリングの弾性変形お
よび熱膨張を利用して色選別電極を蛍光面に近づけると
いう、V字型スプリングが従来から有する作用の他に、
フレーム側で固定部に隣接する部材と固定部とのそれぞ
れが熱膨張する方向と熱膨張量の差異を利用して色選別
電極を蛍光面に近づけることができる。
【0013】また、本発明のカラー陰極線管は、フレー
ム側で固定部材に隣接する部材をフレームとしている。
【0014】このようにすることにより、簡易な構成で
効果的に色ずれ補正を行うことができる。
【0015】また、本発明のカラー陰極線管は、支持機
構が、略V字型スプリングと、フレームと略V字型スプ
リングとの間に設けられた補助部材とから構成され、か
つ、補助部材の熱膨張係数はフレームの熱膨張係数より
も大きい。
【0016】この構成により、色選別電極を蛍光面へ近
づけるための補助部材の熱膨張量が大きくなり、色ずれ
補正量を更に大きくすることができる。
【0017】また、補助部材とフレームとは、固定部と
補助部材との溶接点よりも蛍光面に近い位置で溶接され
ている。
【0018】この構成により、色選別電極を蛍光面へ近
づけるための補助部材の熱膨張量を効果的に利用する事
ができる。
【0019】また、本発明のカラー陰極線管は、補助部
材とフレームとが補助部材の色選別電極に近い側に設け
られた複数の溶接点で断続的に接合されている。もしく
は、補助部材が、色選別電極に近い側の端面から複数の
溶接点の間に伸びる切り欠け部を有する。もしくは、補
助部材が、複数の略長方形の板体により構成され、板体
は、その長手方向とフレームの辺の長手方向とがほぼ直
角をなすように互いに間隔をおいて配置されている。
【0020】このような構成により、フレーム辺の長手
方向への補助部材の熱膨張量とフレームの熱膨張量との
差によってフレームが管軸側に押され、フレーム側壁が
その長手方向に対して湾曲変形するという問題を解決す
ることができる。
【0021】また、本発明のカラー陰極線管は、補助部
材とフレームとの溶接点が、フレームの側壁の色選別電
極側の端部から離間した位置に設けられている。
【0022】この構成により、フレーム辺の長手方向へ
の補助部材の熱膨張は、色選別電極に影響を与えないた
め、色選別電極の孔位置ずれやしわを回避することがで
きる。
【0023】さらに好ましくは、略V字型スプリング
が、固定部に相当する固定部材と、頂点からパネルピン
側に位置する支持部材とから構成されており、固定部材
と支持部材とが頂点付近で溶接されている。
【0024】この構成により、本発明のカラー陰極線管
は、略V字型スプリングがそれぞれ異なる複数の部材か
ら作られるため、材料の組み合わせによって更に色ずれ
補正量を大きくすることができる。また、略V字型スプ
リングの頂点付近の強度を高めることもできる。
【0025】また、本発明のカラー陰極線管は、固定部
材の熱膨張係数が、支持部材の熱膨張係数よりも小さ
い。
【0026】このようにすることにより、蛍光面に近づ
く方向への支持部材の熱膨張量が、蛍光面から遠ざかる
方向への固定部材の熱膨張量よりも大きくなるため、色
ずれ補正量を更に大きくすることができる。
【0027】また、本発明のカラー陰極線管は、頂点か
ら固定部のフレーム側の溶接点までの管軸方向の距離を
1とし、固定部のフレーム側の溶接点から色選別電極
までの管軸方向の距離をL2としたとき、L1<L2とな
るように構成されている。
【0028】この構成により、蛍光面に近づく方向への
フレームまたは補助部材の熱膨張量が、蛍光面から遠ざ
かる方向への固定部の熱膨張量よりも大きくなるため、
色ずれ補正量を更に大きくすることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】(第1の実施の形態)以下、本発
明の第1実施の形態について図面を参照して説明する。
【0030】図2は本実施の形態に係るカラー陰極線管
を示す部分断面図である。図2に示すように、本実施の
形態に係るカラー陰極線管は、パネル4とファンネル8
で構成されている。パネル4の内面には蛍光体が塗られ
た蛍光面9があり、色選別電極として多数の開孔を有す
るシャドウマスク10に張力を与え、シャドウマスク1
0を矩形状のフレーム11の蛍光面9に近い面に溶接し
た色選別電極構体であるシャドウマスク構体3が、蛍光
面9と対向した位置に、支持機構12によって、パネル
