JP2004188420A - マグネシウム合金溶湯の連続鋳造方法および連続鋳造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】溶湯を良好な流量制御性のもとに、低コストで鋳造できるマグネシウム合金の連続鋳造方法および連続鋳造装置の提供。
【解決手段】マグネシウム合金溶湯4を溶湯保持容器3を経て鋳型内に供給して鋳片とする連続鋳造方法であって、前記溶湯保持容器内の溶湯が溶湯流量制御部21内に流入するための開口部22および流入した溶湯が前記鋳型に流出するための開口部23を有する溶湯流量制御部21を、前記溶湯保持容器の内壁面を通して、溶湯保持容器内に進入または後退させることにより、前記鋳型内に供給する溶湯流量を制御するマグネシウム合金溶湯の連続鋳造方法および連続鋳造装置。
【選択図】 図1
【解決手段】マグネシウム合金溶湯4を溶湯保持容器3を経て鋳型内に供給して鋳片とする連続鋳造方法であって、前記溶湯保持容器内の溶湯が溶湯流量制御部21内に流入するための開口部22および流入した溶湯が前記鋳型に流出するための開口部23を有する溶湯流量制御部21を、前記溶湯保持容器の内壁面を通して、溶湯保持容器内に進入または後退させることにより、前記鋳型内に供給する溶湯流量を制御するマグネシウム合金溶湯の連続鋳造方法および連続鋳造装置。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、連続鋳造用鋳型へのマグネシウム合金溶湯の良好な流量制御のできる連続鋳造方法、および前記流量制御機構を備えた連続鋳造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
マグネシウム合金は、実用合金中で最も比重が小さく、また剛性が高いため、航空機や自動車さらには携帯電話などに広く使用されている。特に、携帯電話などの急速な普及によりマグネシウム合金市場はさらに成長が期待され、安価で高品質のマグネシウム合金の提供が望まれている。
【0003】
マグネシウム合金は高温での反応性が高く、酸化されやすく、また水素を吸収しやすいことから、溶解や連続鋳造時にマグネシウム合金の溶湯が大気雰囲気下にさらされると、酸化が促進して酸化物が生成したり、溶解したマグネシウム合金中に酸素や水素が吸収されて、それらの濃度が著しく上昇することとなる。このようにマグネシウム合金溶湯中の酸素や水素の濃度が上昇すると、連続鋳造後の鋳片には気孔が生成したり、また、鋳片の材料としての機械的性質が低下したりする。
【0004】
従来、マグネシウム合金は、インゴット製造を経た製品、ダイカスト法による精密鋳造製品、または連続鋳造によって半製品を製造した後、熱間圧延などを経て最終製品まで成型し、さらにそれを機械加工により仕上げる方法などが採られてきた。
【0005】
しかしながら、前記の従来法により製造した製品は、多数の工程を経て製造されるため、製造コストが高く、これらが一般品への普及の障害ともなっていた。
【0006】
上述のとおり、製品製造までに多くの工数を要する製造方法が、製品の製作期間および製造コストの面で不利な状況にあることは、従来から周知であり、この点についての抜本的対策が望まれていた。
【0007】
特許文献1には、セラミックス粉末をアルミニウム合金またはマグネシウム合金からなる母相合金に分散させた粒子分散母合金を、前記母相合金組成の溶湯に添加し、10℃/秒以上の冷却速度で冷却凝固させるとともに、80〜200mm/分の引抜速度で引き抜いて連続鋳造する粒子分散合金の製造方法が開示されている。
【0008】
しかし、この方法は、鋳造速度が80〜200mm/分と遅く、生産性向上によるコストダウンを目指すためには限界があり、さらにマグネシウム合金の棒材などの製造に限定された方法である。また、特許文献1には、本発明が解決課題とする鋳型への溶湯の流量制御を行う連続鋳造法に関する記載もない。
【0009】
特許文献2には、浸漬ノズルとストッパーからなる連続鋳造鋳型の湯面レベル制御装置において、浸漬ノズル上端外面は凸形の傾斜面または曲面であり、ストッパー下端部内面は凹形の傾斜面または曲面であり、ストッパーの上下動により、浸漬ノズル上部外面とストッパー下端部内面との隙間の間隔を変更し、溶湯注入量を調整する連続鋳造鋳型の湯面レベル制御装置が開示されている。
