JP3561241B2 - 直接型メタノール燃料電池用セパレータ及び直接型メタノール燃料電池 - Google Patents
直接型メタノール燃料電池用セパレータ及び直接型メタノール燃料電池 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体高分子型燃料電池のような燃料電池と、かかる燃料電池に用いられるセパレータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、電池内で水素やメタノール等の燃料を電気化学的に酸化することにより、燃料の化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換して取り出すものである。かかる燃料電池は、火力発電のように燃料の燃焼によるNOxやSOxなどが発生しないため,クリーンな電気エネルギー供給源として注目されている。特に、固体高分子型燃料電池は、他の燃料電池に比べ、小型軽量化が可能なため、宇宙船用電源として開発され、最近では自動車などの電源として盛んに研究されている。
【0003】
この燃料電池の単位電池の概略構成の一例を図8に示す。図8に示すように、単位電池41は、アノード極42と、カソード極43と、アノード極42及びカソード極43の間に配置される電解質膜44と、燃料供給路であるアノード極用流路45が形成されているアノード側セパレータ46と、酸化剤供給路であるカソード極用流路47が形成されているカソード側セパレータ48とを備える。アノード極42と、カソード極43及び電解質膜44からなる積層物は、起電部もしくは膜電極複合体(MEA)と呼ばれる。単位電池の起電力は、小さい。そこで、実用的な電圧を得るために、単位電池を多数個直列に接続して積層構造にすることが行われている。単位電池間に配置されるセパレータの一例を図9及び図10に示す。スタック用セパレータ49の一方の面には、カソード極用流路50と、カソード極用流路50に酸化剤を供給するための酸化剤導入口51と、積層方向に酸化剤を流通させるための内部マニホールド52と、酸化剤排出口53とが形成されている。また、他方の面には、アノード極用流路54と、アノード極用流路54に燃料を供給するための燃料導入口55と、積層方向に燃料を流通させるための内部マニホールド56と、燃料排出口57とが形成されている。
【0004】
燃料電池では、電流取り出し口がセパレータに設けられ、また、積層型において単位電池間を電気的に接続する必要があるため、セパレータは導電性を持たなければならない。また、燃料(例えば、メタノールなどの液体)及び酸化剤(例えば、空気などの気体)に対する非通気性、非液性及び耐酸性が求められる。さらに、これらセパレータには、燃料や酸化剤取り入れのための流路やマニホールド(孔)を作製しなければならず、加工性に優れる材料から形成されることが望まれる。
【0005】
このような観点から、セパレータの材料として、従来、カーボンや金属が用いられていた。
【0006】
しかしながら、カーボン材料は、硬いが脆い材料であるため、流路等を形成するための切削加工が非常に難しく、製造コストが高くなる。また、カーボン材料の硬くて脆い性質のためにセパレータの厚さをあまり薄くすることができない。これらを解決するため、流路付き金型に熱硬化性樹脂を射出成形して作製された成形体を不活性雰囲気下で焼成し、カーボン化することによって、セパレータを作製することが提案されているが、焼成により収縮してセパレータの寸法が不揃いになり易く、そのうえコストなどでまだ問題がある。
【0007】
一方、金属材料としては、耐酸性及び耐酸化性の観点から、貴金属やチタンを使用するか、もしくは貴金属がメッキされた材料を使用する必要があり、非常にコストが高くなり、そのうえセパレータの比重が大きくなって電池が非常に重くなるという欠点がある。
【0008】
さらに、カーボンまたは金属から形成されたセパレータは硬いため、膜電極複合体上に積層した際、片当りしやすく、セパレータと膜電極複合体との接触点が面内において不均一になるという問題点を生じる。その結果、最も接続している部分に電流が集中するため、高電流密度での出力特性が不十分となるばかりか、電流集中の箇所が著しく劣化して電池寿命が短くなる。
【0009】
また、セパレータのコストを削減する観点から、導電材料が添加されている樹脂からセパレータを作製することが提案されている。しかしながら、このようなセパレータは、抵抗が高くなるため、電流密度の大きさに拘わらず、高い出力密度を得られなくなるという問題点がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、セパレータと電極との接触点の面内均一性が高く、高電流密度で出力した際にも高電圧が得られる直接型メタノール燃料電池用セパレータ及び直接型メタノール燃料電池を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る第1の直接型メタノール燃料電池用セパレータは、アノード極用流路としての凹部と流路壁としての凸部とを有する第1の面と、カソード極用流路としての凹部と流路壁としての凸部とを有する第2の面とを有する直接型メタノール燃料電池用セパレータにおいて、
前記第1の面における流路壁の上端面と前記第2の面における流路壁の上端面のうち、位置が重なっている上端面間に形成されたカーボン同素体製の導電性領域と、
前記第1の面及び前記第2の面のうちの前記導電性領域以外の箇所に形成され、無機フィラーを含有する絶縁性樹脂領域と
を含むことを特徴とするものである。
【0012】
本発明に係る第2の直接型メタノール燃料電池用セパレータは、アノード極用流路としての凹部と流路壁としての凸部とを有する第Iの面と、前記第Iの面の反対側に位置する第IIの面とを有する直接型メタノール燃料電池用セパレータにおいて、
