JP2004189118A - 車体フレーム - Google Patents
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Abstract
【課題】サイドフレームによる衝突エネルギーの吸収量を一層大きくできること。
【解決手段】車体フレームは、車体前部又は車体後部で前後に延びた中空状サイドフレーム40を設けたものである。中空状サイドフレームは、車体前後方向の衝突エネルギーを吸収するべく座屈強さが小さい先端部分50と、先端部分を支えるべく座屈強さが大きい基端部分60と、からなる。基端部分に、この基端部分の前後方向の中心線CLに対し傾く方向に座屈変形が可能な脆弱部70を設けた。脆弱部の座屈強さを、先端部分よりも大きく且つ基端部分よりも小さく設定した。
【選択図】 図2
【解決手段】車体フレームは、車体前部又は車体後部で前後に延びた中空状サイドフレーム40を設けたものである。中空状サイドフレームは、車体前後方向の衝突エネルギーを吸収するべく座屈強さが小さい先端部分50と、先端部分を支えるべく座屈強さが大きい基端部分60と、からなる。基端部分に、この基端部分の前後方向の中心線CLに対し傾く方向に座屈変形が可能な脆弱部70を設けた。脆弱部の座屈強さを、先端部分よりも大きく且つ基端部分よりも小さく設定した。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は車体フレームの改良技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両において、車体前後に延びる中空状サイドフレームを設けた車体フレームが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−165109号公報(第3−4頁、図1−図2)
【0004】
特許文献1によれば、従来の車体フレームは、フロントサイドフレームやリヤサイドフレームのように、車体前後に延びるサイドフレームが、衝突エネルギーを吸収する先端側の部分と、反力を受け持つ基端側(車室側)の部分と、からなるというものである。車両が前面衝突又は後面衝突したときに、先端側の部分が長手方向に座屈変形(蛇腹状に潰れる)、すなわち塑性変形することによって衝突エネルギーを吸収することができる。変形量が大きいほど、衝突エネルギーの吸収量は大きい。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、サイドフレームは一定量だけ座屈変形すると、それ以上変形させるには、それまでに比べて大きな衝突エネルギーを必要とすることが、知られている。上記従来の車体フレームで、先端側の部分における変形量についても、同じことがいえる。このため、衝突エネルギーの吸収量をより大きくするには、更なる改良の余地がある。
【0006】
そこで本発明の目的は、サイドフレームによる衝突エネルギーの吸収量を一層大きくすることができる技術を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、車体前部又は車体後部で前後に延びた左右の中空状サイドフレームを、車体前後方向の衝突エネルギーを吸収するべく座屈強さが小さい先端部分と、この先端部分を支えるべく座屈強さが大きい基端部分と、によって構成した車体フレームにおいて、基端部分に、この基端部分の前後方向の中心線に対し傾く方向に座屈変形が可能な脆弱部を設け、この脆弱部の座屈強さを、先端部分よりも大きく且つ基端部分よりも小さく設定したことを特徴とする。
【0008】
ここで、「基端部分の前後方向の中心線」とは、前後に延びる基端部分を直角に断面したときの、断面の中心を通る線であって、基端部分の前後方向に延びる直線のことを言う。
「座屈強さ」とは、サイドフレームの先端に衝突エネルギーが作用したときに先端部分、基端部分、脆弱部に作用する圧縮荷重に対する圧縮強さ(圧縮強度)のことであり、座屈強度とも言う。
「座屈変形」とは、上記圧縮荷重によって先端部分や脆弱部が塑性変形して潰れる(圧壊する)ことを言う。
【0009】
中空状サイドフレームの基端部分に、この基端部分の前後方向の中心線に対し傾く方向に座屈変形が可能な脆弱部を設け、この脆弱部の座屈強さを、中空状サイドフレームの先端部分よりも大きく且つ基端部分よりも小さく設定したので、中空状サイドフレームの先端に作用した衝突エネルギーによって、先端部分が前後方向に一定量だけ塑性変形した(蛇腹状に潰れた)後に、脆弱部が塑性変形して(潰れて)傾くようにすることができる。
脆弱部を傾けることで先端部分をも自動的に傾けることができる。この結果、先端部分の一部だけに衝突エネルギーが作用するので、それまでに比べて大きな衝突エネルギーを必要とすることなく、先端部分の一部を更に塑性変形させることができる。従って、先端部分の変形量(潰れ量)を増すことができるので、サイドフレームによる衝突エネルギーの吸収量を一層大きくすることができる。
【0010】
請求項2は、脆弱部を、先端部分と基端部分との間に設けたことを特徴とする。
脆弱部を先端部分と基端部分との間に設けたので、脆弱部が塑性変形して傾いたときに、先端部分が傾いて変位する、その変位量が小さくてすむ。このため、傾いた後の先端部分における、より適切な位置に衝突エネルギーを作用させることができる。従って、衝突エネルギーをより安定して十分に吸収することができる。
【0011】
請求項3は、基端部分を中空状部材にて構成し、この中空状部材の一部を切り欠くことにより、この切欠き部分を脆弱部としたことを特徴とする。
基端部分を中空状部材にて構成し、この中空状部材の一部を切り欠くことにより、この切欠き部分を脆弱部としたので、脆弱部を簡単な構成にすることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図面に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は運転者から見た方向に従う。また、図面は符号の向きに見るものとする。
【0013】
