JP2004192981A - 燃料電池用セパレータおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ガス流路部および枠体は炭素粉末と熱硬化性樹脂との混合粉末から成形された板状の成形体からなる燃料電池のセパレータにおいて、枠体の破壊靱性値とガス流路部の破壊靱性値との比が1.1以上、枠体とガス流路部のガス透過率が10-6cc/cm2 ・分以下であり、枠体とガス流路部とが一体に成形されている。天然黒鉛または膨張黒鉛50〜100重量部と人造黒鉛0〜50重量部からなる炭素粉末100重量部と熱硬化性樹脂38〜95重量部との混合粉末と、天然黒鉛または膨張黒鉛0重量部以上50重量部未満と人造黒鉛50〜100重量部からなる炭素粉末100重量部と熱硬化性樹脂18〜45重量部との混合粉末を同一の金型に装填した後、熱圧成形する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池用セパレータ、とくに自動車、小型分散型電源などに使用される固体高分子型燃料電池用セパレータおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子型燃料電池は、リン酸型燃料電池などの燃料電池に比較して低温で且つ高出力の発電が可能であるため、自動車の電源をはじめ小型の移動型電源として期待されている。固体高分子型燃料電池は、図1に示すように、通常、スルホン酸基を有するフッ素樹脂系イオン交換膜のような高分子イオン交換膜からなる電解質膜7を挟んで配置される一対の電極4、5(アノード4、カソード5)と、これをさらに両側から挟むセパレータ1よりなる単セルを複数積層したスタックおよびその外側に設けた2つの集電体から構成される。8はフッ素樹脂、フッ化ゴムなどからなるシール材である。
【0003】
電極4、5は、白金触媒を担持させた触媒電極であり、セパレータ1は、緻密な炭素質材料から成形され、直線状または格子状に延びる複数の溝6が形成されており、溝6とカソード5の表面の間に形成される空間を酸素含有ガス流路とし、溝6とアノード4の表面の間に形成される空間を燃料ガス(例えば水素ガスや、水素ガスを主成分とする混合ガスなど)流路として、酸素含有ガスと燃料ガスとが電極に接触して起こる化学反応(水素ガス側:H2 →2H+ +2e- 、酸素含有ガス側:(1/2)O2 +2H+ +2e- →H2 O)を利用して電極間から電気を取り出すようになっている。
【0004】
図1に示すように、セパレータ1は、片面または両面に複数のガス流通用の溝6が形成されている反応ガスの流路部(ガス流路部)Aと、ガス流路部Aの端縁部(周縁部)を構成する枠体Bからなる。
【0005】
セパレータの材質特性としては、燃料ガスと酸化剤ガスとを完全に分離した状態で電極に供給するために高度のガス不透過性が要求される。また、発電効率を高くするために電池の内部抵抗を小さくすることが必要である。さらに、電池スタックは、単セルを数十層積層して組立てられるが、電池性能を確保するために、各セル間が十分に密着するように組み立てることが必要であり、組立ては、通常、0.05〜1MPa程度の締め付け力で周囲をボルト締めすることにより行われるためセパレータに割れが生じ易く、従って組立て時の締め付け力に耐える常温強度をそなえるとともに、電池の作動温度である80〜100℃の高温においても十分な材質強度を有するものでなければならず、一般には、緻密質の炭素質材料から成形される。
【0006】
電池性能の高出力化と小型化を図るために、セパレータを薄肉化して単セルの厚さを薄くすることが考えられるが、セパレータの厚さは、発電効率を考慮しガス圧損失に配慮した反応ガス流通路としての厚さと気体不透過性に必要な厚さを加味した厚さをそなえたものであるため、薄肉化には限界がある。
【0007】