前記第Iの面における流路壁の上端面と前記第IIの面のうち前記上端面と位置が重なる部分との間に形成されたカーボン同素体製の導電性領域と、
前記第Iの面及び前記第IIの面のうちの前記導電性領域以外の箇所に形成され、無機フィラーを含有する絶縁性樹脂領域と
を含むことを特徴とするものである。
【0013】
本発明に係る第1の直接型メタノール燃料電池は、アノード極及びカソード極を含む起電部と、前記起電部間に配置され、アノード極用流路としての凹部と流路壁としての凸部とを有する第1の面及びカソード極用流路としての凹部と流路壁としての凸部とを有する第2の面を有するセパレータとを具備する直接型メタノール燃料電池において、
前記セパレータは、前記第1の面における流路壁の上端面と前記第2の面における流路壁の上端面のうち、位置が重なっている上端面間に形成されたカーボン同素体製の導電性領域と、前記第1の面及び前記第2の面のうちの前記導電性領域以外の箇所に形成され、無機フィラーを含有する絶縁性樹脂領域とを含むことを特徴とするものである。
【0014】
本発明に係る第2の直接型メタノール燃料電池は、アノード極と、カソード極と、アノード極用流路としての凹部と流路壁としての凸部とを有する第Iの面及び前記第Iの面の反対側に位置する第IIの面を有するアノード用セパレータとを具備する直接型メタノール燃料電池において、
前記アノード用セパレータは、前記第Iの面における流路壁の上端面と前記第IIの面のうち前記上端面と位置が重なる部分との間に形成されたカーボン同素体製の導電性領域と、前記第Iの面及び前記第IIの面のうちの前記導電性領域以外の箇所に形成され、無機フィラーを含有する絶縁性樹脂領域とを含むことを特徴とするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明に係る第1、第2の燃料電池用セパレータについて説明する。
【0016】
第1の燃料電池用セパレータは、アノード極用流路としての凹部と流路壁としての凸部とを有する第1の面と、カソード極用流路としての凹部と流路壁としての凸部とを有する第2の面とを有する。第1の燃料電池用セパレータは、前記第1の面における流路壁の上端面と前記第2の面における流路壁の上端面のうち、位置が重なっている上端面間の1箇所以上を電流経路にするための導電性領域と、前記第1の面及び前記第2の面のうちの前記導電性領域以外の箇所に形成される絶縁性樹脂領域とを含む。
【0017】
第1の面における流路壁の上端面の総面積は、アノード電極反応面積の5%〜60%の範囲内にすることが好ましい。流路壁上端面の総面積を5%未満にすると、集電効率が低下して電気抵抗が増加する恐れがある。一方、流路壁上端面の総面積が60%を超えると、相対的に流路の幅が狭くなるため、アノード極へ十分な量の燃料を供給することが困難になる可能性がある。また、第2の面における流路壁の上端面の総面積は、集電効率と酸化剤供給効率の観点から、カソード電極反応面積の5%〜60%の範囲内にすることが好ましい。
【0018】
第1のセパレータにおいては、位置が重なっている上端面間の一部または全てを導電性領域にすることができる。位置が重なっている上端面間の一部を導電性領域にする場合、第1の面及び第2の面それぞれにおいて、流路壁上端面の総面積を100%とした際の導電性領域の占有面積比率を10%以上にすることが好ましい。
【0019】
第1のセパレータでは、第1の面及び第2の面それぞれにおいて、流路壁の上端面全てを導電性領域とせず、一部を絶縁性樹脂領域にすることが好ましい。このような構成にすることによって、セパレータと電極との接触点の分布をより均一にすることができ、高電流密度での出力特性あるいは電池寿命をさらに向上させることができる。
【0020】
第2の燃料電池用セパレータは、アノード極用流路またはカソード極用流路としての凹部と流路壁としての凸部とを有する第Iの面と、前記第Iの面の反対側に位置する第IIの面とを有する。第2の燃料電池用セパレータは、前記第Iの面における流路壁の上端面と前記第IIの面のうち前記上端面と位置が重なる箇所との間の1箇所以上を電流経路にするための導電性領域と、前記第Iの面及び前記第IIの面のうちの前記導電性領域以外の箇所に形成される絶縁性樹脂領域とを含む。
【0021】
第Iの面における流路壁の上端面の総面積は、燃料・酸化剤の供給効率と集電効率の観点から、電極反応面積の5%〜60%の範囲内にすることが好ましい。ここで、電極反応面積とは、第Iの面にアノード流路が形成されている場合にはアノード極反応面積を意味し、カソード流路が形成されている場合にはカソード極反応面積を意味する。
【0022】
第2のセパレータにおいては、前記第Iの面における流路壁の上端面と前記第IIの面のうち前記上端面と位置が重なる箇所との間の一部または全てを導電性領域にすることができる。位置が重なっている領域間の一部を導電性領域にする場合、流路壁上端面の総面積を100%とした際の導電性領域の占有面積比率を10%以上にすることが好ましい。
【0023】
第2のセパレータでは、第Iの面において、流路壁の上端面全てを導電性領域とせず、一部を絶縁性樹脂領域にすることが好ましい。このような構成にすることによって、セパレータと電極との接触点の分布をより均一にすることができ、高電流密度での出力特性あるいは電池寿命をさらに向上させることができる。
【0024】
第1の燃料電池用セパレータ及び第2の燃料電池用セパレータにおける導電性領域及び絶縁性樹脂領域について説明する。
【0025】
導電性領域を形成する導電性材料としては、例えば、導電性のカーボン同素体、貴金属及びそのメッキ体、チタンなどの耐酸性金属などを用いる事ができる。具体的には、ガラス状カーボン、グラファイト、黒鉛、金、銀、白金、チタン、ステンレス、樹脂やシリカ、チタニヤなどの金属酸化物の表面に金メッキしたもの、などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。導電性領域を形成する導電性材料の種類は、1種類または2種類以上にすることができる。中でも、導電性のカーボン同素体が好ましい。
