JP2004197408A - 土留構造体 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡単な構成で、施工期間を短縮することができ、複数のパネル本体を大きな強度で連結して高い剛性を達成することができる土留構造体を提供する。
【解決手段】土留壁本体2は、偏平な直方体状のコンクリート製の複数のパネル本体5を、水平方向Aに隣接して配置し、かつ鉛直方向Bに、パネル本体5の幅Wの1/2の距離dだけ水平方向Aにずれた位置に積重して、構築される。各パネル本体5は、パネル連結手段3によって連結される。パネル連結手段3は、各パネル本体5の水平方向Aに隣接する各幅方向両端部6a,6bを相互に連結するとともに、各パネル本体5の幅方向両端部6a,6bと上方または下方に配置されるパネル本体5の幅方向中央部7とを連結する。アンカー手段4は、各パネル本体5に一端部8aが連結された状態で、背後土9中に埋設される複数の鎖状の引張部材10を有する。
【選択図】 図1
【解決手段】土留壁本体2は、偏平な直方体状のコンクリート製の複数のパネル本体5を、水平方向Aに隣接して配置し、かつ鉛直方向Bに、パネル本体5の幅Wの1/2の距離dだけ水平方向Aにずれた位置に積重して、構築される。各パネル本体5は、パネル連結手段3によって連結される。パネル連結手段3は、各パネル本体5の水平方向Aに隣接する各幅方向両端部6a,6bを相互に連結するとともに、各パネル本体5の幅方向両端部6a,6bと上方または下方に配置されるパネル本体5の幅方向中央部7とを連結する。アンカー手段4は、各パネル本体5に一端部8aが連結された状態で、背後土9中に埋設される複数の鎖状の引張部材10を有する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉛直で安定した土留壁面を形成するために好適に実施することができる土留構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の法面保護壁は、複数のブロック体を横方向に並べるとともに上下方向に積重して、構築される(たとえば、特許文献1参照)。ブロック体は、コンクリートから成り、直方体または立方体となった主体部と、この主体部の背面部の幅方向の中央部に突設される背方突部とを有する。背方突部は直方体または立方体となっており、背方突部の下端部は、主体部の下端よりも下方に突出して、係合部となっている。法面保護壁を構築するにあたっては、横方向に隣接するブロック体同士を主体部の側面部分で当接するとともに、上下方向に隣接するブロック体同士を横方向にずらした状態で上下面部分で相互に当接する。ブロック体の背方突部の下端部の係合部は、このブロック体の下において横方向に隣接する2個のブロック体の背方突部間に嵌め込まれる。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−70040号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の技術では、ブロック体は、主体部に加えて背方突部を有するので、重量が小さく、かつ土圧に対して大きな受圧面積を有するブロック体を実現することができない。したがって所定の大きさの法面保護壁を構築するために必要なブロック体の個数が多く、ブロック体を現場で順次的に所定位置に設置する際の設置作業回数が多いので、施工期間が長期化してしまうという問題がある。
【0005】
また、ブロック体の連結に関しては、ブロック体の背方突部の下端部の係合部が、このブロック体の下において横方向に隣接する2個のブロック体の背方突部間に嵌め込まれるだけであるので、隣接する各ブロック体同士の連結強度が小さい。したがって各ブロック体に作用する土圧、水圧、地震時の慣性力などの荷重に対して、各ブロック体に荷重を分散させることができず、法面保護壁に局部的に大きな応力が発生するので、剛性が低いという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、簡単な構成で、施工期間を短縮することができ、複数のパネル本体を大きな強度で連結して高い剛性を達成することができる土留構造体を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、偏平な直方体状のコンクリート製の複数のパネル本体を、水平方向に隣接して配置し、かつ鉛直方向に、パネル本体の幅の1/2の距離だけ水平方向にずれた位置に積重して構築される土留壁本体と、
各パネル本体の水平方向に隣接する各幅方向両端部を相互に連結するとともに、各パネル本体の幅方向両端部と上方または下方に配置されるパネル本体の幅方向中央部とを連結するパネル連結手段と、
各パネル本体に一端部が連結された状態で、土留壁本体の背後に収容される背後土中に埋設される複数の鎖状の引張部材を有するアンカー手段とを含むことを特徴とする土留構造体である。
【0008】
本発明に従えば、コンクリート製の複数のパネル本体が、水平方向に隣接して配置され、かつ鉛直方向に、パネル本体の幅の1/2の距離だけ水平方向にずれた位置に積重されて、土留壁本体が構築される。
【0009】
各パネル本体は偏平な直方体状であるので、前記従来の技術のブロック体に比べて、所定の重量で、土圧に対してより大きな受圧面積を有するパネル本体を実現することができる。この大きな受圧面積を有するパネル本体によって土留壁本体を構築することによって、前記従来の技術に比べて、所定の大きさの土留壁本体を構築するために必要なパネル本体の枚数を低減して、パネル本体を現場で順次的に所定位置に設置する際の設置作業回数を低減することができる。またこのようにパネル本体の設置作業回数を低減することができるので、施工期間を短縮することができる。
【0010】
各パネル本体は、パネル連結手段によって連結される。パネル連結手段は、各パネル本体の水平方向に隣接する各幅方向両端部を相互に連結するとともに、各パネル本体の幅方向両端部と上方または下方に配置されるパネル本体の幅方向中央部とを連結する。このように、水平方向に関しては、各パネル本体の各幅方向両端部が相互に連結され、鉛直方向に関しては、各パネル本体の幅方向両端部と、前記上方または下方に配置されるパネル本体の幅方向中央部とが連結されるので、各パネル本体に作用する土圧、水圧、地震時の慣性力などの荷重に対して、隣接する各パネル本体同士の連結強度を大きくして確実に各パネル本体に荷重を分散させ、土留壁本体に局部的に大きな応力が発生することが防がれ、高い剛性を有する土留壁本体を実現することができる。
【0011】
このような土留壁本体には、転倒および滑動などに対する安定性を確保するために、アンカー手段が設けられる。このアンカー手段は、土留壁本体の背後に収容される背後土中に埋設される複数の鎖状の引張部材を有する。鎖状の引張部材は、各パネル本体に一端部が連結されている。この鎖状の引張部材は、鋼板などに比べて、背後土に対する摩擦抵抗が大きいので、鎖状の引張部材が、土留壁本体から大きな引抜き力を受けても、背後土から引抜かれてしまうことが防がれる。したがって土圧、水圧、地震時の慣性力などの荷重が作用する土留壁本体をアンカー手段によって確実に支持することができる。
【0012】
このように土留壁本体の剛性を向上させ、かつこの土留壁本体をアンカー手段によって確実に支持することによって、土留構造体として高い剛性を達成することができる。
【0013】
また本発明は、偏平な直方体状のコンクリート製の複数のパネル本体を、水平方向に隣接して配置し、かつ鉛直方向に、パネル本体の幅の1/2の距離だけ水平方向にずれた位置に積重して構築される土留壁本体と、
相互に鉛直方向に隣接する各パネル本体間にわたって鉛直方向に挿入される複数の棒状の連結部材によって、前記鉛直方向に隣接する各パネル本体を連結するパネル連結手段と、
各パネル本体に一端部が連結された状態で、土留壁本体の背後に収容される背後土中に埋設される複数の鎖状の引張部材を有するアンカー手段とを含むことを特徴とする土留構造体である。
【0014】
本発明に従えば、コンクリート製の複数のパネル本体が、水平方向に隣接して配置され、かつ鉛直方向に、パネル本体の幅の1/2の距離だけ水平方向にずれた位置に積重されて、土留壁本体が構築される。
【0015】
各パネル本体は偏平な直方体状であるので、前記従来の技術のブロック体に比べて、所定の重量で、土圧に対してより大きな受圧面積を有するパネル本体を実現することができる。この大きな受圧面積を有するパネル本体によって土留壁本体を構築することによって、前記従来の技術に比べて、所定の大きさの土留壁本体を構築するために必要なパネル本体の枚数を低減して、パネル本体を現場で順次的に所定位置に設置する際の設置作業回数を低減することができる。またこのようにパネル本体の設置作業回数を低減することができるので、施工期間を短縮することができる。
【0016】
各パネル本体は、パネル連結手段によって連結される。パネル連結手段は、相互に鉛直方向に隣接する各パネル本体間にわたって鉛直方向に挿入される複数の棒状の連結部材によって、前記鉛直方向に隣接する各パネル本体を連結する。このように相互に鉛直方向に隣接する各パネル本体が複数の棒状の連結部材によって連結されるので、各パネル本体に作用する土圧、水圧、地震時の慣性力などの荷重に対して、相互に鉛直方向に隣接する各パネル本体同士の連結強度を大きくして確実に各パネル本体に荷重を分散させ、土留壁本体に局部的に大きな応力が発生することが防がれ、高い剛性を有する土留壁本体を実現することができる。
【0017】
このような土留壁本体には、転倒および滑動などに対する安定性を確保するために、アンカー手段が設けられる。このアンカー手段は、土留壁本体の背後に収容される背後土中に埋設される複数の鎖状の引張部材を有する。鎖状の引張部材は、各パネル本体に一端部が連結されている。この鎖状の引張部材は、鋼板などに比べて、背後土に対する摩擦抵抗が大きいので、鎖状の引張部材が、土留壁本体から大きな引抜き力を受けても、背後土から引抜かれてしまうことが防がれる。したがって土圧、水圧、地震時の慣性力などの荷重が作用する土留壁本体をアンカー手段によって確実に支持することができる。
【0018】
このように土留壁本体の剛性を向上させ、かつこの土留壁本体をアンカー手段によって確実に支持することによって、土留構造体として高い剛性を達成することができる。
【0019】
また本発明は、前記各パネル本体には、各パネル本体の上面から下面にわたって連通する複数の挿入孔が形成され、
前記パネル連結手段は、各挿入孔に前記連結部材が挿入された状態で各挿入孔内に充填されて硬化し、各パネル本体と各連結部材とを一体化する充填層を含むことを特徴とする。
【0020】
本発明に従えば、充填層によって、各パネル本体と各パネル本体に挿入された各連結部材とが一体化されるので、パネル本体と連結部材との間の間隙をなくして、各パネル本体間のずれを可及的に抑制することができる。
【0021】
また本発明は、前記引張部材の一端部は、前記各パネル本体に埋込まれ、各パネル本体の厚み方向に垂直な方向に延びる係止部材に係止されることを特徴とする。
【0022】
本発明に従えば、各パネル本体に埋込まれ、各パネル本体の厚み方向に垂直な方向に延びる係止部材に、引張部材の一端部が係止される。この係止部材によって、引張部材からパネル本体に作用する力が分散するので、パネル本体に局部的に大きな応力が発生することが防がれ、パネル本体が破損して引張部材とパネル本体とが分離してしまうことが防がれる。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の一形態の土留構造体1を示す横断面図であり、図2は土留構造体1の土留壁本体2を背後側から見た一部の斜視図である。土留構造体1は、土留壁本体2、パネル連結手段3およびアンカー手段4を含んで構成される。
【0024】
土留壁本体2は、偏平な直方体状のコンクリート製の複数のパネル本体5を、図1の紙面に垂直な予め定める計画線(図示せず)に沿って水平方向Aに隣接して配置し、かつ鉛直方向Bに、パネル本体5の幅Wの1/2の距離d(d=W/2)だけ水平方向Aにずれた位置に積重して、構築される。パネル連結手段3は、各パネル本体5の水平方向Aに隣接する各幅方向両端部6a,6bを相互に連結するとともに、各パネル本体5の幅方向両端部6a,6bと上方または下方に配置されるパネル本体5の幅方向中央部7とを連結する。アンカー手段4は、各パネル本体5に一端部8aが連結された状態で、土留壁本体2の背後に収容される背後土9中に埋設される複数の鎖状の引張部材10を有する。
【0025】
本実施の形態においては、図1の紙面に垂直な方向を水平方向Aとし、図1の上下方向を鉛直方向Bとし、図1の左右方向を前後方向Cとする。また、パネル本体5の幅Wとは、図1の紙面に垂直な横幅方向の長さをいう。
【0026】
土留構造体1は、略水平な施工基面11上および均し底面12上に構築される。施工基面11および均し底面12は、土留構造体1を構築すべき予め定める構築位置の横断面形状および縦断面形状に基づいて決定される。施工基面11および均し底面12は、所定の縦断勾配を有し、施工基面11は、前方現地盤面13よりも低く、また均し底面12は、前方現地盤面13よりも低く、かつ施工基面11よりも高い位置に形成される。施工基面11の前方現地盤面13からの根入れ深さH41は、たとえばH41=0.5〜2.5m程度に選ばれ、均し底面12は、施工基面11からたとえば高さH42=0.1〜0.4m程度、上方に形成される。
【0027】
施工基面11の図1の左方寄りの前縁には、前方に向かうにつれて上方に傾斜する掘削法面14が連なり、この掘削法面14の上端は、前記前方現地盤面13に連なる。施工基面11の図1の右方寄りの後縁には、後方に向かうにつれて上方に傾斜する掘削法面15が連なり、この掘削法面15の上端は、均し底面12に連なる。均し底面12の後縁には、後方に向かうにつれて上方に傾斜する掘削法面16が連なる。
【0028】
