JP2004197239A - 耐炎化炉 - Google Patents
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Abstract
【解決課題】設備費を低減でき、耐炎化繊維、ひいては炭素繊維の製造コストを下げることができる耐炎化炉を提供する。
【解決手段】前駆体繊維が連続的に走行せしめられる熱処理室と、前駆体繊維の走行方向に沿って複数個配設した、熱処理室に熱風を吹き出す熱風吹出ダクトおよび熱処理室から熱風を吸い込む熱風吸込ダクトと、各熱風吹出ダクトおよび各熱風吸込ダクトに共通の熱風加熱器および送風機を備えた熱風循環ダクトとを有し、かつ、前駆体繊維の走行方向に関して前駆体繊維の入口側から熱処理室の内容積の1/3までの部分に位置する熱風吹出ダクトに、循環される熱風の冷却手段を設けた。
【選択図】 図1
【解決手段】前駆体繊維が連続的に走行せしめられる熱処理室と、前駆体繊維の走行方向に沿って複数個配設した、熱処理室に熱風を吹き出す熱風吹出ダクトおよび熱処理室から熱風を吸い込む熱風吸込ダクトと、各熱風吹出ダクトおよび各熱風吸込ダクトに共通の熱風加熱器および送風機を備えた熱風循環ダクトとを有し、かつ、前駆体繊維の走行方向に関して前駆体繊維の入口側から熱処理室の内容積の1/3までの部分に位置する熱風吹出ダクトに、循環される熱風の冷却手段を設けた。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素繊維の製造に供する耐炎化繊維を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭素繊維は、よく知られているように、たとえばポリアクリロニトリル系繊維等の前駆体繊維(プリカーサ)を200〜350℃程度の比較的低温の酸化性雰囲気中で焼成して耐炎化した後(耐炎化繊維とした後)、1,000℃程度以上の高温の不活性雰囲気中で焼成して炭化することによって製造されている。耐炎化繊維は、このような炭素繊維の製造に供せられる。
【0003】
ところで、耐炎化処理は、発熱反応を伴う処理である。また、耐炎化反応は徐々に進行する。そのため、未だ耐炎化が進んでいない初期段階で前駆体繊維を高温に晒すと、前駆体繊維が発火したり糸切れを起こしたりするので、当初は熱処理温度を低く抑えることが必要になる。換言すれば、耐炎化処理は、熱処理温度が初期段階の温度に制約されるので、効率が悪い。
【0004】
かかる問題を解決しようとして、前駆体繊維の耐炎化の進行に合わせて熱処理温度を徐々に高く設定することができるよう、炉内を異なる温度に設定可能な複数個の熱処理室に区分してなる耐炎化炉が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
この従来の耐炎化炉は、複数個の熱処理室を有し、各熱処理室に対し、熱風を吹き出す熱風吹出ダクトおよび熱処理室から熱風を吸い込む熱風吸込ダクトと、熱風吹出ダクトと熱風吸込ダクトとを連結する、加熱器および送風機を備えた熱風循環ダクトとを設けている。すなわち、互いに独立した複数個の熱処理室を直列に配列した構成となっている。そのため、各熱処理室を、前駆体繊維が最初に処理される熱処理室は前駆体繊維が発火したり糸切れを起こしたりすることのない低い温度に、次段の熱処理室はそれよりも高い温度に、その次の段の熱処理室はさらに高い温度に、といったように各熱処理室を任意の温度に設定することができ、全体としてみた処理時間を短くできる。しかしながら、一方で、複数個の熱処理室を互いに独立させている、換言すれば、互いに独立した複数個の耐炎化炉を直列に配しているので、設備費が極めて高くなるという問題がある。設備費が高くなれば、当然、耐炎化繊維、ひいては炭素繊維の製造コストも高くなる。