セパレータのうち、ガス流路部(A)の部材には、高効率の発電に寄与させるために、ガス遮断性(気体不透過性)をそなえた電気比抵抗の低い材質性状のものを選択しなければならず、枠体(B)には、必要に応じてガス導入部が形成されるので、外部への反応ガス漏れを防止し、燃料電池反応により生じる電流漏れ、ガス漏れを防止することが重要な要件となるから、その部材には、ガス流路部と同様の気体不透過性を有し、且つガス流路部より電気比抵抗の高い材質性状のもので形成する必要がある。
【0008】
上記のような観点から、炭素系材料からなる種々のセパレータが提案されてきた。これらのセパレータは、黒鉛などの炭素粉末を、熱硬化性樹脂をバインダーとして成形してなる炭素/樹脂硬化成形体であり、当該成形体の製造は、炭素材に耐食性樹脂を含浸した複合材を機械加工する方法や、炭素粉末と耐食性樹脂との混合粉を熱圧成形する方法により行われ、ガス流路部と枠体が一体となったセパレータが成形される。
【0009】
このうち、炭素粉末と耐食性樹脂との混合粉を熱圧成形し、最終形状を付与してセパレータとする方法によれば、炭素化工程や黒鉛化工程、機械加工が不要であり、材質特性を制御し易い上に短期間で製造できる利点があるため、この方法で製造されるセパレータについて、いくつかの提案が行われている。
【0010】
熱圧成形による方法は、同一金型中で、枠体とガス流路部とを一体に成形するもので、例えば、天然黒鉛と人造黒鉛とが重量比で80:20〜60:40の割合で混合された黒鉛粉末100重量部と熱硬化性樹脂10〜25重量部からなる粉末を板状に成形したセパレータが提案されている(特許文献1参照)。このセパレータにおいては、天然黒鉛の持つ可撓性により枠体には高い靱性が与えられるが、ガス流路部では適正な特性が維持できず、通電方向の電気比抵抗の増大を招き電池性能が低下するという問題が生じる。
【0011】
人造黒鉛、天然黒鉛、膨張黒鉛などの炭素粉末100重量部とバインダー樹脂18〜45重量部との混合粉末から形成したガス流路部の予備成形体と、炭素粉末100重量部とバインダー樹脂38〜95重量部からなり、バインダー樹脂量を前記ガス流路部の予備成形体のバインダー樹脂量より20〜50重量部多くした混合粉末から形成した枠体の予備成形体を金型に装入して、一体に熱圧成形することによりセパレータ部材を製造することも提案されている(特許文献2参照)が、この方法においては、組立時にセパレータに割れが生じる場合があり、必ずしも信頼性の高いセパレータ部材を得ることはできない。
【0012】
【特許文献1】
特開2000−40517号公報(請求項1)
【特許文献2】
特願2000−062884号公報(請求項3)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、炭素粉末と耐食性樹脂との混合粉を熱圧成形することにより得られる炭素/樹脂硬化成形体からなるセパレータにおいて、高靱性を付与し得る天然黒鉛の使用に着目し、その配合比率および樹脂の配合比率とセパレータとして必要とされる特性との関係について多角的に試験、検討を重ねた結果としてなされたものであり、その目的は、靱性に優れた枠体をそなえ、組立時に割れを生じることのない優れた強度を有する高性能の燃料電池とくに固体高分子型燃料電池用セパレータおよびその製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明の請求項1による燃料電池用セパレータは、片面または両面に複数のガス流通用溝部が形成されたガス流路部とガス流路部の周縁部に位置する枠体から構成され、該ガス流路部および枠体は炭素粉末と熱硬化性樹脂との混合粉末から成形された板状の成形体からなる燃料電池のセパレータにおいて、枠体の破壊靱性値とガス流路部の破壊靱性値との比が1.1以上、枠体とガス流路部のガス透過率が10-6cc/cm2 ・分以下であり、枠体とガス流路部とが一体に成形されていることを特徴とする。
【0015】
請求項2による燃料電池用セパレータは、請求項1において、前記炭素粉末が天然黒鉛または膨張黒鉛の粉末と人造黒鉛の粉末からなり、枠体における天然黒鉛または膨張黒鉛の含有量(X重量部)がガス流路部における天然黒鉛または膨張黒鉛の含有量(Y重量部)より多く、枠体とガス流路部とが一体に成形されていることを特徴とする。但し、X=A/(A+B)(A:枠体における天然黒鉛または膨張黒鉛の重量部、B:枠体における人造黒鉛の重量部、A+B=100)、Y=C/(C+D)(C:ガス流路部における天然黒鉛または膨張黒鉛の重量部、D:ガス流路部における人造黒鉛の重量部、C+D=100)。
