JP2004188575A - 硬質被覆層がすぐれた耐熱衝撃性を有する表面被覆サーメット製切削工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】硬質被覆層がすぐれた耐熱衝撃性を有する表面被覆サーメット製切削工具を提供する。
【解決手段】表面被覆サーメット製切削工具が、WC基超硬合金またはTiCN基サーメットで構成された工具基体の表面に、(a)いずれも化学蒸着形成されたTiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層、およびTiCNO層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層で構成された下部層、(b)化学蒸着形成した状態でκ型結晶構造を有するAl2O3に加熱処理を施してα型結晶構造に変態してなると共に、前記加熱処理で発生した変態クラックが分散分布した組織および1〜15μmの平均層厚を有する加熱変態α型Al2O3層の下側層と、化学蒸着形成した状態でα型結晶構造を有し、かつ0.1〜2μmの平均層厚を有する蒸着α型Al2O3層の上側層、からなる複合2重α型Al2O3層で構成された上部層、前記(a)の下部層と(b)の上部層で構成された硬質被覆層を形成してなる。
【選択図】 なし
【解決手段】表面被覆サーメット製切削工具が、WC基超硬合金またはTiCN基サーメットで構成された工具基体の表面に、(a)いずれも化学蒸着形成されたTiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層、およびTiCNO層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層で構成された下部層、(b)化学蒸着形成した状態でκ型結晶構造を有するAl2O3に加熱処理を施してα型結晶構造に変態してなると共に、前記加熱処理で発生した変態クラックが分散分布した組織および1〜15μmの平均層厚を有する加熱変態α型Al2O3層の下側層と、化学蒸着形成した状態でα型結晶構造を有し、かつ0.1〜2μmの平均層厚を有する蒸着α型Al2O3層の上側層、からなる複合2重α型Al2O3層で構成された上部層、前記(a)の下部層と(b)の上部層で構成された硬質被覆層を形成してなる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、特に鋼や鋳鉄などの高速断続切削時に切刃部にきわめて短いピッチで繰り返し付加される熱衝撃に対して硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する、すなわち硬質被覆層がすぐれた耐熱衝撃性を有する表面被覆サーメット製切削工具(以下、被覆サーメット工具という)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、一般に、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成された基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、
(a)いずれも化学蒸着形成されたTiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するるTi化合物層で構成された下部層、
(b)化学蒸着形成した状態でα型の結晶構造を有し、かつ1〜17μmの平均層厚を有する蒸着α型酸化アルミニウム(以下、Al2O3で示す)層で構成された上部層、
以上(a)の下部層と(b)の上部層で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる被覆サーメット工具が知られており、この被覆サーメット工具が、例えば各種の鋼や鋳鉄などの連続切削や断続切削に用いられていることも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、一般に、上記の被覆サーメット工具の硬質被覆層を構成するTi化合物層およびAl2 O3 層が粒状結晶組織を有し、かつ前記Al2O3層はα型結晶構造をもつものやκ型結晶構造をもつものなどが広く実用に供されることも良く知られており、さらに前記Ti化合物層を構成するTiCN層を、層自身の靭性向上を目的として、通常の化学蒸着装置にて、反応ガスとして有機炭窒化物、例えばCH3CNを含む混合ガスを使用し、700〜950℃の中温温度域で化学蒸着することにより形成して縦長成長結晶組織をもつようにすることも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−31503号公報
【特許文献2】