図1は本発明に係る車両の透視図である。自動車等の車両10における車体フレーム20は、車体前部から後方へ延びる左右のフロントサイドフレーム21L,21Rと、これらのフロントサイドフレーム21L,21Rの後端に接合した左右のサイドアウトリガー22L,22Rと、これらのサイドアウトリガー22L,22Rの後部に接合し後方へ延びる左右のサイドシル23L,23Rと、これらのサイドシル23L,23Rの後端に左右の連結部材24L,24Rを介して接合し後方へ延びる左右のリヤサイドフレーム25L,25Rと、左右のフロントサイドフレーム21L,21Rの後端間に掛け渡したフロントクロスメンバ26と、左右のリヤサイドフレーム25L,25Rの後端間に掛け渡したリヤクロスメンバ27と、左右のフロアフレーム28L、28Rと、を主要構成とする。
31はフロントバンパ、32はリヤバンパである。
【0014】
左右のフロントサイドフレーム21L,21R並びに左右のリヤサイドフレーム25L,25Rのことを総称して、車体フレーム20に設けられた車体前後に延びるサイドフレーム40と言う。以下、サイドフレーム40の詳細について説明する。
【0015】
図2は本発明に係るサイドフレームの構成図であり、左側方から見たサイドフレーム40の断面構造を示す。
サイドフレーム40は、車体前部又は車体後部で前後に延びた左右の中空状サイドフレームであり、車体前後方向の衝突エネルギーを吸収するべく座屈強さが小さい先端部分50と、この先端部分50を支えるべく座屈強さが大きい基端部分60と、からなる。基端部分60は車室側(図の右側)に配置されることになる。
【0016】
このようなサイドフレーム40は、先端部分50の基端51を、基端部分60の先端61に突き合わせて溶接等により接合することで、一体化された部材である。より具体的には、基端部分60の先端61は、一体に形成された平坦な閉鎖板62にて基端部分60の開口を塞がれたものである。この閉鎖板62に先端部分50の基端51を突き合わせて接合した。なお、先端部分50の断面の大きさは、基端部分60の断面の大きさと等しい。
【0017】
先端部分50は前後に延びた、正方形断面状又は矩形断面状(以下、両方を包含して「矩形断面状」と言う。)の細長い中空状部材、すなわち閉断面体である。このような先端部分50は、アルミニウム合金等の金属材料の引抜形材、押出形材、又は、板材の折曲げ・接合によるプレス成型品からなり、板厚はt11である。
【0018】
基端部分60も前後に延びた、正方形断面状又は矩形断面状(以下、両方を包含して「矩形断面状」と言う。)の細長い中空状部材、すなわち閉断面体である。このような基端部分60は、アルミニウム合金等の鋳造品からなる基端部本体63の上に、アルミニウム合金等の金属製板材からなる天板64を重ねて一体化した部材である。基端部分60の詳細な構成については後述する。なお、基端部本体63と天板64とを一体の鋳造品とすることは任意である。
【0019】
ここで、前後に延びる基端部分60を直角に断面した(図の表裏方向に断面した)ときの、断面の中心を通る線であって、基端部分60の前後方向に延びる直線のことを、基端部分60の前後方向の中心線CLと言うことにする。この中心線CL(すなわち、基端部分60の軸CL)は、サイドフレーム40の中心線でもある。
【0020】
本発明は、基端部分60に、この基端部分60の前後方向の中心線CLに対し傾く方向に座屈変形が可能な脆弱部70を設け、この脆弱部70の座屈強さを、先端部分50よりも大きく且つ基端部分60よりも小さく設定したことを特徴とする。
【0021】
なお、「座屈強さ」とは、サイドフレーム40の先端に衝突エネルギーが作用したときに先端部分50、基端部分60、脆弱部70に作用する圧縮荷重に対する圧縮強さ(圧縮強度)のことであり、座屈強度とも言う。
「座屈変形」とは、上記圧縮荷重によって先端部分60や脆弱部70が塑性変形して潰れる(圧壊する)ことを言う。
【0022】
ここで、基端部分60に脆弱部70を設けた理由について説明する。
自動車が正面衝突又は後面衝突したときに、車体前後に延びる左右のサイドフレーム、すなわちフロントサイドフレームやリヤサイドフレームが長手方向に塑性変形する(蛇腹状に潰れる)ことで、衝突エネルギーを吸収する特性の研究に関しては、例えば、次の論文1が知られている。
【0023】
[論文1]・・・山屋 雅敏、外1名、「薄板箱形部材の塑性変形によるエネルギー吸収」、三菱重工技報、三菱重工株式会社、1971年1月、第8巻第1号、p.124−130
【0024】
図3(a),(b)は薄板箱形部材の塑性変形によるエネルギー吸収を説明する説明図であり、上記「論文1」の図1〜図3及び図5を組合わせて再掲したものである。
(a)は静荷重圧縮試験をする供試品を示す。供試品は、ハット状部材の開口を平板で塞ぐことで、断面が一様な長さ300mmの矩形状閉断面体とした鋼材製品である。なお、供試品の断面の各寸法は、幅40mm、高さ80mm、ハット状部材の全高さ110mm、ハット状部材並びに平板の板厚1.2mmである。すなわち、幅幅40mmで高さ80mmの矩形状閉断面体である。
この供試品の長手方向に圧縮荷重Frを掛けて静荷重圧縮試験をした結果を(b)に示す。
【0025】
(b)は(a)の供試品による静荷重試験結果を示すグラフであり、縦軸を圧縮荷重とし横軸を供試品の変形量として表した。
(b)によれば、長さ300mmの供試品を圧縮したときに、変形量が150mm前後になるまでは圧縮荷重は概ね安定しており、それを超えると圧縮荷重は不安定になり、さらに変形量が200mm前後を超えると圧縮荷重は急激に上昇することが判る。
このように、変形量が全長の1/2程度になるまで座屈変形すると、変形させるための圧縮荷重が急上昇するので、その後は変形し難くなる。
【0026】
以上の説明から明らかなように、上記図2に示すサイドフレーム40は一定量だけ座屈変形すると、それ以上変形させるには、それまでに比べて大きな衝突エネルギーを必要とする。先端部分50における変形量についても、同じことがいえる。本発明は、衝突エネルギーの吸収量を一層大きくするために、基端部分60に脆弱部70を設けた。これが、基端部分60に脆弱部70を設けた理由である。次に、脆弱部70について詳しく説明する。