また、特許文献3には、溶融金属を収容する容器の底部に設けられた鉛直方向の孔を有するパイプとそのパイプに組み合わされるストッパーを備え、そのストッパーの下部はハイプの孔に差し込まれる栓構造となっており、栓構造の絞り孔の曲率半径および絞り孔の下端の拡径部の曲率半径を、絞り孔直径の2倍以上とする溶湯の注入流量制御装置が開示されている。
さらに、特許文献4には、溶湯金属用容器の底部の溶融金属流出孔に上端部を容器内に突出させて挿着される筒状を呈し、上端部の筒壁に貫通孔または切欠きを設けた浸漬ノズルと、そのノズル孔に下端部を摺動させながら上下動可能に嵌挿したロッド状の流量調整部を備える溶融金属流量制御装置が開示されている。
【0010】
しかし、特許文献2〜4に開示された装置では、いずれも小断面の流量制御を行うにはストッパーロッドなどの径を細くする必要があり、ロッドなどの曲がりや折損が生じやすいという問題がある。したがって、前記の文献に開示された技術を小断面鋳型を使用したマグネシウム合金溶湯の連続鋳造法に適用することは困難である。
【特許文献1】
特開平5―302137号公報(特許請求の範囲、段落[0016])
【特許文献2】
特開平5−7700号公報(特許請求の範囲、段落[0012])
【特許文献3】
特開平7−51837号公報(特許請求の範囲、段落[0005]〜[0007])
【特許文献4】
登録実用新案公報第3019445号公報(実用新案登録請求の範囲、段落[0004])
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、マグネシウム合金溶湯を小断面の鋳型に注入する際に閉塞を起こさず、良好な流量制御性を確保して、低コストで高品質のマグネシウム合金鋳片を得ることができる連続鋳造方法および前記の機能を有する流量制御装置を備えた連続鋳造装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述の課題を達成するために、前記した従来の問題点を踏まえて、スライディングゲート方式およびストッパー方式の流量制御特性を比較検討し、下記の(a)〜(c)の知見を得た。
(a)スライディングゲート方式は、開孔部の断面積を調整することにより良好な流量制御性を確保でき、開孔部断面積を必要最低限まで小さくすることにより、流量の低い領域においても良好な制御特性が得られる反面、注入初期に開孔部が閉塞しやすい。
(b)ストッパー方式は、注入初期における閉塞は起こりにくいが、溶湯中でストッパーロッドを保持する必要性から、ロッドの直径を太くせざるを得ず、制御部の断面積が大きくなって、操作量に対して応答量が過大となり、精密な流量制御は困難である。
【0013】
(c)マグネシウム合金溶湯の小断面ノズルによる給湯においては、ノズルの閉塞防止および流量の良好な制御性が不可欠であり、上記(a)および(b)の双方の長所を兼ね備えた制御方式が必要である。
【0014】
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記の(1)および(2)に示すマグネシウム合金溶湯の連続鋳造方法および連続鋳造装置にある。
【0015】
(1)マグネシウム合金溶湯を溶湯保持容器を経て鋳型内に供給して鋳片とする連続鋳造方法であって、前記溶湯保持容器内の溶湯が溶湯流量制御部内に流入するための開口部および流入した溶湯が前記鋳型に流出するための開口部を有する溶湯流量制御部を、前記溶湯保持容器の内壁面を通して、溶湯保持容器内に進入または後退させることにより、前記鋳型内に供給する溶湯流量を制御するマグネシウム合金溶湯の連続鋳造方法。
【0016】
(2)溶湯保持容器と、溶湯流量制御部と、鋳型とを有するマグネシウム合金溶湯の連続鋳造装置であって、前記溶湯流量制御部は、前記溶湯保持容器内の溶湯が溶湯流量制御部に流入するための開口部および流入した溶湯が前記鋳型に流出するための開口部を有し、前記溶湯保持容器の内壁面を通して容器内に進入および後退可能なように設置されたマグネシウム合金溶湯の連続鋳造装置。