特開平6−8010号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年の切削装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は一段と高速化の傾向にあるが、上記の従来被覆サーメット工具においては、これを鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削や断続切削に用いた場合には問題はないが、特にこれを切削条件の最も厳しい高速断続切削、すなわち切刃部にきわめて短いピッチで繰り返し熱衝撃が付加される高速断続切削に用いた場合、硬質被覆層の上部層を構成する蒸着α型Al2O3層は、硬質で耐熱性にすぐれるものの、熱衝撃に脆いために、硬質被覆層にはチッピング(微小欠け)が発生し易くなり、この結果比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、上記の被覆サーメット工具の硬質被覆層の上部層を構成するAl2O3層の耐熱衝撃性向上をはかるべく研究を行った結果、
まず、通常の化学蒸着装置で、硬質被覆層を構成する上部層の下側層として、通常の条件で、結晶構造がκ型のAl2O3層を相対的に厚膜で蒸着形成し、これに水素雰囲気中、温度:1000〜1100℃、保持時間:2〜10時間の条件で加熱処理を施すと、前記Al2O3層のκ型の結晶構造がα型の結晶構造に変態し、この結果の加熱変態α型Al2O3層には変態クラックが層中に分散分布するようになり、ついでこの状態の加熱変態α型Al2O3層の表面に、上部層の上側層として、同じく通常の条件で、相対的に薄膜の蒸着α型Al2O3層を蒸着形成してなる複合2重α型Al2O3層を、被覆サーメット工具の硬質被覆層の上部層として下部層であるTi化合物層と共に構成すると、この結果の硬質被覆層を形成してなる被覆サーメット工具においては、前記上部層の下側層を構成する加熱変態α型Al2O3層中に分散分布する変態クラックが、特に高速断続切削時の激しい熱衝撃を吸収して緩和することから硬質被覆層におけるチッピング発生が著しく抑制されるようになるという研究結果を得たのである。
【0007】
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、WC基超硬合金またはTiCN基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)いずれも化学蒸着形成されたTiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層、およびTiCNO層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層で構成された下部層、
(b)化学蒸着形成した状態でκ型結晶構造を有するAl2O3に加熱処理を施してα型結晶構造に変態してなると共に、前記加熱処理で発生した変態クラックが分散分布した組織および1〜15μmの平均層厚を有する加熱変態α型Al2O3層の下側層と、化学蒸着形成した状態でα型結晶構造を有し、かつ0.1〜2μmの平均層厚を有する蒸着α型Al2O3層の上側層からなる複合2重α型Al2O3層で構成された上部層、
以上(a)の下部層と(b)の上部層で構成された硬質被覆層を形成してなる、硬質被覆層がすぐれた耐熱衝撃性を有する被覆サーメット工具に特徴を有するものである。
【0008】
なお、この発明の被覆サーメット工具の硬質被覆層の構成層の平均層厚を上記の通りに限定したのは以下に示す理由によるものである。
(a)下部層であるTi化合物層
Ti化合物層は、自体が強度を有し、これの存在によって硬質被覆層が強度を具備するようになるほか、工具基体と上部層の下側層である加熱変態α型Al2O3層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性向上に寄与する作用をもつが、その合計平均層厚が3μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その合計平均層厚が20μmを越えると、特に高熱発生を伴なう高速断続切削で熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となることから、その合計平均層厚を3〜20μmと定めた。
【0009】
(b)上部層の下側層である加熱変態α型Al2O3層
加熱変態α型Al2O3層には、上記の通り上側層である蒸着α型Al2O3層の下部に存在し、層中に分散分布する変態クラックの作用で熱衝撃を吸収して、硬質被覆層にチッピングが発生するのを防止する作用があるが、その平均層厚が1μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その平均層厚が15μmを越えて厚くなりすぎると、チッピング発生抑制効果が急減し、むしろチッピングの発生が促進されるようになることから、その平均層厚を1〜15μmと定めた。
【0010】
(c)上部層の上側層である蒸着α型Al2O3層
