JP2004189879A - 水系インクジェット用記録液、及び画像記録方法 - Google Patents
水系インクジェット用記録液、及び画像記録方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】高画質、高画像濃度、高画像信頼性を得ることが可能で、かつ目詰まりすることなく継続的、安定に吐出でき、保存安定性にも優れた水系インクジェット用記録液、及びそれを用いた画像記録方法を提供すること。
【解決手段】本発明の水系インクジェット用記録液は、顔料と、親水基を有する2種以上の樹脂微粒子を含んでなり、顔料が親水基を有する自己分散型顔料の場合、その親水基と樹脂微粒子の親水基とが同種であり、顔料が自己分散型顔料でない場合、さらに顔料を分散させるための分散剤を含み、その分散剤の親水基と樹脂微粒子の親水基とが同種である構成である。また、本発明の水系インクジェット記録液は、使用する材料(自己分散型顔料及び樹脂微粒子、又は分散剤及び樹脂微粒子)のノニオン性親水基を除く、カチオン性又はアニオン性親水基が同種である構成である。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明の水系インクジェット用記録液は、顔料と、親水基を有する2種以上の樹脂微粒子を含んでなり、顔料が親水基を有する自己分散型顔料の場合、その親水基と樹脂微粒子の親水基とが同種であり、顔料が自己分散型顔料でない場合、さらに顔料を分散させるための分散剤を含み、その分散剤の親水基と樹脂微粒子の親水基とが同種である構成である。また、本発明の水系インクジェット記録液は、使用する材料(自己分散型顔料及び樹脂微粒子、又は分散剤及び樹脂微粒子)のノニオン性親水基を除く、カチオン性又はアニオン性親水基が同種である構成である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水系インクジェット用記録液、及びそれを用いた画像記録方法に関する。さらに詳しくは、顔料と2種類以上の樹脂微粒子を含有する水系インクジェット用記録液、及びそれを使用したインクジェット方式の画像記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
顔料系の水系インクでは疎水性の顔料を分散させるために界面活性剤や水溶性樹脂を使用しているのが一般的であるが、得られる画像の信頼性は極めて悪い。そこで、画質向上を目的として造膜性の樹脂微粒子を記録液に添加する技術が開示されているが、複数の成分を微細に安定に長期分散させるのは困難で、これらの微粒子を安定に分散させるために界面活性剤などの分散剤を多く使用すると、インクタンク、ヘッド内での気泡の発生、画質の劣化などの問題も起こってしまう。また、分散性を向上させる目的で顔料の表面を親水基に変える方法や親水基を含有した樹脂などを用いる事が検討されているが、それぞれ単独では安定であっても異なる種類を混ぜた場合、分散が不安定になり保存安定性が悪化するという問題があった。
【0003】
分散を安定化する目的で、分子内にカルボキシル基とノニオン親水基を有する水分散性樹脂を水に分散させる方法(特開平5−239392号公報)、水溶性高分子と界面活性剤を同じ極性にするかノニオンを添加する方法(特開平8−283633号公報)、水系記録液において着色イオン性含有ポリエステル樹脂と着色剤の親水基の極性を同じにする方法(特開2000−63727号公報)、顔料と樹脂微粒子の分散極性を同じにする方法(特開2001−81366号公報)、が報告されている。
【0004】
【特許文献】
特開平5−239392号公報
【特許文献】
特開平8−283633号公報
【特許文献】
特開2000−63727号公報
【特許文献】
特開2001−81366号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の分子内にカルボキシル基とノニオン親水基を有する水分散性樹脂を水に分散させる方法(特開平5−239392)、水溶性高分子と界面活性剤を同じ極性にするかノニオンを添加する方法(特開平8−283633)、水系記録液において着色イオン性含有ポリエステル樹脂と着色剤の親水基の極性を同じにする方法(特開2000−63727)という問題があった。また、顔料と樹脂微粒子の分散極性を同じにする方法(特開2001−81366)では、初期的には分散が十分に安定で印字が出来て、画像濃度が極めて高く耐水性のある高画質画像を得られ、かつ目詰まりすることなく継続的、安定に吐出可能であるが、長期的に連続して印字させると吐出口の目詰まりが発生する虞があり、長期保存安定性に欠け易いという問題があった。
【0006】
このように上記従来の記録液において、吐出口での目詰まり回避の為、記録液の固形分を少なくすると、相対的に記録液の同一体積の液滴中に含まれる樹脂微粒子の含有量すなわち画像形成に寄与する樹脂固形分量が減少し、このため画像濃度が著しく低下し、高画質な画像を得ることは不可能であった。
【0007】
従って、本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明の目的は、高画質、高画像濃度、高画像信頼性を得ることが可能で、かつ目詰まりすることなく継続的、安定に吐出でき、保存安定性にも優れた水系インクジェット用記録液、及びそれを用いた画像記録方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、本発明は、
(1) 顔料と、2種以上の樹脂微粒子とを含み、
前記顔料は、親水基を有する自己分散型顔料であり、
前記樹脂微粒子は、親水性基を有してなり、
且つ、前記顔料と前記樹脂微粒子との親水基が同種であることを特徴とする水系インクジェット用記録液。
【0009】
(2) 顔料と、2種以上の樹脂微粒子とを含み、
前記顔料は、親水基を有する自己分散型顔料であり、
前記樹脂微粒子は、親水性基を有してなり、
前記顔料及び樹脂微粒子に、ノニオン性親水基を有するものであり、
且つ、前記顔料と前記樹脂微粒子のノニオン性親水基を除く前記親水基が同種であること特徴とする水系インクジェット用記録液。
【0010】
(3) 顔料と、顔料を分散させるための分散剤と、2種以上の樹脂微粒子とを含み、
前記分散剤及び樹脂部粒子は、親水基を有してなり、
且つ前記分散剤と前記樹脂微粒子の親水基が同種であることを特徴とする水系インクジェット用記録液。
【0011】
(4) 顔料と、顔料を分散させるための分散剤と、2種以上の樹脂微粒子とを含み、
前記分散剤及び樹脂部粒子は、親水基を有してなり、
前記分散剤及び樹脂微粒子に、ノニオン性親水基を有するものであり、
且つ、前記分散剤と前記樹脂微粒子のノニオン性親水基を除く前記親水基が同種であること特徴とする水系インクジェット用記録液。
【0012】
(5) 前記樹脂微粒子が、ポリエステル系樹脂微粒子であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の水系インクジェット用記録液。
【0013】
(6) 記録液の液滴を記録ヘッドから吐出させて記録体上に画像を記録する画像記録方法において、該記録液として前記(1)〜(5)のいずれかに記載の水系インクジェット用記録液を用いることを特徴とする画像記録方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
(水系インクジェット用記録液)
本発明の水系インクジェット用記録液は、顔料と、親水基を有する2種以上の樹脂微粒子を含んでなり、顔料が親水基を有する自己分散型顔料(水に自己分散可能な顔料)の場合、その親水基と樹脂微粒子の親水基とが同種であり、顔料が自己分散型顔料でない場合、さらに顔料を分散させるための分散剤を含み、その分散剤の親水基と樹脂微粒子の親水基とが同種である構成である。
【0015】
また、本発明の水系インクジェット記録液は、同種の親水基を有する材料を用いるが、親水基が異なってもノニオン性親水基を有する分散剤又は樹脂微粒子であれば、含んでもよい。即ち、使用する材料(自己分散型顔料及び樹脂微粒子、又は分散剤及び樹脂微粒子)のノニオン性親水基を除く、カチオン性又はアニオン性親水基が同種である構成でもよい。これは、用いる材料のうち、一つがノニオン性親水基以外のカチオン性又はアニオン性親水基を有する材料であり、残りの全てがノニオン性親水基を有する材料である構成も含まれる。
【0016】
自己分散型顔料の水分散液と2種類以上の異なる樹脂微粒子の水分散液を混合する場合、それらの顔料及び樹脂微粒子の親水基の極性(イオン性)がすべて同一であると、記録液中で、ある種類の樹脂微粒子の周囲すなわち最近接配位位置に同種樹脂微粒子の存在する確率が減少する(配位効果)と共に、さらに異種樹脂微粒子間に同一イオン性に起因する粒子間反発力(斥力)が生じる。また、上記の異種樹脂微粒子間の粒子間反発力(斥力)効果に加えて、顔料と樹脂微粒子間にも、両者の同一イオン性に起因する粒子間反発力(斥力)が生じる。これにより水中での樹脂微粒子と顔料の分散系に、一貫した斥力場が発生し、樹脂微粒子同志、顔料同志、及び樹脂微粒子と顔料微粒子との接近及び衝突確率が減少する。この現象は、顔料及び樹脂微粒子の親水基の極性(イオン性)が同一であることは勿論のこと、その種類も同一であると、水中での樹脂微粒子と顔料の分散系に、より均一に一貫した斥力場が発生し、特に顕著に現れると推測される。
【0017】
これらの効果により、記録液中での脂微粒子同志、顔料同志、及び樹脂微粒子と顔料微粒子との接近から、衝突、融着、そして膜化(造膜)までに至る記録ヘッド吐出口での目詰まり発生の一連のプロセス(過程)が阻害される。
【0018】
また、水中での樹脂微粒子と顔料の分散系に、より均一に一貫した斥力場が均一に発生し、樹脂微粒子同志、顔料同志、及び樹脂微粒子と顔料微粒子との接近及び衝突確率が減少するので、長期に渡って安定して保存することが可能となると共に、これらの複数の樹脂微粒子が記録液に高い含有量で含有させることが可能となる。このため、画像の高濃度化や、高画質化、高信頼化の実現が、上記目詰まり防止や保存安定性達成と同時に両立して可能となる。
【0019】