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−237723号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の耐炎化炉の上述した問題点を解決し、設備費を低減でき、耐炎化繊維、ひいては炭素繊維の製造コストを下げることができる耐炎化炉を提供するにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、前駆体繊維が連続的に走行せしめられる熱処理室を有し、かつ、その熱処理室の、前駆体繊維の走行方向に関して前駆体繊維の入口側から熱処理室の内容積の1/3までの部分の雰囲気温度を中央部分のそれよりも低くする手段を設けた耐炎化炉を提供する。雰囲気温度を低くする手段は、好ましくは、前駆体繊維の走行方向に関して前駆体繊維の入口側から熱処理室の内容積の1/3までの部分の雰囲気温度を中央部分のそれよりも少なくとも3℃低くする手段である。
【0009】
また、本発明は、前駆体繊維が連続的に走行せしめられる熱処理室と、前駆体繊維の走行方向に沿って複数個配設した、熱処理室に熱風を吹き出す熱風吹出ダクトおよび熱処理室から熱風を吸い込む熱風吸込ダクトと、各熱風吹出ダクトおよび各熱風吸込ダクトに共通の熱風加熱器および送風機を備えた熱風循環ダクトとを有し、かつ、前駆体繊維の走行方向に関して前駆体繊維の入口側から熱処理室の内容積の1/3までの部分に位置する熱風吹出ダクトに、循環される熱風の冷却手段を設けた耐炎化炉を提供する。熱風の冷却手段は、好ましくは、前駆体繊維の走行方向に関して前駆体繊維の入口側から熱処理室の内容積の1/3までの部分の雰囲気温度を中央部分のそれよりも少なくとも3℃低くする手段であり、また、たとえば、循環される熱風に外気を混合する手段のようなものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1において、耐炎化炉は、ポリアクリロニトリル系繊維、ピッチ系繊維、フェノール系繊維等の前駆体繊維1が連続的に走行せしめられる熱処理室2を有する。炉壁の外には、炉体の長さ方向(図の左右方向)に沿って複数個のガイドロール3が配置されており、前駆体繊維1は、これらのガイドロール3に導かれて熱処理室2内に出入を繰り返しながら全体として図面左方から右方に走行するようになっている。なお、図示しないが、前駆体繊維1は、紙面に対して垂直な方向に、複数本、互いに並行するように並べられていて(シート状になっていて)、複数本の前駆体繊維を一度に熱処理することができるようになっている。
【0011】
炉壁の外には、前駆体繊維1の全体流れの方向に沿って、複数個の、熱処理室2内に熱風を吹き出す熱風吹出ダクト4と熱処理室2内から熱風を吸い込む熱風吸込ダクト5とが配設されている。また、これら複数個の熱風吹出ダクト4と熱風吸込ダクト5は、これらに共通の熱風加熱器6と送風機7とを備えた循環ダクト8に連結されていて、熱処理室2内の熱風は熱風吸込ダクト5によって熱処理室2内から排出され、熱風加熱器6で加熱された後、送風機7によって熱風吹出ダクト4に送られ、熱処理室2内に循環されるようになっている。なお、図示しないが、これら熱風吹出ダクト4、熱風吸込ダクト5は、紙面に対して垂直な方向、すなわち、シート状をなす前駆体繊維1のシート幅方向に複数個配設されている。
【0012】
また、前駆体繊維1の走行方向に関して前駆体繊維1の入口側から炉体の長さの1/3までの部分、すなわち、熱処理室2の内容積の1/3までの部分に位置する熱風吹出ダクト4には、循環される熱風の冷却器9が設けられている。この冷却器9は、循環される熱風の温度を下げるもので、たとえば、常温の外気を熱風に混合する、周方向および長さ方向に多数個の外気吹出口を等配してなる多孔管や、同様に常温の外気を熱風に混合する気体ノズルや、水、その他の冷媒を流すことができるジャケットのようなものである。
【0013】