蒸着α型Al2O3層には、上記の表面に露出して存在すると層中の変態クラックが原因でチッピングを発生し易い加熱変態α型Al2O3層を保護し、前記変態クラックを硬質被覆層中に内蔵させた状態にして、チッピングを発生させることなく耐摩耗性を向上させる作用があるが、その平均層厚が0.1μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その平均層厚が2μmを越えて厚くなりすぎると、これ自体にチッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を0.1〜2μmと定めた。
【0011】
【発明の実施の形態】
つぎに、この発明の被覆サーメット工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも0.5〜4μmの範囲内の所定の平均粒径を有するWC粉末、(Ti,W)C(質量比で、以下同じ、TiC/WC=30/70)粉末、(Ti,W)CN(TiC/TiN/WC=24/20/56)粉末、(Ta,Nb)C(TaC/NbC=90/10)粉末、Cr3C2粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1410℃に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO・CNMG120408に規定するスローアウエイチップ形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Fをそれぞれ製造した。
【0012】
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比でTiC/TiN=50/50)粉末、Mo2 C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1540℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO規格・CNMG120412のチップ形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体a〜fを形成した。
【0013】
ついで、これらの工具基体A〜Fおよび工具基体a〜fの表面に、通常の化学蒸着装置を用い、表3(表3中のl−TiCNは特開平6−8010号公報に記載される縦長成長結晶組織をもつTiCN層の形成条件を示すものであり、これ以外は通常の粒状結晶組織の形成条件を示すものである)に示される条件にて、表4に示される目標層厚のTi化合物層を硬質被覆層の下部層として蒸着形成し、ついで同じく表3に示される条件で結晶構造がκ型のAl2O3層を蒸着形成し、これに水素雰囲気中、温度:1050℃に2〜6時間の範囲内の所定時間保持の条件で加熱処理を施して、前記κ型のAl2O3層の結晶構造をα型に変態させ、変態クラックが層中に分散分布した加熱変態α型Al2O3層を同じく表4に示される目標層厚で硬質被覆層の上部層を構成する下側層として形成し、さらに同じく表3に示される条件で、かつ表4に示される目標層厚の蒸着α型Al2O3層を同上部層を構成する上側層として形成することにより本発明被覆サーメット工具1〜13をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、表5に示される通り、硬質被覆層の上部層全体を同じく表5に示される平均層厚の蒸着α型Al2O3層とする以外は同一の条件で従来被覆サーメット工具1〜13をそれぞれ製造した。
【0014】
この結果得られた上記の本発明被覆サーメット工具と従来被覆サーメット工具の硬質被覆層を構成する加熱変態α型Al2O3層と蒸着α型Al2O3層の相違を観察する目的でX線回折を測定した。
まず、X線回折測定用試料として、X線回折チャート上で(001)面および(002)面にのみ回折ピークが現れる単結晶WCを基体試料として用い、この基体試料の表面に、本発明被覆サーメット工具3、8、および12の硬質被覆層を構成する上部層の下側層である目標層厚が15μm、10μm、および5μmの加熱変態α型Al2O3層の形成条件と同一の条件で、それぞれ目標層厚が15μm、10μm、および5μmの加熱変態α型Al2O3層を直接形成して本発明被覆試料A〜Cとし、また上記従来被覆サーメット工具1〜13の硬質被覆層の上部層を構成する蒸着α型Al2O3層の形成条件と同一の条件で、前記本発明被覆サーメット工具3、8、および12に対応して、それぞれ目標層厚を15μm、10μm、および5μmとした蒸着α型Al2O3層を直接形成して従来被覆試料a〜cとすることによりそれぞれ調製した。
【0015】
ついで、これら被覆試料の前記加熱変態α型Al2O3層および蒸着α型Al2O3層のX線回折測定を、通常のX線回折装置を用い、X線管中に設置されたCu陽極(ターゲット)に対して、電圧:40kV、電流:350mAの条件で金属Wフィラメントから発生させた熱電子を加速照射することにより、前記Cu陽極表面から0.154nmの波長を有する特性X線であるCu−Kα線を発生させ、前記特性X線を前記被覆試料表面に照射し、前記被覆試料から散乱したX線のうち、被覆試料表面に対するX線入射角度θと等しい角度で回折したX線の強度をX線検出器にて測定することにより行なった。この測定結果を図1〜6に示した。
