JP2004190619A - ディーゼル・エンジンの排気浄化装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】排気中のパーティキュレート・マターを捕捉するフィルタ部200は、酸化触媒を付着した発泡石骨粒270で構成する。フィルタ部200とこの外周側のフィルタ・カバー280とは、内外を連通する第1連通孔251を形成した第1インナ・リテーナ250およびこの外側に配置し内外を連通する第2連通孔241を形成した第2インナ・リテーナ240の間に介在され、発泡石骨粒270同士間の隙間よりも細かいメッシュの炭素繊維製フェルト260とから構成し、半径方向外側に向かうに従って幅が狭くなる突出部を結有する星型状に形成する。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディーゼル・エンジンから排出された排気中のパーティキュレート・マター(粒子状物質)を捕捉して燃焼するディーゼル・エンジンの排気浄化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼル・エンジンは、低燃料消費率といった好ましい特性を有するものの、パーティキュレート・マターを多量に排出する。ディーゼル・エンジンにおけるこのパーテルキュレート・マターの発生は、同じくディーゼル・エンジンから同時に排出される窒素酸化物(NOx)とトレードオフの関係にあり、ディーゼル・エンジンでの燃焼過程でこれら両者を同時に低減するのは非常に困難である。
【0003】
この場合、窒素酸化物の方はアンモニアを用いて後処理することが可能であるが、アンモニアを車両に搭載することは、漏れなどが生じる虞があり好ましくない。そこで、ディーゼル・エンジン内での燃焼にあっては、車両上で後処理が難しい窒素酸化物の発生の抑制を優先するようにしている。そして、パーティキュレート・マターの低減は、ディーゼル・エンジンから排出された排気中に含まれたパーティキュレート・マターを排気系の途中に設けたフィルタ部にて捕捉するとともに、このフィルタ部が目詰まりを起こさないように所定の頻度でパーティキュレート・マターを燃焼させるようにしている。
【0004】
このパーティキュレート・マターの燃焼にあっては、パーティキュレート・マターが約600℃以上の高温でなければ燃焼しないこと、また市内走行などの通常の走行時では排気温度が消音器近くでは200℃以上まで上がることがほとんどないことから、フィルタ部で補足したパーティキュレート・マターの燃焼を促進するには、酸化触媒や電気ヒーターを利用している。
【0005】
このような従来のディーゼ・エンジンの排気浄化装置としては、筒状の筐体の内部に流入してきた排気が、インナ・パイプの外周壁に設けた流出孔からインナ・パイプの半径方向外側に配置した円筒状のフィルタ部へ流入し、このフィルタ部を通過する際、排気中のパーティキュレート・マターがフィルタ部で捕捉されるように構成されている。フィルタ部で補足されたパーティキュレート・マターは、フィルタ部の目詰まりを防止するため、適宜、電気ヒーターの加熱により燃焼し二酸化炭素や灰になる。さらに、円筒状のフィルタ部を通過した排気は、フィルタ部の下流に設けた円筒状のより細かいメッシュの炭素製フェルトに流入され、フィルタ部で補足し損ねたパーティキュレート・マター等がここで補足されるようしてある(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−256843号公報(図1)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来のディーゼル・エンジンの排気浄化装置は、本発明者が何度も実験したところ、フィルタ部で補足したパーティキュレート・マターを電気ヒーターあるいは酸化触媒等で燃焼させても、フィルタ部のところどころに未燃焼部分が発生してしまうといった問題があった。
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、フィルタ部で補足した排気中のパーティキュレート・マターをフィルタ部のほぼ全域にわたって燃焼させることを可能にしたディーゼル・エンジンの排気浄化装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明のディーゼル・エンジンの排気浄化装置は、ディーゼル・エンジンから排出された排気が流入する排気入口部および排気が流出する排気出口部が筒状のアウタ・ドラムの内部に連通させられた筐体と、アウタ・ドラム内にこの軸方向に沿って配置された筒状の外周壁を有し、外周壁にこの内外を連通するように設けた流