JP4236316B2 - 糸条の耐炎化熱処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は連続して走行する糸条に酸化性雰囲気中で耐炎化熱処理を施すための糸条の耐炎化熱処理装置に関し、特に、耐炎化処理室内の温度分布が均一であり、糸条に均一の耐炎化処理を施すことのできる糸条の耐炎化熱処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、炭素繊維を製造する工程ではポリアクリロニトリル、レーヨン、ピッチ類などの有機繊維は、先ず、酸化性雰囲気中で熱処理を行い耐炎化処理が施され、次いで、不活性雰囲気中で熱処理を行う炭素化処理が施される。
この炭素繊維の製造工程において、耐炎化工程の占める時間並びにエネルギー消費量は極めて大きいため、炭素繊維の生産性を向上させるためには、かかる耐炎化工程における生産性の向上が必要不可欠となる。
【0003】
この耐炎化処理を施すための従来の耐炎化処理装置の概略縦断面図を図3に、また同装置の概略横断面図を図4に示す。同装置1′は、多数本の糸条7が水平方向にシート状に並んで走行する熱処理室2を有しており、同熱処理室2は上壁2aから熱風を導入すると共に下壁2bから熱風を強制的に導出している。更に、前記処理室2の熱風導入部である上壁2aと、熱風導出部である下壁2bと、更に一方の側壁2cとの三方が、前記糸条の走行方向に配された複数の熱風循環室4により囲まれている。前記熱風循環室4の内部にはそれぞれ、ヒータ5と熱風循環ファン6とが備えられており、更に熱風の一部を排気するための排気口4aが形成されている。更に、前記熱処理装置1′は熱風の熱効率を高めるために炉全体の外周が断熱材により覆われている。
【0004】
ところで、耐炎化工程を経て得られた耐炎化繊維の諸物性及びその均一性は、後に続く炭素化工程での工程通過性や、最終的に得られた炭素繊維の物性及び生産性にも大きな影響を与える。
【0005】
そのため、これまでにも耐炎化工程の生産性向上と、耐炎化処理の均一化とに着目した提案が多数なされている。
例えば、特開昭59−137510号公報に開示された耐炎化熱処理炉は、多数の糸条を帯状に並べ、ロールにかけ回して熱処理室内を多段に走行させると共に、同熱処理室内に熱風を糸条の走行方向と平行に導入している。更に、前記熱処理室内を走行する糸条の各段の間に気体流路案内板を配し、熱風を前記糸条の走行方向に対してジグザグに流している。
【0006】
また、上記公報に開示された耐炎化熱処理炉の他にも、耐炎化処理工程での生産性を向上させる方法としては、例えば糸条を加熱プレート等に接触させる伝導加熱と熱風加熱とを併用する方法、雰囲気ガスの諸条件を調整する方法、処理繊維束の投入量を増大させる高容積密度焼成による方法等が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報の耐炎化熱処理炉や上述の方法によっても、耐炎化処理の均一化と高速化とがある程度は達成されるものの、更なる向上が望まれている。更に、上記公報の熱処理炉は、狭い処理室内に更に気体流路案内板が配されているため糸条のハンドリング性を損ない、例えば糸切れなどの不測の事態が発生した場合に、前記気体流路案内板が邪魔になって修復作業が煩雑になるといった新たな問題が生じる。
【0008】
本発明は、かかる従来の問題を解決すべくなされたものであり、熱処理室内の糸条のハンドリング性を損なうことなく、耐炎化熱処理の均一化と高速化とを更に向上させ、後工程の通過性並びに生産性の向上が実現される耐炎化熱処理装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段及び作用効果】
かかる目的を達成するために、本発明者らが耐炎化処理の均一性をより高次で確保すべく鋭意検討した結果、耐炎化工程では主として熱風循環型の熱処理炉が用いられるため、耐炎化繊維の諸物性等の均一性は装置的な要因、即ち同熱処理炉における熱処理室内の温度分布や風速分布に依存するところが大きいことがわかった。また、これらの分布が不均一である場合には、温度制御や風速制御、糸条走行速度の制御など、運転管理において様々な制約が加わり、更には工程のダウンにつながる場合もあることがわかった。
