JP2004196704A - 5−ニトロ−1−テトラロンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】環境に影響の大きい無水クロム酸や取り扱いの困難な超強酸を用いることなく1,5−ジアミノナフタレンの前駆体として有用な5−ニトロ−1−テトラロンを安全かつ異性体の生成を伴わず選択的に高収率で製造する方法を提供すること。
【解決手段】4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸エステルを加水分解して4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸となし、さらにハロゲン化して得られる4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸ハライドを酸触媒を用いて環化させることにより5−ニトロ−1−テトラロンを工業的に有利に製造する。
【選択図】なし
【解決手段】4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸エステルを加水分解して4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸となし、さらにハロゲン化して得られる4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸ハライドを酸触媒を用いて環化させることにより5−ニトロ−1−テトラロンを工業的に有利に製造する。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は5−ニトロ−1−テトラロンの新規な製造方法に関する。5−ニトロ−1−テトラロンは種々の有機合成中間体または原料物質として有用であり、染料、樹脂原料、医農薬などの原料に利用される。さらに、本発明は、該5−ニトロ−1−テトラロンの製造方法を工程の一部として含む1,5−ジアミノナフタレンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
5−ニトロ−1−テトラロン化合物は、テトラリン環を脱水素し、その後還元を行うことにより、染料、樹脂原料、医農薬原料として有用な5−アミノ−1−ナフトールに容易に変換することができ、またアミン化合物と反応させ、さらに還元及び芳香族化を行なうことでウレタン原料として有用な1,5−ジアミノナフタレンを得ることができる(特許文献1)等、極めて有用な化合物である。
【0003】
しかし、この化合物を安全かつ異性体の生成を伴わず選択的に合成することは極めて困難である。例えば、5−ニトロテトラリンを氷酢酸中、無水クロム酸で酸化すると、5−ニトロ−1−テトラロンが得られることが報告されているが(非特許文献1,2,3)、同時に異性体である5−ニトロ−4−テトラロンが生成し、また無水クロム酸を理論量使用する反応は環境面からも問題である。
【0004】
また、1−(N,N−ジメチルアミノ)−4−ニトロ−1,3−ブタジエンと2−シクロヘキセノンをキシレン中で24時間環流攪拌することにより、5−ニトロ−1−テトラロンが収率36.4%で得られることが報告されている(非特許文献4)。しかし、この方法では、用いる原料の脂肪族ニトロ化合物の入手が容易でないなどの問題がある。
【0005】
また、フルオロスルホン酸に五フッ化アンチモンを加え100℃に加熱して4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸を滴下するか、95%硫酸を100℃に加熱して4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸メチルを滴下することで5−ニトロ−1−テトラロンがそれぞれ収率81%および58%で得られることが報告されている(特許文献1)。しかしフルオロスルホン酸のような超強酸は高価な上、取り扱いが困難であり、また多量の廃酸が発生する。
【0006】
このように、5−ニトロ−1−テトラロン化合物を安全、かつ異性体の生成を伴わず、選択的に高収率で合成する方法が望まれている。
【0007】
【特許文献1】
WO02/090315
【0008】
【非特許文献1】
薬学雑誌、61,292(1940)
【0009】
【非特許文献2】
J.Med.Chem.,19, 472(1976)
【0010】
【非特許文献3】
J.Am.Chem.Soc.,93,5816(1971)
【0011】
【非特許文献4】
Chem.Pharm.Bull.,36,481(1988)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、5−ニトロ−1−テトラロンを安全かつ異性体の生成を伴わず選択的に製造する方法を提供することである。また、本発明のもう一つの課題は、該5−ニトロ−1−テトラロンの製造方法を用いる1,5−ジアミノナフタレンの工業的に有利な製造方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を鋭意検討した結果、4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸ハライドを酸触媒を用いて環化させることにより5−ニトロ−1−テトラロンを工業的に有利に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は以下の通りである。
(1)4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸ハライドを酸触媒を用いて環化させることによる5−ニトロ−1−テトラロンの製造方法。
(2)下式によって表される4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸クロリド。
【0015】
【化2】
【0016】