本発明において、「溶湯保持容器の内壁面」とは、溶湯保持容器の底部の内壁面、および溶湯保持容器の溶湯の浴面水準以下に位置する側壁部の内壁面を意味する。
【0017】
【発明の実施の形態】
マグネシウム合金は、前記のとおり、高温での反応性が高く、また、酸素や水素を多量に吸収して鋳造後の製品の機械的特性を劣化させる特性を有することから、高品質で低コストの連続鋳造鋳片を得るためには、浸漬ノズルなどの採用により、大気雰囲気との接触を遮断する方法が採用される。
【0018】
本発明は、さらに、マグネシウム合金溶湯を小断面ノズルを用いて給湯する場合に発生する2つの課題、すなわち良好な流量制御性およびノズルの閉塞防止を以下のとおり解決して、完成された。
【0019】
マグネシウム合金溶湯の連続鋳造においては、次工程の圧延工程における圧下負荷を軽減すべく、薄厚鋳片が要求されることから、断面の小さい、いわゆる小断面流路における溶湯の良好な流量制御性が不可欠である。
流量制御の精度を向上させるためには、流量制御装置を構成する流量制御部の開口部断面積を必要最小限まで小さくすればよいが、そうすると、開口部が閉塞しやすくなり、特に、鋳型への注入初期に合金溶湯が流れなくなる場合が多い。図8は、従来のスライディングゲートを用いた給湯装置の概念図であり、図9は、従来のストッパーを用いた給湯装置の概念図である。
【0020】
スライディングゲート方式は、タンディッシュなどの溶湯保持容器3の底部開口部に設置した流量制御機構2のスライディングゲート9をスライディングゲート駆動装置52により矢印の方向にスライドさせることにより、スライディングゲートの開口部の面積を調整し、溶鋼4の流量を制御して浸漬ノズル1に流す構造となっている。
【0021】
一方、従来のストッパー方式では、溶湯流量制御機構2は、溶湯保持容器3の底部開口部に、先端部が嵌り込んで開口部を閉塞することのできるストッパー8を、溶湯保持容器の上部から載置した構造となっている。ストッパーをストッパー駆動装置51により矢印の方向に上下させることにより、ストッパー先端部と開口部との隙間の大きさを調整し、溶鋼4の流量を調整して浸漬ノズル1に流す。
【0022】
上記のスライディングゲート方式およびストッパー方式は、何れも下記の理由により、マグネシウム合金溶湯の連続鋳造には適用できない。
すなわち、スライディングゲート方式は、ゲート開口部の面積を調整することにより良好な流量制御性が得られ、開口部面積を必要最低限まで縮小させることにより、低流量の領域においても良好な制御特性が得られるが、その反面、注入初期に開口部が閉塞しやすい。
一方、ストッパー方式は、注入初期における閉塞は起こりにくいが、高温の溶湯中でストッパーロッドを保持する必要のあることから、ロッドの直径を太くせざるを得ず、制御部の断面積が大きくなり、したがって、精密な流量制御は困難である。
そこで、本発明者らは、溶湯保持容器内に上記の両方式の長所を兼ね備えた流量制御部を挿入することにより、流量制御を行う方法を想到した。以下に、溶湯保持容器の底部から容器内部に流量制御部を進入および後退させて流量制御を行う例について説明する。
【0023】
図1は、本発明のマグネシウム合金溶湯の流量制御方法および鋳型への溶湯注入時の給湯装置を示す図であり、図2は、同じく、鋳型への溶湯注入停止時の給湯装置を示す図である。また、図3は、図1におけるA1−A2部矢視方向の断面図である。
マグネシウム溶湯保持容器3の底部32の開口部の下部には、溶湯流量制御機構2のケーシング24が取り付けられ、ケーシング内には上下に作動可能な溶湯流量制御部21が組み込まれている。溶湯流量制御部21は、マグネシウム溶湯が流入するための縦長の形状を有する開口部22、管状通路25および同溶湯が浸漬ノズル1を経て鋳型に流出するための開口部23を有し、開口部23は浸漬ノズル1と連結されている。
溶湯流量制御部は、流量制御部駆動装置5により、マグネシウム溶湯保持容器底部の内壁面を通して、溶湯保持容器内に進入(上向きに作動)または後退(下向きに作動)させることができる。溶湯流量制御部が溶湯保持容器内に進入した場合には、図1に示すとおり、開口部22の上部がマグネシウム溶湯保持容器の内壁面よりも溶湯保持容器内部側(高い位置)に突出するため、開口部22が保持容器内部に露出し、マグネシウム合金溶湯4がその開口部から溶湯流量制御部内に流入する。流入したマグネシウム合金溶湯流41は、溶湯流量制御部内の管状通路25を経て開口部23に達し、マグネシウム合金溶湯の流出流42となってさらに浸漬ノズルを経て鋳型に注入される。
