JP2004188563A - ギアカップリングの歯面仕上げ方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ギアカップリングの歯部を焼入れした際に発生する熱処理歪みの矯正を可能とする。
【解決手段】加工後の素材を歯切りした後歯面を焼入れ処理し、その後、CBN砥粒を電着したカッターを用いて歯面にシェービング仕上げ加工を施す。
【効果】ギアカップリングの歯部を焼入れした際に発生する熱処理歪みの矯正が可能となって、ピッチ誤差、面粗度、歯形誤差の精度向上が図れると共に、内歯と外歯が傾いたような悪条件であっても、噛み合い部での歯当たり位置が、略歯の高さ中央付近であり、振動加速度や騒音を大幅に低減できる。
【選択図】 図1
【解決手段】加工後の素材を歯切りした後歯面を焼入れ処理し、その後、CBN砥粒を電着したカッターを用いて歯面にシェービング仕上げ加工を施す。
【効果】ギアカップリングの歯部を焼入れした際に発生する熱処理歪みの矯正が可能となって、ピッチ誤差、面粗度、歯形誤差の精度向上が図れると共に、内歯と外歯が傾いたような悪条件であっても、噛み合い部での歯当たり位置が、略歯の高さ中央付近であり、振動加速度や騒音を大幅に低減できる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば鉄道車両用等の大変位角を有するギアカップリングの歯面を高精度に仕上げる方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば鉄道車両用ギアカップリングがユーザーでの使用中に特に問題となるのは騒音である。この騒音を低減させるためには、小バックラッシュ化が有効な手段の一つである(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。また、騒音原因の一つとされるギアカップリングの振れ回りを解消するためには、とりわけ、ギアカップリングの歯部を高周波焼入れした際に発生する歪みが原因で発生するピッチ誤差を小さくすることが効果的であると考えられる。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−132765号公報(第4頁)
【特許文献2】
特開2002−21871号公報(第3頁)
【0004】
しかしながら、従来の鉄道車両用ギアカップリングの製造は、図1(b)に示したように、素材を旋削した後歯切りして歯面を例えば高周波焼入れし、その後、ラッピング仕上げを行なったり、また、歯切り後に浸炭処理や窒化処理と熱処理により表面硬化し、その後バレル研磨加工したりしていた(例えば、特許文献3参照。)ので、ギアカップリングの歯部を熱処理した際に発生する熱処理歪みを矯正することができなかった。なお、歪みを矯正する手段に歯面研削法があるが、コストが高く、また、鉄道車両用ギアカップリングは大クラウニングを施工しているため、設備的に適用が困難であった。
【0005】
【特許文献3】
特開平6−246548号公報(第2頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、ギアカップリングの歯部を焼入れした際に発生する熱処理歪みの矯正を低コストで可能とすることで、ピッチ誤差を小さくし、騒音の発生を低減することができるギアカップリングの歯面仕上げ方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明に係るギアカップリングの歯面仕上げ方法は、歯面を焼入れ処理した後に、シェービング用カッターを用いて歯面にシェービング仕上げ加工を施すこととしている。そして、このようにすることで、ギアカップリングの歯部を焼入れした際に発生する熱処理歪みの矯正が可能となる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に係るギアカップリングの歯面仕上げ方法は、加工後の素材を歯切りした後歯面を焼入れ処理し、その後、シェービング用カッターを用いて歯面にシェービング仕上げ加工を施すものである。
【0009】