出孔を介して排気入口部から外周壁の内部へ導入された排気を外周壁の外部へ流出させるインナ・パイプと、インナ・パイプの外周面とアウタ・ドラムの内周面との間に配置され、インナ・パイプの流出孔から流入してきた排気中のパーティキュレート・マターを捕捉するペレット状のフィルタ材を有するフィルタ部と、フィルタ部の外周を覆うフィルタ・カバー部と、アウタ・ドラム内に配置され、フィルタ部で捕捉したパーティキュレート・マターの燃焼を促進する燃焼促進部と、を備え、フィルタ部とフィルタ・カバーとが、半径方向内側から半径方向外側へ向かうにしたがって幅方向が狭くなるような半径方向へ突出した複数の突起部分を有する星型状の形状に形成され、かつフィルタ・カバーにこの内外を連通して排気を流出させる連通孔が略全域にわたって設けられていることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の本発明のディーゼル・エンジンの排気浄化装置は、上記フィルタ・カバーが、内外を連通する第1連通孔が形成された第1インナ・リテーナと、第1インナ・リテーナの外側に配置されて内外を連通する第2連通孔が形成された第2インナ・リテーナと、フィルタ材同士間に形成された隙間よりも細かいメッシュを有し第1インナ・リテーナと第2インナ・リテーナの間に介在された別フィルタ材と、を備えたことを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の本発明のディーゼル・エンジンの排気浄化装置は、上記第1インナ・リテーナの第1連通孔が、第2インナ・リテーナの第2連通孔より大きな開口面積を有するようにしたことを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載の本発明のディーゼル・エンジンの排気浄化装置は、上記別フィルタ材が、第1インナ・リテーナと第2インナ・リテーナとの間に非圧縮状態で介在されており、第1連通孔から流入した排気が当該第1の連通孔から最短距離となる第2連通孔の近辺にある別の第2連通孔へ別フィルタ材を介して流入可能となるようにしたことを特徴としている。
【0012】
請求項5に記載の本発明のディーゼル・エンジンの排気浄化装置は、上記燃焼促進部が、酸化触媒であり、フィルタ材の表面に付着されていることを特徴としている。
【0013】
請求項6に記載の本発明のディーゼル・エンジンの排気浄化装置は、上記酸化触媒が、貴金属系の酸化触媒と卑金属系の酸化触媒とを有することを特徴としている。
【0014】
請求項7に記載の本発明のディーゼル・エンジンの排気浄化装置は、上記別フィルタ材が、繊維が組み合わされたフェルト状に形成されていることを特徴としている。
【0015】
請求項8に記載の本発明のディーゼル・エンジンの排気浄化装置は、上記繊維が、炭素系物質からなることを特徴としている。
【0016】
請求項9に記載の本発明のディーゼル・エンジンの排気浄化装置は、上記フィルタ材を、総容量が別フィルタ材より大きくなるように設定したことを特徴としている。
【0017】
【発明の効果】
請求項1に記載の本発明のディーゼル・エンジンの排気浄化装置では、ディーゼル・エンジンから排出された排気は、排気入口部から排気浄化装置内のフィルタ部へ導かれ、排気中に含まれるパーティキュレート・マターがフィルタ材に付着されて補足された後、排気出口部から流出する。そして、燃焼促進部にて適宜、補足したパーティキュレート・マターを着火させて二酸化炭素や灰に変換する。この場合、フィルタ部とフィルタ・カバーとを半径方向内側から半径方向外側へ向かうにしたがって幅方向が狭くなるような半径方向へ突出した複数の突起部分を有する星型の形状に形成し、かつフィルタ・カバーにこの内外を連通して排気を流出させる連通孔が略全域にわたって設けると、はっきりした理由は不明だが、本発明者の実験によると、フィルタ部のほぼ全域にわたってペレット状のフィルタ材に補足されたパーティキュレート・マターが燃焼されることが確認された。
この結果、フィルタ部の目詰まりを防止することができるのみならず、再利用のためのフィルタ部の洗浄が容易になるとともに、フィルタ材に高価な酸化触媒を付着させたような場合、未燃焼部分の酸化触媒が無駄にならずに済む。
【0018】
請求項2に記載の本発明のディーゼル・エンジンの排気浄化装置では、フィルタ・カバーがフィルタ部よりさらに細かいメッシュの別フィルタ材を有するようにしたので、フィルタ部で補足し損ねたより細かいパーティキュレート・マターを補足して燃焼させることが可能となる。したがって、フィルタ部にペレット状のフィルタ材を用いてフィルタ部を通過する排気の流通抵抗を減らすことも可能となる。また、フィルタ部での燃焼により発生した灰の一部もここで補足するようにすることも可能とある。
