JP2004195515A - ステンレス鋼の熱間圧延方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ロール表面の肌荒れを防止し、製品の表面品質向上を図ることができるステンレス鋼の熱間圧延方法を提供する。
【解決手段】ステンレス鋼種に応じ、ワークロールに肌荒れの生じるロール投入箇所に、少なくとも表層が超硬合金からなるロールを用いる。
【選択図】 図1
【解決手段】ステンレス鋼種に応じ、ワークロールに肌荒れの生じるロール投入箇所に、少なくとも表層が超硬合金からなるロールを用いる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステンレス鋼の熱間圧延方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、鋼の熱間圧延では、鋼スラブを加熱炉で1000〜1200℃程度まで加熱し、1 〜3 基程度のリバース式粗圧延機で複数パス圧延し、続いて7スタンド程度のタンデム式仕上圧延機で仕上圧延して鋼帯を製造する。
しかし、粗圧延、仕上圧延双方において言えることであるが、ロール表面が肌荒れする場合があり、そのまま圧延を続けるとロール表面の肌荒れが被圧延材表面に転写して被圧延材表面が凹凸の大きいものとなり、同時に被圧延材の酸化膜の一部が表面に押し込まれ、次工程での酸洗除去が困難となって別途グラインダ研磨手入れを要する「肌荒れ」と呼ばれる表面欠陥が生じる場合がある、という問題があった。
【0003】
ちなみに、ロールには、化学組成がmass%でC:1.0〜2.0%,Si:0.2〜1.5%,Mn:0.3〜1.5%,P:0.05%以下、S:0.05%以下、Ni:0.3〜2.0%,Cr:5〜20%,Mo:0.5〜5.0%,Nb,V,Tiの1種若しくは2種以上が1.0〜3.0%、残部実質的にFeからなる高速度鋼とも呼ばれる材質のいわゆるハイスロール等が通常使用されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
低炭素鋼、極低炭素鋼、高炭素鋼をはじめとする炭素鋼を対象に、1サイクル60〜100本程度の一群の被圧延材を圧延した後のロール表面の肌荒れを観察すると、図3に示すように、いわば亀の甲羅状ともいうべき約1mm四方の微小な表面割れが生じている場合が多い。これは、ロール表面が高温の被圧延材と接触し、冷却水により冷却される、という加熱と冷却の繰り返しを受ける結果、熱疲労により、ひび割れたものであり、熱亀裂(ヒートクラック)と呼ばれている。
【0005】
ところが、対象がステンレス鋼になると、ロール表面の肌荒れは、その態様が異なり、発生のメカニズムも異なるらしいことが知られている。以下にそれについて述べる。
炭素鋼に比べ、ステンレス鋼を対象に熱間圧延した場合の方が、ロール表面の肌荒れが生じやすい。ロール表面の肌荒れは、被圧延材であるステンレス鋼がロール表面側に焼き付くのが原因で発生し、焼き付きはミクロ的に金属同志がある面積で直接接触して凝着を起こし、軟らかい方の金属の一部が破断して硬い方の金属面上に移着することのくり返しにより肉眼で見えるほどまで成長する現象である、と特許文献2では、分析している(特許文献2参照)。また、この凝着性は、金属の種類の組合せにより異なり、一般には、固溶し易い金属同志、結晶構造の類似の金属同志が凝着し易いといわれ、事実、同じ金属同志が最も凝着力が大きい、とも特許文献2は述べている。
【0006】
また、ステンレス鋼は、熱間圧延中、Cr2 O3 のごく薄い酸化物の膜ができて表面を覆うため、炭素鋼に比べ、Cr2 O3 が大気中の酸素の鋼中への拡散を抑制し、FeOの酸化膜の厚さが薄くなることから、圧延されたときに変形によりひび割れるCr2 O3 膜下の鋼とロールとはじかに接触することになり、凝着が起こり易く、ロール表面の肌荒れが促進するという特徴もある。
【0007】
このように、ロール表面の肌荒れが生じ易いステンレス鋼の熱間圧延においては、被圧延材表面に肌荒れしたロールの凹凸が転写して製品の表面品質を損なう場合があるほか、ロール替え無しに圧延可能な被圧延材本数が制限されるため、その都度ロールの研磨が必要となり、ロール原単位の面からも不利となる。
また、ステンレス鋼の熱間圧延においては、ロールと被圧延材の間に硫化エステルやポリサルファイドを含有する圧延油を供給することが提案されており、ロール表面の肌荒れの抑制に効果をあげているが、その解消には至っていない(特許文献3、4)。
【0008】
しかも、これらの圧延油を使用すれば、そのコストは当然かかってくるから、経済上不利になることは免れない。
一方、熱間圧延においては、仕上圧延機の少なくとも1スタンドのワークロールに圧延部表層が超硬合金からなるロールを用いることにより、仕上圧延機での焼き付きやロール摩耗を抑制し、例えば、SUS430ステンレス鋼の熱間圧延で、肌荒れのない表面品質の良好な鋼板にできることが開示されている(特許文献5)。
【0009】
【特許文献1】
特開平5−271855号公報
【特許文献2】
特開昭61−41747号公報
【特許文献3】
特開2000−230187号公報
【特許文献4】
特開2000−178575号公報
【特許文献5】
