JP2004197830A - カップリング - Google Patents
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Abstract
【課題】大きな増幅機能を持ちながら、低コストで、小型軽量に構成する。
【解決手段】トルク伝達部材2、3の間に配置され、ギア比と噛み合い抵抗と噛み合いスラスト力と噛み合い反力などによる増幅機能を有するヘリカルギア構成のギア組4と、アクチュエータ6によって締結され、ギア組4に負荷抵抗を与える摩擦クラッチ5とを備え、ギア組4に掛かる摩擦クラッチ5の負荷抵抗を増すことにより、アクチュエータ6による摩擦クラッチ5の締結力制御によって伝達トルクの大きさを制御する。
【選択図】 図1
【解決手段】トルク伝達部材2、3の間に配置され、ギア比と噛み合い抵抗と噛み合いスラスト力と噛み合い反力などによる増幅機能を有するヘリカルギア構成のギア組4と、アクチュエータ6によって締結され、ギア組4に負荷抵抗を与える摩擦クラッチ5とを備え、ギア組4に掛かる摩擦クラッチ5の負荷抵抗を増すことにより、アクチュエータ6による摩擦クラッチ5の締結力制御によって伝達トルクの大きさを制御する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両の動力伝達系などに用いられ、一対のトルク伝達部材間でトルク伝達するカップリングに関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平10−329562号公報(特許文献1)に図4のような駆動力伝達装置501が記載されている。
【0003】
この駆動力伝達装置501は、回転ケース503、インナーシャフト505、多板式のメインクラッチ507、ボールカム509、プレッシャープレート511、カムリング513、多板式のパイロットクラッチ515、アーマチャ517、電磁石519などから構成されている。
【0004】
駆動力伝達装置501は4輪駆動車において、2輪駆動走行時に切り離される後輪とトランスファとを連結する後輪側プロペラシャフトを分断して配置されており、回転ケース503は前側のプロペラシャフトに連結され、インナーシャフト505は後側のプロペラシャフトに連結されている。
【0005】
電磁石519を励磁すると、磁束ループ521が形成されてアーマチャ517が吸引され、パイロットクラッチ515を押圧し締結させる。パイロットクラッチ515が締結されると、パイロットトルクが生じてボールカム509にエンジンの駆動力が掛かり、発生したカムスラスト力によってメインクラッチ507が押圧され、駆動力伝達装置501(メインクラッチ507)が連結されて後輪側に駆動力が伝達され、車両は4輪駆動状態になる。
【0006】
また、電磁石519の励磁電流を制御すると、パイロットクラッチ515の滑り率に変化が生じてボールカム509のカムスラスト力が変わり、メインクラッチ507の押圧力が変化して後輪に送られる駆動力の大きさが変わるから、前後輪間の駆動力配分比を制御できる。
【0007】
また、電磁石519の励磁を停止すると、パイロットクラッチ515が開放されてボールカム509のカムスラスト力が消失し、メインクラッチ507が開放されて駆動力伝達装置501の連結が解除され、後輪側が切り離されて車両は2輪駆動状態になる。
【0008】
【特許文献1】
特開平10−329562号公報(第6頁、図1)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、駆動力伝達装置501のようなトルクの主伝達経路に多板式のメインクラッチ507を用いた装置では、大トルクを伝達する多板クラッチに特有のスティックスリップ音(クラッチ板の断続的な滑りに起因する騒音)を避けることは難しい。
【0010】
また、上記駆動力伝達装置501では、ボールカム509(カム機構)を用いているので、カムフォロアとカム部材のガタにより両部材間の相対回転方向が逆転する際、カムフォロアがカム部材に設けたカム溝内で中立状態が生じる。この時には、プレッシャープレートへのカムフォロアによるスラスト力が保持できなくなるため、トルク抜けが発生する。この結果、レスポンスが遅くなる上に、ガタに伴う騒音が発生する。
【0011】
そこで、本発明は、スリップスティック音の発生を大幅に抑制することができ、トルク抜けが生じることのないカップリングの提供を目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1のカップリングは、一対のトルク伝達部材と、前記両トルク伝達部材間に配置されたギア組と、前記ギア組に負荷抵抗を付与する摩擦クラッチと、 前記摩擦クラッチの締結力を締結制御するアクチュエータとを備え、前記ギア組が、ギア比を有して前記摩擦クラッチから与えられた前記負荷抵抗を増す増幅機能が得られると共に、前記アクチュエータによって前記摩擦クラッチの締結力を制御し、前記両トルク伝達部材間の伝達トルクを制御することを特徴とする。
【0013】
請求項1の発明では、ギア比を有したギア組を用いたことにより、このギア比による負荷抵抗(伝達トルク)を増す増幅機能が得られる上に、例えば、構成するギアの間で噛み合い抵抗が発生するギア組では、この噛み合い抵抗に見合った増幅率でトルクや速度が増幅される。また、摩擦クラッチの締結力を制御し、ギア組に付与する負荷抵抗を調整することによりこの負荷抵抗に応じてギア組自体で負荷抵抗を増大することができる。この場合、一方のトルク伝達部材に摩擦クラッチに伝達された小さなトルクに対して、他方のトルク伝達部材から出力されるトルクは、ギア組によって増幅されて大きなトルクとなる。この結果、摩擦クラッチの締結によって伝達される小さいなトルクをアクチュエータによって締結・制御することで、他方のトルク伝達部材から出力される大きなトルクの制御を行うことができる。
【0014】
また、請求項1の発明では、トルクの主伝達経路、すなわち、他方のトルク伝達部材に一方のトルク伝達部材からのトルクを伝達する主伝達経路に摩擦クラッチを用いていないので、スティックスリップ音を大幅に抑制することができる。
【0015】
さらに、請求項1の発明では、カム機構を用いていないので、トルク抜けが生じることがなく、レスポンスの低下を防止することができる。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1に記載されたカップリングであって、前記ギア組が、各ギア間での噛み合い抵抗を有することを特徴とし、請求項1の構成と同等の作用・効果を得ることができる。
【0017】
これに加えて、請求項2のカップリングでは、確実かつ大きな増幅機能が得られる。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載された発明であって、
前記ギア組が、前記一対のトルク伝達部材間に少なくとも3種類のギアを有し、1つ目は一対のトルク伝達部材と連結するギア、2つ目は前記1つ目のギアと噛み合うピニオンギヤ、3つ目は前記ピニオンギアと噛み合うギアを連結したギア組であり、前記トルク伝達部材の一方に、前記ピニオンギアを回転自在に収容する収容孔が設けられ、前記摩擦クラッチが、前記サイドギアの他方と前記一方のトルク伝達部材との間に配置され、前記ギア組において、前記3種類のギアがトルクを受けて生じる噛み合い反力により前記ピニオンギアが収容孔に押圧されて摩擦抵抗が生じ、これら両摩擦抵抗による増幅機能が得られることを特徴とする。
【0019】
請求項3のカップリングでは、ギア組の構成及びギア組により発生し、増大することができる負荷抵抗(摩擦抵抗)の発生箇所を特定したものであり、摩擦クラッチを締結させた状態で、例えば、ピニオンギアの収容孔が設けられたトルク伝達部材から入力したトルクは、収容孔からそれぞれのピニオンギアを介して他方のトルク伝達部材側ギアに伝達され、他方のトルク伝達部材から出力されると共に、この間、ヘリカルギア組のギア比と噛み合い抵抗とによってトルクが増幅される。
【0020】
また、摩擦クラッチの抵抗がギア組に付加されることにより、ギア組固有のギア比と噛み合い抵抗による増幅機能が加わるため数倍から約十倍にわたる大きな増幅機能が得られる。
【0021】
さらに、摩擦クラッチによる負荷抵抗を調整すれば、トルクと速度差とを広い範囲で任意に(オンデマンドで)調整することができる。
【0022】
また、ギア組自身のギア比と噛み合い抵抗を変えることにより、増幅機能をさらに広い範囲で調整することができる。
【0023】
また、摩擦クラッチを開放すると、ギア組の各構成ギアが相対回転可能になり、これに伴って、ピニオンギアが収容孔と共に公転し、各ギアが自転(空転)することによって、トルクの伝達が遮断される。
【0024】
こうして、請求項3のカップリングは、請求項1または請求項2の構成と同等の作用・効果を得ることができる。
【0025】
また、例えばギア組がヘリカルギアによって構成された場合には、上記の機能に加えて、ヘリカルギアの噛み合いスラスト力と噛み合い反力とにより噛み合い抵抗(摩擦抵抗)が生じて増幅機能を増すことができ、さらに大きな増幅機能が得られる。
【0026】
請求項4の発明は、請求項1に記載されたカップリングであって、前記ギア組が、インターナルギアと、サンギアと、これらを連結するプラネタリーギアを支持するキャリヤの3箇の相対回転部材からなるプラネタリーギア組であり、前記トルク伝達部材の一方と他方が、前記3相対回転部材の内の2者と各別に連結され、前記摩擦クラッチが、前記トルク伝達部材に連結された相対回転部材の内のいずれかと、前記3相対回転部材の他の1者との間に配置されていることを特徴としている。
【0027】
請求項4のカップリングでは、例えば、インターナルギアを入力側のトルク伝達部材に連結し、キャリヤ(プラネタリーギアキャリヤ)を出力側のトルク伝達部材に連結し、摩擦クラッチをインターナルギアとサンギアとの間に配置すれば、入力側トルク伝達部材から入力したトルクは、インターナルギアからプラネタリーギアとキャリヤを介して出力側のトルク伝達部材に伝達され、この間に、プラネタリーギア組が持つギア比によって伝達トルクが増幅される。
【0028】
また、摩擦クラッチの抵抗をインターナルギアとサンギアとの間に負荷することにより、プラネタリーギア組のギア比による増幅機能の数倍から約十倍にわたる大きな増幅機能が得られる。
【0029】
さらに、摩擦クラッチによるこの負荷抵抗を調整すれば、トルクと速度とを広い範囲で任意に(オンデマンドで)調整することができる。
【0030】
また、プラネタリーギア組自身のギア比を変えることにより、増幅機能をさらに広い範囲で調整することができる。
【0031】
また、摩擦クラッチを開放すると、上記構成例の場合、インターナルギアとサンギアとが相対回転可能になり、プラネタリーギアの公転に伴ってキャリヤが回転し、サンギアが自転(空転)するから、トルクの伝達をオンデマンドで遮断することができる。
【0032】
こうして、請求項4のカップリングは、請求項1の構成と同等の作用・効果を得ることができる。