ピン5に掛止されている。また、ファンネル8のネック
部13には蛍光面9を照射する電子ビーム7を射出する
電子銃(図示せず)が内装されている。
【0031】次に、本実施の形態に係るカラー陰極線管
の支持機構について図1を参照して説明する。
【0032】本実施の形態に係るカラー陰極線管の支持
機構12は、長方形の板材を2箇所で折り曲げて形成さ
れた支持部材14と長方形の板材からなる固定部材18
とで構成されている。支持部材14の開孔を有する一端
側の掛止部15はパネルピン5に掛止されており、支持
部材14の他端側の固着部17は、支持部材の各折り曲
げ箇所の間の可動部16が管軸6に対して角度αをな
し、支持部材14と固定部材18とが蛍光面9側に頂点
を有する略V字型をなすように溶接されている。このよ
うにして構成されたV字型スプリングは、フレーム11
の各辺の側壁のほぼ中央に1個ずつ計4個配置されてお
り、固定部材18がフレーム11に溶接されている。
【0033】ここで、×は溶接点を示し、支持部材14
と固定部材18との溶接点19は掛止部15よりも蛍光
面9に近い位置にあり、固定部材18とフレーム11と
の溶接点20は支持部材14と固定部材18との溶接点
19よりも蛍光面9から遠い位置にある。
【0034】また、固定部材18の熱膨張係数をα1
フレーム11の熱膨張係数をαf、支持部材の熱膨張係
数をα2としたとき、α1<αfとなるように、固定部材
18として36%Ni−Feを、フレーム11として1
3%Cr−Feをそれぞれの材料に用いた。ここで常温
でのそれぞれの熱膨張係数はα1=1×10-6、αf=1
0×10-6である。また、α1<α2となるように、支持
部材として常温での熱膨張係数が18×10-6であるS
US304を材料に用いた。
【0035】以下、上記のように構成されたカラー陰極
線管の支持機構についてその動作を図3を参照して説明
する。
【0036】図3は、本実施の形態に係るカラー陰極線
管の支持機構の動作を示す部分断面図であり、カラー陰
極線管の動作前の状態を実線で、カラー陰極線管の動作
中の状態を破線で表す。
【0037】カラー陰極線管動作中に電子銃から出射さ
れた電子ビーム7がシャドウマスク10に到達すると、
シャドウマスク10の温度が上昇し、シャドウマスク1
0の熱はフレーム11及び固定部材18と支持部材14
に伝導する。
【0038】フレーム11がシャドウマスク10の沿面
方向に熱膨張することにより、支持部材14はパネル内
壁の方向へ押されるため、可動部16は、掛止部15を
基準としてシャドウマスク10を蛍光面9へ近づけるよ
うに弾性変形する。また、支持部材14も掛止部15を
基準として蛍光面9に近づく方向へ熱膨張する。従っ
て、シャドウマスク10は、従来の技術と同様に支持部
材14の弾性変形および熱膨張によって蛍光面9に近づ
く方向へ移動し、その移動量はZ1で示される。
【0039】一方、固定部材18も熱膨張して特に長手
方向へ伸び、固定部材18と支持部材14との溶接点1
9を基準として、固定部材18とフレーム11との溶接
点20を蛍光面9から遠ざける方向へ伸びる。また、フ
レーム11は前述したシャドウマスク10の沿面方向へ
の熱膨張だけでなく管軸方向への熱膨張も有し、フレー
ム11と固定部材14との溶接点20を基準としてシャ
ドウマスク10を蛍光面9に近づける方向へ伸びる。こ
こで、本実施の形態では、フレーム11の熱膨張係数が
固定部材18の熱膨張係数よりも大きいため、固定部材
18の伸び量と比較してフレーム11の伸び量が大きく
なり、その結果、シャドウマスク10は蛍光面9に近づ
く方向へ移動し、その移動量はZ2で示される。
【0040】従って、本実施の形態に係るカラー陰極線
管の支持機構が、色ずれを補正するためにシャドウマス
クを蛍光面に移動させる量Zaは、Za=Z1+Z2とな
る。
【0041】前述のように本実施の形態に係るカラー陰
極線管の支持機構は、支持部材の弾性変形および熱膨張
を利用してシャドウマスクを蛍光面に近づけるという、
V字型スプリングが従来から有する作用の他に、固定部
材とフレームのそれぞれの熱膨張する方向と熱膨張量の
差異を利用してシャドウマスクを蛍光面に近づけるとい
う、新たな作用を有している。このため、支持部材の可
動部と管軸とのなす角αの値を同じとする条件下では、
本実施の形態のカラー陰極線管のスプリングは、従来の