さて、熱処理室2内に導入された前駆体繊維1は、熱処理室2内を走行している間に熱風吹出ダクト4から吹き出される200〜350℃程度の熱風(加熱空気)によって熱処理され、耐炎化繊維となるのであるが、このとき、耐炎化反応に伴う発熱量の最も多い初期段階、すなわち、前駆体繊維1の走行方向に関して熱処理室2の内容積の1/3までの部分においては、冷却器9によって冷やされた熱風が熱処理室2内に供給される。そのため、初期段階の温度のみを下げることができて、初期段階に発生しやすい前駆体繊維1の発火や糸切れを防止しつつ耐炎化処理を進行させることができる。耐炎化処理がある程度進行すると、発熱量も減り、また、糸切れも起こりにくくなるので、その後の、熱処理室2の内容積の残りの2/3の部分においては、より高い温度で耐炎化処理を行うことができる。したがって、熱処理室2内の温度が発火や糸切れの虞があるために低い温度にせざるを得ない初期段階の温度に制約されなくなり、全体としてみた処理時間を短縮でき、耐炎化繊維、ひいては炭素繊維の製造コストを低減することができるようになる。
【0014】
上記において、前駆体繊維の走行方向に関して前駆体繊維の入口側から熱処理室の内容積のどの程度までの部分の温度を低くすればよいかは、熱処理室の大きさや、前駆体繊維の種類、太さ、走行速度や、熱処理室に対する前駆体繊維の出入回数、その他によっても異なるが、内容積の1/3までの部分を低くすることができれば十分である。
【0015】
また、前駆体繊維の走行方向に関して前駆体繊維の入口側から熱処理室の内容積の1/3までの部分の温度をどの程度低くするかについては、これもまた前駆体繊維の種類、太さ、走行速度や、熱処理室に対する前駆体繊維の出入回数、その他によっても異なるものの、熱処理室の中央部分の温度よりも少なくとも3℃低くなるようにするのが好ましい。
【0016】
さらに、ガイドロールは、熱処理室内に設置することも可能であるし、初期段階とその後の段階との熱処理時間が同じである必要もない。熱処理時間は、熱処理室への前駆体繊維の出入回数を変更したり、熱処理室の長さを変更したりすることで任意に変更できる。また、冷却器として多孔管を用いる場合、管の周方向における外気吹出口の配置を、たとえば45°ずつずらせておき、外気吹出口から吹き出される外気の流れが循環される熱風に対して向流になるようにすると、熱風の冷却を効率的に行えるようになる。
【0017】
また、上記においては、いわゆる横型耐炎化炉について説明したが、前駆体繊維が全体として下方から上方に向かって走行する、熱処理室が上下方向に延びる縦型耐炎化炉も全く同様に構成することができる。
【0018】
本発明の耐炎化炉によって得られた耐炎化繊維は、それを炭化炉に導き、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性雰囲気中にて1,000〜3,000℃程度の温度で焼成、炭化することによって炭素繊維とすることができる。
【0019】
【実施例および比較例】
(実施例)
図1に示した耐炎化炉を用い、100本の、単糸繊度が1.1dtex、単糸数が12,000本のポリアクリロニトリル系前駆体繊維を互いに並行するようにシート状に引き揃え、耐炎化処理した。
【0020】
耐炎化炉としては、熱処理室の長さが3m、容積が4m3の、横断面が方形の横型耐炎化炉を用いた。前駆体繊維の走行速度は3m/分とした。熱風の冷却は、熱風吹出ダクトを流れる熱風に外気を導入することによって行った。また、循環ダクト内を流れる熱風の温度は240℃に設定した。
【0021】
前駆体繊維の走行方向に関して前駆体繊維の入口側から熱処理室の内容積の1/3までの部分に位置する熱風吹出ダクトに流れる熱風に外気を吹き込み、その部分の熱処理室内の温度が237℃になるようにした。その結果、前駆体繊維の糸切れは発生しなかった。
【0022】
次いで、上記耐炎化繊維を炭化炉に導き、窒素ガス雰囲気中にて1,400℃で5分間焼成して炭化処理し、炭素繊維を得た。
(比較例)
上記実施例において、前駆体繊維の走行方向に関して前駆体繊維の入口側から熱処理室の内容積の1/3までの部分に位置する熱風吹出ダクトに流れる熱風に外気を吹き込まず、循環ダクトを流れる240℃の熱風をそのまま熱処理室内に送り込んだ。
【0023】
その結果、内容積の1/3までの部分の熱処理室内の温度は244℃と熱風温度よりも高くなり、100本の前駆体繊維中18本に糸切れが発生した。
【0024】
【発明の効果】