【0033】
なお、各ギアをヘリカルギアとすることにより、ギアの噛み合いスラスト力により各ギア端面(スラスト方向面)に対して摩擦抵抗(増幅機能)をさらに増大させることができる。
【0034】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載されたカップリングであって、前記アクチュエータが、電磁石であることを特徴とし、請求項1〜4の構成と同等の作用・効果を得ることができる。
【0035】
また、請求項5のカップリングは、アクチュエータに電磁石を用いたことにより、流体圧式のアクチュエータを用いた構成と異なって、高価なポンプとその駆動源及び圧力ラインの引き回しなどが不要であり、構造簡単、低コストで、配置スペースが狭くてすみ、小型軽量に構成され、車載性に優れる上に、増幅機能を調整する際のレスポンスと、トルクを断続する際のレスポンスが速く、高い信頼性が得られる。
【0036】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態のカップリング1について、図1、図2を用いて説明する。図1は、カップリング1を示す断面図、図2は図1のII−II線に沿って切断した断面図である。このカップリング1は、4輪駆動車において2輪駆動走行時に切り離される後輪(リヤデフ)とトランスファとを連結する後輪側プロペラシャフトを分断して配置されている。
【0037】
カップリング1は、一対のトルク伝達部材2、3と、両トルク伝達部材2、3間に配置されギア比による増幅機能を有するギア組4と、ギア組4に負荷抵抗を付与する摩擦クラッチ5と、摩擦クラッチ5の締結力を締結制御するアクチュエータ6とを備えている。そして、本実施形態のカップリング1は、ギア組4が、ギア比を有して摩擦クラッチ5から与えられた負荷抵抗を増す増幅機能が得られると共に、アクチュエータ6によって摩擦クラッチ5の締結力を制御し、両トルク伝達部材2、3間の伝達トルクを制御する。
【0038】
一対の伝達部材2、3の一方のトルク伝達部材2は、ステンレス鋼(非磁性材料)で作られたケーシング本体7と、鉄系合金(磁性材料)で作られたロータ8とから構成されている。ケーシング本体7は、円筒状で一側に大径の開口部9が形成され、他側に小径の開口部を形成するボス部10が形成されている。ケーシング本体7の内側は、開口部9側が中空部11でボス部10側は中実部12となっている。中空部11の内部には開口部9側からスプライン部13が形成されている。この中空部11は、開口部9に溶接された円板状の上記ロータ8によって閉塞されている。ロータ8の半径方向の中間部には、非磁性体からなるリング14が設けられている。
【0039】
また、ロータ8の中心部からは、入力軸15が一体に突設されている。ケーシング本体7の中実部12には、図2に示すように中心部に大径の収納孔16が設けられ、この収納孔16の開口部9側であって収納孔16の中心からずれた位置に後述するヘリカルピニオンギア23、24(2つ目のギア、但しピニオンギア23、24の一方側を使用して後述するヘリカルサイドギア27と連結しても良い)が収納される収納孔小径の17、18が設けられている。これらの収納孔17、18は対称位置に設けられ、それぞれ収納孔16と連通している。さらに、収納孔16に連通すると共に、収納孔17、18にそれぞれ連通し後述するヘリカルピニオンギア25、26が収納される収納孔19、20が設けられている。中心部に設けられた大径の収納孔16には後述するヘリカルサイドギア22(1つ目のギア)が収容され、このヘリカルサイドギア22に他方のトルク伝達部材3が一体に形成されている。
【0040】
他方のトルク伝達部材3は、ヘリカルサイドギア22の中心部から突出した出力軸21からなり、この出力軸21は、ケーシング本体7のボス部10の小径の開口部からケーシング本体7の外方へ突出している。これらの両トルク伝達部材2、3間に上記ギア組4が配置されている。
【0041】
ギア組4は、大径の収納孔16に収納された上記ヘリカルサイドギア22と、このヘリカルサイドギア22に噛み合った状態で収納孔17、18にそれぞれ収納された長軸のヘリカルピニオンギヤ23、24と、ヘリカルピニオンギヤ23、24に噛み合った状態で収納孔19、20内に収納された短軸のヘリカルピニオンギヤ25、26と、ヘリカルピニオンギア25、26に噛み合うヘリカルサイドギア27(3つ目のギア)とで構成されている。そして、各収納孔16、17、18、19、20に収納されて互いに噛み合った状態のヘリカルピニオンギア23、24、25、26は、ケーシング本体7の内周にスナップリング28によって位置決めされたスラストリング29によってケーシング本体7内に位置決めされている。また、ヘリカルサイドギア27のロータ8側は、スラストリング29を貫通して延設されており、支承軸部30が一体に設けられている。支承軸部30の先端側は、ロータ8に形成された支承部31に回転自在に支承されている。また、支承軸部30の外周には、摩擦クラッチ5が連結される歯部32が設けられている。
【0042】
摩擦クラッチ5は、ケーシング本体7の上記スプライン部13に外側が噛み合っている複数枚の外側摩擦板33と、支承軸部30の歯部32に内側が噛み合うと共に、外側摩擦板33と互い違いに配置された複数枚の内側摩擦板34とで形成されている。摩擦クラッチ5は、外側摩擦板33と内側摩擦板34とが締結した状態では、ケーシング本体7に伝達された回転駆動力を支承軸部30を介してヘリカルサイドギア27に伝達する。この摩擦クラッチ5は、アクチュエータ6によってその締結力が制御される。
【0043】
アクチュエータ6は、非磁性材料性のロータ8の外側に配置された電磁石35と、摩擦クラッチ5を挟んでロータ8の反対側に配置されたアーマチャ36とで構成されている。電磁石35は、電磁コイル37と、この電磁コイル37を覆うコア38とで形成されている。コア38は、ボールベアリング(不図示)等を介して入力軸15に支持されている。そして、電磁コイル37を励磁すると、発生する磁力線により磁束ループ39が形成され、この磁束ループ39によってアーマチャ36がロータ8側に移動することで摩擦クラッチ5が締結する。この場合、電磁コイル37への通電電流を調節することで摩擦クラッチ5の締結力を調節することができ、これによってギア組4に付与する負荷抵抗を調節することができる。
【0044】
上述したように一対のトルク伝達部材2、3の間には1つ目としてのヘリカルサイドギア22と2つ目としてのヘリカルピニオンギア23及びヘリカルピニオンギア24と、3つ目としてのヘリカルサイドギア27とによる4種類のギアからなるギア組が配置されている。
【0045】
以下に、カップリング1の作動について説明する。
【0046】
電磁コイル35が非励磁状態のとき、入力軸15に回転駆動力が入力されると、ロータ8が回転し、ケーシング本体7が回転する。ケーシング本体7が回転すると、ヘリカルピニオンギア23、24、25、25がケーシング本体7と共に入出力軸15、21を中心に回転する(公転)。ヘリカルピニオンギア23、24、25、26がケーシング本体7と共に回転(公転)すると、ヘリカルピニオンギア25、26と噛み合っているヘリカルサイドギア22もケーシング本体7と共に回転(公転)する。このとき、出力軸21に負荷が加わっていない場合には、ヘリカルサイドギア22と一体の出力軸21はケーシング本体7と共に回転する。
【0047】
この状態から、出力軸21に負荷が加わると、出力軸21がケーシング本体7と共に回転しようとするのを妨げるのでヘリカルサイドギア22が収容孔16内で回転する(自転)する。ヘリカルサイドギア22が収容孔16内で回転(自転)すると、このヘリカルサイドギア22と噛み合っているヘリカルピニオンギア23、24が収容孔17、18内で回転(自転)する。さらに、ヘリカルピニオンギア23、24が収容孔17、18内で回転(自転)すると、ヘリカルピニオンギア25、26が収容孔19、20内で回転(自転)する。ヘリカルピニオンギア25、26が収容孔19、20内で回転(自転)すると、ヘリカルピニオンギア25、26と噛み合っているヘリカルサイドギア27が、ケーシング本体7の回転方向と逆方向に回転し、支承軸部30も同方向へ回転する。
【0048】
この場合、ヘリカルサイドギア22、ヘリカルピニオンギア23、24、25、26、ヘリカルサイドギア27は、ヘリカルギアで形成されているので、その噛み合い反力によって、ギアの圧力角方向(回転軸と直交する半径方向)にヘリカルピニオンギア23、24、25、27は互いに押圧し合ってヘリカルピニオンギアの支持面としてのギア外周面で収納孔17、18、19、20の内壁へ押し付けられて摩擦抵抗が発生する。さらに、ヘリカルギアでピニオンギヤ、サイドギアが形成されているので、ギアのネジレ角方向(回転軸と平行する軸方向)に発生したスラスト力によって、ヘリカルサイドギア22、ヘリカルピニオンギア23、24、25、27の端面は、ケーシング本体7の側壁及びスラストリングに押圧されて摩擦抵抗が発生する。これらの噛み合い反力による摩擦抵抗やスラスト力による摩擦抵抗が発生すると、収納孔17、18、19、20内でのヘリカルピニオンギア23、24、25、26の回転(自転)が規制され、ヘリカルサイドギア22、27の回転(自転)も規制される。この結果、これらの摩擦抵抗に応じた力分だけ、ヘリカルサイドギア23、24、25、26、ヘリカルサイドギア22、27はケーシング本体7によって強制的に回転されて出力軸21に回転駆動力(トルク)が伝達される。
【0049】
ここで、電磁コイル37に通電して励磁すると、アーマチャ36がロータ8側に引き寄せられて摩擦クラッチ5を締結する。摩擦クラッチ5が締結すると、支承軸部30をケーシング本体7と同方向に回転させようとするため、支承軸部30の回転を妨げようとする。すなわち、ヘリカルサイドギア27に負荷抵抗が加わってヘリカルサイドギア27の回転(自転)が規制される。ヘリカルサイドギア27の回転(自転)が規制されると、ヘリカルピニオンギア23、24、25、26の回転(自転)も規制され、ヘリカルサイドギア22の回転(自転)も規制されるので、ヘリカルピニオンギア23、24、25、26、ヘリカルサイドギア22の公転によって強制的に出力軸21がケーシング本体7と共に回転され、ケーシング本体7から回転駆動力(トルク)が伝達される。
【0050】
この場合、電磁コイル37への通電電流値を大きくして、摩擦クラッチ5の締結力にギアの摩擦力が加わり、ピニオンギア23、24、25、26の自転は完全に停止し、これにより入力軸15側の回転駆動力(トルク)が出力軸21側へ全て伝達される。
【0051】
また、電磁コイル37への通電電流値を調節すると、すなわち、外側摩擦板33と内側摩擦板35との間で滑りを生じた状態で摩擦クラッチ5が締結するとヘリカルピニオンギア23、24、25、26の自転が許容されるので、ケーシング本体7から出力軸21へ伝達されるトルクを調節することができる。
【0052】