本発明被覆試料A〜Cの加熱変態α型Al2O3層のX線回折チャートを示す図1〜3と、従来被覆試料a〜cの蒸着α型Al2O3層のX線回折チャートを示す図4〜6の比較から、前記加熱変態α型Al2O3層では(006)面および(018)面に明確な回折ピークが現れているのに対して、前記蒸着α型Al2O3層ではこれら(006)面および(018)面に回折ピークは存在しないことが明かである。
【0016】
さらに、上記の本発明被覆サーメット工具1〜13および従来被覆サーメット工具1〜13について、これの硬質被覆層の構成層を走査型電子顕微鏡を用いて観察(層の縦断面を観察)したところ、前者ではいずれもTi化合物層、変態クラックが層中に分散分布した加熱変態α型Al2O3層、および蒸着α型Al2O3層からなり、後者では、いずれもTi化合物と蒸着α型Al2O3層からなることが確認された。また、これらの被覆サーメット工具の硬質被覆層の構成層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(同じく縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
【0017】
つぎに、上記の各種の被覆サーメット工具をいずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明被覆サーメット工具1〜7および従来被覆サーメット工具1〜7については、
被削材:JIS・SCM440の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:400m/min、
切り込み:1.5mm、
送り:0.2mm/rev、
切削時間:3分、
の条件での合金鋼の乾式高速断続切削試験、
被削材:JIS・SUS304の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:350m/min、
切り込み:1.5mm、
送り:0.2mm/rev、
切削時間:3分、
の条件でのステンレス鋼の乾式高速断続切削試験を行った。
【0018】
さらに、本発明被覆サーメット工具8〜13および従来被覆サーメット工具8〜13については、
被削材:JIS・SCM440の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:400m/min、
切り込み:1.0mm、
送り:0.15mm/rev、
切削時間:3分、
の条件での合金鋼の乾式高速断続切削試験、
被削材:JIS・SUS304の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:350m/min、
切り込み:1.0mm、
送り:0.15mm/rev、
切削時間:3分、
の条件でのステンレス鋼の乾式高速断続切削試験を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表6に示した。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
【表3】
【0022】
【表4】
【0023】
【表5】
【0024】
【表6】
【0025】
【発明の効果】
表4〜6に示される結果から、本発明被覆サーメット工具1〜13は、硬質被覆層の上部層の下側層を構成する加熱変態α型Al2O3層中に分散分布する変態クラックの作用で、熱衝撃がきわめて高く、かつ高い発熱を伴なう鋼の高速断続切削でも、硬質被覆層中に内蔵された状態で存在する前記変態クラックの作用で、切刃部のチッピング発生が著しく抑制され、すぐれた耐摩耗性を発揮するのに対して、硬質被覆層の上部層全体が蒸着α型Al2O3層からなる従来被覆サーメット工具1〜13においては、高速断続切削では前記蒸着α型Al2O3層が激しい熱衝撃に耐えられず、切刃部にチッピングが発生し、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆サーメット工具は、各種鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削や断続切削は勿論のこと、特に熱衝撃がきわめて高く、かつ高い発熱を伴なう切削条件の最も厳しい高速断続切削でもすぐれた切削性能を発揮するものであり、したがって切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明被覆サーメット工具3の硬質被覆層の上部層を構成する下側層に相当する目標層厚が15μmの加熱変態α型Al2O3層のX線回折チャートを示す図である。
【図2】本発明被覆サーメット工具8の硬質被覆層の上部層を構成する下側層に相当する目標層厚が10μmの加熱変態α型Al2O3層のX線回折チャートを示す図である。
【図3】本発明被覆サーメット工具12の硬質被覆層の上部層を構成する下側層に相当する目標層厚が5μmの加熱変態α型Al2O3層のX線回折チャートを示す図である。