本発明に係る耐炎化炉は、前駆体繊維が連続的に走行せしめられる熱処理室を有し、かつ、その熱処理室の、前駆体繊維の走行方向に関して前駆体繊維の入口側から熱処理室の内容積の1/3までの部分の雰囲気温度を中央部分のそれよりも低くする手段を設けているので、各熱風吹出ダクトおよび各熱風吸込ダクトをそれぞれ別個に連結する、熱風加熱器および送風機を備えた熱風循環ダクトを設けてなる従来の耐炎化炉にくらべて設備費を低減でき、また、熱処理室内の温度が発火や糸切れの虞があるために低くせざるを得ない初期段階の温度に制約されなくなり、全体としてみた処理時間を短縮でき、耐炎化繊維、ひいては炭素繊維の製造コストを低減することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
【符号の説明】
1:前駆体繊維
2:熱処理室
3:ガイドロール
4:熱風吹出ダクト
5:熱風吸込ダクト
6:熱風加熱器
7:送風機
8:循環ダクト
9:冷却器(熱風の冷却手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素繊維の製造に供する耐炎化繊維を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭素繊維は、よく知られているように、たとえばポリアクリロニトリル系繊維等の前駆体繊維(プリカーサ)を200〜350℃程度の比較的低温の酸化性雰囲気中で焼成して耐炎化した後(耐炎化繊維とした後)、1,000℃程度以上の高温の不活性雰囲気中で焼成して炭化することによって製造されている。耐炎化繊維は、このような炭素繊維の製造に供せられる。
【0003】
ところで、耐炎化処理は、発熱反応を伴う処理である。また、耐炎化反応は徐々に進行する。そのため、未だ耐炎化が進んでいない初期段階で前駆体繊維を高温に晒すと、前駆体繊維が発火したり糸切れを起こしたりするので、当初は熱処理温度を低く抑えることが必要になる。換言すれば、耐炎化処理は、熱処理温度が初期段階の温度に制約されるので、効率が悪い。
【0004】
かかる問題を解決しようとして、前駆体繊維の耐炎化の進行に合わせて熱処理温度を徐々に高く設定することができるよう、炉内を異なる温度に設定可能な複数個の熱処理室に区分してなる耐炎化炉が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
この従来の耐炎化炉は、複数個の熱処理室を有し、各熱処理室に対し、熱風を吹き出す熱風吹出ダクトおよび熱処理室から熱風を吸い込む熱風吸込ダクトと、熱風吹出ダクトと熱風吸込ダクトとを連結する、加熱器および送風機を備えた熱風循環ダクトとを設けている。すなわち、互いに独立した複数個の熱処理室を直列に配列した構成となっている。そのため、各熱処理室を、前駆体繊維が最初に処理される熱処理室は前駆体繊維が発火したり糸切れを起こしたりすることのない低い温度に、次段の熱処理室はそれよりも高い温度に、その次の段の熱処理室はさらに高い温度に、といったように各熱処理室を任意の温度に設定することができ、全体としてみた処理時間を短くできる。しかしながら、一方で、複数個の熱処理室を互いに独立させている、換言すれば、互いに独立した複数個の耐炎化炉を直列に配しているので、設備費が極めて高くなるという問題がある。設備費が高くなれば、当然、耐炎化繊維、ひいては炭素繊維の製造コストも高くなる。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−237723号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来の耐炎化炉の上述した問題点を解決し、設備費を低減でき、耐炎化繊維、ひいては炭素繊維の製造コストを下げることができる耐炎化炉を提供するにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、前駆体繊維が連続的に走行せしめられる熱処理室を有し、かつ、その熱処理室の、前駆体繊維の走行方向に関して前駆体繊維の入口側から熱処理室の内容積の1/3までの部分の雰囲気温度を中央部分のそれよりも低くする手段を設けた耐炎化炉を提供する。雰囲気温度を低くする手段は、好ましくは、前駆体繊維の走行方向に関して前駆体繊維の入口側から熱処理室の内容積の1/3までの部分の雰囲気温度を中央部分のそれよりも少なくとも3℃低くする手段である。