【0027】
図4(a)〜(d)は本発明に係る基端部分並びに脆弱部の構成図である。(a)は基端部分60の先端61周りの斜視図、(b)は左側方から見た基端部分60並びに脆弱部70の断面図、(c)は(b)のc−c線断面図、(d)は(b)のd−d線断面図である。
【0028】
この図4は、基端部分60を中空状部材にて構成し、この中空状部材の一部を切り欠くことにより、この切欠き部分66を脆弱部70としたことを示す。
具体的には、(b)及び(d)に示すように、上を開放した略E字状断面の基端部本体63は、底板63aと、底板63aの左右両端から上方へ延びる左側板63b並びに右側板63cと、底板63aの中央から上方へ延びる縦リブ63dとからなる。
【0029】
また、(b)及び(d)に示すように基端部分60は、上を開放した基端部本体63の上に天板64を重ねて溶接等により接合することで、一体化された部材である。このように、基端部本体63の上部開口を平板状の天板64によって塞ぐことで、基端部分60を矩形断面状の中空状部材とすることができる。ここで、底板63a、左側板63b、右側板63c並びに天板64を総称して「基端部分60の側板65」と言うことにする。
基端部分60の長手方向に延びる縦リブ63dを内部に一体に形成することにより、(d)に示すように基端部分60の内部空間を左右2つの空間に仕切ることができる。
【0030】
基端部本体63の板厚は、先端部分50の板厚t11と同等又はそれ以上とすることがより好ましい。天板64の板厚はt12であって、先端部分50の板厚t11よりも大きいことがより好ましい。
【0031】
さらに基端部分60は、(a)〜(c)に示すように矩形断面の中空状部材を構成する側板65の一部、例えば底板63aの一部を切り欠いて、この切欠き部分66を脆弱部70とした。この切欠き部分66による脆弱部70は、先端部分50と基端部分60との間、すなわち、基端部分60の先端61(閉鎖板62の直後)に設けたものである。脆弱部70としての切欠き部分66の長さはLcである。
【0032】
基端部分60のうち、脆弱部70を有した部分においては、側板65を有する部分の座屈強さに対して、切欠き部分66の座屈強さは小さい。従って、基端部分60の先端61に白抜き矢印Es方向の衝突エネルギーが作用したときに、切欠き部分66を有する部分が座屈変形し得る(潰れる)。すなわち、脆弱部70は、基端部分60の前後方向の中心線CLに対し、矢印Srに傾く方向に座屈変形(潰れること)が可能である。
【0033】
さらに基端部分60の内部には、基端部分60の先端61(閉鎖板62の直後)の上角から切欠き部分66の後端71にかけて、隔壁72を一体に形成した。この結果、基端部分60の内部を隔壁72にて前後に仕切ることができる。すなわち、基端部分60を側方から見たときに、隔壁72を後下がり又は後上がりに傾斜させた。隔壁72の傾斜角θは約45°である。
【0034】
このようにすることで、基端部分60の先端61のうち、閉鎖板62と隔壁72とによって明確に囲まれた部分に、座屈強さが比較的小さい脆弱部70を設けることができる。従って、この部分で、より確実に座屈させることができる。
なお、基端部本体63は、閉鎖板62と隔壁72とによって囲まれた部分にも、縦リブ63dを一体に形成したものである。
【0035】
次に、上記構成のサイドフレーム40の作用について図5に基づき説明する。図5(a)〜(c)は本発明に係るサイドフレームの作用図であり、車両が障害物Shに衝突した場合を例に説明する。
【0036】
(a)は、障害物Shに車両が衝突することで、先端部分50の先端52に衝突エネルギーが作用し始める時点を示す。
(b)は、衝突エネルギーによって、先端部分50の先端52に作用した衝突エネルギーによって、先端部分50が一定量Ls1だけ塑性変形した(蛇腹状に潰れた)ことを示す。この結果、潰れないで残った先端部分50の変形残り量、すなわち、潰れ残り量はL1である。
【0037】
先端部分50は一定量だけ座屈変形すると、それ以上変形させるには、それまでに比べて大きな衝突エネルギーを必要とする。この状態で、引き続いて脆弱部70は矢印Srに傾く方向に塑性変形する(潰れる)。脆弱部70が矢印Srに傾くことで,先端部分50も矢印Srに自動的に傾く。
【0038】
(c)は、脆弱部70並びに先端部分50が傾いたことを示す。この結果、先端部分50には上の一部53だけに衝突エネルギーが作用するので、それまでに比べて大きな衝突エネルギーを必要とすることなく、先端部分50の一部53を更に一定量Ls2だけ塑性変形させる(潰す)ことができる。この結果、潰れないで残った先端部分50の変形残り量、すなわち、潰れ残り量はL2となる。この変形残り量L2は、(b)の変形残り量L1よりも小さい(L1>L2)。結局、先端部分50の総変形量Ls3は、Ls1とLs2との和になる(Ls3=Ls1+Ls2)。
このようにして、先端部分50の変形量Ls3を増すことができるので、サイドフレーム40による衝突エネルギーの吸収量を一層大きくすることができる。
【0039】
次に、上記サイドフレーム40の変形例について、図6及び図7に基づき説明する。なお、上記図1〜図5に示す実施例の構成と同様の構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0040】
図6(a)〜(d)は本発明に係るサイドフレーム(第1変形例)の構成図である。(a)は基端部分60の先端61周りの斜視図、(b)は左側方から見た基端部分60並びに脆弱部70の断面図、(c)は(b)のc−c線断面図、(d)は(b)のd−d線断面図である。
【0041】
第1変形例のサイドフレーム40は、基端部本体63に一体に形成された縦リブ63dを、断面視略V字状のリブとしたことを特徴とする。基端部分60に、この基端部分60の長手方向に延びる略V字状の縦リブ63dを内部に一体に形成することにより、(d)に示すように内部空間を左右3つの空間に仕切ることができる。これによれば、基端部分60の剛性をより高めることができる。