【0016】
請求項3による燃料電池用セパレータの製造方法は、天然黒鉛または膨張黒鉛0〜100重量部(X)と人造黒鉛100〜0重量部からなる炭素粉末100重量部と熱硬化性樹脂38〜95重量部との混合粉末からなる枠体用粉末と、天然黒鉛または膨張黒鉛0〜100重量部(Y)と人造黒鉛100〜0重量部からなる炭素粉末100重量部と熱硬化性樹脂18〜45重量部との混合粉末からなるガス流路部粉末とを、X>Yの関係になるよう配合し、枠体用粉末とガス流路部粉末を同一の金型内の所定個所に装入した後、一体に熱圧成形することを特徴とする。
【0017】
請求項4による燃料電池用セパレータの製造方法は、天然黒鉛または膨張黒鉛50〜100重量部と人造黒鉛0〜50重量部からなる炭素粉末100重量部と熱硬化性樹脂38〜95重量部との混合粉末からなる枠体用粉末と、天然黒鉛または膨張黒鉛0重量部以上50重量部未満と人造黒鉛50〜100重量部からなる炭素粉末100重量部と熱硬化性樹脂18〜45重量部との混合粉末からなるガス流路部用粉末を、同一の金型内の所定個所に装入した後、一体に熱圧成形することを特徴とする。
【0018】
また、請求項5による燃料電池用セパレータの製造方法は、請求項3または4において、枠体用粉末およびガス流路部用粉末が常温で成形された予備成形体として同一の金型内の所定個所に装入されることを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の燃料電池用セパレータにおいて、ガス流路部の原料構成は、天然黒鉛または膨張黒鉛0〜100重量部(Y)と人造黒鉛100〜0重量部からなる炭素粉末100重量部と熱硬化性樹脂18〜45重量部との混合粉末、さらに好ましくは、天然黒鉛または膨張黒鉛0重量部以上50重量部未満と人造黒鉛50〜100重量部からなる炭素粉末100重量部と熱硬化性樹脂18〜45重量部との混合粉末からからなり、異方性が大きい天然黒鉛または膨張黒鉛の配合量を少なくし、熱硬化性樹脂の配合量を枠体の原料構成における熱硬化性樹脂の配合量より少なく設定することにより、ガス遮断性(気体不透過性)をそなえ且つ通電方向に低い電気比抵抗を有するガス流路部が得られ、高効率の発電を行うことができる。
【0020】
枠体の原料構成は、天然黒鉛または膨張黒鉛0〜100重量部(X、X>Y)と人造黒鉛100〜0重量部からなる炭素粉末100重量部と熱硬化性樹脂38〜95重量部との混合粉末、さらに好ましくは、天然黒鉛または膨張黒鉛50〜100重量部と人造黒鉛0〜50重量部からなる炭素粉末100重量部と熱硬化性樹脂38〜95重量部との混合粉末からなり、熱硬化性樹脂の配合量を多くして気体不透過性、高電気比抵抗、高強度を確保し、且つ高靱性を得るために天然黒鉛または膨張黒鉛の配合量を多く設定する。
【0021】
上記の原料構成により、枠体の破壊靱性値とガス流路部の破壊靱性値との比(枠体の破壊靱性値/ガス流路部の破壊靱性値)が1.1以上となって、枠体に組立時の締め付け力に耐えるに十分な常温強度と靱性が与えられ、電池の作動温度である80〜120℃の温度に耐える高温強度が付与される。また、枠体とガス流路部のガス透過率が10-6cc/cm2 ・分以下となり、枠体とガス流路部における気体不透過性が確保されて、反応ガスの外部への漏れが防止され、枠体の電気比抵抗値が大きくなって、燃料電池反応により生じる電流の漏れが防止される。枠体の破壊靱性値とガス流路部の破壊靱性値との比が1.1未満の場合には、燃料電池スタック組み立ての締め付け時にセパレータのガス流路部より枠体部に締め付け加重が負荷されるためクラックの発生割合が増加するためである。
【0022】
以下、本発明の燃料電池用セパレータの製造方法について説明する。
(ガス流路部の原料調製)