(3)4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸ハライドを、酸触媒を用いて環化させて5−ニトロ−1−テトラロンを製造した後、さらにアミノ化、還元及び芳香族化することによる1,5−ジアミノナフタレンの製造方法。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸ハライドは4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸をハロゲン化することで得られる。
4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸は例えば、4−フェニル酪酸をニトロ化するか(J.Org.Chem.,63,952(1998))、オルトニトロトルエンとアクリル酸エステルを反応させて4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸エステルとした後これを加水分解することで得られる。
【0018】
[4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸エステルの加水分解反応]
4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸エステルのアルキル基としては、特に制限されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が経済的に有利である点で好ましい。
4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸エステルの加水分解は水の存在下に酸触媒を添加して加熱することにより行なわれる。使用する酸触媒は塩酸、硫酸、リン酸などの鉱酸が好ましく、中でも塩酸又は硫酸が好ましい。用いられる酸触媒の量は該エステルに対して0.1〜100質量%であり、好ましくは1〜10質量%である。使用する水の量は該エステルに対して1モル倍から100モル倍であり、好ましくは5モル倍から50モル倍である。
【0019】
反応は該エステルを自溶媒として行なってもよいが、通常溶媒を用いて行なわれる。使用する溶媒は使用する酸に対して安定なものであればどのようなものでも用いられ、水と混和する溶媒を用いて均一系で反応を行なうこともできるし、水と混和しない溶媒を用いて二相系で反応を行なってもよい。具体的には例えば水;硫酸、リン酸、塩酸などの鉱酸またはその水溶液;トルエン、キシレン、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒;酢酸などの有機酸;N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記する。)などの極性溶媒などが挙げられる。
アルコール系溶媒を用いても反応は進行するが、加水分解と同時にエステル化反応も進行するため好ましくない。使用される溶媒の量は該エステルに対し1〜100質量倍、好ましくは2〜20質量倍である。反応圧力は特に規定されないが通常大気圧で行なわれる。反応温度は0〜200℃であり、好ましくは50〜150℃である。
【0020】
該エステルの加水分解は可逆反応であり、反応中に生成するアルコールによりエステル化が同時に進行するため平衡組成が存在する。反応を完結させるためには生成したアルコールを除去しながら反応を行なうのが好ましい。アルコールの除去はアルコールと共沸せず、且つアルコールより沸点の高い溶媒を用いて反応を行ないながらアルコールのみを留去してもよいし、溶媒と共に留去してもよい。
生成した4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸は溶媒中に析出している場合にはそのまま濾過を行ない、また溶解している場合には溶媒を留去するかあるいは貧溶媒を装入するなど公知の方法により析出させて単離し、次工程で使用する。必要に応じて再結晶などの精製を行なってもよい。
【0021】
[4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸のハロゲン化]
本発明で用いられる4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸ハライドは4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸クロリド、4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸ブロミド、4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸フルオリド、4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸ヨーダイドであり、中でも4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸クロリドまたは4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸ブロミドが好ましく、最も好ましくは4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸クロリドである。ハロゲン化反応は4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸をでハロゲン化剤と接触させることにより行なわれる。
【0022】
使用できるハロゲン化剤は例えばホスゲン、塩化チオニル、塩化スルフリル、三塩化リン、三臭化リン等であり、なかでもホスゲン及び塩化チオニルが好ましい。塩化チオニル、塩化スルフリル等を用いる場合にはこれらを溶媒として用いることもできるが、溶媒中で反応を行なってもよい。使用できる溶媒は反応に不活性なものであれば特に制限はなく、具体的には例えばトルエン、キシレン、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒;塩化メチレン、エチレンジクロリド(以下、EDCと略記する。)等の脂肪族ハロゲン系溶媒;クロルベンゼン、ジクロルベンゼン等の芳香族ハロゲン系溶媒等が用いられる。
【0023】