従って、電磁コイル37への励磁電流を制御し、摩擦クラッチ5の締結力を調節することでヘリカルサイドギア27への負荷抵抗(小さなトルク)を調節することができ、摩擦クラッチ5によって伝達されたトルクに対して出力軸21に伝達されるトルクを増幅することができる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態によれば、アクチュエータ6によって摩擦クラッチ5の締結力を制御し、ギア組4に付与する負荷抵抗を調整することにより、ギア組4による負荷抵抗を増し、一対のトルク伝達部材間の伝達トルクの大きさを制御することができる。この場合、一方のトルク伝達部材2から摩擦クラッチ5に伝達された小さなトルクに対して他方のトルク伝達部材3から出力されるトルクは、ギア組4の上記噛み合い反力による摩擦抵抗、スラスト力による摩擦抵抗、摩擦クラッチ5による負荷抵抗によって増幅されて大きなトルクとなる。この結果、摩擦クラッチ5の締結によって伝達される小さなトルクをアクチュエータ6によって締結・制御することで、他方のトルク伝達部材3から出力される大きなトルクの制御を行うことができる。
【0054】
また、本実施形態のカップリング1では、トルクの主伝達経路、すなわち、他方のトルク伝達部材3に一方のトルク伝達部材2からのトルクを伝達する主伝達経路に摩擦クラッチを用いていないので、スティックスリップ音が発生することを大幅に抑制することができる。
【0055】
さらに、本実施形態のカップリング1では、カム機構を用いていないので、トルク抜けが生じることがなく、レスポンスの低下を防止することができる。
【0056】
加えて、ギア組4のギア比を調節することにより、カップリング1による増幅機能を広い範囲で任意に調整することが可能であり、カップリング1を介して後輪側に送られる駆動力の大きさを変えて前後輪の駆動力配分比を制御することができる。例えば、旋回走行中にこのような駆動力配分比の制御(カップリング1による伝達トルクの増幅機能調整)を行うと、車両の操縦性や安定性などを大きく向上させることができる。
【0057】
また、本実施形態のカップリング1は、上記のように、ギア組4の固有に噛み合い抵抗値による増幅機能が得られる上に、摩擦クラッチ5の抵抗をギア組4に負荷することによってギア組4の固有の増幅機能の数倍から数十倍にわたる大きな増幅機能が得られ、さらに、摩擦クラッチ5の負荷抵抗を調整することにより全体の伝達トルクを広い範囲で調整することができる。
【0058】
このように電磁式カップリング1の増幅率を調整すれば、操舵、加速、減速などの走行条件や、路面条件に応じ、オンデマンドで前後輪間のトルク配分比を調整することができ、車両の操縦性や安定性などを大きく向上させることができる。
【0059】
また、ギア組4自身のギア比と噛み合い抵抗値を変えることにより、増幅機能をさらに広い範囲で調整することができる。
【0060】
また、電磁式カップリング1は、カム機構を用いないから、カム機構のガタ、ガタによるレスポンスの低下と騒音などから解放されている。
【0061】
また、メインクラッチ507、パイロットクラッチ515、ボールカム509、カムリング513、アーマチャ517、電磁石519などの部材を用いて構成された従来の駆動力伝達装置501と較べて、電磁式カップリング1は構造が簡単で、低コストであると共に、小型軽量に構成されるから、それだけ良好な車載性が得られる。
【0062】
また、電磁式カップリング1は、アクチュエータに電磁石35を用いたことにより、例えば、流体圧式のアクチュエータを用いた構成と異なって、高価なポンプとその駆動源及び圧力ラインの引き回しなどが不要であり、構造簡単、低コストで、配置スペースが狭くてすみ、小型軽量で、車載性に優れる上に、増幅機能を調整し、トルクを断続する際のレスポンスが速く、高い信頼性が得られる。
【0063】
なお、電磁式カップリング1では、入力軸15を出力側にし、出力軸21を入力側にしてもよい。
【0064】
[第2実施形態]
次に第2実施形態のカップリング201について図3を用いて説明する。本実施形態のカップリング201は、第1実施形態のカップリング1のギア組4の構成が異なり、ヘリカルサイドギアとヘリカルピニオンギアの組み合わせに変えてプラネタリーギア組が用いられている。
【0065】
図3に示すように、カップリング201は、一対のトルク伝達部材202、203と、両トルク伝達部材202、203間に配置されギア比による増幅機能を有するギア組204と、ギア組204に負荷抵抗を付与する摩擦クラッチ205と、摩擦クラッチ205の締結力を締結制御するアクチュエータ206とを備えている。そして、本実施形態のカップリング201は、ギア組204において、ギア比による増幅機能が得られ、また、摩擦クラッチ205から与えられた負荷抵抗によって増幅機能が得られると共に、アクチュエータ206によって摩擦クラッチ205の締結力を制御し、ギア組に掛かる負荷抵抗を調整することにより、ギア組204による両トルク伝達部材202、203間の伝達トルクを制御する。
【0066】
一対の伝達部材202、203の一方のトルク伝達部材202は、ステンレス鋼(非磁性材料)で作られたケーシング本体207と、鉄系合金(磁性材料)で作られたロータ208とから構成されている。ケーシング本体207は、円筒状で一側に大径の開口部209が形成され、他側に小径の開口部を形成するボス部300が形成されている。ケーシング本体207の内側には中空部301が形成され、内壁にはスプライン部302が設けられている。中空部301は、開口部209に溶接された円板状の上記ロータ208によって閉塞されている。このロータ208の半径方向の中間部には、非磁性体からなるリング303が設けられている。また、ロータ208の中心部からは、入力軸315が一体に突設されている。
【0067】
他方のトルク伝達部材203は、ケーシング本体207内に収納されたキャリヤ316の中心部から突出した出力軸317からなり、この出力軸317は、ケーシング本体207のボス部300の小径の開口部からケーシング本体207の外方へ突出している。これらの両トルク伝達部材202、203間にギア組204が配置されている。
【0068】
ギア組204は、インターナルギア(3箇の相対回転部材の内の2者)318と、このインターナルギア318に噛み合うプラネタリーギア319と、プラネタリーギア319を支持するキャリヤ(3箇の相対回転部材の内の2者)320と、プラネタリーギア319と噛み合うサンギア(3箇の相対回転部材の内の2者)321とで構成されている。インターナルギア318は、ケーシング本体207の内壁に設けたスプライン部302からなる。キャリヤ320は、前方支持部材322と後方支持部材323とで形成され、これらの間に設けられた支持軸324に上記プラネタリーギア319が回転自在に支持されている。また、後方支持部材323の中心部から前述した出力軸317が一体に突設されている。サンギア321は、ケーシング本体207の中心部に配置された円筒部材325の一端側の外周に設けられている。この円筒部材325の他端側は、ロータ208の支承部335に支承される支承軸部326が一体に設けられている。また、支承軸部326の外周部までサンギア321が設けられており、摩擦クラッチ205が連結されている。
【0069】
摩擦クラッチ520は、ケーシング本体207の上記スプライン部302に外側が噛み合っている複数枚の外側摩擦板327と、支承軸部326の歯部328に内側が噛み合うと共に、外側摩擦板327と互い違いに配置された複数枚の内側摩擦板329とで形成されている。この摩擦クラッチ205は、外側摩擦板327と内側摩擦板329とが締結した状態では、ケーシング本体207に伝達された回転駆動力を支承軸部326を介してサンギア321に伝達する。この摩擦クラッチ205は、アクチュエータ206によってその締結力が制御される。
【0070】
アクチュエータ206は、非磁性材料性のロータ208の外側に配置された電磁石330と、摩擦クラッチ205を挟んでロータ208の反対側に配置されたアーマチャ331とで構成されている。電磁石330は、電磁コイル332と、この電磁コイル332を覆うコア333とで形成されている。コア333は、ボールベアリング(不図示)等を介して入力軸315に支持されている。そして、電磁コイル332を励磁すると、発生する磁力線により磁束ループ334が形成され、この磁束ループ334によってアーマチャ331がロータ208側に移動することで摩擦クラッチ205が締結する。この場合、電磁コイル332への通電電流を調節することで摩擦クラッチ205の締結力を調節することができ、これによってギア組204に付与する負荷抵抗を調節することができる。
【0071】
以下に、カップリング201の作動について説明する。
【0072】
電磁コイル332が非励磁状態のとき、入力軸315に回転駆動力が入力されると、ロータ208が回転し、ケーシング本体207が回転する。ケーシング本体207が回転すると、インターナルギア318と噛み合っているプラネタリーギア319がケーシング本体207と共に回転(公転)し、キャリヤ316がケーシング本体207と共に回転する。また、プラネタリーギア319と噛み合っているサンギア321が回転し、円筒部材325もケーシング本体207と共に回転する。このとき、出力軸317に負荷が加わっていない場合には、キャリヤ316と一体の出力軸317はケーシング本体207と共に回転する。
【0073】
この状態から、出力軸317に負荷が加わると、出力軸317がケーシング本体207と共に回転しようとするのを妨げるのでプラネタリーギア319が支持軸324を中心に回転(自転)する。プラネタリーギア319が自転するとサンギア321がケーシング本体207と逆方向へ回転する。
【0074】
ここで、電磁コイル332に通電して励磁すると、アーマチャ331がロータ208側に引き寄せられて摩擦クラッチ205を締結する。摩擦クラッチ205が締結すると、円筒部材325をケーシング本体207と同方向に回転させようとするため、サンギア321の回転を妨げようとする。すなわち、サンギア321に負荷抵抗が加わってプラネタリーギア319の回転(自転)が規制される。プラネタリーギア319の回転(自転)が規制されると、キャリヤ316の回転(公転)も規制されるので出力軸317がケーシング本体207と共に回転されてケーシング本体207から出力軸に回転駆動力(トルク)が伝達される。
【0075】
この場合、電磁コイル332への通電電流値を大きくして、摩擦クラッチ205を完全に締結した場合には、サンギア321はケーシング本体207と一体に回転し、プラネタリーギア319の回転(自転)も完全に停止するので、ケーシング本体207の回転駆動力はキャリヤ321を介して出力軸317側へ全て伝達される。
【0076】
また、電磁コイル332への通電電流値を調節すると、すなわち、外側摩擦板327と内側摩擦板329との間で滑りを生じた状態で摩擦クラッチ205が締結するとプラネタリーギア319の自転が許容されるので、ケーシング本体7から出力軸21へ伝達されるトルクを調節することができる。
【0077】