本発明に係るギアカップリングの歯面仕上げ方法は、シェービング用カッターを用いて歯面にシェービング仕上げ加工を施すので、焼入れ処理により歯面硬さが向上した素材であっても、高精度に仕上げ加工が行なえ、焼入れした際に発生する熱処理歪みの矯正が可能になって、ピッチ誤差、歯面粗度、歯形誤差の精度が向上する。
【0010】
本発明に係るギアカップリングの歯面仕上げ方法においては、CBN砥粒を電着したシェービング用カッターを使用する場合には、80〜200m/分の加工速度で、シェービング仕上げ加工を行なうことが望ましい。CBN砥粒を電着したカッターの前記CBN砥粒の脱落を防止するためには、通常のシェービング仕上げ加工(ハイス工具を使用し、加工速度は8〜30m/分程度)よりも速い加工速度で加工する必要があるからである。150m/分以上の加工速度でシェービング仕上げ加工を行なうことが最も望ましいが、設備剛性等の問題により、回転数に制約を受けても80m/分までは加工が可能である。また、200m/分を超えると、設備の追従性が悪くなる虞がある。
【0011】
また、本発明に係るギアカップリングの歯面仕上げ方法において、ギアカップリングが内歯車の場合には200〜800mm/分の送り速度で、また、ギアカツプリングが外歯車の場合には20〜100mm/分の送り速度で、シェービング仕上げ加工を行なうことが望ましい。
【0012】
シェービング仕上げ加工においては、送り速度は加工速度との関係が重要で、仕上面粗さや極端な送りマークのつかない送り速度を選択することが必要である。それぞれ、下限は能率上最低レベルであり、上限は仕上面粗さや極端な送りマークのつかない限界である。ギアカップリングが内歯車の場合より外歯車の場合のほうが送り速度が低いのは、外歯車の場合、後述するように揺動運動を行なう場合があるので、この揺動運動に対する設備の追従性とカッターの偏摩耗防止のためである。
【0013】
また、本発明に係るギアカップリングの歯面仕上げ方法において、ギアカップリングが外歯車でクラウニングが施工されている場合には、シェービング仕上げ加工を、ギアカップリングを揺動させながら行なうことで、容易に実際の動きに即した歯面に仕上げることができる。ギアカップリングの揺動角度範囲は特に限定されるわけではないが、本発明者の各種の実験によれば、製品設計上の要求最大傾斜角に0〜0.5°の余裕を加算した角度揺動した場合に良好な結果が得られている。基本的には要求角度を満足していれば角度の余裕はなくても良いが、加工公差を考慮した場合、0〜0.5°の余裕をもたせることが好ましい。しかし、余裕が0.5°を超えると反対側の歯面と干渉するので、0.5°以下とする。
【0014】
【実施例】
以下、本発明に係るギアカップリングの歯面仕上げ方法を添付図面に示す実施例に基づいて説明する。
本発明に係るギアカップリングの歯面仕上げ方法は、図1(a)に示したように、旋削加工後の素材を歯切りした後、歯面を例えば高周波焼入れした後に、図1(b)に示した従来のラッピング仕上げに代えて、シェービング仕上げ加工を行うものである。
【0015】
図2は本発明に係るギアカップリングの歯面仕上げ方法に適用するシェービング仕上げ加工の実施例図であるが、本発明では、焼入れした後にシェービング仕上げ加工を行なうことから、従来のシェービング仕上げ加工で使用されているようなセレーションタイプのシェービングカッターでは加工できない。
【0016】
そこで、本発明では、カッター刃面に例えばCBN砥粒を電着したシェービング用カッターを使用して次のようにして行なう。
すなわち、焼入れした後のシェービング仕上げ加工は、図2に示したように、歯面を熱処理された被削歯車1に、焼入れ研削され、さらにCBN砥粒を電着した丸形シェービングカッター2を噛み合わせて回転することにより、被削歯車1の歯面から微量の仕上げ代を削り取るのである。
【0017】
そして、例えば外歯車の場合には、この焼入れした後のシェービング仕上げ加工において、被削歯車1の軸と、シェービングカッター2の軸とに、図2(b)に示したように、例えば製品設計上の要求最大傾斜角に0.5°加算した交差角αをつけて被削歯車1を揺動させながら、噛み合わせた被削歯車1とシェービングカッター2を、歯面に圧力を加えながら回転することにより、シェービングカッター2と被削歯車1の歯面には歯丈方向と軸方向に相対すべりが発生し、CBN砥粒が切れ刃となり、歯面を削り取る。