【0026】
絶縁性樹脂領域に用いられる絶縁性樹脂には、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のうち少なくとも一方を使用することが好ましい。これらの樹脂について具体例を以下に示す。まず、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、ASB樹脂、PPO樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、PES樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂、ポリスルフォン(PSF)樹脂、液晶ポリマー等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。中でも、ポリプロピレン樹脂が好ましい。一方、熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フラン樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。中でも、エポキシ樹脂が好ましい。絶縁性樹脂領域を形成する絶縁性樹脂の種類は、1種類または2種類以上にすることができる。また、絶縁性樹脂領域を形成する絶縁性樹脂には、必要に応じて、安定剤、離形剤、難燃剤を含有させることができる。
【0027】
絶縁性領域は、絶縁性樹脂と、無機のフィラー、顔料及びゴム状物質よりなる群から選択される少なくとも1種類の添加剤とが含有されている樹脂組成物から形成されることが好ましい。
【0028】
無機フィラーは、セパレータの強度並びに寸法安定性を向上させることが可能である。無機フィラーとしては、例えば、シリカ、チタニヤ、ジルコニヤ、アルミナなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。中でも、シリカ、チタニアが好ましい。シリカおよびチタニアは親水性を有するため、流路の壁面における親水性と疎水性のバランスを調節することができ、水や炭酸ガスのような発電生成物が流路内に滞留するのを回避することができ、出力特性を安定化させることができる。
【0029】
無機フィラーの平均粒子径は、0.01μm〜100μmの範囲内にすることが好ましい。平均粒子径を0.01μm未満にすると、溶融状態にある樹脂の流動性が大きく低下してセパレータ成形上不都合を生じる恐れがある。一方、平均粒子径が100μmを超えると、フィラーで流路が塞がれる可能性があると共に、セパレータ中のフィラーの分布に偏りを生じる恐れがある。
【0030】
無機フィラーの添加量は、絶縁性樹脂100重量部に対して900重量部以下にすることが好ましい。無機フィラーの添加量が900重量部を超えると、溶融状態にある樹脂の流動性が大きく低下してセパレータ成形上不都合を生じる恐れがある。
【0031】
ゴム状物質は、セパレータの応力を低減することができる。ゴム状物質の具体例としては、シリコンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴムなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0032】
ゴム状物質の添加量は、絶縁性樹脂100重量部に対して20重量部以下にすることが好ましい。ゴム状物質の添加量が20重量部を超えると、絶縁性樹脂の強度が低下してセパレータが脆くなる恐れがある。
【0033】
顔料は、セパレータを着色し、燃料電池にデザイン性を賦与できる。顔料には、有機顔料、無機顔料、蛍光顔料などを使用することができる。有機顔料としては、例えば、フタロシアニン、キナクリドン等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。一方、無機顔料としては、例えば、TiO2(白色顔料)、べんがら、カーボン、酸化クロム、酸化コバルトなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0034】
絶縁性樹脂及び上記の各種添加剤が含有されている樹脂組成物は、各成分を加熱ロール、ニダーまたは押出機で熔融混練するか、各成分を微粉砕可能な特殊混合機によって混合するか、これらの方法を適時組み合わせて容易に調製することができる。
【0035】
第1のセパレータ及び第2のセパレータは、例えば、以下の(1)、(2)に説明する方法でそれぞれ作製される。
【0036】
(1)流路形成用の凹凸付き金型を用意し、凸形成部分(流路壁形成部分)のうち目的とする箇所に導電性材料をインサートした後、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂を含む組成物を金型内に射出充填し、冷却硬化することにより、第1のセパレータ及び第2のセパレータを得る。金型等には、離型剤を付けておくことが望ましい。
【0037】
(2)流路形成用の凹凸付き金型を用意し、凸形成部分(流路壁形成部分)のうち目的とする箇所に導電性材料をインサートした後、熱硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を含む組成物を金型内に充填し、圧縮加熱成形によって導電性材料部分と一体化することによって、第1のセパレータ及び第2のセパレータを得る。この際、樹脂は脱泡しておく事が望ましい。また、金型等には、離型剤を付けておくことが望ましい。
【0038】