従って、電磁コイル332への励磁電流を制御し、摩擦クラッチ205の締結力を調節することでサンギア321への負荷抵抗(小さなトルク)を調節することができ、摩擦クラッチ205によって伝達されたトルクに対して出力軸317に伝達されるトルクを増幅することができる。
【0078】
また、本実施形態のカップリング201では、ギア組としてプラネタリー式のギア組を用いているので、インターナルギア318、サンギア321、プラネタリーギア319の歯数比によるトルク増幅機能を持っており、上記したトルクを伝達する間、このギア比によってもトルクが増幅される。
【0079】
以上説明したように、本実施形態によれば、アクチュエータ206によって摩擦クラッチ205の締結力を制御し、ギア組204に付与する負荷抵抗を調整することにより、ギア組204による増幅機能を制御することができる。この場合、一方のトルク伝達部材202から摩擦クラッチ205に伝達された小さなトルクに対して他方のトルク伝達部材203から出力されるトルクは、ギア組204の上記噛み合い反力による摩擦抵抗、スラスト力による摩擦抵抗、摩擦クラッチ205による負荷抵抗によって増幅されて大きなトルクとなる。この結果、摩擦クラッチ205の締結によって伝達される小さなトルクをアクチュエータ206によって締結・制御することで、他方のトルク伝達部材203から出力される大きなトルクの制御を行うことができる。
【0080】
また、本実施形態のカップリング201では、トルクの主伝達経路、すなわち、他方のトルク伝達部材203に一方のトルク伝達部材202からのトルクを伝達する主伝達経路に摩擦クラッチを用いていないので、スティックスリップ音を大幅に抑制することができる。
【0081】
さらに、本実施形態のカップリング201では、カム機構を用いていないので、トルク抜けが生じることがなく、レスポンスの低下を防止することができる。
【0082】
加えて、ギア組204のギア比を調節することにより、カップリング201による伝達トルクを広い範囲で任意に調整することが可能であり、カップリング201を介して後輪側に送られる駆動力の大きさを変えて前後輪の駆動力配分比を制御することができる。例えば、旋回走行中にこのような駆動力配分比の制御(カップリング1によるトルクの伝達トルクの調整)を行うと、車両の操縦性や安定性などを大きく向上させることができる。
【0083】
このように電磁式カップリング201の増幅率を調整すれば、操舵、加速、減速などの走行条件や、路面条件に応じ、オンデマンドで前後輪間のトルク配分比を調整することができ、車両の操縦性や安定性などを大きく向上させることができる。
【0084】
また、ギア組204自身のギア比と噛み合い抵抗値を変えることにより、増幅機能をさらに広い範囲で調整することができる。
【0085】
また、電磁式カップリング201は、カム機構を用いないから、カム機構のガタ、ガタによるレスポンスの低下と騒音などから解放されている。
【0086】
また、メインクラッチ507、パイロットクラッチ515、ボールカム509、カムリング513、アーマチャ517、電磁石519などの部材を用いて構成された従来の駆動力伝達装置501と較べて、電磁式カップリング1は構造が簡単で、低コストであると共に、小型軽量に構成されるから、それだけ良好な車載性が得られる。
【0087】
また、電磁式カップリング201は、アクチュエータに電磁石330を用いたことにより、例えば、流体圧式のアクチュエータを用いた構成と異なって、高価なポンプとその駆動源及び圧力ラインの引き回しなどが不要であり、構造簡単、低コストで、配置スペースが狭くてすみ、小型軽量で、車載性に優れる上に、増幅機能を調整し、トルクを断続する際のレスポンスが速く、高い信頼性が得られる。
【0088】
なお、電磁式カップリング201では、入力軸315を出力側にし、出力軸317を入力側にしてもよい。
【0089】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、ギア比を有したギア組を用いたことにより、このギア比による負荷抵抗(伝達トルク)を増す増幅機能が得られる上に、例えば、構成するギアの間で噛み合い抵抗が発生するギア組では、この噛み合い抵抗に見合った増幅率でトルクや速度が増幅される。
【0090】
また、摩擦クラッチの締結力を制御し、ギア組に付与する負荷抵抗を調整することによりこの負荷抵抗に応じてギア組自体で負荷抵抗を増大することができる。この場合、一方のトルク伝達部材に摩擦クラッチに伝達された小さなトルクに対して、他方のトルク伝達部材から出力されるトルクは、ギア組によって増幅されて大きなトルクとなる。この結果、摩擦クラッチの締結によって伝達される小さいなトルクをアクチュエータによって締結・制御することで、他方のトルク伝達部材から出力される大きなトルクの制御を行うことができる。
【0091】
また、請求項1の発明では、トルクの主伝達経路、すなわち、他方のトルク伝達部材に一方のトルク伝達部材からのトルクを伝達する主伝達経路に摩擦クラッチを用いていないので、スティックスリップ音を大幅に抑制することができる。
【0092】
さらに、請求項1の発明では、カム機構を用いていないので、トルク抜けが生じることがなく、レスポンスの低下を防止することができる。
【0093】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の構成と同等の作用・効果を得ることができる。これに加えて、請求項2のカップリングでは、確実かつ大きな増幅機能が得られる。
【0094】
請求項3の発明によれば、ギア組の構成及びギア組により発生し、増大することができる負荷抵抗(摩擦抵抗)の発生箇所を特定したものであり、摩擦クラッチを締結させた状態で、例えば、ピニオンギアの収容孔が設けられたトルク伝達部材から入力したトルクは、収容孔からそれぞれのピニオンギアを介して他方のトルク伝達部材側ギアに伝達され、他方のトルク伝達部材から出力されると共に、この間、ヘリカルギア組のギア比と噛み合い抵抗とによってトルクが増幅される。
【0095】
また、摩擦クラッチの抵抗がギア組に付加されることにより、ギア組固有のギア比と噛み合い抵抗による増幅機能が加わるため数倍から約十倍にわたる大きな増幅機能が得られる。
【0096】
さらに、摩擦クラッチによる負荷抵抗を調整すれば、トルクと速度差とを広い範囲で任意に(オンデマンドで)調整することができる。
【0097】
また、ギア組自身のギア比と噛み合い抵抗を変えることにより、増幅機能をさらに広い範囲で調整することができる。
【0098】
また、摩擦クラッチを開放すると、ギア組の各構成ギアが相対回転可能になり、これに伴って、ピニオンギアが収容孔と共に公転し、各ギアが自転(空転)することによって、トルクの伝達が遮断される。
【0099】
こうして、請求項3のカップリングは、請求項1または請求項2の構成と同等の作用・効果を得ることができる。
【0100】
また、例えばギア組がヘリカルギアによって構成された場合には、上記の機能に加えて、ヘリカルギアの噛み合いスラスト力と噛み合い反力とにより噛み合い抵抗(摩擦抵抗)が生じて増幅機能を増すことができ、さらに大きな増幅機能が得られる。
【0101】
請求項4の発明によれば、例えば、インターナルギアを入力側のトルク伝達部材に連結し、キャリヤ(プラネタリーギアキャリヤ)を出力側のトルク伝達部材に連結し、摩擦クラッチをインターナルギアとサンギアとの間に配置すれば、入力側トルク伝達部材から入力したトルクは、インターナルギアからプラネタリーギアとキャリヤを介して出力側のトルク伝達部材に伝達され、この間に、プラネタリーギア組が持つギア比によって伝達トルクが増幅される。
【0102】
また、摩擦クラッチの抵抗をインターナルギアとサンギアとの間に負荷することにより、プラネタリーギア組のギア比による増幅機能の数倍から約十倍にわたる大きな増幅機能が得られる。
【0103】
さらに、摩擦クラッチによるこの負荷抵抗を調整すれば、トルクと速度とを広い範囲で任意に(オンデマンドで)調整することができる。
【0104】
また、プラネタリーギア組自身のギア比を変えることにより、増幅機能をさらに広い範囲で調整することができる。
【0105】
また、摩擦クラッチを開放すると、上記構成例の場合、インターナルギアとサンギアとが相対回転可能になり、プラネタリーギアの公転に伴ってキャリヤが回転し、サンギアが自転(空転)するから、トルクの伝達をオンデマンドで遮断することができる。
【0106】
こうして、請求項4のカップリングは、請求項1の構成と同等の作用・効果を得ることができる。
【0107】
なお、各ギアをヘリカルギアとすることにより、ギアの噛み合いスラスト力により各ギア端面(スラスト方向面)に対して摩擦抵抗(増幅機能)をさらに増大させることができる。
【0108】
請求項5の発明によれば、請求項1〜4の構成と同等の作用・効果を得ることができる。また、請求項5のカップリングは、アクチュエータに電磁石を用いたことにより、流体圧式のアクチュエータを用いた構成と異なって、高価なポンプとその駆動源及び圧力ラインの引き回しなどが不要であり、構造簡単、低コストで、配置スペースが狭くてすみ、小型軽量に構成され、車載性に優れる上に、増幅機能を調整する際のレスポンスと、トルクを断続する際のレスポンスが速く、高い信頼性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す断面図である。
【図2】第1実施形態に用いられたヘリカルギア構成のギア組と、各ヘリカルギアの収容孔とを示す図面である。
【図3】第2実施形態の断面図である。
【図4】従来例の断面図である。
【符号の説明】
201 カップリング
202 トルク伝達部材
203 トルク伝達部材
204 ギア組
205 摩擦クラッチ
206 アクチュエータ
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両の動力伝達系などに用いられ、一対のトルク伝達部材間でトルク伝達するカップリングに関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平10−329562号公報(特許文献1)に図4のような駆動力伝達装置501が記載されている。
【0003】
この駆動力伝達装置501は、回転ケース503、インナーシャフト505、多板式のメインクラッチ507、ボールカム509、プレッシャープレート511、カムリング513、多板式のパイロットクラッチ515、アーマチャ517、電磁石519などから構成されている。
【0004】
駆動力伝達装置501は4輪駆動車において、2輪駆動走行時に切り離される後輪とトランスファとを連結する後輪側プロペラシャフトを分断して配置されており、回転ケース503は前側のプロペラシャフトに連結され、インナーシャフト505は後側のプロペラシャフトに連結されている。
【0005】