【0042】
図7(a),(b)は本発明に係るサイドフレーム(第2変形例)の構成図である。(a)は基端部分60の先端61周りの斜視図、(b)は左側方から見た基端部分60並びに脆弱部70の断面図である。
【0043】
第2変形例のサイドフレーム40は、基端部分60を、アルミニウム合金等の金属製板材の折曲げ・接合によるプレス成型品としたことを特徴とする。具体的には、基端部分60は、ハット状部材81の開口を平板82で塞ぐことで、矩形断面状の細長い中空状部材、すなわち閉断面体としたものである。例えば、ハット状部材81に平板82を溶接等の接合により、両者を一体化することができる。基端部分60の側板の板厚、すなわちハット状部材81並びに平板82の板厚はt12である。
【0044】
さらに第2変形例の基端部分60は、矩形断面の中空状部材を構成する側板の一部、例えばハット状部材81の底83に並びにその近傍に、基端部分60の前後方向の中心線CLに対し直角な方向(ほぼ直角な方向を含む)に延びる1条又は複数条のビード84(溝84)を形成することにより、このビード84を脆弱部70としたものである。このビード84による脆弱部70は、先端部分50と基端部分60との間、すなわち、基端部分60の先端61近傍に設けたものである。具体的には、基端部分60の先端61から若干の距離Lbだけ離れた位置にビード84を設けた。
【0045】
ビード84については、脆弱部70の座屈強さを考慮して決定されるものである。例えば、ビード84の断面形状は、半円状溝、V字状溝、U字状溝、角形溝等の各種あり、任意に設定すればよい。ビード84の寸法も任意である。ビード84を形成する範囲は、▲1▼ハット状部材81の底83の部分だけ、▲2▼底83並びに底83に連なる側板の一部又は全部、▲3▼底83と底83に連なる側板との間の角部(コーナ部分)、すなわち、矩形断面状の基端部分60における角部だけ、とすればよい。
【0046】
基端部分60のうち、脆弱部70を有する部分においては、ビード84が無い部分の座屈強さに対して、ビード84が有る部分の座屈強さは小さい。従って、基端部分60の先端61に白抜き矢印Es方向の衝突エネルギーが作用したときに、切欠き部分66が有る部分が折れ曲がり得る。すなわち、脆弱部70は、基端部分60の前後方向の中心線CLに対し、矢印Srに傾く方向に座屈変形が可能である。
【0047】
このように、第2変形例のサイドフレーム40は、基端部分60に、この基端部分60の前後方向の中心線CLに対し傾く方向に座屈変形が可能な脆弱部70を設け、この脆弱部70の座屈強さを、先端部分50よりも大きく且つ基端部分60よりも小さく設定したことを特徴とする。
【0048】
さらに基端部分60の内部には、基端部分60の先端61の上角からビード84よりも後部の位置85にかけて、板材からなる隔壁86を溶接等によって接合した。この結果、基端部分60の内部を隔壁86にて前後に仕切ることができる。すなわち、基端部分60を側方から見たときに、隔壁86を後下がり又は後上がりに傾斜させた。隔壁86の傾斜角θは約45°である。基端部分60の先端61から位置85までの距離はLdである。
【0049】
このようにすることで、基端部分60の先端61のうち、隔壁86とによって明確に囲まれた部分に、座屈強さが比較的小さい脆弱部70を設けることができる。従って、この部分で、より確実に座屈させることができる。
【0050】
なお、上記本発明の実施の形態において、脆弱部70の構成については切欠き部分66やビード84に限定されるものではない。
また、先端部分50、基端部分60及び脆弱部70の各座屈強さは、それぞれの大きさ、板厚(肉厚)、形状等を適宜設定することによって設定することができる。
さらにまた、閉鎖板62や縦リブ63dの有無については任意であり、基端部分60及び脆弱部70の各座屈強さを設定する場合に、必要に応じて設ければよく、その形状、寸法及び数量についても任意である。
【0051】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、中空状サイドフレームの基端部分に、この基端部分の前後方向の中心線に対し傾く方向に座屈変形が可能な脆弱部を設け、この脆弱部の座屈強さを、中空状サイドフレームの先端部分よりも大きく且つ基端部分よりも小さく設定したので、中空状サイドフレームの先端に作用した衝突エネルギーによって、先端部分が一定量だけ塑性変形した後に、脆弱部が塑性変形して傾くようにすることができる。
脆弱部を傾けることで先端部分をも自動的に傾けることができる。この結果、先端部分の一部だけに衝突エネルギーが作用するので、それまでに比べて大きな衝突エネルギーを必要とすることなく、先端部分の一部を更に塑性変形させることができる。従って、先端部分の変形量を増すことができるので、サイドフレームによる衝突エネルギーの吸収量を一層大きくすることができる。
【0052】
請求項2は、脆弱部を先端部分と基端部分との間に設けたので、脆弱部が塑性変形して傾いたときに、先端部分が傾いて変位する、変位量が小さくてすむ。このため、傾いた後の先端部分における、より適切な位置に衝突エネルギーを作用させることができる。従って、衝突エネルギーをより安定して十分に吸収することができる。
【0053】
請求項3は、基端部分を中空状部材にて構成し、この中空状部材の一部を切り欠くことにより、この切欠き部分を脆弱部としたので、脆弱部を簡単な構成にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る車両の透視図
【図2】本発明に係るサイドフレームの構成図
【図3】薄板箱形部材の塑性変形によるエネルギー吸収を説明する説明図
【図4】本発明に係る基端部分並びに脆弱部の構成図
【図5】本発明に係るサイドフレームの作用図
【図6】本発明に係るサイドフレーム(第1変形例)の構成図
【図7】本発明に係るサイドフレーム(第2変形例)の構成図
【符号の説明】