ガス流路部を構成する材質は、炭素粉末とバインダーとしての熱硬化性樹脂を混練したものを原料として使用するが、ガス流路部のように、薄型で複雑な形状の板状成形体を得るためには、混練物の流動性の良好なことが必要であり、また、成形後の強度や緻密性、導電性などが所定のレベルに維持されることも必要である。
【0023】
そのため、炭素粉末としては、平均粒子径が50μm以下、最大粒子径が300μm以下で、粒子径10μm以下の粒子の割合が20重量%以下に調整された粒度特性をそなえたものを使用するのが好ましい。
【0024】
平均粒子径が50μmを越え、最大粒子径が300μmを越えると、薄型で溝を設けた複雑な形状のガス流通部の成形が難しくなり、とくに成形体の周縁部や溝部の角などの強度が不十分となり、欠落が生じ易くなる。また、粒子径が小さい微粉末は表面積が大きいため、表面に吸着、捕捉される樹脂量が増大し、樹脂との混練物の流動性が著しく低下するため、粒子径が10μm以下の粒子の割合は20重量%以下に調整するのが好ましい。
【0025】
炭素粉末としては、天然黒鉛または膨張黒鉛と、人造黒鉛を使用し、バインダー(結合剤)として機能する樹脂は、固体高分子型燃料電池の作動温度の80〜120℃の温度に耐える耐熱性、pH2〜3程度のスルフォン酸や硫酸酸性に耐え得る耐酸性があればよく、例えば、フェノール系樹脂、フラン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール−エポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂を単独または混合して使用される。
【0026】
これらの炭素粉末とバインダー樹脂は、天然黒鉛または膨張黒鉛0〜100重量部(Y)と人造黒鉛100〜0重量部からなる炭素粉末100重量部と熱硬化性樹脂18〜45重量部の量比、さらに好ましくは、天然黒鉛または膨張黒鉛0重量部以上50重量部未満と人造黒鉛50〜100重量部からなる炭素粉末100重量部と熱硬化性樹脂18〜45重量部の量比で混合して混練する。
【0027】
バインダー樹脂の量比が45重量部を越えると、導電性が著しく低下し、18重量部未満では、混練物の流動性が低下して、熱圧成形により形状精度の良い板状成形体を得ることが困難となり、成形性の悪化によりガス不透過性や強度の低下が生じる。また、天然黒鉛または膨張黒鉛の量比が50重量部を越えると、混練物の流動性が良くなるが、通電方向の導電性に著しい低下が生じる傾向がある。
【0028】
混練は、ニーダー、加圧型ニーダー、二軸スクリュー式混練機など常用の混練機を使用して行う。炭素粉末とバインダー樹脂をより均一に混合するために、樹脂をアルコール、エーテルなど、適宜の有機溶媒に溶解し、粘度を下げて混練した後、必要に応じて、有機溶媒を除去する方法を適用することもできる。
【0029】
(枠体の原料調製)
炭素粉末としては、天然黒鉛または膨張黒鉛と、人造黒鉛が使用され、バインダー(結合剤)として機能する樹脂は、固体高分子型燃料電池の作動温度の80〜120℃の温度に耐える耐熱性、pH2〜3程度のスルフォン酸や硫酸酸性に耐え得る耐酸性があればよく、例えば、フェノール系樹脂、フラン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール−エポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂を単独または混合して使用される。
【0030】
これらの炭素粉末とバインダー樹脂は、天然黒鉛または膨張黒鉛0〜100重量部(X、X>Y)と人造黒鉛100〜0重量部からなる炭素粉末100重量部と熱硬化性樹脂38〜95重量部の量比、さらに好ましくは、天然黒鉛または膨張黒鉛50〜100重量部と人造黒鉛0〜50重量部からなる炭素粉末100重量部と熱硬化性樹脂38〜95重量部の量比で混合して混練する。
【0031】