電磁石519を励磁すると、磁束ループ521が形成されてアーマチャ517が吸引され、パイロットクラッチ515を押圧し締結させる。パイロットクラッチ515が締結されると、パイロットトルクが生じてボールカム509にエンジンの駆動力が掛かり、発生したカムスラスト力によってメインクラッチ507が押圧され、駆動力伝達装置501(メインクラッチ507)が連結されて後輪側に駆動力が伝達され、車両は4輪駆動状態になる。
【0006】
また、電磁石519の励磁電流を制御すると、パイロットクラッチ515の滑り率に変化が生じてボールカム509のカムスラスト力が変わり、メインクラッチ507の押圧力が変化して後輪に送られる駆動力の大きさが変わるから、前後輪間の駆動力配分比を制御できる。
【0007】
また、電磁石519の励磁を停止すると、パイロットクラッチ515が開放されてボールカム509のカムスラスト力が消失し、メインクラッチ507が開放されて駆動力伝達装置501の連結が解除され、後輪側が切り離されて車両は2輪駆動状態になる。
【0008】
【特許文献1】
特開平10−329562号公報(第6頁、図1)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、駆動力伝達装置501のようなトルクの主伝達経路に多板式のメインクラッチ507を用いた装置では、大トルクを伝達する多板クラッチに特有のスティックスリップ音(クラッチ板の断続的な滑りに起因する騒音)を避けることは難しい。
【0010】
また、上記駆動力伝達装置501では、ボールカム509(カム機構)を用いているので、カムフォロアとカム部材のガタにより両部材間の相対回転方向が逆転する際、カムフォロアがカム部材に設けたカム溝内で中立状態が生じる。この時には、プレッシャープレートへのカムフォロアによるスラスト力が保持できなくなるため、トルク抜けが発生する。この結果、レスポンスが遅くなる上に、ガタに伴う騒音が発生する。
【0011】
そこで、本発明は、スリップスティック音の発生を大幅に抑制することができ、トルク抜けが生じることのないカップリングの提供を目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1のカップリングは、一対のトルク伝達部材と、前記両トルク伝達部材間に配置されたギア組と、前記ギア組に負荷抵抗を付与する摩擦クラッチと、 前記摩擦クラッチの締結力を締結制御するアクチュエータとを備え、前記ギア組が、ギア比を有して前記摩擦クラッチから与えられた前記負荷抵抗を増す増幅機能が得られると共に、前記アクチュエータによって前記摩擦クラッチの締結力を制御し、前記両トルク伝達部材間の伝達トルクを制御することを特徴とする。
【0013】
請求項1の発明では、ギア比を有したギア組を用いたことにより、このギア比による負荷抵抗(伝達トルク)を増す増幅機能が得られる上に、例えば、構成するギアの間で噛み合い抵抗が発生するギア組では、この噛み合い抵抗に見合った増幅率でトルクや速度が増幅される。また、摩擦クラッチの締結力を制御し、ギア組に付与する負荷抵抗を調整することによりこの負荷抵抗に応じてギア組自体で負荷抵抗を増大することができる。この場合、一方のトルク伝達部材に摩擦クラッチに伝達された小さなトルクに対して、他方のトルク伝達部材から出力されるトルクは、ギア組によって増幅されて大きなトルクとなる。この結果、摩擦クラッチの締結によって伝達される小さいなトルクをアクチュエータによって締結・制御することで、他方のトルク伝達部材から出力される大きなトルクの制御を行うことができる。
【0014】
また、請求項1の発明では、トルクの主伝達経路、すなわち、他方のトルク伝達部材に一方のトルク伝達部材からのトルクを伝達する主伝達経路に摩擦クラッチを用いていないので、スティックスリップ音を大幅に抑制することができる。
【0015】
さらに、請求項1の発明では、カム機構を用いていないので、トルク抜けが生じることがなく、レスポンスの低下を防止することができる。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1に記載されたカップリングであって、前記ギア組が、各ギア間での噛み合い抵抗を有することを特徴とし、請求項1の構成と同等の作用・効果を得ることができる。
【0017】
これに加えて、請求項2のカップリングでは、確実かつ大きな増幅機能が得られる。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載された発明であって、
前記ギア組が、前記一対のトルク伝達部材間に少なくとも3種類のギアを有し、1つ目は一対のトルク伝達部材と連結するギア、2つ目は前記1つ目のギアと噛み合うピニオンギヤ、3つ目は前記ピニオンギアと噛み合うギアを連結したギア組であり、前記トルク伝達部材の一方に、前記ピニオンギアを回転自在に収容する収容孔が設けられ、前記摩擦クラッチが、前記サイドギアの他方と前記一方のトルク伝達部材との間に配置され、前記ギア組において、前記3種類のギアがトルクを受けて生じる噛み合い反力により前記ピニオンギアが収容孔に押圧されて摩擦抵抗が生じ、これら両摩擦抵抗による増幅機能が得られることを特徴とする。
【0019】
請求項3のカップリングでは、ギア組の構成及びギア組により発生し、増大することができる負荷抵抗(摩擦抵抗)の発生箇所を特定したものであり、摩擦クラッチを締結させた状態で、例えば、ピニオンギアの収容孔が設けられたトルク伝達部材から入力したトルクは、収容孔からそれぞれのピニオンギアを介して他方のトルク伝達部材側ギアに伝達され、他方のトルク伝達部材から出力されると共に、この間、ヘリカルギア組のギア比と噛み合い抵抗とによってトルクが増幅される。
【0020】
また、摩擦クラッチの抵抗がギア組に付加されることにより、ギア組固有のギア比と噛み合い抵抗による増幅機能が加わるため数倍から約十倍にわたる大きな増幅機能が得られる。
【0021】
さらに、摩擦クラッチによる負荷抵抗を調整すれば、トルクと速度差とを広い範囲で任意に(オンデマンドで)調整することができる。
【0022】
また、ギア組自身のギア比と噛み合い抵抗を変えることにより、増幅機能をさらに広い範囲で調整することができる。
【0023】
また、摩擦クラッチを開放すると、ギア組の各構成ギアが相対回転可能になり、これに伴って、ピニオンギアが収容孔と共に公転し、各ギアが自転(空転)することによって、トルクの伝達が遮断される。
【0024】
こうして、請求項3のカップリングは、請求項1または請求項2の構成と同等の作用・効果を得ることができる。
【0025】
また、例えばギア組がヘリカルギアによって構成された場合には、上記の機能に加えて、ヘリカルギアの噛み合いスラスト力と噛み合い反力とにより噛み合い抵抗(摩擦抵抗)が生じて増幅機能を増すことができ、さらに大きな増幅機能が得られる。
【0026】
請求項4の発明は、請求項1に記載されたカップリングであって、前記ギア組が、インターナルギアと、サンギアと、これらを連結するプラネタリーギアを支持するキャリヤの3箇の相対回転部材からなるプラネタリーギア組であり、前記トルク伝達部材の一方と他方が、前記3相対回転部材の内の2者と各別に連結され、前記摩擦クラッチが、前記トルク伝達部材に連結された相対回転部材の内のいずれかと、前記3相対回転部材の他の1者との間に配置されていることを特徴としている。
【0027】
請求項4のカップリングでは、例えば、インターナルギアを入力側のトルク伝達部材に連結し、キャリヤ(プラネタリーギアキャリヤ)を出力側のトルク伝達部材に連結し、摩擦クラッチをインターナルギアとサンギアとの間に配置すれば、入力側トルク伝達部材から入力したトルクは、インターナルギアからプラネタリーギアとキャリヤを介して出力側のトルク伝達部材に伝達され、この間に、プラネタリーギア組が持つギア比によって伝達トルクが増幅される。
【0028】
また、摩擦クラッチの抵抗をインターナルギアとサンギアとの間に負荷することにより、プラネタリーギア組のギア比による増幅機能の数倍から約十倍にわたる大きな増幅機能が得られる。
【0029】
さらに、摩擦クラッチによるこの負荷抵抗を調整すれば、トルクと速度とを広い範囲で任意に(オンデマンドで)調整することができる。
【0030】
また、プラネタリーギア組自身のギア比を変えることにより、増幅機能をさらに広い範囲で調整することができる。
【0031】
また、摩擦クラッチを開放すると、上記構成例の場合、インターナルギアとサンギアとが相対回転可能になり、プラネタリーギアの公転に伴ってキャリヤが回転し、サンギアが自転(空転)するから、トルクの伝達をオンデマンドで遮断することができる。
【0032】
こうして、請求項4のカップリングは、請求項1の構成と同等の作用・効果を得ることができる。
【0033】
なお、各ギアをヘリカルギアとすることにより、ギアの噛み合いスラスト力により各ギア端面(スラスト方向面)に対して摩擦抵抗(増幅機能)をさらに増大させることができる。
【0034】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載されたカップリングであって、前記アクチュエータが、電磁石であることを特徴とし、請求項1〜4の構成と同等の作用・効果を得ることができる。
【0035】
また、請求項5のカップリングは、アクチュエータに電磁石を用いたことにより、流体圧式のアクチュエータを用いた構成と異なって、高価なポンプとその駆動源及び圧力ラインの引き回しなどが不要であり、構造簡単、低コストで、配置スペースが狭くてすみ、小型軽量に構成され、車載性に優れる上に、増幅機能を調整する際のレスポンスと、トルクを断続する際のレスポンスが速く、高い信頼性が得られる。
【0036】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態のカップリング1について、図1、図2を用いて説明する。図1は、カップリング1を示す断面図、図2は図1のII−II線に沿って切断した断面図である。このカップリング1は、4輪駆動車において2輪駆動走行時に切り離される後輪(リヤデフ)とトランスファとを連結する後輪側プロペラシャフトを分断して配置されている。
【0037】
カップリング1は、一対のトルク伝達部材2、3と、両トルク伝達部材2、3間に配置されギア比による増幅機能を有するギア組4と、ギア組4に負荷抵抗を付与する摩擦クラッチ5と、摩擦クラッチ5の締結力を締結制御するアクチュエータ6とを備えている。そして、本実施形態のカップリング1は、ギア組4が、ギア比を有して摩擦クラッチ5から与えられた負荷抵抗を増す増幅機能が得られると共に、アクチュエータ6によって摩擦クラッチ5の締結力を制御し、両トルク伝達部材2、3間の伝達トルクを制御する。
【0038】
一対の伝達部材2、3の一方のトルク伝達部材2は、ステンレス鋼(非磁性材料)で作られたケーシング本体7と、鉄系合金(磁性材料)で作られたロータ8とから構成されている。ケーシング本体7は、円筒状で一側に大径の開口部9が形成され、他側に小径の開口部を形成するボス部10が形成されている。ケーシング本体7の内側は、開口部9側が中空部11でボス部10側は中実部12となっている。中空部11の内部には開口部9側からスプライン部13が形成されている。この中空部11は、開口部9に溶接された円板状の上記ロータ8によって閉塞されている。ロータ8の半径方向の中間部には、非磁性体からなるリング14が設けられている。