施工基面11上には、基礎捨石部21が形成される。この基礎捨石部21は、たとえば砕石などによって実現される捨石材料から成る。基礎捨石部21上には、基礎コンクリート部22が形成される。基礎捨石部21および基礎コンクリート部22は、土留壁本体2を下方から支持する。基礎捨石部21の前後方向Cの幅T1はたとえば600mm程度に選ばれ、基礎捨石部21の高さ方向の距離H31はたとえば200mm程度に選ばれる。基礎コンクリート部22の前後方向Cの幅T2はたとえば400mm程度に選ばれ、基礎コンクリート部22の高さ方向の距離H32はたとえば200mm程度に選ばれる。
【0029】
基礎コンクリート部22上には、保持部材23が設置される。保持部材23は、水平方向Aに延びる底板部24と、底板部24の前縁に連なり、上方に延びる前板部25と、底板部24の後縁に連なり、上方に延びる後板部26と、底板部24の後縁に連なり、後方に延びる固定補助部27とを含む。保持部材23は、前板部25と後板部26とが最下段のパネル本体5の下部をその厚み方向両側から挟むようにして嵌り込み、基礎コンクリート部22上で最下段のパネル本体5を垂直に保持する。前記固定補助部27には、その厚み方向に貫通する貫通孔が設けられる。基礎コンクリート部22には、たとえばドリルによって、上面から下方に向かって窪む複数の孔が形成される。保持部材23を基礎コンクリート部22上の所定位置に載置した状態において、前記各孔は、前記固定補助部27の各貫通孔と同軸である。これらの孔には、保持部材23を基礎コンクリート部22上の所定位置に載置した状態で、たとえばハンマによって、アンカー部材28が打ち込まれる。こうして打ち込まれたアンカー部材28は、一端部が前記固定補助部27よりも上方に突出している。このようにして基礎コンクリート部22に設けられる保持部材23によって、最下段のパネル本体5の転倒が防止され、基礎コンクリート部22上にパネル本体5を正確に位置決めして、安定した状態で設置することができる。
【0030】
土留壁本体2の水平方向Aに隣接する各パネル本体5間には、第1目地材31が介在する。第1目地材31は、たとえばスポンジ状の発泡ゴムから成る。この第1目地材31の厚みT11は、5mm程度である。土留壁本体2の鉛直方向Bに隣接する各パネル本体5間には、第2目地材32が介在する。第2目地材32は、たとえば硬質天然ゴムから成る。この第2目地材32の厚みT12は、5mm程度である。第1および第2目地材31,32は、隣接する一方のパネル本体5から他方のパネル本体5に近接する方向に力が作用したとき、この力を吸収して他方のパネル本体5に伝えられる力を緩和し、各パネル本体5に割れおよび欠けが発生することを防止することができる。
【0031】
水平方向Aに隣接する各パネル本体5の相互に対向する各側部の背面には、帯状の防砂フィルタ33が前記各側部間にわたって上下に延びて設けられる。この防砂フィルタ33は、水平方向Aに隣接する各パネル本体5間の隙間から、背後土9として搬入される砂などの裏込め材が前方へ流出することを防止する。
【0032】
パネル連結手段3は、アンカーボルト36、左右連結部材37、上下連結部材38およびナット39を含む。左右連結部材37および上下連結部材38にアンカーボルト36を挿通させ、ナット39をアンカーボルト39に螺着して、左右連結部材37および上下連結部材38をアンカーボルト39に固定することによって、相互に隣接する各パネル本体5が連結される。
【0033】
土留壁本体2の背後(図1の右方)には、背後土9が収容される。この背後土9は、たとえば裏込め材が搬入され、この搬入された裏込め材が上方から転圧されることによって形成される。裏込め材は、砂質土の含有率が高い土砂が好ましい。引張部材10は、パネル本体5に一端部8aが連結され、背後土9中で、後方に向かって延びる。最下段のパネル本体5の下部の前方には、前面土40が収容される。この前面土40は、土砂が搬入され、この搬入された土砂が上方から転圧されることによって形成される。
【0034】
図3は、パネル本体5を背後側から見た内部構造を示す図であり、図4はパネル本体5の図3の左側から見た内部構造を示す図である。パネル本体5は、縦幅方向D1に延びる複数の縦鉄筋41と、縦幅方向D1に直交する横幅方向D2に延びる複数の横鉄筋42と、縦鉄筋41および横鉄筋42を覆うコンクリート層43とを含む。
【0035】
本実施の形態においては、図3の上下方向を縦幅方向D1とし、図3の左右方向を横幅方向D2とし、図3の紙面に垂直な方向を厚み方向D3とする。
【0036】
複数の縦鉄筋41および複数の横鉄筋42によって、格子状の格子体が構成される。各縦鉄筋41は、長尺の棒状の金属から成り、たとえば直径が13mm、長さが900mmの異形鉄筋によって実現される。各縦鉄筋41は、各パネル本体5にたとえば19本、設けられ、縦幅方向D1および横幅方向D2を含む仮想一平面上で横幅方向D2に間隔L1をあけて配置される。各縦鉄筋41の間隔L1は、たとえば100mmに選ばれる。各横鉄筋42は、長尺の棒状の金属から成り、たとえば直径が13mm、長さが1900mmの異形鉄筋によって実現される。各横鉄筋42は、各パネル本体5にたとえば9本、設けられ、縦幅方向D1および横幅方向D2を含む仮想一平面上で縦幅方向D1に間隔L2をあけて配置される。各横鉄筋42の間隔L2は、たとえば100mmに選ばれる。各横鉄筋42は、各縦鉄筋41に対して、厚み方向D3の一方側に配置される。
【0037】
コンクリート層43は、偏平な直方体状である。このコンクリート層43は、厚み方向D3に垂直で、かつ各横鉄筋42に対して厚み方向D3の一方側に形成される前面44と、この前面44と反対の方向に臨む背面45と、縦幅方向D1に垂直で、かつ設置された状態において上方に臨む上面46と、この上面46と反対の方向に臨む下面47と、横幅方向D2に垂直で、かつ相互に反対の方向に臨む側面48a,48bとを含む。本実施の形態では、図3の左方に臨む側面を参照符48aで示し、図3の右方に臨む側面を参照符48bで示す。
【0038】
パネル本体5の縦幅方向D1の長さである縦幅H1は、たとえば995mmに選ばれる。パネル本体5の横幅方向D2の長さである横幅Wは、たとえば1995mmに選ばれる。パネル本体5の厚み方向D3の長さである厚みT13は、たとえば140mmに選ばれる。
【0039】
このように各パネル本体5は偏平な直方体状であるので、前記従来の技術のブロック体に比べて、所定の重量で、土圧に対してより大きな受圧面積を有するパネル本体5を実現することができる。この大きな受圧面積を有するパネル本体5によって土留壁本体2を構築することによって、前記従来の技術に比べて、所定の大きさの土留壁本体2を構築するために必要なパネル本体5の枚数を低減して、パネル本体5を現場で順次的に所定位置に設置する際の設置作業回数を低減することができる。またこのようにパネル本体5の設置作業回数を低減することができるので、施工期間を短縮することができる。
【0040】
このようなパネル本体5には、アンカーボルト36、係止部材51、埋込み補助部52および吊り金具53が設けられる。
【0041】
アンカーボルト36は、パネル本体5の背面45から一部が突出する。アンカーボルト36は、パネル本体5の横幅方向D2両端部間の中央を含み、かつ横幅方向D2に垂直な対称面54に関して、図3において左右対称に配置される。アンカーボルト36は、パネル本体5の設置状態における上部に配置される複数の上部アンカーボルトと、パネル本体5の設置状態における下部に配置される複数の下部アンカーボルトとを含む。各上部アンカーボルトと上面46との間の距離H11は、たとえば150mmに選ばれる。各下部アンカーボルトと下面との間の距離H12は、たとえば150mmに選ばれる。
【0042】
上部アンカーボルトおよび下部アンカーボルトは、左端部ボルト55a、右端部ボルト55b、中央部左側ボルト55cおよび中央部右側ボルト55dをそれぞれ含む。左端部ボルト55aは、パネル本体5の図3の左方寄りの左端部に配置される。右端部ボルト55bは、パネル本体5の図3の右方寄りの右端部に配置される。中央部左側ボルト55cは、パネル本体5の横幅方向D2両端部間の中央部の図3の左方寄りに配置される。中央部右側ボルト55dは、パネル本体5の横幅方向D2両端部間の中央部の図3の右方寄りに配置される。左端部ボルト55aと側面48aとの間の距離W11は、たとえば150mmに選ばれる。右端部ボルト55bと側面48bとの間の距離W12は、たとえば150mmに選ばれる。中央部左側ボルト55cと中央部右側ボルト55dとの間の距離W13は、たとえば305mmに選ばれる。
【0043】
係止部材51は、パネル本体5に埋め込まれ、パネル本体5の厚み方向D3に垂直な方向である横幅方向D2に延びる。この係止部材51は、長尺の棒状の金属から成り、たとえば直径が10mm、長さが1900mmの異形鉄筋によって実現される。係止部材51は、各横鉄筋42の軸線を含む仮想一平面上に配置される。係止部材51は、パネル本体5の設置された状態において上部に配置される上部係止部材51aと、パネル本体5の設置された状態において下部に配置される下部係止部材51bとを含む。上部係止部材51aと上面46との間の距離H21は、たとえば247.5mmに選ばれる。下部係止部材51bと下面47との間の距離H22は、たとえば247.5mmに選ばれる。
【0044】
埋込み補助部52は、パネル本体5の背面45から一部が突出する。埋込み補助部52は、前記対称面54に関して、図3において左右対称に配置される。埋込み補助部52は、パネル本体5の設置された状態において上部に配置される複数の上部補助部と、パネル本体5の設置された状態において下部に配置される複数の下部補助部とを含む。各上部補助部は、上部係止部材51aに係止される。各下部補助部は、下部係止部材51bに係止される。
【0045】
上部補助部および下部補助部は、左端部補助部52a、右端部補助部52bおよび中央補助部52cをそれぞれ含む。左端部補助部52aは、パネル本体5の図3の左方寄りの左端部に配置される。右端部補助部52bは、パネル本体5の図3の右方寄りの右端部に配置される。中央補助部52cは、パネル本体5の横幅方向D2両端部間の中央部に配置される。左端部補助部52aと側面48aとの間の距離W21は、たとえば297.5mmに選ばれる。右端部補助部52bと側面48bとの間の距離W22は、たとえば297.5mmに選ばれる。
【0046】
このように各パネル本体5に埋込まれ、横幅方向D2に延びる係止部材51に、引張部材10の一端部8aを構成する埋込み補助部52が係止される。この係止部材8aによって、引張部材10からパネル本体5に作用する力が分散するので、パネル本体5に局部的に大きな応力が発生することが防がれ、パネル本体5が破損して引張部材10とパネル本体5とが分離してしまうことが防がれる。
【0047】
吊り金具53は、パネル本体5の上部の図3の左方寄りに形成され、図3の下方に向かって窪む凹所56a内に、突出して設けられる左側吊り金具53aと、パネル本体5の上部の図3の右方寄りに形成され、図3の下方に向かって窪む凹所56b内に、突出して設けられる右側吊り金具53bとを含む。この吊り金具53を、たとえばクレーンのフックにひっかけて、パネル本体5を所定位置に設置することができる。
【0048】
図5は、パネル連結手段3を背後側から見た図であり、図6はパネル連結手段3を側方から見た図であり、図7はパネル連結手段3を上方から見た図である。
【0049】
アンカーボルト36は、パネル本体5に埋め込まれる埋込み部61と、パネル本体5の背面45から垂直に突出する突出部62とを含む。埋込み部61は、パネル本体5の厚み方向D3に延在する厚み方向延在部63と、この厚み方向延在部63の一端部64に屈曲して連なり、パネル本体5の縦幅方向D1に延びる縦幅方向延在部65とを含む。縦幅方向延在部65は、パネル本体5の設置された状態において、厚み方向延在部63の一端部64から上方に向かって延びる。突起部62は、厚み方向延在部63の他端部66に連なる。この突起部62には、外ねじが刻設されている。このアンカーボルト36の突起部62にはナット39が螺着される。
【0050】
左右連結部材37は、長尺の板状の金属から成る。左右連結部材37の長手方向の両端部には、パネル本体5の設置された状態において水平方向Aに隣接するアンカーボルト36の突出部62が挿通される貫通孔67a,67bが形成される。左右連結部材37の各貫通孔67a,67bのいずれか一方は、左右連結部材37の長手方向に延びる長孔である。このように各貫通孔67a,67bのいずれか一方が長孔であることによって、各パネル本体5が設置された状態において前記左右連結部材37によって相互に連結されるべき2本の各アンカーボルト36間の距離の連結箇所毎の誤差によるばらつきを、許容することができる。
【0051】
上下連結部材38は金属から成る。上下連結部材38は、長尺の板状の第1板部68と、この第1板部68の幅方向一端部に連なり、第1板部68に対して垂直な第2板部69とを含む。上下連結部材38の第1板部68の長手方向の両端部には、パネル本体5の設置された状態において鉛直方向Bに隣接するアンカーボルト36の突出部62が挿通される貫通孔70a,70bが形成される。上下連結部材38の第1板部68の各貫通孔70a,70bのいずれか一方は、第1板部68の長手方向に延びる長孔である。このように各貫通孔70a,70bのいずれか一方が長孔であることによって、各パネル本体5が設置された状態において前記上下連結部材38によって相互に連結されるべき2本の各アンカーボルト36間の距離の連結箇所毎の誤差によるばらつきを、許容することができる。
【0052】
各パネル連結手段3は、前述のような左右連結部材37および上下連結部材38を2つずつ有する。一方の左右連結部材37の各貫通孔67a,67bには、水平方向Aに隣接する各パネル本体5の右端部ボルト55bおよび左端部ボルト55aが挿通される。他方の左右連結部材37の各貫通孔67a,67bには、中央部左側ボルト55cおよび中央部右側ボルト55dが挿通される。一方の上下連結部材38の各貫通孔70a,70bには、鉛直方向Bに隣接して配置される各パネル本体5の中央部左側ボルト55cおよび右端部ボルト55bが挿通される。他方の上下連結部材38の各貫通孔70a,70bには、鉛直方向Bに隣接して配置される各パネル本体5の中央部右側ボルト55dおよび左端部ボルト55aが挿通される。
【0053】