【図4】従来被覆サーメット工具の硬質被覆層の上部層を構成する蒸着α型Al2O3層について、本発明被覆サーメット工具3に対応して目標層厚を15μmとした蒸着α型Al2O3層のX線回折チャートを示す図である。
【図5】従来被覆サーメット工具の硬質被覆層の上部層を構成する蒸着α型Al2O3層について、本発明被覆サーメット工具8に対応して目標層厚を10μmとした蒸着α型Al2O3層のX線回折チャートを示す図である。
【図6】従来被覆サーメット工具の硬質被覆層の上部層を構成する蒸着α型Al2O3層について、本発明被覆サーメット工具12に対応して目標層厚を5μmとした蒸着α型Al2O3層のX線回折チャートを示す図である。
【発明の属する技術分野】
この発明は、特に鋼や鋳鉄などの高速断続切削時に切刃部にきわめて短いピッチで繰り返し付加される熱衝撃に対して硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する、すなわち硬質被覆層がすぐれた耐熱衝撃性を有する表面被覆サーメット製切削工具(以下、被覆サーメット工具という)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、一般に、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成された基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、
(a)いずれも化学蒸着形成されたTiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するるTi化合物層で構成された下部層、
(b)化学蒸着形成した状態でα型の結晶構造を有し、かつ1〜17μmの平均層厚を有する蒸着α型酸化アルミニウム(以下、Al2O3で示す)層で構成された上部層、
以上(a)の下部層と(b)の上部層で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる被覆サーメット工具が知られており、この被覆サーメット工具が、例えば各種の鋼や鋳鉄などの連続切削や断続切削に用いられていることも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、一般に、上記の被覆サーメット工具の硬質被覆層を構成するTi化合物層およびAl2 O3 層が粒状結晶組織を有し、かつ前記Al2O3層はα型結晶構造をもつものやκ型結晶構造をもつものなどが広く実用に供されることも良く知られており、さらに前記Ti化合物層を構成するTiCN層を、層自身の靭性向上を目的として、通常の化学蒸着装置にて、反応ガスとして有機炭窒化物、例えばCH3CNを含む混合ガスを使用し、700〜950℃の中温温度域で化学蒸着することにより形成して縦長成長結晶組織をもつようにすることも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−31503号公報
【特許文献2】
特開平6−8010号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年の切削装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は一段と高速化の傾向にあるが、上記の従来被覆サーメット工具においては、これを鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削や断続切削に用いた場合には問題はないが、特にこれを切削条件の最も厳しい高速断続切削、すなわち切刃部にきわめて短いピッチで繰り返し熱衝撃が付加される高速断続切削に用いた場合、硬質被覆層の上部層を構成する蒸着α型Al2O3層は、硬質で耐熱性にすぐれるものの、熱衝撃に脆いために、硬質被覆層にはチッピング(微小欠け)が発生し易くなり、この結果比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、上記の被覆サーメット工具の硬質被覆層の上部層を構成するAl2O3層の耐熱衝撃性向上をはかるべく研究を行った結果、
まず、通常の化学蒸着装置で、硬質被覆層を構成する上部層の下側層として、通常の条件で、結晶構造がκ型のAl2O3層を相対的に厚膜で蒸着形成し、これに水素雰囲気中、温度:1000〜1100℃、保持時間:2〜10時間の条件で加熱処理を施すと、前記Al2O3層のκ型の結晶構造がα型の結晶構造に変態し、この結果の加熱変態α型Al2O3層には変態クラックが層中に分散分布するようになり、ついでこの状態の加熱変態α型Al2O3層の表面に、上部層の上側層として、同じく通常の条件で、相対的に薄膜の蒸着α型Al2O3層を蒸着形成してなる複合2重α型Al2O3層を、被覆サーメット工具の硬質被覆層の上部層として下部層であるTi化合物層と共に構成すると、この結果の硬質被覆層を形成してなる被覆サーメット工具においては、前記上部層の下側層を構成する加熱変態α型Al2O3層中に分散分布する変態クラックが、特に高速断続切削時の激しい熱衝撃を吸収して緩和することから硬質被覆層におけるチッピング発生が著しく抑制されるようになるという研究結果を得たのである。