10…車両、20…車体フレーム、40…中空状サイドフレーム、50…先端部分、60…基端部分、66…切欠き部分、70…脆弱部、84…ビード、CL…基端部分の前後方向の中心線、Sr…基端部分の前後方向の中心線に対し傾く方向。
【発明の属する技術分野】
本発明は車体フレームの改良技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両において、車体前後に延びる中空状サイドフレームを設けた車体フレームが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−165109号公報(第3−4頁、図1−図2)
【0004】
特許文献1によれば、従来の車体フレームは、フロントサイドフレームやリヤサイドフレームのように、車体前後に延びるサイドフレームが、衝突エネルギーを吸収する先端側の部分と、反力を受け持つ基端側(車室側)の部分と、からなるというものである。車両が前面衝突又は後面衝突したときに、先端側の部分が長手方向に座屈変形(蛇腹状に潰れる)、すなわち塑性変形することによって衝突エネルギーを吸収することができる。変形量が大きいほど、衝突エネルギーの吸収量は大きい。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、サイドフレームは一定量だけ座屈変形すると、それ以上変形させるには、それまでに比べて大きな衝突エネルギーを必要とすることが、知られている。上記従来の車体フレームで、先端側の部分における変形量についても、同じことがいえる。このため、衝突エネルギーの吸収量をより大きくするには、更なる改良の余地がある。
【0006】
そこで本発明の目的は、サイドフレームによる衝突エネルギーの吸収量を一層大きくすることができる技術を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、車体前部又は車体後部で前後に延びた左右の中空状サイドフレームを、車体前後方向の衝突エネルギーを吸収するべく座屈強さが小さい先端部分と、この先端部分を支えるべく座屈強さが大きい基端部分と、によって構成した車体フレームにおいて、基端部分に、この基端部分の前後方向の中心線に対し傾く方向に座屈変形が可能な脆弱部を設け、この脆弱部の座屈強さを、先端部分よりも大きく且つ基端部分よりも小さく設定したことを特徴とする。
【0008】
ここで、「基端部分の前後方向の中心線」とは、前後に延びる基端部分を直角に断面したときの、断面の中心を通る線であって、基端部分の前後方向に延びる直線のことを言う。
「座屈強さ」とは、サイドフレームの先端に衝突エネルギーが作用したときに先端部分、基端部分、脆弱部に作用する圧縮荷重に対する圧縮強さ(圧縮強度)のことであり、座屈強度とも言う。
「座屈変形」とは、上記圧縮荷重によって先端部分や脆弱部が塑性変形して潰れる(圧壊する)ことを言う。
【0009】
中空状サイドフレームの基端部分に、この基端部分の前後方向の中心線に対し傾く方向に座屈変形が可能な脆弱部を設け、この脆弱部の座屈強さを、中空状サイドフレームの先端部分よりも大きく且つ基端部分よりも小さく設定したので、中空状サイドフレームの先端に作用した衝突エネルギーによって、先端部分が前後方向に一定量だけ塑性変形した(蛇腹状に潰れた)後に、脆弱部が塑性変形して(潰れて)傾くようにすることができる。
脆弱部を傾けることで先端部分をも自動的に傾けることができる。この結果、先端部分の一部だけに衝突エネルギーが作用するので、それまでに比べて大きな衝突エネルギーを必要とすることなく、先端部分の一部を更に塑性変形させることができる。従って、先端部分の変形量(潰れ量)を増すことができるので、サイドフレームによる衝突エネルギーの吸収量を一層大きくすることができる。
【0010】
請求項2は、脆弱部を、先端部分と基端部分との間に設けたことを特徴とする。
脆弱部を先端部分と基端部分との間に設けたので、脆弱部が塑性変形して傾いたときに、先端部分が傾いて変位する、その変位量が小さくてすむ。このため、傾いた後の先端部分における、より適切な位置に衝突エネルギーを作用させることができる。従って、衝突エネルギーをより安定して十分に吸収することができる。
【0011】
請求項3は、基端部分を中空状部材にて構成し、この中空状部材の一部を切り欠くことにより、この切欠き部分を脆弱部としたことを特徴とする。
基端部分を中空状部材にて構成し、この中空状部材の一部を切り欠くことにより、この切欠き部分を脆弱部としたので、脆弱部を簡単な構成にすることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図面に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は運転者から見た方向に従う。また、図面は符号の向きに見るものとする。
【0013】
図1は本発明に係る車両の透視図である。自動車等の車両10における車体フレーム20は、車体前部から後方へ延びる左右のフロントサイドフレーム21L,21Rと、これらのフロントサイドフレーム21L,21Rの後端に接合した左右のサイドアウトリガー22L,22Rと、これらのサイドアウトリガー22L,22Rの後部に接合し後方へ延びる左右のサイドシル23L,23Rと、これらのサイドシル23L,23Rの後端に左右の連結部材24L,24Rを介して接合し後方へ延びる左右のリヤサイドフレーム25L,25Rと、左右のフロントサイドフレーム21L,21Rの後端間に掛け渡したフロントクロスメンバ26と、左右のリヤサイドフレーム25L,25Rの後端間に掛け渡したリヤクロスメンバ27と、左右のフロアフレーム28L、28Rと、を主要構成とする。
31はフロントバンパ、32はリヤバンパである。
【0014】
左右のフロントサイドフレーム21L,21R並びに左右のリヤサイドフレーム25L,25Rのことを総称して、車体フレーム20に設けられた車体前後に延びるサイドフレーム40と言う。以下、サイドフレーム40の詳細について説明する。
【0015】
図2は本発明に係るサイドフレームの構成図であり、左側方から見たサイドフレーム40の断面構造を示す。