【0039】
また、ロータ8の中心部からは、入力軸15が一体に突設されている。ケーシング本体7の中実部12には、図2に示すように中心部に大径の収納孔16が設けられ、この収納孔16の開口部9側であって収納孔16の中心からずれた位置に後述するヘリカルピニオンギア23、24(2つ目のギア、但しピニオンギア23、24の一方側を使用して後述するヘリカルサイドギア27と連結しても良い)が収納される収納孔小径の17、18が設けられている。これらの収納孔17、18は対称位置に設けられ、それぞれ収納孔16と連通している。さらに、収納孔16に連通すると共に、収納孔17、18にそれぞれ連通し後述するヘリカルピニオンギア25、26が収納される収納孔19、20が設けられている。中心部に設けられた大径の収納孔16には後述するヘリカルサイドギア22(1つ目のギア)が収容され、このヘリカルサイドギア22に他方のトルク伝達部材3が一体に形成されている。
【0040】
他方のトルク伝達部材3は、ヘリカルサイドギア22の中心部から突出した出力軸21からなり、この出力軸21は、ケーシング本体7のボス部10の小径の開口部からケーシング本体7の外方へ突出している。これらの両トルク伝達部材2、3間に上記ギア組4が配置されている。
【0041】
ギア組4は、大径の収納孔16に収納された上記ヘリカルサイドギア22と、このヘリカルサイドギア22に噛み合った状態で収納孔17、18にそれぞれ収納された長軸のヘリカルピニオンギヤ23、24と、ヘリカルピニオンギヤ23、24に噛み合った状態で収納孔19、20内に収納された短軸のヘリカルピニオンギヤ25、26と、ヘリカルピニオンギア25、26に噛み合うヘリカルサイドギア27(3つ目のギア)とで構成されている。そして、各収納孔16、17、18、19、20に収納されて互いに噛み合った状態のヘリカルピニオンギア23、24、25、26は、ケーシング本体7の内周にスナップリング28によって位置決めされたスラストリング29によってケーシング本体7内に位置決めされている。また、ヘリカルサイドギア27のロータ8側は、スラストリング29を貫通して延設されており、支承軸部30が一体に設けられている。支承軸部30の先端側は、ロータ8に形成された支承部31に回転自在に支承されている。また、支承軸部30の外周には、摩擦クラッチ5が連結される歯部32が設けられている。
【0042】
摩擦クラッチ5は、ケーシング本体7の上記スプライン部13に外側が噛み合っている複数枚の外側摩擦板33と、支承軸部30の歯部32に内側が噛み合うと共に、外側摩擦板33と互い違いに配置された複数枚の内側摩擦板34とで形成されている。摩擦クラッチ5は、外側摩擦板33と内側摩擦板34とが締結した状態では、ケーシング本体7に伝達された回転駆動力を支承軸部30を介してヘリカルサイドギア27に伝達する。この摩擦クラッチ5は、アクチュエータ6によってその締結力が制御される。
【0043】
アクチュエータ6は、非磁性材料性のロータ8の外側に配置された電磁石35と、摩擦クラッチ5を挟んでロータ8の反対側に配置されたアーマチャ36とで構成されている。電磁石35は、電磁コイル37と、この電磁コイル37を覆うコア38とで形成されている。コア38は、ボールベアリング(不図示)等を介して入力軸15に支持されている。そして、電磁コイル37を励磁すると、発生する磁力線により磁束ループ39が形成され、この磁束ループ39によってアーマチャ36がロータ8側に移動することで摩擦クラッチ5が締結する。この場合、電磁コイル37への通電電流を調節することで摩擦クラッチ5の締結力を調節することができ、これによってギア組4に付与する負荷抵抗を調節することができる。
【0044】
上述したように一対のトルク伝達部材2、3の間には1つ目としてのヘリカルサイドギア22と2つ目としてのヘリカルピニオンギア23及びヘリカルピニオンギア24と、3つ目としてのヘリカルサイドギア27とによる4種類のギアからなるギア組が配置されている。
【0045】
以下に、カップリング1の作動について説明する。
【0046】
電磁コイル35が非励磁状態のとき、入力軸15に回転駆動力が入力されると、ロータ8が回転し、ケーシング本体7が回転する。ケーシング本体7が回転すると、ヘリカルピニオンギア23、24、25、25がケーシング本体7と共に入出力軸15、21を中心に回転する(公転)。ヘリカルピニオンギア23、24、25、26がケーシング本体7と共に回転(公転)すると、ヘリカルピニオンギア25、26と噛み合っているヘリカルサイドギア22もケーシング本体7と共に回転(公転)する。このとき、出力軸21に負荷が加わっていない場合には、ヘリカルサイドギア22と一体の出力軸21はケーシング本体7と共に回転する。
【0047】
この状態から、出力軸21に負荷が加わると、出力軸21がケーシング本体7と共に回転しようとするのを妨げるのでヘリカルサイドギア22が収容孔16内で回転する(自転)する。ヘリカルサイドギア22が収容孔16内で回転(自転)すると、このヘリカルサイドギア22と噛み合っているヘリカルピニオンギア23、24が収容孔17、18内で回転(自転)する。さらに、ヘリカルピニオンギア23、24が収容孔17、18内で回転(自転)すると、ヘリカルピニオンギア25、26が収容孔19、20内で回転(自転)する。ヘリカルピニオンギア25、26が収容孔19、20内で回転(自転)すると、ヘリカルピニオンギア25、26と噛み合っているヘリカルサイドギア27が、ケーシング本体7の回転方向と逆方向に回転し、支承軸部30も同方向へ回転する。
【0048】
この場合、ヘリカルサイドギア22、ヘリカルピニオンギア23、24、25、26、ヘリカルサイドギア27は、ヘリカルギアで形成されているので、その噛み合い反力によって、ギアの圧力角方向(回転軸と直交する半径方向)にヘリカルピニオンギア23、24、25、27は互いに押圧し合ってヘリカルピニオンギアの支持面としてのギア外周面で収納孔17、18、19、20の内壁へ押し付けられて摩擦抵抗が発生する。さらに、ヘリカルギアでピニオンギヤ、サイドギアが形成されているので、ギアのネジレ角方向(回転軸と平行する軸方向)に発生したスラスト力によって、ヘリカルサイドギア22、ヘリカルピニオンギア23、24、25、27の端面は、ケーシング本体7の側壁及びスラストリングに押圧されて摩擦抵抗が発生する。これらの噛み合い反力による摩擦抵抗やスラスト力による摩擦抵抗が発生すると、収納孔17、18、19、20内でのヘリカルピニオンギア23、24、25、26の回転(自転)が規制され、ヘリカルサイドギア22、27の回転(自転)も規制される。この結果、これらの摩擦抵抗に応じた力分だけ、ヘリカルサイドギア23、24、25、26、ヘリカルサイドギア22、27はケーシング本体7によって強制的に回転されて出力軸21に回転駆動力(トルク)が伝達される。
【0049】
ここで、電磁コイル37に通電して励磁すると、アーマチャ36がロータ8側に引き寄せられて摩擦クラッチ5を締結する。摩擦クラッチ5が締結すると、支承軸部30をケーシング本体7と同方向に回転させようとするため、支承軸部30の回転を妨げようとする。すなわち、ヘリカルサイドギア27に負荷抵抗が加わってヘリカルサイドギア27の回転(自転)が規制される。ヘリカルサイドギア27の回転(自転)が規制されると、ヘリカルピニオンギア23、24、25、26の回転(自転)も規制され、ヘリカルサイドギア22の回転(自転)も規制されるので、ヘリカルピニオンギア23、24、25、26、ヘリカルサイドギア22の公転によって強制的に出力軸21がケーシング本体7と共に回転され、ケーシング本体7から回転駆動力(トルク)が伝達される。
【0050】
この場合、電磁コイル37への通電電流値を大きくして、摩擦クラッチ5の締結力にギアの摩擦力が加わり、ピニオンギア23、24、25、26の自転は完全に停止し、これにより入力軸15側の回転駆動力(トルク)が出力軸21側へ全て伝達される。
【0051】
また、電磁コイル37への通電電流値を調節すると、すなわち、外側摩擦板33と内側摩擦板35との間で滑りを生じた状態で摩擦クラッチ5が締結するとヘリカルピニオンギア23、24、25、26の自転が許容されるので、ケーシング本体7から出力軸21へ伝達されるトルクを調節することができる。
【0052】
従って、電磁コイル37への励磁電流を制御し、摩擦クラッチ5の締結力を調節することでヘリカルサイドギア27への負荷抵抗(小さなトルク)を調節することができ、摩擦クラッチ5によって伝達されたトルクに対して出力軸21に伝達されるトルクを増幅することができる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態によれば、アクチュエータ6によって摩擦クラッチ5の締結力を制御し、ギア組4に付与する負荷抵抗を調整することにより、ギア組4による負荷抵抗を増し、一対のトルク伝達部材間の伝達トルクの大きさを制御することができる。この場合、一方のトルク伝達部材2から摩擦クラッチ5に伝達された小さなトルクに対して他方のトルク伝達部材3から出力されるトルクは、ギア組4の上記噛み合い反力による摩擦抵抗、スラスト力による摩擦抵抗、摩擦クラッチ5による負荷抵抗によって増幅されて大きなトルクとなる。この結果、摩擦クラッチ5の締結によって伝達される小さなトルクをアクチュエータ6によって締結・制御することで、他方のトルク伝達部材3から出力される大きなトルクの制御を行うことができる。
【0054】
また、本実施形態のカップリング1では、トルクの主伝達経路、すなわち、他方のトルク伝達部材3に一方のトルク伝達部材2からのトルクを伝達する主伝達経路に摩擦クラッチを用いていないので、スティックスリップ音が発生することを大幅に抑制することができる。
【0055】
さらに、本実施形態のカップリング1では、カム機構を用いていないので、トルク抜けが生じることがなく、レスポンスの低下を防止することができる。
【0056】
加えて、ギア組4のギア比を調節することにより、カップリング1による増幅機能を広い範囲で任意に調整することが可能であり、カップリング1を介して後輪側に送られる駆動力の大きさを変えて前後輪の駆動力配分比を制御することができる。例えば、旋回走行中にこのような駆動力配分比の制御(カップリング1による伝達トルクの増幅機能調整)を行うと、車両の操縦性や安定性などを大きく向上させることができる。
【0057】
また、本実施形態のカップリング1は、上記のように、ギア組4の固有に噛み合い抵抗値による増幅機能が得られる上に、摩擦クラッチ5の抵抗をギア組4に負荷することによってギア組4の固有の増幅機能の数倍から数十倍にわたる大きな増幅機能が得られ、さらに、摩擦クラッチ5の負荷抵抗を調整することにより全体の伝達トルクを広い範囲で調整することができる。
【0058】
