JP2004196571A - 塗膜の剥離方法及び軽量気泡コンクリート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】塗膜の剥離方法は、建物の外壁3を構成するオートクレイブドライトウエイトコンクリート(ALC)や、発泡セラミック(PALC)を含むALCパネル1の表面に形成された塗膜2にブラストノズル18からドライアイスを吹き付け、ドライアイス粒子が塗膜に衝突する際の衝撃、塗膜の収縮、ドライアイスの体積膨張による塗膜の剥離作用、気流による塗膜の搬送作用、を連続して行うことにより塗膜2の全層或いは一部層を剥離する。
【選択図】図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、軽量気泡コンクリートパネルの表面に形成された塗膜を剥離するための方法に関し、特に、表面を傷めることなく塗膜を剥離することが出来る方法と、塗膜が剥離されて原型が露出した軽量気泡コンクリートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
軽量気泡コンクリートパネルは軽量で断熱性に富み且つ加工性が良いことから、住宅を含む建物の外壁材として広く用いられている。この軽量気泡コンクリートパネルは、素地が独立気泡状セラミック材であり、コンクリートと比較した場合、衝撃で欠けが出来易いという特徴がある。
【0003】
上記の如く、軽量気泡コンクリートパネルは全体に多数の細かい気泡が形成されており、この気泡が表面に露出し、且つ製造工程上の特徴から表面の地肌が細かい凹凸状を呈する。このため、軽量気泡コンクリートパネルの表面を塗装して耐水性の向上をはかると共に意匠の向上をはかっている。
【0004】
建物の外壁を構成する軽量気泡コンクリートパネルは、長期間風雨や陽光に晒されるため、使用期間の長期化に伴って軽量気泡コンクリートパネルの表面に形成された塗膜が影響を受け透水性能の低下や褪色等を含む退化或いは劣化が生じる。このため、長寿命化を実現した建物では定期的なメンテナンスが不可欠であり、このメンテナンスの一環として外壁を構成する軽量気泡コンクリートパネルの再塗装が行われる。軽量気泡コンクリートパネルの再塗装には、表面に形成された塗膜の上に重ね塗りする方法と、表面に形成された塗膜を剥離して塗装する方法とがあり、夫々、軽量気泡コンクリートパネル表面の現状に対応して選択的に採用される。しかし、劣化した塗膜は剥離されるのが一般的である。
【0005】
軽量気泡コンクリートパネルは、素材自体が衝撃に対して弱いという性質を持ち、且つ表面には製造時に形成された多数の気泡が露出すると共に、製造工程上で形成された微小な凹凸が存在する。また軽量気泡コンクリートは鉄筋コンクリートに比較して透水性能が劣るという性質も持つ。このため、気泡や凹凸を平滑にすると共に塗料を入り込ませるため、更に、透水性能を向上させるために、軽量気泡コンクリートパネルの表面の塗膜は、鉄筋コンクリート表面の塗膜厚さやモルタル表面の塗膜厚さと比較して厚いのが一般的である。例えば、鉄筋コンクリート表面に塗装する場合の塗膜厚さが約20μm〜約100μm程度であるのに対し、軽量気泡コンクリートパネルの表面に塗装する際の塗膜の厚さは約500μm〜約3000μmにも達する。
【0006】
このため、軽量気泡コンクリートパネルの表面を再塗装する際に塗膜を剥離する作業も容易ではなく、塗膜に小さい力を加えたのでは剥離せず、大きい力を加えた場合、この力に応じて母材ごと剥離して傷が形成されるという問題がある。また建物の外壁を構成している軽量気泡コンクリートパネルの塗膜を剥離する場合、現地での工事が条件であり、作業性や周囲の住環境への影響を考慮する必要もある。
【0007】
例えば鋼材の表面に形成されている酸化皮膜や塗膜を剥離したり洗浄する場合、ガーネットのような硬い噴射材を混合した超高圧水を吹き付けるウォータージェットを利用する方法、硬い砂を圧力空気によって吹き付けるサンドブラストを利用する方法、プラスチック製の破砕材を圧力空気によって吹き付けるプラスチックブラストを利用する方法、グラインダーを利用する方法等の機械的な方法があり、これらを選択的に利用することが出来る。
【0008】