サイドフレーム40は、車体前部又は車体後部で前後に延びた左右の中空状サイドフレームであり、車体前後方向の衝突エネルギーを吸収するべく座屈強さが小さい先端部分50と、この先端部分50を支えるべく座屈強さが大きい基端部分60と、からなる。基端部分60は車室側(図の右側)に配置されることになる。
【0016】
このようなサイドフレーム40は、先端部分50の基端51を、基端部分60の先端61に突き合わせて溶接等により接合することで、一体化された部材である。より具体的には、基端部分60の先端61は、一体に形成された平坦な閉鎖板62にて基端部分60の開口を塞がれたものである。この閉鎖板62に先端部分50の基端51を突き合わせて接合した。なお、先端部分50の断面の大きさは、基端部分60の断面の大きさと等しい。
【0017】
先端部分50は前後に延びた、正方形断面状又は矩形断面状(以下、両方を包含して「矩形断面状」と言う。)の細長い中空状部材、すなわち閉断面体である。このような先端部分50は、アルミニウム合金等の金属材料の引抜形材、押出形材、又は、板材の折曲げ・接合によるプレス成型品からなり、板厚はt11である。
【0018】
基端部分60も前後に延びた、正方形断面状又は矩形断面状(以下、両方を包含して「矩形断面状」と言う。)の細長い中空状部材、すなわち閉断面体である。このような基端部分60は、アルミニウム合金等の鋳造品からなる基端部本体63の上に、アルミニウム合金等の金属製板材からなる天板64を重ねて一体化した部材である。基端部分60の詳細な構成については後述する。なお、基端部本体63と天板64とを一体の鋳造品とすることは任意である。
【0019】
ここで、前後に延びる基端部分60を直角に断面した(図の表裏方向に断面した)ときの、断面の中心を通る線であって、基端部分60の前後方向に延びる直線のことを、基端部分60の前後方向の中心線CLと言うことにする。この中心線CL(すなわち、基端部分60の軸CL)は、サイドフレーム40の中心線でもある。
【0020】
本発明は、基端部分60に、この基端部分60の前後方向の中心線CLに対し傾く方向に座屈変形が可能な脆弱部70を設け、この脆弱部70の座屈強さを、先端部分50よりも大きく且つ基端部分60よりも小さく設定したことを特徴とする。
【0021】
なお、「座屈強さ」とは、サイドフレーム40の先端に衝突エネルギーが作用したときに先端部分50、基端部分60、脆弱部70に作用する圧縮荷重に対する圧縮強さ(圧縮強度)のことであり、座屈強度とも言う。
「座屈変形」とは、上記圧縮荷重によって先端部分60や脆弱部70が塑性変形して潰れる(圧壊する)ことを言う。
【0022】
ここで、基端部分60に脆弱部70を設けた理由について説明する。
自動車が正面衝突又は後面衝突したときに、車体前後に延びる左右のサイドフレーム、すなわちフロントサイドフレームやリヤサイドフレームが長手方向に塑性変形する(蛇腹状に潰れる)ことで、衝突エネルギーを吸収する特性の研究に関しては、例えば、次の論文1が知られている。
【0023】
[論文1]・・・山屋 雅敏、外1名、「薄板箱形部材の塑性変形によるエネルギー吸収」、三菱重工技報、三菱重工株式会社、1971年1月、第8巻第1号、p.124−130
【0024】
図3(a),(b)は薄板箱形部材の塑性変形によるエネルギー吸収を説明する説明図であり、上記「論文1」の図1〜図3及び図5を組合わせて再掲したものである。
(a)は静荷重圧縮試験をする供試品を示す。供試品は、ハット状部材の開口を平板で塞ぐことで、断面が一様な長さ300mmの矩形状閉断面体とした鋼材製品である。なお、供試品の断面の各寸法は、幅40mm、高さ80mm、ハット状部材の全高さ110mm、ハット状部材並びに平板の板厚1.2mmである。すなわち、幅幅40mmで高さ80mmの矩形状閉断面体である。
この供試品の長手方向に圧縮荷重Frを掛けて静荷重圧縮試験をした結果を(b)に示す。
【0025】
(b)は(a)の供試品による静荷重試験結果を示すグラフであり、縦軸を圧縮荷重とし横軸を供試品の変形量として表した。
(b)によれば、長さ300mmの供試品を圧縮したときに、変形量が150mm前後になるまでは圧縮荷重は概ね安定しており、それを超えると圧縮荷重は不安定になり、さらに変形量が200mm前後を超えると圧縮荷重は急激に上昇することが判る。
このように、変形量が全長の1/2程度になるまで座屈変形すると、変形させるための圧縮荷重が急上昇するので、その後は変形し難くなる。
【0026】
以上の説明から明らかなように、上記図2に示すサイドフレーム40は一定量だけ座屈変形すると、それ以上変形させるには、それまでに比べて大きな衝突エネルギーを必要とする。先端部分50における変形量についても、同じことがいえる。本発明は、衝突エネルギーの吸収量を一層大きくするために、基端部分60に脆弱部70を設けた。これが、基端部分60に脆弱部70を設けた理由である。次に、脆弱部70について詳しく説明する。
【0027】
図4(a)〜(d)は本発明に係る基端部分並びに脆弱部の構成図である。(a)は基端部分60の先端61周りの斜視図、(b)は左側方から見た基端部分60並びに脆弱部70の断面図、(c)は(b)のc−c線断面図、(d)は(b)のd−d線断面図である。
【0028】
この図4は、基端部分60を中空状部材にて構成し、この中空状部材の一部を切り欠くことにより、この切欠き部分66を脆弱部70としたことを示す。
具体的には、(b)及び(d)に示すように、上を開放した略E字状断面の基端部本体63は、底板63aと、底板63aの左右両端から上方へ延びる左側板63b並びに右側板63cと、底板63aの中央から上方へ延びる縦リブ63dとからなる。
【0029】
また、(b)及び(d)に示すように基端部分60は、上を開放した基端部本体63の上に天板64を重ねて溶接等により接合することで、一体化された部材である。このように、基端部本体63の上部開口を平板状の天板64によって塞ぐことで、基端部分60を矩形断面状の中空状部材とすることができる。ここで、底板63a、左側板63b、右側板63c並びに天板64を総称して「基端部分60の側板65」と言うことにする。