これらの現象は、自己分散型顔料を用いず、分散剤により顔料を分散させた系でも同様に生じると推測される。また、親水基としてノニオン性親水基を有する材料であれば、上記現象に影響を及ぼすことが少ないと考えられるため、他の材料の親水基が同種であれば、当該ノニオン性親水基を有する材料を含んでも、同様の現象が生じと推測される。
【0020】
なお、上記各材料に有する親水基としては、カチオン性、アニオン性、ノニオン性のいずれでもよく、例えば、アミノ基、アクリルアミド基、カルボキシル基、スルホン基、ヒドロキシル基等が挙げられる。
【0021】
以下、各材料について説明する。
―樹脂微粒子―
樹脂微粒子としては、自己架橋性の樹脂微粒子と、架橋剤の作用により架橋する非自己架橋型架橋性樹脂微粒子と、非架橋性樹脂微粒子がある。自己架橋性の樹脂微粒子として、アクリルシリコーン系樹脂微粒子、アクリルアミド系樹脂微粒子等を挙げることができ、この中では、高速画像形成に適する高速造膜性及び形成された膜の強さの観点から、着色剤を閉じ込めた強固なシロキサン架橋膜を迅速に形成可能なアルコキシシリル基含有アクリルシリコーン系樹脂微粒子が好ましい。アルコキシシリル基含有アクリルシリコーン系樹脂微粒子のアルコキシシリル基のアルキルは、好ましくは炭素数が1個〜3個のアルキルであり、より好ましくは炭素数が1個〜2個のアルキルである。アクリル骨格としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、メタクリル酸グリシジル等をモノマーとする重合体及び共重合体を挙げることができる。
【0022】
非架橋性の樹脂微粒子及び非自己架橋型架橋性樹脂微粒子としては、フッ素系樹脂微粒子、アクリル系樹脂微粒子、ポリエステル系樹脂微粒子、酢酸ビニル系樹脂微粒子、塩化ビニル系樹脂微粒子、スチレン−ブタジエン重合体系樹脂微粒子、ポリウレタン系樹脂系樹脂微粒子、ポリスチレン系樹脂微粒子、酢酸ビニル−アクリル共重合体系樹脂微粒子、酢酸ビニル−アクリルアミド共重合体系樹脂微粒子、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エポキシ樹脂系樹脂微粒子、ポリアミド樹脂系樹脂微粒子、及びシリコーン系樹脂微粒子等を挙げることができる。上記のうち、非架橋性の樹脂微粒子としては、特に、フッ素系樹脂微粒子が、造膜性すなわち画像形成性に優れ、かつ高撥水性、高耐水性、高耐候性を備えているため、有用である。特に、フルオロオレフィン単位を有するフッ素系樹脂微粒子などが有用である。より具体的には、フルオロオレフィン単位及びビニルエーテル単位から構成される含フッ素ビニルエーテル系樹脂微粒子が効果的に使用できる。ここでフルオロオレフィン単位は、−CF2CF2−、−CF2CF(CF3)−、−CF2CFCl−から選ばれた化合物である。またビニルエーテル単位は、−CH2CH(OCH3)−、−CH2CH(OC2H5)−、−CH2CH(OC3H7)−、−CH2CH(OC4H9)−、−CH2CH(OC5H11)−、−CH2CH(OCH2OH)−、−CH2CH(OC2H4OH)−、−CH2CH(OC3H6OH)−、−CH2CH(OC4H8OH)−、−CH2CH(OC5H10OH)−、−CH2CH(OCH2COOH)−、−CH2CH(OC2H4COOH)−、−CH2CH(OC3H6COOH)−、−CH2CH(OC4H8COOH)−、−CH2CH(OC5H10COOH)−、−CHCH3CH(OCH3)−、−CHCH3CH(OC2H5)−、−CHCH3CH(OC3H7)−、−CHCH3CH(OC4H9)−、−CHCH3CH(OC5H11)−、−CHCH3CH(OCH2OH)−、−CHCH3CH(OC2H4OH)−、−CHCH3CH(OC3H6OH)−、−CHCH3CH(OC4H8OH)−、−CHCH3CH(OC5H10OH)−、−CHCH3CH(OCH2COOH)−、−CHCH3CH(OC2H4COOH)−、−CHCH3CH(OC3H6COOH)−、−CHCH3CH(OC4H8COOH)−、−CHCH3CH(OC5H10COOH)−等である。
【0023】
フルオロオレフィン単位とビニルエーテル単位を完全に交互に組合せた共重合体が好ましい。
【0024】
2種類以上の樹脂微粒子の組み合わせは任意であるが、記録体上での画質信頼性の観点から、少なくとも1種類が自己架橋性の樹脂微粒子であることが好ましく、記録ヘッド吐出口部での膜化(造膜)のプロセスに時間的、構造的な乱れ、不均一を生じさせ得、これにより一層、効果的に目詰まりの発生を防止する観点からは自己架橋性樹脂微粒子と非架橋性樹脂とを組み合わることがよい。
【0025】
さらに、自己架橋性樹脂微粒子の高速造膜性により、記録紙の上に一層速やかに画像が形成される。すなわち、記録ヘッドから飛翔した記録液の液滴が記録紙に付着した直後から、記録液中の水分の蒸発と紙への浸透に伴い、自己架橋性樹脂微粒子の架橋反応が高速に進行し、着色剤を樹脂の中に閉じ込めた強固な画像膜が急速に形成される。さらに共存する他の架橋性樹脂微粒子や非架橋性樹脂微粒子の膜化も合わせて進行し、これらにより、記録液の滲みや浸透が防止され、樹脂とその中に分散し閉じ込められた着色剤とからなる高濃度でかつ高い耐水性のある画像を、紙などの記録体上に形成することが可能になる。
【0026】
記録液中に含有する異なる樹脂微粒の種類数は2以上とすることにより、本発明の効果である樹脂固形分高含有化による画像の高濃度化、高画質化と目詰まり回避の両立は十分に達成し得るものであるが、特に3種類以上とすることにより、前述した最近接配位位置に同種樹脂微粒子の存在する確率が一層減少し(配位効果の促進)、また粒子間引力が一層働きにくくなるなどのため、目詰まりの発生をより効果的に防止できる。樹脂微粒子を球形と仮定した場合、粒子を最密充填した時の、ある粒子の回りに近接し等距離に存在する粒子の数いわゆる最近接粒子数(配位数)は12となる。従って、樹脂微粒子種類数の上限の最適値は12と考えられ、さらに確率的な振れの幅を考慮して、樹脂微粒子種類数の上限は12種類プラス6種類の18種類までとすることが好ましい。従って、異なる種類の樹脂微粒子の合計数は、基本的に2種類以上で上限は特にないものであるが、より好適には、配位効果による同種樹脂微粒子同志の接近及び衝突確率減少の観点から2種類以上18種類以下が好ましく、一層さらに好適には3種類以上12種類以下が望ましい。この場合、樹脂微粒子の種類数として、同じ系であっても変性の仕方などの違いにより樹脂微粒子分散液の特性、すなわち最低成膜温度、ガラス転移点、イオン性、pH、及び重量平均分子量などのいずれか一つ以上の特性が異なれば別の種類として考えてよい。
【0027】
樹脂微粒子の平均粒子径は、0.01μm以上5μm以下であることが好ましいが、0.05μm以上3μm以下であることがより好ましい。樹脂微粒子の平均粒子径が0.01μm未満だと造膜性が悪く、また5μmを超えると光学濃度(画像濃度)が低下する。
【0028】
樹脂微粒子の合計含有量(樹脂微粒子固形分の合計含有量)は、記録液の全量に対して10〜70wt%であることが好ましく、15〜60wt%の範囲であることがより好ましく、20〜50wt%の範囲であることがさらに好ましい。10wt%未満になると画像の光学濃度が低くなり、また70wt%を超えると吐出安定性が低下する懸念がある。
【0029】
―顔料―
顔料としては、通常の顔料を使用することもできるし、自己分散型顔料を用いることができる。
【0030】
通常の顔料としては、有機顔料、無機顔料等が挙げられ、例えば、白黒用としては、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられる。更にカラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42、53、55、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、153、C.I.ピグメントバイオレット1、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、等の顔料がある。記録液全量に対する顔料(固形分)の含有率は、1〜50wt%が好ましいが、さらには、1.5〜40wt%が好ましい。これらの顔料をより均一に水に分散するためには、場合によって超音波やボールミル等で分散処理してもよい。
【0031】
自己分散型顔料としては、例えば、キャボット社製のCab−o−jet−200、Cab−o−jet−300、大日清化社製のIJカラー等を使用してもよい。また、この水に自己分散可能な顔料は、例えば、通常の顔料に対して酸・塩基処理、カップリング剤処理、ポリマーグラフト処理、プラズマ処理、酸化/還元処理等の表面改質処理等を施すことにより製造することができる。
【0032】
顔料の添加量は、記録液全質量に対して、0.5〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがよりこのましい。この添加量が少なすぎると、十分な印字濃度が得られず、多すぎると円滑な噴射が困難となることがある。
【0033】
―その他の材料―
【0034】
本発明の水系インクジェット用記録液に含有される水溶性有機溶媒は、水溶性であれば特に限定されないが、例えば、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を使用することができる。ここで、多価アルコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等が挙げられる。また、多価アルコール誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。更に、含窒素溶媒としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が挙げられる。また、アルコール類としてはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等が挙げられる。更に、含硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルホラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0035】
