JP2004194554A - 健康食品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】健康食品は、ガルシノンE、マンゴスチノン又は1,7−ジヒドロキシ−2−イソプレニル−3−メトキシキサントンを有効成分とするものである。また、この健康食品は、α−マンゴスチン、β−マンゴスチン又はγ−マンゴスチンを有効成分とするとともに、前記有効成分を成人1日当たり100mg以下、好ましくは1〜50mg経口摂取するように構成される。これらの有効成分は、マンゴスチンの果皮から抽出される。この健康食品は、1日数回に分けて服用するのが好ましく、この場合には前記有効成分の1回当たりの摂取量を好ましくは1〜5mg、より好ましくは2〜4mgとするとよい。前記有効成分としてはα−マンゴスチンが最も効果が高い。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、癌細胞、癌化しつつある異常細胞、細胞寿命を迎えつつある血球細胞等の不要細胞に対し生理的な細胞死(アポトーシス;apoptosis)を促進させてそれらを効率的に除去するように構成された健康食品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、α−マンゴスチン、β−マンゴスチン又はγ−マンゴスチンを代表とするキサントン誘導体及びその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する抗腫瘍剤が知られている(特許文献1参照)。前記有効成分は、トポイソメラーゼI及びIIに対する阻害活性を有している。そして、この抗腫瘍剤は、前記有効成分がトポイソメラーゼの活性を阻害することにより、特に細胞周期の短い癌細胞の細胞分裂を停止させ、その増殖を抑制することによって抗腫瘍効果が発揮される。一方、ガルシノンE、マンゴスチノン及び1,7−ジヒドロキシ−2−イソプレニル−3−メトキシキサントンについてはこの種の報告はない(非特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平10−203977号公報
【非特許文献1】
浅井、土佐、田中、飯沼(FUJIO ASAI,HIDEKI TOSA,TOSHIYUKI TANAKA and MUNEKAZU IINUMA)、マンゴスチンの果皮由来のキサントン(A XANTHONE FROM PERICARPS OF GARCINIA MANGOSTANA)、フィトケミストリイ(Phytochemistry)、英国、エルセビア・サイエンス社(Elsevier Sceience Ltd)、1995、Vol.39、No.4、pp.943−944
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記従来の抗腫瘍剤は、癌の集中的な治療を目的としたものであることから、トポイソメラーゼI及びIIの活性阻害を有効に引き起こすために、通常はそれら酵素の活性阻害が十分に発揮され得る比較的高い投与量で投与されていた。このため、この抗腫瘍剤では、高濃度の有効成分の被曝により、癌細胞の細胞周期を停止させることができる一方で、細胞回転の速い正常細胞、例えば骨髄細胞や腸粘膜の細胞等の活動(生理機能)をも同時に停止させてしまうおそれが高く、種々の副作用の発生が懸念されていた。従って、この高濃度の有効成分を含有する抗腫瘍剤は、あくまでも医薬品として使用されるものであって、健康状態の維持や増進を目的とする健康食品としての利用には適さないばかりか、却って前記副作用による悪影響を及ぼすおそれがあった。
【0005】
この発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、不要細胞に対して生理的な細胞死を積極的に誘導することにより、健康状態の維持を容易に図ることができるように構成された健康食品を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の健康食品は、α−マンゴスチン、β−マンゴスチン又はγ−マンゴスチンを有効成分とする健康食品であって、前記有効成分を成人1日当たり100mg以下経口摂取することを特徴とするものである。
【0007】