【0007】
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、WC基超硬合金またはTiCN基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)いずれも化学蒸着形成されたTiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層、およびTiCNO層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層で構成された下部層、
(b)化学蒸着形成した状態でκ型結晶構造を有するAl2O3に加熱処理を施してα型結晶構造に変態してなると共に、前記加熱処理で発生した変態クラックが分散分布した組織および1〜15μmの平均層厚を有する加熱変態α型Al2O3層の下側層と、化学蒸着形成した状態でα型結晶構造を有し、かつ0.1〜2μmの平均層厚を有する蒸着α型Al2O3層の上側層からなる複合2重α型Al2O3層で構成された上部層、
以上(a)の下部層と(b)の上部層で構成された硬質被覆層を形成してなる、硬質被覆層がすぐれた耐熱衝撃性を有する被覆サーメット工具に特徴を有するものである。
【0008】
なお、この発明の被覆サーメット工具の硬質被覆層の構成層の平均層厚を上記の通りに限定したのは以下に示す理由によるものである。
(a)下部層であるTi化合物層
Ti化合物層は、自体が強度を有し、これの存在によって硬質被覆層が強度を具備するようになるほか、工具基体と上部層の下側層である加熱変態α型Al2O3層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性向上に寄与する作用をもつが、その合計平均層厚が3μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その合計平均層厚が20μmを越えると、特に高熱発生を伴なう高速断続切削で熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となることから、その合計平均層厚を3〜20μmと定めた。
【0009】
(b)上部層の下側層である加熱変態α型Al2O3層
加熱変態α型Al2O3層には、上記の通り上側層である蒸着α型Al2O3層の下部に存在し、層中に分散分布する変態クラックの作用で熱衝撃を吸収して、硬質被覆層にチッピングが発生するのを防止する作用があるが、その平均層厚が1μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その平均層厚が15μmを越えて厚くなりすぎると、チッピング発生抑制効果が急減し、むしろチッピングの発生が促進されるようになることから、その平均層厚を1〜15μmと定めた。
【0010】
(c)上部層の上側層である蒸着α型Al2O3層
蒸着α型Al2O3層には、上記の表面に露出して存在すると層中の変態クラックが原因でチッピングを発生し易い加熱変態α型Al2O3層を保護し、前記変態クラックを硬質被覆層中に内蔵させた状態にして、チッピングを発生させることなく耐摩耗性を向上させる作用があるが、その平均層厚が0.1μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その平均層厚が2μmを越えて厚くなりすぎると、これ自体にチッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を0.1〜2μmと定めた。
【0011】
【発明の実施の形態】
つぎに、この発明の被覆サーメット工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも0.5〜4μmの範囲内の所定の平均粒径を有するWC粉末、(Ti,W)C(質量比で、以下同じ、TiC/WC=30/70)粉末、(Ti,W)CN(TiC/TiN/WC=24/20/56)粉末、(Ta,Nb)C(TaC/NbC=90/10)粉末、Cr3C2粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1410℃に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO・CNMG120408に規定するスローアウエイチップ形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Fをそれぞれ製造した。
【0012】
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比でTiC/TiN=50/50)粉末、Mo2 C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1540℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO規格・CNMG120412のチップ形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体a〜fを形成した。