【0009】
また、本発明は、前駆体繊維が連続的に走行せしめられる熱処理室と、前駆体繊維の走行方向に沿って複数個配設した、熱処理室に熱風を吹き出す熱風吹出ダクトおよび熱処理室から熱風を吸い込む熱風吸込ダクトと、各熱風吹出ダクトおよび各熱風吸込ダクトに共通の熱風加熱器および送風機を備えた熱風循環ダクトとを有し、かつ、前駆体繊維の走行方向に関して前駆体繊維の入口側から熱処理室の内容積の1/3までの部分に位置する熱風吹出ダクトに、循環される熱風の冷却手段を設けた耐炎化炉を提供する。熱風の冷却手段は、好ましくは、前駆体繊維の走行方向に関して前駆体繊維の入口側から熱処理室の内容積の1/3までの部分の雰囲気温度を中央部分のそれよりも少なくとも3℃低くする手段であり、また、たとえば、循環される熱風に外気を混合する手段のようなものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1において、耐炎化炉は、ポリアクリロニトリル系繊維、ピッチ系繊維、フェノール系繊維等の前駆体繊維1が連続的に走行せしめられる熱処理室2を有する。炉壁の外には、炉体の長さ方向(図の左右方向)に沿って複数個のガイドロール3が配置されており、前駆体繊維1は、これらのガイドロール3に導かれて熱処理室2内に出入を繰り返しながら全体として図面左方から右方に走行するようになっている。なお、図示しないが、前駆体繊維1は、紙面に対して垂直な方向に、複数本、互いに並行するように並べられていて(シート状になっていて)、複数本の前駆体繊維を一度に熱処理することができるようになっている。
【0011】
炉壁の外には、前駆体繊維1の全体流れの方向に沿って、複数個の、熱処理室2内に熱風を吹き出す熱風吹出ダクト4と熱処理室2内から熱風を吸い込む熱風吸込ダクト5とが配設されている。また、これら複数個の熱風吹出ダクト4と熱風吸込ダクト5は、これらに共通の熱風加熱器6と送風機7とを備えた循環ダクト8に連結されていて、熱処理室2内の熱風は熱風吸込ダクト5によって熱処理室2内から排出され、熱風加熱器6で加熱された後、送風機7によって熱風吹出ダクト4に送られ、熱処理室2内に循環されるようになっている。なお、図示しないが、これら熱風吹出ダクト4、熱風吸込ダクト5は、紙面に対して垂直な方向、すなわち、シート状をなす前駆体繊維1のシート幅方向に複数個配設されている。
【0012】
また、前駆体繊維1の走行方向に関して前駆体繊維1の入口側から炉体の長さの1/3までの部分、すなわち、熱処理室2の内容積の1/3までの部分に位置する熱風吹出ダクト4には、循環される熱風の冷却器9が設けられている。この冷却器9は、循環される熱風の温度を下げるもので、たとえば、常温の外気を熱風に混合する、周方向および長さ方向に多数個の外気吹出口を等配してなる多孔管や、同様に常温の外気を熱風に混合する気体ノズルや、水、その他の冷媒を流すことができるジャケットのようなものである。
【0013】
さて、熱処理室2内に導入された前駆体繊維1は、熱処理室2内を走行している間に熱風吹出ダクト4から吹き出される200〜350℃程度の熱風(加熱空気)によって熱処理され、耐炎化繊維となるのであるが、このとき、耐炎化反応に伴う発熱量の最も多い初期段階、すなわち、前駆体繊維1の走行方向に関して熱処理室2の内容積の1/3までの部分においては、冷却器9によって冷やされた熱風が熱処理室2内に供給される。そのため、初期段階の温度のみを下げることができて、初期段階に発生しやすい前駆体繊維1の発火や糸切れを防止しつつ耐炎化処理を進行させることができる。耐炎化処理がある程度進行すると、発熱量も減り、また、糸切れも起こりにくくなるので、その後の、熱処理室2の内容積の残りの2/3の部分においては、より高い温度で耐炎化処理を行うことができる。したがって、熱処理室2内の温度が発火や糸切れの虞があるために低い温度にせざるを得ない初期段階の温度に制約されなくなり、全体としてみた処理時間を短縮でき、耐炎化繊維、ひいては炭素繊維の製造コストを低減することができるようになる。