このようにして各左右連結部材37が各アンカーボルト36に係合され、さらに各上下連結部材38が各アンカーボルト36に係合された後、各アンカーボルト36にナット39が螺着される。こうして各左右連結部材37および各上下連結部材38が各アンカーボルト36に固定される。
【0054】
このようにしてパネル連結手段3は、各パネル本体5の水平方向Aに隣接する各幅方向両端部6a,6bを相互に連結するとともに、各パネル本体5の幅方向両端部6a,6bと上方または下方に配置されるパネル本体5の幅方向中央部7とを連結する。このように、水平方向Aに関しては、各パネル本体5の各幅方向両端部6a,6bが相互に連結され、鉛直方向Bに関しては、各パネル本体5の幅方向両端部6a,6bと、前記上方または下方に配置されるパネル本体5の幅方向中央部7とが連結されるので、各パネル本体5に作用する土圧、水圧、地震時の慣性力などの荷重に対して、隣接する各パネル本体5同士の連結強度を大きくして確実に各パネル本体5に荷重を分散させ、土留壁本体2に局部的に大きな応力が発生することが防がれ、高い剛性を有する土留壁本体2を実現することができる。
【0055】
また各アンカーボルト36にナット39を螺着して、各左右連結部材37および各上下連結部材38が各アンカーボルト36に固定されるので、各左右連結部材37および各上下連結部材38は、各アンカーボルト36に対して着脱可能である。したがって、土留壁本体2のうちの一部のパネル本体5が破損したときに、このパネル本体5の各アンカーボルト36に固定される各左右連結部材37および各上下連結部材38をはずし、このパネル本体5だけを取外すことができる。こうして破損したパネル本体5を取替えることができる。
【0056】
図8は、アンカー手段4を示す図である。アンカー手段4は、引張部材10、係合部材81、固定部材82および杭83を含む。アンカー手段4は、引張部材10、係合部材81、固定部材82および杭83が協働して、土留壁本体2の転倒および滑動を防止する。
【0057】
引張部材10は、埋込み補助部52、張架部86および連結具87を含む。埋込み補助部52は、複数の環状片が相互に鎖状に連結されたチェーンから成る。この埋込み補助部52の一端の環状片には、係止部材51が挿通する。こうして埋込み補助部52が係止部材51に係止される。埋込み補助部52は、少なくとも1つの環状片が前記パネル本体5の背面45から突出して変位自在に垂下して設けられる。埋込み補助部52がこのように設けられるので、裏込め材の転圧時に埋込み補助部52の付け根部分を取巻くコンクリートが押圧されて部分的に破壊されることが防がれる。張架部86は、前記埋込み補助部52と同様のチェーンから成る。埋込み補助部52の他端の環状片と張架部86の一端の環状片とは、連結具87によって連結される。この連結具87は、たとえばシャックルである。
【0058】
連結具87によって埋込み補助部52に張架部86が連結されることによって、各パネル本体5に各複数の引張部材10が連結され、各パネル本体5の背後に各複数の引張部材10が敷設される。これらの引張部材10は、敷設された状態では、各パネル本体5から後方へ延ばされ、相互に平行である。
【0059】
水平方向Aに間隔をあけて並ぶ複数の引張部材10の各張架部86には、直交する方向に各張架部86間にわたって係合部材81が挿通する。係合部材81は、丸鋼から成る長尺状の部材である。この係合部材81は、各引張部材10に関して、1本だけ挿通して設けられてもよいし、複数本、挿通して設けられてもよい。
【0060】
引張部材10の他端部8bには、固定部材82が連結される。固定部材82は、山形鋼から成る部材であり、水平方向Aに平行に設けられる。この固定部材82よりも前方に、固定部材82の前方への変位を阻止するために、杭83が、背後土9に打ち込まれて設けられる。
【0061】
このように土留壁本体2には、転倒および滑動などに対する安定性を確保するために、アンカー手段4が設けられる。このアンカー手段4は、土留壁本体2の背後に収容される背後土9中に埋設される複数の鎖状の引張部材10を有する。鎖状の引張部材10は、各パネル本体5に一端部8aが連結されている。この鎖状の引張部材10は、鋼板などに比べて、背後土9に対する摩擦抵抗が大きいので、鎖状の引張部材10が、土留壁本体2から大きな引抜き力を受けても、背後土9から引抜かれてしまうことが防がれる。したがって土圧、水圧、地震時の慣性力などの荷重が作用する土留壁本体2をアンカー手段4によって確実に支持することができる。
【0062】
以上のように本実施の形態では、土留壁本体2の剛性を向上させ、かつこの土留壁本体2をアンカー手段4によって確実に支持することによって、土留構造体1として高い剛性を達成することができる。
【0063】
図9は、土留構造体1の施工手順を説明するためのフローチャートである。図10は、図9の施工手順を示す土留構造体1の簡略化した横断面図であり、図10(1)は施工開始前の状態を示し、図10(2)は、中間段のパネル本体5を設置する直前の状態を示す。図11は、図10に続く図9の施工手順を示す土留構造体1の簡略化した横断面図であり、図11(1)は最上段のパネル本体5を設置する直前の状態を示し、図11(2)は施工完了後の状態を示す。
【0064】
ステップa1において、土留構造体1の構築工事を開始すると、ステップa2に移る。ステップa2において、現地盤91を掘削することによって、図10(1)に仮想線で示されるような、施工基面11、均し底面12および掘削法面14〜16が形成される。次に、ステップa3において、図10(2)に示されるように、前記施工基面11上にたとえば砕石などによって実現される捨石材料を搬入して一定の厚みに敷設して基礎捨石部21を形成し、この基礎捨石部21上に、コンクリートを打設して硬化させることによって、基礎コンクリート部22を形成する。この基礎コンクリート部22上には、保持部材23を設置する。この後、均し底面12の上方に裏込め材を搬入して、この搬入した裏込め材を上方から転圧する。均し底面12上に厚みΔH1の第1層100aを形成する。このとき、図1の仮想線102で示されるように、最下段のパネル本体5が設置されるべき位置の背後でかつ基礎コンクリート部22の上面よりも上方の逆台形状の領域には、前記裏込め材を搬入せず、前記最下段のパネル本体5および防砂フィルタ33を取付けるための空間を確保しておく。
【0065】
次に、ステップa4において、最下段の各パネル本体5を保持部材23上の所定位置、たとえば図1の左右方向である幅方向中央部に相互に隣接して設置する。最下段の各パネル本体5を設置するとき、水平方向Aに隣接する各パネル本体5間には、第1目地材31を設ける。こうして最下段の各パネル本体5を設置した後、各パネル本体5の前方(図10(2)の左方)に、各パネル本体5を前方から支持する複数の支持部材92を、各パネル本体5と掘削法面14との間に設ける。これらの支持部材92によって、各パネル本体5の転倒が防止される。また、水平方向Aに隣接する各パネル本体5の相互に対向する各側部には、背後側から、各側部間にわたって上下に延びる帯状の防砂フィルタ33を設け、その後、前記背後の領域102に裏込め材を投入して第1層100aを形成する。
【0066】
次に、ステップa5において、最下段の各パネル本体5の背後に、この最下段の各パネル本体5に関して上段および下段のアンカー手段4を設置する。アンカー手段4を設置するには、まず、連結具87によって埋込み補助部52に張架部86を連結することによって、各パネル本体5に各複数の引張部材10を連結し、各パネル本体5の背後に各複数の引張部材10を敷設する。これらの引張部材10は、敷設された状態では、各パネル本体5から後方へ延ばされ、ほぼ全長にわたって第1層100aの表面101aに載置された状態で相互に平行である。その後、水平方向Aに間隔をあけて並ぶ複数の引張部材10の各張架部86には、直交する方向に係合部材81を各張架部86間にわたって挿通させる。さらに引張部材10の他端部8bには、固定部材82を連結し、この固定部材82よりも前方に、固定部材82の前方への変位を阻止するために、杭83を第1層100aに打ち込んで、設ける。
【0067】
こうして第1層100aの表面101a上に下段のアンカー手段4を設けた後、第1層100aの表面101aの上方に裏込め材を搬入して、この搬入した裏込め材を上方から転圧し、前記第1層100aの表面101aから高さΔH2の位置に中間面102を形成する。さらに中間面102の上方に裏込め材を搬入して、この搬入した裏込め材を上方から転圧し、中間面102から高さΔH3の位置に第2層100bの表面101bを形成する。このようにして第1層100a上に厚みΔH11の第2層100bを形成する。
【0068】
第2層100bを形成した後、第2層100bの表面101b上に上段のアンカー手段4を設ける。この第2層100bの表面101b上にアンカー手段4を設ける手順は、前述の第1層100aの表面101a上に設けた前述の下段のアンカー手段4の設置手順と同様である。
【0069】
このようにして最下段の各パネル本体5の背後に上段および下段のアンカー手段4を設置した後、ステップa6において、図11(1)に示されるように、最下段の各パネル本体5の上面46に第2目地材32を載置して、この第2目地材32が介在した状態で、中間段の各パネル本体5を、最下段の各パネル本体5に積重して設置する。この中間段の各パネル本体5は、最下段の各パネル本体5に対して、パネル本体5の幅Wの1/2の距離dだけ水平方向Aにずれた位置に、配置される。中間段の各パネル本体5を設置するとき、水平方向Aに隣接する各パネル本体5間に、第1目地材31を設ける。中間段の各パネル本体5を設置した後、水平方向Aに隣接する各パネル本体5の相互に対向する各側部には、背後側から、各側部間にわたって上下に延びる帯状の防砂フィルタ33を設ける。
【0070】
次に、ステップa7において、中間段の各パネル本体5と最下段の各パネル本体5とを、パネル連結手段3によって連結する。この後、第2層100b上に第3層100cを形成する。第3層100cを形成する手順は、第2層100bの形成手順と同様である。
【0071】
第3層100cを形成した後、ステップa8において、中間段の各パネル本体5の背後に上段および下段のアンカー手段4を設置する。中間段のパネル本体5の背後に上段および下段のアンカー手段4を設置する手順は、前述の最下段の各パネル本体5の背後に設けた上段および下段のアンカー手段4の設置手順と同様である。
【0072】
中間段の各パネル本体5の背後に上段および下段のアンカー手段4を設置した後、ステップa9において、図11(2)に示されるように、中間段の各パネル本体5の上面46に第2目地材32を載置して、この第2目地材32が介在した状態で、最上段の各パネル本体5を、中間段の各パネル本体5に積重して設置する。この最上段の各パネル本体5は、中間段の各パネル本体5に対して、パネル本体5の幅Wの1/2の距離dだけ水平方向Aにずれた位置に、配置される。最上段の各パネル本体5を設置するとき、水平方向Aに隣接する各パネル本体5間に、第1目地材31を設ける。最上段の各パネル本体5を設置した後、水平方向Aに隣接する各パネル本体5の相互に対向する各側部には、背後側から、各側部間にわたって上下に延びる帯状の防砂フィルタ33を設ける。
【0073】
次に、ステップa10において、最上段の各パネル本体5と中間段の各パネル本体5とを、パネル連結手段3によって連結する。この後、中間段の各パネル本体5の背後に上段および下段のアンカー手段4を設置する際に形成された第4層100d上に、第5層100eを形成する。第5層100eを形成する手順は、第2層100bの形成手順と同様である。
【0074】
第5層100eを形成した後、ステップa11において、最上段の各パネル本体5の背後に上段および下段のアンカー手段4を設置する。最上段のパネル本体5の背後に上段および下段のアンカー手段4を設置する手順は、前述の最下段の各パネル本体5の背後に設けた上段および下段のアンカー手段4の設置手順と同様である。
【0075】
最上段の各パネル本体5の背後に上段および下段のアンカー手段4を設置した後、ステップa12において、最上段の各パネル本体5の背後に上段および下段のアンカー手段4を設置する際に形成された第6層100f上にさらに裏込め材を搬入して、この搬入した裏込め材を上方から転圧して、第7層100gを形成し、前記各層100a〜100gから成る背後土9の上部を整地する。背後土9の上部を整地した後、支持部材92を取外し、最下段の各パネル本体5の前方に土砂を搬入して、この搬入した土砂を上方から転圧し、前面土40を形成する。このようにして土留構造体1が構築され、ステップa13に進んで土留構造体1の構築工事を終了する。
【0076】
前述の本実施の形態では、各パネル本体5を鉛直方向Bに3段、積重したが、本発明の実施の他の形態では、最下段と最上段との間に配置される中間のパネル本体5を複数段、設けることによって、各パネル本体5を鉛直方向Bに4段以上積重した土留構造体を構築することも可能である。
【0077】
図12は、本発明の実施のさらに他の形態の土留構造体のパネル連結手段111を示す図である。本実施の形態の土留構造体は、図1〜図11に示される前述の実施の形態の土留構造体1に類似し、対応する部分には同一の参照符を付す。本実施の形態の土留構造体において、パネル連結手段111は、前述の左右連結部材37および上下連結部材38に代えて、連結部材112を有する。
【0078】
連結部材112は、土留壁本体2の背後側(図12の紙面に垂直手前側)から見た形状が略正方形である板状の金属、たとえば構造用鋼板から成る。連結部材112の4隅近傍には、アンカーボルト36が挿通される貫通孔113および切欠き114が形成される。貫通孔113は、連結部材112の鉛直方向B一方側の側部の水平方向A両端部に1つずつ形成される。貫通孔113は、連結部材112を厚み方向に貫通する。切欠き114は、連結部材112の鉛直方向B他方側の側部の水平方向A両端部に1つずつ形成される。
【0079】