【0013】
ついで、これらの工具基体A〜Fおよび工具基体a〜fの表面に、通常の化学蒸着装置を用い、表3(表3中のl−TiCNは特開平6−8010号公報に記載される縦長成長結晶組織をもつTiCN層の形成条件を示すものであり、これ以外は通常の粒状結晶組織の形成条件を示すものである)に示される条件にて、表4に示される目標層厚のTi化合物層を硬質被覆層の下部層として蒸着形成し、ついで同じく表3に示される条件で結晶構造がκ型のAl2O3層を蒸着形成し、これに水素雰囲気中、温度:1050℃に2〜6時間の範囲内の所定時間保持の条件で加熱処理を施して、前記κ型のAl2O3層の結晶構造をα型に変態させ、変態クラックが層中に分散分布した加熱変態α型Al2O3層を同じく表4に示される目標層厚で硬質被覆層の上部層を構成する下側層として形成し、さらに同じく表3に示される条件で、かつ表4に示される目標層厚の蒸着α型Al2O3層を同上部層を構成する上側層として形成することにより本発明被覆サーメット工具1〜13をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、表5に示される通り、硬質被覆層の上部層全体を同じく表5に示される平均層厚の蒸着α型Al2O3層とする以外は同一の条件で従来被覆サーメット工具1〜13をそれぞれ製造した。
【0014】
この結果得られた上記の本発明被覆サーメット工具と従来被覆サーメット工具の硬質被覆層を構成する加熱変態α型Al2O3層と蒸着α型Al2O3層の相違を観察する目的でX線回折を測定した。
まず、X線回折測定用試料として、X線回折チャート上で(001)面および(002)面にのみ回折ピークが現れる単結晶WCを基体試料として用い、この基体試料の表面に、本発明被覆サーメット工具3、8、および12の硬質被覆層を構成する上部層の下側層である目標層厚が15μm、10μm、および5μmの加熱変態α型Al2O3層の形成条件と同一の条件で、それぞれ目標層厚が15μm、10μm、および5μmの加熱変態α型Al2O3層を直接形成して本発明被覆試料A〜Cとし、また上記従来被覆サーメット工具1〜13の硬質被覆層の上部層を構成する蒸着α型Al2O3層の形成条件と同一の条件で、前記本発明被覆サーメット工具3、8、および12に対応して、それぞれ目標層厚を15μm、10μm、および5μmとした蒸着α型Al2O3層を直接形成して従来被覆試料a〜cとすることによりそれぞれ調製した。
【0015】
ついで、これら被覆試料の前記加熱変態α型Al2O3層および蒸着α型Al2O3層のX線回折測定を、通常のX線回折装置を用い、X線管中に設置されたCu陽極(ターゲット)に対して、電圧:40kV、電流:350mAの条件で金属Wフィラメントから発生させた熱電子を加速照射することにより、前記Cu陽極表面から0.154nmの波長を有する特性X線であるCu−Kα線を発生させ、前記特性X線を前記被覆試料表面に照射し、前記被覆試料から散乱したX線のうち、被覆試料表面に対するX線入射角度θと等しい角度で回折したX線の強度をX線検出器にて測定することにより行なった。この測定結果を図1〜6に示した。
本発明被覆試料A〜Cの加熱変態α型Al2O3層のX線回折チャートを示す図1〜3と、従来被覆試料a〜cの蒸着α型Al2O3層のX線回折チャートを示す図4〜6の比較から、前記加熱変態α型Al2O3層では(006)面および(018)面に明確な回折ピークが現れているのに対して、前記蒸着α型Al2O3層ではこれら(006)面および(018)面に回折ピークは存在しないことが明かである。
【0016】
さらに、上記の本発明被覆サーメット工具1〜13および従来被覆サーメット工具1〜13について、これの硬質被覆層の構成層を走査型電子顕微鏡を用いて観察(層の縦断面を観察)したところ、前者ではいずれもTi化合物層、変態クラックが層中に分散分布した加熱変態α型Al2O3層、および蒸着α型Al2O3層からなり、後者では、いずれもTi化合物と蒸着α型Al2O3層からなることが確認された。また、これらの被覆サーメット工具の硬質被覆層の構成層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(同じく縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
【0017】
つぎに、上記の各種の被覆サーメット工具をいずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明被覆サーメット工具1〜7および従来被覆サーメット工具1〜7については、
被削材:JIS・SCM440の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:400m/min、
切り込み:1.5mm、
送り:0.2mm/rev、
切削時間:3分、