カラー陰極線管のスプリングに比べ、色ずれ補正量を大
きくすることができ、ビーム軌道のずれ量xを小さい値
にすることができる。
【0042】また、確保する色ずれ補正量を同じとする
条件下では、本実施の形態のカラー陰極線管のスプリン
グは、従来のカラー陰極線管のスプリングに比べ、移動
量Z 2を見込んでαを小さい値にすることができる。従
って、パネル内壁とフレーム側壁との間隔が狭くαを小
さく設定しなければならない場合にも十分な色ずれ補正
ができる。また、αを小さい値にできることで、シャド
ウマスク構体の着脱時や、重いシャドウマスク構体を支
持する場合に、スプリングの塑性変形を回避することが
できる。このため着脱を繰り返した後のシャドウマスク
構体の位置再現性を高めることができ、また、シャドウ
マスク構体の掛止が外れにくい確実な支持を行うことが
できる。
【0043】次に本実施の形態に係るカラー陰極線管の
支持機構について、その効果を説明する。
【0044】本実施の形態に係るカラー陰極線管の支持
機構の効果を示すために、支持部材と固定部材の熱膨張
係数が異なる2種類のカラー陰極線管を用いて比較を行
った。
【0045】カラー陰極線管は、スクリーンサイズが2
1インチ(51cm)で、シャドウマスクピッチは0.
25mm、カラー陰極線管を動作させない時にシャドウ
マスク構体を支持した状態での蛍光面とシャドウマスク
との間隔は4mm、フレームは高さ30mm、厚み2m
mとし、パネル内壁とフレーム側壁との間隔はフレーム
各辺中央で15mmとした。また、支持部材14は幅2
0mm、厚み1mm、固定部材は幅20mm、長さ30
mm、厚み1mmとし、フレームの各辺の側壁のほぼ中
央に配置した。ここで、可動部が管軸となす角度αは、
支持部材が塑性変形しないよう、フレームの短辺の側壁
ではα=25度、フレームの長辺の側壁ではα=35度
とし、シャドウマスク構体をパネルピンに支持した状態
での支持部材の高さは30mmとした。
【0046】各部材の溶接点については、支持部材と固
定部材との溶接点は掛止部よりも蛍光面に近い位置に設
け、固定部材とフレームとの溶接点は支持部材と固定部
材との溶接点よりも蛍光面から遠い位置に設けた。
【0047】まず、本実施の形態を示すカラー陰極線管
の支持機構として、固定部材の熱膨張係数α1とフレー
ムの熱膨張係数αfの関係がα1<αfとなるよう、固定
部材として36%Ni−Feを、フレームとして13%
Cr−Feをそれぞれの材料に用いた。また、支持部材
の熱膨張係数α2と固定部材の熱膨張係数α1との関係が
α1<α2となるように、支持部材としてSUS304を
材料に用いた。
【0048】次に、比較例として、上記本実施の形態に
係るカラー陰極線管の支持機構と全く同じ形状であって
材料のみが異なる構成とし、固定部材とフレームと支持
部材にはすべて13%Cr−Feを材料に用いて、すべ
ての部材の熱膨張係数を等しくしたものを用意した。
【0049】このように構成された本実施の形態を示す
カラー陰極線管と比較例を示すカラー陰極線管をそれぞ
れ動作させた。本実施の形態を示すカラー陰極線管は蛍
光面の色純度がよく、フレーム短辺中央付近でビーム軌
道のずれ量xを測定したところ4μmであった。また、
比較例を示すカラー陰極線管は蛍光面の周辺部で輝度不
均一が見られ、フレーム短辺中央付近でビーム軌道のず
れ量xを測定したところ18μmであった。
【0050】シャドウマスクピッチが0.25mmの高
精細度のカラー陰極線管では、色ずれ裕度は約20μm
であるが、一般にカラー陰極線管の色ずれ裕度の設計
は、色純度劣化要因として、熱膨張による色ずれの他
に、製造時のばらつき、衝撃によるマスク孔位置ずれ、
地磁気の影響等による色ずれも考慮に含まれている。こ
のため、約20μmの色ずれ裕度に対して、熱膨張によ
る色ずれ量が18μmというのは大きく、他の要因を考
えると色純度は保証できない。一方、熱膨張による色ず
れ量が4μmであれば、色ずれ裕度に対して十分小さい
値であり、問題ないレベルであると言える。
【0051】従って、本実施の形態に係るカラー陰極線
管の支持機構は、高精細度のカラー陰極線管のようにパ
ネル内壁とフレーム側壁との間隔が限定され、αを小さ
く設定しなければならない場合でも、支持部材と固定部
材とフレームのそれぞれの膨張する方向と膨張量の差異
を利用することにより、十分な色ずれ補正を行えること