前記鉛直方向B一方側は、1つのパネル本体5の図12の左右方向である幅方向中央部の下部に選ばれ、前記鉛直方向B他方側は、前記1つのパネル本体5の下段に配置され、水平方向Aに隣接する2つのパネル本体5の相互に対向する各側部の上部に選ばれる。また、前述の図2に示されるように、パネル本体5の幅方向中央部の上部に上段の2つのパネル本体5の各側部が配置される箇所に関しては、図12に示す連結部材112の配置状態とは逆向き、すなわち前記鉛直方向B一方側は、1つのパネル本体5の幅方向中央部の上部に選ばれ、前記鉛直方向B他方側は、前記1つのパネル本体5の上段に配置され、水平方向Aに隣接する2つのパネル本体5の相互に対向する各側部の下部に選ばれる。
【0080】
前記切欠き114は、鉛直方向B他方側の側面に向かうにつれて拡開して、鉛直方向B他方側に向かって開放される。この切欠き114によって、各パネル本体5が設置された状態において前記連結部材112によって相互に連結されるべき4本の各アンカーボルト36間の距離の連結箇所毎の誤差によるばらつき、特に鉛直方向Bの誤差によるばらつきを、許容することができる。
【0081】
貫通孔113には、中央部左側ボルト55cおよび中央部右側ボルト55dが挿通され、切欠き114には、水平方向Aに隣接する各パネル本体5の右端部ボルト55dおよび左端部ボルト55aが挿通される。この後、座金115を介して各アンカーボルト36にナットが螺着される。こうして連結部材112が各アンカーボルト36に固定される。
【0082】
このようにしてパネル連結手段111は、各パネル本体5の水平方向Aに隣接する各幅方向両端部6a,6bを相互に連結するとともに、各パネル本体5の幅方向両端部6a,6bと上方または下方に配置されるパネル本体5の幅方向中央部7とを連結するので、図1〜図11に示される前述の実施の形態と同様の効果を達成することができる。
【0083】
図13は、本発明の実施のさらに他の形態の土留構造体121を示す横断面図であり、図14は土留構造体121の土留壁本体2を前面側から見た一部を示す図である。本実施の形態の土留構造体121は、図1〜図11に示される前述の実施の形態の土留構造体1に類似し、対応する部分には同一の参照符を付す。
【0084】
本実施の形態の土留構造体121は、パネル連結手段3に代えて、相互に鉛直方向Bに隣接する各パネル本体5間にわたって鉛直方向Bに挿入される複数の棒状の連結部材122によって、前記鉛直方向Bに隣接する各パネル本体5を連結するパネル連結手段123を有する。
【0085】
パネル連結手段123は、前記連結部材122および充填層124を含む。各パネル本体5には、各パネル本体5の上面46から下面47にわたって連通する複数の挿入孔125が予め形成される。挿入孔125は、パネル本体5のコンクリート層43の形成時に、たとえばさや管を用いて形成される。充填層124は、この各挿入孔125に前記連結部材122が挿入された状態で各挿入孔125内に充填されて硬化し、各パネル本体5と各連結部材122とを一体化する。このように充填層124によって、各パネル本体5と各パネル本体5に挿入された各連結部材122とが一体化されるので、パネル本体5と連結部材122との間の間隙をなくして、各パネル本体5間のずれを可及的に抑制することができる。
【0086】
図15は、図14の切断面線XV−XVから見た土留壁本体2を示す図であり、図16は図14の上方から似た土留壁本体2を示す図であり、図17は連結部材122を拡大して示す図である。
【0087】
連結部材122は、長尺の棒状の金属から成る。各連結部材122は、たとえば直径D11が19mm、長さL11が1000mmの丸鋼によって実現される。各連結部材122は、1つのパネル本体5の挿入孔125に挿入長ΔL1、挿入され、このパネル本体5の上面46よりも突出長ΔL2、上方に突出するように設けられる。前記1つのパネル本体5の上面46よりも上方に突出する部分は、前記1つのパネル本体5の上段に配置されるパネル本体5の挿入孔125に挿入される。挿入長ΔL1はたとえば700mmに選ばれ、突出長ΔL2はたとえば300mmに選ばれる。なお、最下段のパネル本体5については、長さが1300mmの連結部材が各パネル本体5内に挿入されている。
【0088】
この連結部材122が挿入される挿入孔125は、パネル本体5の厚み方向D3中央部に形成され、横幅方向D2に間隔をあけて並ぶ。挿入孔125は、パネル本体5の縦鉄筋41および横鉄筋42を避けて配置される。挿入孔125は、各パネル本体5に2つずつ設けられ、各挿入孔125は、近接する側面48a,48bから距離W31,W32の位置にそれぞれ配置される。この距離W31,W32は、たとえば497.5mmに選ばれる。挿入孔125の内径D12は、連結部材122の直径D11の2倍未満に選ばれ、たとえば28mmに選ばれる。
【0089】
各パネル本体5と各連結部材122とを一体化する充填層124は、たとえばモルタル、またはアスファルトを溶かしたアスファルトピッチなどの充填材によって実現される。
【0090】
パネル連結手段123は、1つのパネル本体5を設置した後、まず、このパネル本体5の挿入孔125に充填材を充填し、その後、充填材が充填された挿入孔125に前記連結部材122を挿入して、形成される。
【0091】
このように相互に鉛直方向Bに隣接する各パネル本体5が連結部材122によって連結されるので、各パネル本体5に作用する土圧、水圧、地震時の慣性力などの荷重に対して、相互に鉛直方向Bに隣接する各パネル本体5同士の連結強度を大きくして確実に各パネル本体5に荷重を分散させ、土留壁本体2に局部的に大きな応力が発生することが防がれ、高い剛性を有する土留壁本体2を実現することができる。したがって図1〜11に示される前述の実施の形態と同様の効果を達成することができる。
【0092】
本発明の実施のさらに他の形態では、図1〜図11に示される前述の実施の形態の土留構造体1のパネル連結手段3、および図13〜図17に示される前述の実施の形態の土留構造体121のパネル連結手段123の両者を用いて、各パネル本体を連結するようにしてもよい。これによって各パネル本体を大きな強度で連結することができ、土留壁本体の剛性をさらに向上することができる。
【0093】
図18は、本発明の実施のさらに他の形態の土留構造体131を示す横断面図である。本実施の形態の土留構造体131は、図1〜図11に示される実施の形態の土留構造体1に類似し、対応する部分には同一の参照符を付して示す。
【0094】
本実施の形態の土留構造体131は、相互に反対の方向に臨む土留壁本体2a,2bを有する。一方の土留壁本体2aの各パネル本体5に連結される引張部材10の他端部8bは、前述の実施の形態の固定部材82ではなく、他方の土留壁本体2bの各パネル本体5に連結される引張部材10の他端部8bに、連結具132によって連結される。本実施の形態の土留構造体131は、図1〜11に示される前述の実施の形態と同様の効果を達成することができる。
【0095】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、各パネル本体は偏平な直方体状であるので、前記従来の技術のブロック体に比べて、所定の重量で、土圧に対してより大きな受圧面積を有するパネル本体を実現することができる。この大きな受圧面積を有するパネル本体によって土留壁本体を構築することによって、前記従来の技術に比べて、所定の大きさの土留壁本体を構築するために必要なパネル本体の枚数を低減して、パネル本体を現場で順次的に所定位置に設置する際の設置作業回数を低減することができる。またこのようにパネル本体の設置作業回数を低減することができるので、施工期間を短縮することができる。
【0096】
水平方向に関しては、各パネル本体の各幅方向両端部が相互に連結され、鉛直方向に関しては、各パネル本体の幅方向両端部と、前記上方または下方に配置されるパネル本体の幅方向中央部とが連結されるので、各パネル本体に作用する土圧、水圧、地震時の慣性力などの荷重に対して、隣接する各パネル本体同士の連結強度を大きくして確実に各パネル本体に荷重を分散させ、土留壁本体に局部的に大きな応力が発生することが防がれ、高い剛性を有する土留壁本体を実現することができる。
【0097】
土留壁本体には、転倒および滑動などに対する安定性を確保するために、アンカー手段が設けられる。このアンカー手段は、土留壁本体の背後に収容される背後土中に埋設される複数の鎖状の引張部材を有する。鎖状の引張部材は、各パネル本体に一端部が連結されている。この鎖状の引張部材は、鋼板などに比べて、背後土に対する摩擦抵抗が大きいので、土圧、水圧、地震時の慣性力などの荷重が作用する土留壁本体をアンカー手段によって確実に支持することができる。
【0098】
このように土留壁本体の剛性を向上させ、かつこの土留壁本体をアンカー手段によって確実に支持することによって、土留構造体として高い剛性を達成することができる。
【0099】
また本発明によれば、各パネル本体は偏平な直方体状であるので、前記従来の技術のブロック体に比べて、所定の重量で、土圧に対してより大きな受圧面積を有するパネル本体を実現することができる。この大きな受圧面積を有するパネル本体によって土留壁本体を構築することによって、前記従来の技術に比べて、所定の大きさの土留壁本体を構築するために必要なパネル本体の枚数を低減して、パネル本体を現場で順次的に所定位置に設置する際の設置作業回数を低減することができる。またこのようにパネル本体の設置作業回数を低減することができるので、施工期間を短縮することができる。
【0100】
相互に鉛直方向に隣接する各パネル本体が複数の棒状の連結部材によって連結されるので、各パネル本体に作用する土圧、水圧、地震時の慣性力などの荷重に対して、相互に鉛直方向に隣接する各パネル本体同士の連結強度を大きくして確実に各パネル本体に荷重を分散させ、土留壁本体に局部的に大きな応力が発生することが防がれ、高い剛性を有する土留壁本体を実現することができる。
【0101】
土留壁本体には、転倒および滑動などに対する安定性を確保するために、アンカー手段が設けられる。このアンカー手段は、土留壁本体の背後に収容される背後土中に埋設される複数の鎖状の引張部材を有する。鎖状の引張部材は、各パネル本体に一端部が連結されている。この鎖状の引張部材は、鋼板などに比べて、背後土に対する摩擦抵抗が大きいので、土圧、水圧、地震時の慣性力などの荷重が作用する土留壁本体をアンカー手段によって確実に支持することができる。
【0102】
このように土留壁本体の剛性を向上させ、かつこの土留壁本体をアンカー手段によって確実に支持することによって、土留構造体として高い剛性を達成することができる。
【0103】
また本発明によれば、充填層によって、各パネル本体と各パネル本体に挿入された各連結部材とが一体化されるので、パネル本体と連結部材との間の間隙をなくして、各パネル本体間のずれを可及的に抑制することができる。
【0104】
また本発明によれば、各パネル本体に埋込まれ、各パネル本体の厚み方向に垂直な方向に延びる係止部材に、引張部材の一端部が係止される。この係止部材によって、引張部材からパネル本体に作用する力が分散するので、パネル本体に局部的に大きな応力が発生することが防がれ、パネル本体が破損して引張部材とパネル本体とが分離してしまうことが防がれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態の土留構造体1を示す横断面図である。
【図2】土留構造体1の土留壁本体2を背後側から見た一部の斜視図である。
【図3】パネル本体5を背後側から見た内部構造を示す図である。
【図4】パネル本体5の図3の左側から見た内部構造を示す図である。
【図5】パネル連結手段3を背後側から見た図である。
【図6】パネル連結手段3を側方から見た図である。
【図7】パネル連結手段3を上方から見た図である。
【図8】アンカー手段4を示す図である。
【図9】土留構造体1の施工手順を説明するためのフローチャートである。
【図10】図9の施工手順を示す土留構造体1の簡略化した横断面図であり、図10(1
)は施工開始前の状態を示し、図10(2)は、中間段のパネル本体5を設置す
る直前の状態を示す。
【図11】図10に続く図9の施工手順を示す土留構造体1の簡略化した横断面図であり
、図11(1)は最上段のパネル本体5を設置する直前の状態を示し、図11(
2)は施工完了後の状態を示す。
【図12】本発明の実施のさらに他の形態の土留構造体のパネル連結手段111を示す図
である。
【図13】本発明の実施のさらに他の形態の土留構造体121を示す横断面図である。
【図14】土留構造体121の土留壁本体2を前面側から見た一部を示す図である。
【図15】図14の切断面線XV−XVから見た土留壁本体2を示す図である。
【図16】図14の上方から似た土留壁本体2を示す図である。
【図17】連結部材122を拡大して示す図である。
【図18】本発明の実施のさらに他の形態の土留構造体131を示す横断面図である。
【符号の説明】
1,121,131 土留構造体
2 土留壁本体
3,111,123 パネル連結手段
4 アンカー手段
5 パネル本体
9 背後土
10 引張部材
51 係止部材
122 連結部材
124 充填層
125 挿入孔
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉛直で安定した土留壁面を形成するために好適に実施することができる土留構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の法面保護壁は、複数のブロック体を横方向に並べるとともに上下方向に積重して、構築される(たとえば、特許文献1参照)。ブロック体は、コンクリートから成り、直方体または立方体となった主体部と、この主体部の背面部の幅方向の中央部に突設される背方突部とを有する。背方突部は直方体または立方体となっており、背方突部の下端部は、主体部の下端よりも下方に突出して、係合部となっている。法面保護壁を構築するにあたっては、横方向に隣接するブロック体同士を主体部の側面部分で当接するとともに、上下方向に隣接するブロック体同士を横方向にずらした状態で上下面部分で相互に当接する。ブロック体の背方突部の下端部の係合部は、このブロック体の下において横方向に隣接する2個のブロック体の背方突部間に嵌め込まれる。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−70040号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の技術では、ブロック体は、主体部に加えて背方突部を有するので、重量が小さく、かつ土圧に対して大きな受圧面積を有するブロック体を実現することができない。したがって所定の大きさの法面保護壁を構築するために必要なブロック体の個数が多く、ブロック体を現場で順次的に所定位置に設置する際の設置作業回数が多いので、施工期間が長期化してしまうという問題がある。