このように電磁式カップリング1の増幅率を調整すれば、操舵、加速、減速などの走行条件や、路面条件に応じ、オンデマンドで前後輪間のトルク配分比を調整することができ、車両の操縦性や安定性などを大きく向上させることができる。
【0059】
また、ギア組4自身のギア比と噛み合い抵抗値を変えることにより、増幅機能をさらに広い範囲で調整することができる。
【0060】
また、電磁式カップリング1は、カム機構を用いないから、カム機構のガタ、ガタによるレスポンスの低下と騒音などから解放されている。
【0061】
また、メインクラッチ507、パイロットクラッチ515、ボールカム509、カムリング513、アーマチャ517、電磁石519などの部材を用いて構成された従来の駆動力伝達装置501と較べて、電磁式カップリング1は構造が簡単で、低コストであると共に、小型軽量に構成されるから、それだけ良好な車載性が得られる。
【0062】
また、電磁式カップリング1は、アクチュエータに電磁石35を用いたことにより、例えば、流体圧式のアクチュエータを用いた構成と異なって、高価なポンプとその駆動源及び圧力ラインの引き回しなどが不要であり、構造簡単、低コストで、配置スペースが狭くてすみ、小型軽量で、車載性に優れる上に、増幅機能を調整し、トルクを断続する際のレスポンスが速く、高い信頼性が得られる。
【0063】
なお、電磁式カップリング1では、入力軸15を出力側にし、出力軸21を入力側にしてもよい。
【0064】
[第2実施形態]
次に第2実施形態のカップリング201について図3を用いて説明する。本実施形態のカップリング201は、第1実施形態のカップリング1のギア組4の構成が異なり、ヘリカルサイドギアとヘリカルピニオンギアの組み合わせに変えてプラネタリーギア組が用いられている。
【0065】
図3に示すように、カップリング201は、一対のトルク伝達部材202、203と、両トルク伝達部材202、203間に配置されギア比による増幅機能を有するギア組204と、ギア組204に負荷抵抗を付与する摩擦クラッチ205と、摩擦クラッチ205の締結力を締結制御するアクチュエータ206とを備えている。そして、本実施形態のカップリング201は、ギア組204において、ギア比による増幅機能が得られ、また、摩擦クラッチ205から与えられた負荷抵抗によって増幅機能が得られると共に、アクチュエータ206によって摩擦クラッチ205の締結力を制御し、ギア組に掛かる負荷抵抗を調整することにより、ギア組204による両トルク伝達部材202、203間の伝達トルクを制御する。
【0066】
一対の伝達部材202、203の一方のトルク伝達部材202は、ステンレス鋼(非磁性材料)で作られたケーシング本体207と、鉄系合金(磁性材料)で作られたロータ208とから構成されている。ケーシング本体207は、円筒状で一側に大径の開口部209が形成され、他側に小径の開口部を形成するボス部300が形成されている。ケーシング本体207の内側には中空部301が形成され、内壁にはスプライン部302が設けられている。中空部301は、開口部209に溶接された円板状の上記ロータ208によって閉塞されている。このロータ208の半径方向の中間部には、非磁性体からなるリング303が設けられている。また、ロータ208の中心部からは、入力軸315が一体に突設されている。
【0067】
他方のトルク伝達部材203は、ケーシング本体207内に収納されたキャリヤ316の中心部から突出した出力軸317からなり、この出力軸317は、ケーシング本体207のボス部300の小径の開口部からケーシング本体207の外方へ突出している。これらの両トルク伝達部材202、203間にギア組204が配置されている。
【0068】
ギア組204は、インターナルギア(3箇の相対回転部材の内の2者)318と、このインターナルギア318に噛み合うプラネタリーギア319と、プラネタリーギア319を支持するキャリヤ(3箇の相対回転部材の内の2者)320と、プラネタリーギア319と噛み合うサンギア(3箇の相対回転部材の内の2者)321とで構成されている。インターナルギア318は、ケーシング本体207の内壁に設けたスプライン部302からなる。キャリヤ320は、前方支持部材322と後方支持部材323とで形成され、これらの間に設けられた支持軸324に上記プラネタリーギア319が回転自在に支持されている。また、後方支持部材323の中心部から前述した出力軸317が一体に突設されている。サンギア321は、ケーシング本体207の中心部に配置された円筒部材325の一端側の外周に設けられている。この円筒部材325の他端側は、ロータ208の支承部335に支承される支承軸部326が一体に設けられている。また、支承軸部326の外周部までサンギア321が設けられており、摩擦クラッチ205が連結されている。
【0069】
摩擦クラッチ520は、ケーシング本体207の上記スプライン部302に外側が噛み合っている複数枚の外側摩擦板327と、支承軸部326の歯部328に内側が噛み合うと共に、外側摩擦板327と互い違いに配置された複数枚の内側摩擦板329とで形成されている。この摩擦クラッチ205は、外側摩擦板327と内側摩擦板329とが締結した状態では、ケーシング本体207に伝達された回転駆動力を支承軸部326を介してサンギア321に伝達する。この摩擦クラッチ205は、アクチュエータ206によってその締結力が制御される。
【0070】
アクチュエータ206は、非磁性材料性のロータ208の外側に配置された電磁石330と、摩擦クラッチ205を挟んでロータ208の反対側に配置されたアーマチャ331とで構成されている。電磁石330は、電磁コイル332と、この電磁コイル332を覆うコア333とで形成されている。コア333は、ボールベアリング(不図示)等を介して入力軸315に支持されている。そして、電磁コイル332を励磁すると、発生する磁力線により磁束ループ334が形成され、この磁束ループ334によってアーマチャ331がロータ208側に移動することで摩擦クラッチ205が締結する。この場合、電磁コイル332への通電電流を調節することで摩擦クラッチ205の締結力を調節することができ、これによってギア組204に付与する負荷抵抗を調節することができる。
【0071】
以下に、カップリング201の作動について説明する。
【0072】
電磁コイル332が非励磁状態のとき、入力軸315に回転駆動力が入力されると、ロータ208が回転し、ケーシング本体207が回転する。ケーシング本体207が回転すると、インターナルギア318と噛み合っているプラネタリーギア319がケーシング本体207と共に回転(公転)し、キャリヤ316がケーシング本体207と共に回転する。また、プラネタリーギア319と噛み合っているサンギア321が回転し、円筒部材325もケーシング本体207と共に回転する。このとき、出力軸317に負荷が加わっていない場合には、キャリヤ316と一体の出力軸317はケーシング本体207と共に回転する。
【0073】
この状態から、出力軸317に負荷が加わると、出力軸317がケーシング本体207と共に回転しようとするのを妨げるのでプラネタリーギア319が支持軸324を中心に回転(自転)する。プラネタリーギア319が自転するとサンギア321がケーシング本体207と逆方向へ回転する。
【0074】
ここで、電磁コイル332に通電して励磁すると、アーマチャ331がロータ208側に引き寄せられて摩擦クラッチ205を締結する。摩擦クラッチ205が締結すると、円筒部材325をケーシング本体207と同方向に回転させようとするため、サンギア321の回転を妨げようとする。すなわち、サンギア321に負荷抵抗が加わってプラネタリーギア319の回転(自転)が規制される。プラネタリーギア319の回転(自転)が規制されると、キャリヤ316の回転(公転)も規制されるので出力軸317がケーシング本体207と共に回転されてケーシング本体207から出力軸に回転駆動力(トルク)が伝達される。
【0075】
この場合、電磁コイル332への通電電流値を大きくして、摩擦クラッチ205を完全に締結した場合には、サンギア321はケーシング本体207と一体に回転し、プラネタリーギア319の回転(自転)も完全に停止するので、ケーシング本体207の回転駆動力はキャリヤ321を介して出力軸317側へ全て伝達される。
【0076】
また、電磁コイル332への通電電流値を調節すると、すなわち、外側摩擦板327と内側摩擦板329との間で滑りを生じた状態で摩擦クラッチ205が締結するとプラネタリーギア319の自転が許容されるので、ケーシング本体7から出力軸21へ伝達されるトルクを調節することができる。
【0077】
従って、電磁コイル332への励磁電流を制御し、摩擦クラッチ205の締結力を調節することでサンギア321への負荷抵抗(小さなトルク)を調節することができ、摩擦クラッチ205によって伝達されたトルクに対して出力軸317に伝達されるトルクを増幅することができる。
【0078】
また、本実施形態のカップリング201では、ギア組としてプラネタリー式のギア組を用いているので、インターナルギア318、サンギア321、プラネタリーギア319の歯数比によるトルク増幅機能を持っており、上記したトルクを伝達する間、このギア比によってもトルクが増幅される。
【0079】
以上説明したように、本実施形態によれば、アクチュエータ206によって摩擦クラッチ205の締結力を制御し、ギア組204に付与する負荷抵抗を調整することにより、ギア組204による増幅機能を制御することができる。この場合、一方のトルク伝達部材202から摩擦クラッチ205に伝達された小さなトルクに対して他方のトルク伝達部材203から出力されるトルクは、ギア組204の上記噛み合い反力による摩擦抵抗、スラスト力による摩擦抵抗、摩擦クラッチ205による負荷抵抗によって増幅されて大きなトルクとなる。この結果、摩擦クラッチ205の締結によって伝達される小さなトルクをアクチュエータ206によって締結・制御することで、他方のトルク伝達部材203から出力される大きなトルクの制御を行うことができる。
【0080】
また、本実施形態のカップリング201では、トルクの主伝達経路、すなわち、他方のトルク伝達部材203に一方のトルク伝達部材202からのトルクを伝達する主伝達経路に摩擦クラッチを用いていないので、スティックスリップ音を大幅に抑制することができる。
【0081】
さらに、本実施形態のカップリング201では、カム機構を用いていないので、トルク抜けが生じることがなく、レスポンスの低下を防止することができる。
【0082】
加えて、ギア組204のギア比を調節することにより、カップリング201による伝達トルクを広い範囲で任意に調整することが可能であり、カップリング201を介して後輪側に送られる駆動力の大きさを変えて前後輪の駆動力配分比を制御することができる。例えば、旋回走行中にこのような駆動力配分比の制御(カップリング1によるトルクの伝達トルクの調整)を行うと、車両の操縦性や安定性などを大きく向上させることができる。
【0083】