また、本発明の水系インクジェット用記録液に含有される水溶性有機溶媒としては、1種類の溶媒を単独で使用してもよく、2種類以上の溶媒を混合し混合溶媒
として使用してもよい。更に、水系インクジェット用記録液中の水溶性有機溶媒の含有量は、インクの質量に対して1〜60質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。水溶性有機溶媒の含有量が1質量%未満であると、十分な光学濃度が得られなくなる傾向が大きくなる。一方、水溶性有機溶媒の含有量が60質量%を超えると、記録媒体上におけるインクの速乾
性が十分に得られなくなる傾向が大きくなる。
【0036】
本発明の水系インクジェット用記録液に含有される界面活性剤は、前述したように、特に限定されず、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤を使用することができるが、これらのなかでも、ノニオン性界面活性剤を使用することが好ましい。
【0037】
このようなノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、脂肪族アルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、グリセリンエステル、ソルビタンエステル等が挙げられる。ここで、これらのノニオン性界面活性剤のなかでも、ポリオキシエチレンアルキルエーテルがより好ましい。そして、このポリオキシエチレンアルキルエーテルの中でも、分子中の疎水基の炭素数が8〜20であり、かつ、分子中の親水基となるエチレンオキサイド基の数が2〜15であるものが更に好ましい。更に、前述したように、これらの条件を満たすポリオキシエチレンアルキルエーテルは、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン2−エチルヘキシルエーテルであることが特に好ましい。また、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物も好ましい。
【0038】
また、界面活性剤としてアニオン性界面活性剤を使用する場合、アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、高級アルキルリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0039】
更に、界面活性剤としてカチオン性界面活性剤を使用する場合、カチオン性界面活性剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられる。また、界面活性剤として両性界面活性剤を使用する場合、両性界面活性剤としては、グリシン、N−メチルグルシン等のアミノ酸、グリシルグリシン、ベタイン等のアミノ酸誘導体等が挙げられる。
【0040】
なお、上記記載の界面活性剤以外にも、本発明の水系インクジェット用記録液に含有する界面活性剤としてポリシロキサンオキシエチレン付加物等のシリコーン系界面活性剤や、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテル等のフッ素系界面活性剤、スピクリスポール酸やラムノリピド、リゾレシチン等のバイオサーファクタント等も使用してもよい。
【0041】
また、本発明の水系インクジェット用記録液中の界面活性剤の含有量は、インクの質量に対して0.01〜3質量%であることが好ましく、0.05〜2質量%であることがより好ましく、0.05〜1.5質量%であることが更に好ましい。界面活性剤の含有量が0.01質量%未満であると、記録媒体上におけるインクの速乾性が十分に得られなくなる傾向が大きくなる。一方、界面活性剤の含有量が3質量%を超えると、十分な光学濃度が得られなくなる傾向が大きくなる。
【0042】
更に、本発明の水系インクジェット用記録液に含有される界面活性剤の分子量は、150〜800であることが好ましく、200〜700であることがより好ましい。界面活性剤の分子量が150未満であると、親水部と疎水部との構造上の差が小さくなり、界面活性剤としての機能を発揮しにくくなる傾向が大きくなる。すなわち、この場合には紙へのインクの浸透性が小さくなり、十分なインクの乾燥速度が得られなくなる傾向が大きくなる。一方、界面活性剤の分子量が800を超えると、紙へのインクの浸透性が小さくなるとともに、界面活性剤と顔料粒子との相互作用も大きくなるため、十分なインクの乾燥速度が得られなくなる傾向が大きくなる。
【0043】
本発明の水系インクジェット用記録液に含有する高分子化合物は、前述したように重量平均分子量が850〜8000であれば特に限定されず、ノニオン性化合物、アニオン性化合物、カチオン性化合物、両性化合物のいずれを使用してもよい。
【0044】
例えば、多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物を使用してもよい。具体的には、エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールに対してエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイド基を付加した化合物が挙げられる。より具体的には、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体グリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシブチレン共重合体グリコール等が挙げられる。
【0045】
また、高分子化合物としてα,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの共重合体等を使用してもよい。このようなα,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン化ビニルナフタレン、ビニルアルコール、アクリルアミド、メタクリロキシエチルホスフェート、ビスメタクリロキシエチルホスフェート、メタクリロキシエチルフェニルアシドホスフェート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、クロトン酸アルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル等が挙げられる。
【0046】
そして、α,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの共重合体としては、上記説明した少なくとも1種のα,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーから合成された共重合体が挙げられる。具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−メタクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸シクロヘキシルエステル−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。その他に、先に述べた界面活性剤のうち分子量が850以上であるもの、特に好ましくは、分子量が850〜8000であるものも本発明における高分子化合物として使用できる。本発明者等の検討の結果、このような分子量を有する界面活性剤は、紙などの記録媒体内部へのインクの浸透性を向上させる効果よりも、記録媒体表面の面方向におけるインクの広がりを抑制する効果が大きいことが確認されている。
【0047】
また、本発明の水系インクジェット用記録液中の高分子化合物の含有量は、インクの質量に対して0.1〜3質量%であることが好ましく、0.2〜2.5質量%であることがより好ましく、0.15〜2質量%であることが更に好ましい。高分子化合物の含有量が0.1質量%未満であると、インクの滲みの発生が著しくなる傾向がある。一方、高分子化合物の含有量が3質量%を超えると、インクを普通紙等の記録媒体上に円滑に噴射することが困難となる傾向が大きくなる。
【0048】
更に、本発明の水系インクジェット用記録液中の高分子化合物の溶解度パラメータの値(以下、「SP値」という)は、8.5〜13.5であることが好ましく、10〜13であることがより好ましい。このようなSP値を有する高分子化合物を使用することにより、インクの浸透性をより精密に調節でき、然も、十分な光学濃度をより確実に確保するとともに、印字の滲みの発生をより確実に防止することが可能となる。これは、先に述べたようにこのようなSP値を有する高分子化合物と水に自己分散可能な顔料との間に適度な相互作用が生じているからであると推測される。ここで、このSP値が8.5未満であると、インクの長期保存性が著しく低下してしまう傾向が大きくなる。一方、SP値が13.5を超えると、インクの浸透性が著しく低下し十分な速乾性を得ることが困難となる傾向が大きくなる。なお、本発明の水系インクジェット用記録液に含有される高分子化合物のSP値は、Fedorsの方法により導かれる値を示す。
【0049】
また、本発明の水系インクジェット用記録液に含有される水の含有量は、インクの質量に対して14.0〜98.4質量%であることが好ましく、40〜90質量%であることがより好ましい。水の含有量が14.0質量%未満であると、インクがノズルから円滑に噴射できなくなる傾向が大きくなる。一方、水の含有量が98.4質量%を超えると、長期保存性が低下する傾向が大きくなる。
【0050】