バインダー樹脂の量比が95重量部を越えると、ガス流路部との境界部にクラックが生じ易くなり一体成形が困難となる。38重量部未満では、強度の低下が著しくなる。また、天然黒鉛または膨張黒鉛の量比が50重量部未満では、靱性に著しい低下が生じる傾向がある。
【0032】
(混合粉末による一体成形)
本発明においては、枠体とガス流路部との境界部の気体不透過性が十分に確保されるよう、枠体とガス流路部とを一体に成形するものであり、一体に成形する方法としては、ガス流路部用として調製された炭素粉末と熱硬化性樹脂との混合粉末および枠体用として調製された炭素粉末と熱硬化性樹脂との混合粉末を、同一の成形用金型内の所定個所に同時に装填して、金型を150〜280℃の温度に保持し、10〜50MPaの圧力で熱圧成形する方法が適用される。また、以下に述べるように、混合粉末により予備成形体に成形し、これを金型に装填して一体成形する方法も適用できる。
【0033】
(予備成形体を用いる一体成形)
ガス流路部用として配合された混合粉末、および枠体用として配合された混合粉末を、ニーダーなどの混練機で混練した後、室温に保持した金型に装入し、3〜30MPaの圧力で加圧することにより、図2に示すような、ガス流路用の予備成形体2および枠体用の予備成形体3を作製する。
【0034】
つぎに、これらの予備成形体2、3を金型の所定位置に、予備成形体2が予備成形体3の内側になるよう装着して、金型を150〜280℃の温度に保持し、10〜50MPaの圧力で熱圧成形する。予備成形体を使用する方法によれば、枠体部とガス流路部とが明確に分けられるため、予備成形体を使用する方法がより好ましい。
【0035】
上記のように、特定範囲に配合調製された原料粉末を使用し、好ましくは特定された粒度特性の炭素粉末を用い、一体に熱圧成形することによって、枠体とガス流路部における好ましい電気比抵抗の組み合わせによる高出力化、高分極特性が実現され、気体不透過性をそなえ、単セルを積層して電池スタックを組立てる際の締め付け力に抗してクラックや破損を生じることのない燃料電池用セパレータを得ることができる。
【0036】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明し、効果を実証する。なお、これらの実施例は本発明の一実施態様を示すものであり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0037】
実施例1〜4、比較例1〜6
ガス流路部用の原料粉末、枠体用の原料粉末を、表1に示すように配合し、配合された原料粉末を加圧ニーダーにより十分に混練した。バインダー樹脂としては、いずれも液状フェノール樹脂を使用した。得られた混練物を金型に装入し、室温で10MPaの圧力を加え、図2に示すような形状の予備成形体を作製した。なお、表1〜2において、本発明の条件を外れたものには下線を付した。
【0038】
得られた予備成形体を、金型内に、ガス流路用の予備成形体の外側に枠体部用の予備成形体が配置されるよう装入し、金型を180℃の温度に保持して、30MPaの圧力で熱圧成形を行い、ガス流路部と枠体部とが一体となった燃料電池用セパレータを作製した。
【0039】
成形されたセパレータについて、以下の方法によって電気比抵抗、気体透過度、曲げ強度および破壊靱性を測定した。測定結果を表2および表3に示す。
【0040】
電気比抵抗(Ωm):JIS R7202に準拠して測定。
気体透過度(m3 /m2 ・秒):窒素ガスにより0.1MPaの圧力をかけた際の窒素ガスの透過量を測定。
曲げ強度(MPa):JIS K6911に準拠して測定。
破壊靱性(MPam1/2 ):JIS R1607に準拠して測定。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
表2〜3にみられるように、実施例1〜4においては、ガス流路部は電気比抵抗値が低く十分な気体不透過性を有しており、枠体は高強度、高靱性をそなえている。
【0045】