圧縮加熱成形の際、圧縮荷重は20〜2000kgf/cm2の範囲内にすることが好ましく、また、加熱温度は、使用する樹脂の硬化特性により異なるが、できるだけ高温での硬化がサイクル時間を短くできて生産性があがるため望ましい。さらに、内部にボイドを発生させないためには、真空プレス機を使用することが望ましい。熱硬化樹脂の硬化後、脱型して、バリ処理などの仕上げを行い、導電性材料と樹脂が一体化した流路を有するセパレータが得られる。
【0039】
以上説明した第1の燃料電池用セパレータ及び第2の燃料電池用セパレータを備える燃料電池の一例を図1〜図5を参照して説明する。
【0040】
図1は、本発明に係る燃料電池の一例の概略構成を示す断面図で、図2は、図1の燃料電池に含まれる第1のセパレータの概略構成を示す平面図で、図3は、図2のセパレータを示す断面図で、図4は、図1の燃料電池に含まれる第2のセパレータの概略構成を示す平面図で、図5は、図4のセパレータを示す断面図である。
【0041】
積層型燃料電池(スタックセル)は、起電部として膜電極複合体(MEA)11〜13を備える。各膜電極複合体(MEA)11〜13は、アノード極(燃料極)2と、カソード極(酸化剤極)3と、アノード極2及びカソード極3の間に配置される電解質膜4とを含む。アノード極2及びカソード極3は、燃料及び酸化剤ガスの流通が可能で、かつ電子伝導性を有する必要がある。このため、アノード極2及びカソード極3は、例えば、導電性の多孔質体からそれぞれ形成することができる。スタックセル用セパレータである第1のセパレータ5は、膜電極複合体(MEA)11〜13の間に配置されている。第1のセパレータ5の第1の面には、図2に示すように、蛇行形状をしたカソード極用流路6が形成されている。カソード極用流路6に酸化剤を供給するための酸化剤導入口7は、セパレータ5の側部に形成されている。積層方向に酸化剤を流通させるための内部マニホールド8は、カソード極用流路6と連通している。酸化剤の出口9は、カソード極用流路6と連通している。第1のセパレータ5の第2の面には、カソード極用流路6と重なる位置にアノード極用流路10が形成されている。アノード極用流路10に燃料を供給するための燃料導入口11は、セパレータ5の側部に形成されている。積層方向に燃料を流通させるための内部マニホールド12は、アノード極用流路10と連通している。燃料の出口13は、アノード極用流路10と連通している。積層したセルを固定するためのネジ穴14は、第1のセパレータ5の四隅に開口されている。このネジ穴14は、セパレータの位置合わせにも利用される。
【0042】
第1のセパレータ5においては、カソード極用流路6の流路壁上端面の位置とアノード極用流路10の流路壁上端面の位置が重なっている。位置が重なっている上端面間のうち3箇所151〜153は、導電性領域で、電流経路として機能する。第1のセパレータ5のうち、3箇所の導電性領域151〜153以外の部分は、絶縁性樹脂領域16である。つまり、この第1のセパレータ5では、カソード極用流路6の流路壁上端面及びアノード極用流路10の流路壁上端面それぞれにおいて、一部が導電性領域で、残りが絶縁性樹脂領域になっている。
【0043】
エンドセル用セパレータである第2のセパレータ171〜172は、膜電極複合体(MEA)11のアノード極側並びに膜電極複合体(MEA)13のカソード極側に配置されている。第2のセパレータ171の第Iの面には、図4に示すように、蛇行形状をなすアノード極用流路10が形成されている。アノード極用流路10に燃料を供給するための燃料導入口11は、セパレータ171の側部に形成されている。積層方向に燃料を流通させるための内部マニホールド12は、アノード極用流路10と連通している。燃料の出口13は、アノード極用流路10と連通している。積層したセルを固定するためのネジ穴14は、第2のセパレータ171の四隅に開口されている。第Iの面と反対側に位置する第IIの面には、電流取り出し口(図示しない)が設けられている。
【0044】
図4及び図5に示すように、アノード極用流路10の流路壁の上端面と第IIの面のうちの前記上端面と位置が重なる箇所において、その間のうち3箇所181〜183は、導電性領域で電流経路として機能する。第2のセパレータ171のうち、3箇所の導電性領域181〜183以外の部分は、絶縁性樹脂領域19である。つまり、この第2のセパレータ171では、アノード極用流路10の流路壁上端面において、一部が導電性領域で、残りが絶縁性樹脂領域になっている。
【0045】
一方、図1に示すように、第2のセパレータ172の一方の面には、蛇行形状をしたカソード極用流路6が形成されている。カソード極用流路6に酸化剤を供給するための酸化剤導入口は、セパレータ172の側部に形成されている。積層方向に酸化剤を流通させるための内部マニホールドは、カソード極用流路6と連通している。酸化剤の出口は、カソード極用流路6と連通している。積層したセルを固定するためのネジ穴は、第2のセパレータ172の四隅に開口されている。第Iの面と反対側に位置する第IIの面には、電流取り出し口(図示しない)が設けられている。
【0046】
カソード極用流路6の流路壁の上端面と第IIの面のうちの前記上端面と位置が重なる箇所において、その間のうち3箇所201〜203は、導電性領域で電流経路として機能する。第2のセパレータ172のうち、3箇所の導電性領域201〜203以外の部分は、絶縁性樹脂領域21である。つまり、この第2のセパレータ172では、カソード極用流路6の流路壁上端面において、一部が導電性領域で、残りが絶縁性樹脂領域になっている。
【0047】
4本のボルト22は、第1のセパレータ5の4つのネジ穴と第2のセパレータ171〜172の4つのネジ穴を貫通している。各ボルト22は、ナット23で固定されている。なお、第1のセパレータ5及び第2のセパレータ171〜172には、シールのための溝を設けることができる。