反応温度は0〜150℃であり、好ましくは20〜80℃である。反応圧力は特に規定されないが通常大気圧で行なわれる。生成した4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸ハライドは蒸留等により単離して次工程で使用することもできるが、単離せずそのまま環化を行なうのが工業的に有利である。
【0024】
[4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸ハライドの環化反応]
環化反応は酸触媒の存在下4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸ハライドを加熱することで行なわれる。ここで用いられる酸触媒としては塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化スズなどのルイス酸触媒;シリカ−アルミナなどの固体酸;強酸性イオン交換樹脂などが挙げられる。使用する酸触媒の量は4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸ハライドに対し0.01〜10モル倍である。塩化アルミニウムなどのルイス酸触媒を用いる場合には1モル倍以上を用いるのが好ましく、更に好ましくは1.1モル倍以上である。
【0025】
反応温度は0〜150℃であり、好ましくは20〜100℃である。反応圧力は特に規定されないが通常大気圧で行なわれる。反応終了後は酸触媒を濾過あるいは抽出操作などにより除去した後、溶媒を留去するなど公知の方法によって5−ニトロ−1−テトラロンを単離することができる。必要に応じ、再結晶などの操作によりさらに精製を行なうこともできる。
【0026】
このようにして得られた5−ニトロ−1−テトラロンは、さらにアミン化合物と反応させ、さらに還元及び芳香族化を行なうことで1,5−ジアミノナフタレンへと転換できる。
【0027】
【実施例】
以下、実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1(4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸クロリドの合成)
EDC100ml中にDMF0.28g及び4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸10.1g(0.05モル)を装入し、50℃に昇温してホスゲン10.8gを装入した。1時間攪拌した後窒素を2時間通気して酸性ガスを除去し、減圧下で溶媒を除去して淡黄色の液体を得た。
【0028】
実施例1において合成された4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸クロリドの13C−NMRスペクトルは以下の吸収を示し、それぞれの吸収は下式に示す構造中の1〜10の炭素に帰属される。
1 25.89ppm
2 31.59ppm
3 46.42ppm
4 124.97ppm
5 127.64ppm
6 131.94ppm
7 133.24ppm
8 135.56ppm
9 149.21ppm
10 173.43ppm
【0029】
【化3】
【0030】
また、IRスペクトルでは以下のような特徴的な吸収帯が観測された。
2874cm-1、2938cm-1 アルキル基
1798cm-1 酸クロリド
1526cm-1、1348cm-1 ニトロ基
【0031】
実施例2(4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸クロリドの環化反応)
4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸クロリド2.3g(0.01モル)が溶解しているEDC溶媒50ml中に塩化アルミニウム1.46g(0.011モル)を装入し、80℃に昇温して1時間反応させた。反応終了後冷却し、水を装入して塩化アルミニウムを分解、抽出した後有機相を留去して5−ニトロ−1−テトラロン1.75g(0.92モル)を得た(収率92%)。
【0032】
実施例3(4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸からの5−ニトロ−1−テトラロンの合成)
EDC50ml中にDMF0.06g及び4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸2.1g(0.01モル)を装入し、40℃に昇温して12%ホスゲン/EDC溶液10.2gを滴下した。30分攪拌した後室温まで冷却して塩化アルミニウム1.46g(0.011モル)を装入し、80℃に昇温して1時間反応させた。反応終了後冷却し、水を装入して塩化アルミを分解、抽出した後有機相を留去して5−ニトロ−1−テトラロン1.75g(0.92モル)を得た(収率92%)。
【0033】
実施例4(4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸メチルの加水分解)
4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸メチル167.9g(0.752モル)、酢酸600ml、水135.3g(7.527モル)、36%塩酸11.5gをフラスコに装入し、加熱して還流下で反応させた。4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸メチルが6%程度残存したところで平衡となり、反応の進行が見られなくなった。そこで溶媒を留去しながらさらに反応を続行したところ4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸メチル残存量は0.5%まで減少した。減圧下で加熱して反応マスから溶媒を留去し、4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸154.4g(純度99.2%、収率97.4%)を得た。
【0034】
【発明の効果】