しかし、建物の外壁を構成している軽量気泡コンクリートパネルの塗膜を剥離するために上記の如き機械的な方法を採用した場合、現場で施工する際に騒音対策を施す必要が生じるという問題や、噴射した水によって周囲が水浸しになってしまうという問題、或いは砂やプラスチックを回収するものの漏れてしまい周囲を汚染するという問題、更に、軽量気泡コンクリートパネルの表面に作用する力が大きく、部分的に軽量気泡コンクリートパネルの母材が剥離してしまい表面に欠け等の支障が生じるという問題が生じる。
【0009】
また、軽量気泡コンクリートパネルの表面に形成されている塗膜を剥離するために薬品を利用する方法を採用した場合、薬品特有の臭いの問題や、湿式工法であるために工程を変える毎に乾燥が必要となり工期がかかるという問題、剥離作業を手作業で行わなければならず作業員の負担が大きいという問題等の問題が生じる。
【0010】
塗装を剥離する技術の他の例として確立されたものに対象物にドライアイスをブラストする方法がある。この方法を実施したものとして、弾性を持った自動車バンパーの表面に形成された薄い塗装にドライアイスをブラストして剥離するようにしたものがある(例えば特許文献1参照)。しかし、この技術では弾性を持ったバンパーの塗装を剥離することが記載されるものの、住宅の外壁、特に軽量気泡コンクリートパネルに形成された塗膜を、素地である軽量気泡コンクリートを破壊することなく剥離することは示唆されていない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記の如く、現状では建物の外壁を構成している軽量気泡コンクリートパネルの表面に形成されている塗膜を剥離する方法として、機械的な方法及び化学的な方法の何れであっても有効な方法はなく、結局ワイヤブラシやスクレーパーを用いて手作業で剥離しているのが実情である。このため、作業員の負担が大きいという問題がある。
【0012】
本発明の目的は、建物の外壁を構成する軽量気泡コンクリートパネルの素地を剥離することなく、軽量気泡コンクリートパネルの表面に形成された塗膜を短期間で円滑に剥離することが出来、且つ乾式工法である塗膜の剥離方法を提供し、同時に塗膜を剥離して原型が露出した軽量気泡コンクリートを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明に係る塗膜の剥離方法は、建物の外壁を構成する軽量気泡コンクリートパネルの表面に形成された塗膜を剥離するために、前記塗膜にドライアイスを吹き付けることを特徴とするものである。
【0014】
上記塗膜の剥離方法では、微細なドライアイスの粒子を圧力を持った気流によって搬送して軽量気泡コンクリートパネルの表面に吹き付ける(ブラスト)ことによって、塗膜を剥離することが出来る。ドライアイスのブラストによって塗膜を剥離する際のプロセスは厳密な観察による知見ではないものの、ドライアイス粒子が塗膜に衝突する際の衝撃による破壊作用と、ドライアイスが昇華する際に塗膜の熱を奪って冷却することによる塗膜の急激な収縮作用及び冷却による固化と、ドライアイスの昇華に伴う体積膨張による破壊された塗膜の剥離作用と、ドライアイスを吹き付ける際の気流による破壊された或いは剥離した塗膜の搬送作用と、が連続して行われることによるものと推定される。
【0015】
本発明では、微細なドライアイス粒子を吹き付けるため、該ドライアイス粒子が軽量気泡コンクリートパネルの表面に衝突した場合であっても衝撃力が小さい。このため、軽量気泡コンクリートパネルの表面に多少長い時間継続してドライアイス粒子をブラストしていても、軽量気泡コンクリートパネルの表面に欠けや穴が形成されることがなく、塗膜を良好に剥離することが出来る。
【0016】
またドライアイス粒子は短時間で昇華するため、実質的に乾式工法であり、周囲を濡らしたり、汚すことがなく、美麗な作業環境を保持することが出来る。
【0017】
上記塗膜の剥離方法に於いて、軽量気泡コンクリートパネルの表面に形成された塗膜は全層又は一部層が剥離することを特徴とするものである。このように、塗膜の全層又は一部層を剥離することでも再塗装に対応することが出来る。このため、円滑で速やかに剥離作業を行うことが出来る。
【0018】