特開2001−321804号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、ロール表面の肌荒れを防止することができる有効なステンレス鋼の熱間圧延方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、鋼の熱間圧延に際し、少なくとも1スタンドのワークロールに圧延部表層が超硬合金からなるロールを用いる(特許文献5参照)ことからさらに発展し、本発明に想到したものである。
本発明の要旨は以下のとおりである。
1. ステンレス鋼種に応じ、ワークロールに肌荒れの生じるロール投入箇所に、少なくとも表層が超硬合金からなるロールを用いることを特徴とするステンレス鋼の熱間圧延方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
一口にステンレス鋼といっても色々な鋼種がある。発明者らはステンレス鋼種別にワークロールに肌荒れの生じるロール投入箇所がどこかを詳しく調べた。
SUS430をはじめとするフェライト系ステンレス鋼は、変形抵抗が低炭素鋼と同等であるにもかかわらず、低炭素鋼に比べてロール表面が肌荒れしやすく、その態様は、多くの場合、図3に示すごとく、ロール全面において亀の甲羅状のヒートクラックとその欠け落ちが存在している上に、さらに被圧延材の幅エッジを圧延したロール部位において局部的に激しく、凹凸の程度の甚だしい箇所ができたようになる。
【0013】
図4は、フェライト系ステンレス鋼の1種であるSUS444(代表成分:19Cr−2Mo−極低C)を20本圧延後のF2(仕上圧延機において被圧延材搬送方向第2番目の圧延機)の下ロールの例であるが、発明者らの詳しい調査によると、Moを含有するフェライト系ステンレス鋼を圧延すると、ロール表面に生じる肌荒れの程度がひどくなることがわかったほか、7基程度の圧延機からなる仕上圧延機の中でも、F2の下が最もロール表面に生じる肌荒れの程度がひどく、次がF2の上、その次はF3の上と下、F1の上と下、F4の上と下、が同程度で並び、稀にF5あたりでもロール表面の肌荒れが生じる場合がある、というように仕上圧延機のスタンドにより、また、ロールの上下により、ロール表面に生じる肌荒れの程度に違いがあることもわかった。
【0014】
また、仕上圧延機だけでなく、粗圧延機のワークロールでも、ロール表面の肌荒れが発生することがわかったほか、圧下率を大きくすると、ロール表面に生じる肌荒れの程度がひどくなることもわかった。このような現象はSUS444だけでなく、Moを含有するフェライト系ステンレス鋼全般について見られることが最終的には発明者らの調査によって明らかになった、その具体的なステンレス鋼としては、成分範囲でC:0.08mass%以下、Si:1.00mass%以下、Mn:1.00mass%以下、Cr:11.00 〜32.00 mass%、Mo:0.40〜2.50mass%を含有し、あるいはさらにTi、Nb、Zrを合計で1.00mass%以下含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼全般がこれに該当する。
【0015】
このほか、対象がCrに加えNiを8mass%内外含有するSUS304をはじめとするオーステナイト系ステンレス鋼になると、フェライト系ステンレス鋼に比べて変形抵抗が大きい割には、却ってロール表面に生じる肌荒れの程度は軽微になることが分かった。
しかし、熱間圧延ライン上でのオシレーション待機などにより被圧延材温度が通常よりも例えば50℃低下した、というような場合、ロールにかかる圧延反力(圧延荷重)が大きくなり、その程度が一定以上(例えば、単位幅あたりの圧延荷重が20000kN/m以上)になると、かなりの確率でロール表面に局部的に肌荒れが生じてしまうこともまたわかった。肌荒れが生じるロール部位は、被圧延材の幅エッジを圧延したロール部位であり、これは、被圧延材の幅エッジ部の温度低下の程度が局部的に大きいため、同部を圧延したロール部位においては圧延反力が局部的に強く、それによりロールの被圧延材との焼き付きの程度が大きくなるため、と考えられる。このような現象はSUS304だけでなくオーステナイト系ステンレス鋼全般について見られることが最終的に発明者らの調査によって明らかになった。その具体的なステンレス鋼としては、成分範囲で、C:0.15mass%以下、Si:1.00mass%以下、Mn:3.00mass%以下、Cr:15.00 〜26.00 mass%、Ni:3.50〜28.00 mass%を含有し、あるいはさらにMo:1.20〜6.00mass%やTi、Nbを合計で1.0 mass%以下含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなるオーステナイト系ステンレス鋼全般がこれに該当する。
【0016】
本発明に係るステンレス鋼の熱間圧延方法では、ステンレス鋼種に応じワークロールに肌荒れの生じるロール投入箇所に、少なくとも表層が超硬合金からなるロールを用いる。
これにより、ロール表面の肌荒れは解消し、熱間圧延後のステンレス鋼表面に焼き付きによる肌荒れが生じなくなる。また、圧延油の供給なしでもロールの肌荒れは解消する。そのため、ロール替え無しに圧延可能となる被圧延材の本数を増やすことができるようになるため、ロール原単位の面からも有利となる。
【0017】