【0048】
なお、前述した図1においては、ボルトを用いてセル同士を固定する例を説明したが、セル同士を固定する方法は特に限定されず、例えば、スタックの両側に絶縁が施された締め付け用の板を配置する方法を採用しても良い。
【0049】
また、前述した図1〜図5においては、セパレータの流路を蛇行形状にしたが、流路の形状は燃料・酸化剤の供給を行うことが可能であれば良く、例えば、ストレートタイプの流路を使用することができる。
【0050】
以上説明したような積層型燃料電池は、起電部の間に配置される第1のセパレータと、最外層を構成する第2のセパレータとを備える。第1のセパレータでは、位置が重なっている流路壁上端面間のうち1箇所以上が導電性領域であるため、セパレータ中の電流経路の長さを最短にすることができる。一方、第2のセパレータでは、第Iの面における流路壁上端面と第IIの面のうち前記上端面と位置が重なる部分との間において、そのうちの1箇所以上が導電性領域であるため、セパレータ中の電流経路の長さを最短にすることができる。このような2種類のセパレータが用いられているため、電池抵抗を低くすることができる。
【0051】
また、第1のセパレータにおける第1の面及び第2の面では、導電性領域以外の箇所が絶縁性樹脂領域であるため、セパレータに柔軟性を付与することができ、第1の面とアノード極との接触点ならびに第2の面とカソード極との接触点の分布を均一にすることができる。一方、第2のセパレータにおける第Iの面では、導電性領域以外の箇所が絶縁性樹脂領域であるため、セパレータに柔軟性を付与することができ、アノード極またはカソード極と第Iの面との接触点の分布を均一にすることができる。このような2種類のセパレータが用いられているため、電流分布の偏りを低減することができる。
【0052】
従って、電池抵抗が低く、かつ電流分布の偏りが少ないため、高電流密度で出力した際の電圧降下を抑制することができると共に、長期間に亘る使用による劣化を抑制して電池寿命を向上することができる。
【0053】
さらに、前述した第1のセパレータ及び第2のセパレータでは、最短の電流経路を構成している部分以外を絶縁性樹脂領域にすることができるため、起電部を直列に積層する際のショートを回避することができる。例えば、ボルトを用いて起電部及びセパレータを一体化する際には、絶縁処理を施したボルトを使用しなくても、ショートを回避することができる。また、絶縁が施された締め付け用の板を用いて起電部及びセパレータを一体化する際には、積層ための位置あわせのずれによるショートを回避することが可能になる。したがって、製造歩留まりを高くすることができ、かつ製造コストを低くすることができる。
【0054】
ところで、流路内の表面的な性質は、流路内に液体と気体の2相が共存するような液体燃料を用いる燃料電池及びカソード極において、非常に重要に成ると考えている。かかる燃料電池の一例として、直接型メタノール燃料電池が挙げられる。直接型メタノール燃料電池では、燃料としてメタノール水溶液を使用するため、アノード極用流路にメタノール水溶液と発電生成物である炭酸ガスとが共存する。また、酸化剤として空気を使用するため、カソード極用流路に空気と発電生成物である水が共存する。従来から使用されているカーボン製セパレータは、疎水性で、また、表面状態の制御を行うことが困難である。カーボン製セパレータのように疎水性であると、液体との表面エネルギーの差が大きく不安定な状態にある。アノード極用流路に炭酸ガスが混入すると、表面エネルギーが小さいセパレータ表面に炭酸ガスが付着しやすく、炭酸ガスが流路の一部を塞いでしまい、炭酸ガスが抜けるまで燃料の供給が滞り、その間は出力が低下するために電池性能が不安定になる。
【0055】
本発明に係る第1及び第2のセパレータは、使用する絶縁性樹脂の種類や、無機フィラー等の添加剤によって、表面の親水性及び疎水性の制御を簡単に行うことができるため、流路内に液体と気体の2相が共存するような燃料電池においても流路内に燃料及び酸化剤を円滑に流すことができ、電池性能を安定化させることができる。例えば、シリカやチタニアのような無機フィラーを絶縁性樹脂領域に含有させることによって、アノード流路表面に親水性を付与することができるため、液体とセパレータ表面との表面エネルギーの差を小さくすることができ、炭酸ガスのような気体がアノード流路内に混入しても、気体が流路表面に着き難くなり、電池性能を安定化させることができる。
【0056】
本発明に係る第1のセパレータ及び第2のセパレータにおいて、絶縁性樹脂領域にゴム状物質及び無機フィラーのうち少なくともいずれか一方を含有させることによって、高電流密度での出力特性並びに電池寿命をさらに向上することができる。すなわち、ゴム状物質及び無機フィラーは、セパレータの絶縁性樹脂領域の柔軟性及び硬さを調節することができる。例えば、柔軟性が高過ぎて保形性に劣る絶縁性樹脂にシリカのような無機フィラーを添加することによって、セパレータを適度に硬くすることができ、また、硬くて脆い絶縁性樹脂にゴム状物質を添加することによって、セパレータに柔軟性を付与することができる。このようにしてセパレータの絶縁性樹脂領域の柔軟性及び硬さを最適なものにすることによって、電極とセパレータの密着性をより高めることができるため、高電流密度での出力特性並びに電池寿命をさらに向上することができる。
【0057】
なお、前述した図1においては、積層型燃料電池を例にして説明したが、本発明に係る第1及び第2のセパレータを単セルにおいて使用することができる。例えば、起電部のアノード極側に、第Iの面にアノード用流路が形成されている第2のセパレータを配置し、かつ起電部のカソード極側に、第Iの面にカソード用流路が形成されている第2のセパレータを配置することができる。
【0058】
【実施例】
以下、本発明の実施例を前述した図1〜図5及び図6、図7を参照して詳細に説明する。