がわかる。
【0052】また、αを小さく設定して支持部材の強度
を高めることができるため、シャドウマスク構体の着脱
時や重いシャドウマスク構体を支持する際の支持部材の
塑性変形を回避することができる。このため、着脱を繰
り返した後のシャドウマスク構体の位置再現性を高める
ことができ、また、シャドウマスク構体の掛止が外れに
くい確実な支持を行うことができる。実際に通常の衝撃
落下テストを行った結果、掛止外れはほとんどなく、ま
たマスク孔位置ずれは許容範囲内であった。
【0053】なお、本実施の形態に係るカラー陰極線管
の支持機構及びフレームの材料は、固定部材には36%
Ni−Feを、フレームには13%Cr−Feを、支持
部材にはSUS304をそれぞれ用いたが、これらに限
ったものではない。他の組み合わせにおいても、固定部
材がフレームよりも熱膨張係数が小さく設定されていれ
ばよく、例えば、固定部材には52%Ni−Feを、フ
レームにはFeを、支持部材にはSUS404を用いた
場合においても本実施の形態と同様に十分な色ずれ補正
を行うことができる。
【0054】また、本実施の形態に係るカラー陰極線管
は、フレームと固定部材と支持部材のそれぞれの高さを
パネルピンに掛止させた状態ですべて30mmとし、固
定部材と支持部材との溶接点から固定部材とフレームと
の溶接点までの管軸方向の距離と、固定部材とフレーム
との溶接点からシャドウマスクまでの管軸方向の距離と
をほぼ同じとしたが、これに限ったものではなく、例え
ば、高さの異なる部材を図4のように配置し、固定部材
18と支持部材14との溶接点19から固定部材18と
フレーム11との溶接点20までの管軸方向の距離L1
に対して、固定部材18とフレーム11との溶接点20
からシャドウマスク10までの管軸方向の距離L2が長
くなるようにL1<L2としてもよく、この場合には、シ
ャドウマスクを蛍光面から遠ざけるように働く固定部材
の伸びの絶対量が小さくなるので、更に色ずれ補正量を
大きくすることができる。
【0055】(第2の実施の形態)次に、本発明の第2
の実施の形態に係るカラー陰極線管の支持機構について
図面を参照して説明する。
【0056】図5は本実施の形態に係るカラー陰極線管
の支持機構を示す部分断面図である。また、図6は本実
施の形態に係るカラー陰極線管の支持機構を示す部分斜
視図であり、(a)は各部材を溶接した状態を示し、
(b)は各部材の形状と溶接点を示すものである。
【0057】本実施の形態が第1の実施の形態と異なる
点は、固定部材18とフレーム11との間に固定部材1
8およびフレーム11よりも熱膨張係数の大きい補助部
材21を有している点である。固定部材18の熱膨張係
数をα1、フレーム11の熱膨張係数をαf、補助部材2
1の熱膨張係数をα3としたとき、α1<α3およびα f
α3となるように、補助部材として熱膨張係数が18×
10-6であるSUS304を材料に用いた。
【0058】また、×は溶接点を表し、固定部材18と
補助部材21との溶接点22は支持部材14と固定部材
18との溶接点19よりも蛍光面9から遠い位置にあ
り、フレーム11と補助部材21との溶接点23は固定
部材18と補助部材21との溶接点22よりも蛍光面9
に近い位置にある。また、補助部材21がフレーム11
のシャドウマスク溶接面24に近い位置で、複数の溶接
点によってフレーム辺の長手方向に沿って断続的に接合
されるように、補助部材21の形状は、補助部材21の
シャドウマスク溶接面24側の端面から、前記複数の溶
接点の間に伸びる切り欠け部を有している櫛歯状の板体
とした。
【0059】以上のように構成された本実施の形態を示
すカラー陰極線管の支持機構の動作を図7を参照して説
明する。
【0060】図7は、本実施の形態に係るカラー陰極線
管の支持機構の動作を示す部分断面図であり、カラー陰
極線管の動作前の状態を実線で、カラー陰極線管の動作
中の状態を点線で表す。
【0061】支持部材14および固定部材18は、第1
の実施の形態と同様に動作し、特に支持部材14は、支
持部材14の弾性変形と熱膨張によりシャドウマスク1
0を蛍光面9に近づけ、その移動量はZ1で示される。
【0062】補助部材21は、補助部材21と固定部材
18との溶接点22を基準として蛍光面に近づく方向へ
伸びる。ここで、本実施の形態では、補助部材21の熱