本発明にいうロール投入箇所とは、どの圧延機のどこすなわちどの圧延機の上ワークロールとか下ワークロールとかいうことをさす。また、超硬合金とは、WC、TaC 、TiC 等の超硬材料粉末にCo、Ni、Cr、Ti等の金属粉末のうちから選ばれる1種または2種以上を5〜50mass%添加した超硬材料混合粉末を焼結したものであり、超硬材料混合粉末としては、中でも、WCと、混合粉末全体に対し5〜50mass%のCoを添加した、超硬合金混合粉末を焼結したものとするのが、耐摩耗性、耐肌荒れ性などに優れかつ靭性も良好であるので望ましい。
【0018】
超硬合金の硬度は、HV800以上が好ましい。ヤング率は340000MPa以上が好ましい。上限は特に規定するものではないが、現代の技術で製造可能な超硬合金の硬度とヤング率を勘案し、それぞれ最大でHV1200、570000MPaとするのが妥当である。
先の従来技術の項でも述べた通り、同じ金属同志が最も凝着力が大きいものであるところ、特許文献1のようにCr含有率がmass%で5〜20%のロールを用い、Cr含有率が18%内外と化学成分的に近いフェライト系ステンレス鋼を圧延するから、ロール表面の肌荒れが生ずるのであり、ロールの側の化学成分を著しく異なるものに変更し、少なくとも表層が超硬合金のワークロールを用いて圧延をすれば、圧延油の供給の有無にかかわらず、ロール表面の肌荒れは解消するのである。
【0019】
本発明に使用する超硬合金ロールは、図1(a)に示すように、ロール全体が上記に列挙した成分組成の超硬合金2から成るのが最も好ましい。一方、上記に列挙した成分組成の超硬合金、中でも、WCは非常に高価であるため、図1(b)に示すように、少なくとも表層を超硬合金2としてもよい。それには超硬合金の表層部材は円筒形状とし、それを5mass%Cr鍛鋼等の、比較的安価な、円柱形状の軸部材1に嵌め込むようにしてロールを製造するようにするのが好ましい。
【0020】
以降、円筒形状の表層部材のことをスリーブ部材と称することにする。
スリーブ部材すなわち表層の超硬合金2の部分の厚さがあまりに薄くなると、被圧延材との接触による入熱が、鋼でできた軸部材1の内部まで浸透し、大きく熱膨張してしまう結果、表層の超硬合金2の部分も大きく出っ張ってサーマルクラウンが大きくなってしまうため、表層の超硬合金2の部分の厚さは、25mm以上とすることが好ましい。
【0021】
ところで、スリーブ部材は図1(c)に示すように、複数個の超硬合金2の成形体部材をロール軸方向に接合・一体化して形成したものとし、これを軸部材1に嵌め込むようにして製造するのが好ましい。このようにすることにより、後述のとおり、スリーブ部材は材質均一で短時間に低労力かつ低コストで製造することができるからである。
【0022】
さらに、図1(d)に示すように、軸部材1と、複数個の超硬合金2の成形体部材をロール軸方向に接合・一体化して形成したスリーブ部材の間に例えば鋼製の緩衝材を間挿材4として間挿してもよい。この理由は、最外層、緩衝材、軸部材の順に、ヤング率が小さくなるように緩衝材を選択すると、スリーブを軸部材に焼きばめ、冷やしばめなどの方法によって嵌め込んでロールを製造後に内部応力が発生したり、製造後のロールを圧延に供し、圧延荷重が加わった場合でも、ロールが割損しにくくなり好ましいからである。
【0023】
なお、図1(c)(d)で符号3は、鋼製の側端リングであり、軸部材1と、超硬合金2の成形体部材をロール軸方向に接合・一体化して形成したスリーブ、あるいはさらに、間挿材4を固定するための部材である。
上記超硬合金のスリーブ部材の製造方法について、以下に述べる。
ロールの中心軸と交わる面で仮想的に分割される複数個の円筒状のスリーブ部材は、各1個1個を、超硬合金混合粉末をラバー成形してCIP(冷間等方加圧)により成形し、仮焼結後、各1個1個のスリーブ部材をロール軸方向に複数連ねて接触一体化した状態、あるいはさらに超硬合金粉末を接触部に間挿した状態で、HIP(熱間等方加圧)にて一体化するという方法で製造するようにするのが好ましい。
【0024】
この方法によれば、仮焼結工程における各1個1個のスリーブ部材が小型な分、仮焼結中の熱歪の発生が抑制され、均一な材質のスリーブ部材が製造できて、製造後ロールの内部応力や、圧延供用中の荷重に起因して割損しにくくなるとともに、小型な分、仮焼結後の冷却による熱収縮も小さくなって、HIPに向けて正確な寸法に機械加工する時間と労力とコストも小さくて済む。
【0025】
軸部材は、よく用いられる鋳鋼、鍛鋼、鋳鉄等の金属製とするのがよい。5mass%Cr鍛鋼等の材料が例である。軸部材と超硬合金のスリーブ部材を嵌め合わせてロールとするには、超硬合金のスリーブ部材を必要に応じて機械加工により研削、研磨等し、その空洞部に軸部材を冷し嵌め、あるいはスリーブ部材を軸部材に焼嵌め、などの方法で挿入・嵌合し、これらを固定すればよい。
【0026】
緩衝材を間挿材として間挿する場合、その材質は、最外層の超硬合金よりもCoの比率を増やしたものとするのが、ヤング率を最外層と軸部材の中間の値に調整容易なため好ましい。例えば、最外層の超硬合金がWC−20mass%Co合金の場合、間挿材はWC−50mass%Co合金等とすればよい。
このようにして製造した、少なくとも表層が超硬合金からなるロールを、以降、超硬合金ロールと呼ぶことにする。
【0027】
【実施例】
(実施例1)