【0059】
図6は、参照例1の燃料電池に用いられる第1のセパレータの作製する際に使用する金型に導電性材料を配置した状態を示す断面図で、図7は、参照例4の燃料電池に用いられる第1のセパレータの作製する際に使用する金型に導電性材料を配置した状態を示す断面図である。
【0060】
(参照例1)
アノード用触媒(Pt:Ru=1:1)担持カーボンブラックにパーフルオロカーボンスルホン酸溶液とイオン交換水及び2-エトキシエタノールを添加し、前記触媒担持カーボンブラックを分散させてペーストを調製した。アノード集電体としての撥水処理済カーボンペーパーの上にペーストを塗布し、乾燥させ、アノード触媒層を形成することによりアノード電極を得た。
【0061】
カソード用触媒(Pt)担持カーボンブラックにパーフルオロカーボンスルホン酸溶液とイオン交換水及び2−エトキシエタノールを加え、前記触媒担持カーボンブラックを分散させてペーストを調製した。カソード集電体としての撥水処理済カーボンペーパーの上にペーストを塗布した後、乾燥させ、カソード触媒層を形成することにより、カソード電極を得た。
【0062】
アノード電極のアノード触媒層とカソード電極のカソード触媒層の間に、電解質膜としての市販のパーフルオロカーボンスルホン酸膜(nafion膜、デュポン社製)を配置し、これらにホットプレスを施すことにより、アノード電極、電解質膜及びカソード電極を接合し、起電部である膜電極複合体(MEA)を得た。
【0063】
<第1のセパレータの作製>
図6に示すように、流路形成用の凹凸が設けられている雄型31と雌型32を用意し、これら金型の内面に離型剤を塗布した。雄型31の3箇所の凹部に導電性領域となる板状の導電性カーボン同素体151〜153をセットし、雌型32を合わせて型締めした後、溶融したポリプロピレン樹脂(絶縁性樹脂)を射出成形機で金型内に充填し、射出成形した。射出成形条件は、シリンダー温度が200℃で、金型温度が120℃で、射出圧が700kg/cm2で、冷却時間が40秒である。金型を冷却することにより樹脂を硬化させた後、型開きを行って脱型し、バリ処理などの仕上げを行うことにより、前述した図3、図4に示す構造を有する第1のセパレータを得た。
【0064】
第1のセパレータでは、第1の面における流路壁の上端面の総面積は、アノード電極反応面積の50%に相当するものであり、また、第2の面における流路壁の上端面の総面積は、カソード電極反応面積の50%に相当するものであった。第1の面及び第2の面それぞれにおいて、流路壁の上端面の総面積を100%とした際の導電性領域の占有面積比率は60%である。
【0065】
<第2のセパレータの作製>
セパレータ形状に合わせて金型の形状を変更すること以外は、前述した第1のセパレータの場合と同様にして、前述した図4,5に示す構造のアノード側用第2のセパレータ及びカソード側用第2のセパレータを得た。
【0066】
アノード側用第2のセパレータでは、第Iの面における流路壁の上端面の総面積は、アノード電極反応面積の50%に相当するものであった。さらに、カソード側第2のセパレータでは、第Iの面における流路壁の上端面の総面積は、カソード電極反応面積の50%に相当するものであった。アノード側用及びカソード側用それぞれにおいて、流路壁の上端面の総面積を100%とした際の導電性領域の占有面積比率は60%である。
【0067】
<直接型メタノール燃料電池の作製>
起電部を2対用意し、起電部と起電部の間に第1のセパレータを配置し、この積層物のアノード極上にアノード側用第2のセパレータを配置すると共に、カソード極上にカソード側用第2のセパレータを配置した。各セパレータのネジ穴にボルトを通してナットで固定することにより、2セルスタック型の燃料電池を得た。
【0068】
(実施例2)
<第1のセパレータの作製>
ポリプロピレン樹脂100重量部と粒状シリカ(平均粒子径50μm)10重量部と繊維状シリカ(平均繊維径200μm、平均内径40μm)20重量部とをヘンシェルミキサーで粉砕混合した後、2軸の押し出し機により、シリンダー温度200℃として溶融混練して樹脂組成物を得た。次いで、前述した図6に示す構造の金型(雄型31と雌型32)の内面に離型剤を散布した後、雄型31の3箇所の凹部に導電性領域となる板状の導電性カーボン同素体151〜153をセットし、雌型32を合わせて型締めした。溶融混練りした樹脂組成物を溶融させた後、射出成形機で金型内に充填し、射出成形した。射出成形条件は、シリンダー温度が200℃で、金型温度が120℃で、射出圧が1000kg/cm2で、冷却時間が40秒である。金型を冷却後、型開きを行って脱型し、バリ処理などの仕上げを行うことにより、前述した図3、図4に示す構造を有する第1のセパレータを得た。
【0069】
<第2のセパレータの作製>
セパレータ形状に合わせて金型の形状を変更すること以外は、前述した第1のセパレータの場合と同様にして、前述した図4,5に示す構造のアノード側用第2のセパレータ及びカソード側用第2のセパレータを得た。
【0070】
得られた第1のセパレータ及び第2のセパレータを用いること以外は、前述した参照例1で説明したのと同様な構成の燃料電池を得た。
【0071】
(実施例3)
<第1のセパレータの作製>
ポリプロピレン樹脂100重量部と粒状シリカ(平均粒子径10μm)30重量部とシリカ(平均粒子径0.5μm)3重量部とフタロシアニン(PB15)3重量部とをヘンシェルミキサーで粉砕混合した後、2軸の押し出し機により、シリンダー温度200℃として溶融混練して樹脂組成物を得た。次いで、前述した図6に示す構造の金型(雄型31と雌型32)に離型剤を散布した後、雄型31の3箇所の凹部に導電性領域となる板状の導電性カーボン同素体151〜153をセットし、雌型32を合わせて型締めした。溶融混練りした樹脂組成物を溶融させた後、射出成形機で金型内に充填し、射出成形した。射出成形条件は、シリンダー温度が200℃で、金型温度が120℃で、射出圧が900kg/cm2で、冷却時間が40秒である。金型を冷却後、型開きを行って脱型し、バリ処理などの仕上げを行うことにより、前述した図3、図4に示す構造を有する第1のセパレータを得た。得られたセパレータは、絶縁性樹脂領域が青色を呈していた。