膨張係数が固定部材18の熱膨張係数よりも大きいた
め、固定部材18の伸び量に対して補助部材21の伸び
量が大きくなり、シャドウマスク10は蛍光面9に近づ
く方向へ移動する。この移動量はZ3で示される。ま
た、フレーム11は、フレーム11と補助部材21との
溶接点23を基準として蛍光面9に近づく方向へ伸びる
が、フレーム11の伸びはシャドウマスク10と蛍光面
9との距離には影響しない。
【0063】従って、本実施の形態に係るカラー陰極線
管の支持機構が、色ずれを補正するためにシャドウマス
クを蛍光面に移動させる量Zbは、Zb=Z1+Z3とな
る。
【0064】ここで、本実施の形態では、補助部材21
の熱膨張係数がフレーム11の熱膨張係数よりも大きい
ため、補助部材21の伸び量は第1の実施の形態のフレ
ーム11の伸び量よりも大きく、Z2<Z3となる。従っ
て、Za<Zbとなるため、本実施の形態の支持機構の色
ずれ補正量は第1の実施の形態の支持機構の色ずれ補正
量よりも大きくなる。
【0065】一方、補助部材の熱膨張係数をフレームの
熱膨張係数よりも大きくしたことにより、補助部材が矩
形状の板材である場合には、補助部材がフレームの長手
方向へ熱膨張するときに熱膨張係数の差により補助部材
がフレーム長手方向に沿って湾曲し、フレームと補助部
材との溶接点付近でシャドウマスクの孔位置がずれた
り、シャドウマスクにしわが発生するということがあ
る。しかし、本実施の形態では、補助部材とフレームと
がフレーム片の長手方向に対して断続的に接合されるよ
うに補助部材の形状を櫛歯状としたことにより、補助部
材がフレーム辺の長手方向へ沿って湾曲するのを防止で
きるため、フレームが補助部材によってシャドウマスク
の沿面方向へ押されることにより発生するシャドウマス
クの孔位置ずれやしわを回避できる。
【0066】従って、本実施の形態に係るカラー陰極線
管の支持機構は、補正量を同じとする条件下では第1の
実施の形態に係るカラー陰極線管と同様もしくはそれ以
上に、色ずれ補正量を大きくできる。また、補助部材の
形状を櫛歯状としたことで、熱膨張量の差により補助部
材がフレーム辺の長手方向へ沿って湾曲するのを防止で
きるため、フレームがシャドウマスクの延面方向へ押さ
れることにより発生するシャドウマスクの孔位置ずれや
しわを回避できる。
【0067】なお、本実施の形態に係るカラー陰極線管
の支持機構は、補助部材の形状を櫛歯状としているがこ
れに限ったものではなく、図8に示すように複数の略長
方形状の板体で構成された補助部材21を、板体の長手
方向とフレーム辺の長手方向とがほぼ直角をなすように
フレーム11の側壁に配置してもシャドウマスクのしわ
発生を回避することができる。
【0068】また、本実施の形態に係るカラー陰極線管
の支持機構は、補助部材を櫛歯状もしくは複数の板体と
しているがこれに限ったものではなく、各部材の材料や
板厚の条件によってシャドウマスクのしわ発生を回避す
ることができる場合には、補助部材は矩形状の一枚の板
であってもよい。また、図9のように、フレーム11の
側壁の高さのほぼ半分の位置で補助部材21とフレーム
11とを溶接して、フレーム11の側壁の前記シャドウ
マスク側の端部25から離間するように補助部材21と
フレーム11との溶接点20を位置させることによって
も、シャドウマスクのしわ発生を回避することができる
とともに、溶接点の位置決めを容易に行うことができ
る。
【0069】また、本実施の形態に係るカラー陰極線管
の支持機構は、固定部材と支持部材との溶接点から固定
部材と補助部材との溶接点までの管軸方向の距離と、固
定部材と補助部材との溶接点からシャドウマスクまでの
管軸方向の距離とをほぼ同じとしたが、これに限ったも
のではなく、例えば、高さの異なる部材を図10のよう
に配置し、固定部材18と支持部材14との溶接点19
から固定部材18と補助部材21との溶接点22までの
管軸方向の距離L1に対して、固定部材18と補助部材
21との溶接点22からシャドウマスク10までの管軸
方向の距離L2が長くなるようにL1<L2としてもよ
く、この場合には更に色ずれ補正量を多くすることがで
きる。
【0070】また、本発明の第1および第2の実施の形
態に係るカラー陰極線管の支持機構として、略V字型ス
プリングが、それぞれ熱膨張係数の異なる支持部材と固
定部材の二つの部材で構成され、支持部材の熱膨張係数