【0010】
かかる検討から以下の本発明に至ったものである。即ち、本発明は、多数の糸条がシート状に並んで走行すると共に、熱風導入部と熱風導出部とを有する熱処理室と、前記熱風導入部及び前記熱風導出部を導通させると共に、それぞれにヒータ及びファンを有し、前記熱処理室に沿って糸条の走行方向に配された複数の熱風循環室と、を備えてなる糸条の耐炎化熱処理装置において、前記熱風循環室は、保温域と、前記熱風導入部及び前記熱風導出部の間にヒータ及びファンを有する循環域とを備え、同熱風循環室により前記熱処理室の四方が囲まれてなることを特徴とする耐炎化熱処理装置を主要な構成としている。
【0011】
図3及び図4に示すような従来の耐炎化熱処理装置1′は、上述したように、熱処理室2の熱風導入部である上壁2aと、熱風導出部である下壁2bとを導通する熱風循環室4が、前記熱処理室2の3方の壁面を囲んで糸条走行方向に複数配列されている。各熱風循環室4にはそれぞれヒータ5及び熱風循環ファン6が配されており、即ち、1基の前記熱処理装置1′は、複数個のヒータ5及び熱風循環ファン6を備えている。これら複数のヒータ5及び熱風循環ファン6は、操作性及びメンテナンスの作業性を考慮して、前記熱処理室2に対して全て同一の側壁側に一列に配されている。
【0012】
この従来の耐炎化熱処理装置1′では、循環される熱風の温度はヒータ5からの吹き出し側で最も高温となっているが、熱処理室2の内部においては、風速分布にも依るが、ヒータ5及び熱風循環ファン6が配されている側(図3では左側)の内壁面付近で高温となり、その反対側の内壁面付近で低温となる傾向を示す。熱処理室2内でのこのような温度分布の要因は、ヒータ及び熱風循環ファンの側の壁面とは反対の側の壁面からの放熱によるものであり、このように熱処理装置1′の壁面からの放熱が、装置1′の製造ラインでのR側とL側とでアンバランスとなるため、熱処理室2内での温度分布が不均一となってしまう。
【0013】
これに対して本発明の耐炎化熱処理装置では、前記熱風循環室が保温域と、前記熱風導入部及び熱風導出部の間にヒータ及び熱風循環ファンを配した循環域とを備えており、前記熱処理室の四方が同熱風循環室により囲まれている。即ち、前記熱風導入部及び熱風導出部が前記熱処理室2′の上下壁部にそれぞれ形成されている場合には、前記熱風循環室は、循環域が上下壁部と一方の側壁の側に配され、保温域が上下壁部と他方の側壁の側に配されることとなり、前記熱処理室の四方が前記熱風循環室により囲まれることとなる。そのため、従来のように熱処理室が熱風循環室により三方のみしか囲まれておらず、一方の壁部が外気と接触している耐炎化熱処理のように、一の壁部から多量に放熱されるということがなく、従来の熱処理装置に比べて熱処理室内の温度分布を均一にすることができる。
【0014】
更に、複数の前記熱風循環室は、隣り合う前記熱風循環室の前記循環域と前記保温域とが糸条の走行方向に交互に配列されている。
複数の前記熱風循環室を、隣り合う前記熱風循環室で前記循環域と前記保温域とが糸条の走行方向に交互になるように配列している場合には、前記熱処理室の両側壁は、それぞれの側に同一のヒータ及び熱風循環ファンが配されているため、いずれの側壁の側からも均一に加熱及び放熱がなされることとなり、前記熱処理室内における温度分布が均一となる。
【0015】
また、前記熱処理室と、前記熱風循環室の前記循環域及び前記保温域とにおける風速が、
(3/2)×v0 ≦v1 ≦10×v0 ・・・(1)
(1/2)×v0 ≦v2 ≦10×v0 ・・・(2)
v0 :前記処理室における風速 (m/sec)
v1 :前記循環域における風速 (m/sec)
v2 :前記保温域における風速 (m/sec)
を満足していることが重要である。
【0016】
前記熱風循環室における前記保温域での風速は、前記循環域における風速と同等であることが好ましく、特に、上記式(1)及び式(2)を満たすの風速条件である場合に、熱処理室内における風速分布を均一化するために優れた効果を発揮する。
【0017】