請求項2に記載の発明の健康食品は、ガルシノンE、マンゴスチノン又は1,7−ジヒドロキシ−2−イソプレニル−3−メトキシキサントンを有効成分とするものである。
【0008】
請求項3に記載の発明の健康食品は、マンゴスチンの果皮を有機溶媒で抽出した抽出物を有効成分として含有することを特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を具体化した実施形態を詳細に説明する。
実施形態の健康食品は、α−マンゴスチン、β−マンゴスチン、γ−マンゴスチン、ガルシノンE、マンゴスチノン及び1,7−ジヒドロキシ−2−イソプレニル−3−メトキシキサントンから選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有する。この健康食品は、前記6種類の有効成分のうちの1種類以上を含有するものであり、複数種類若しくは全種類を含有するものであってもよく、又はその他の夾雑物を同時に含有していてもよい。また、この健康食品としては、単離された有効成分を食品や飲料品中に含有させたものであってもよいが、前記有効成分を含有する植物の抽出物の一部又は全体を食品や飲料品中に含有させたものであってもよい。
【0010】
マンゴスチン(mangostin)としてのα−マンゴスチン、β−マンゴスチン及びγ−マンゴスチンは、いずれもイソプレニル(isoprenyl)基を有する1,3,6,7酸化型キサントン(xanthone)誘導体である。α−マンゴスチンは、下記化1に示す構造を有するとともに、RをH(水素)、R1をメチル基、R2をHとしたものである。β−マンゴスチンは、下記化1に示す構造を有するとともに、RをH、R1及びR2をメチル基としたものである。γ−マンゴスチンは、下記化1に示す構造を有するとともに、R、R1及びR2をHとしたものである。
【0011】
【化1】
ガルシノンE(garcinone E)はイソプレニル基を有する1,3,6,7酸化型キサントン誘導体である。このガルシノンEは、上記化1に示す構造を有するとともに、前記Rをプレニル(prenyl)基、R1及びR2をHとしたものである。
【0012】
マンゴスチノン(mangostinone)は下記化2に示す構造を有している。
【0013】
【化2】
1,7−ジヒドロキシ−2−イソプレニル−3−メトキシキサントン(1,7-dihydroxy-2-isoprenyl-3-methoxyxanthone)は下記化3に示す構造を有している。
【0014】
【化3】
これらの有効成分はいずれも、オトギリソウ科植物の1種であるマンゴスチン(Garcinia mangostana Linn.)の果皮から抽出される天然物由来の有機化合物である。また、これらの有効成分は、マンゴスチンの果実中にも少量含有されている。これらの有効成分は、マンゴスチンの果皮を、有機溶媒で抽出した後、種々の液体クロマトグラフィーを用いて精製することにより単離される。前記有機溶媒としては、アルコール、ベンゼン、アセトン等が利用可能であるが、ベンゼンやアセトン等の親油性の高い有機溶媒が好適に用いられる。なお、マンゴスチンの果皮を前記有機溶媒にて抽出した抽出物中には、通常前記6種類全ての有効成分が含有されている。これらの有効成分はいずれも、高い抗菌活性を有するとともに高い抗酸化活性を有している。
【0015】
これらの有効成分はいずれも、不要細胞や比較的不要な細胞に対し生理的な細胞死(アポトーシス)を誘導させる作用を有する。前記不要細胞としては、癌細胞、ポリープや良性腫瘍(前癌状態にある細胞)等の異常細胞が挙げられ、前記比較的不要な細胞としては、細胞寿命を迎えつつある血球細胞やその他老化した細胞が挙げられる。これらの有効成分のアポトーシス誘導作用は、マンゴスチン(α−マンゴスチン、β−マンゴスチン、γ−マンゴスチン)、ガルシノンE、マンゴスチノン、1,7−ジヒドロキシ−2−イソプレニル−3−メトキシキサントンの順に高い。
【0016】
この健康食品は、前記有効成分としてα−マンゴスチンを含有する場合には、該有効成分を成人1日当たり100mg以下、好ましくは1〜50mg、より好ましくは2〜30mg、より一層好ましくは3〜15mg、さらに好ましくは5〜10mg経口摂取するように構成されている。このα−マンゴスチンの1日当たりの摂取量(最大摂取量)が100mgを越える場合には下痢等になりやすくなる。逆に前記1日当たりの摂取量が1mg未満の場合には、不要細胞にアポトーシスを誘導する効果が十分に発揮されないおそれがある。なお、この健康食品は、1日数回(2〜3回)に分けて服用するのが好ましく、この場合には前記有効成分の1回当たりの摂取量を好ましくは1〜5mg、より好ましくは2〜4mgとするとよい。また、小人の場合は、主に体重に依存して摂取量が調整されるが、前記成人の摂取量の半量が目安となる。