の条件での合金鋼の乾式高速断続切削試験、
被削材:JIS・SUS304の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:350m/min、
切り込み:1.5mm、
送り:0.2mm/rev、
切削時間:3分、
の条件でのステンレス鋼の乾式高速断続切削試験を行った。
【0018】
さらに、本発明被覆サーメット工具8〜13および従来被覆サーメット工具8〜13については、
被削材:JIS・SCM440の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:400m/min、
切り込み:1.0mm、
送り:0.15mm/rev、
切削時間:3分、
の条件での合金鋼の乾式高速断続切削試験、
被削材:JIS・SUS304の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:350m/min、
切り込み:1.0mm、
送り:0.15mm/rev、
切削時間:3分、
の条件でのステンレス鋼の乾式高速断続切削試験を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表6に示した。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
【表3】
【0022】
【表4】
【0023】
【表5】
【0024】
【表6】
【0025】
【発明の効果】
表4〜6に示される結果から、本発明被覆サーメット工具1〜13は、硬質被覆層の上部層の下側層を構成する加熱変態α型Al2O3層中に分散分布する変態クラックの作用で、熱衝撃がきわめて高く、かつ高い発熱を伴なう鋼の高速断続切削でも、硬質被覆層中に内蔵された状態で存在する前記変態クラックの作用で、切刃部のチッピング発生が著しく抑制され、すぐれた耐摩耗性を発揮するのに対して、硬質被覆層の上部層全体が蒸着α型Al2O3層からなる従来被覆サーメット工具1〜13においては、高速断続切削では前記蒸着α型Al2O3層が激しい熱衝撃に耐えられず、切刃部にチッピングが発生し、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆サーメット工具は、各種鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削や断続切削は勿論のこと、特に熱衝撃がきわめて高く、かつ高い発熱を伴なう切削条件の最も厳しい高速断続切削でもすぐれた切削性能を発揮するものであり、したがって切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明被覆サーメット工具3の硬質被覆層の上部層を構成する下側層に相当する目標層厚が15μmの加熱変態α型Al2O3層のX線回折チャートを示す図である。
【図2】本発明被覆サーメット工具8の硬質被覆層の上部層を構成する下側層に相当する目標層厚が10μmの加熱変態α型Al2O3層のX線回折チャートを示す図である。
【図3】本発明被覆サーメット工具12の硬質被覆層の上部層を構成する下側層に相当する目標層厚が5μmの加熱変態α型Al2O3層のX線回折チャートを示す図である。
【図4】従来被覆サーメット工具の硬質被覆層の上部層を構成する蒸着α型Al2O3層について、本発明被覆サーメット工具3に対応して目標層厚を15μmとした蒸着α型Al2O3層のX線回折チャートを示す図である。
【図5】従来被覆サーメット工具の硬質被覆層の上部層を構成する蒸着α型Al2O3層について、本発明被覆サーメット工具8に対応して目標層厚を10μmとした蒸着α型Al2O3層のX線回折チャートを示す図である。
【図6】従来被覆サーメット工具の硬質被覆層の上部層を構成する蒸着α型Al2O3層について、本発明被覆サーメット工具12に対応して目標層厚を5μmとした蒸着α型Al2O3層のX線回折チャートを示す図である。
Claims (1)
- 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)いずれも化学蒸着形成されたTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層で構成された下部層、
(b)化学蒸着形成した状態でκ型の結晶構造を有する酸化アルミニウムに加熱処理を施してα型結晶構造に変態してなると共に、前記加熱処理で発生した変態クラックが分散分布した組織および1〜15μmの平均層厚を有する加熱変態α型酸化アルミニウム層の下側層と、化学蒸着形成した状態でα型の結晶構造を有し、かつ0.1〜2μmの平均層厚を有する蒸着α型酸化アルミニウム層の上側層からなる複合2重α型酸化アルミニウム層で構成された上部層、
以上(a)の下部層と(b)の上部層で構成された硬質被覆層を形成してなることを特徴とする硬質被覆層がすぐれた耐熱衝撃性を有する表面被覆サーメット製切削工具。
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