前記循環域における風速v1 がv1 <(3/2)) ×v0 である場合、同循環域の体積が大きくなり、耐炎化熱処理装置の設置スペースや設備費用の増大につながり好ましくない。
前記保温域における風速v2 がv2 <(1/2)×v0 の場合も同様に、耐炎化熱処理装置の設置スペースや設備費用の増大につながり好ましくない。
【0018】
一方、前記循環域における風速v1 が10×v0 <v1 の場合には、耐炎化熱処理装置の設置スペースや設備費用は小さくなるものの、同循環域における風速斑が大きくなり、例えば多段の攪拌板や整流板などが必要となるため、耐炎化熱処理装置の操作性が煩雑となる。
また、前記保温域における風速v2 が10×v0 <v2 の場合には、エネルギー消費の増大につながるため好ましくない。
【0019】
なお、耐炎化熱処理装置における熱処理室内での温度分布及び風速分布を均一化するために最も好ましい装置は、熱風循環室により熱処理室の四方が囲まれており、前記隣り合う前記熱風循環室は前記循環域と前記保温域とを交互に配列されると共に、上記式(1)及び式(2)を満たす風速としたものである。
かかる耐炎化熱処理装置では、熱処理室内の温度分布及び風速分布の均一性がより高次で実現されることにより被処理糸条の物性の均一性が実現される。
【0020】
なお、本発明にあっては、見かけ上の作業性、メンテナンス性は損なわれるものの、被処理糸条の物性が均一化されるため、作業頻度が減少するとともに、耐炎化処理温度の設定基準であるスモーク発生限度付近で温度設定が可能となるため、より高温での耐炎化熱処理が可能となり、高速処理により生産性も著しく向上するといった効果も期待できる。
【0021】
なお、前記熱風循環室における保温域での保温手段としては、強制的に熱風を流して保温してもよく、また、循環熱風を利用して保温することもできる。同保温室の風向きについても特に制限はない。なお、前記保温域に排気口を設けて、炉内発生ガスの排気をも同時に行うことが好ましい。
また、熱処理室内の風向きについても、その方向に何らの制限はない。
更に、前記熱風循環室、及び前記熱処理室の大きさには特に制限はないが、前記耐炎化熱処理装置の設置スペース及び設備費用を考慮して適宜設定される。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
図1は本発明の好適な実施形態である耐炎化熱処理装置の概略縦断面図であり、図2は前記装置の概略横断面図である。
【0023】
前記耐炎化熱処理装置1は、多数本の糸条7が水平方向にシート状に並んで走行する熱処理室2を有しており、同熱処理室2は上壁2aから熱風を導入すると共に下壁2bから熱風を強制的に導出している。更に、前記処理室2の糸条走行方向に沿って、同処理室2の四方を囲む熱風循環室3が、複数配列されており、前記熱処理装置1は熱風の熱効率を高めるために装置全体の外周が断熱材により覆われている。
【0024】
前記熱風循環室3は、前記熱処理室2の熱風導入部である前記上壁2aと、熱風導出部である前記下壁2bとを導通させると共に、それらの間にヒータ5及び熱風循環ファン6を有する循環域3aと、更に、同循環域3aとは反対の側に保温域3bとが形成されている。前記保温域3bには前記熱処理室2の下壁2bから導出された熱風が充満しており、前記熱処理室2を保温している。なお、同保温域3bに更にヒータを設置して積極的に加熱保温することも可能である。更に、本実施形態では前記保温域3bに排気口3cが形成されており、同保温域3bでは熱処理装置1の排気をも行っている。
【0025】
前記熱風循環室3は、上述したように、前記処理室2の糸条走行方向に沿って複数配列されている。このとき、隣り合う前記循環室3は、図2に示すように、前記循環域3aと排気域3bとが糸条の走行方向に交互になるように配列されている。
【0026】
このように、前記処理室2は前記循環域3aと前記保温域3bとにより四方が囲まれており、外気に接触している壁面がなく、一部の壁部から多量に放熱されるということがない。しかも、複数の前記熱風循環室3を、隣り合う前記熱風循環室3で前記循環域3aと前記保温域3bとが交互になるように配列している。
【0027】