本発明に係る軽量気泡コンクリートは、塗膜にドライアイスを吹き付けることにより、表面形状の原型が露出したものである。この発明では、一度塗装により形成された塗膜が剥離されて表面形状の原型が露出された軽量気泡コンクリートパネルや軽量気泡コンクリートブロック等を含む軽量気泡コンクリートを得ることが出来る。尚、軽量気泡コンクリートの表面に形成された塗膜は完全な意味で剥離されていなくとも良く、軽量気泡コンクリートの原型が露出していれば良い。
【0019】
本発明に於いて、軽量気泡コンクリートの例としては、オートクレイブドライトウエイトコンクリート(ALC)や、発泡セラミック(PALC、特開平11−324304号公報参照)等があり、これらの全てを含むものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、上記塗膜の剥離方法と軽量気泡コンクリートの好ましい実施形態について説明する。本発明に係る塗膜の剥離方法は、軽量気泡コンクリートパネルの表面に形成された塗膜を円滑に且つ美麗に剥離するための方法であり、塗膜を剥離した後、改めて軽量気泡コンクリートパネルの表面に塗装して新たな塗膜を形成するための準備を行うものである。また本発明に係る軽量気泡コンクリートは、予め塗装されて形成された塗膜をドライアイスを吹き付けることで剥離して表面形状の原型を露出させたものである。
【0021】
軽量気泡コンクリートパネルは表面に多数の気泡が露出し、且つ製造時に形成された微小な凹凸が存在する。従って、軽量気泡コンクリートパネルの表面には多数の窪みが露出しており、ザラザラな状態となっている。この露出した気泡や微小な凹凸を平滑な面にするため、軽量気泡コンクリートパネルの表面の塗膜は厚さが約500μm〜約3000μmにも達する。
【0022】
軽量気泡コンクリートパネルの表面に形成された塗膜は一層であっても良いが、一般的には複数の層によって構成される。この層は、例えば、軽量気泡コンクリートパネルの地肌に直接形成される下塗層或いはプライマー層と呼ばれるシーラーや顔料,骨材を含有した接着剤的な機能を有する層、中塗層と呼ばれる樹脂成分を含有する層、上塗層或いは仕上層と呼ばれる中塗層よりも多い樹脂成分を含有した層からなっている。
【0023】
上記塗膜は長期間の使用により、陽光に晒されるのに伴って中塗層,上塗層に含有されている樹脂成分が紫外線の影響によって劣化し、透水性能を含む諸性能が低下したり褪色し、同時に下塗層を介しての軽量気泡コンクリートパネル表面に対する付着強度が低下する。このため、性能が低下した塗膜を剥離して再塗装することで、性能を回復することが行われる。
【0024】
塗膜の性能を回復する際に、現在の塗膜を剥離して新たな塗膜を形成する場合、新たに形成された塗膜が軽量気泡コンクリートパネル表面に充分な強度を持って付着していることが必要である。即ち、再塗装によって形成された新たな塗膜は、軽量気泡コンクリートパネル表面に対し充分な付着強度を発揮し得れば良く、軽量気泡コンクリートパネルの素地と新たな塗膜との間に存在する既存の塗膜の有無にはかかわりを持たない。
【0025】
従って、軽量気泡コンクリートパネルの表面に多層の塗膜が形成されている場合、この塗膜を剥離して再塗装するには必ずしも全層を剥離する必要はなく、少なくとも樹脂成分を含有した中塗層,上塗層を剥離し得れば良い。これらの層を剥離して再塗装したとき、中塗層,上塗層の下塗層に対する付着強度が低下することはなく、塗膜として充分な強度を発揮することが可能である。
【0026】
従って、本発明に係る塗膜の剥離方法では、軽量気泡コンクリートパネルの表面に形成された塗膜の全層(上塗層,中塗層,下塗層)又は一部の層(例えば上塗層又は上塗層と中塗層)を剥離することで、再塗装を施すための塗膜の剥離という目的を達成することが可能である。
【0027】
軽量気泡コンクリートパネルの表面に化粧目地等を含む意匠性を持った凹凸模様が形成されている場合、塗膜は凹凸模様に沿って略一様に形成されている。従って、塗膜を剥離する場合にも、軽量気泡コンクリートパネルの表面に形成された凹凸模様に沿って一様に剥離することが必要である。即ち、溝の底部に形成された塗膜であっても、高い面に形成されている塗膜と同様に剥離することが必要である。
【0028】