図2に示すような熱間圧延ライン100にて、粗圧延機(R1、R2、R3)、仕上圧延機(F1、F2、F3、F4、F5、F6、F7)のワークロールを表3に示すように変更し、フェライト系ステンレス鋼SUS444(F7圧延後の製品板厚3mm、同幅1045mm)を、F7出側被圧延材速度630mpm(トップ速度)で20本ずつ圧延し、圧延後の製品の表面性状を観察した。
【0028】
なお、粗圧延の板厚と圧延速度のスケジュールを表1に、仕上圧延の板厚と圧延速度のスケジュールを表2に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
表3中で「鋼」とあるのは、ハイスロール(特許文献1参照)、「超硬」とあるのは少なくとも表層が超硬合金からなるロールを用いたことを示す。超硬合金ロールは図1(d)に示すタイプのものを用いた。超硬合金ロール使用スタンドではワークロールに冷却水のみ供給し、鋼ロール使用スタンドではワークロールに冷却水および圧延油を供給しつつ圧延した。
【0033】
発明例1では、被圧延材であるステンレス鋼とワークロールとの焼付きが超硬合金ロール使用スタンドにおいて発生しなかったことにより、表3に示したように製品表面は肌荒れがなく良好であった。
また、発明例1に用いた超硬合金ロールはほとんど摩耗していなかった。なお、圧延後の超硬合金ロール表面には肌荒れ、ヒートクラックとも発生していなかった。
【0034】
これに対して、従来例1では、被圧延材であるステンレス鋼とワークロールとの焼付きがR2の上下とF1〜4の上下のワークロールに発生し、ワークロールの肌荒れが、被圧延材に転写し、製品表面に肌荒れが発生した。
(実施例2)
実施例1と同じく、図2に示すような熱間圧延ラインにて、粗圧延機(R1、R2、R3)、仕上圧延機(F1、F2、F3、F4、F5、F6、F7)のワークロールを表6に示すように変更し、オーステナイト系ステンレス鋼SUS304(F7圧延後の製品板厚2mm、同幅1030mm)を熱間圧延ライン上でオシレーションさせ、仕上圧延機入側温度を通常1100℃として仕上圧延するところ、950℃として、F7出側被圧延材速度1050mpm(トップ速度)で10本ずつ圧延し、圧延後の製品の表面性状を観察した。
【0035】
なお、粗圧延の板厚と圧延速度のスケジュールを表4に、仕上圧延の板厚と圧延速度のスケジュールを表5に示す。
【0036】
【表4】
【0037】
【表5】
【0038】
【表6】
【0039】
表6中で「鋼」とあるのは、ハイスロール(特許文献1参照)、「超硬」とあるのは少なくとも表層が超硬合金からなるロールを用いたことを示す。超硬合金ロールは図1(d)に示すタイプのものを用いた。超硬合金ロール使用スタンドではワークロールに冷却水のみ供給し、鋼ロール使用スタンドではワークロールに冷却水および圧延油を供給しつつ圧延した。
【0040】
従来例2では、被圧延材であるステンレス鋼とワークロールとの焼付きがF2スタンドのワークロールとして組み込んだハイスロールに発生し、このF2スタンドのロール肌荒れが被圧延材に転写し、表6に示すように製品表面に肌荒れが発生した。
一方、発明例2では、F2スタンドのワークロールとして超硬合金ロールを使用したので、上記従来例2のハイスロールに発生したような、被圧延材であるステンレス鋼とワークロールとの焼付きが発生せず、表6に示したように製品表面は肌荒れがなく良好であった。
【0041】
また、超硬合金ロールはほとんど摩耗していなかった。なお、圧延後の超硬合金ロール表面には肌荒れ、ヒートクラックとも発生していなかった。
上記発明例1、2の場合に限らず、ステンレス鋼種に応じ、ロール表面の肌荒れの生じるスタンドの上下ワークロールについて、そのようなロール投入箇所は、適宜超硬合金ロールを投入するようにしてよく、仕上圧延機の全スタンドの上下ワークロールに超硬合金ロールを適用するとか、あるいはさらに、粗圧延機の全スタンドの上下ワークロールに超硬合金ロールを適用してももちろんかまわない。
【0042】
なお、ロール表面の肌荒れは、各スタンド全般的に圧延荷重の高くなる製品板厚の薄い被圧延材ほど程度がひどくなり、同じ圧延荷重でも圧延速度が遅い方がロールが高温の被圧延材と接触する時間が長い分、熱負荷が増して、やはり程度がひどくなるが、各ステンレス鋼種の圧延チャンスでは、それら鋼種の各種製品寸法、圧延速度の被圧延材群50〜70本程度をつづけて同一のロールで圧延するのが一般的なことから、もっとも肌荒れを生じやすい製品寸法、圧延速度の被圧延材でも肌荒れしないように超硬合金ロールの投入箇所を決定するのがよい。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、ワークロールとステンレス鋼の焼き付きによる肌荒れを防止でき、またロール替え無しに圧延可能なステンレス鋼の本数を増やすことができ、ロール原単位の面からも有利になるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に使用するロールについて図解するための図である。
【図2】本発明を適用する熱間圧延ラインの概要を示す図である。
【図3】従来技術の問題点を図解するための図である。
【図4】従来技術の問題点を図解するための図である。
【符号の説明】
1 軸部材
2 超硬合金
3 側端リング
4 間挿材
10 加熱炉
20 粗圧延機
21 プレス
30 クロップシャ
40 デスケーリング装置
50 仕上圧延機
51 ワークロール
60 冷却ゾーン
70 コイラー
80、81、82 被圧延材
90 接合装置
100 熱間圧延ライン