本発明の水系インクジェット用記録液には、例えば、インクの噴射特性制御又は長期保存安定性向上のため、ポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、多糖類及びその誘導体、その他水溶性ポリマー、アクリル系ポリマーエマルション、ポリウレタン系エマルション等のポリマーエマルション、シクロデキストリン、大環状アミン類、デンドリマー、クラウンエーテル類、尿素及びその誘導体、アセトアミド等を用いることができる。また、導伝率、pHを調整するため、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属類の化合物、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等の含窒素化合物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属類の化合物、硫酸、塩酸、硝酸等の酸、硫酸アンモニウム等の強酸と弱アルカリの塩等を使用することができる。更に、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、及びキレート化剤さらに水溶性染料、分散染料、油溶性染料等も添加することができる。
【0051】
―物性―
本発明の水系インクジェット用記録液の粘度は、1.5〜4.0mPa・sであることが好ましく、1.5〜3.0mPa・sであることがより好ましい。インクの粘度が4.0mPa・sを超えると、インクの速乾性が著しく低下してしまう傾向が大きくなる。これは、インクがこのような粘度になると紙等の記録媒体への浸透性が著しく低下してしまうためであると考えられる。一方、インクの粘度が1.5mPa・s未満であると、十分な光学濃度を得ることが困難となる傾向が大きくなる。これは、紙等の記録媒体への浸透性が著しく増大してしまうためであると考えられる。
【0052】
本発明にかかる水系インクジェット用記録液中の分散粒子の体積平均粒子径は30〜100nmであることが好ましく、30〜80nmであることがより好ましく、30〜60nmであることが更に好ましい。この体積平均粒子径が100nmを超えると、インクの速乾性が著しく低下してしまう傾向が大きくなる。これは、分散粒子径が大きくなるにつれて、紙等の記録媒体内へのインクの浸透が抑制されるためと考えられる。一方、この体積平均粒子径が30nm未満となると、十分な光学濃度が得られなくなる傾向が大きくなる。なお、本発明の水系インクジェット用記録液中の分散粒子の体積平均粒子径の測定値は、測定装置としてマイクロトラックUPA粒度分析計9340(Leeds&Northrup社製))を用いて測定された値である。測定条件は、インク4mLを測定セルに入れ、測定パラメーターとしてインクの粘度と、分散粒子(顔料)の密度とを入力し、所定の測定法に従って行った。
【0053】
本発明の水系インクジェット用記録液中に存在する上記の分散粒子について、インク中に存在する粒子径が0.5μm以上である分散粒子の粒子数は、インク2μL中に1×103〜1×105個であることが好ましく、1×103〜8×104個であることがより好ましく、1×104〜2×104個であることが更に好ましい。粒子径が0.5μm以上である分散粒子の粒子数がインク2μL中に1×103個未満の場合には、十分な光学濃度を得ることが困難となる傾向が大きくなる。一方、粒子径が0.5μm以上である分散粒子の粒子数が1×105個を超えると、インクの速乾性が著しく低下してしまう傾向が大きくなる。なお、本発明において、上記の分散粒子の粒子数は、測定装置としてAccusizer TM770 Optical ParticleSizer (Particle Sizing Systems 社製)を用いて測定された値である。また、測定時に装置に入力するパラメーターとして、分散粒子の密度には顔料の密度を入力した。
【0054】
本発明の水系インクジェット用記録液の表面張力は、25〜40mN/mであることが好ましく、25〜35mN/mであることがより好ましい。このようにすることにより、普通紙に対するインクの浸透性を制御することが可能となる。ここで、水系インクジェット用記録液の表面張力が25mN/m未満となると、十分な光学濃度が得られなくなる傾向が大きくなる。一方、水系インクジェット用記録液の表面張力が40mN/mを超えると、十分なインクの速乾性が得られなくなる傾向が大きくなる。
【0055】
(画像記録方法)
本発明の水系インクジェット記録方法は、先に述べた本発明の水系インクジェット用記録液を用いて印字する方法であれば特に限定されず、例えば、ピエゾインクジェット方式や熱インクジェット方式等の公知の方式を使用するものであってもよい。ただし、インクジェットプリンターの印字速度の高速化や画像解像度の向上を実現する観点からみた場合には、熱インクジェット記録方式を採用することが好ましい。
【0056】
また、本発明の画像記録方法において使用する装置は特に限定されるものではなく、例えば、通常のインクジェット記録装置、インクのドライングを制御するためのヒーター等を搭載した記録装置、中間体転写機構を搭載しており、中間体に記録材料を印字した後紙等の記録媒体に転写する記録装置等を使用してもよい。
【0057】
また、本発明の画像記録方法において熱インクジェット記録方式を採用する場合、インクに複数パルスを印加することにより1ドロップを形成することが好ましい。このようにすることにより、ノズルからのインクの噴射安定性を向上させることができ、更に、ヒーター上でのインクの焦げ付き(コゲーション)の発生を抑制することが可能となる。
【0058】
更に、本発明の画像記録方法においては、インクジェット用記録液のドロップ量を20pL以下とすることが好ましく、5〜18pLとすることがより好ましく、10〜16pLとすることが更に好ましい。記録媒体上におけるインクの接触角は、インクのドロップ量に依存して変化し、インクのドロップ量が大きくなるとこれに従って接触角は小さくなる。そのため、インクのドロップ量を20pL以下の範囲に制御することにより、インクの記録媒体中への浸透と記録媒体表面方向への拡散とを適切に制御して、印字したときの十分な速乾性と十分な光学濃度を得ることが可能な水準に容易に調節することが可能となる。ここで、インクのドロップ量が20pLを超えると、印字の滲みの発生が著しくなる傾向がある。
【0059】
【実施例】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0060】
まず、表1〜2に樹脂微粒子、顔料の例示と共にその詳細を示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
以上示したうち、表3に示す組成に従って、2種の樹脂微粒子、顔料を用いてインクを調整し、以下に示す印字サンプル評価を行なった。結果を表5〜7に示す。なお、2種の樹脂微粒子の組合せは表4に、顔料と樹脂微粒子との組合せは、表5〜7に示す。
【0064】
(印字サンプル評価)
調整したインクを市販のEPSON CL−700で印時し、ノズル信頼性として、光学濃度、にじみ、耐水性、耐擦性を評価した。用紙にはSharpMU(社製)を用いた。また、保存安定性、噴射安定性(連続印字枚数)についても評価した。
【0065】
−光学濃度−
光学濃度は、X−Rite936を用いで測定した。評価基準は以下の通りである。
〇:Black 1.5以上、Color 1.2以上
△:Black 1.3〜1.5、Color 1.0〜1.2
×:Black 1.3以下、Color 1.0以下
【0066】
−にじみ−
にじみを目視により評価した。評価基準は以下の通りである。
〇:文字がシャープでヒゲ状の滲みがほとんど無い
△:文字にシャープさが無く、ヒゲ状の滲みが多少有る
×:文字にシャープさが無く、ヒゲ状の滲みが多い
【0067】
−耐水性−
印字30分後、印字部分にスポイトでイオン交換水を数滴垂らし、にじみ具合を目視した。評価基準は以下の通りである。
〇:文字の滲みがほとんど無い
△:文字の滲みが多少有る
×:文字の滲みがかなりある
【0068】
−耐擦性−
印字30分後、インクジェット用コート紙、ハイグレード(富士ゼロックス社製)でベタ部から印字していない白い領域へ擦り、白い部分へ移った汚れ具合を目視した。
〇:白い部分への汚れがほとんど無い
△:白い部分への汚れが多少有る
×:白い部分への汚れがかなりある
【0069】
−保存安定性−
評価用インクを80℃高温槽に、14日間入れた後、Microtruc UPAで粒度分布測定を行った。評価基準は以下の通りである。
◎:粒径分布、平均粒径の変化が無く、単分散系
〇:粒径分布、平均粒径の変化が微妙にあるが、単分散系
×:粒径分布、平均粒径に変化があり、2ピーク以上の分布を持つ多分散体
【0070】
−噴射安定性−
文章、グラフ、写真の入ったカバレッジ(印字面積率)20%程度のA4サイズの用紙を連続して印字した際にカスレが発生するまでの枚数。
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】
【表5】
【0074】
【表6】
【0075】
【表7】
【0076】
表5〜7から、自己分散型顔料と樹脂微粒子との親水基が全て同種であると、光学濃度、にじみ、耐水性、耐擦性、保存安定性、噴射安定性について良好な結果が得られることがわかり、親水基の種類は異なるが同極性の場合に比べ、その結果が顕著であることもわかる。また、自己分散型顔料と樹脂微粒子うち、KUE100のようなOH基を親水基として有しても、他の材料(自己分散型顔料と樹脂微粒子)の親水基が同種であれば、全て同一の場合に比べて若干効果は劣るが、親水基の種類は異なるが同極性の場合に比べ良好な結果が得られることがわかる。
【0077】
また、表7の結果から、他の材料の親水基に関わらず、ノニオン性の親水基を有するものであれば、インク中に含んでも良好な結果が得られることがわかり、これら結果がノニオン性の親水基以外の親水基が異なる場合に比べ顕著であることもわかる。
【0078】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、高画質、高画像濃度、高画像信頼性を得ることが可能で、かつ目詰まりすることなく継続的、安定に吐出でき、保存安定性にも優れた水系インクジェット用記録液、及びそれを用いた画像記録方法を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は水系インクジェット用記録液、及びそれを用いた画像記録方法に関する。さらに詳しくは、顔料と2種類以上の樹脂微粒子を含有する水系インクジェット用記録液、及びそれを使用したインクジェット方式の画像記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