【0019】
請求項3に記載の本発明のディーゼル・エンジンの排気浄化装置では、第1インナ・リテーナの第1連通孔を第2連通孔より大きな開口面積の孔としたので、第1連通孔を介してペレット状のフィルタ材の少なくとも一部を別フィルタ材に容易に接触させて別フィルタ材の温度上昇を促進させるようにすることができる。また、第1連通孔より勢いよく流入してきた排気が第2連通孔で流路面積を絞られる結果、別フィルタ材の第1、第2の連通孔間を直線的に結ぶ通路から外れた領域まで排気が入り込み、その分、別フィルタ材で排気中のパーティキュレート・マターを補足し燃焼させることが可能となる。このようにして、別フィルタ材を効率よく利用することができることとなる。
【0020】
請求項4に記載の本発明のディーゼル・エンジンの排気浄化装置では、別フィルタ材を第1インナ・リテーナと第2インナ・リテーナとの間に非圧縮状態で介在されるようにしたので、第1連通孔から流入した排気が当該第1の連通孔から最短距離となる第2連通孔の近辺にある別の第2連通孔へ別フィルタ材を介して流入可能となり、別フィルタ材のパーティキュレート・マターの補足領域を広げることが可能となり、別フィルタ材をより圧縮状態で上記両インナ・リテーナに介在させた場合に比べより有効に利用することが可能となる。
【0021】
請求項5に記載の本発明のディーゼル・エンジンの排気浄化装置では、燃焼促進部を酸化触媒としフィルタ材の表面に付着させたので、フィルタ部全体にて着火しやすくできるとともに、燃焼促進部に電気ヒーターを用いる場合に比べその容積を小さく設定することが可能となる。
【0022】
請求項6に記載の本発明のディーゼル・エンジンの排気浄化装置では、酸化触媒が貴金属系の酸化触媒と卑金属系の酸化触媒とを有するようにしたので、パーティキュレータ・マターが通常では燃焼しない温度よりかなり低い低温度域で貴金属系の酸化触媒の触媒作用によりパーティキュレート・マターを燃焼させることが可能となるとともに、この燃焼により温度上昇して貴金属系の酸化触媒の触媒作用が低下するような温度域になっても卑金属系の酸化触媒の触媒作用によりパーティキュレータ・マターを通常の燃焼温度より低い温度域で燃焼させることが可能となる。
【0023】
請求項7に記載の本発明のディーゼル・エンジンの排気浄化装置では、別フィルタ材を繊維が組み合わされたフェルト状に形成したので、フィルタ部より細かいメッシュの別フィルタ材を第1インナ・リテーナと第2インナ・リテーナとの間に非圧縮状態で配置することがペレット等に比べて容易かつ安価に行うことが可能となる。
【0024】
請求項8に記載の本発明のディーゼル・エンジンの排気浄化装置では、繊維が炭素系物質からなるようにしたので、フィルタ部や排気からの熱により繊維を容易に温度上昇させることができ繊維で補足した細かいパーティキュレータを燃焼することが可能となる。
【0025】
請求項9に記載の本発明のディーゼル・エンジンの排気浄化装置では、フィルタ材の総容量をよりメッシュの細かい別フィルタ材より大きくしたので、流通抵抗を減らしながらパーティキュレート・マターの補足と燃焼を促進させることが可能となる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態としてのディーゼル・エンジンの排気浄化装置100の断面側面図である。
排気浄化装置100は、筒状の筐体110を有し、この筐体110にフィルタ部200や酸化触媒300(燃焼促進部)を内蔵している。
【0027】
筐体110は、金属製であって、その両端が開口された円筒状のアウタ・ドラム111と、アウタ・ドラム111の上流側の開口部111aに取り付けられてこの開口部111aを塞ぐインレット側エンド・プレート112と、アウタ・ドラム111の下流側の開口部111bに取り付けられてこの開口部111bを塞ぐアウトレット側エンド・プレート113とを有している。
【0028】
インレット側エンド・プレート112は、この中心部分に形成した貫通孔112aにインレット・パイプ(排気入口部)114が貫通させられ、このインレット側エンド・プレート112の貫通孔112aの内周部分にインレット・パイプ114の中間部分が溶接で固定されている。一方、インレット側エンド・プレート112の外周部分は、アウタ・ドラム111の上流側の開口部111aに嵌め合わされ、溶接にて互いに固着される。
【0029】