【0017】
また、その他の有効成分については、α−マンゴスチンの摂取量とほぼ同程度であればよい。なお、ガルシノンE、マンゴスチノン又は1,7−ジヒドロキシ−2−イソプレニル−3−メトキシキサントンを有効成分として含有する場合には、α−マンゴスチンの摂取量の1〜3倍、より好ましくは1〜2倍の摂取量であってもよい。なお、この健康食品中に複数種類の有効成分が含有されている場合には、それら有効成分の総和が、前記α−マンゴスチンの場合と同程度であればよく、α−マンゴスチンの摂取量の1〜3倍、より好ましくは1〜2倍の摂取量であっても構わない。
【0018】
この健康食品は、経口摂取するように構成されていることから、特に前記有効成分に高い濃度で曝されやすい消化器、口腔又は咽頭系の癌やポリープの発生の防止や予防に顕著な効果を発揮する。この健康食品は、通常用いられている各種製剤の調製法にて調製される。製剤の剤形としては、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤、油性又は水性の懸濁液等が挙げられる。また、経口摂取しやすくするために、牛乳やヨーグルト等の乳製品や、ドリンク剤等の飲料品に前記有効成分を含有させても構わない。
【0019】
この健康食品を液状とした場合の有効成分の濃度は、好ましくは5〜20μM、より好ましくは7.5〜15μMである。この健康食品中の有効成分の濃度が5μM未満の場合には、癌やポリープの予防効果を十分に発揮させることができない。逆に20μMを越える場合には、口腔や咽喉等が荒れるおそれがある。また、この健康食品を固形状又は粉末状とした場合には、前記液状の場合と同様の理由で、消化器官(胃)内で分散又は溶解されたときの有効成分の濃度が、好ましくは5〜20μM、より好ましくは7.5〜15μM程度となるように設定するとよい。一方、この健康食品は、消化器官(胃)内における有効成分の濃度が、好ましくは0.5〜5μM、より好ましくは1〜3μMの範囲内となるように摂取するとより一層よい。
【0020】
上記実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 実施形態の健康食品は、ガルシノンE、マンゴスチノン及び1,7−ジヒドロキシ−2−イソプレニル−3−メトキシキサントンから選ばれる少なくとも1種を有効成分とするものである。また、α−マンゴスチン、β−マンゴスチン及びγ−マンゴスチンから選ばれる少なくとも1種を有効成分とするとともに、前記有効成分を成人1日当たり100mg以下経口摂取するように構成されたものである。このため、この健康食品は、癌細胞や癌化しつつある不要細胞に対して生理的な細胞死(アポトーシス)を選択的かつ積極的に誘導することにより、それら不要細胞のみを生理的に取り除き、癌の発症を容易に防止することができる。さらに、老化した血球細胞等の比較的不要な細胞に対してもアポトーシスを促進させることから、身体の新陳代謝を活発化させて健康状態の維持及び増進を図ることが容易である。また、この健康食品は、前記不要細胞及び比較的不要な細胞以外の有用な正常細胞に対しては、積極的にアポトーシスを誘導することはないことから副作用が極めて少ない。
【0021】
特に、この健康食品は、前記不要細胞及び比較的不要な細胞に対して病理的な変化を引き起こすものではなく、生理的な変化を引き起こすものであることから、前記従来の抗腫瘍剤とは異なり極めて有用である。さらに、この健康食品は、前記従来の抗腫瘍剤とは異なり、細胞分裂速度に関わらず、個体の維持に不要な細胞(不要細胞及び比較的不要な細胞)のみを効果的に取り除くことから極めて有用性は高い。加えて、この健康食品は、抗菌活性及び抗酸化活性に優れていることから、健康状態の維持に大いに寄与し得る。一方、前記有効成分は、いずれも天然の植物由来であるうえ該植物の可食部にも含有されているものである。また、前記有効成分は、前記植物の非可食部から容易かつ大量に得られることから、極めて安価に提供され得る。
【0022】