顔料系の水系インクでは疎水性の顔料を分散させるために界面活性剤や水溶性樹脂を使用しているのが一般的であるが、得られる画像の信頼性は極めて悪い。そこで、画質向上を目的として造膜性の樹脂微粒子を記録液に添加する技術が開示されているが、複数の成分を微細に安定に長期分散させるのは困難で、これらの微粒子を安定に分散させるために界面活性剤などの分散剤を多く使用すると、インクタンク、ヘッド内での気泡の発生、画質の劣化などの問題も起こってしまう。また、分散性を向上させる目的で顔料の表面を親水基に変える方法や親水基を含有した樹脂などを用いる事が検討されているが、それぞれ単独では安定であっても異なる種類を混ぜた場合、分散が不安定になり保存安定性が悪化するという問題があった。
【0003】
分散を安定化する目的で、分子内にカルボキシル基とノニオン親水基を有する水分散性樹脂を水に分散させる方法(特開平5−239392号公報)、水溶性高分子と界面活性剤を同じ極性にするかノニオンを添加する方法(特開平8−283633号公報)、水系記録液において着色イオン性含有ポリエステル樹脂と着色剤の親水基の極性を同じにする方法(特開2000−63727号公報)、顔料と樹脂微粒子の分散極性を同じにする方法(特開2001−81366号公報)、が報告されている。
【0004】
【特許文献】
特開平5−239392号公報
【特許文献】
特開平8−283633号公報
【特許文献】
特開2000−63727号公報
【特許文献】
特開2001−81366号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の分子内にカルボキシル基とノニオン親水基を有する水分散性樹脂を水に分散させる方法(特開平5−239392)、水溶性高分子と界面活性剤を同じ極性にするかノニオンを添加する方法(特開平8−283633)、水系記録液において着色イオン性含有ポリエステル樹脂と着色剤の親水基の極性を同じにする方法(特開2000−63727)という問題があった。また、顔料と樹脂微粒子の分散極性を同じにする方法(特開2001−81366)では、初期的には分散が十分に安定で印字が出来て、画像濃度が極めて高く耐水性のある高画質画像を得られ、かつ目詰まりすることなく継続的、安定に吐出可能であるが、長期的に連続して印字させると吐出口の目詰まりが発生する虞があり、長期保存安定性に欠け易いという問題があった。
【0006】
このように上記従来の記録液において、吐出口での目詰まり回避の為、記録液の固形分を少なくすると、相対的に記録液の同一体積の液滴中に含まれる樹脂微粒子の含有量すなわち画像形成に寄与する樹脂固形分量が減少し、このため画像濃度が著しく低下し、高画質な画像を得ることは不可能であった。
【0007】
従って、本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明の目的は、高画質、高画像濃度、高画像信頼性を得ることが可能で、かつ目詰まりすることなく継続的、安定に吐出でき、保存安定性にも優れた水系インクジェット用記録液、及びそれを用いた画像記録方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、本発明は、
(1) 顔料と、2種以上の樹脂微粒子とを含み、
前記顔料は、親水基を有する自己分散型顔料であり、
前記樹脂微粒子は、親水性基を有してなり、
且つ、前記顔料と前記樹脂微粒子との親水基が同種であることを特徴とする水系インクジェット用記録液。
【0009】
(2) 顔料と、2種以上の樹脂微粒子とを含み、
前記顔料は、親水基を有する自己分散型顔料であり、
前記樹脂微粒子は、親水性基を有してなり、
前記顔料及び樹脂微粒子に、ノニオン性親水基を有するものであり、
且つ、前記顔料と前記樹脂微粒子のノニオン性親水基を除く前記親水基が同種であること特徴とする水系インクジェット用記録液。
【0010】
(3) 顔料と、顔料を分散させるための分散剤と、2種以上の樹脂微粒子とを含み、
前記分散剤及び樹脂部粒子は、親水基を有してなり、
且つ前記分散剤と前記樹脂微粒子の親水基が同種であることを特徴とする水系インクジェット用記録液。
【0011】
(4) 顔料と、顔料を分散させるための分散剤と、2種以上の樹脂微粒子とを含み、
前記分散剤及び樹脂部粒子は、親水基を有してなり、
前記分散剤及び樹脂微粒子に、ノニオン性親水基を有するものであり、
且つ、前記分散剤と前記樹脂微粒子のノニオン性親水基を除く前記親水基が同種であること特徴とする水系インクジェット用記録液。
【0012】
(5) 前記樹脂微粒子が、ポリエステル系樹脂微粒子であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の水系インクジェット用記録液。
【0013】
(6) 記録液の液滴を記録ヘッドから吐出させて記録体上に画像を記録する画像記録方法において、該記録液として前記(1)〜(5)のいずれかに記載の水系インクジェット用記録液を用いることを特徴とする画像記録方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
(水系インクジェット用記録液)
本発明の水系インクジェット用記録液は、顔料と、親水基を有する2種以上の樹脂微粒子を含んでなり、顔料が親水基を有する自己分散型顔料(水に自己分散可能な顔料)の場合、その親水基と樹脂微粒子の親水基とが同種であり、顔料が自己分散型顔料でない場合、さらに顔料を分散させるための分散剤を含み、その分散剤の親水基と樹脂微粒子の親水基とが同種である構成である。
【0015】
また、本発明の水系インクジェット記録液は、同種の親水基を有する材料を用いるが、親水基が異なってもノニオン性親水基を有する分散剤又は樹脂微粒子であれば、含んでもよい。即ち、使用する材料(自己分散型顔料及び樹脂微粒子、又は分散剤及び樹脂微粒子)のノニオン性親水基を除く、カチオン性又はアニオン性親水基が同種である構成でもよい。これは、用いる材料のうち、一つがノニオン性親水基以外のカチオン性又はアニオン性親水基を有する材料であり、残りの全てがノニオン性親水基を有する材料である構成も含まれる。
【0016】
自己分散型顔料の水分散液と2種類以上の異なる樹脂微粒子の水分散液を混合する場合、それらの顔料及び樹脂微粒子の親水基の極性(イオン性)がすべて同一であると、記録液中で、ある種類の樹脂微粒子の周囲すなわち最近接配位位置に同種樹脂微粒子の存在する確率が減少する(配位効果)と共に、さらに異種樹脂微粒子間に同一イオン性に起因する粒子間反発力(斥力)が生じる。また、上記の異種樹脂微粒子間の粒子間反発力(斥力)効果に加えて、顔料と樹脂微粒子間にも、両者の同一イオン性に起因する粒子間反発力(斥力)が生じる。これにより水中での樹脂微粒子と顔料の分散系に、一貫した斥力場が発生し、樹脂微粒子同志、顔料同志、及び樹脂微粒子と顔料微粒子との接近及び衝突確率が減少する。この現象は、顔料及び樹脂微粒子の親水基の極性(イオン性)が同一であることは勿論のこと、その種類も同一であると、水中での樹脂微粒子と顔料の分散系に、より均一に一貫した斥力場が発生し、特に顕著に現れると推測される。
【0017】
これらの効果により、記録液中での脂微粒子同志、顔料同志、及び樹脂微粒子と顔料微粒子との接近から、衝突、融着、そして膜化(造膜)までに至る記録ヘッド吐出口での目詰まり発生の一連のプロセス(過程)が阻害される。
【0018】
また、水中での樹脂微粒子と顔料の分散系に、より均一に一貫した斥力場が均一に発生し、樹脂微粒子同志、顔料同志、及び樹脂微粒子と顔料微粒子との接近及び衝突確率が減少するので、長期に渡って安定して保存することが可能となると共に、これらの複数の樹脂微粒子が記録液に高い含有量で含有させることが可能となる。このため、画像の高濃度化や、高画質化、高信頼化の実現が、上記目詰まり防止や保存安定性達成と同時に両立して可能となる。
【0019】
これらの現象は、自己分散型顔料を用いず、分散剤により顔料を分散させた系でも同様に生じると推測される。また、親水基としてノニオン性親水基を有する材料であれば、上記現象に影響を及ぼすことが少ないと考えられるため、他の材料の親水基が同種であれば、当該ノニオン性親水基を有する材料を含んでも、同様の現象が生じと推測される。
【0020】
なお、上記各材料に有する親水基としては、カチオン性、アニオン性、ノニオン性のいずれでもよく、例えば、アミノ基、アクリルアミド基、カルボキシル基、スルホン基、ヒドロキシル基等が挙げられる。
【0021】
以下、各材料について説明する。
―樹脂微粒子―
樹脂微粒子としては、自己架橋性の樹脂微粒子と、架橋剤の作用により架橋する非自己架橋型架橋性樹脂微粒子と、非架橋性樹脂微粒子がある。自己架橋性の樹脂微粒子として、アクリルシリコーン系樹脂微粒子、アクリルアミド系樹脂微粒子等を挙げることができ、この中では、高速画像形成に適する高速造膜性及び形成された膜の強さの観点から、着色剤を閉じ込めた強固なシロキサン架橋膜を迅速に形成可能なアルコキシシリル基含有アクリルシリコーン系樹脂微粒子が好ましい。アルコキシシリル基含有アクリルシリコーン系樹脂微粒子のアルコキシシリル基のアルキルは、好ましくは炭素数が1個〜3個のアルキルであり、より好ましくは炭素数が1個〜2個のアルキルである。アクリル骨格としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、メタクリル酸グリシジル等をモノマーとする重合体及び共重合体を挙げることができる。
【0022】