インレット・パイプ114は、この上流側端部分に固着されたフランジ115とディーゼル・エンジン側の排気管(図示せず)のフランジ(図示せず)とがガスケットを挟んだ状態で組み合わされ、ボルト(図示せず)により固定される。また、インレット・パイプ114の下流側端部分は、円盤状のインレット側セパレート・プレート116の中心位置に形成された貫通孔116aを貫通させられ、インレット側セパレート・プレート116の貫通孔116aの内周部分に溶接で固着される。インレット側セパレート・プレート116の外周部分は、アウタ・ドラム111のインレット側エンド・プレート112より下流側となる位置に溶接にて固着される。
【0030】
インレット側エンド・プレート112とインレット側セパレート・プレート116とには、中心線より図中上方となる位置においてそれらを貫通するカラー117が固着される。このカラー117の内部には、温度センサ400が挿入される。なお、この温度センサ400は、フィルタ部200内部の温度を検出するためのものであり、検出部分がフィルタ部200内まで伸ばされている。
【0031】
インレット・パイプ114の下流には、これと同軸で若干径が大きく設定されたインナ・パイプ500が軸線方向下流側に向かって伸ばされている。インナ・パイプ500の外周壁には半径方向に孔あけした多数の流出孔510(流出孔510は、図を見やすくするため、便宜上、図1中には1個のみを描いてある。)が設けられて、インナ・パイプ500の外周壁の内部と外部とを連通するようにしてある。なお、インナ・パイプ500の上流側は、開口されたままとされているが、下流側端の内周部分には、円形プレート520が取り付けられて排気がその下流端から軸方向に流出しないように閉じられている。
【0032】
また、インナ・パイプ500の上流端の外周部分には、上流側セパレータ530の内周部分が溶接により固着されており、この上流側セパレータ530の外周部分は、インレット側セパレート・プレート116より下流側の位置でアウタ・ドラム111の内周面に当接されている。なお、この上流側セパレータ530は、インレット・パイプ114から流入してきた排気がフィルタ部200に直接流入することがないように形成してあり、この結果、インレット・パイプ114から流入してきた排気は、すべてインナ・パイプ500へ流れ込むようにしてある。
【0033】
同様に、インナ・パイプ500の下流端の外周部分には、下流側セパレータ540の内周部分が溶接により固着されている。この下流側セパレータ540には、複数の連通孔545が周上に形成されてフィルタ部200から流出してきた排気をアウトレット・パイプ119へ流すようにしてある。また、下流側セパレータ540の外周部分は、上流側セパレータ530より下流側の位置でアウタ・ドラム111の内周面に当接するようにしてある。
このようにして、下流側セパレータ540と上流側セパレータ530とでインナ・パイプ500を筐体110のアウタ・ドラム111に支持する。
【0034】
なお、下流側セパレータ540は、上流側セパレータ530よりわずかに径を小さく設定しておき、インナ・パイプ500が軸方向に熱膨張したとき、下流側セパレータ540側がアウタ・ドラム111に対しスライドして熱膨張差を吸収し、また逆に温度が冷えて収縮したら下流側セパレータ540側がアウタ・ドラム111に対しスライドしそのときの収縮差を吸収するようにしてある。
【0035】
また、インナ・パイプ500の下流側セパレータ540から上流側へ所定距離だけ離れた位置には、インナ・パイプ500に対しスライド可能にしてインナ・パイプ500の外周に支持された下流側保持プレート220が設けられる。この結果、下流側保持プレート220と下流側セパレータ540との間には、上流側膨張室600が形成されることとなる。
【0036】
上流側セパレータ530の下流側の面に上流側クッションシート付きプレート210が当接した状態でインナ・パイプ500の外周壁の上流側端部分に保持される。これと同様に、下流側保持プレート220の上流側面にも下流側クッションシート付きプレート230が当接した状態でインナ・パイプ500の外周壁の下流側端部分に保持される。
なお、上流側セパレータ530と上流側クッションシート付きプレート210とは、温度センサ400の検出部が貫通し、この検出部がフィルタ部200の内部まで入るようにしてある。
【0037】
上流側クッションシート付きプレート210と下流側クッションシート付きプレート230との各外周部分は、それぞれパンチ・メタルのように孔を多数設けられた金属プレートを図2に示すような星型状の筒状に形成した第1インナ・リテーナ250とこの外側に配置した第2インナ・リテーナ240との各端部に連結されている。
【0038】
第1インナ・リテーナ250は、インナ・パイプ500から半径方向外側に所定距離だけ離されており、この半径方向外側でかつアウタ・ドラム111の半径方向内側に第2インナ・リテーナ240が配置されている。