基端部分60の長手方向に延びる縦リブ63dを内部に一体に形成することにより、(d)に示すように基端部分60の内部空間を左右2つの空間に仕切ることができる。
【0030】
基端部本体63の板厚は、先端部分50の板厚t11と同等又はそれ以上とすることがより好ましい。天板64の板厚はt12であって、先端部分50の板厚t11よりも大きいことがより好ましい。
【0031】
さらに基端部分60は、(a)〜(c)に示すように矩形断面の中空状部材を構成する側板65の一部、例えば底板63aの一部を切り欠いて、この切欠き部分66を脆弱部70とした。この切欠き部分66による脆弱部70は、先端部分50と基端部分60との間、すなわち、基端部分60の先端61(閉鎖板62の直後)に設けたものである。脆弱部70としての切欠き部分66の長さはLcである。
【0032】
基端部分60のうち、脆弱部70を有した部分においては、側板65を有する部分の座屈強さに対して、切欠き部分66の座屈強さは小さい。従って、基端部分60の先端61に白抜き矢印Es方向の衝突エネルギーが作用したときに、切欠き部分66を有する部分が座屈変形し得る(潰れる)。すなわち、脆弱部70は、基端部分60の前後方向の中心線CLに対し、矢印Srに傾く方向に座屈変形(潰れること)が可能である。
【0033】
さらに基端部分60の内部には、基端部分60の先端61(閉鎖板62の直後)の上角から切欠き部分66の後端71にかけて、隔壁72を一体に形成した。この結果、基端部分60の内部を隔壁72にて前後に仕切ることができる。すなわち、基端部分60を側方から見たときに、隔壁72を後下がり又は後上がりに傾斜させた。隔壁72の傾斜角θは約45°である。
【0034】
このようにすることで、基端部分60の先端61のうち、閉鎖板62と隔壁72とによって明確に囲まれた部分に、座屈強さが比較的小さい脆弱部70を設けることができる。従って、この部分で、より確実に座屈させることができる。
なお、基端部本体63は、閉鎖板62と隔壁72とによって囲まれた部分にも、縦リブ63dを一体に形成したものである。
【0035】
次に、上記構成のサイドフレーム40の作用について図5に基づき説明する。図5(a)〜(c)は本発明に係るサイドフレームの作用図であり、車両が障害物Shに衝突した場合を例に説明する。
【0036】
(a)は、障害物Shに車両が衝突することで、先端部分50の先端52に衝突エネルギーが作用し始める時点を示す。
(b)は、衝突エネルギーによって、先端部分50の先端52に作用した衝突エネルギーによって、先端部分50が一定量Ls1だけ塑性変形した(蛇腹状に潰れた)ことを示す。この結果、潰れないで残った先端部分50の変形残り量、すなわち、潰れ残り量はL1である。
【0037】
先端部分50は一定量だけ座屈変形すると、それ以上変形させるには、それまでに比べて大きな衝突エネルギーを必要とする。この状態で、引き続いて脆弱部70は矢印Srに傾く方向に塑性変形する(潰れる)。脆弱部70が矢印Srに傾くことで,先端部分50も矢印Srに自動的に傾く。
【0038】
(c)は、脆弱部70並びに先端部分50が傾いたことを示す。この結果、先端部分50には上の一部53だけに衝突エネルギーが作用するので、それまでに比べて大きな衝突エネルギーを必要とすることなく、先端部分50の一部53を更に一定量Ls2だけ塑性変形させる(潰す)ことができる。この結果、潰れないで残った先端部分50の変形残り量、すなわち、潰れ残り量はL2となる。この変形残り量L2は、(b)の変形残り量L1よりも小さい(L1>L2)。結局、先端部分50の総変形量Ls3は、Ls1とLs2との和になる(Ls3=Ls1+Ls2)。
このようにして、先端部分50の変形量Ls3を増すことができるので、サイドフレーム40による衝突エネルギーの吸収量を一層大きくすることができる。
【0039】
次に、上記サイドフレーム40の変形例について、図6及び図7に基づき説明する。なお、上記図1〜図5に示す実施例の構成と同様の構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0040】
図6(a)〜(d)は本発明に係るサイドフレーム(第1変形例)の構成図である。(a)は基端部分60の先端61周りの斜視図、(b)は左側方から見た基端部分60並びに脆弱部70の断面図、(c)は(b)のc−c線断面図、(d)は(b)のd−d線断面図である。
【0041】
第1変形例のサイドフレーム40は、基端部本体63に一体に形成された縦リブ63dを、断面視略V字状のリブとしたことを特徴とする。基端部分60に、この基端部分60の長手方向に延びる略V字状の縦リブ63dを内部に一体に形成することにより、(d)に示すように内部空間を左右3つの空間に仕切ることができる。これによれば、基端部分60の剛性をより高めることができる。
【0042】
図7(a),(b)は本発明に係るサイドフレーム(第2変形例)の構成図である。(a)は基端部分60の先端61周りの斜視図、(b)は左側方から見た基端部分60並びに脆弱部70の断面図である。
【0043】
第2変形例のサイドフレーム40は、基端部分60を、アルミニウム合金等の金属製板材の折曲げ・接合によるプレス成型品としたことを特徴とする。具体的には、基端部分60は、ハット状部材81の開口を平板82で塞ぐことで、矩形断面状の細長い中空状部材、すなわち閉断面体としたものである。例えば、ハット状部材81に平板82を溶接等の接合により、両者を一体化することができる。基端部分60の側板の板厚、すなわちハット状部材81並びに平板82の板厚はt12である。
【0044】
さらに第2変形例の基端部分60は、矩形断面の中空状部材を構成する側板の一部、例えばハット状部材81の底83に並びにその近傍に、基端部分60の前後方向の中心線CLに対し直角な方向(ほぼ直角な方向を含む)に延びる1条又は複数条のビード84(溝84)を形成することにより、このビード84を脆弱部70としたものである。このビード84による脆弱部70は、先端部分50と基端部分60との間、すなわち、基端部分60の先端61近傍に設けたものである。具体的には、基端部分60の先端61から若干の距離Lbだけ離れた位置にビード84を設けた。