【0024】
溶湯流量制御部が溶湯保持容器内から後退した場合には、図2に示されるとおり、開口部22の上部がマグネシウム溶湯保持容器の内壁面よりも溶湯保持容器外部側(低い位置)に沈み込むため、保持容器内部と通じた開口部はなくなり、マグネシウム溶湯の溶湯流量制御部内への流入は停止し、鋳型への注入流は停止する。
溶湯流量の制御は、溶湯保持容器内面から容器内部への溶湯流量制御部の進入長さを制御して、溶湯保持容器内部への開口部22の露出面積を調整することにより行う。
【0025】
なお、上記の説明では、溶湯保持容器の底部から容器内部に溶湯流量制御部を挿入する例について説明したが、連続鋳造設備の形式または設備の取り合いに応じて、溶湯保持容器の側壁部から溶湯流量制御部を挿入するようにしてもよい。
【0026】
また、溶湯流量制御部を容器内部に挿入する方向は、挿入内壁面に対して略垂直とするのが好ましい。溶湯保持容器の壁面に開口部を設ける際の施工、溶湯流量制御部駆動装置の据付けおよびレイアウト、ならびに設備の操作性および維持管理の面で有利だからである。
【0027】
【実施例】
本発明の効果を確認するため、図4に示す連続鋳造装置を用いてマグネシウム合金溶湯の鋳造試験を行った。なお、図4の装置において、給湯装置の部分については、前記の図1〜3にて説明したとおりである。
【0028】
図4において、溶湯保持容器3内のマグネシウム合金溶湯4は、溶湯流量制御機構2により流量を制御され、浸漬ノズル1を経て連続鋳造鋳型6に注入された。マグネシウム合金溶湯の流量制御は、流量制御部駆動装置5により溶湯流量制御機構2内の溶湯流量制御部21(図1〜図3にて図示)の溶湯保持容器内への進入深さを、図4中の矢印Aで示すように制御することにより行った。鋳片と鋳型との間の摩擦を軽減して焼き付きを防止するために、鋳型振動装置7により鋳型を、図4中の矢印Bに示すように上下に振動させながら合金溶湯を注入し、鋳型下部から凝固殻の部分をピンチロール10により引き抜いて鋳片を得た。
〔試験条件〕
1)マグネシウム合金:Mg−3%Al−1%Zn(融点:632℃)、
2)注湯温度(保持容器内温度):750℃、
3)雰囲気:Arガス雰囲気、
4)鋳型サイズ:幅700mm×厚さ10mm×高さ300mm、
5)鋳型材質:SUS430、
6)浸漬ノズル形状:胴部(上部)断面は直径20mmの円形、先端部(下部)断面は幅(鋳片幅方向)55mm、厚さ(鋳片厚さ方向)7mmの偏平形状。
【0029】
図5は、本発明の連続鋳造装置に用いた浸漬ノズルの形状を示す図であり、(a)は偏平面を含む面による切断面を表し、(b)は偏平面と垂直な面による切断面を表す。鋳片厚さ方向の鋳型の厚さが10mmと小さいことから、浸漬ノズル先端部の断面形状は、幅(鋳片幅方向)55mm、厚さ(鋳片厚さ方向)7mmのものを用いた。
7)浸漬ノズルの材質:SUS430、
8)浸漬ノズルの加熱温度:700℃、
9)引き抜き速度:0.5m/min、
10)引き抜き条件:連続引き抜き、
11)溶湯流量制御部の溶湯流入用開口部の形状:縦長さ30mm×横幅5mm、および縦長さ30mm×横幅7mm。
【0030】
図6は、本発明の溶湯流量制御部における溶湯流入用開口部の形状例を示す図であり、(a)は開口部の形状が、縦長さ30mm×横幅5mmの例を、(b)は縦長さ30mm×横幅7mmの例をそれぞれ表す。
【0031】
開口部の形状は、(縦長さ/横幅)の比が大きい方が、流量の制御精度は良好となるが、逆に開口部が閉塞する恐れも高くなるため、両者のバランスにより決定する必要がある。試験では、上記のとおり、縦長さが30mm、横幅が5mmの形状のもの、および縦長さが30mm、横幅が7mmの形状のものを用いた。
【0032】
試験は、本発明例であって、流量制御部の開口部形状が30mm×5mmの試験1、同じく開口部形状が30mm×7mmの試験2、流量制御に従来のストッパーを用いた試験3、および同じく従来のスライディングゲートを用いた試験4について行った。試験3および試験4は、比較例としての試験である。