第2インナ・リテーナ240の外周面とアウタ・ドラム111の内周面との間に形成された筒状の空間は、上流側膨張室600に連通するようにしてある。
【0039】
第1インナ・リテーナ250の内周面とインナ・パイプ500の外周面との間で、かつ上流側クッションシート付きプレート210と下流側クッションシート付きプレート230とで挟まれた空間には、微細孔を有するペレット状の発泡石骨粒(フィルタ材)270を多数充満させてある。この発泡石骨粒270は、排気中のパーティキュレート・マターをその表面や微細孔に付着させることにより捕捉可能に形成してある。
【0040】
なお、上流側セパレータ530、下流側保持プレート220、上流側クッションシート付きプレート210、下流側クッションシート付きプレート230、発泡石骨粒270は、本発明のフィルタ部200を構成する。
【0041】
そして、発泡石骨粒270の表面には、低温域で酸化触媒機能を発揮する白金などの貴金属系の触媒と、高温域で酸化触媒機能を発揮するニッケルなどの卑金属系の触媒とからなる酸化触媒300とが混ぜ合わせた状態で浸透させ付着させてある。
【0042】
一方、第1インナ・リテーナ250とこの外側の第2インナ・リテーナ240との間には、炭素繊維を組み合わせたフェルト(別フィルタ材)260が挿入されている。このフェルト260のメッシュは、上記発泡石骨粒270同士間で形成された隙間より目が細かく設定されている。また、フェルト260の総容量は、発泡石骨粒270の粒群の総容量より小さくされている。
なお、フェルト260と第1インナ・リテーナ250と第2インナ・リテーナ240は、本発明のフィルタ・カバー280を構成する。
【0043】
図2は、図1の排気浄化装置100のほぼ中央位置で切断した正面からみた断面を模式的に表した図である。
同図に示すように、第1インナ・リテーナ250と第2インナ・リテーナ240とこれら間に介在されたフェルト260とからなるフィルタ・カバー280は、インナ・パイプ500から半径方向外側へ所定距離離れた谷部281とここからアウタ・ドラム111の近くまで伸びる突出部282(ここでは、16個)を有する星型状の形状に形成されている。なお、突出部282は、半径方向内側から半径方向外側へ向かうにしたがって幅が狭くなるようにしてある。
【0044】
一方、酸化触媒300が付着された多数の発泡石骨粒270が、フィルタ・カバー280の第1インナ・リテーナ250とインナ・パイプ500との間に形成された空間に詰められる。したがって、フィルタ部200は、インナ・パイプ500周りの部分が円筒状になり、ここから先がそれぞれ半径方向外側へ伸びる各突出部282に沿って分かれた状態、すなわち星型状の形状となる。
【0045】
図3は、図2のフィルタ・カバー280近辺の一部を模式的に拡大して示した断面図である。
同図において、発泡石骨粒270の表面には、白金などの貴金属系の酸化触媒310と、ニッケルなどの卑金属系の酸化触媒320とが付着されている。
また、フィルタ・カバー280を構成する内側の第1インナ・リテーナ250にはこの内外を連通する第1連通孔251が多数全面にわたって形成されており、同様に外側の第2インナ・リテーナ240にもその内外を連通する第2連通孔241が多数全面にわたって形成されている。
【0046】
ここで、第1インナ・リテーナ250の第1連通孔251は、発泡石骨粒270の少なくとも一部が入ることができ、その第1連通孔251から外側へ突出した部分が炭素繊維製のフェルト260に接触することが可能な大きさに開口してある。
一方、第2インナ・リテーナ240に形成した第2連通孔241は、上記第1連通孔251より小さな開口面積を有するように設定してある。
【0047】
なお、図3ではフェルト260を構成する炭素繊維のうちのいくつかが第1インナ・リテーナ250の外表面と第2インナ・リテーナ240の内表面とに接触しているが、フェルト260は非圧縮状態で第1インナ・リテーナ250と第2インナ・リテーナ240との間に配置されている。
【0048】
すなわち、フェルト260は、炭素繊維同士が立体的に編むようにして組み合わされ、これらの炭素繊維間を排気が図中の前後・横・斜めの方向へ流れることが可能とされるとともに、第1インナ・リテーナ250の外表面および炭素繊維の間や第2インナ・リテーナ240の内表面および炭素繊維の間に形成された隙間を介しても排気が図中の前後・横・斜めの方向へ流れることが可能なようにしてある。この結果、第1連通孔251から流入した排気は、当該第1連通孔251から一番近い第2連通孔241へ向かうだけでなくその近辺にある別の第2連通孔241へも向かうことが可能となるようにしてある。