・ この健康食品は、消化器、口腔又は咽頭系の癌やポリープの発生の防止や予防に高い効果を発揮することから、極めて簡便かつ効果的にそれらの病気の予防を行うことができる。特に、家族性大腸癌のように遺伝的に癌に罹りやすい体質の人々にとっては、毎日服用するのが極めて容易であることからその予防を著しく容易に行うことができて便利である。
【0023】
・ 有効成分として、マンゴスチンの果皮を有機溶媒で抽出した抽出物を含有させることにより、著しく容易かつ大量に有効成分を得ることができる。特に、前記抽出物中には、前記複数種類の有効成分が豊富に含有されていることから、極めて効果的な健康増進効果が発揮され得る。また、各有効成分が発揮する健康増進効果はそれぞれ特異性等において微妙に異なっている可能性が高いことから、前記健康増進効果は多面的に発揮され得る可能性が極めて高い。
【0024】
【実施例】
以下、前記実施形態を具体化した実施例及び比較例について説明する。
<有効成分の精製及び構造決定>
インドネシアのバリ島で採取したマンゴスチンの果皮を乾燥させて細片に切断し、粉砕した後、有機溶媒(ベンゼン)で抽出を行った。得られた抽出物8gをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、ノルマルヘキサン(n-hexane)−酢酸エチル(EtOAc)混合溶媒系を用いて分画を行うことによって8つの画分を得た。なお、第1及び第2画分はn-hexane:EtOAc=5:1の溶出液、第3及び第4画分はn-hexane:EtOAc=3:1の溶出液、第5及び第6画分はn-hexane:EtOAc=1:1の溶出液、第7画分は100%アセトン、第8画分は100%メタノールで溶出した。
【0025】
次に、前記第2画分を、さらに減圧液体クロマトグラフィーに付し、ノルマルヘキサン−酢酸エチル混合溶媒系を用いて分画を行い、そのn-hexane:EtOAc=5:1の溶出液で溶出された画分をゲル濾過クロマトグラフィー(Sephadex LH-20;ファルマシア社)に付し、溶出液としてアセトンを用いて精製した。その結果、物質A(2mg)、物質B(2mg)、物質C(2mg)、物質D(4mg)及び物質E(2mg)の5種類の物質が得られた。
【0026】
一方、前記第3画分を、さらに減圧液体クロマトグラフィーに付し、ノルマルヘキサン−酢酸エチル混合溶媒系を用いて分画を行ったところ、そのn-hexane:EtOAc=5:1の溶出液で溶出された画分中に物質F(5mg)が存在していた。さらにこのとき、n-hexane:EtOAc=1:1の溶出液で溶出された画分中には、物質G(2mg)が存在していた。また、この第3画分をn-hexane:EtOAc=3:1の溶出液で溶出することにより分画された画分をSephadex LH-20に付し、メタノールを用いて精製したところ、物質H(2mg)が得られた。
【0027】
次に、前記物質A、B、D、F、G及びHについて構造決定を行ったところ、それぞれβ−マンゴスチン、ガルシノンE、1,7−ジヒドロキシ−2−イソプレニル−3−メトキシキサントン、α−マンゴスチン、γ−マンゴスチン及びマンゴスチノンであることが判明した。なお、前記α〜γ−マンゴスチンは文献1(W.Mahabusarakan,P.Wiriyachira,W.Taylor J.Nat.Prod.(1987)50,474)、ガルシノンEは文献2(S.Sasaki,M.Katsura,H.Takayama,N.Aimi,N.Chokethaworn,M.Suttajit Chem.Oharm.Bull.(1993)41,958)、1,7−ジヒドロキシ−2−イソプレニル−3−メトキシキサントンは文献3(A.K.Sen,K.K.Sarkar,P.C.Mazumder,N.Banerji Phytochemistry(1980)20,183)に記載の各文献値とそれぞれ対比することにより同定及び確認された。また、以下に物質H(マンゴスチノン)のスペクトルデータを示す。
【0028】