表1に試験結果を示す。
【0033】
【表1】
【0034】
試験結果の評価は、流量制御機構の「開口率」および「平均湯面変動率」により評価した。
【0035】
開口率(%)とは、1週間当たりのマグネシウム合金溶湯の全鋳造チャージ数に対して、鋳型への合金溶湯注入開始時に開口できたチャージ数の割合を百分率にて表示した値である。
平均湯面変動幅(±mm)とは、1チャージ内での平均湯面変動幅を1週間当たりの全鋳造チャージについて平均した値である。
【0036】
表1に示された結果から、本発明例の試験1および試験2は、比較例の試験3および試験4に比べて、開口率が高く、また平均湯面変動幅は低く抑えられていることがわかる。したがって、本発明の実施により、連続鋳造操業の稼動率向上と操業の安定化が図られ、さらに湯面変動幅の減少により鋳片表面品質の向上も達成される。
【0037】
さらに、本発明例の試験1と試験2とを比較すると以下のとおりである。
【0038】
図7は、本発明例の試験1と試験2について、溶湯保持容器内への流量制御部開口部の進入深さと開口断面積との関係を表した図である。
【0039】
試験2では、開口部の閉塞を防止する観点から、試験1に比して、開口部の横幅を大きくすることにより開口断面積を増大させたが、開口率は、試験1の場合と差はなかった。また、試験2では、平均湯面変動幅がわずかに増大したが、流量制御の面では全く問題とならない微小な量であった。
【0040】
なお、本発明の方法および装置は、浸漬ノズルの胴部内径が10〜30mmである浸漬ノズルを用いる場合に好適である。このような内径の細い浸漬ノズルは、例えば、鋳片厚さ方向の鋳型厚さが10〜100mm程度の小断面鋳型を対象とした使用に適している。また、鋳型厚さが10mm程度と極く薄い厚さの場合は、浸漬ノズルの先端部を前記図5に示すとおり、極端な偏平形状とし、ノズル先端部の厚さを鋳型厚さよりもさらに薄くすることにより、本発明の連続鋳造方法を実施することができる。
【0041】
【発明の効果】
本発明の連続鋳造方法によれば、マグネシウム合金溶湯を、閉塞を起こさずに良好な流量制御性のもとに、小断面の鋳型に注入することができるので、低コストで高品質のマグネシウム合金鋳片を製造できる。また、本発明の流量制御装置を備えた連続鋳造装置は、上記の鋳造方法を実施するのに好適であり、本発明の方法および装置は、マグネシウム合金鋳片の製造分野の発展に大きく寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のマグネシウム合金溶湯の流量制御方法および鋳型への溶湯注入時の給湯装置を示す図である。
【図2】
本発明のマグネシウム合金溶湯の流量制御方法および鋳型への溶湯注入停止時
の給湯装置を示す図である。
【図3】
図1におけるA1−A2部矢視方向の断面図である。
【図4】
本発明の連続鋳造装置の全体構成を示す概念図である。
【図5】
本発明の連続鋳造装置に用いる浸漬ノズルの形状を示す図であり、(a)は偏
平面を含む面による切断面を表し、(b)は偏平面と垂直な面による切断面を表
す。
【図6】
本発明の溶湯流量制御部における溶湯流入用開口部の形状例を示す図であり、
(a)は開口部の形状が、縦長さ30mm×横幅5mmの例を表し、(b)は縦
長さ30mm×横幅7mmの例を表す。
【図7】
溶湯保持容器内への本発明の流量制御部開口部の進入深さと開口断面積との関
係を表す図である。
【図8】
従来のスライディングゲートを用いた給湯装置の概念図である。
【図9】
従来のストッパーを用いた給湯装置の概念図である。
【符号の説明】
1:浸漬ノズル、
2:溶湯流量制御機構、
21:溶湯流量制御部、
22:開口部、
23:開口部、
24:溶湯流量制御機構のケーシング、
25:管状通路、
3:溶湯保持容器、
31:溶湯保持容器側壁部、
32:溶湯保持容器底部、
4:マグネシウム合金溶湯、溶鋼、
41:溶湯流量制御部へのマグネシウム合金溶湯の流入流、
42:溶湯流量制御部からのマグネシウム合金溶湯の流出流、
5:流量制御部駆動装置、
51:ストッパー駆動装置、
52:スライディングゲート駆動装置、
6:連続鋳造鋳型、
7:鋳型振動装置、