が固定部材の熱膨張係数よりも大きく設定されたものを
示しているが、これに限られるものではない。例えば、
フレームよりも熱膨張係数の小さい一つの部材を略V字
型に折り曲げて形成されたものであってもよいし、もし
くは、固定部材と支持部材の熱膨張係数を同じとしても
よい。
【0071】また、本発明の第1および第2の実施の形
態に係るカラー陰極線管の支持機構は、略V字型スプリ
ングを構成する支持部材が、長方形の板材を2箇所で折
り曲げて形成されたものを示したが、これに限ったもの
ではない。例えば、1箇所のみもしくは3箇所以上で折
り曲げられたものであってもよいし、弓なりに湾曲した
形状であっても同等の効果を奏することは言うまでもな
い。
【0072】また、本発明の第1および第2の実施の形
態に係るカラー陰極線管の支持機構はフレームの各辺の
側壁のほぼ中央に設けたものであったが、これに限った
ものではなく、フレームの各辺の任意の箇所であっても
よいし、また、フレームのコーナー部付近であってもよ
い。
【0073】また、本発明の第1および第2の実施の形
態に係るカラー陰極線管では、色選別電極としてシャド
ウマスクを用いたが、これに限ったものではなく、例え
ばスリット状の孔を有し一般にアパーチャグリルと称さ
れる色選別電極を用いてもよい。
【0074】また、本発明の第1および第2の実施の形
態に係るカラー陰極線管では、張力を与えたシャドウマ
スクをフレームで支持したシャドウマスク構体を用いて
いるが、これに限ったものではなく、例えばプレス等に
よりドーム状に成型されたシャドウマスクをフレームの
側壁に溶接して支持したシャドウマスク構体を用いても
よい。ただしこの場合には、フレームとシャドウマスク
との溶接点はなるべく蛍光面に近い位置にあるのが望ま
しい。
【0075】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、V字型
スプリングを有する支持機構が、V字型スプリングの弾
性変形を利用してシャドウマスクを蛍光面に近づける従
来の作用の他に、各部材のそれぞれの膨張する方向と熱
膨張量の差異を利用してシャドウマスクを蛍光面に近づ
ける作用を有する。
【0076】このため、本発明のカラー陰極線管は、従
来の技術のようにV字型スプリングのV字をなす角度に
制約を持たせる必要がないため、パネル内壁とフレーム
側壁との間隔が狭い場合にも十分な色補正を行うことが
でき、高精細度なカラー陰極線管を提供することができ
るという効果を有する。
【0077】また、本発明のカラー陰極線管は、V字型
スプリングの塑性変形を回避することができるため、着
脱を繰り返した後のシャドウマスク構体の位置再現性を
高めることができるとともに、重量のあるフレームを用
いた場合にも外部からの衝撃による掛止外れを回避する
ことができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るカラー陰極線
管の支持機構を示す部分断面図
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るカラー陰極線
管を示す部分断面図
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るカラー陰極線
管の支持機構の動作を示す部分断面図
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るカラー陰極線
管の支持機構の応用例を示す部分断面図
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るカラー陰極線
管の支持機構を示す部分断面図
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るカラー陰極線
管の支持機構を示す部分斜視図
【図7】本発明の第2の実施の形態に係るカラー陰極線
管の支持機構の動作を示す部分断面図
【図8】補助部材の第2の形態を示す部分斜視図
【図9】補助部材の第3の形態を示す部分斜視図
【図10】本発明の第2の実施の形態に係るカラー陰極
線管の支持機構の応用例を示す部分断面図
【図11】従来のカラー陰極線管の支持機構を示す部分
断面図
【符号の説明】
4 パネル 5 パネルピン 7 電子ビーム 9 蛍光面 10 シャドウマスク 11 フレーム 12 支持機構 18 固定部材