【0005】
また、ブロック体の連結に関しては、ブロック体の背方突部の下端部の係合部が、このブロック体の下において横方向に隣接する2個のブロック体の背方突部間に嵌め込まれるだけであるので、隣接する各ブロック体同士の連結強度が小さい。したがって各ブロック体に作用する土圧、水圧、地震時の慣性力などの荷重に対して、各ブロック体に荷重を分散させることができず、法面保護壁に局部的に大きな応力が発生するので、剛性が低いという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、簡単な構成で、施工期間を短縮することができ、複数のパネル本体を大きな強度で連結して高い剛性を達成することができる土留構造体を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、偏平な直方体状のコンクリート製の複数のパネル本体を、水平方向に隣接して配置し、かつ鉛直方向に、パネル本体の幅の1/2の距離だけ水平方向にずれた位置に積重して構築される土留壁本体と、
各パネル本体の水平方向に隣接する各幅方向両端部を相互に連結するとともに、各パネル本体の幅方向両端部と上方または下方に配置されるパネル本体の幅方向中央部とを連結するパネル連結手段と、
各パネル本体に一端部が連結された状態で、土留壁本体の背後に収容される背後土中に埋設される複数の鎖状の引張部材を有するアンカー手段とを含むことを特徴とする土留構造体である。
【0008】
本発明に従えば、コンクリート製の複数のパネル本体が、水平方向に隣接して配置され、かつ鉛直方向に、パネル本体の幅の1/2の距離だけ水平方向にずれた位置に積重されて、土留壁本体が構築される。
【0009】
各パネル本体は偏平な直方体状であるので、前記従来の技術のブロック体に比べて、所定の重量で、土圧に対してより大きな受圧面積を有するパネル本体を実現することができる。この大きな受圧面積を有するパネル本体によって土留壁本体を構築することによって、前記従来の技術に比べて、所定の大きさの土留壁本体を構築するために必要なパネル本体の枚数を低減して、パネル本体を現場で順次的に所定位置に設置する際の設置作業回数を低減することができる。またこのようにパネル本体の設置作業回数を低減することができるので、施工期間を短縮することができる。
【0010】
各パネル本体は、パネル連結手段によって連結される。パネル連結手段は、各パネル本体の水平方向に隣接する各幅方向両端部を相互に連結するとともに、各パネル本体の幅方向両端部と上方または下方に配置されるパネル本体の幅方向中央部とを連結する。このように、水平方向に関しては、各パネル本体の各幅方向両端部が相互に連結され、鉛直方向に関しては、各パネル本体の幅方向両端部と、前記上方または下方に配置されるパネル本体の幅方向中央部とが連結されるので、各パネル本体に作用する土圧、水圧、地震時の慣性力などの荷重に対して、隣接する各パネル本体同士の連結強度を大きくして確実に各パネル本体に荷重を分散させ、土留壁本体に局部的に大きな応力が発生することが防がれ、高い剛性を有する土留壁本体を実現することができる。
【0011】
このような土留壁本体には、転倒および滑動などに対する安定性を確保するために、アンカー手段が設けられる。このアンカー手段は、土留壁本体の背後に収容される背後土中に埋設される複数の鎖状の引張部材を有する。鎖状の引張部材は、各パネル本体に一端部が連結されている。この鎖状の引張部材は、鋼板などに比べて、背後土に対する摩擦抵抗が大きいので、鎖状の引張部材が、土留壁本体から大きな引抜き力を受けても、背後土から引抜かれてしまうことが防がれる。したがって土圧、水圧、地震時の慣性力などの荷重が作用する土留壁本体をアンカー手段によって確実に支持することができる。
【0012】
このように土留壁本体の剛性を向上させ、かつこの土留壁本体をアンカー手段によって確実に支持することによって、土留構造体として高い剛性を達成することができる。
【0013】
また本発明は、偏平な直方体状のコンクリート製の複数のパネル本体を、水平方向に隣接して配置し、かつ鉛直方向に、パネル本体の幅の1/2の距離だけ水平方向にずれた位置に積重して構築される土留壁本体と、
相互に鉛直方向に隣接する各パネル本体間にわたって鉛直方向に挿入される複数の棒状の連結部材によって、前記鉛直方向に隣接する各パネル本体を連結するパネル連結手段と、
各パネル本体に一端部が連結された状態で、土留壁本体の背後に収容される背後土中に埋設される複数の鎖状の引張部材を有するアンカー手段とを含むことを特徴とする土留構造体である。
【0014】
本発明に従えば、コンクリート製の複数のパネル本体が、水平方向に隣接して配置され、かつ鉛直方向に、パネル本体の幅の1/2の距離だけ水平方向にずれた位置に積重されて、土留壁本体が構築される。
【0015】
各パネル本体は偏平な直方体状であるので、前記従来の技術のブロック体に比べて、所定の重量で、土圧に対してより大きな受圧面積を有するパネル本体を実現することができる。この大きな受圧面積を有するパネル本体によって土留壁本体を構築することによって、前記従来の技術に比べて、所定の大きさの土留壁本体を構築するために必要なパネル本体の枚数を低減して、パネル本体を現場で順次的に所定位置に設置する際の設置作業回数を低減することができる。またこのようにパネル本体の設置作業回数を低減することができるので、施工期間を短縮することができる。
【0016】
各パネル本体は、パネル連結手段によって連結される。パネル連結手段は、相互に鉛直方向に隣接する各パネル本体間にわたって鉛直方向に挿入される複数の棒状の連結部材によって、前記鉛直方向に隣接する各パネル本体を連結する。このように相互に鉛直方向に隣接する各パネル本体が複数の棒状の連結部材によって連結されるので、各パネル本体に作用する土圧、水圧、地震時の慣性力などの荷重に対して、相互に鉛直方向に隣接する各パネル本体同士の連結強度を大きくして確実に各パネル本体に荷重を分散させ、土留壁本体に局部的に大きな応力が発生することが防がれ、高い剛性を有する土留壁本体を実現することができる。
【0017】
このような土留壁本体には、転倒および滑動などに対する安定性を確保するために、アンカー手段が設けられる。このアンカー手段は、土留壁本体の背後に収容される背後土中に埋設される複数の鎖状の引張部材を有する。鎖状の引張部材は、各パネル本体に一端部が連結されている。この鎖状の引張部材は、鋼板などに比べて、背後土に対する摩擦抵抗が大きいので、鎖状の引張部材が、土留壁本体から大きな引抜き力を受けても、背後土から引抜かれてしまうことが防がれる。したがって土圧、水圧、地震時の慣性力などの荷重が作用する土留壁本体をアンカー手段によって確実に支持することができる。
【0018】
このように土留壁本体の剛性を向上させ、かつこの土留壁本体をアンカー手段によって確実に支持することによって、土留構造体として高い剛性を達成することができる。
【0019】
また本発明は、前記各パネル本体には、各パネル本体の上面から下面にわたって連通する複数の挿入孔が形成され、
前記パネル連結手段は、各挿入孔に前記連結部材が挿入された状態で各挿入孔内に充填されて硬化し、各パネル本体と各連結部材とを一体化する充填層を含むことを特徴とする。
【0020】
本発明に従えば、充填層によって、各パネル本体と各パネル本体に挿入された各連結部材とが一体化されるので、パネル本体と連結部材との間の間隙をなくして、各パネル本体間のずれを可及的に抑制することができる。
【0021】
また本発明は、前記引張部材の一端部は、前記各パネル本体に埋込まれ、各パネル本体の厚み方向に垂直な方向に延びる係止部材に係止されることを特徴とする。
【0022】
本発明に従えば、各パネル本体に埋込まれ、各パネル本体の厚み方向に垂直な方向に延びる係止部材に、引張部材の一端部が係止される。この係止部材によって、引張部材からパネル本体に作用する力が分散するので、パネル本体に局部的に大きな応力が発生することが防がれ、パネル本体が破損して引張部材とパネル本体とが分離してしまうことが防がれる。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の一形態の土留構造体1を示す横断面図であり、図2は土留構造体1の土留壁本体2を背後側から見た一部の斜視図である。土留構造体1は、土留壁本体2、パネル連結手段3およびアンカー手段4を含んで構成される。
【0024】
土留壁本体2は、偏平な直方体状のコンクリート製の複数のパネル本体5を、図1の紙面に垂直な予め定める計画線(図示せず)に沿って水平方向Aに隣接して配置し、かつ鉛直方向Bに、パネル本体5の幅Wの1/2の距離d(d=W/2)だけ水平方向Aにずれた位置に積重して、構築される。パネル連結手段3は、各パネル本体5の水平方向Aに隣接する各幅方向両端部6a,6bを相互に連結するとともに、各パネル本体5の幅方向両端部6a,6bと上方または下方に配置されるパネル本体5の幅方向中央部7とを連結する。アンカー手段4は、各パネル本体5に一端部8aが連結された状態で、土留壁本体2の背後に収容される背後土9中に埋設される複数の鎖状の引張部材10を有する。
【0025】
本実施の形態においては、図1の紙面に垂直な方向を水平方向Aとし、図1の上下方向を鉛直方向Bとし、図1の左右方向を前後方向Cとする。また、パネル本体5の幅Wとは、図1の紙面に垂直な横幅方向の長さをいう。
【0026】
土留構造体1は、略水平な施工基面11上および均し底面12上に構築される。施工基面11および均し底面12は、土留構造体1を構築すべき予め定める構築位置の横断面形状および縦断面形状に基づいて決定される。施工基面11および均し底面12は、所定の縦断勾配を有し、施工基面11は、前方現地盤面13よりも低く、また均し底面12は、前方現地盤面13よりも低く、かつ施工基面11よりも高い位置に形成される。施工基面11の前方現地盤面13からの根入れ深さH41は、たとえばH41=0.5〜2.5m程度に選ばれ、均し底面12は、施工基面11からたとえば高さH42=0.1〜0.4m程度、上方に形成される。
【0027】
施工基面11の図1の左方寄りの前縁には、前方に向かうにつれて上方に傾斜する掘削法面14が連なり、この掘削法面14の上端は、前記前方現地盤面13に連なる。施工基面11の図1の右方寄りの後縁には、後方に向かうにつれて上方に傾斜する掘削法面15が連なり、この掘削法面15の上端は、均し底面12に連なる。均し底面12の後縁には、後方に向かうにつれて上方に傾斜する掘削法面16が連なる。
【0028】
施工基面11上には、基礎捨石部21が形成される。この基礎捨石部21は、たとえば砕石などによって実現される捨石材料から成る。基礎捨石部21上には、基礎コンクリート部22が形成される。基礎捨石部21および基礎コンクリート部22は、土留壁本体2を下方から支持する。基礎捨石部21の前後方向Cの幅T1はたとえば600mm程度に選ばれ、基礎捨石部21の高さ方向の距離H31はたとえば200mm程度に選ばれる。基礎コンクリート部22の前後方向Cの幅T2はたとえば400mm程度に選ばれ、基礎コンクリート部22の高さ方向の距離H32はたとえば200mm程度に選ばれる。
【0029】
基礎コンクリート部22上には、保持部材23が設置される。保持部材23は、水平方向Aに延びる底板部24と、底板部24の前縁に連なり、上方に延びる前板部25と、底板部24の後縁に連なり、上方に延びる後板部26と、底板部24の後縁に連なり、後方に延びる固定補助部27とを含む。保持部材23は、前板部25と後板部26とが最下段のパネル本体5の下部をその厚み方向両側から挟むようにして嵌り込み、基礎コンクリート部22上で最下段のパネル本体5を垂直に保持する。前記固定補助部27には、その厚み方向に貫通する貫通孔が設けられる。基礎コンクリート部22には、たとえばドリルによって、上面から下方に向かって窪む複数の孔が形成される。保持部材23を基礎コンクリート部22上の所定位置に載置した状態において、前記各孔は、前記固定補助部27の各貫通孔と同軸である。これらの孔には、保持部材23を基礎コンクリート部22上の所定位置に載置した状態で、たとえばハンマによって、アンカー部材28が打ち込まれる。こうして打ち込まれたアンカー部材28は、一端部が前記固定補助部27よりも上方に突出している。このようにして基礎コンクリート部22に設けられる保持部材23によって、最下段のパネル本体5の転倒が防止され、基礎コンクリート部22上にパネル本体5を正確に位置決めして、安定した状態で設置することができる。
【0030】
土留壁本体2の水平方向Aに隣接する各パネル本体5間には、第1目地材31が介在する。第1目地材31は、たとえばスポンジ状の発泡ゴムから成る。この第1目地材31の厚みT11は、5mm程度である。土留壁本体2の鉛直方向Bに隣接する各パネル本体5間には、第2目地材32が介在する。第2目地材32は、たとえば硬質天然ゴムから成る。この第2目地材32の厚みT12は、5mm程度である。第1および第2目地材31,32は、隣接する一方のパネル本体5から他方のパネル本体5に近接する方向に力が作用したとき、この力を吸収して他方のパネル本体5に伝えられる力を緩和し、各パネル本体5に割れおよび欠けが発生することを防止することができる。
【0031】
水平方向Aに隣接する各パネル本体5の相互に対向する各側部の背面には、帯状の防砂フィルタ33が前記各側部間にわたって上下に延びて設けられる。この防砂フィルタ33は、水平方向Aに隣接する各パネル本体5間の隙間から、背後土9として搬入される砂などの裏込め材が前方へ流出することを防止する。
【0032】