本発明によればウレタン原料として有用な1,5−ジアミノナフタレンの前駆体となり得る5−ニトロ−1−テトラロン化合物を安全、かつ異性体の生成を伴わず、選択的に製造することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は5−ニトロ−1−テトラロンの新規な製造方法に関する。5−ニトロ−1−テトラロンは種々の有機合成中間体または原料物質として有用であり、染料、樹脂原料、医農薬などの原料に利用される。さらに、本発明は、該5−ニトロ−1−テトラロンの製造方法を工程の一部として含む1,5−ジアミノナフタレンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
5−ニトロ−1−テトラロン化合物は、テトラリン環を脱水素し、その後還元を行うことにより、染料、樹脂原料、医農薬原料として有用な5−アミノ−1−ナフトールに容易に変換することができ、またアミン化合物と反応させ、さらに還元及び芳香族化を行なうことでウレタン原料として有用な1,5−ジアミノナフタレンを得ることができる(特許文献1)等、極めて有用な化合物である。
【0003】
しかし、この化合物を安全かつ異性体の生成を伴わず選択的に合成することは極めて困難である。例えば、5−ニトロテトラリンを氷酢酸中、無水クロム酸で酸化すると、5−ニトロ−1−テトラロンが得られることが報告されているが(非特許文献1,2,3)、同時に異性体である5−ニトロ−4−テトラロンが生成し、また無水クロム酸を理論量使用する反応は環境面からも問題である。
【0004】
また、1−(N,N−ジメチルアミノ)−4−ニトロ−1,3−ブタジエンと2−シクロヘキセノンをキシレン中で24時間環流攪拌することにより、5−ニトロ−1−テトラロンが収率36.4%で得られることが報告されている(非特許文献4)。しかし、この方法では、用いる原料の脂肪族ニトロ化合物の入手が容易でないなどの問題がある。
【0005】
また、フルオロスルホン酸に五フッ化アンチモンを加え100℃に加熱して4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸を滴下するか、95%硫酸を100℃に加熱して4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸メチルを滴下することで5−ニトロ−1−テトラロンがそれぞれ収率81%および58%で得られることが報告されている(特許文献1)。しかしフルオロスルホン酸のような超強酸は高価な上、取り扱いが困難であり、また多量の廃酸が発生する。
【0006】
このように、5−ニトロ−1−テトラロン化合物を安全、かつ異性体の生成を伴わず、選択的に高収率で合成する方法が望まれている。
【0007】
【特許文献1】
WO02/090315
【0008】
【非特許文献1】
薬学雑誌、61,292(1940)
【0009】
【非特許文献2】
J.Med.Chem.,19, 472(1976)
【0010】
【非特許文献3】
J.Am.Chem.Soc.,93,5816(1971)
【0011】
【非特許文献4】
Chem.Pharm.Bull.,36,481(1988)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、5−ニトロ−1−テトラロンを安全かつ異性体の生成を伴わず選択的に製造する方法を提供することである。また、本発明のもう一つの課題は、該5−ニトロ−1−テトラロンの製造方法を用いる1,5−ジアミノナフタレンの工業的に有利な製造方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を鋭意検討した結果、4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸ハライドを酸触媒を用いて環化させることにより5−ニトロ−1−テトラロンを工業的に有利に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は以下の通りである。
(1)4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸ハライドを酸触媒を用いて環化させることによる5−ニトロ−1−テトラロンの製造方法。
(2)下式によって表される4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸クロリド。
【0015】
【化2】
【0016】
(3)4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸ハライドを、酸触媒を用いて環化させて5−ニトロ−1−テトラロンを製造した後、さらにアミノ化、還元及び芳香族化することによる1,5−ジアミノナフタレンの製造方法。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸ハライドは4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸をハロゲン化することで得られる。
4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸は例えば、4−フェニル酪酸をニトロ化するか(J.Org.Chem.,63,952(1998))、オルトニトロトルエンとアクリル酸エステルを反応させて4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸エステルとした後これを加水分解することで得られる。
【0018】
[4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸エステルの加水分解反応]
4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸エステルのアルキル基としては、特に制限されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が経済的に有利である点で好ましい。
4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸エステルの加水分解は水の存在下に酸触媒を添加して加熱することにより行なわれる。使用する酸触媒は塩酸、硫酸、リン酸などの鉱酸が好ましく、中でも塩酸又は硫酸が好ましい。用いられる酸触媒の量は該エステルに対して0.1〜100質量%であり、好ましくは1〜10質量%である。使用する水の量は該エステルに対して1モル倍から100モル倍であり、好ましくは5モル倍から50モル倍である。