フロントページの続き (72)発明者 伏本 一也 大阪府高槻市幸町1番1号 松下電子工 業株式会社内 (56)参考文献 特開 平1−209636(JP,A) 特開 平1−195636(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01J 29/02

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内面に蛍光面が形成されたパネルと、前
    記蛍光面を照射する電子ビームを射出する電子銃をネッ
    ク部に有するファンネルとからなり、 前記蛍光面に対向して位置する色選別電極と前記色選別
    電極を保持するフレームとから形成される色選別電極構
    体が、 前記パネル内面に植設されたパネルピンに、前記フレー
    ムに固着された支持機構を介して掛止されるカラー陰極
    線管において、 前記支持機構は、前記蛍光面に近い位置に頂点を有する
    略V字型スプリングを有し、 前記略V字型スプリングの前記頂点から前記フレーム側
    に位置する固定部の熱膨張係数は、 前記フレーム側で前記固定部に隣接する部材の熱膨張係
    数よりも小さく、かつ、 前記固定部と前記部材とが前記頂点よりも前記蛍光面か
    ら遠い位置で溶接されていることを特徴とするカラー陰
    極線管。
  2. 【請求項2】 前記部材が、前記フレームであることを
    特徴とする請求項1記載のカラー陰極線管。
  3. 【請求項3】 前記支持機構は、前記略V字型スプリン
    グと、前記フレームと前記略V字型スプリングとの間に
    設けられた補助部材とから構成され、前記部材が前記補
    助部材であり、かつ、前記補助部材の熱膨張係数は前記
    フレームの熱膨張係数よりも大きいことを特徴とする請
    求項1記載のカラー陰極線管。
  4. 【請求項4】 前記補助部材と前記フレームとは、前記
    固定部と前記補助部材との溶接点よりも前記蛍光面に近
    い位置で溶接されることを特徴とする請求項3記載のカ
    ラー陰極線管。
  5. 【請求項5】 前記補助部材と前記フレームとが前記補
    助部材の前記色選別電極に近い側に設けられた複数の溶
    接点で断続的に接合されていることを特徴とする請求項
    3または4記載のカラー陰極線管。
  6. 【請求項6】 前記補助部材は、前記色選別電極に近い
    側の端面から前記複数の溶接点の間に伸びる切り欠け部
    を有することを特徴とする請求項5記載のカラー陰極線
    管。
  7. 【請求項7】 前記補助部材が、複数の略長方形の板体
    により構成され、前記板体は、その長手方向と前記フレ
    ームの辺の長手方向とがほぼ直角をなすように互いに間
    隔をおいて配置されていることを特徴とする請求項3ま
    たは4記載のカラー陰極線管。
  8. 【請求項8】 前記補助部材と前記フレームとの溶接点
    が、前記フレームの側壁の前記色選別電極側の端部から
    離間した位置に設けられていることを特徴とする請求項
    3から7のいずれかに記載のカラー陰極線管。
  9. 【請求項9】 前記略V字型スプリングが、前記固定部
    に相当する固定部材と、前記頂点から前記パネルピン側
    に位置する支持部材とから構成されており、前記固定部
    材と前記支持部材とが前記頂点付近で溶接されているこ
    とを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のカラ
    ー陰極線管。
  10. 【請求項10】 前記固定部材の熱膨張係数が、前記支
    持部材の熱膨張係数よりも小さいことを特徴とする請求
    項9記載のカラー陰極線管。
  11. 【請求項11】 前記頂点から前記固定部の前記フレー
    ム側の溶接点までの管軸方向の距離をL1とし、前記固
    定部の前記フレーム側の溶接点から前記色選別電極まで
    の管軸方向の距離をL2としたとき、L1<L2となるよ
    うに構成されていることを特徴とする請求項1から10
    のいずれかに記載のカラー陰極線管。
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