【0014】
上記において、前駆体繊維の走行方向に関して前駆体繊維の入口側から熱処理室の内容積のどの程度までの部分の温度を低くすればよいかは、熱処理室の大きさや、前駆体繊維の種類、太さ、走行速度や、熱処理室に対する前駆体繊維の出入回数、その他によっても異なるが、内容積の1/3までの部分を低くすることができれば十分である。
【0015】
また、前駆体繊維の走行方向に関して前駆体繊維の入口側から熱処理室の内容積の1/3までの部分の温度をどの程度低くするかについては、これもまた前駆体繊維の種類、太さ、走行速度や、熱処理室に対する前駆体繊維の出入回数、その他によっても異なるものの、熱処理室の中央部分の温度よりも少なくとも3℃低くなるようにするのが好ましい。
【0016】
さらに、ガイドロールは、熱処理室内に設置することも可能であるし、初期段階とその後の段階との熱処理時間が同じである必要もない。熱処理時間は、熱処理室への前駆体繊維の出入回数を変更したり、熱処理室の長さを変更したりすることで任意に変更できる。また、冷却器として多孔管を用いる場合、管の周方向における外気吹出口の配置を、たとえば45°ずつずらせておき、外気吹出口から吹き出される外気の流れが循環される熱風に対して向流になるようにすると、熱風の冷却を効率的に行えるようになる。
【0017】
また、上記においては、いわゆる横型耐炎化炉について説明したが、前駆体繊維が全体として下方から上方に向かって走行する、熱処理室が上下方向に延びる縦型耐炎化炉も全く同様に構成することができる。
【0018】
本発明の耐炎化炉によって得られた耐炎化繊維は、それを炭化炉に導き、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性雰囲気中にて1,000〜3,000℃程度の温度で焼成、炭化することによって炭素繊維とすることができる。
【0019】
【実施例および比較例】
(実施例)
図1に示した耐炎化炉を用い、100本の、単糸繊度が1.1dtex、単糸数が12,000本のポリアクリロニトリル系前駆体繊維を互いに並行するようにシート状に引き揃え、耐炎化処理した。
【0020】
耐炎化炉としては、熱処理室の長さが3m、容積が4m3の、横断面が方形の横型耐炎化炉を用いた。前駆体繊維の走行速度は3m/分とした。熱風の冷却は、熱風吹出ダクトを流れる熱風に外気を導入することによって行った。また、循環ダクト内を流れる熱風の温度は240℃に設定した。
【0021】
前駆体繊維の走行方向に関して前駆体繊維の入口側から熱処理室の内容積の1/3までの部分に位置する熱風吹出ダクトに流れる熱風に外気を吹き込み、その部分の熱処理室内の温度が237℃になるようにした。その結果、前駆体繊維の糸切れは発生しなかった。
【0022】
次いで、上記耐炎化繊維を炭化炉に導き、窒素ガス雰囲気中にて1,400℃で5分間焼成して炭化処理し、炭素繊維を得た。
(比較例)
上記実施例において、前駆体繊維の走行方向に関して前駆体繊維の入口側から熱処理室の内容積の1/3までの部分に位置する熱風吹出ダクトに流れる熱風に外気を吹き込まず、循環ダクトを流れる240℃の熱風をそのまま熱処理室内に送り込んだ。
【0023】
その結果、内容積の1/3までの部分の熱処理室内の温度は244℃と熱風温度よりも高くなり、100本の前駆体繊維中18本に糸切れが発生した。
【0024】
【発明の効果】
本発明に係る耐炎化炉は、前駆体繊維が連続的に走行せしめられる熱処理室を有し、かつ、その熱処理室の、前駆体繊維の走行方向に関して前駆体繊維の入口側から熱処理室の内容積の1/3までの部分の雰囲気温度を中央部分のそれよりも低くする手段を設けているので、各熱風吹出ダクトおよび各熱風吸込ダクトをそれぞれ別個に連結する、熱風加熱器および送風機を備えた熱風循環ダクトを設けてなる従来の耐炎化炉にくらべて設備費を低減でき、また、熱処理室内の温度が発火や糸切れの虞があるために低くせざるを得ない初期段階の温度に制約されなくなり、全体としてみた処理時間を短縮でき、耐炎化繊維、ひいては炭素繊維の製造コストを低減することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