本発明の塗膜の剥離方法に於いて、塗膜を剥離するドライアイスは微細な粒子として形成されており、所定の圧力を持った圧縮空気或いは圧縮ガスからなる気流に搬送されてブラストノズルから噴射され、軽量気泡コンクリートパネルの表面に吹き付けられる。ドライアイスが塗膜に吹き付けられる際に、ドライアイスは固形物であることが好ましく、吹き付けられた直後に気化することが好ましい。
【0029】
上記の如き状態でドライアイスを塗膜に吹き付けることで、塗膜に対し比較的大きい衝撃力を作用させて塗膜を破壊することが可能であり、且つドライアイスが昇華する際に塗膜から急激に熱を奪うことによって該塗膜が収縮して軽量気泡コンクリートパネル表面から剥離し、更に、衝突した瞬間に生じる体積膨張により破壊した塗膜の破片を軽量気泡コンクリートパネルの表面から剥離するものと推定される。またドライアイスと共に気流が軽量気泡コンクリートパネルの表面に吹き付けられることで、塗膜は気流に伴って軽量気泡コンクリートパネルの表面から剥離して離脱するものと推定される。
【0030】
軽量気泡コンクリートパネル表面に形成された塗膜を剥離する際に、該塗膜に吹き付けられるドライアイスの粒度は特に限定するものではない。例えば、塗膜の厚さや軽量気泡コンクリートパネル表面に対する付着強度の程度に応じて適宜設定することが好ましい。
【0031】
ドライアイスを軽量気泡コンクリートパネルの表面に吹き付ける場合、ドライアイス吹付専用のブラストノズルを用いることが好ましい。このブラストノズルは、予め製造されたドライアイスの微細な粒子を、粒子の状態を保持して搬送することが可能であり、且つ粒子の状態で先端から噴き出す機能を有するものである。
【0032】
このようなドライアイスの微細な粒子を製造する装置として例えば ALPHEUS社製のMINIブラストSDI−5があり、この装置を好ましく利用することが可能である。しかし、本発明に係る塗膜の剥離方法を実施するに際し、前記装置を使用することに限定するものではなく、同様の他の装置を利用し得ることは当然である。
【0033】
ここで、上記 ALPHEUS社製のMINIブラストSDI−5を利用して軽量気泡コンクリートパネルとしてヘーベル(旭化成建材株式会社製、登録商標)パネル(以下「ALCパネル」という)に対して実施した例について表1を参照しつつ説明する。
【0034】
尚、実験は、下塗層としてエスケー化研(株)製の「エスケーカラーアンダー」を塗布して約500μmの塗膜を形成し、中塗層としてエスケー化研(株)製の「エレガンスタイル」を塗布して約1000μmの塗膜を形成し、上塗層としてエスケー化研(株)製の「水性コンポシリコーンクリア」を塗布して約50μmの塗膜を形成したALCパネルであって、塗装後6年を経過して上塗層の光沢が消滅した状態のALCパネルに対し、上記装置を利用してブラストノズルからドライアイスを吹き付ける際の圧力(MPa),ドライアイスの1分間当たりの吹付量(g/分),ブラストノズルのALCパネルからの距離(cm)等の条件を種々変更して1平方メートル当たりの剥離時間(分)を測定することで行った。
【0035】
【表1】
【0036】
【0037】
ドライアイスを吹き付ける際の気流の圧力や流量は、使用するブラストノズルの仕様に応じて設定される。上記実験ではブラストノズルの出口換算で0.6MPa〜1.0MPaの範囲で行っているが、この範囲以外でも、ブラストノズルの出口圧力換算で約0.4MPa〜約1.2MPaの範囲であると良好な状態で塗膜を剥離することが可能であった。
【0038】
ブラストノズルには幅広のものや幅の狭いもの等があり、ALCパネル表面に形成されている意匠、例えば化粧目地の寸法や深さ、平面部の寸法や広さ等の条件に応じて使い分けることが好ましい。またどのようなブラストノズルを利用した場合であっても、ドライアイスを噴射する際の上記圧力範囲は適用し得る値である。
【0039】
特に、ブラストノズルからの噴射圧力はドライアイスの流速に影響を与える。即ち、噴射圧力が低くなれば流速は小さくなり、ドライアイスの塗膜に対する衝撃力が小さくなる。また噴出圧力が高くなれば流速は大きくなり、ドライアイスの塗膜に対する衝撃力が大きくなる。従って、塗膜の状態に応じて噴出圧力を適宜調整することが好ましい。
【0040】