そのため、前記熱処理室2の両側壁には、それぞれの側に同一のヒータ及び熱風循環ファンが配されることとなり、いずれの側壁の側からも同様に加熱及び放熱がなされ、特に両側壁において放熱バランスが同一となるため、前記熱処理室2内における温度分布が均一となる。従って、シート状に引き揃えられて走行する処理糸条7は、シートの幅方向で均一に熱処理されることとなり、各処理糸条に処理斑が生じることがない。
【0028】
更に、上記装置1において、前記熱処理室2の風速v0 と、前記熱風循環室3における前記循環域3aの風速v1 及び前記保温域3bの風速v2 が、
(3/2)×v0 ≦v1 ≦10×v0 ・・・(1)
(1/2)×v0 ≦v2 ≦10×v0 ・・・(2)
を満たすように制御されている。このような風速に制御することにより、熱処理室2内における風速分布、温度分布のより高次での均一性を確保でき、複数の処理糸条7には、熱風がシートの幅方向で一定の風速で作用し、熱処理室2内において、風速及び温度の均一化が達成される。このように、各糸条7の熱履歴が均一化することによって耐炎化処理後の被処理糸条の物性が均一化される。しかも、風速分布及び温度分布の均一性をより高次で確保できるため、スモーク発生限度の温度付近まで処理温度を高めることが可能となり、高温高速焼成による生産性向上が達成できる。
【0029】
なお、熱処理室2内の風速及び温度は、処理条件や被処理糸条の基質により異なるが、一般的には耐炎化処理時に発生する膨大な発熱量の除去と、スモークの発生防止の観点から決定される。
【0030】
以下、本発明の実施例について、比較例を参照して具体的に説明する。
なお、実施例及び比較例において、
「条件」
熱処理炉形式:対流加熱式熱風循環炉
熱処理室長さ:糸条の走行方向での熱処理室の長さが1.5mのユニットが6基配されており、総有効長さが9m
熱処理室の幅:1.5m
風向き:糸条を多数本引き揃えたシート面に対して垂直方向
熱処理室内設定温度:230℃(熱処理室内中央付近の温度)
「温度、風速の測定条件」
温度の測定:JIS K 熱電温度計
風速の測定:常温で測定
風速測定器:日本カノマックス株式会社製
アネモマスター6141定温度型熱式風速計
とする。
【0031】
「実施例」
図1及び図2に示す耐炎化熱処理装置1における熱処理室2内の中央付近での温度及び風速を1.0m/secに設定し、熱風循環室3における循環域での風速を2.7m/sec、保温域での分速を2.1m/secに設定して、前記熱処理室2内の風速分布及び温度分布を測定した。
その結果、前記熱処理室2内の風速分布は、熱処理室内の上記設定風速に対して±0.05m/sec以内であった。また、温度分布も熱処理室内の上記設定温度に対して±2℃以内であり、ほぼ均一な風速分布及び温度分布となっていた。
同耐炎化熱処理装置1を使用して、前記風速に設定し、トータルテックスが1800の糸条に耐炎化熱処理を施した結果、耐炎化糸条の密度斑は殆ど無く、物性が均一な耐炎化糸条を得ることができた。
【0032】
「比較例1」
実施例と同様の前記耐炎化熱処理装置において、熱処理室内の中央付近での設定風速を実施例1と同様に1.0m/secに設定し、熱風循環室における循環域での風速を2.7m/sec、保温域での分速を0.3m/secに設定して、前記熱処理室内の風速分布及び温度分布を測定した。
その結果、前記熱処理室内の風速分布は、熱処理室内の上記設定風速に対して±0.05m/sec以内であったが、温度分布は熱処理室内の上記設定温度に対して±5℃以内と、ばらつきがみられた。
同耐炎化熱処理装置を使用して、前記の風速に設定し、トータルテックスが1800の糸条に耐炎化熱処理を施した結果、耐炎化糸条の密度斑は無かったが、熱処理室内の温度斑が大きいために処理温度を上げることができず、耐炎化処理に長時間を要した。
【0033】
「比較例2」
実施例と同様の耐炎化熱処理装置を用いて、熱処理室内の中央付近での設定風速を実施例1と同様に1.0m/secに設定し、熱風循環室における循環域での風速を0.7m/sec、保温域での分速を2.1m/secに設定して、前記熱処理室内の風速分布及び温度分布を測定した。