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステンレス鋼の熱間圧延方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、鋼の熱間圧延では、鋼スラブを加熱炉で1000〜1200℃程度まで加熱し、1 〜3 基程度のリバース式粗圧延機で複数パス圧延し、続いて7スタンド程度のタンデム式仕上圧延機で仕上圧延して鋼帯を製造する。
しかし、粗圧延、仕上圧延双方において言えることであるが、ロール表面が肌荒れする場合があり、そのまま圧延を続けるとロール表面の肌荒れが被圧延材表面に転写して被圧延材表面が凹凸の大きいものとなり、同時に被圧延材の酸化膜の一部が表面に押し込まれ、次工程での酸洗除去が困難となって別途グラインダ研磨手入れを要する「肌荒れ」と呼ばれる表面欠陥が生じる場合がある、という問題があった。
【0003】
ちなみに、ロールには、化学組成がmass%でC:1.0〜2.0%,Si:0.2〜1.5%,Mn:0.3〜1.5%,P:0.05%以下、S:0.05%以下、Ni:0.3〜2.0%,Cr:5〜20%,Mo:0.5〜5.0%,Nb,V,Tiの1種若しくは2種以上が1.0〜3.0%、残部実質的にFeからなる高速度鋼とも呼ばれる材質のいわゆるハイスロール等が通常使用されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
低炭素鋼、極低炭素鋼、高炭素鋼をはじめとする炭素鋼を対象に、1サイクル60〜100本程度の一群の被圧延材を圧延した後のロール表面の肌荒れを観察すると、図3に示すように、いわば亀の甲羅状ともいうべき約1mm四方の微小な表面割れが生じている場合が多い。これは、ロール表面が高温の被圧延材と接触し、冷却水により冷却される、という加熱と冷却の繰り返しを受ける結果、熱疲労により、ひび割れたものであり、熱亀裂(ヒートクラック)と呼ばれている。
【0005】
ところが、対象がステンレス鋼になると、ロール表面の肌荒れは、その態様が異なり、発生のメカニズムも異なるらしいことが知られている。以下にそれについて述べる。
炭素鋼に比べ、ステンレス鋼を対象に熱間圧延した場合の方が、ロール表面の肌荒れが生じやすい。ロール表面の肌荒れは、被圧延材であるステンレス鋼がロール表面側に焼き付くのが原因で発生し、焼き付きはミクロ的に金属同志がある面積で直接接触して凝着を起こし、軟らかい方の金属の一部が破断して硬い方の金属面上に移着することのくり返しにより肉眼で見えるほどまで成長する現象である、と特許文献2では、分析している(特許文献2参照)。また、この凝着性は、金属の種類の組合せにより異なり、一般には、固溶し易い金属同志、結晶構造の類似の金属同志が凝着し易いといわれ、事実、同じ金属同志が最も凝着力が大きい、とも特許文献2は述べている。
【0006】
また、ステンレス鋼は、熱間圧延中、Cr2 O3 のごく薄い酸化物の膜ができて表面を覆うため、炭素鋼に比べ、Cr2 O3 が大気中の酸素の鋼中への拡散を抑制し、FeOの酸化膜の厚さが薄くなることから、圧延されたときに変形によりひび割れるCr2 O3 膜下の鋼とロールとはじかに接触することになり、凝着が起こり易く、ロール表面の肌荒れが促進するという特徴もある。
【0007】
このように、ロール表面の肌荒れが生じ易いステンレス鋼の熱間圧延においては、被圧延材表面に肌荒れしたロールの凹凸が転写して製品の表面品質を損なう場合があるほか、ロール替え無しに圧延可能な被圧延材本数が制限されるため、その都度ロールの研磨が必要となり、ロール原単位の面からも不利となる。
また、ステンレス鋼の熱間圧延においては、ロールと被圧延材の間に硫化エステルやポリサルファイドを含有する圧延油を供給することが提案されており、ロール表面の肌荒れの抑制に効果をあげているが、その解消には至っていない(特許文献3、4)。
【0008】
しかも、これらの圧延油を使用すれば、そのコストは当然かかってくるから、経済上不利になることは免れない。
一方、熱間圧延においては、仕上圧延機の少なくとも1スタンドのワークロールに圧延部表層が超硬合金からなるロールを用いることにより、仕上圧延機での焼き付きやロール摩耗を抑制し、例えば、SUS430ステンレス鋼の熱間圧延で、肌荒れのない表面品質の良好な鋼板にできることが開示されている(特許文献5)。
【0009】
【特許文献1】
特開平5−271855号公報
【特許文献2】
特開昭61−41747号公報
【特許文献3】
特開2000−230187号公報
【特許文献4】
特開2000−178575号公報
【特許文献5】
特開2001−321804号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、ロール表面の肌荒れを防止することができる有効なステンレス鋼の熱間圧延方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、鋼の熱間圧延に際し、少なくとも1スタンドのワークロールに圧延部表層が超硬合金からなるロールを用いる(特許文献5参照)ことからさらに発展し、本発明に想到したものである。
本発明の要旨は以下のとおりである。
1. ステンレス鋼種に応じ、ワークロールに肌荒れの生じるロール投入箇所に、少なくとも表層が超硬合金からなるロールを用いることを特徴とするステンレス鋼の熱間圧延方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