【0018】
但し、上記したシェービング仕上げ加工においては、被削歯車1とシェービングカッター2は歯面で噛み合っているだけで、両者の軸は機械的に連絡しておらず、互に自由に回転されることから、シェービング仕上げ加工に必要な要素である、歯幅全体を仕上げるための噛み合い点の歯幅方向の移動方向として、例えばカッター或いは歯車を歯車の軸方向に移動させるコンベンショナル・シェービング法を、また、歯面に作用させる圧力を変える方法として、例えばカッターと歯車をバックラッシュなしに噛み合せ、さらに、中心距離を縮めることによって、歯面に必要な切削圧を加えるタイトメッシュ・シェービング法を採用する。
【0019】
上記したように、旋削加工後の素材を歯切りした後、歯面を例えば高周波焼入れした後に、100m/分の加工速度で、かつ、内歯車の場合には500mm/分の、また、外歯車の場合には50mm/分の送り速度で、シェービング仕上げ加工を行う本発明方法を使用して、図3に示したような、鉄道車両用の歯車形撓み軸継手10(歯車の諸元:モジュール4/3、圧力角20°、歯数38、基準ピッチ円直径152mm)の歯面仕上げを行なった場合には、焼入れした後にラッピング仕上げを行なう従来方法に比べて、内歯車では、隣接ピッチ誤差は1〜5μmも、また、面粗度は14〜17μmも、また、歯形誤差は14〜17μmも仕上げ精度が向上した。
【0020】
また、外歯車でも、隣接ピッチ誤差は4〜7μmも、また、面粗度は3.5〜4μmも、また、歯形誤差は15〜19μmも仕上げ精度が向上した。なお、図3中の11は歯車形撓み軸継手を構成する外歯車11aを有する内筒、12は同じく内歯車12aを有する外筒である。
【0021】
加えて、本発明方法によって上記した諸元の歯車の歯面仕上げを行なった場合には、図4に破線で示した正規の歯形に対して、実線で示したように、歯先では片側で36μm狭く、また、歯元では片側で77μm広い歯形形状になり、内歯車12aと外歯車11aの相対インボリュート誤差が少なくなって、歯の高さ中央部で歯当たりが行えるようになる。
【0022】
ちなみに、上記した諸元の歯車の歯面仕上げを、本発明方法によって行なった場合の、図5に示したような傾き角度が5.94°の場合における噛み合い部での歯当たり位置の変化を図6に、また、従来方法によって行なった場合の同様の変化を図7に示す。
【0023】
歯車の歯面仕上げを本発明方法によって行なった場合には、図6(a)〜(c)に示したように、傾き角度が5.94°のように大きな傾き角度を布する場合であっても、何れも噛み合い部では、略歯の高さ中央付近で内歯と外歯が接触していることが判る。一方、歯車の歯面仕上げを従来方法によって行なった場合は、内歯と外歯との接触位置が、図7(a)から図7(c)に順に歯先から歯元へと移動していくのが判る。なお、内歯と外歯の接触部を図6、図7中に斜線で示す。
【0024】
このように、本発明方法によれば、ピッチ誤差、面粗度、歯形誤差の精度向上により、噛み合い部での歯当たり位置が、略歯の高さ中央付近で大きく変化しないので、鉄道車両用ギアカップリングの歯面仕上げに適用した場合には、図8〜図10に示したように、駆動側、装置側の振動加速度や騒音は共に従来方法によって仕上げ加工したものと比べて大幅に低減した。なお、図8〜図10はベンチ試験の結果を示したもので、夫々横軸はカップリング歯車の周速(m/分)を示す。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るギアカップリングの歯面仕上げ方法によれば、ギアカップリングの歯部を焼入れした際に発生する熱処理歪みの矯正が可能となって、ピッチ誤差、面粗度、歯形誤差の精度向上が図れると共に、内歯と外歯が傾いたような悪条件であっても、噛み合い部での歯当たり位置が、略歯の高さ中央で変化せず、振動加速度や騒音を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明方法に係る歯面仕上げ方法のフロー図、(b)は従来方法に係る歯面仕上げ方法のフロー図である。