【0019】
反応は該エステルを自溶媒として行なってもよいが、通常溶媒を用いて行なわれる。使用する溶媒は使用する酸に対して安定なものであればどのようなものでも用いられ、水と混和する溶媒を用いて均一系で反応を行なうこともできるし、水と混和しない溶媒を用いて二相系で反応を行なってもよい。具体的には例えば水;硫酸、リン酸、塩酸などの鉱酸またはその水溶液;トルエン、キシレン、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒;酢酸などの有機酸;N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記する。)などの極性溶媒などが挙げられる。
アルコール系溶媒を用いても反応は進行するが、加水分解と同時にエステル化反応も進行するため好ましくない。使用される溶媒の量は該エステルに対し1〜100質量倍、好ましくは2〜20質量倍である。反応圧力は特に規定されないが通常大気圧で行なわれる。反応温度は0〜200℃であり、好ましくは50〜150℃である。
【0020】
該エステルの加水分解は可逆反応であり、反応中に生成するアルコールによりエステル化が同時に進行するため平衡組成が存在する。反応を完結させるためには生成したアルコールを除去しながら反応を行なうのが好ましい。アルコールの除去はアルコールと共沸せず、且つアルコールより沸点の高い溶媒を用いて反応を行ないながらアルコールのみを留去してもよいし、溶媒と共に留去してもよい。
生成した4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸は溶媒中に析出している場合にはそのまま濾過を行ない、また溶解している場合には溶媒を留去するかあるいは貧溶媒を装入するなど公知の方法により析出させて単離し、次工程で使用する。必要に応じて再結晶などの精製を行なってもよい。
【0021】
[4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸のハロゲン化]
本発明で用いられる4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸ハライドは4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸クロリド、4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸ブロミド、4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸フルオリド、4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸ヨーダイドであり、中でも4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸クロリドまたは4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸ブロミドが好ましく、最も好ましくは4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸クロリドである。ハロゲン化反応は4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸をでハロゲン化剤と接触させることにより行なわれる。
【0022】
使用できるハロゲン化剤は例えばホスゲン、塩化チオニル、塩化スルフリル、三塩化リン、三臭化リン等であり、なかでもホスゲン及び塩化チオニルが好ましい。塩化チオニル、塩化スルフリル等を用いる場合にはこれらを溶媒として用いることもできるが、溶媒中で反応を行なってもよい。使用できる溶媒は反応に不活性なものであれば特に制限はなく、具体的には例えばトルエン、キシレン、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒;塩化メチレン、エチレンジクロリド(以下、EDCと略記する。)等の脂肪族ハロゲン系溶媒;クロルベンゼン、ジクロルベンゼン等の芳香族ハロゲン系溶媒等が用いられる。
【0023】
反応温度は0〜150℃であり、好ましくは20〜80℃である。反応圧力は特に規定されないが通常大気圧で行なわれる。生成した4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸ハライドは蒸留等により単離して次工程で使用することもできるが、単離せずそのまま環化を行なうのが工業的に有利である。
【0024】
[4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸ハライドの環化反応]
環化反応は酸触媒の存在下4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸ハライドを加熱することで行なわれる。ここで用いられる酸触媒としては塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化スズなどのルイス酸触媒;シリカ−アルミナなどの固体酸;強酸性イオン交換樹脂などが挙げられる。使用する酸触媒の量は4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸ハライドに対し0.01〜10モル倍である。塩化アルミニウムなどのルイス酸触媒を用いる場合には1モル倍以上を用いるのが好ましく、更に好ましくは1.1モル倍以上である。
【0025】
反応温度は0〜150℃であり、好ましくは20〜100℃である。反応圧力は特に規定されないが通常大気圧で行なわれる。反応終了後は酸触媒を濾過あるいは抽出操作などにより除去した後、溶媒を留去するなど公知の方法によって5−ニトロ−1−テトラロンを単離することができる。必要に応じ、再結晶などの操作によりさらに精製を行なうこともできる。
【0026】