一口にステンレス鋼といっても色々な鋼種がある。発明者らはステンレス鋼種別にワークロールに肌荒れの生じるロール投入箇所がどこかを詳しく調べた。
SUS430をはじめとするフェライト系ステンレス鋼は、変形抵抗が低炭素鋼と同等であるにもかかわらず、低炭素鋼に比べてロール表面が肌荒れしやすく、その態様は、多くの場合、図3に示すごとく、ロール全面において亀の甲羅状のヒートクラックとその欠け落ちが存在している上に、さらに被圧延材の幅エッジを圧延したロール部位において局部的に激しく、凹凸の程度の甚だしい箇所ができたようになる。
【0013】
図4は、フェライト系ステンレス鋼の1種であるSUS444(代表成分:19Cr−2Mo−極低C)を20本圧延後のF2(仕上圧延機において被圧延材搬送方向第2番目の圧延機)の下ロールの例であるが、発明者らの詳しい調査によると、Moを含有するフェライト系ステンレス鋼を圧延すると、ロール表面に生じる肌荒れの程度がひどくなることがわかったほか、7基程度の圧延機からなる仕上圧延機の中でも、F2の下が最もロール表面に生じる肌荒れの程度がひどく、次がF2の上、その次はF3の上と下、F1の上と下、F4の上と下、が同程度で並び、稀にF5あたりでもロール表面の肌荒れが生じる場合がある、というように仕上圧延機のスタンドにより、また、ロールの上下により、ロール表面に生じる肌荒れの程度に違いがあることもわかった。
【0014】
また、仕上圧延機だけでなく、粗圧延機のワークロールでも、ロール表面の肌荒れが発生することがわかったほか、圧下率を大きくすると、ロール表面に生じる肌荒れの程度がひどくなることもわかった。このような現象はSUS444だけでなく、Moを含有するフェライト系ステンレス鋼全般について見られることが最終的には発明者らの調査によって明らかになった、その具体的なステンレス鋼としては、成分範囲でC:0.08mass%以下、Si:1.00mass%以下、Mn:1.00mass%以下、Cr:11.00 〜32.00 mass%、Mo:0.40〜2.50mass%を含有し、あるいはさらにTi、Nb、Zrを合計で1.00mass%以下含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系ステンレス鋼全般がこれに該当する。
【0015】
このほか、対象がCrに加えNiを8mass%内外含有するSUS304をはじめとするオーステナイト系ステンレス鋼になると、フェライト系ステンレス鋼に比べて変形抵抗が大きい割には、却ってロール表面に生じる肌荒れの程度は軽微になることが分かった。
しかし、熱間圧延ライン上でのオシレーション待機などにより被圧延材温度が通常よりも例えば50℃低下した、というような場合、ロールにかかる圧延反力(圧延荷重)が大きくなり、その程度が一定以上(例えば、単位幅あたりの圧延荷重が20000kN/m以上)になると、かなりの確率でロール表面に局部的に肌荒れが生じてしまうこともまたわかった。肌荒れが生じるロール部位は、被圧延材の幅エッジを圧延したロール部位であり、これは、被圧延材の幅エッジ部の温度低下の程度が局部的に大きいため、同部を圧延したロール部位においては圧延反力が局部的に強く、それによりロールの被圧延材との焼き付きの程度が大きくなるため、と考えられる。このような現象はSUS304だけでなくオーステナイト系ステンレス鋼全般について見られることが最終的に発明者らの調査によって明らかになった。その具体的なステンレス鋼としては、成分範囲で、C:0.15mass%以下、Si:1.00mass%以下、Mn:3.00mass%以下、Cr:15.00 〜26.00 mass%、Ni:3.50〜28.00 mass%を含有し、あるいはさらにMo:1.20〜6.00mass%やTi、Nbを合計で1.0 mass%以下含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなるオーステナイト系ステンレス鋼全般がこれに該当する。
【0016】
本発明に係るステンレス鋼の熱間圧延方法では、ステンレス鋼種に応じワークロールに肌荒れの生じるロール投入箇所に、少なくとも表層が超硬合金からなるロールを用いる。
これにより、ロール表面の肌荒れは解消し、熱間圧延後のステンレス鋼表面に焼き付きによる肌荒れが生じなくなる。また、圧延油の供給なしでもロールの肌荒れは解消する。そのため、ロール替え無しに圧延可能となる被圧延材の本数を増やすことができるようになるため、ロール原単位の面からも有利となる。
【0017】
本発明にいうロール投入箇所とは、どの圧延機のどこすなわちどの圧延機の上ワークロールとか下ワークロールとかいうことをさす。また、超硬合金とは、WC、TaC 、TiC 等の超硬材料粉末にCo、Ni、Cr、Ti等の金属粉末のうちから選ばれる1種または2種以上を5〜50mass%添加した超硬材料混合粉末を焼結したものであり、超硬材料混合粉末としては、中でも、WCと、混合粉末全体に対し5〜50mass%のCoを添加した、超硬合金混合粉末を焼結したものとするのが、耐摩耗性、耐肌荒れ性などに優れかつ靭性も良好であるので望ましい。
【0018】
超硬合金の硬度は、HV800以上が好ましい。ヤング率は340000MPa以上が好ましい。上限は特に規定するものではないが、現代の技術で製造可能な超硬合金の硬度とヤング率を勘案し、それぞれ最大でHV1200、570000MPaとするのが妥当である。