a yellow amorphous;HREIMS:m/z380.1601 for C23H24O5(calcd.380.1623);EIMS m/z(rel.int.):380(M+,23),311(65),295(21),269(22),257(100),229(9),228(8),137(7),69(53),41(51);UVλ(MeOH)nm:220sh,244,250sh,318,345sh,+NaOMe:212,242sh,280sh,357;1H NMR(400MHz,acetone-d6)δ:1.55(3H,s,H-20),1.60(3H,s,H-19),1.81(3H,s,H-14),1.98(4H,m,H-14,16),3.39(2H,d,J=6.8Hz,H-11),5.08(1H,t like,H-17),5.31(1H,t like,H-12),6.57(1H,s,H-4),7.26(1H,t,J=7.8Hz,H-7),7.32(1H,dd,J=7.8,1.5Hz,H-6),7.68(1H,dd.J=7.8,1.5Hz,H-8),9.15,9.70(1Heach,brs,OH-C-3,5),13.25(1H,s,OH-C-1);13C NMR(100MHz,acetone-d6)δ:161.7(C-1),111.7(C-2),164.1(C-3),94.4(C-4),146.9(C-5),121.3(C-6),124.8(C-7),116.5(C-8),181.7(C-9),156.5(C-4a),122.4(C-8a),103.8(C-9a),146.1(C-10a),22.0(C-11),123.3(C-12),135.5(C-13),40.6(C-14),16.3(C-15),27.5(c-16),125.1(C-17),131.7(C-18),25.8(C-19),17.7(C-20)
一方、前記物質Cは前記文献3との対比から1,5-dihydroxy-2-isoprenyl-3-methoxyxanthoneであり、物質Eは前記文献1との対比からgartaninであることも判明した。なお、これら物質C及びDは、いずれも単独では不要細胞に対するアポトーシス誘導効果は見られないが、マンゴスチンの果皮を有機溶媒で抽出した抽出物中の夾雑物として高含有されており、各有効成分を安定化させるのに役立っている可能性が高い。また、前記シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて溶出された精製物としてのn-hexane:EtOAc=5:1〜3:1の溶出液(第2及び第3画分)中に上記6種類の有効成分が高含有されていることが判明し、これらの画分を健康食品中に含有させるとよいことも確認された。
【0029】
<不要細胞に対する増殖抑制効果の検証1>
不要細胞として、入手及び取り扱いが容易なヒト大腸癌細胞株DLD−1を用いて試験を行った。上記単離された各有効成分をDLD−1の培養液中にそれぞれ10μMとなるように添加して24時間経過した後の生細胞数を、タカラバイオ社製のPremix WST-1 Cell Proliferation Assay Systemにて測定した。一方、前記有効成分を添加しないものをコントロールとした。結果を図1のグラフに示す。なお、図1のグラフの縦軸は吸光度を示し、該吸光度が低いほど増殖抑制効果が高いことを示す。
【0030】
その結果、コントロールと比較して、各有効成分が有意にDLD−1の増殖を抑制したことが確認された。なお、このDLD−1は、大腸のポリープやその他の癌細胞で多く見られるRas及びAPC遺伝子に変異を持つ細胞株であることから、これらポリープやその他の癌細胞に対しても全く同様に増殖を抑制するであろうことが強く示唆される。また、データは示さないが、オトギリソウ科植物由来の種々のキサントン誘導体を同様に試験したところ、前記有効成分以外の物質では有意な増殖抑制効果が発揮されなかったことも確認された。
【0031】
一方、前記不要細胞に対する高い増殖抑制効果が確認されたα−マンゴスチン、β−マンゴスチン、γ−マンゴスチン、ガルシノンE及びマンゴスチノンと、コントロールについて、試験終了後のDLD−1細胞から細胞核を分離してアガロースゲル電気泳動を行った。その結果、コントロール以外はいずれもアポトーシスに特徴的なDNAラダーの泳動像が確認された。さらに、これら試験終了後のDLD−1細胞の細胞核をヘキスト33321にて核染色し、蛍光顕微鏡にて観察した。その結果、α−マンゴスチン及びβ−マンゴスチンを添加した細胞では細胞核が断片化したアポトーシス小体が明確に確認され、γ−マンゴスチンを添加した細胞では若干弱いがほぼ同様な量のアポトーシス小体が明確に確認された。ガルシノンE及びマンゴスチノンを添加した細胞並びにコントロールでは、死細胞数が極端に少なかったことから、アポトーシス小体は観察されなかった。