【図2】本発明に係る歯面仕上げ方法に適用するシェービング仕上げ加工の実施例図で、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図3】本発明に係る歯面仕上げ方法を適用する鉄道車両用歯車形撓み軸継手の一例を断面して示した図である。
【図4】正規の歯形と、本発明に係る歯面仕上げ方法によって仕上げ加工した歯形を比較して示した図である。
【図5】本発明方法によって歯面仕上を行なった場合の、傾き角度が5.94°の場合における噛み合い部での歯当たり位置を平面から見た図である。
【図6】(a)〜(c)は本発明方法によって歯面仕上を行なった場合の、傾き角度が5.94°の場合における噛み合い部での歯当たり位置の変化を順に示した図である。
【図7】(a)〜(c)は従来方法によって歯面仕上を行なった場合の、傾き角度が5.94°の場合における噛み合い部での歯当たり位置の変化を順に示した図である。
【図8】駆動側における歯車形撓み軸継手の回転数の変化に対する振動加速度の変化を、本発明方法による製品(▲印)と従来方法による製品(■印)とで比較した図である。
【図9】歯車装置側における歯車形撓み軸継手の回転数の変化に対する振動加速度の変化を、本発明方法による製品(▲印)と従来方法による製品(■印)とで比較した図である。
【図10】歯車形撓み軸継手の回転数の変化に対する騒音の変化を、本発明方法による製品(▲印)と従来方法による製品(■印)とで比較した図である。
【符号の説明】
1 被削歯車
2 シェービングカッター
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば鉄道車両用等の大変位角を有するギアカップリングの歯面を高精度に仕上げる方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば鉄道車両用ギアカップリングがユーザーでの使用中に特に問題となるのは騒音である。この騒音を低減させるためには、小バックラッシュ化が有効な手段の一つである(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。また、騒音原因の一つとされるギアカップリングの振れ回りを解消するためには、とりわけ、ギアカップリングの歯部を高周波焼入れした際に発生する歪みが原因で発生するピッチ誤差を小さくすることが効果的であると考えられる。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−132765号公報(第4頁)
【特許文献2】
特開2002−21871号公報(第3頁)
【0004】
しかしながら、従来の鉄道車両用ギアカップリングの製造は、図1(b)に示したように、素材を旋削した後歯切りして歯面を例えば高周波焼入れし、その後、ラッピング仕上げを行なったり、また、歯切り後に浸炭処理や窒化処理と熱処理により表面硬化し、その後バレル研磨加工したりしていた(例えば、特許文献3参照。)ので、ギアカップリングの歯部を熱処理した際に発生する熱処理歪みを矯正することができなかった。なお、歪みを矯正する手段に歯面研削法があるが、コストが高く、また、鉄道車両用ギアカップリングは大クラウニングを施工しているため、設備的に適用が困難であった。
【0005】
【特許文献3】
特開平6−246548号公報(第2頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、ギアカップリングの歯部を焼入れした際に発生する熱処理歪みの矯正を低コストで可能とすることで、ピッチ誤差を小さくし、騒音の発生を低減することができるギアカップリングの歯面仕上げ方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明に係るギアカップリングの歯面仕上げ方法は、歯面を焼入れ処理した後に、シェービング用カッターを用いて歯面にシェービング仕上げ加工を施すこととしている。そして、このようにすることで、ギアカップリングの歯部を焼入れした際に発生する熱処理歪みの矯正が可能となる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に係るギアカップリングの歯面仕上げ方法は、加工後の素材を歯切りした後歯面を焼入れ処理し、その後、シェービング用カッターを用いて歯面にシェービング仕上げ加工を施すものである。