またブラストノズルのALCパネル表面からの距離は、一義的に設定し得るものではない。上記実験では10cm〜30cmの範囲で行ったが、この範囲以外でも約5cm〜約30cmの範囲であれば良好な剥離を行うことが可能であった。ブラストノズルをALCパネルの表面に接近させすぎると、ブラストノズルから噴き出されたドライアイスの微粒子が集中して狭い面に吹き付けられることとなり、剥離効率が悪くなる。またブラストノズルをALCパネルの表面から離隔させすぎると、ドライアイスの微粒子の滞空時間がかかりすぎてALCパネルの表面に衝突する以前に昇華してしまい剥離効率が悪くなる。
【0041】
ドライアイスをALCパネルの表面に吹き付けるに際し、吹付方向(ALCパネルの表面とブラストノズルのなす角度)は特に限定するものではなく、ALCパネルの表面に対し直角に吹き付けても良く、45度程度の角度を付けて吹き付けても良い。このように、ドライアイスの吹付角度を変化させることによって、厚い塗膜を剥離するのに有効な場合と、薄い塗膜を円滑に剥離するのに有効な場合とがあり、実際のALCパネル表面に形成されている塗膜の厚さや劣化の度合い、或いは意匠等の条件に応じて適宜設定することが好ましい。
【0042】
ブラストノズルからドライアイスを噴き出させる気流の構成は特に限定するものではないが、ドライアイスの搬送効率を上げるためには充分に冷却された気流であることが好ましく、且つ冷却に伴って水滴が発生することのないように充分に乾燥させた気流であることが好ましい。このような気流を得る装置としては、エアコンプレッサー,クーラー,ドライヤー,圧力調整器を組み合わせたものがあり、好ましく利用することが可能である。またボンベに充填された窒素ガス等を冷却して利用することも可能である。
【0043】
本発明に係るALCは形状を限定するものではなく、上記したALCパネルやALC製のブロック等を含むものである。
【0044】
次に、本発明に係る塗膜の剥離方法を実施する例を図により説明し、合わせてALCの例を説明する。図1は建物の外壁を構成するALCパネルの塗膜を剥離する方法を実施する際の模式的な説明図である。図2はALCパネルの表面に形成された化粧目地の塗膜を剥離する際の説明図である。図3は塗膜の剥離プロセスを説明する図である。図4はALCの例としてのパネルを示す図である。
【0045】
図2,3に示すように、ALCパネル1の平坦面1aや化粧目地1bの表面には、下塗層2a,中塗層2b及び上塗層2cの3層からなる塗膜2が形成されている(図2には塗膜2を示していない)。これらのALCパネル1を連続させて図示しない建物の躯体に取り付けることで外壁3が形成されている。
【0046】
ALCパネル1の再塗装を行う際に塗膜2の全層或いは一部の層を剥離する場合、外壁3に対向させて足場4を設置し、該足場4に防音シート5を張りめぐらす。また足場4には集塵機6のダクト6aを延長させておく。
【0047】
目的の建物の敷地内或いはトラックの荷台上にエアコンプレッサー11が設置され、該エアコンプレッサー11の高圧配管12にアフタークーラー13,エアドライヤー14が接続されている。従って、エアコンプレッサー11を作動させることで、予め設定された圧力を持った圧縮空気を取得し、この圧縮空気を冷却し更に乾燥させて温度の低い乾燥圧縮空気とすることが可能である。
【0048】
上記高圧配管12はクリーニングステーション15に接続されており、該クリーニングステーション15でドライアイス供給装置16から供給されたドライアイスの微粒子が混合されると共に圧縮空気の圧力が調整される。クリーニングステーション15にはブラストホース17が接続されており、該ブラストホース17の端部にブラストノズル18が接続されている。
【0049】
予めブラストノズル18からのドライアイスの吹付圧力を調整した後、作業員がブラストノズル18を把持して外壁3に対向して集塵機6を作動させ、ブラストノズル18をALCパネル1の表面から約5cm〜約30cmの範囲で適当な距離に保持して作業を開始すると、ブラストノズル18から外壁3を構成するALCパネル1の表面に向けてドライアイスの微粒子と圧縮空気が吹き付けられる。
【0050】