8:ストッパー、
9:スライディングゲート、
10:ピンチロール。
【発明の属する技術分野】
本発明は、連続鋳造用鋳型へのマグネシウム合金溶湯の良好な流量制御のできる連続鋳造方法、および前記流量制御機構を備えた連続鋳造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
マグネシウム合金は、実用合金中で最も比重が小さく、また剛性が高いため、航空機や自動車さらには携帯電話などに広く使用されている。特に、携帯電話などの急速な普及によりマグネシウム合金市場はさらに成長が期待され、安価で高品質のマグネシウム合金の提供が望まれている。
【0003】
マグネシウム合金は高温での反応性が高く、酸化されやすく、また水素を吸収しやすいことから、溶解や連続鋳造時にマグネシウム合金の溶湯が大気雰囲気下にさらされると、酸化が促進して酸化物が生成したり、溶解したマグネシウム合金中に酸素や水素が吸収されて、それらの濃度が著しく上昇することとなる。このようにマグネシウム合金溶湯中の酸素や水素の濃度が上昇すると、連続鋳造後の鋳片には気孔が生成したり、また、鋳片の材料としての機械的性質が低下したりする。
【0004】
従来、マグネシウム合金は、インゴット製造を経た製品、ダイカスト法による精密鋳造製品、または連続鋳造によって半製品を製造した後、熱間圧延などを経て最終製品まで成型し、さらにそれを機械加工により仕上げる方法などが採られてきた。
【0005】
しかしながら、前記の従来法により製造した製品は、多数の工程を経て製造されるため、製造コストが高く、これらが一般品への普及の障害ともなっていた。
【0006】
上述のとおり、製品製造までに多くの工数を要する製造方法が、製品の製作期間および製造コストの面で不利な状況にあることは、従来から周知であり、この点についての抜本的対策が望まれていた。
【0007】
特許文献1には、セラミックス粉末をアルミニウム合金またはマグネシウム合金からなる母相合金に分散させた粒子分散母合金を、前記母相合金組成の溶湯に添加し、10℃/秒以上の冷却速度で冷却凝固させるとともに、80〜200mm/分の引抜速度で引き抜いて連続鋳造する粒子分散合金の製造方法が開示されている。
【0008】
しかし、この方法は、鋳造速度が80〜200mm/分と遅く、生産性向上によるコストダウンを目指すためには限界があり、さらにマグネシウム合金の棒材などの製造に限定された方法である。また、特許文献1には、本発明が解決課題とする鋳型への溶湯の流量制御を行う連続鋳造法に関する記載もない。
【0009】
特許文献2には、浸漬ノズルとストッパーからなる連続鋳造鋳型の湯面レベル制御装置において、浸漬ノズル上端外面は凸形の傾斜面または曲面であり、ストッパー下端部内面は凹形の傾斜面または曲面であり、ストッパーの上下動により、浸漬ノズル上部外面とストッパー下端部内面との隙間の間隔を変更し、溶湯注入量を調整する連続鋳造鋳型の湯面レベル制御装置が開示されている。
また、特許文献3には、溶融金属を収容する容器の底部に設けられた鉛直方向の孔を有するパイプとそのパイプに組み合わされるストッパーを備え、そのストッパーの下部はハイプの孔に差し込まれる栓構造となっており、栓構造の絞り孔の曲率半径および絞り孔の下端の拡径部の曲率半径を、絞り孔直径の2倍以上とする溶湯の注入流量制御装置が開示されている。
さらに、特許文献4には、溶湯金属用容器の底部の溶融金属流出孔に上端部を容器内に突出させて挿着される筒状を呈し、上端部の筒壁に貫通孔または切欠きを設けた浸漬ノズルと、そのノズル孔に下端部を摺動させながら上下動可能に嵌挿したロッド状の流量調整部を備える溶融金属流量制御装置が開示されている。
【0010】
しかし、特許文献2〜4に開示された装置では、いずれも小断面の流量制御を行うにはストッパーロッドなどの径を細くする必要があり、ロッドなどの曲がりや折損が生じやすいという問題がある。したがって、前記の文献に開示された技術を小断面鋳型を使用したマグネシウム合金溶湯の連続鋳造法に適用することは困難である。
【特許文献1】
特開平5―302137号公報(特許請求の範囲、段落[0016])
【特許文献2】
特開平5−7700号公報(特許請求の範囲、段落[0012])