【0009】
本発明に係るギアカップリングの歯面仕上げ方法は、シェービング用カッターを用いて歯面にシェービング仕上げ加工を施すので、焼入れ処理により歯面硬さが向上した素材であっても、高精度に仕上げ加工が行なえ、焼入れした際に発生する熱処理歪みの矯正が可能になって、ピッチ誤差、歯面粗度、歯形誤差の精度が向上する。
【0010】
本発明に係るギアカップリングの歯面仕上げ方法においては、CBN砥粒を電着したシェービング用カッターを使用する場合には、80〜200m/分の加工速度で、シェービング仕上げ加工を行なうことが望ましい。CBN砥粒を電着したカッターの前記CBN砥粒の脱落を防止するためには、通常のシェービング仕上げ加工(ハイス工具を使用し、加工速度は8〜30m/分程度)よりも速い加工速度で加工する必要があるからである。150m/分以上の加工速度でシェービング仕上げ加工を行なうことが最も望ましいが、設備剛性等の問題により、回転数に制約を受けても80m/分までは加工が可能である。また、200m/分を超えると、設備の追従性が悪くなる虞がある。
【0011】
また、本発明に係るギアカップリングの歯面仕上げ方法において、ギアカップリングが内歯車の場合には200〜800mm/分の送り速度で、また、ギアカツプリングが外歯車の場合には20〜100mm/分の送り速度で、シェービング仕上げ加工を行なうことが望ましい。
【0012】
シェービング仕上げ加工においては、送り速度は加工速度との関係が重要で、仕上面粗さや極端な送りマークのつかない送り速度を選択することが必要である。それぞれ、下限は能率上最低レベルであり、上限は仕上面粗さや極端な送りマークのつかない限界である。ギアカップリングが内歯車の場合より外歯車の場合のほうが送り速度が低いのは、外歯車の場合、後述するように揺動運動を行なう場合があるので、この揺動運動に対する設備の追従性とカッターの偏摩耗防止のためである。
【0013】
また、本発明に係るギアカップリングの歯面仕上げ方法において、ギアカップリングが外歯車でクラウニングが施工されている場合には、シェービング仕上げ加工を、ギアカップリングを揺動させながら行なうことで、容易に実際の動きに即した歯面に仕上げることができる。ギアカップリングの揺動角度範囲は特に限定されるわけではないが、本発明者の各種の実験によれば、製品設計上の要求最大傾斜角に0〜0.5°の余裕を加算した角度揺動した場合に良好な結果が得られている。基本的には要求角度を満足していれば角度の余裕はなくても良いが、加工公差を考慮した場合、0〜0.5°の余裕をもたせることが好ましい。しかし、余裕が0.5°を超えると反対側の歯面と干渉するので、0.5°以下とする。
【0014】
【実施例】
以下、本発明に係るギアカップリングの歯面仕上げ方法を添付図面に示す実施例に基づいて説明する。
本発明に係るギアカップリングの歯面仕上げ方法は、図1(a)に示したように、旋削加工後の素材を歯切りした後、歯面を例えば高周波焼入れした後に、図1(b)に示した従来のラッピング仕上げに代えて、シェービング仕上げ加工を行うものである。
【0015】
図2は本発明に係るギアカップリングの歯面仕上げ方法に適用するシェービング仕上げ加工の実施例図であるが、本発明では、焼入れした後にシェービング仕上げ加工を行なうことから、従来のシェービング仕上げ加工で使用されているようなセレーションタイプのシェービングカッターでは加工できない。
【0016】
そこで、本発明では、カッター刃面に例えばCBN砥粒を電着したシェービング用カッターを使用して次のようにして行なう。
すなわち、焼入れした後のシェービング仕上げ加工は、図2に示したように、歯面を熱処理された被削歯車1に、焼入れ研削され、さらにCBN砥粒を電着した丸形シェービングカッター2を噛み合わせて回転することにより、被削歯車1の歯面から微量の仕上げ代を削り取るのである。
【0017】