【0045】
ビード84については、脆弱部70の座屈強さを考慮して決定されるものである。例えば、ビード84の断面形状は、半円状溝、V字状溝、U字状溝、角形溝等の各種あり、任意に設定すればよい。ビード84の寸法も任意である。ビード84を形成する範囲は、▲1▼ハット状部材81の底83の部分だけ、▲2▼底83並びに底83に連なる側板の一部又は全部、▲3▼底83と底83に連なる側板との間の角部(コーナ部分)、すなわち、矩形断面状の基端部分60における角部だけ、とすればよい。
【0046】
基端部分60のうち、脆弱部70を有する部分においては、ビード84が無い部分の座屈強さに対して、ビード84が有る部分の座屈強さは小さい。従って、基端部分60の先端61に白抜き矢印Es方向の衝突エネルギーが作用したときに、切欠き部分66が有る部分が折れ曲がり得る。すなわち、脆弱部70は、基端部分60の前後方向の中心線CLに対し、矢印Srに傾く方向に座屈変形が可能である。
【0047】
このように、第2変形例のサイドフレーム40は、基端部分60に、この基端部分60の前後方向の中心線CLに対し傾く方向に座屈変形が可能な脆弱部70を設け、この脆弱部70の座屈強さを、先端部分50よりも大きく且つ基端部分60よりも小さく設定したことを特徴とする。
【0048】
さらに基端部分60の内部には、基端部分60の先端61の上角からビード84よりも後部の位置85にかけて、板材からなる隔壁86を溶接等によって接合した。この結果、基端部分60の内部を隔壁86にて前後に仕切ることができる。すなわち、基端部分60を側方から見たときに、隔壁86を後下がり又は後上がりに傾斜させた。隔壁86の傾斜角θは約45°である。基端部分60の先端61から位置85までの距離はLdである。
【0049】
このようにすることで、基端部分60の先端61のうち、隔壁86とによって明確に囲まれた部分に、座屈強さが比較的小さい脆弱部70を設けることができる。従って、この部分で、より確実に座屈させることができる。
【0050】
なお、上記本発明の実施の形態において、脆弱部70の構成については切欠き部分66やビード84に限定されるものではない。
また、先端部分50、基端部分60及び脆弱部70の各座屈強さは、それぞれの大きさ、板厚(肉厚)、形状等を適宜設定することによって設定することができる。
さらにまた、閉鎖板62や縦リブ63dの有無については任意であり、基端部分60及び脆弱部70の各座屈強さを設定する場合に、必要に応じて設ければよく、その形状、寸法及び数量についても任意である。
【0051】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、中空状サイドフレームの基端部分に、この基端部分の前後方向の中心線に対し傾く方向に座屈変形が可能な脆弱部を設け、この脆弱部の座屈強さを、中空状サイドフレームの先端部分よりも大きく且つ基端部分よりも小さく設定したので、中空状サイドフレームの先端に作用した衝突エネルギーによって、先端部分が一定量だけ塑性変形した後に、脆弱部が塑性変形して傾くようにすることができる。
脆弱部を傾けることで先端部分をも自動的に傾けることができる。この結果、先端部分の一部だけに衝突エネルギーが作用するので、それまでに比べて大きな衝突エネルギーを必要とすることなく、先端部分の一部を更に塑性変形させることができる。従って、先端部分の変形量を増すことができるので、サイドフレームによる衝突エネルギーの吸収量を一層大きくすることができる。
【0052】
請求項2は、脆弱部を先端部分と基端部分との間に設けたので、脆弱部が塑性変形して傾いたときに、先端部分が傾いて変位する、変位量が小さくてすむ。このため、傾いた後の先端部分における、より適切な位置に衝突エネルギーを作用させることができる。従って、衝突エネルギーをより安定して十分に吸収することができる。
【0053】
請求項3は、基端部分を中空状部材にて構成し、この中空状部材の一部を切り欠くことにより、この切欠き部分を脆弱部としたので、脆弱部を簡単な構成にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る車両の透視図
【図2】本発明に係るサイドフレームの構成図
【図3】薄板箱形部材の塑性変形によるエネルギー吸収を説明する説明図
【図4】本発明に係る基端部分並びに脆弱部の構成図
【図5】本発明に係るサイドフレームの作用図
【図6】本発明に係るサイドフレーム(第1変形例)の構成図
【図7】本発明に係るサイドフレーム(第2変形例)の構成図
【符号の説明】
10…車両、20…車体フレーム、40…中空状サイドフレーム、50…先端部分、60…基端部分、66…切欠き部分、70…脆弱部、84…ビード、CL…基端部分の前後方向の中心線、Sr…基端部分の前後方向の中心線に対し傾く方向。
Claims (3)
- 車体前部又は車体後部で前後に延びた左右の中空状サイドフレームを、車体前後方向の衝突エネルギーを吸収するべく座屈強さが小さい先端部分と、この先端部分を支えるべく座屈強さが大きい基端部分と、によって構成した車体フレームにおいて、
前記基端部分は、基端部分の前後方向の中心線に対し傾く方向に座屈変形が可能な脆弱部を設け、この脆弱部の座屈強さを、先端部分よりも大きく且つ基端部分よりも小さく設定したことを特徴とする車体フレーム。 - 前記脆弱部を、前記先端部分と前記基端部分との間に設けたことを特徴とする請求項1記載の車体フレーム。
- 前記基端部分は中空状部材からなり、この中空状部材の一部を切り欠くことにより、この切欠き部分を前記脆弱部としたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車体フレーム。
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