パネル連結手段3は、アンカーボルト36、左右連結部材37、上下連結部材38およびナット39を含む。左右連結部材37および上下連結部材38にアンカーボルト36を挿通させ、ナット39をアンカーボルト39に螺着して、左右連結部材37および上下連結部材38をアンカーボルト39に固定することによって、相互に隣接する各パネル本体5が連結される。
【0033】
土留壁本体2の背後(図1の右方)には、背後土9が収容される。この背後土9は、たとえば裏込め材が搬入され、この搬入された裏込め材が上方から転圧されることによって形成される。裏込め材は、砂質土の含有率が高い土砂が好ましい。引張部材10は、パネル本体5に一端部8aが連結され、背後土9中で、後方に向かって延びる。最下段のパネル本体5の下部の前方には、前面土40が収容される。この前面土40は、土砂が搬入され、この搬入された土砂が上方から転圧されることによって形成される。
【0034】
図3は、パネル本体5を背後側から見た内部構造を示す図であり、図4はパネル本体5の図3の左側から見た内部構造を示す図である。パネル本体5は、縦幅方向D1に延びる複数の縦鉄筋41と、縦幅方向D1に直交する横幅方向D2に延びる複数の横鉄筋42と、縦鉄筋41および横鉄筋42を覆うコンクリート層43とを含む。
【0035】
本実施の形態においては、図3の上下方向を縦幅方向D1とし、図3の左右方向を横幅方向D2とし、図3の紙面に垂直な方向を厚み方向D3とする。
【0036】
複数の縦鉄筋41および複数の横鉄筋42によって、格子状の格子体が構成される。各縦鉄筋41は、長尺の棒状の金属から成り、たとえば直径が13mm、長さが900mmの異形鉄筋によって実現される。各縦鉄筋41は、各パネル本体5にたとえば19本、設けられ、縦幅方向D1および横幅方向D2を含む仮想一平面上で横幅方向D2に間隔L1をあけて配置される。各縦鉄筋41の間隔L1は、たとえば100mmに選ばれる。各横鉄筋42は、長尺の棒状の金属から成り、たとえば直径が13mm、長さが1900mmの異形鉄筋によって実現される。各横鉄筋42は、各パネル本体5にたとえば9本、設けられ、縦幅方向D1および横幅方向D2を含む仮想一平面上で縦幅方向D1に間隔L2をあけて配置される。各横鉄筋42の間隔L2は、たとえば100mmに選ばれる。各横鉄筋42は、各縦鉄筋41に対して、厚み方向D3の一方側に配置される。
【0037】
コンクリート層43は、偏平な直方体状である。このコンクリート層43は、厚み方向D3に垂直で、かつ各横鉄筋42に対して厚み方向D3の一方側に形成される前面44と、この前面44と反対の方向に臨む背面45と、縦幅方向D1に垂直で、かつ設置された状態において上方に臨む上面46と、この上面46と反対の方向に臨む下面47と、横幅方向D2に垂直で、かつ相互に反対の方向に臨む側面48a,48bとを含む。本実施の形態では、図3の左方に臨む側面を参照符48aで示し、図3の右方に臨む側面を参照符48bで示す。
【0038】
パネル本体5の縦幅方向D1の長さである縦幅H1は、たとえば995mmに選ばれる。パネル本体5の横幅方向D2の長さである横幅Wは、たとえば1995mmに選ばれる。パネル本体5の厚み方向D3の長さである厚みT13は、たとえば140mmに選ばれる。
【0039】
このように各パネル本体5は偏平な直方体状であるので、前記従来の技術のブロック体に比べて、所定の重量で、土圧に対してより大きな受圧面積を有するパネル本体5を実現することができる。この大きな受圧面積を有するパネル本体5によって土留壁本体2を構築することによって、前記従来の技術に比べて、所定の大きさの土留壁本体2を構築するために必要なパネル本体5の枚数を低減して、パネル本体5を現場で順次的に所定位置に設置する際の設置作業回数を低減することができる。またこのようにパネル本体5の設置作業回数を低減することができるので、施工期間を短縮することができる。
【0040】
このようなパネル本体5には、アンカーボルト36、係止部材51、埋込み補助部52および吊り金具53が設けられる。
【0041】
アンカーボルト36は、パネル本体5の背面45から一部が突出する。アンカーボルト36は、パネル本体5の横幅方向D2両端部間の中央を含み、かつ横幅方向D2に垂直な対称面54に関して、図3において左右対称に配置される。アンカーボルト36は、パネル本体5の設置状態における上部に配置される複数の上部アンカーボルトと、パネル本体5の設置状態における下部に配置される複数の下部アンカーボルトとを含む。各上部アンカーボルトと上面46との間の距離H11は、たとえば150mmに選ばれる。各下部アンカーボルトと下面との間の距離H12は、たとえば150mmに選ばれる。
【0042】
上部アンカーボルトおよび下部アンカーボルトは、左端部ボルト55a、右端部ボルト55b、中央部左側ボルト55cおよび中央部右側ボルト55dをそれぞれ含む。左端部ボルト55aは、パネル本体5の図3の左方寄りの左端部に配置される。右端部ボルト55bは、パネル本体5の図3の右方寄りの右端部に配置される。中央部左側ボルト55cは、パネル本体5の横幅方向D2両端部間の中央部の図3の左方寄りに配置される。中央部右側ボルト55dは、パネル本体5の横幅方向D2両端部間の中央部の図3の右方寄りに配置される。左端部ボルト55aと側面48aとの間の距離W11は、たとえば150mmに選ばれる。右端部ボルト55bと側面48bとの間の距離W12は、たとえば150mmに選ばれる。中央部左側ボルト55cと中央部右側ボルト55dとの間の距離W13は、たとえば305mmに選ばれる。
【0043】
係止部材51は、パネル本体5に埋め込まれ、パネル本体5の厚み方向D3に垂直な方向である横幅方向D2に延びる。この係止部材51は、長尺の棒状の金属から成り、たとえば直径が10mm、長さが1900mmの異形鉄筋によって実現される。係止部材51は、各横鉄筋42の軸線を含む仮想一平面上に配置される。係止部材51は、パネル本体5の設置された状態において上部に配置される上部係止部材51aと、パネル本体5の設置された状態において下部に配置される下部係止部材51bとを含む。上部係止部材51aと上面46との間の距離H21は、たとえば247.5mmに選ばれる。下部係止部材51bと下面47との間の距離H22は、たとえば247.5mmに選ばれる。
【0044】
埋込み補助部52は、パネル本体5の背面45から一部が突出する。埋込み補助部52は、前記対称面54に関して、図3において左右対称に配置される。埋込み補助部52は、パネル本体5の設置された状態において上部に配置される複数の上部補助部と、パネル本体5の設置された状態において下部に配置される複数の下部補助部とを含む。各上部補助部は、上部係止部材51aに係止される。各下部補助部は、下部係止部材51bに係止される。
【0045】
上部補助部および下部補助部は、左端部補助部52a、右端部補助部52bおよび中央補助部52cをそれぞれ含む。左端部補助部52aは、パネル本体5の図3の左方寄りの左端部に配置される。右端部補助部52bは、パネル本体5の図3の右方寄りの右端部に配置される。中央補助部52cは、パネル本体5の横幅方向D2両端部間の中央部に配置される。左端部補助部52aと側面48aとの間の距離W21は、たとえば297.5mmに選ばれる。右端部補助部52bと側面48bとの間の距離W22は、たとえば297.5mmに選ばれる。
【0046】
このように各パネル本体5に埋込まれ、横幅方向D2に延びる係止部材51に、引張部材10の一端部8aを構成する埋込み補助部52が係止される。この係止部材8aによって、引張部材10からパネル本体5に作用する力が分散するので、パネル本体5に局部的に大きな応力が発生することが防がれ、パネル本体5が破損して引張部材10とパネル本体5とが分離してしまうことが防がれる。
【0047】
吊り金具53は、パネル本体5の上部の図3の左方寄りに形成され、図3の下方に向かって窪む凹所56a内に、突出して設けられる左側吊り金具53aと、パネル本体5の上部の図3の右方寄りに形成され、図3の下方に向かって窪む凹所56b内に、突出して設けられる右側吊り金具53bとを含む。この吊り金具53を、たとえばクレーンのフックにひっかけて、パネル本体5を所定位置に設置することができる。
【0048】
図5は、パネル連結手段3を背後側から見た図であり、図6はパネル連結手段3を側方から見た図であり、図7はパネル連結手段3を上方から見た図である。
【0049】
アンカーボルト36は、パネル本体5に埋め込まれる埋込み部61と、パネル本体5の背面45から垂直に突出する突出部62とを含む。埋込み部61は、パネル本体5の厚み方向D3に延在する厚み方向延在部63と、この厚み方向延在部63の一端部64に屈曲して連なり、パネル本体5の縦幅方向D1に延びる縦幅方向延在部65とを含む。縦幅方向延在部65は、パネル本体5の設置された状態において、厚み方向延在部63の一端部64から上方に向かって延びる。突起部62は、厚み方向延在部63の他端部66に連なる。この突起部62には、外ねじが刻設されている。このアンカーボルト36の突起部62にはナット39が螺着される。
【0050】
左右連結部材37は、長尺の板状の金属から成る。左右連結部材37の長手方向の両端部には、パネル本体5の設置された状態において水平方向Aに隣接するアンカーボルト36の突出部62が挿通される貫通孔67a,67bが形成される。左右連結部材37の各貫通孔67a,67bのいずれか一方は、左右連結部材37の長手方向に延びる長孔である。このように各貫通孔67a,67bのいずれか一方が長孔であることによって、各パネル本体5が設置された状態において前記左右連結部材37によって相互に連結されるべき2本の各アンカーボルト36間の距離の連結箇所毎の誤差によるばらつきを、許容することができる。
【0051】
上下連結部材38は金属から成る。上下連結部材38は、長尺の板状の第1板部68と、この第1板部68の幅方向一端部に連なり、第1板部68に対して垂直な第2板部69とを含む。上下連結部材38の第1板部68の長手方向の両端部には、パネル本体5の設置された状態において鉛直方向Bに隣接するアンカーボルト36の突出部62が挿通される貫通孔70a,70bが形成される。上下連結部材38の第1板部68の各貫通孔70a,70bのいずれか一方は、第1板部68の長手方向に延びる長孔である。このように各貫通孔70a,70bのいずれか一方が長孔であることによって、各パネル本体5が設置された状態において前記上下連結部材38によって相互に連結されるべき2本の各アンカーボルト36間の距離の連結箇所毎の誤差によるばらつきを、許容することができる。
【0052】
各パネル連結手段3は、前述のような左右連結部材37および上下連結部材38を2つずつ有する。一方の左右連結部材37の各貫通孔67a,67bには、水平方向Aに隣接する各パネル本体5の右端部ボルト55bおよび左端部ボルト55aが挿通される。他方の左右連結部材37の各貫通孔67a,67bには、中央部左側ボルト55cおよび中央部右側ボルト55dが挿通される。一方の上下連結部材38の各貫通孔70a,70bには、鉛直方向Bに隣接して配置される各パネル本体5の中央部左側ボルト55cおよび右端部ボルト55bが挿通される。他方の上下連結部材38の各貫通孔70a,70bには、鉛直方向Bに隣接して配置される各パネル本体5の中央部右側ボルト55dおよび左端部ボルト55aが挿通される。
【0053】
このようにして各左右連結部材37が各アンカーボルト36に係合され、さらに各上下連結部材38が各アンカーボルト36に係合された後、各アンカーボルト36にナット39が螺着される。こうして各左右連結部材37および各上下連結部材38が各アンカーボルト36に固定される。
【0054】
このようにしてパネル連結手段3は、各パネル本体5の水平方向Aに隣接する各幅方向両端部6a,6bを相互に連結するとともに、各パネル本体5の幅方向両端部6a,6bと上方または下方に配置されるパネル本体5の幅方向中央部7とを連結する。このように、水平方向Aに関しては、各パネル本体5の各幅方向両端部6a,6bが相互に連結され、鉛直方向Bに関しては、各パネル本体5の幅方向両端部6a,6bと、前記上方または下方に配置されるパネル本体5の幅方向中央部7とが連結されるので、各パネル本体5に作用する土圧、水圧、地震時の慣性力などの荷重に対して、隣接する各パネル本体5同士の連結強度を大きくして確実に各パネル本体5に荷重を分散させ、土留壁本体2に局部的に大きな応力が発生することが防がれ、高い剛性を有する土留壁本体2を実現することができる。
【0055】
また各アンカーボルト36にナット39を螺着して、各左右連結部材37および各上下連結部材38が各アンカーボルト36に固定されるので、各左右連結部材37および各上下連結部材38は、各アンカーボルト36に対して着脱可能である。したがって、土留壁本体2のうちの一部のパネル本体5が破損したときに、このパネル本体5の各アンカーボルト36に固定される各左右連結部材37および各上下連結部材38をはずし、このパネル本体5だけを取外すことができる。こうして破損したパネル本体5を取替えることができる。
【0056】
図8は、アンカー手段4を示す図である。アンカー手段4は、引張部材10、係合部材81、固定部材82および杭83を含む。アンカー手段4は、引張部材10、係合部材81、固定部材82および杭83が協働して、土留壁本体2の転倒および滑動を防止する。
【0057】
引張部材10は、埋込み補助部52、張架部86および連結具87を含む。埋込み補助部52は、複数の環状片が相互に鎖状に連結されたチェーンから成る。この埋込み補助部52の一端の環状片には、係止部材51が挿通する。こうして埋込み補助部52が係止部材51に係止される。埋込み補助部52は、少なくとも1つの環状片が前記パネル本体5の背面45から突出して変位自在に垂下して設けられる。埋込み補助部52がこのように設けられるので、裏込め材の転圧時に埋込み補助部52の付け根部分を取巻くコンクリートが押圧されて部分的に破壊されることが防がれる。張架部86は、前記埋込み補助部52と同様のチェーンから成る。埋込み補助部52の他端の環状片と張架部86の一端の環状片とは、連結具87によって連結される。この連結具87は、たとえばシャックルである。