ドライアイスが吹き付けられたALCパネル1の表面に形成された塗膜2では、ドライアイスの微粒子の衝撃によって全層或いは一部の層が破壊され、同時にドライアイスの昇華に伴って熱が奪われることで急激に冷却されて収縮し、ALCパネル1の表面或いは他の層から剥離する。更に、ドライアイスの昇華に伴う体積膨張、圧縮空気の吹き付けによる気流によって、剥離した塗膜2はALCパネル1の鏡面から離脱してダクト6aから集塵機6に集塵される。
【0051】
ALCパネル1表面に沿ってブラストノズル18を移動させることで、外壁3の全面にわたって塗膜2の剥離を行うことが可能である。このとき、吹き付けられたドライアイスの微粒子は、ALCパネル1と衝突して昇華するため、ALCパネル1の表面が濡れることがなく、乾式工法として機能し、住環境を劣悪化することがない。
【0052】
特に、ブラストノズル18を図示しないフードで覆うと共に該フードにダクト6aを接続することで、ブラストノズル18からドライアイスの微粒子が噴き出されたときの騒音を遮蔽することが可能であり、且つALCパネル1の表面から剥離した塗膜2の粉塵を集塵機6に集塵することが可能である。このため、作業環境を良好な状態に維持することが可能となる。
【0053】
図4はALCの例としてのALCパネル1を説明する図である。このALCパネル1には意匠性を向上するための化粧目地1bが形成されており、化粧目地1bに区切られた部分が平坦面1aとなる。
【0054】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように本発明に係る塗膜の剥離方法では、微細なドライアイスの粒子を軽量気泡コンクリートパネルの表面に吹き付けることで、ドライアイス粒子の衝撃による破壊作用と、塗膜の急激な収縮作用と、ドライアイスの体積膨張による破壊された塗膜の剥離作用と、ドライアイスを吹き付ける際の気流による破壊された或いは剥離した塗膜の搬送作用とが短時間で連続して行われ、これにより、軽量気泡コンクリートパネルの表面から塗膜を剥離することが出来る。特に、ドライアイス粒子は短時間で昇華するため実質的に乾式工法を実行することが出来、建物の周囲を濡らしたり汚すことがなく、美麗な作業環境を保持することが出来る。
【0055】
また軽量気泡コンクリートパネルの表面に形成された塗膜の全層或いは一部層を剥離することで、速やかな剥離作業を実行することが出来る。
【0056】
本発明に係る軽量気泡コンクリートは、塗膜にドライアイスを吹き付けることにより、表面形状の原型が露出したものである。この発明では、一度塗装により形成された塗膜が剥離されて表面形状の原型が露出された軽量気泡コンクリートパネルや軽量気泡コンクリートブロック等を含む軽量気泡コンクリートを得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】建物の外壁を構成するALCパネルの塗膜を剥離する方法を実施する際の模式的な説明図である。
【図2】ALCパネルの表面に形成された化粧目地の塗膜を剥離する際の説明図である。
【図3】塗膜の剥離プロセスを説明する図である。
【図4】ALCの例としてのパネルを示す図である。
【符号の説明】
1 ALCパネル
1a 平坦面
1b 化粧目地
2 塗膜
2a 下塗層
2b 中塗層
2c 上塗層
3 外壁
4 足場
5 防音シート
6 集塵機
6a ダクト
11 エアコンプレッサー
12 高圧配管
13 アフタークーラー
14 エアドライヤー
15 クリーニングステーション
16 ドライアイス供給装置
17 ブラストホース
18 ブラストノズル
Claims (3)
- 建物の外壁を構成する軽量気泡コンクリートパネルの表面に形成された塗膜を剥離するために、前記塗膜にドライアイスを吹き付けることを特徴とする塗膜の剥離方法。
- 軽量気泡コンクリートパネルの表面に形成された塗膜は全層又は一部層が剥離することを特徴とする請求項1に記載した塗膜の剥離方法。
- 塗膜にドライアイスを吹き付けることにより、表面形状の原型が露出した軽量気泡コンクリート。
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JP2015110260A (ja) * | 2013-11-06 | 2015-06-18 | 株式会社東洋ユニオン | 汚染物質除去方法 |
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