【0032】
<不要細胞に対する増殖抑制効果の検証2>
不要細胞として、入手及び取り扱いが容易なヒト白血病細胞株HL60、K562、NB4及びU937を用いて試験を行った。即ち、α−マンゴスチンを前記各細胞株の培養液中に0(コントロール),1,2,5,10,20μMとなるように添加した後、0,24,48,72時間経過後の生細胞数をカウントした。結果を図3(a)〜(d)のグラフにそれぞれ示す。なお、図3(a)〜(d)に示される各グラフにおいて、α−マンゴスチンを添加していないコントロールを点線で示し、α−マンゴスチンを添加したものを、1μM(□)、2μM(△)、5μM(実線のみ)、10μM(■)、20μM(▲)で示した。その結果、α−マンゴスチンは、5μM未満の濃度ではほとんど癌細胞の増殖を抑制しないが、5μM以上、好ましくは5μMを越える濃度で癌細胞の増殖を抑制し、10μM以上の濃度で顕著に癌細胞の増殖を抑制することが確認された。
【0033】
一方、前記4種類の細胞株の培養液中に10μMのα−マンゴスチンを添加してから24時間経過した細胞に対してヘキスト33321で核染色を行った結果、いずれもアポトーシス小体が蛍光顕微鏡にて明確に確認された。一方、α−マンゴスチンを添加していないコントロールでは、死細胞数がほとんど確認されなかったうえ、アポトーシス小体は全く観察されなかった。さらに、前記4種類の細胞株とコントロールとから染色体を分離してアガロースゲル電気泳動を行ったところ、コントロールではDNAの断片化が全く確認されなかったのに対し、α−マンゴスチンを添加した細胞では明確なDNAラダーが確認された。なお、図2に最も鮮明にアポトーシス小体が確認されたNB4の顕微鏡写真と電気泳動像とを示す。
【0034】
<正常細胞に対する細胞毒性の評価>
健康な成人血液から正常な白血球を採取して試験に用いた。α−マンゴスチン、抗癌剤として知られるタキソール(Taxiol)及び抗腫瘍効果が確認されているレスベラトロール(Resveratrol;3,5,4'-trihydroxystilbene)を各種濃度となるように培養液中に添加した後、経時的に生細胞数をカウントした。なお、前記α−マンゴスチン、タキソール及びレスベラトロールは、それぞれジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解したDMSO溶液として培養液中に添加した。結果を図4(a)〜(c)のグラフに示す。なお図4のグラフにおいて、コントロールは何も添加していないもの、DMSOはDMSOのみを添加したものである。
【0035】
その結果、タキソール及びレスベラトロールは正常細胞に対する細胞毒性が非常に強いのに対し、α−マンゴスチンは正常細胞に対する細胞毒性は極端に少ないことが確認された。特に、α−マンゴスチンは、20μM以上では正常細胞に対して細胞毒性を発揮するが、それ未満の濃度では正常細胞に対する細胞毒性はほとんど見られない。さらに、図3のグラフで得られた知見を加味すると、α−マンゴスチンは5μM以上かつ20μM未満の濃度では正常細胞に対する細胞毒性が低く、癌細胞に対してはアポトーシスを誘導する作用が高いことが確認された。特に、このα−マンゴスチンは、好ましくは5μMを越えかつ20μM未満、より好ましくは7.5〜15μM、さらに好ましくは7.5〜12.5μMの濃度で細胞に晒されるとよいことが容易に推測され得る。
【0036】
なお、特許文献1の抗腫瘍剤において、α−マンゴスチンによるトポイソメラーゼI及びIIのIC50は、それぞれモル濃度に換算すると134μM及び93μMとなり、β−マンゴスチンの場合には354μM及び189μM、γ−マンゴスチンの場合には98μM及び13μMとなる。さらに、前記IC50は無細胞系での試験結果であることから、細胞に対して両トポイソメラーゼ活性を有効に阻害する濃度は、前記両IC50のうち高い濃度(例えばγ−マンゴスチンの場合には98μMが採用される)よりも高くなるはずである。従って、α−マンゴスチンがアポトーシスを誘導するのに有効な濃度と、トポイソメラーゼの活性阻害に有効な濃度とは1桁以上異なり、両活性が重なる濃度は存在し得ないことが分かる。また、β及びγ−マンゴスチンについても全く同様な結論が導出され得る。