これに対して、比較例1は、枠体の樹脂含有量が少ないため枠体の強度が低く、比較例3は、ガス流路部の樹脂含有量が少ないためガス流路部の強度が低く、比較例4は、ガス流路部の樹脂含有量が多いため電気比抵抗を高くなっており導電性が劣る。比較例5は、枠体における人造黒鉛の配合比率が大きいため、枠体の破壊靱性が劣っており、比較例6は、ガス流路部における天然黒鉛の量比が大きいため電気比抵抗値が高く導電性に劣る。比較例2は、枠体における樹脂の量比が大きいため、ガス流路部との境界部にクラック発生によるガス漏れが生じた。
【0046】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明の燃料電池用セパレータによれば、電池の高出力化を達成することができ、枠体も優れた強度、靱性をそなえているから、セパレータの薄肉化が可能となり、電池性能を維持した上で、積層した電池スタックの高さを小さくすることができ、電池の小型化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】固体高分子型燃料電池の概略構造を示す一部断面図である。
【図2】セパレータのガス流路部用と枠体用の予備成形体、およびそれらの配置を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
1 セパレータ
2 ガス流路用の予備成形体
3 枠体部用の予備成形体
4 カソード
5 アノード
6 溝
7 電解質膜
8 シール材
Claims (5)
- 片面または両面に複数のガス流通用溝部が形成されたガス流路部とガス流路部の周縁部に位置する枠体から構成され、該ガス流路部および枠体は炭素粉末と熱硬化性樹脂との混合粉末から成形された板状の成形体からなる燃料電池のセパレータにおいて、枠体の破壊靱性値とガス流路部の破壊靱性値との比が1.1以上、枠体とガス流路部のガス透過率が10-6cc/cm2 ・分以下であり、枠体とガス流路部とが一体に成形されていることを特徴とする燃料電池用セパレータ。
- 前記炭素粉末が天然黒鉛または膨張黒鉛の粉末と人造黒鉛の粉末からなり、枠体における天然黒鉛または膨張黒鉛の含有量(X重量部)がガス流路部における天然黒鉛または膨張黒鉛の含有量(Y重量部)より多いことを特徴とする請求項1記載の燃料電池用セパレータ。但し、X=A/(A+B)(A:枠体における天然黒鉛または膨張黒鉛の重量部、B:枠体における人造黒鉛の重量部、A+B=100)、Y=C/(C+D)(C:ガス流路部における天然黒鉛または膨張黒鉛の重量部、D:ガス流路部における人造黒鉛の重量部、C+D=100)。
- 天然黒鉛または膨張黒鉛0〜100重量部(X)と人造黒鉛100〜0重量部からなる炭素粉末100重量部と熱硬化性樹脂38〜95重量部との混合粉末からなる枠体用粉末と、天然黒鉛または膨張黒鉛0〜100重量部(Y)と人造黒鉛100〜0重量部からなる炭素粉末100重量部と熱硬化性樹脂18〜45重量部との混合粉末からなるガス流路部用粉末を、X>Yの関係になるよう配合し、枠体用粉末とガス流路部用粉末を同一の金型内の所定個所に装入した後、一体に熱圧成形することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
- 天然黒鉛または膨張黒鉛50〜100重量部と人造黒鉛0〜50重量部からなる炭素粉末100重量部と熱硬化性樹脂38〜95重量部との混合粉末からなる枠体用粉末と、天然黒鉛または膨張黒鉛0重量部以上50重量部未満と人造黒鉛50〜100重量部からなる炭素粉末100重量部と熱硬化性樹脂18〜45重量部との混合粉末からなるガス流路部用粉末を、同一の金型内の所定個所に装入した後、一体に熱圧成形することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
- 枠体用粉末およびガス流路部用粉末が常温で成形された予備成形体として同一の金型内の所定個所に装入されることを特徴とする請求項3または4記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
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