【0058】
連結具87によって埋込み補助部52に張架部86が連結されることによって、各パネル本体5に各複数の引張部材10が連結され、各パネル本体5の背後に各複数の引張部材10が敷設される。これらの引張部材10は、敷設された状態では、各パネル本体5から後方へ延ばされ、相互に平行である。
【0059】
水平方向Aに間隔をあけて並ぶ複数の引張部材10の各張架部86には、直交する方向に各張架部86間にわたって係合部材81が挿通する。係合部材81は、丸鋼から成る長尺状の部材である。この係合部材81は、各引張部材10に関して、1本だけ挿通して設けられてもよいし、複数本、挿通して設けられてもよい。
【0060】
引張部材10の他端部8bには、固定部材82が連結される。固定部材82は、山形鋼から成る部材であり、水平方向Aに平行に設けられる。この固定部材82よりも前方に、固定部材82の前方への変位を阻止するために、杭83が、背後土9に打ち込まれて設けられる。
【0061】
このように土留壁本体2には、転倒および滑動などに対する安定性を確保するために、アンカー手段4が設けられる。このアンカー手段4は、土留壁本体2の背後に収容される背後土9中に埋設される複数の鎖状の引張部材10を有する。鎖状の引張部材10は、各パネル本体5に一端部8aが連結されている。この鎖状の引張部材10は、鋼板などに比べて、背後土9に対する摩擦抵抗が大きいので、鎖状の引張部材10が、土留壁本体2から大きな引抜き力を受けても、背後土9から引抜かれてしまうことが防がれる。したがって土圧、水圧、地震時の慣性力などの荷重が作用する土留壁本体2をアンカー手段4によって確実に支持することができる。
【0062】
以上のように本実施の形態では、土留壁本体2の剛性を向上させ、かつこの土留壁本体2をアンカー手段4によって確実に支持することによって、土留構造体1として高い剛性を達成することができる。
【0063】
図9は、土留構造体1の施工手順を説明するためのフローチャートである。図10は、図9の施工手順を示す土留構造体1の簡略化した横断面図であり、図10(1)は施工開始前の状態を示し、図10(2)は、中間段のパネル本体5を設置する直前の状態を示す。図11は、図10に続く図9の施工手順を示す土留構造体1の簡略化した横断面図であり、図11(1)は最上段のパネル本体5を設置する直前の状態を示し、図11(2)は施工完了後の状態を示す。
【0064】
ステップa1において、土留構造体1の構築工事を開始すると、ステップa2に移る。ステップa2において、現地盤91を掘削することによって、図10(1)に仮想線で示されるような、施工基面11、均し底面12および掘削法面14〜16が形成される。次に、ステップa3において、図10(2)に示されるように、前記施工基面11上にたとえば砕石などによって実現される捨石材料を搬入して一定の厚みに敷設して基礎捨石部21を形成し、この基礎捨石部21上に、コンクリートを打設して硬化させることによって、基礎コンクリート部22を形成する。この基礎コンクリート部22上には、保持部材23を設置する。この後、均し底面12の上方に裏込め材を搬入して、この搬入した裏込め材を上方から転圧する。均し底面12上に厚みΔH1の第1層100aを形成する。このとき、図1の仮想線102で示されるように、最下段のパネル本体5が設置されるべき位置の背後でかつ基礎コンクリート部22の上面よりも上方の逆台形状の領域には、前記裏込め材を搬入せず、前記最下段のパネル本体5および防砂フィルタ33を取付けるための空間を確保しておく。
【0065】
次に、ステップa4において、最下段の各パネル本体5を保持部材23上の所定位置、たとえば図1の左右方向である幅方向中央部に相互に隣接して設置する。最下段の各パネル本体5を設置するとき、水平方向Aに隣接する各パネル本体5間には、第1目地材31を設ける。こうして最下段の各パネル本体5を設置した後、各パネル本体5の前方(図10(2)の左方)に、各パネル本体5を前方から支持する複数の支持部材92を、各パネル本体5と掘削法面14との間に設ける。これらの支持部材92によって、各パネル本体5の転倒が防止される。また、水平方向Aに隣接する各パネル本体5の相互に対向する各側部には、背後側から、各側部間にわたって上下に延びる帯状の防砂フィルタ33を設け、その後、前記背後の領域102に裏込め材を投入して第1層100aを形成する。
【0066】
次に、ステップa5において、最下段の各パネル本体5の背後に、この最下段の各パネル本体5に関して上段および下段のアンカー手段4を設置する。アンカー手段4を設置するには、まず、連結具87によって埋込み補助部52に張架部86を連結することによって、各パネル本体5に各複数の引張部材10を連結し、各パネル本体5の背後に各複数の引張部材10を敷設する。これらの引張部材10は、敷設された状態では、各パネル本体5から後方へ延ばされ、ほぼ全長にわたって第1層100aの表面101aに載置された状態で相互に平行である。その後、水平方向Aに間隔をあけて並ぶ複数の引張部材10の各張架部86には、直交する方向に係合部材81を各張架部86間にわたって挿通させる。さらに引張部材10の他端部8bには、固定部材82を連結し、この固定部材82よりも前方に、固定部材82の前方への変位を阻止するために、杭83を第1層100aに打ち込んで、設ける。
【0067】
こうして第1層100aの表面101a上に下段のアンカー手段4を設けた後、第1層100aの表面101aの上方に裏込め材を搬入して、この搬入した裏込め材を上方から転圧し、前記第1層100aの表面101aから高さΔH2の位置に中間面102を形成する。さらに中間面102の上方に裏込め材を搬入して、この搬入した裏込め材を上方から転圧し、中間面102から高さΔH3の位置に第2層100bの表面101bを形成する。このようにして第1層100a上に厚みΔH11の第2層100bを形成する。
【0068】
第2層100bを形成した後、第2層100bの表面101b上に上段のアンカー手段4を設ける。この第2層100bの表面101b上にアンカー手段4を設ける手順は、前述の第1層100aの表面101a上に設けた前述の下段のアンカー手段4の設置手順と同様である。
【0069】
このようにして最下段の各パネル本体5の背後に上段および下段のアンカー手段4を設置した後、ステップa6において、図11(1)に示されるように、最下段の各パネル本体5の上面46に第2目地材32を載置して、この第2目地材32が介在した状態で、中間段の各パネル本体5を、最下段の各パネル本体5に積重して設置する。この中間段の各パネル本体5は、最下段の各パネル本体5に対して、パネル本体5の幅Wの1/2の距離dだけ水平方向Aにずれた位置に、配置される。中間段の各パネル本体5を設置するとき、水平方向Aに隣接する各パネル本体5間に、第1目地材31を設ける。中間段の各パネル本体5を設置した後、水平方向Aに隣接する各パネル本体5の相互に対向する各側部には、背後側から、各側部間にわたって上下に延びる帯状の防砂フィルタ33を設ける。
【0070】
次に、ステップa7において、中間段の各パネル本体5と最下段の各パネル本体5とを、パネル連結手段3によって連結する。この後、第2層100b上に第3層100cを形成する。第3層100cを形成する手順は、第2層100bの形成手順と同様である。
【0071】
第3層100cを形成した後、ステップa8において、中間段の各パネル本体5の背後に上段および下段のアンカー手段4を設置する。中間段のパネル本体5の背後に上段および下段のアンカー手段4を設置する手順は、前述の最下段の各パネル本体5の背後に設けた上段および下段のアンカー手段4の設置手順と同様である。
【0072】
中間段の各パネル本体5の背後に上段および下段のアンカー手段4を設置した後、ステップa9において、図11(2)に示されるように、中間段の各パネル本体5の上面46に第2目地材32を載置して、この第2目地材32が介在した状態で、最上段の各パネル本体5を、中間段の各パネル本体5に積重して設置する。この最上段の各パネル本体5は、中間段の各パネル本体5に対して、パネル本体5の幅Wの1/2の距離dだけ水平方向Aにずれた位置に、配置される。最上段の各パネル本体5を設置するとき、水平方向Aに隣接する各パネル本体5間に、第1目地材31を設ける。最上段の各パネル本体5を設置した後、水平方向Aに隣接する各パネル本体5の相互に対向する各側部には、背後側から、各側部間にわたって上下に延びる帯状の防砂フィルタ33を設ける。
【0073】
次に、ステップa10において、最上段の各パネル本体5と中間段の各パネル本体5とを、パネル連結手段3によって連結する。この後、中間段の各パネル本体5の背後に上段および下段のアンカー手段4を設置する際に形成された第4層100d上に、第5層100eを形成する。第5層100eを形成する手順は、第2層100bの形成手順と同様である。
【0074】
第5層100eを形成した後、ステップa11において、最上段の各パネル本体5の背後に上段および下段のアンカー手段4を設置する。最上段のパネル本体5の背後に上段および下段のアンカー手段4を設置する手順は、前述の最下段の各パネル本体5の背後に設けた上段および下段のアンカー手段4の設置手順と同様である。
【0075】
最上段の各パネル本体5の背後に上段および下段のアンカー手段4を設置した後、ステップa12において、最上段の各パネル本体5の背後に上段および下段のアンカー手段4を設置する際に形成された第6層100f上にさらに裏込め材を搬入して、この搬入した裏込め材を上方から転圧して、第7層100gを形成し、前記各層100a〜100gから成る背後土9の上部を整地する。背後土9の上部を整地した後、支持部材92を取外し、最下段の各パネル本体5の前方に土砂を搬入して、この搬入した土砂を上方から転圧し、前面土40を形成する。このようにして土留構造体1が構築され、ステップa13に進んで土留構造体1の構築工事を終了する。
【0076】
前述の本実施の形態では、各パネル本体5を鉛直方向Bに3段、積重したが、本発明の実施の他の形態では、最下段と最上段との間に配置される中間のパネル本体5を複数段、設けることによって、各パネル本体5を鉛直方向Bに4段以上積重した土留構造体を構築することも可能である。
【0077】
図12は、本発明の実施のさらに他の形態の土留構造体のパネル連結手段111を示す図である。本実施の形態の土留構造体は、図1〜図11に示される前述の実施の形態の土留構造体1に類似し、対応する部分には同一の参照符を付す。本実施の形態の土留構造体において、パネル連結手段111は、前述の左右連結部材37および上下連結部材38に代えて、連結部材112を有する。
【0078】
連結部材112は、土留壁本体2の背後側(図12の紙面に垂直手前側)から見た形状が略正方形である板状の金属、たとえば構造用鋼板から成る。連結部材112の4隅近傍には、アンカーボルト36が挿通される貫通孔113および切欠き114が形成される。貫通孔113は、連結部材112の鉛直方向B一方側の側部の水平方向A両端部に1つずつ形成される。貫通孔113は、連結部材112を厚み方向に貫通する。切欠き114は、連結部材112の鉛直方向B他方側の側部の水平方向A両端部に1つずつ形成される。
【0079】
前記鉛直方向B一方側は、1つのパネル本体5の図12の左右方向である幅方向中央部の下部に選ばれ、前記鉛直方向B他方側は、前記1つのパネル本体5の下段に配置され、水平方向Aに隣接する2つのパネル本体5の相互に対向する各側部の上部に選ばれる。また、前述の図2に示されるように、パネル本体5の幅方向中央部の上部に上段の2つのパネル本体5の各側部が配置される箇所に関しては、図12に示す連結部材112の配置状態とは逆向き、すなわち前記鉛直方向B一方側は、1つのパネル本体5の幅方向中央部の上部に選ばれ、前記鉛直方向B他方側は、前記1つのパネル本体5の上段に配置され、水平方向Aに隣接する2つのパネル本体5の相互に対向する各側部の下部に選ばれる。
【0080】
前記切欠き114は、鉛直方向B他方側の側面に向かうにつれて拡開して、鉛直方向B他方側に向かって開放される。この切欠き114によって、各パネル本体5が設置された状態において前記連結部材112によって相互に連結されるべき4本の各アンカーボルト36間の距離の連結箇所毎の誤差によるばらつき、特に鉛直方向Bの誤差によるばらつきを、許容することができる。
【0081】
貫通孔113には、中央部左側ボルト55cおよび中央部右側ボルト55dが挿通され、切欠き114には、水平方向Aに隣接する各パネル本体5の右端部ボルト55dおよび左端部ボルト55aが挿通される。この後、座金115を介して各アンカーボルト36にナットが螺着される。こうして連結部材112が各アンカーボルト36に固定される。
【0082】
このようにしてパネル連結手段111は、各パネル本体5の水平方向Aに隣接する各幅方向両端部6a,6bを相互に連結するとともに、各パネル本体5の幅方向両端部6a,6bと上方または下方に配置されるパネル本体5の幅方向中央部7とを連結するので、図1〜図11に示される前述の実施の形態と同様の効果を達成することができる。
【0083】
図13は、本発明の実施のさらに他の形態の土留構造体121を示す横断面図であり、図14は土留構造体121の土留壁本体2を前面側から見た一部を示す図である。本実施の形態の土留構造体121は、図1〜図11に示される前述の実施の形態の土留構造体1に類似し、対応する部分には同一の参照符を付す。
【0084】
本実施の形態の土留構造体121は、パネル連結手段3に代えて、相互に鉛直方向Bに隣接する各パネル本体5間にわたって鉛直方向Bに挿入される複数の棒状の連結部材122によって、前記鉛直方向Bに隣接する各パネル本体5を連結するパネル連結手段123を有する。
【0085】
パネル連結手段123は、前記連結部材122および充填層124を含む。各パネル本体5には、各パネル本体5の上面46から下面47にわたって連通する複数の挿入孔125が予め形成される。挿入孔125は、パネル本体5のコンクリート層43の形成時に、たとえばさや管を用いて形成される。充填層124は、この各挿入孔125に前記連結部材122が挿入された状態で各挿入孔125内に充填されて硬化し、各パネル本体5と各連結部材122とを一体化する。このように充填層124によって、各パネル本体5と各パネル本体5に挿入された各連結部材122とが一体化されるので、パネル本体5と連結部材122との間の間隙をなくして、各パネル本体5間のずれを可及的に抑制することができる。