非架橋性の樹脂微粒子及び非自己架橋型架橋性樹脂微粒子としては、フッ素系樹脂微粒子、アクリル系樹脂微粒子、ポリエステル系樹脂微粒子、酢酸ビニル系樹脂微粒子、塩化ビニル系樹脂微粒子、スチレン−ブタジエン重合体系樹脂微粒子、ポリウレタン系樹脂系樹脂微粒子、ポリスチレン系樹脂微粒子、酢酸ビニル−アクリル共重合体系樹脂微粒子、酢酸ビニル−アクリルアミド共重合体系樹脂微粒子、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エポキシ樹脂系樹脂微粒子、ポリアミド樹脂系樹脂微粒子、及びシリコーン系樹脂微粒子等を挙げることができる。上記のうち、非架橋性の樹脂微粒子としては、特に、フッ素系樹脂微粒子が、造膜性すなわち画像形成性に優れ、かつ高撥水性、高耐水性、高耐候性を備えているため、有用である。特に、フルオロオレフィン単位を有するフッ素系樹脂微粒子などが有用である。より具体的には、フルオロオレフィン単位及びビニルエーテル単位から構成される含フッ素ビニルエーテル系樹脂微粒子が効果的に使用できる。ここでフルオロオレフィン単位は、−CF2CF2−、−CF2CF(CF3)−、−CF2CFCl−から選ばれた化合物である。またビニルエーテル単位は、−CH2CH(OCH3)−、−CH2CH(OC2H5)−、−CH2CH(OC3H7)−、−CH2CH(OC4H9)−、−CH2CH(OC5H11)−、−CH2CH(OCH2OH)−、−CH2CH(OC2H4OH)−、−CH2CH(OC3H6OH)−、−CH2CH(OC4H8OH)−、−CH2CH(OC5H10OH)−、−CH2CH(OCH2COOH)−、−CH2CH(OC2H4COOH)−、−CH2CH(OC3H6COOH)−、−CH2CH(OC4H8COOH)−、−CH2CH(OC5H10COOH)−、−CHCH3CH(OCH3)−、−CHCH3CH(OC2H5)−、−CHCH3CH(OC3H7)−、−CHCH3CH(OC4H9)−、−CHCH3CH(OC5H11)−、−CHCH3CH(OCH2OH)−、−CHCH3CH(OC2H4OH)−、−CHCH3CH(OC3H6OH)−、−CHCH3CH(OC4H8OH)−、−CHCH3CH(OC5H10OH)−、−CHCH3CH(OCH2COOH)−、−CHCH3CH(OC2H4COOH)−、−CHCH3CH(OC3H6COOH)−、−CHCH3CH(OC4H8COOH)−、−CHCH3CH(OC5H10COOH)−等である。
【0023】
フルオロオレフィン単位とビニルエーテル単位を完全に交互に組合せた共重合体が好ましい。
【0024】
2種類以上の樹脂微粒子の組み合わせは任意であるが、記録体上での画質信頼性の観点から、少なくとも1種類が自己架橋性の樹脂微粒子であることが好ましく、記録ヘッド吐出口部での膜化(造膜)のプロセスに時間的、構造的な乱れ、不均一を生じさせ得、これにより一層、効果的に目詰まりの発生を防止する観点からは自己架橋性樹脂微粒子と非架橋性樹脂とを組み合わることがよい。
【0025】
さらに、自己架橋性樹脂微粒子の高速造膜性により、記録紙の上に一層速やかに画像が形成される。すなわち、記録ヘッドから飛翔した記録液の液滴が記録紙に付着した直後から、記録液中の水分の蒸発と紙への浸透に伴い、自己架橋性樹脂微粒子の架橋反応が高速に進行し、着色剤を樹脂の中に閉じ込めた強固な画像膜が急速に形成される。さらに共存する他の架橋性樹脂微粒子や非架橋性樹脂微粒子の膜化も合わせて進行し、これらにより、記録液の滲みや浸透が防止され、樹脂とその中に分散し閉じ込められた着色剤とからなる高濃度でかつ高い耐水性のある画像を、紙などの記録体上に形成することが可能になる。
【0026】
記録液中に含有する異なる樹脂微粒の種類数は2以上とすることにより、本発明の効果である樹脂固形分高含有化による画像の高濃度化、高画質化と目詰まり回避の両立は十分に達成し得るものであるが、特に3種類以上とすることにより、前述した最近接配位位置に同種樹脂微粒子の存在する確率が一層減少し(配位効果の促進)、また粒子間引力が一層働きにくくなるなどのため、目詰まりの発生をより効果的に防止できる。樹脂微粒子を球形と仮定した場合、粒子を最密充填した時の、ある粒子の回りに近接し等距離に存在する粒子の数いわゆる最近接粒子数(配位数)は12となる。従って、樹脂微粒子種類数の上限の最適値は12と考えられ、さらに確率的な振れの幅を考慮して、樹脂微粒子種類数の上限は12種類プラス6種類の18種類までとすることが好ましい。従って、異なる種類の樹脂微粒子の合計数は、基本的に2種類以上で上限は特にないものであるが、より好適には、配位効果による同種樹脂微粒子同志の接近及び衝突確率減少の観点から2種類以上18種類以下が好ましく、一層さらに好適には3種類以上12種類以下が望ましい。この場合、樹脂微粒子の種類数として、同じ系であっても変性の仕方などの違いにより樹脂微粒子分散液の特性、すなわち最低成膜温度、ガラス転移点、イオン性、pH、及び重量平均分子量などのいずれか一つ以上の特性が異なれば別の種類として考えてよい。
【0027】
樹脂微粒子の平均粒子径は、0.01μm以上5μm以下であることが好ましいが、0.05μm以上3μm以下であることがより好ましい。樹脂微粒子の平均粒子径が0.01μm未満だと造膜性が悪く、また5μmを超えると光学濃度(画像濃度)が低下する。
【0028】
樹脂微粒子の合計含有量(樹脂微粒子固形分の合計含有量)は、記録液の全量に対して10〜70wt%であることが好ましく、15〜60wt%の範囲であることがより好ましく、20〜50wt%の範囲であることがさらに好ましい。10wt%未満になると画像の光学濃度が低くなり、また70wt%を超えると吐出安定性が低下する懸念がある。
【0029】
―顔料―
顔料としては、通常の顔料を使用することもできるし、自己分散型顔料を用いることができる。
【0030】
通常の顔料としては、有機顔料、無機顔料等が挙げられ、例えば、白黒用としては、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられる。更にカラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42、53、55、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、153、C.I.ピグメントバイオレット1、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、等の顔料がある。記録液全量に対する顔料(固形分)の含有率は、1〜50wt%が好ましいが、さらには、1.5〜40wt%が好ましい。これらの顔料をより均一に水に分散するためには、場合によって超音波やボールミル等で分散処理してもよい。
【0031】
自己分散型顔料としては、例えば、キャボット社製のCab−o−jet−200、Cab−o−jet−300、大日清化社製のIJカラー等を使用してもよい。また、この水に自己分散可能な顔料は、例えば、通常の顔料に対して酸・塩基処理、カップリング剤処理、ポリマーグラフト処理、プラズマ処理、酸化/還元処理等の表面改質処理等を施すことにより製造することができる。
【0032】
顔料の添加量は、記録液全質量に対して、0.5〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがよりこのましい。この添加量が少なすぎると、十分な印字濃度が得られず、多すぎると円滑な噴射が困難となることがある。
【0033】
―その他の材料―
【0034】
本発明の水系インクジェット用記録液に含有される水溶性有機溶媒は、水溶性であれば特に限定されないが、例えば、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を使用することができる。ここで、多価アルコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等が挙げられる。また、多価アルコール誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。更に、含窒素溶媒としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が挙げられる。また、アルコール類としてはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等が挙げられる。更に、含硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルホラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0035】
また、本発明の水系インクジェット用記録液に含有される水溶性有機溶媒としては、1種類の溶媒を単独で使用してもよく、2種類以上の溶媒を混合し混合溶媒
として使用してもよい。更に、水系インクジェット用記録液中の水溶性有機溶媒の含有量は、インクの質量に対して1〜60質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。水溶性有機溶媒の含有量が1質量%未満であると、十分な光学濃度が得られなくなる傾向が大きくなる。一方、水溶性有機溶媒の含有量が60質量%を超えると、記録媒体上におけるインクの速乾
性が十分に得られなくなる傾向が大きくなる。
【0036】
本発明の水系インクジェット用記録液に含有される界面活性剤は、前述したように、特に限定されず、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤を使用することができるが、これらのなかでも、ノニオン性界面活性剤を使用することが好ましい。
【0037】
このようなノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、脂肪族アルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、グリセリンエステル、ソルビタンエステル等が挙げられる。ここで、これらのノニオン性界面活性剤のなかでも、ポリオキシエチレンアルキルエーテルがより好ましい。そして、このポリオキシエチレンアルキルエーテルの中でも、分子中の疎水基の炭素数が8〜20であり、かつ、分子中の親水基となるエチレンオキサイド基の数が2〜15であるものが更に好ましい。更に、前述したように、これらの条件を満たすポリオキシエチレンアルキルエーテルは、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン2−エチルヘキシルエーテルであることが特に好ましい。また、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物も好ましい。