そして、例えば外歯車の場合には、この焼入れした後のシェービング仕上げ加工において、被削歯車1の軸と、シェービングカッター2の軸とに、図2(b)に示したように、例えば製品設計上の要求最大傾斜角に0.5°加算した交差角αをつけて被削歯車1を揺動させながら、噛み合わせた被削歯車1とシェービングカッター2を、歯面に圧力を加えながら回転することにより、シェービングカッター2と被削歯車1の歯面には歯丈方向と軸方向に相対すべりが発生し、CBN砥粒が切れ刃となり、歯面を削り取る。
【0018】
但し、上記したシェービング仕上げ加工においては、被削歯車1とシェービングカッター2は歯面で噛み合っているだけで、両者の軸は機械的に連絡しておらず、互に自由に回転されることから、シェービング仕上げ加工に必要な要素である、歯幅全体を仕上げるための噛み合い点の歯幅方向の移動方向として、例えばカッター或いは歯車を歯車の軸方向に移動させるコンベンショナル・シェービング法を、また、歯面に作用させる圧力を変える方法として、例えばカッターと歯車をバックラッシュなしに噛み合せ、さらに、中心距離を縮めることによって、歯面に必要な切削圧を加えるタイトメッシュ・シェービング法を採用する。
【0019】
上記したように、旋削加工後の素材を歯切りした後、歯面を例えば高周波焼入れした後に、100m/分の加工速度で、かつ、内歯車の場合には500mm/分の、また、外歯車の場合には50mm/分の送り速度で、シェービング仕上げ加工を行う本発明方法を使用して、図3に示したような、鉄道車両用の歯車形撓み軸継手10(歯車の諸元:モジュール4/3、圧力角20°、歯数38、基準ピッチ円直径152mm)の歯面仕上げを行なった場合には、焼入れした後にラッピング仕上げを行なう従来方法に比べて、内歯車では、隣接ピッチ誤差は1〜5μmも、また、面粗度は14〜17μmも、また、歯形誤差は14〜17μmも仕上げ精度が向上した。
【0020】
また、外歯車でも、隣接ピッチ誤差は4〜7μmも、また、面粗度は3.5〜4μmも、また、歯形誤差は15〜19μmも仕上げ精度が向上した。なお、図3中の11は歯車形撓み軸継手を構成する外歯車11aを有する内筒、12は同じく内歯車12aを有する外筒である。
【0021】
加えて、本発明方法によって上記した諸元の歯車の歯面仕上げを行なった場合には、図4に破線で示した正規の歯形に対して、実線で示したように、歯先では片側で36μm狭く、また、歯元では片側で77μm広い歯形形状になり、内歯車12aと外歯車11aの相対インボリュート誤差が少なくなって、歯の高さ中央部で歯当たりが行えるようになる。
【0022】
ちなみに、上記した諸元の歯車の歯面仕上げを、本発明方法によって行なった場合の、図5に示したような傾き角度が5.94°の場合における噛み合い部での歯当たり位置の変化を図6に、また、従来方法によって行なった場合の同様の変化を図7に示す。
【0023】
歯車の歯面仕上げを本発明方法によって行なった場合には、図6(a)〜(c)に示したように、傾き角度が5.94°のように大きな傾き角度を布する場合であっても、何れも噛み合い部では、略歯の高さ中央付近で内歯と外歯が接触していることが判る。一方、歯車の歯面仕上げを従来方法によって行なった場合は、内歯と外歯との接触位置が、図7(a)から図7(c)に順に歯先から歯元へと移動していくのが判る。なお、内歯と外歯の接触部を図6、図7中に斜線で示す。
【0024】
このように、本発明方法によれば、ピッチ誤差、面粗度、歯形誤差の精度向上により、噛み合い部での歯当たり位置が、略歯の高さ中央付近で大きく変化しないので、鉄道車両用ギアカップリングの歯面仕上げに適用した場合には、図8〜図10に示したように、駆動側、装置側の振動加速度や騒音は共に従来方法によって仕上げ加工したものと比べて大幅に低減した。なお、図8〜図10はベンチ試験の結果を示したもので、夫々横軸はカップリング歯車の周速(m/分)を示す。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るギアカップリングの歯面仕上げ方法によれば、ギアカップリングの歯部を焼入れした際に発生する熱処理歪みの矯正が可能となって、ピッチ誤差、面粗度、歯形誤差の精度向上が図れると共に、内歯と外歯が傾いたような悪条件であっても、噛み合い部での歯当たり位置が、略歯の高さ中央で変化せず、振動加速度や騒音を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明方法に係る歯面仕上げ方法のフロー図、(b)は従来方法に係る歯面仕上げ方法のフロー図である。