【符号の説明】
1:前駆体繊維
2:熱処理室
3:ガイドロール
4:熱風吹出ダクト
5:熱風吸込ダクト
6:熱風加熱器
7:送風機
8:循環ダクト
9:冷却器(熱風の冷却手段)
Claims (9)
- 前駆体繊維が連続的に走行せしめられる熱処理室を有し、かつ、その熱処理室の、前駆体繊維の走行方向に関して前駆体繊維の入口側から熱処理室の内容積の1/3までの部分の雰囲気温度を中央部分のそれよりも低くする手段を設けた耐炎化炉。
- 雰囲気温度を低くする手段が、前駆体繊維の走行方向に関して前駆体繊維の入口側から熱処理室の内容積の1/3までの部分の雰囲気温度を中央部分のそれよりも少なくとも3℃低くする手段である、請求項1に記載の耐炎化炉。
- 前駆体繊維が連続的に走行せしめられる熱処理室と、前駆体繊維の走行方向に沿って複数個配設した、熱処理室に熱風を吹き出す熱風吹出ダクトおよび熱処理室から熱風を吸い込む熱風吸込ダクトと、各熱風吹出ダクトおよび各熱風吸込ダクトに共通の熱風加熱器および送風機を備えた熱風循環ダクトとを有し、かつ、前駆体繊維の走行方向に関して前駆体繊維の入口側から熱処理室の内容積の1/3までの部分に位置する熱風吹出ダクトに、循環される熱風の冷却手段を設けた耐炎化炉。
- 熱風の冷却手段が、前駆体繊維の走行方向に関して前駆体繊維の入口側から熱処理室の内容積の1/3までの部分の雰囲気温度を中央部分のそれよりも少なくとも3℃低くする手段である、請求項3に記載の耐炎化炉。
- 熱風の冷却手段が、循環される熱風に外気を混合する手段である、請求項3または4に記載の耐炎化炉。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の耐炎化炉を用いて前駆体繊維を耐炎化処理する、耐炎化繊維の製造方法。
- 請求項6に記載の方法を用いて製造された耐炎化繊維。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の耐炎化炉を用いて前駆体繊維を耐炎化処理した後、不活性雰囲気中で焼成し、炭化処理する、炭素繊維の製造方法。
- 請求項8に記載の方法を用いて製造された炭素繊維。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002363667A JP2004197239A (ja) | 2002-12-16 | 2002-12-16 | 耐炎化炉 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002363667A JP2004197239A (ja) | 2002-12-16 | 2002-12-16 | 耐炎化炉 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2004197239A true JP2004197239A (ja) | 2004-07-15 |
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ID=32761747
Family Applications (1)
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Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN101665996B (zh) * | 2009-09-23 | 2011-10-12 | 镇江奥立特机械制造有限公司 | 一种碳纤维供丝机 |
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-
2002
- 2002-12-16 JP JP2002363667A patent/JP2004197239A/ja active Pending
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