【0049】
図1に戻って、アウタ・ドラム111の下流側端の開口部111bには、下流側エンド・プレート113の外周部分が嵌め合わされ、この部分で溶接により互いに固着される。下流側エンド・プレート113の中心部分に形成した貫通孔113aには、アウトレット・パイプ(排気出口部)118の中間部分が貫通させられて、この下流側エンド・プレート113の貫通孔113aの内周部分にアウトレット・パイプ118の中間部分が溶接により固着される。
【0050】
アウトレット・パイプ118の下流側端には、フランジ119が固着されて、このフランジ119が、より下流側の排気管(図示せず)のフランジ(図示せず)にガスケット(図示せず)を挟んだ状態でボルト(図示せず)により固定される。
【0051】
アウトレット・パイプ118の上流側端は、円盤状の下流側セパレート・プレート120の貫通孔120aの内周部分に溶接により固着される。下流側セパレート・プレート120の外周部分は、アウタ・ドラム111の内周面に当接させられている。下流側セパレート・プレート120は、排気を貫通させないように形成してあり、フィルタ部200から流出された排気をすべてアウトレット・パイプ118へ流し込むように構成してある。
【0052】
下流側セパレート・プレート120と下流側セパレータ540との間には、上流側膨張室600より容積が大きい下流側膨張室700が形成され、下流側膨張室700が上流側膨張室600へ下流側セパレータ540の連通孔545を介して連通されている。
【0053】
次に、上記ディーゼル・エンジンの排気浄化装置100の作用につき説明する。
ディーゼル・エンジンから排出された排気は、図示しない上流側排気管を通ってインレット・パイプ114から排気浄化装置100の内部へ流入する。このインレット・パイプ114から流入した排気は、すべてインナ・パイプ500内へ流れ込む。インナ・パイプ500内に流れ込んだ排気は、インナ・パイプ500の下流側端がプレート220で塞がれているので、インナ・パイプ500の外周壁に設けた多数の流出孔510から半径方向外側へ流れ出てフィルタ部200の内部へ流入していく。この場合、排気の速度が速いので、排気は円形プレート520に衝突した後、インナ・パイプ500の下流側の流出孔510から半径方向外側へインナ・パイプ500の上流側より多く流出する。
【0054】
排気は、フィルタ部200の中を半径方向外側へ向かって流れるうちに、排気中に含まれたパーティキュレート・マターが、フィルタ部200内の発泡石骨粒270の表面に付着したり、発泡石骨粒270の微細孔に入り込んだりして捕捉される。大部分のパーティキュレート・マターを捕捉された残りの排気は、さらに第1インナ・リテーナ250の第1連通孔251を通って第2フィルタ部の炭素繊維製フェルト260にてより細かいパーティキュレート・マターが捕捉された後、外側の第2インナ・リテーナ240の第2連通孔241から半径方向外側へと流出する。この場合、発泡石骨粒270とフェルト260とは、インナ・パイプ500の下流側に相当する部分の方がパーティキュレート・マターの補足量が多くなる。
【0055】
このようにしてフィルタ部200から流出した排気は、上流側膨張室600へ流れ込み、ここで膨張してその勢いを減じることで、排気音が低減される。そして、下流側セパレータ540の連通孔545を通じて再びより広い下流側の膨張室700へ流入し、ここで再度膨張してその勢いをさらに減じ、排気音がさらに低減されてアウタ・パイプ118から排気管を通して大気中へ排出される。
【0056】
発泡石骨粒270に捕捉されたパーティキュレート・マターは、ディーゼル・エンジンが高速運転や高負荷運転となり排気温度が上昇すると、発泡石骨粒270の表面に付着した貴金属系の酸化触媒により、低い温度で燃焼し始める。この燃焼は、発泡石骨粒270の群のうちより高熱になりやすい下流側でかつ内側にある部分から始まることが多い。この燃焼によりその外側にある発泡石骨粒270も加熱され燃焼して高温となっていくが、外周側にある発泡石骨粒270が炭素繊維製フェルト260に接触していることからフェルト260をも直接加熱していく。
【0057】
この結果、フェルト260も早期に高温度に達することができ、フィルタ部200およびフィルタ・カバー280でそれぞれ補足されたパーティキュレート・マターの燃焼が促進される。また、さらに高温になっていくと、貴金属系の酸化触媒の触媒効果が低下していくが、今度は卑金属系の酸化触媒が効き始め、パーティキュレート・マターをさらに燃焼していく。このようにして、有害なパーティキュレート・マターを燃焼して灰や二酸化炭素に変えるとともに、フィルタ部200の目詰まりを防ぐことが可能となる。この燃焼結果を本発明者が実験で繰り返し確認したところ、フィルタ部200およびフィルタ・カバー280のほぼ全域にわたってパーティキュレート・マターが燃焼していた。