【0086】
図15は、図14の切断面線XV−XVから見た土留壁本体2を示す図であり、図16は図14の上方から似た土留壁本体2を示す図であり、図17は連結部材122を拡大して示す図である。
【0087】
連結部材122は、長尺の棒状の金属から成る。各連結部材122は、たとえば直径D11が19mm、長さL11が1000mmの丸鋼によって実現される。各連結部材122は、1つのパネル本体5の挿入孔125に挿入長ΔL1、挿入され、このパネル本体5の上面46よりも突出長ΔL2、上方に突出するように設けられる。前記1つのパネル本体5の上面46よりも上方に突出する部分は、前記1つのパネル本体5の上段に配置されるパネル本体5の挿入孔125に挿入される。挿入長ΔL1はたとえば700mmに選ばれ、突出長ΔL2はたとえば300mmに選ばれる。なお、最下段のパネル本体5については、長さが1300mmの連結部材が各パネル本体5内に挿入されている。
【0088】
この連結部材122が挿入される挿入孔125は、パネル本体5の厚み方向D3中央部に形成され、横幅方向D2に間隔をあけて並ぶ。挿入孔125は、パネル本体5の縦鉄筋41および横鉄筋42を避けて配置される。挿入孔125は、各パネル本体5に2つずつ設けられ、各挿入孔125は、近接する側面48a,48bから距離W31,W32の位置にそれぞれ配置される。この距離W31,W32は、たとえば497.5mmに選ばれる。挿入孔125の内径D12は、連結部材122の直径D11の2倍未満に選ばれ、たとえば28mmに選ばれる。
【0089】
各パネル本体5と各連結部材122とを一体化する充填層124は、たとえばモルタル、またはアスファルトを溶かしたアスファルトピッチなどの充填材によって実現される。
【0090】
パネル連結手段123は、1つのパネル本体5を設置した後、まず、このパネル本体5の挿入孔125に充填材を充填し、その後、充填材が充填された挿入孔125に前記連結部材122を挿入して、形成される。
【0091】
このように相互に鉛直方向Bに隣接する各パネル本体5が連結部材122によって連結されるので、各パネル本体5に作用する土圧、水圧、地震時の慣性力などの荷重に対して、相互に鉛直方向Bに隣接する各パネル本体5同士の連結強度を大きくして確実に各パネル本体5に荷重を分散させ、土留壁本体2に局部的に大きな応力が発生することが防がれ、高い剛性を有する土留壁本体2を実現することができる。したがって図1〜11に示される前述の実施の形態と同様の効果を達成することができる。
【0092】
本発明の実施のさらに他の形態では、図1〜図11に示される前述の実施の形態の土留構造体1のパネル連結手段3、および図13〜図17に示される前述の実施の形態の土留構造体121のパネル連結手段123の両者を用いて、各パネル本体を連結するようにしてもよい。これによって各パネル本体を大きな強度で連結することができ、土留壁本体の剛性をさらに向上することができる。
【0093】
図18は、本発明の実施のさらに他の形態の土留構造体131を示す横断面図である。本実施の形態の土留構造体131は、図1〜図11に示される実施の形態の土留構造体1に類似し、対応する部分には同一の参照符を付して示す。
【0094】
本実施の形態の土留構造体131は、相互に反対の方向に臨む土留壁本体2a,2bを有する。一方の土留壁本体2aの各パネル本体5に連結される引張部材10の他端部8bは、前述の実施の形態の固定部材82ではなく、他方の土留壁本体2bの各パネル本体5に連結される引張部材10の他端部8bに、連結具132によって連結される。本実施の形態の土留構造体131は、図1〜11に示される前述の実施の形態と同様の効果を達成することができる。
【0095】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、各パネル本体は偏平な直方体状であるので、前記従来の技術のブロック体に比べて、所定の重量で、土圧に対してより大きな受圧面積を有するパネル本体を実現することができる。この大きな受圧面積を有するパネル本体によって土留壁本体を構築することによって、前記従来の技術に比べて、所定の大きさの土留壁本体を構築するために必要なパネル本体の枚数を低減して、パネル本体を現場で順次的に所定位置に設置する際の設置作業回数を低減することができる。またこのようにパネル本体の設置作業回数を低減することができるので、施工期間を短縮することができる。
【0096】
水平方向に関しては、各パネル本体の各幅方向両端部が相互に連結され、鉛直方向に関しては、各パネル本体の幅方向両端部と、前記上方または下方に配置されるパネル本体の幅方向中央部とが連結されるので、各パネル本体に作用する土圧、水圧、地震時の慣性力などの荷重に対して、隣接する各パネル本体同士の連結強度を大きくして確実に各パネル本体に荷重を分散させ、土留壁本体に局部的に大きな応力が発生することが防がれ、高い剛性を有する土留壁本体を実現することができる。
【0097】
土留壁本体には、転倒および滑動などに対する安定性を確保するために、アンカー手段が設けられる。このアンカー手段は、土留壁本体の背後に収容される背後土中に埋設される複数の鎖状の引張部材を有する。鎖状の引張部材は、各パネル本体に一端部が連結されている。この鎖状の引張部材は、鋼板などに比べて、背後土に対する摩擦抵抗が大きいので、土圧、水圧、地震時の慣性力などの荷重が作用する土留壁本体をアンカー手段によって確実に支持することができる。
【0098】
このように土留壁本体の剛性を向上させ、かつこの土留壁本体をアンカー手段によって確実に支持することによって、土留構造体として高い剛性を達成することができる。
【0099】
また本発明によれば、各パネル本体は偏平な直方体状であるので、前記従来の技術のブロック体に比べて、所定の重量で、土圧に対してより大きな受圧面積を有するパネル本体を実現することができる。この大きな受圧面積を有するパネル本体によって土留壁本体を構築することによって、前記従来の技術に比べて、所定の大きさの土留壁本体を構築するために必要なパネル本体の枚数を低減して、パネル本体を現場で順次的に所定位置に設置する際の設置作業回数を低減することができる。またこのようにパネル本体の設置作業回数を低減することができるので、施工期間を短縮することができる。
【0100】
相互に鉛直方向に隣接する各パネル本体が複数の棒状の連結部材によって連結されるので、各パネル本体に作用する土圧、水圧、地震時の慣性力などの荷重に対して、相互に鉛直方向に隣接する各パネル本体同士の連結強度を大きくして確実に各パネル本体に荷重を分散させ、土留壁本体に局部的に大きな応力が発生することが防がれ、高い剛性を有する土留壁本体を実現することができる。
【0101】
土留壁本体には、転倒および滑動などに対する安定性を確保するために、アンカー手段が設けられる。このアンカー手段は、土留壁本体の背後に収容される背後土中に埋設される複数の鎖状の引張部材を有する。鎖状の引張部材は、各パネル本体に一端部が連結されている。この鎖状の引張部材は、鋼板などに比べて、背後土に対する摩擦抵抗が大きいので、土圧、水圧、地震時の慣性力などの荷重が作用する土留壁本体をアンカー手段によって確実に支持することができる。
【0102】
このように土留壁本体の剛性を向上させ、かつこの土留壁本体をアンカー手段によって確実に支持することによって、土留構造体として高い剛性を達成することができる。
【0103】
また本発明によれば、充填層によって、各パネル本体と各パネル本体に挿入された各連結部材とが一体化されるので、パネル本体と連結部材との間の間隙をなくして、各パネル本体間のずれを可及的に抑制することができる。
【0104】
また本発明によれば、各パネル本体に埋込まれ、各パネル本体の厚み方向に垂直な方向に延びる係止部材に、引張部材の一端部が係止される。この係止部材によって、引張部材からパネル本体に作用する力が分散するので、パネル本体に局部的に大きな応力が発生することが防がれ、パネル本体が破損して引張部材とパネル本体とが分離してしまうことが防がれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態の土留構造体1を示す横断面図である。
【図2】土留構造体1の土留壁本体2を背後側から見た一部の斜視図である。
【図3】パネル本体5を背後側から見た内部構造を示す図である。
【図4】パネル本体5の図3の左側から見た内部構造を示す図である。
【図5】パネル連結手段3を背後側から見た図である。
【図6】パネル連結手段3を側方から見た図である。
【図7】パネル連結手段3を上方から見た図である。
【図8】アンカー手段4を示す図である。
【図9】土留構造体1の施工手順を説明するためのフローチャートである。
【図10】図9の施工手順を示す土留構造体1の簡略化した横断面図であり、図10(1
)は施工開始前の状態を示し、図10(2)は、中間段のパネル本体5を設置す
る直前の状態を示す。
【図11】図10に続く図9の施工手順を示す土留構造体1の簡略化した横断面図であり
、図11(1)は最上段のパネル本体5を設置する直前の状態を示し、図11(
2)は施工完了後の状態を示す。
【図12】本発明の実施のさらに他の形態の土留構造体のパネル連結手段111を示す図
である。
【図13】本発明の実施のさらに他の形態の土留構造体121を示す横断面図である。
【図14】土留構造体121の土留壁本体2を前面側から見た一部を示す図である。
【図15】図14の切断面線XV−XVから見た土留壁本体2を示す図である。
【図16】図14の上方から似た土留壁本体2を示す図である。
【図17】連結部材122を拡大して示す図である。
【図18】本発明の実施のさらに他の形態の土留構造体131を示す横断面図である。
【符号の説明】
1,121,131 土留構造体
2 土留壁本体
3,111,123 パネル連結手段
4 アンカー手段
5 パネル本体
9 背後土
10 引張部材
51 係止部材
122 連結部材
124 充填層
125 挿入孔
Claims (4)
- 偏平な直方体状のコンクリート製の複数のパネル本体を、水平方向に隣接して配置し、かつ鉛直方向に、パネル本体の幅の1/2の距離だけ水平方向にずれた位置に積重して構築される土留壁本体と、
各パネル本体の水平方向に隣接する各幅方向両端部を相互に連結するとともに、各パネル本体の幅方向両端部と上方または下方に配置されるパネル本体の幅方向中央部とを連結するパネル連結手段と、
各パネル本体に一端部が連結された状態で、土留壁本体の背後に収容される背後土中に埋設される複数の鎖状の引張部材を有するアンカー手段とを含むことを特徴とする土留構造体。 - 偏平な直方体状のコンクリート製の複数のパネル本体を、水平方向に隣接して配置し、かつ鉛直方向に、パネル本体の幅の1/2の距離だけ水平方向にずれた位置に積重して構築される土留壁本体と、
相互に鉛直方向に隣接する各パネル本体間にわたって鉛直方向に挿入される複数の棒状の連結部材によって、前記鉛直方向に隣接する各パネル本体を連結するパネル連結手段と、
各パネル本体に一端部が連結された状態で、土留壁本体の背後に収容される背後土中に埋設される複数の鎖状の引張部材を有するアンカー手段とを含むことを特徴とする土留構造体。 - 前記各パネル本体には、各パネル本体の上面から下面にわたって連通する複数の挿入孔が形成され、
前記パネル連結手段は、各挿入孔に前記連結部材が挿入された状態で各挿入孔内に充填されて硬化し、各パネル本体と各連結部材とを一体化する充填層を含むことを特徴とする請求項2記載の土留構造体。 - 前記引張部材の一端部は、前記各パネル本体に埋込まれ、各パネル本体の厚み方向に垂直な方向に延びる係止部材に係止されることを特徴とする請求項1または2記載の土留構造体。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002367001A JP2004197408A (ja) | 2002-12-18 | 2002-12-18 | 土留構造体 |
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JP2002367001A JP2004197408A (ja) | 2002-12-18 | 2002-12-18 | 土留構造体 |
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Publication Number | Publication Date |
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JP2004197408A true JP2004197408A (ja) | 2004-07-15 |
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ID=32764035
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JP (1) | JP2004197408A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013543941A (ja) * | 2010-11-26 | 2013-12-09 | テール アルメ アンテルナシオナル | 統合された圧縮性を伴う表面エレメント |
JP2015101913A (ja) * | 2013-11-27 | 2015-06-04 | 株式会社関三吉商店 | 津波避難施設 |
JP2019052513A (ja) * | 2017-09-19 | 2019-04-04 | 株式会社箱型擁壁研究所 | 擁壁 |
-
2002
- 2002-12-18 JP JP2002367001A patent/JP2004197408A/ja active Pending
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