その結果、前記熱処理室内の風速分布は、熱処理室内の上記設定風速に対して±0.05m/sec以内であり、温度分布も熱処理室内の上記設定温度に対して±2℃以内と、いずれも熱処理室内においてほぼ均一であった。
同耐炎化熱処理装置でトータルテックスが1800の糸条に耐炎化熱処理を施した結果、耐炎化糸条の密度斑は殆ど無く、処理室内の温度斑も小さかった。しかしながら、上述の風速とするためには、熱風循環室における循環領域の容積が大きくなるため、耐炎化熱処理装置の壁部かの放熱量が大きくなり、消費電力が増大してしまい、耐炎化繊維の製造コストを低減することができなかった。
【0034】
「比較例3」
実施例の耐炎化熱処理装置から保温域を除いた耐炎化熱処理装置において、熱処理室内の中央付近での設定風速を実施例1と同様に1.0m/secに設定し、熱風循環室における循環域での風速を3.4m/secに設定して、前記熱処理室内の風速分布及び温度分布を測定した。
その結果、前記熱処理室内の風速分布は、熱処理室内の上記設定風速に対して±0.05m/sec以内であり、ほぼ均一であったが、温度分布は熱処理室内の上記設定温度に対して±7℃以内と、バラツキが大きなものであり、特に、ヒータ及び熱風循環ファンが配されている側の壁部近傍で最も高温となっていた。同耐炎化熱処理装置によりトータルテックスが1800の糸条に耐炎化熱処理を施した結果、耐炎化糸条の密度斑は殆ど無かったが、束切れを生じるなど、工程安定性は不安定であった。
【0035】
「比較例4」
図3及び図4に示す従来の耐炎化熱処理装置1′を使用して、熱処理室2′内の中央付近での設定風速を1.0m/secに設定し、熱風循環室3′での風速を3.4m/secに設定して、前記熱処理室2′内の風速分布及び温度分布を測定した。
その結果、前記熱処理室内の風速分布は、熱処理室内の上記設定風速に対して±0.05m/sec以内であり、ほぼ均一であったが、温度分布は熱処理室内の上記設定温度に対して±8℃以内と、バラツキが大きなものであり、特に、ヒータ及び熱風循環ファンが配されている側の壁部近傍で最も高温となっていた。
【0036】
同耐炎化熱処理装置によりトータルテックスが1800の糸条に耐炎化熱処理を施した結果、耐炎化糸条の密度斑もヒータ及び熱風循環ファンが配されている側を走行する糸条において大きなものとなり、また、束切れを生じるなど、工程安定性も極めて不安定であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態である耐炎化熱処理装置の概略縦断面図である。
【図2】上記耐炎化熱処理装置の概略横断面図である。
【図3】従来の耐炎化熱処理装置の概略縦断面図である。
【図4】上記耐炎化熱処理装置の概略横断面図である。
【符号の説明】
1,1′ 耐炎化熱処理装置
2 熱処理室
2a 上壁(熱風導入部)
2b 下壁(熱風導出部)
3 熱風循環室
3a 循環域
3b 保温域
3c 排気口
4 熱風循環室
4a 排気口
5 ヒータ
6 熱風循環ファン
7 糸条
Claims (1)
- 多数の糸条がシート状に並んで走行すると共に、熱風導入部と熱風導出部とを有する熱処理室と、前記熱風導入部及び前記熱風導出部を導通させると共に、前記熱処理室に沿って糸条の走行方向に配された複数の熱風循環室と、を備えてなる糸条の耐炎化熱処理装置において、
複数の前記熱風循環室は、それぞれが保温域と、前記熱風導入部及び前記熱風導出部の間にヒータ及びファンを有する循環域とを備え、同熱風循環室により前記熱処理室の四方が囲まれてなり、
複数の前記熱風循環室は、隣り合う前記熱風循環室の前記循環域と前記保温域とが糸条の走行方向に交互に配列され、
前記熱処理室と、前記熱風循環室の前記循環域及び前記保温域とにおける風速が、
(3/2)×v 0 ≦v 1 ≦10×v 0 ・・・(1)
(1/2)×v 0 ≦v 2 ≦10×v 0 ・・・(2)
v 0 :前記処理室における風速 (m/sec)
v 1 :前記循環域における風速 (m/sec)
v 2 :前記保温域における風速 (m/sec)
を満足してなることを特徴とする耐炎化熱処理装置。
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