【0058】
なお、上記高温にさらされた排気浄化装置100の各部品は、熱膨張するが、部位や材料にて熱膨張量が異なる。特に、フィルタ部200とインナ・パイプ500とは、高温にさらされ熱膨張量が大きく異なる。また燃焼状態に応じて半径方向内外で温度が異なることもある。
このように高温となって、インナ・パイプ500が熱膨張すれば、インナ・パイプ500の軸方向(図中右側)への膨張とともに下流側セパレータ540も移動するが、この場合、下流側セパレータ540の外周部分がアウタ・ドラム111の内周面に沿って軸方向へスライドしてこれら間の熱膨張差を吸収する結果、これに起因した歪が小さく抑えられる。
【0059】
一方、フィルタ部200も上記インナ・パイプ500とは異なった熱膨張量で熱膨張し、酸化触媒300や発泡石骨粒270を保持する保持プレート220も移動するが、この内周部分がインナ・パイプ500に対しスライドしてこれら間の熱膨張差を吸収するので、フィルタ部200にも大きな歪が発生するのを抑えられることになる。
【0060】
以上のように、本発明の実施の形態のディーゼル・エンジンの排気浄化装置100は、フィルタ部200を発泡石骨粒270からなるフィルタ部200とこれを覆うフィルタ・カバー280とを星型状の形状とし、この突出部282を半径方向外側に向かうにしたがって幅が狭くなるようにしたので、フィルタ部200で補足したパーティキュレート・マターをほぼ全域にわたって燃焼させることができる。
【0061】
また、フィルタ部200の下流に配置したフィルタ・カバー280に炭素繊維を組み合わせフィルタ部200よりさらに細かいメッシュとしたフェルト260を用いるようにしたので、フィルタ部200で補足し損なったより細かいパーティキュレート・マターを補足して燃焼させることができる。
この場合、発泡石骨粒270の少なくとも一部を第1インナ・リテーナ250の第1連通孔251から突出させ炭素繊維製フェルト260に接触させるようにしたので、フェルト260を早期に高温に加熱することが可能となる。
したがって、フィルタ部200が排気に過度の流通抵抗を与えなくても済むようにでき、多くのパーティキュレート・マターを補足して燃焼させることができるとともに、フィルタ部200を安価な発泡石骨粒270を用いていることができる。発泡石骨粒270を用いれば、第1連通孔251から少なくともその一部を突出させてフェルト260に接触させることが容易にできる。
【0062】
また、酸化触媒300に貴金属系の酸化触媒310と卑金属系の酸化触媒320とを用いているので、低温度域からより高温度域までの広い温度範囲で酸化触媒300によるパーティキュレート・マターの燃焼が可能となる。しかも、これらの酸化触媒300を発泡石骨粒270の表面に付着させるようにすれば、酸化触媒300が発泡石骨粒270で補足したパーティキュレート・マターと接触することとなって触媒反応が促進されるとともに、排気浄化装置100もコンパクトにできる。
【0063】
なお、上記実施の形態に代え、本発明では下記のような変更や修正を施してもよい。
すなわち、フィルタ材は、発泡石骨粒270に限ることなく、これと異なるペレット状のフィルタ材を用いるようにしてもよい。また、同様に別フィルタ材は、炭素繊維製フェルト260に限ることなく、これと異なるフィルタ材を用いてもよい。
また、燃焼促進部として酸化触媒300の代わりに電気ヒーター等を用いるようにしても良い。燃焼促進部は、フィルタ部200に内蔵するのではなく、フィルタ部200の上流側に設けるようにしても良い。
【0064】
さらに、本発明では、インレット側エンド・プレート112とアウトレット側エンド・プレート113をアウタ・ドラム111に溶接で固着しているが、少なくとも一方をフランジとボルトによる結合とし、これらを外すことでインナ・パイプ500とフィルタ部200とがアウタ・ドラム111から取り外し可能としてフィルタ部20の洗浄や交換ができるようにしても良い。この場合、セパレータがインナ・パイプ500から取り外せるようにボルト等にて固定にしてフィルタ部200をインナ・パイプ500から軸方向に引き抜き可能にしたり、あるいはフィルタ部200を半開き可能にするなどして半径方向外側へ外せるようにしたりすると良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態のディーゼル・エンジンの排気浄化装置の断面側面図