【0038】
また、界面活性剤としてアニオン性界面活性剤を使用する場合、アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、高級アルキルリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0039】
更に、界面活性剤としてカチオン性界面活性剤を使用する場合、カチオン性界面活性剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられる。また、界面活性剤として両性界面活性剤を使用する場合、両性界面活性剤としては、グリシン、N−メチルグルシン等のアミノ酸、グリシルグリシン、ベタイン等のアミノ酸誘導体等が挙げられる。
【0040】
なお、上記記載の界面活性剤以外にも、本発明の水系インクジェット用記録液に含有する界面活性剤としてポリシロキサンオキシエチレン付加物等のシリコーン系界面活性剤や、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテル等のフッ素系界面活性剤、スピクリスポール酸やラムノリピド、リゾレシチン等のバイオサーファクタント等も使用してもよい。
【0041】
また、本発明の水系インクジェット用記録液中の界面活性剤の含有量は、インクの質量に対して0.01〜3質量%であることが好ましく、0.05〜2質量%であることがより好ましく、0.05〜1.5質量%であることが更に好ましい。界面活性剤の含有量が0.01質量%未満であると、記録媒体上におけるインクの速乾性が十分に得られなくなる傾向が大きくなる。一方、界面活性剤の含有量が3質量%を超えると、十分な光学濃度が得られなくなる傾向が大きくなる。
【0042】
更に、本発明の水系インクジェット用記録液に含有される界面活性剤の分子量は、150〜800であることが好ましく、200〜700であることがより好ましい。界面活性剤の分子量が150未満であると、親水部と疎水部との構造上の差が小さくなり、界面活性剤としての機能を発揮しにくくなる傾向が大きくなる。すなわち、この場合には紙へのインクの浸透性が小さくなり、十分なインクの乾燥速度が得られなくなる傾向が大きくなる。一方、界面活性剤の分子量が800を超えると、紙へのインクの浸透性が小さくなるとともに、界面活性剤と顔料粒子との相互作用も大きくなるため、十分なインクの乾燥速度が得られなくなる傾向が大きくなる。
【0043】
本発明の水系インクジェット用記録液に含有する高分子化合物は、前述したように重量平均分子量が850〜8000であれば特に限定されず、ノニオン性化合物、アニオン性化合物、カチオン性化合物、両性化合物のいずれを使用してもよい。
【0044】
例えば、多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物を使用してもよい。具体的には、エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールに対してエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイド基を付加した化合物が挙げられる。より具体的には、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体グリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシブチレン共重合体グリコール等が挙げられる。
【0045】
また、高分子化合物としてα,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの共重合体等を使用してもよい。このようなα,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン化ビニルナフタレン、ビニルアルコール、アクリルアミド、メタクリロキシエチルホスフェート、ビスメタクリロキシエチルホスフェート、メタクリロキシエチルフェニルアシドホスフェート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、クロトン酸アルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル等が挙げられる。
【0046】
そして、α,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの共重合体としては、上記説明した少なくとも1種のα,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーから合成された共重合体が挙げられる。具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−メタクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸シクロヘキシルエステル−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。その他に、先に述べた界面活性剤のうち分子量が850以上であるもの、特に好ましくは、分子量が850〜8000であるものも本発明における高分子化合物として使用できる。本発明者等の検討の結果、このような分子量を有する界面活性剤は、紙などの記録媒体内部へのインクの浸透性を向上させる効果よりも、記録媒体表面の面方向におけるインクの広がりを抑制する効果が大きいことが確認されている。
【0047】
また、本発明の水系インクジェット用記録液中の高分子化合物の含有量は、インクの質量に対して0.1〜3質量%であることが好ましく、0.2〜2.5質量%であることがより好ましく、0.15〜2質量%であることが更に好ましい。高分子化合物の含有量が0.1質量%未満であると、インクの滲みの発生が著しくなる傾向がある。一方、高分子化合物の含有量が3質量%を超えると、インクを普通紙等の記録媒体上に円滑に噴射することが困難となる傾向が大きくなる。
【0048】
更に、本発明の水系インクジェット用記録液中の高分子化合物の溶解度パラメータの値(以下、「SP値」という)は、8.5〜13.5であることが好ましく、10〜13であることがより好ましい。このようなSP値を有する高分子化合物を使用することにより、インクの浸透性をより精密に調節でき、然も、十分な光学濃度をより確実に確保するとともに、印字の滲みの発生をより確実に防止することが可能となる。これは、先に述べたようにこのようなSP値を有する高分子化合物と水に自己分散可能な顔料との間に適度な相互作用が生じているからであると推測される。ここで、このSP値が8.5未満であると、インクの長期保存性が著しく低下してしまう傾向が大きくなる。一方、SP値が13.5を超えると、インクの浸透性が著しく低下し十分な速乾性を得ることが困難となる傾向が大きくなる。なお、本発明の水系インクジェット用記録液に含有される高分子化合物のSP値は、Fedorsの方法により導かれる値を示す。
【0049】
また、本発明の水系インクジェット用記録液に含有される水の含有量は、インクの質量に対して14.0〜98.4質量%であることが好ましく、40〜90質量%であることがより好ましい。水の含有量が14.0質量%未満であると、インクがノズルから円滑に噴射できなくなる傾向が大きくなる。一方、水の含有量が98.4質量%を超えると、長期保存性が低下する傾向が大きくなる。
【0050】
本発明の水系インクジェット用記録液には、例えば、インクの噴射特性制御又は長期保存安定性向上のため、ポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、多糖類及びその誘導体、その他水溶性ポリマー、アクリル系ポリマーエマルション、ポリウレタン系エマルション等のポリマーエマルション、シクロデキストリン、大環状アミン類、デンドリマー、クラウンエーテル類、尿素及びその誘導体、アセトアミド等を用いることができる。また、導伝率、pHを調整するため、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属類の化合物、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等の含窒素化合物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属類の化合物、硫酸、塩酸、硝酸等の酸、硫酸アンモニウム等の強酸と弱アルカリの塩等を使用することができる。更に、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、及びキレート化剤さらに水溶性染料、分散染料、油溶性染料等も添加することができる。
【0051】
―物性―
本発明の水系インクジェット用記録液の粘度は、1.5〜4.0mPa・sであることが好ましく、1.5〜3.0mPa・sであることがより好ましい。インクの粘度が4.0mPa・sを超えると、インクの速乾性が著しく低下してしまう傾向が大きくなる。これは、インクがこのような粘度になると紙等の記録媒体への浸透性が著しく低下してしまうためであると考えられる。一方、インクの粘度が1.5mPa・s未満であると、十分な光学濃度を得ることが困難となる傾向が大きくなる。これは、紙等の記録媒体への浸透性が著しく増大してしまうためであると考えられる。
【0052】