【0072】
<第2のセパレータの作製>
セパレータ形状に合わせて金型の形状を変更すること以外は、前述した第1のセパレータの場合と同様にして、前述した図4,5に示す構造のアノード側用第2のセパレータ及びカソード側用第2のセパレータを得た。得られたセパレータは、絶縁性樹脂領域が青色を呈していた。
【0073】
得られた第1のセパレータ及び第2のセパレータを用いること以外は、前述した参照例1で説明したのと同様な構成の燃料電池を得た。
【0074】
(参照例4)
絶縁性樹脂として、熱硬化性のエポキシ樹脂を用いた。エポキシ樹脂は、エピコート807(油化シェル社製)に1当量に対して、硬化剤のフェノールノボラックを1当量を用いた。上記の樹脂前駆体100重量部に対して、触媒として2メチルイミザソール2重量部を添加し、100℃で万能混合機を用いて配合混練することにより、樹脂組成物を得た。
【0075】
図7に示すように、金型として、流路形成用の凹凸が設けられている上型33と下型34を用意した。金型に離型剤を散布し、下型34の3箇所の凹部に導電性領域となる板状の導電性カーボン同素体151〜153をセットした。下型34に上型33を合わせて、型締めした後、脱泡処理が施された樹脂組成物を所定量な流し込んだ。次いで、金型を真空プレス機内にセットし、金型温度150度、プレス圧100Kg/cm2、硬化時間15分の条件で成形した。冷却後、型開きを行って脱型し、成形物を170℃で4時間、ポストキュワーすることにより、前述した図3、図4に示す構造を有する第1のセパレータを得た。
【0076】
<第2のセパレータの作製>
セパレータ形状に合わせて金型の形状を変更すること以外は、前述した第1のセパレータの場合と同様にして、前述した図4,5に示す構造のアノード側用第2のセパレータ及びカソード側用第2のセパレータを得た。
【0077】
得られた第1のセパレータ及び第2のセパレータを用いること以外は、前述した参照例1で説明したのと同様な構成の燃料電池を得た。
【0078】
(実施例5)
エポキシ樹脂は、エピコート807が1当量に対して、硬化剤のフェノールノボラックを1当量を用いた。上記の樹脂前駆体100重量部に対して、触媒として2メチルイミザソール2重量部と繊維状シリカ(平均繊維径200μm)30重量部とを100℃で万能混合機を用いて配合混練することにより、樹脂組成物を得た。
【0079】
前述した図7に示す構造の上型33と下型34に離型剤を散布し、下型34の3箇所の凹部に導電性領域となる板状の導電性カーボン同素体151〜153をセットした。下型34に上型33を合わせて、型締めした後、脱泡処理が施された樹脂組成物を所定量な流し込んだ。次いで、金型を真空プレス機内にセットし、金型温度150度、プレス圧100Kg/cm2、硬化時間15分の条件で成形した。冷却後、型開きを行って脱型し、成形物を170℃で4時間、ポストキュワーすることにより、前述した図3、図4に示す構造を有する第1のセパレータを得た。
【0080】
<第2のセパレータの作製>
セパレータ形状に合わせて金型の形状を変更すること以外は、前述した第1のセパレータの場合と同様にして、前述した図4,5に示す構造のアノード側用第2のセパレータ及びカソード側用第2のセパレータを得た。
【0081】
得られた第1のセパレータ及び第2のセパレータを用いること以外は、前述した参照例1で説明したのと同様な構成の燃料電池を得た。
【0082】
(比較例1)
第1のセパレータ及び第2のセパレータをカーボンで形成すること以外は、前述した参照例1で説明したのと同様な構成の燃料電池を得た。
【0083】
(比較例2)
以下に説明する方法で第1のセパレータ及び第2のセパレータを作製した。
【0084】
エポキシ樹脂は、エピコート807が1当量に対して、硬化剤のフェノールノボラックを1当量を用いた。上記の樹脂前駆体100重量部に対して、触媒として2メチルイミザソール2重量部とグラファイト(平均粒子径4μm)600重量部を添加し、100℃で万能混合機を用いて配合混練することにより、混合物を得た。
【0085】
次いで、上型と下型に離型剤を散布した後、型締めし、混合物を流し込み、脱泡した。ついで、金型を真空プレス機内にセットし、金型温度150度、硬化時間15分の条件で成形した。冷却後、型開きを行って脱型し、成形物を170℃で4時間のアフタキュアーすることにより、第1のセパレータ及び第2のセパレータを得た。
【0086】
得られた参照例1,4と実施例2,3,5と比較例1〜2の燃料電池について、電流密度を50mA/cm2、100mA/cm2、150mA/cm2にした際の電圧と、セル抵抗と、最高出力を測定し、その結果を下記表1に示す。なお、燃料電池の評価条件は、70℃、空気流量が500ml/min、燃料として2Mのメタノール水溶液を用い、燃料流量が1.3ml/minであった。また、流路の数及び凹凸のピッチ間隔は、すべて同じである。さらに、セル抵抗は、ミリオムメーター(アジレントテクノロジー社製、4238A)を用いて、1Kzでの交流法による測定より得た結果を表1に示した。
【0087】
【表1】
【0088】
表1から明らかなように、参照例1,4及び実施例2,3,5の燃料電池は、セル抵抗、最高出力及び高電流密度で出力において比較例1(カーボン製セパレータ)と同等以上であることがわかる。特に、実施例2,3,5のように、セパレータの絶縁性樹脂領域にシリカが含まれていると、電流密度を高くした際の電圧をより大きくできることがわかる。