【図2】図1のディーゼル・エンジンの排気浄化装置の断面正面図
【図3】図2の排気浄化装置の一部を拡大した断面拡大図
【符号の説明】
100 排気浄化装置
110 筐体
111 アウタ・ドラム
112 インレット側エンド・プレート
113 アウトレット側エンド・プレート
114 インレット・パイプ
116 上流側セパレート・プレート
118 アウトレット・パイプ
120 下流側セパレート・プレート
200 フィルタ部
210 上流側クッションシート付きプレート
220 保持プレート
230 下流側クッションシート付きプレート
240 第2インナ・リテーナ
241 第2連通孔
250 第1インナ・リテーナ
251 第1連通孔
260 フェルト
280 フィルタ・カバー
300 酸化触媒
310 貴金属系の酸化触媒
320 卑金属系の酸化触媒
400 温度センサ
500 インナ・パイプ
510 流出孔
530 上流側セパレータ
540 下流側セパレータ
545 連通孔
600 上流側膨張室
700 下流側膨張室
Claims (9)
- ディーゼル・エンジンから排出された排気が流入する排気入口部および前記排気が流出する排気出口部が筒状のアウタ・ドラムの内部に連通させられた筐体と、
前記アウタ・ドラム内にこの軸方向に沿って配置された筒状の外周壁を有し、該外周壁にこの内外を連通するように設けた流出孔を介して前記排気入口部から前記外周壁の内部へ導入された排気を前記外周壁の外部へ流出させるインナ・パイプと、
該インナ・パイプの外周面と前記アウタ・ドラムの内周面との間に配置され、前記インナ・パイプの前記流出孔から流入してきた排気中のパーティキュレート・マターを捕捉するペレット状のフィルタ材を有するフィルタ部と、
該フィルタ部の外周を覆うフィルタ・カバー部と、
前記アウタ・ドラム内に配置され、前記フィルタ部で捕捉したパーティキュレート・マターの燃焼を促進する燃焼促進部と、
を備えたディーゼル・エンジンの排気浄化装置において、
前記フィルタ部と前記フィルタ・カバーとが、半径方向内側から半径方向外側へ向かうにしたがって幅方向が狭くなるような半径方向へ突出した複数の突起部分を有する星型状の形状に形成され、かつ前記フィルタ・カバーにこの内外を連通して前記排気を流出させる連通孔が略全域にわたって設けられていることを特徴とするディーゼル・エンジンの排気浄化装置。 - 前記フィルタ・カバーは、内外を連通する第1連通孔が形成された第1インナ・リテーナと、該第1インナ・リテーナの外側に配置されて内外を連通する第2連通孔が形成された第2インナ・リテーナと、前記フィルタ材同士間に形成された隙間よりも細かいメッシュを有し前記第1インナ・リテーナと前記第2インナ・リテーナの間に介在された別フィルタ材と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載のディーゼル・エンジンの排気浄化装置。
- 第1インナ・リテーナの前記第1連通孔は、前記第2インナ・リテーナの前記第2連通孔より大きな開口面積を有するようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のディーゼル・エンジンの排気浄化装置。
- 前記別フィルタ材は、前記第1インナ・リテーナと前記第2インナ・リテーナとの間に非圧縮状態で介在されており、前記第1連通孔から流入した前記排気が当該第1の連通孔から最短距離となる前記第2連通孔の近辺にある別の第2連通孔へ前記別フィルタ材を介して流入可能となるようにしたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のディーゼル・エンジンの排気浄化装置。
- 前記燃焼促進部は、酸化触媒であり、前記フィルタ材の表面に付着されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のディーゼル・エンジンの排気浄化装置。
- 前記酸化触媒は、貴金属系の酸化触媒と卑金属系の酸化触媒とを有することを特徴とする請求項5に記載のディーゼル・エンジンの排気浄化装置。
- 前記別フィルタ材は、繊維が組み合わされたフェルト状に形成されていることを特徴とする請求項請求項2から請求項6のいずれかに記載のディーゼル・エンジンの排気浄化装置。
- 前記繊維は、炭素系物質からなることを特徴とする請求項7に記載のディーゼル・エンジンの排気浄化装置。
- 前記フィルタ材は、総容量が前記別フィルタ材より大きいく設定されていることを特徴とする請求項2から請求項8に記載のディーゼル・エンジンの排気浄化装置。
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