本発明にかかる水系インクジェット用記録液中の分散粒子の体積平均粒子径は30〜100nmであることが好ましく、30〜80nmであることがより好ましく、30〜60nmであることが更に好ましい。この体積平均粒子径が100nmを超えると、インクの速乾性が著しく低下してしまう傾向が大きくなる。これは、分散粒子径が大きくなるにつれて、紙等の記録媒体内へのインクの浸透が抑制されるためと考えられる。一方、この体積平均粒子径が30nm未満となると、十分な光学濃度が得られなくなる傾向が大きくなる。なお、本発明の水系インクジェット用記録液中の分散粒子の体積平均粒子径の測定値は、測定装置としてマイクロトラックUPA粒度分析計9340(Leeds&Northrup社製))を用いて測定された値である。測定条件は、インク4mLを測定セルに入れ、測定パラメーターとしてインクの粘度と、分散粒子(顔料)の密度とを入力し、所定の測定法に従って行った。
【0053】
本発明の水系インクジェット用記録液中に存在する上記の分散粒子について、インク中に存在する粒子径が0.5μm以上である分散粒子の粒子数は、インク2μL中に1×103〜1×105個であることが好ましく、1×103〜8×104個であることがより好ましく、1×104〜2×104個であることが更に好ましい。粒子径が0.5μm以上である分散粒子の粒子数がインク2μL中に1×103個未満の場合には、十分な光学濃度を得ることが困難となる傾向が大きくなる。一方、粒子径が0.5μm以上である分散粒子の粒子数が1×105個を超えると、インクの速乾性が著しく低下してしまう傾向が大きくなる。なお、本発明において、上記の分散粒子の粒子数は、測定装置としてAccusizer TM770 Optical ParticleSizer (Particle Sizing Systems 社製)を用いて測定された値である。また、測定時に装置に入力するパラメーターとして、分散粒子の密度には顔料の密度を入力した。
【0054】
本発明の水系インクジェット用記録液の表面張力は、25〜40mN/mであることが好ましく、25〜35mN/mであることがより好ましい。このようにすることにより、普通紙に対するインクの浸透性を制御することが可能となる。ここで、水系インクジェット用記録液の表面張力が25mN/m未満となると、十分な光学濃度が得られなくなる傾向が大きくなる。一方、水系インクジェット用記録液の表面張力が40mN/mを超えると、十分なインクの速乾性が得られなくなる傾向が大きくなる。
【0055】
(画像記録方法)
本発明の水系インクジェット記録方法は、先に述べた本発明の水系インクジェット用記録液を用いて印字する方法であれば特に限定されず、例えば、ピエゾインクジェット方式や熱インクジェット方式等の公知の方式を使用するものであってもよい。ただし、インクジェットプリンターの印字速度の高速化や画像解像度の向上を実現する観点からみた場合には、熱インクジェット記録方式を採用することが好ましい。
【0056】
また、本発明の画像記録方法において使用する装置は特に限定されるものではなく、例えば、通常のインクジェット記録装置、インクのドライングを制御するためのヒーター等を搭載した記録装置、中間体転写機構を搭載しており、中間体に記録材料を印字した後紙等の記録媒体に転写する記録装置等を使用してもよい。
【0057】
また、本発明の画像記録方法において熱インクジェット記録方式を採用する場合、インクに複数パルスを印加することにより1ドロップを形成することが好ましい。このようにすることにより、ノズルからのインクの噴射安定性を向上させることができ、更に、ヒーター上でのインクの焦げ付き(コゲーション)の発生を抑制することが可能となる。
【0058】
更に、本発明の画像記録方法においては、インクジェット用記録液のドロップ量を20pL以下とすることが好ましく、5〜18pLとすることがより好ましく、10〜16pLとすることが更に好ましい。記録媒体上におけるインクの接触角は、インクのドロップ量に依存して変化し、インクのドロップ量が大きくなるとこれに従って接触角は小さくなる。そのため、インクのドロップ量を20pL以下の範囲に制御することにより、インクの記録媒体中への浸透と記録媒体表面方向への拡散とを適切に制御して、印字したときの十分な速乾性と十分な光学濃度を得ることが可能な水準に容易に調節することが可能となる。ここで、インクのドロップ量が20pLを超えると、印字の滲みの発生が著しくなる傾向がある。
【0059】
【実施例】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0060】
まず、表1〜2に樹脂微粒子、顔料の例示と共にその詳細を示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
以上示したうち、表3に示す組成に従って、2種の樹脂微粒子、顔料を用いてインクを調整し、以下に示す印字サンプル評価を行なった。結果を表5〜7に示す。なお、2種の樹脂微粒子の組合せは表4に、顔料と樹脂微粒子との組合せは、表5〜7に示す。
【0064】
(印字サンプル評価)
調整したインクを市販のEPSON CL−700で印時し、ノズル信頼性として、光学濃度、にじみ、耐水性、耐擦性を評価した。用紙にはSharpMU(社製)を用いた。また、保存安定性、噴射安定性(連続印字枚数)についても評価した。
【0065】
−光学濃度−
光学濃度は、X−Rite936を用いで測定した。評価基準は以下の通りである。
〇:Black 1.5以上、Color 1.2以上
△:Black 1.3〜1.5、Color 1.0〜1.2
×:Black 1.3以下、Color 1.0以下
【0066】
−にじみ−
にじみを目視により評価した。評価基準は以下の通りである。
〇:文字がシャープでヒゲ状の滲みがほとんど無い
△:文字にシャープさが無く、ヒゲ状の滲みが多少有る
×:文字にシャープさが無く、ヒゲ状の滲みが多い
【0067】
−耐水性−
印字30分後、印字部分にスポイトでイオン交換水を数滴垂らし、にじみ具合を目視した。評価基準は以下の通りである。
〇:文字の滲みがほとんど無い
△:文字の滲みが多少有る
×:文字の滲みがかなりある
【0068】
−耐擦性−
印字30分後、インクジェット用コート紙、ハイグレード(富士ゼロックス社製)でベタ部から印字していない白い領域へ擦り、白い部分へ移った汚れ具合を目視した。
〇:白い部分への汚れがほとんど無い
△:白い部分への汚れが多少有る
×:白い部分への汚れがかなりある
【0069】
−保存安定性−
評価用インクを80℃高温槽に、14日間入れた後、Microtruc UPAで粒度分布測定を行った。評価基準は以下の通りである。
◎:粒径分布、平均粒径の変化が無く、単分散系
〇:粒径分布、平均粒径の変化が微妙にあるが、単分散系
×:粒径分布、平均粒径に変化があり、2ピーク以上の分布を持つ多分散体
【0070】
−噴射安定性−
文章、グラフ、写真の入ったカバレッジ(印字面積率)20%程度のA4サイズの用紙を連続して印字した際にカスレが発生するまでの枚数。
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】
【表5】
【0074】
【表6】
【0075】
【表7】
【0076】
表5〜7から、自己分散型顔料と樹脂微粒子との親水基が全て同種であると、光学濃度、にじみ、耐水性、耐擦性、保存安定性、噴射安定性について良好な結果が得られることがわかり、親水基の種類は異なるが同極性の場合に比べ、その結果が顕著であることもわかる。また、自己分散型顔料と樹脂微粒子うち、KUE100のようなOH基を親水基として有しても、他の材料(自己分散型顔料と樹脂微粒子)の親水基が同種であれば、全て同一の場合に比べて若干効果は劣るが、親水基の種類は異なるが同極性の場合に比べ良好な結果が得られることがわかる。
【0077】
また、表7の結果から、他の材料の親水基に関わらず、ノニオン性の親水基を有するものであれば、インク中に含んでも良好な結果が得られることがわかり、これら結果がノニオン性の親水基以外の親水基が異なる場合に比べ顕著であることもわかる。
【0078】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、高画質、高画像濃度、高画像信頼性を得ることが可能で、かつ目詰まりすることなく継続的、安定に吐出でき、保存安定性にも優れた水系インクジェット用記録液、及びそれを用いた画像記録方法を提供することができる。
Claims (6)
- 顔料と、2種以上の樹脂微粒子とを含み、
前記顔料は、親水基を有する自己分散型顔料であり、
前記樹脂微粒子は、親水性基を有してなり、
且つ、前記顔料と前記樹脂微粒子との親水基が同種であることを特徴とする水系インクジェット用記録液。 - 顔料と、2種以上の樹脂微粒子とを含み、
前記顔料は、親水基を有する自己分散型顔料であり、
前記樹脂微粒子は、親水性基を有してなり、
前記顔料及び樹脂微粒子に、ノニオン性親水基を有するものであり、
且つ、前記顔料と前記樹脂微粒子のノニオン性親水基を除く前記親水基が同種であることを特徴とする水系インクジェット用記録液。 - 顔料と、顔料を分散させるための分散剤と、2種以上の樹脂微粒子とを含み、
前記分散剤及び樹脂部粒子は、親水基を有してなり、
且つ前記分散剤と前記樹脂微粒子との親水基が同種であることを特徴とする水系インクジェット用記録液。 - 顔料と、顔料を分散させるための分散剤と、2種以上の樹脂微粒子とを含み、
前記分散剤及び樹脂部粒子は、親水基を有してなり、
前記分散剤及び樹脂微粒子に、ノニオン性親水基を有するものであり、
且つ、前記分散剤と前記樹脂微粒子のノニオン性親水基を除く前記親水基が同種であることを特徴とする水系インクジェット用記録液。 - 前記樹脂微粒子が、ポリエステル系樹脂微粒子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水系インクジェット用記録液。
- 記録液の液滴を記録ヘッドから吐出させて記録体上に画像を記録する画像記録方法において、該記録液として請求項1〜5のいずれかに記載の水系インクジェット用記録液を用いることを特徴とする画像記録方法。
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- 2002-12-11 JP JP2002359366A patent/JP2004189879A/ja active Pending
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