このように電磁式カップリング201の増幅率を調整すれば、操舵、加速、減速などの走行条件や、路面条件に応じ、オンデマンドで前後輪間のトルク配分比を調整することができ、車両の操縦性や安定性などを大きく向上させることができる。
【0084】
また、ギア組204自身のギア比と噛み合い抵抗値を変えることにより、増幅機能をさらに広い範囲で調整することができる。
【0085】
また、電磁式カップリング201は、カム機構を用いないから、カム機構のガタ、ガタによるレスポンスの低下と騒音などから解放されている。
【0086】
また、メインクラッチ507、パイロットクラッチ515、ボールカム509、カムリング513、アーマチャ517、電磁石519などの部材を用いて構成された従来の駆動力伝達装置501と較べて、電磁式カップリング1は構造が簡単で、低コストであると共に、小型軽量に構成されるから、それだけ良好な車載性が得られる。
【0087】
また、電磁式カップリング201は、アクチュエータに電磁石330を用いたことにより、例えば、流体圧式のアクチュエータを用いた構成と異なって、高価なポンプとその駆動源及び圧力ラインの引き回しなどが不要であり、構造簡単、低コストで、配置スペースが狭くてすみ、小型軽量で、車載性に優れる上に、増幅機能を調整し、トルクを断続する際のレスポンスが速く、高い信頼性が得られる。
【0088】
なお、電磁式カップリング201では、入力軸315を出力側にし、出力軸317を入力側にしてもよい。
【0089】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、ギア比を有したギア組を用いたことにより、このギア比による負荷抵抗(伝達トルク)を増す増幅機能が得られる上に、例えば、構成するギアの間で噛み合い抵抗が発生するギア組では、この噛み合い抵抗に見合った増幅率でトルクや速度が増幅される。
【0090】
また、摩擦クラッチの締結力を制御し、ギア組に付与する負荷抵抗を調整することによりこの負荷抵抗に応じてギア組自体で負荷抵抗を増大することができる。この場合、一方のトルク伝達部材に摩擦クラッチに伝達された小さなトルクに対して、他方のトルク伝達部材から出力されるトルクは、ギア組によって増幅されて大きなトルクとなる。この結果、摩擦クラッチの締結によって伝達される小さいなトルクをアクチュエータによって締結・制御することで、他方のトルク伝達部材から出力される大きなトルクの制御を行うことができる。
【0091】
また、請求項1の発明では、トルクの主伝達経路、すなわち、他方のトルク伝達部材に一方のトルク伝達部材からのトルクを伝達する主伝達経路に摩擦クラッチを用いていないので、スティックスリップ音を大幅に抑制することができる。
【0092】
さらに、請求項1の発明では、カム機構を用いていないので、トルク抜けが生じることがなく、レスポンスの低下を防止することができる。
【0093】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の構成と同等の作用・効果を得ることができる。これに加えて、請求項2のカップリングでは、確実かつ大きな増幅機能が得られる。
【0094】
請求項3の発明によれば、ギア組の構成及びギア組により発生し、増大することができる負荷抵抗(摩擦抵抗)の発生箇所を特定したものであり、摩擦クラッチを締結させた状態で、例えば、ピニオンギアの収容孔が設けられたトルク伝達部材から入力したトルクは、収容孔からそれぞれのピニオンギアを介して他方のトルク伝達部材側ギアに伝達され、他方のトルク伝達部材から出力されると共に、この間、ヘリカルギア組のギア比と噛み合い抵抗とによってトルクが増幅される。
【0095】
また、摩擦クラッチの抵抗がギア組に付加されることにより、ギア組固有のギア比と噛み合い抵抗による増幅機能が加わるため数倍から約十倍にわたる大きな増幅機能が得られる。
【0096】
さらに、摩擦クラッチによる負荷抵抗を調整すれば、トルクと速度差とを広い範囲で任意に(オンデマンドで)調整することができる。
【0097】
また、ギア組自身のギア比と噛み合い抵抗を変えることにより、増幅機能をさらに広い範囲で調整することができる。
【0098】
また、摩擦クラッチを開放すると、ギア組の各構成ギアが相対回転可能になり、これに伴って、ピニオンギアが収容孔と共に公転し、各ギアが自転(空転)することによって、トルクの伝達が遮断される。
【0099】
こうして、請求項3のカップリングは、請求項1または請求項2の構成と同等の作用・効果を得ることができる。
【0100】
また、例えばギア組がヘリカルギアによって構成された場合には、上記の機能に加えて、ヘリカルギアの噛み合いスラスト力と噛み合い反力とにより噛み合い抵抗(摩擦抵抗)が生じて増幅機能を増すことができ、さらに大きな増幅機能が得られる。
【0101】
請求項4の発明によれば、例えば、インターナルギアを入力側のトルク伝達部材に連結し、キャリヤ(プラネタリーギアキャリヤ)を出力側のトルク伝達部材に連結し、摩擦クラッチをインターナルギアとサンギアとの間に配置すれば、入力側トルク伝達部材から入力したトルクは、インターナルギアからプラネタリーギアとキャリヤを介して出力側のトルク伝達部材に伝達され、この間に、プラネタリーギア組が持つギア比によって伝達トルクが増幅される。
【0102】
また、摩擦クラッチの抵抗をインターナルギアとサンギアとの間に負荷することにより、プラネタリーギア組のギア比による増幅機能の数倍から約十倍にわたる大きな増幅機能が得られる。
【0103】
さらに、摩擦クラッチによるこの負荷抵抗を調整すれば、トルクと速度とを広い範囲で任意に(オンデマンドで)調整することができる。
【0104】
また、プラネタリーギア組自身のギア比を変えることにより、増幅機能をさらに広い範囲で調整することができる。
【0105】
また、摩擦クラッチを開放すると、上記構成例の場合、インターナルギアとサンギアとが相対回転可能になり、プラネタリーギアの公転に伴ってキャリヤが回転し、サンギアが自転(空転)するから、トルクの伝達をオンデマンドで遮断することができる。
【0106】
こうして、請求項4のカップリングは、請求項1の構成と同等の作用・効果を得ることができる。
【0107】
なお、各ギアをヘリカルギアとすることにより、ギアの噛み合いスラスト力により各ギア端面(スラスト方向面)に対して摩擦抵抗(増幅機能)をさらに増大させることができる。
【0108】
請求項5の発明によれば、請求項1〜4の構成と同等の作用・効果を得ることができる。また、請求項5のカップリングは、アクチュエータに電磁石を用いたことにより、流体圧式のアクチュエータを用いた構成と異なって、高価なポンプとその駆動源及び圧力ラインの引き回しなどが不要であり、構造簡単、低コストで、配置スペースが狭くてすみ、小型軽量に構成され、車載性に優れる上に、増幅機能を調整する際のレスポンスと、トルクを断続する際のレスポンスが速く、高い信頼性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す断面図である。
【図2】第1実施形態に用いられたヘリカルギア構成のギア組と、各ヘリカルギアの収容孔とを示す図面である。
【図3】第2実施形態の断面図である。
【図4】従来例の断面図である。
【符号の説明】
201 カップリング
202 トルク伝達部材
203 トルク伝達部材
204 ギア組
205 摩擦クラッチ
206 アクチュエータ
Claims (5)
- 一対のトルク伝達部材(2、3、202、203)と、
前記両トルク伝達部材間に配置されたギア組(4、204)と、
前記ギア組(4、204)に負荷抵抗を付与する摩擦クラッチ(5、205)と、
前記摩擦クラッチ(5、205)の締結力を締結制御するアクチュエータ(6、206)とを備え、
前記ギア組(4、204)が、ギア比を有して前記摩擦クラッチ(5、205)から与えられた前記負荷抵抗を増す増幅機能が得られると共に、
前記アクチュエータ(6、206)によって前記摩擦クラッチ(5、205)の締結力を制御し、前記両トルク伝達部材(2、3、202、203)間の伝達トルクを制御することを特徴とするカップリング(1、201)。 - 請求項1に記載されたカップリング(1、201)であって、
前記ギア組(4)が、各ギア間での噛み合い抵抗を有して、前記負荷抵抗を増すことを特徴とするカップリング(1、201)。 - 請求項1または請求項2に記載されたカップリング(1)であって、
前記ギア組(4)が、前記一対のトルク伝達部材間に少なくとも3種類のギアを有し、1つ目は一対のトルク伝達部材と連結するギア(22、27)、2つ目は前記1つ目のギア(22、27)と噛み合うピニオンギヤ(23、24、25、26)、3つ目は前記ピニオンギア(23、24、25、26)と噛み合うギア(22、27)を連結したギア組(4)であり、
前記トルク伝達部材の一方(2)に、前記ピニオンギア(23、24、25、26)を回転自在に収容する収容孔(17、18、19、20)が設けられ、
前記摩擦クラッチ(5)が、前記サイドギア(22)の他方と前記一方のトルク伝達部材との間に配置され、
前記ギア組(4)において、前記3種類のギアがトルクを受けて生じる噛み合い反力により前記ピニオンギア(23、24、25、26)が収容孔(17、18、19、20)に押圧されて摩擦抵抗が生じ、これら両摩擦抵抗による増幅機能が得られることを特徴とするカップリング(1)。 - 請求項1に記載されたカップリング(201)であって、
前記ギア(204)組が、インターナルギア(318)、サンギア(321)と、これらを連結するプラネタリーギア(319)を支持するキャリヤ(316)の3箇の相対回転部材からなるプラネタリーギア組(204)であり、
前記トルク伝達部材の一方(202)と他方(203)が、前記3相対回転部材の内の2者と各別に連結され、
前記摩擦クラッチ(205)が、前記トルク伝達部材に連結された相対回転部材の内のいずれかと、前記3相対回転部材の他の1者との間に配置されていることを特徴とするカップリング(201)。 - 請求項1〜4のいずれかに記載された(カップリング1、210)であって、
前記アクチュエータ(6、206)が、電磁石(35、330)であることを特徴とするカップリング。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2010033002A (ja) * | 2008-06-30 | 2010-02-12 | Ricoh Co Ltd | 減速装置、回転体駆動装置、像担持体駆動装置及び画像形成装置 |
JP2010101338A (ja) * | 2008-10-21 | 2010-05-06 | Honda Motor Co Ltd | 差動装置 |
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- 2002-12-18 JP JP2002366818A patent/JP2004197830A/ja active Pending
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