このようにして得られた5−ニトロ−1−テトラロンは、さらにアミン化合物と反応させ、さらに還元及び芳香族化を行なうことで1,5−ジアミノナフタレンへと転換できる。
【0027】
【実施例】
以下、実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1(4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸クロリドの合成)
EDC100ml中にDMF0.28g及び4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸10.1g(0.05モル)を装入し、50℃に昇温してホスゲン10.8gを装入した。1時間攪拌した後窒素を2時間通気して酸性ガスを除去し、減圧下で溶媒を除去して淡黄色の液体を得た。
【0028】
実施例1において合成された4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸クロリドの13C−NMRスペクトルは以下の吸収を示し、それぞれの吸収は下式に示す構造中の1〜10の炭素に帰属される。
1 25.89ppm
2 31.59ppm
3 46.42ppm
4 124.97ppm
5 127.64ppm
6 131.94ppm
7 133.24ppm
8 135.56ppm
9 149.21ppm
10 173.43ppm
【0029】
【化3】
【0030】
また、IRスペクトルでは以下のような特徴的な吸収帯が観測された。
2874cm-1、2938cm-1 アルキル基
1798cm-1 酸クロリド
1526cm-1、1348cm-1 ニトロ基
【0031】
実施例2(4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸クロリドの環化反応)
4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸クロリド2.3g(0.01モル)が溶解しているEDC溶媒50ml中に塩化アルミニウム1.46g(0.011モル)を装入し、80℃に昇温して1時間反応させた。反応終了後冷却し、水を装入して塩化アルミニウムを分解、抽出した後有機相を留去して5−ニトロ−1−テトラロン1.75g(0.92モル)を得た(収率92%)。
【0032】
実施例3(4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸からの5−ニトロ−1−テトラロンの合成)
EDC50ml中にDMF0.06g及び4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸2.1g(0.01モル)を装入し、40℃に昇温して12%ホスゲン/EDC溶液10.2gを滴下した。30分攪拌した後室温まで冷却して塩化アルミニウム1.46g(0.011モル)を装入し、80℃に昇温して1時間反応させた。反応終了後冷却し、水を装入して塩化アルミを分解、抽出した後有機相を留去して5−ニトロ−1−テトラロン1.75g(0.92モル)を得た(収率92%)。
【0033】
実施例4(4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸メチルの加水分解)
4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸メチル167.9g(0.752モル)、酢酸600ml、水135.3g(7.527モル)、36%塩酸11.5gをフラスコに装入し、加熱して還流下で反応させた。4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸メチルが6%程度残存したところで平衡となり、反応の進行が見られなくなった。そこで溶媒を留去しながらさらに反応を続行したところ4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸メチル残存量は0.5%まで減少した。減圧下で加熱して反応マスから溶媒を留去し、4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸154.4g(純度99.2%、収率97.4%)を得た。
【0034】
【発明の効果】
本発明によればウレタン原料として有用な1,5−ジアミノナフタレンの前駆体となり得る5−ニトロ−1−テトラロン化合物を安全、かつ異性体の生成を伴わず、選択的に製造することができる。
Claims (6)
- 4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸ハライドを、酸触媒を用いて環化させることによる5−ニトロ−1−テトラロンの製造方法。
- 4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸をハロゲン化して4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸ハライドを得た後、酸触媒を用いて環化することを特徴とする請求項1記載の5−ニトロ−1−テトラロンの製造方法。
- 4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸エステルを加水分解して4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸となし、これをハロゲン化した後に酸触媒を用いて環化させることによる請求項1記載の5−ニトロ−1−テトラロンの製造方法。
- 4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸ハライドのハロゲンがクロルであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の5−ニトロ−1−テトラロンの製造方法。
- 4−(2−ニトロフェニル)ブタン酸ハライドを、酸触媒を用いて環化させて5−ニトロ−1−テトラロンを製造した後、さらにアミノ化、還元及び芳香族化することによる1,5−ジアミノナフタレンの製造方法。
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