【0089】
また、カーボンと絶縁性樹脂の混合物から形成されたセパレータを備える比較例2の燃料電池は、電圧特性、セル抵抗及び最高出力いずれも参照例1,4及び実施例2,3,5に比べて劣ることがわかる。
【0090】
上記の電池性能評価試験後、燃料電池を分解して、MAE(膜電極複合体)を観察すると、参照例1,4及び実施例2,3,5では、アノード集電体及びカソード集電体であるカーボンペーパー上に流路の跡が均一に残っているのに対し、比較例1では、カーボンペーパー上の流路の跡にむらがあった。このことから、比較例1のようにカーボン製セパレータを使用すると、電極に対してセパレータが片当りすることを確認することができた。この結果は、本セパレーターを用いた燃料電池は、長期寿命の改善に大きく影響するといえる。
【0091】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明に係る直接型メタノール燃料電池用セパレータ及び直接型メタノール燃料電池によれば、電極とセパレータの接触点の面内均一性を高くすることができ、高電流密度においても高電圧を得ることができる顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る燃料電池の一例の概略構成を示す断面図。
【図2】図1の燃料電池に含まれる第1のセパレータの概略構成を示す平面図。
【図3】図2のセパレータを示す断面図。
【図4】図1の燃料電池に含まれる第2のセパレータの概略構成を示す平面図。
【図5】図4のセパレータを示す断面図。
【図6】参照例1の燃料電池に用いられる第1のセパレータを作製する際に使用する金型に導電性材料を配置した状態を示す断面図。
【図7】参照例4の燃料電池に用いられる第1のセパレータを作製する際に使用する金型に導電性材料を配置した状態を示す断面図。
【図8】従来の燃料電池(単セルタイプ)を示す断面図。
【図9】図8の燃料電池に含まれるセパレータを示す平面図。
【図10】図9のセパレータを示す断面図。
【符号の説明】
11〜13…起電部、
2…アノード極、
3…カソード極、
4…電解質膜、
5…第1のセパレータ、
6…カソード極用流路、
10…アノード極用流路、
151〜153…導電性領域、
16…絶縁性樹脂領域、
171〜172…第2のセパレータ、
181〜183…導電性領域、
19…絶縁性樹脂領域、
201〜203…導電性領域、
21…絶縁性樹脂領域。
Claims (6)
- アノード極用流路としての凹部と流路壁としての凸部とを有する第1の面と、カソード極用流路としての凹部と流路壁としての凸部とを有する第2の面とを有する直接型メタノール燃料電池用セパレータにおいて、
前記第1の面における流路壁の上端面と前記第2の面における流路壁の上端面のうち、位置が重なっている上端面間に形成されたカーボン同素体製の導電性領域と、
前記第1の面及び前記第2の面のうちの前記導電性領域以外の箇所に形成され、無機フィラーを含有する絶縁性樹脂領域と
を含むことを特徴とする直接型メタノール燃料電池用セパレータ。 - アノード極用流路としての凹部と流路壁としての凸部とを有する第Iの面と、前記第Iの面の反対側に位置する第IIの面とを有する直接型メタノール燃料電池用セパレータにおいて、
前記第Iの面における流路壁の上端面と前記第IIの面のうち前記上端面と位置が重なる部分との間に形成されたカーボン同素体製の導電性領域と、
前記第Iの面及び前記第IIの面のうちの前記導電性領域以外の箇所に形成され、無機フィラーを含有する絶縁性樹脂領域と
を含むことを特徴とする直接型メタノール燃料電池用セパレータ。 - 前記無機フィラーには、シリカ、チタニヤ、ジルコニア及びアルミナよりなる群から選択される1種類以上が含まれることを特徴とする請求項1または2記載の直接型メタノール燃料電池用セパレータ。
- アノード極及びカソード極を含む起電部と、前記起電部間に配置され、アノード極用流路としての凹部と流路壁としての凸部とを有する第1の面及びカソード極用流路としての凹部と流路壁としての凸部とを有する第2の面を有するセパレータとを具備する直接型メタノール燃料電池において、
前記セパレータは、前記第1の面における流路壁の上端面と前記第2の面における流路壁の上端面のうち、位置が重なっている上端面間に形成されたカーボン同素体製の導電性領域と、前記第1の面及び前記第2の面のうちの前記導電性領域以外の箇所に形成され、無機フィラーを含有する絶縁性樹脂領域とを含むことを特徴とする直接型メタノール燃料電池。 - アノード極と、カソード極と、アノード極用流路としての凹部と流路壁としての凸部とを有する第Iの面及び前記第Iの面の反対側に位置する第IIの面を有するアノード用セパレータとを具備する直接型メタノール燃料電池において、
前記アノード用セパレータは、前記第Iの面における流路壁の上端面と前記第IIの面のうち前記上端面と位置が重なる部分との間に形成されたカーボン同素体製の導電性領域と、前記第Iの面及び前記第IIの面のうちの前記導電性領域以外の箇所に形成され、無機フィラーを含有する絶縁性樹脂領域とを含むことを特徴とする直接型メタノール燃料電池。 - カソード極用流路としての凹部と流路壁としての凸部とを有する第Iの面及び前記第Iの面の反対側に位置する第IIの面を有するカソード用セパレータを更に備え、前記カソード用セパレータは、前記第Iの面における流路壁の上端面と前記第IIの面のうち前記上端面と位置が重なる部分との間に形成されたカーボン同素体製の導電性領域と、前記第Iの面及び前記第IIの面のうちの前記導電性領域以外の箇所に形成され、無機フィラーを含有する絶縁性樹脂領域とを含むことを特徴とする請求項5記載の直接型メタノール燃料電池。
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