先の従来技術の項でも述べた通り、同じ金属同志が最も凝着力が大きいものであるところ、特許文献1のようにCr含有率がmass%で5〜20%のロールを用い、Cr含有率が18%内外と化学成分的に近いフェライト系ステンレス鋼を圧延するから、ロール表面の肌荒れが生ずるのであり、ロールの側の化学成分を著しく異なるものに変更し、少なくとも表層が超硬合金のワークロールを用いて圧延をすれば、圧延油の供給の有無にかかわらず、ロール表面の肌荒れは解消するのである。
【0019】
本発明に使用する超硬合金ロールは、図1(a)に示すように、ロール全体が上記に列挙した成分組成の超硬合金2から成るのが最も好ましい。一方、上記に列挙した成分組成の超硬合金、中でも、WCは非常に高価であるため、図1(b)に示すように、少なくとも表層を超硬合金2としてもよい。それには超硬合金の表層部材は円筒形状とし、それを5mass%Cr鍛鋼等の、比較的安価な、円柱形状の軸部材1に嵌め込むようにしてロールを製造するようにするのが好ましい。
【0020】
以降、円筒形状の表層部材のことをスリーブ部材と称することにする。
スリーブ部材すなわち表層の超硬合金2の部分の厚さがあまりに薄くなると、被圧延材との接触による入熱が、鋼でできた軸部材1の内部まで浸透し、大きく熱膨張してしまう結果、表層の超硬合金2の部分も大きく出っ張ってサーマルクラウンが大きくなってしまうため、表層の超硬合金2の部分の厚さは、25mm以上とすることが好ましい。
【0021】
ところで、スリーブ部材は図1(c)に示すように、複数個の超硬合金2の成形体部材をロール軸方向に接合・一体化して形成したものとし、これを軸部材1に嵌め込むようにして製造するのが好ましい。このようにすることにより、後述のとおり、スリーブ部材は材質均一で短時間に低労力かつ低コストで製造することができるからである。
【0022】
さらに、図1(d)に示すように、軸部材1と、複数個の超硬合金2の成形体部材をロール軸方向に接合・一体化して形成したスリーブ部材の間に例えば鋼製の緩衝材を間挿材4として間挿してもよい。この理由は、最外層、緩衝材、軸部材の順に、ヤング率が小さくなるように緩衝材を選択すると、スリーブを軸部材に焼きばめ、冷やしばめなどの方法によって嵌め込んでロールを製造後に内部応力が発生したり、製造後のロールを圧延に供し、圧延荷重が加わった場合でも、ロールが割損しにくくなり好ましいからである。
【0023】
なお、図1(c)(d)で符号3は、鋼製の側端リングであり、軸部材1と、超硬合金2の成形体部材をロール軸方向に接合・一体化して形成したスリーブ、あるいはさらに、間挿材4を固定するための部材である。
上記超硬合金のスリーブ部材の製造方法について、以下に述べる。
ロールの中心軸と交わる面で仮想的に分割される複数個の円筒状のスリーブ部材は、各1個1個を、超硬合金混合粉末をラバー成形してCIP(冷間等方加圧)により成形し、仮焼結後、各1個1個のスリーブ部材をロール軸方向に複数連ねて接触一体化した状態、あるいはさらに超硬合金粉末を接触部に間挿した状態で、HIP(熱間等方加圧)にて一体化するという方法で製造するようにするのが好ましい。
【0024】
この方法によれば、仮焼結工程における各1個1個のスリーブ部材が小型な分、仮焼結中の熱歪の発生が抑制され、均一な材質のスリーブ部材が製造できて、製造後ロールの内部応力や、圧延供用中の荷重に起因して割損しにくくなるとともに、小型な分、仮焼結後の冷却による熱収縮も小さくなって、HIPに向けて正確な寸法に機械加工する時間と労力とコストも小さくて済む。
【0025】
軸部材は、よく用いられる鋳鋼、鍛鋼、鋳鉄等の金属製とするのがよい。5mass%Cr鍛鋼等の材料が例である。軸部材と超硬合金のスリーブ部材を嵌め合わせてロールとするには、超硬合金のスリーブ部材を必要に応じて機械加工により研削、研磨等し、その空洞部に軸部材を冷し嵌め、あるいはスリーブ部材を軸部材に焼嵌め、などの方法で挿入・嵌合し、これらを固定すればよい。
【0026】
緩衝材を間挿材として間挿する場合、その材質は、最外層の超硬合金よりもCoの比率を増やしたものとするのが、ヤング率を最外層と軸部材の中間の値に調整容易なため好ましい。例えば、最外層の超硬合金がWC−20mass%Co合金の場合、間挿材はWC−50mass%Co合金等とすればよい。
このようにして製造した、少なくとも表層が超硬合金からなるロールを、以降、超硬合金ロールと呼ぶことにする。
【0027】
【実施例】
(実施例1)
図2に示すような熱間圧延ライン100にて、粗圧延機(R1、R2、R3)、仕上圧延機(F1、F2、F3、F4、F5、F6、F7)のワークロールを表3に示すように変更し、フェライト系ステンレス鋼SUS444(F7圧延後の製品板厚3mm、同幅1045mm)を、F7出側被圧延材速度630mpm(トップ速度)で20本ずつ圧延し、圧延後の製品の表面性状を観察した。
【0028】
なお、粗圧延の板厚と圧延速度のスケジュールを表1に、仕上圧延の板厚と圧延速度のスケジュールを表2に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