【0037】
<作用メカニズムの推定>
HL60の培養液中にα−マンゴスチンを終濃度0μM(コントロール)又は10μMとなるように添加して6時間培養を行った後、Mito-Tracker赤を用いてミトコンドリア膜電位を蛍光顕微鏡下で観察した。その結果、コントロール細胞ではミトコンドリアに強い蛍光が見られたが、α−マンゴスチンを添加した細胞では蛍光は極めて僅かしか見られなかった。Mito-Tracker赤は、ミトコンドリア内で発生する活性酸素種により酸化されて赤い蛍光を発する試薬であることから、α−マンゴスチンの添加によってミトコンドリア活性が著しく低下したことが確認され、ミトコンドリアを介してアポトーシスが誘導されていることが強く示唆された。
【0038】
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 上記有効成分は健康食品に限らず、例えば美容食品、化粧料(医薬部外品や化粧品)等に含有させてもよい。このように構成した場合でも健康や美容に高い効果を発揮し得る。
【0039】
・ 上記有効成分をアポトーシス誘導剤又はアポトーシス促進剤として利用してもよい。このように構成した場合、不要細胞に対して生理的な細胞死を積極的に誘導することができる。
【0040】
・ 上記有効成分を食品添加物として利用してもよい。このように構成した場合、前記有効成分により高い抗菌活性及び抗酸化活性を発揮することができる。
上記実施形態とは直接関係ないが、ガルシノンE、マンゴスチノン又は1,7−ジヒドロキシ−2−イソプレニル−3−メトキシキサントンを癌治療薬として利用しても構わない。このように構成した場合、癌細胞に対して生理的な細胞死を誘導することにより、癌の治療を効果的に行うことができるうえ、副作用が少ない。
【0041】
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ マンゴスチンの果皮を有機溶媒で抽出した抽出物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した精製物を有効成分として含有することを特徴とする健康食品。このように構成した場合、高い健康維持効果を図ることができる健康食品を大量かつ容易に提供することが容易である。
【0042】
・ α−マンゴスチン、β−マンゴスチン、γ−マンゴスチン、ガルシノンE、マンゴスチノン又は1,7−ジヒドロキシ−2−イソプレニル−3−メトキシキサントンを有効成分として含有する美容食品。α−マンゴスチン、β−マンゴスチン、γ−マンゴスチン、ガルシノンE、マンゴスチノン又は1,7−ジヒドロキシ−2−イソプレニル−3−メトキシキサントンを有効成分として含有する化粧料。α−マンゴスチン、β−マンゴスチン、γ−マンゴスチン、ガルシノンE、マンゴスチノン又は1,7−ジヒドロキシ−2−イソプレニル−3−メトキシキサントンを有効成分として含有するアポトーシス促進剤。
【0043】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明によれば、次のような効果を奏する。
請求項1から請求項3に記載の発明の健康食品によれば、不要細胞に対して生理的な細胞死を積極的に誘導することにより、健康状態の維持を容易に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】不要細胞に対する増殖抑制効果の検証1の結果を示すグラフ。
【図2】不要細胞に対する増殖抑制効果の検証2の結果を示す写真。
【図3】(a)〜(d)はいずれも、実施例の不要細胞に対する増殖抑制効果の検証2の結果を示すグラフ。
【図4】(a)〜(c)はいずれも、実施例の正常細胞に対する細胞毒性の評価の結果を示すグラフ。
Claims (3)
- α−マンゴスチン、β−マンゴスチン又はγ−マンゴスチンを有効成分とする健康食品であって、
前記有効成分を成人1日当たり100mg以下経口摂取することを特徴とする健康食品。 - ガルシノンE、マンゴスチノン又は1,7−ジヒドロキシ−2−イソプレニル−3−メトキシキサントンを有効成分とする健康食品。
- マンゴスチンの果皮を有機溶媒で抽出した抽出物を有効成分として含有することを特徴とする健康食品。
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