【図2】本発明に係る歯面仕上げ方法に適用するシェービング仕上げ加工の実施例図で、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図3】本発明に係る歯面仕上げ方法を適用する鉄道車両用歯車形撓み軸継手の一例を断面して示した図である。
【図4】正規の歯形と、本発明に係る歯面仕上げ方法によって仕上げ加工した歯形を比較して示した図である。
【図5】本発明方法によって歯面仕上を行なった場合の、傾き角度が5.94°の場合における噛み合い部での歯当たり位置を平面から見た図である。
【図6】(a)〜(c)は本発明方法によって歯面仕上を行なった場合の、傾き角度が5.94°の場合における噛み合い部での歯当たり位置の変化を順に示した図である。
【図7】(a)〜(c)は従来方法によって歯面仕上を行なった場合の、傾き角度が5.94°の場合における噛み合い部での歯当たり位置の変化を順に示した図である。
【図8】駆動側における歯車形撓み軸継手の回転数の変化に対する振動加速度の変化を、本発明方法による製品(▲印)と従来方法による製品(■印)とで比較した図である。
【図9】歯車装置側における歯車形撓み軸継手の回転数の変化に対する振動加速度の変化を、本発明方法による製品(▲印)と従来方法による製品(■印)とで比較した図である。
【図10】歯車形撓み軸継手の回転数の変化に対する騒音の変化を、本発明方法による製品(▲印)と従来方法による製品(■印)とで比較した図である。
【符号の説明】
1 被削歯車
2 シェービングカッター
Claims (4)
- 加工後の素材を歯切りした後歯面を焼入れ処理し、その後、シェービング用カッターを用いて歯面にシェービング仕上げ加工を施すことを特徴とするギアカップリングの歯面仕上げ方法。
- CBN砥粒を電着したシェービング用カッターを使用し、80〜200m/分の加工速度で、シェービング仕上げ加工を行なうことを特徴とする請求項1記載のギアカップリングの歯面仕上げ方法。
- ギアカップリングが内歯車の場合には200〜800mm/分の送り速度で、また、ギアカップリングが外歯車の場合には20〜100mm/分の送り速度で、シェービング仕上げ加工を行なうことを特徴とする請求項2記載のギアカップリングの歯面仕上げ方法。
- ギアカップリングが外歯車でクラウニングが施工されている場合には、シェービング仕上げ加工を、ギアカップリングを揺動させながら行なうことを特徴とする請求項1〜3の何れか記載のギアカップリングの歯面仕上げ方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002362834A JP2004188563A (ja) | 2002-12-13 | 2002-12-13 | ギアカップリングの歯面仕上げ方法 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011194514A (ja) * | 2010-03-19 | 2011-10-06 | Honda Motor Co Ltd | ヘリカル歯車の加工方法 |
CN103170811A (zh) * | 2013-03-31 | 2013-06-26 | 十堰市郧齿汽车零部件有限公司 | 一种曲轴正时齿轮的制造方法 |
CN103331494A (zh) * | 2013-07-10 | 2013-10-02 | 上海第二工业大学 | 一种相交轴变齿厚齿轮齿形误差分析方法 |
-
2002
- 2002-12-13 JP JP2002362834A patent/JP2004188563A/ja active Pending
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