表3中で「鋼」とあるのは、ハイスロール(特許文献1参照)、「超硬」とあるのは少なくとも表層が超硬合金からなるロールを用いたことを示す。超硬合金ロールは図1(d)に示すタイプのものを用いた。超硬合金ロール使用スタンドではワークロールに冷却水のみ供給し、鋼ロール使用スタンドではワークロールに冷却水および圧延油を供給しつつ圧延した。
【0033】
発明例1では、被圧延材であるステンレス鋼とワークロールとの焼付きが超硬合金ロール使用スタンドにおいて発生しなかったことにより、表3に示したように製品表面は肌荒れがなく良好であった。
また、発明例1に用いた超硬合金ロールはほとんど摩耗していなかった。なお、圧延後の超硬合金ロール表面には肌荒れ、ヒートクラックとも発生していなかった。
【0034】
これに対して、従来例1では、被圧延材であるステンレス鋼とワークロールとの焼付きがR2の上下とF1〜4の上下のワークロールに発生し、ワークロールの肌荒れが、被圧延材に転写し、製品表面に肌荒れが発生した。
(実施例2)
実施例1と同じく、図2に示すような熱間圧延ラインにて、粗圧延機(R1、R2、R3)、仕上圧延機(F1、F2、F3、F4、F5、F6、F7)のワークロールを表6に示すように変更し、オーステナイト系ステンレス鋼SUS304(F7圧延後の製品板厚2mm、同幅1030mm)を熱間圧延ライン上でオシレーションさせ、仕上圧延機入側温度を通常1100℃として仕上圧延するところ、950℃として、F7出側被圧延材速度1050mpm(トップ速度)で10本ずつ圧延し、圧延後の製品の表面性状を観察した。
【0035】
なお、粗圧延の板厚と圧延速度のスケジュールを表4に、仕上圧延の板厚と圧延速度のスケジュールを表5に示す。
【0036】
【表4】
【0037】
【表5】
【0038】
【表6】
【0039】
表6中で「鋼」とあるのは、ハイスロール(特許文献1参照)、「超硬」とあるのは少なくとも表層が超硬合金からなるロールを用いたことを示す。超硬合金ロールは図1(d)に示すタイプのものを用いた。超硬合金ロール使用スタンドではワークロールに冷却水のみ供給し、鋼ロール使用スタンドではワークロールに冷却水および圧延油を供給しつつ圧延した。
【0040】
従来例2では、被圧延材であるステンレス鋼とワークロールとの焼付きがF2スタンドのワークロールとして組み込んだハイスロールに発生し、このF2スタンドのロール肌荒れが被圧延材に転写し、表6に示すように製品表面に肌荒れが発生した。
一方、発明例2では、F2スタンドのワークロールとして超硬合金ロールを使用したので、上記従来例2のハイスロールに発生したような、被圧延材であるステンレス鋼とワークロールとの焼付きが発生せず、表6に示したように製品表面は肌荒れがなく良好であった。
【0041】
また、超硬合金ロールはほとんど摩耗していなかった。なお、圧延後の超硬合金ロール表面には肌荒れ、ヒートクラックとも発生していなかった。
上記発明例1、2の場合に限らず、ステンレス鋼種に応じ、ロール表面の肌荒れの生じるスタンドの上下ワークロールについて、そのようなロール投入箇所は、適宜超硬合金ロールを投入するようにしてよく、仕上圧延機の全スタンドの上下ワークロールに超硬合金ロールを適用するとか、あるいはさらに、粗圧延機の全スタンドの上下ワークロールに超硬合金ロールを適用してももちろんかまわない。
【0042】
なお、ロール表面の肌荒れは、各スタンド全般的に圧延荷重の高くなる製品板厚の薄い被圧延材ほど程度がひどくなり、同じ圧延荷重でも圧延速度が遅い方がロールが高温の被圧延材と接触する時間が長い分、熱負荷が増して、やはり程度がひどくなるが、各ステンレス鋼種の圧延チャンスでは、それら鋼種の各種製品寸法、圧延速度の被圧延材群50〜70本程度をつづけて同一のロールで圧延するのが一般的なことから、もっとも肌荒れを生じやすい製品寸法、圧延速度の被圧延材でも肌荒れしないように超硬合金ロールの投入箇所を決定するのがよい。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、ワークロールとステンレス鋼の焼き付きによる肌荒れを防止でき、またロール替え無しに圧延可能なステンレス鋼の本数を増やすことができ、ロール原単位の面からも有利になるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に使用するロールについて図解するための図である。
【図2】本発明を適用する熱間圧延ラインの概要を示す図である。
【図3】従来技術の問題点を図解するための図である。
【図4】従来技術の問題点を図解するための図である。
【符号の説明】
1 軸部材
2 超硬合金
3 側端リング
4 間挿材
10 加熱炉
20 粗圧延機
21 プレス
30 クロップシャ
40 デスケーリング装置
50 仕上圧延機
51 ワークロール
60 冷却ゾーン
70 コイラー
80、81、82 被圧延材
90 接合装置
100 熱間圧延ライン
Claims (1)
- ステンレス鋼種に応じ、ワークロールに肌荒れの生じるロール投入箇所に、少なくとも表層が超硬合金からなるロールを用いることを特徴とするステンレス鋼の熱間圧延方法。
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- 2002-12-19 JP JP2002367709A patent/JP2004195515A/ja active Pending
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