【特許文献3】
特開平7−51837号公報(特許請求の範囲、段落[0005]〜[0007])
【特許文献4】
登録実用新案公報第3019445号公報(実用新案登録請求の範囲、段落[0004])
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、マグネシウム合金溶湯を小断面の鋳型に注入する際に閉塞を起こさず、良好な流量制御性を確保して、低コストで高品質のマグネシウム合金鋳片を得ることができる連続鋳造方法および前記の機能を有する流量制御装置を備えた連続鋳造装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述の課題を達成するために、前記した従来の問題点を踏まえて、スライディングゲート方式およびストッパー方式の流量制御特性を比較検討し、下記の(a)〜(c)の知見を得た。
(a)スライディングゲート方式は、開孔部の断面積を調整することにより良好な流量制御性を確保でき、開孔部断面積を必要最低限まで小さくすることにより、流量の低い領域においても良好な制御特性が得られる反面、注入初期に開孔部が閉塞しやすい。
(b)ストッパー方式は、注入初期における閉塞は起こりにくいが、溶湯中でストッパーロッドを保持する必要性から、ロッドの直径を太くせざるを得ず、制御部の断面積が大きくなって、操作量に対して応答量が過大となり、精密な流量制御は困難である。
【0013】
(c)マグネシウム合金溶湯の小断面ノズルによる給湯においては、ノズルの閉塞防止および流量の良好な制御性が不可欠であり、上記(a)および(b)の双方の長所を兼ね備えた制御方式が必要である。
【0014】
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記の(1)および(2)に示すマグネシウム合金溶湯の連続鋳造方法および連続鋳造装置にある。
【0015】
(1)マグネシウム合金溶湯を溶湯保持容器を経て鋳型内に供給して鋳片とする連続鋳造方法であって、前記溶湯保持容器内の溶湯が溶湯流量制御部内に流入するための開口部および流入した溶湯が前記鋳型に流出するための開口部を有する溶湯流量制御部を、前記溶湯保持容器の内壁面を通して、溶湯保持容器内に進入または後退させることにより、前記鋳型内に供給する溶湯流量を制御するマグネシウム合金溶湯の連続鋳造方法。
【0016】
(2)溶湯保持容器と、溶湯流量制御部と、鋳型とを有するマグネシウム合金溶湯の連続鋳造装置であって、前記溶湯流量制御部は、前記溶湯保持容器内の溶湯が溶湯流量制御部に流入するための開口部および流入した溶湯が前記鋳型に流出するための開口部を有し、前記溶湯保持容器の内壁面を通して容器内に進入および後退可能なように設置されたマグネシウム合金溶湯の連続鋳造装置。
本発明において、「溶湯保持容器の内壁面」とは、溶湯保持容器の底部の内壁面、および溶湯保持容器の溶湯の浴面水準以下に位置する側壁部の内壁面を意味する。
【0017】
【発明の実施の形態】
マグネシウム合金は、前記のとおり、高温での反応性が高く、また、酸素や水素を多量に吸収して鋳造後の製品の機械的特性を劣化させる特性を有することから、高品質で低コストの連続鋳造鋳片を得るためには、浸漬ノズルなどの採用により、大気雰囲気との接触を遮断する方法が採用される。
【0018】
本発明は、さらに、マグネシウム合金溶湯を小断面ノズルを用いて給湯する場合に発生する2つの課題、すなわち良好な流量制御性およびノズルの閉塞防止を以下のとおり解決して、完成された。
【0019】
マグネシウム合金溶湯の連続鋳造においては、次工程の圧延工程における圧下負荷を軽減すべく、薄厚鋳片が要求されることから、断面の小さい、いわゆる小断面流路における溶湯の良好な流量制御性が不可欠である。
流量制御の精度を向上させるためには、流量制御装置を構成する流量制御部の開口部断面積を必要最小限まで小さくすればよいが、そうすると、開口部が閉塞しやすくなり、特に、鋳型への注入初期に合金溶湯が流れなくなる場合が多い。図8は、従来のスライディングゲートを用いた給湯装置の概念図であり、図9は、従来のストッパーを用いた給湯装置の概念図である。
【0020】
スライディングゲート方式は、タンディッシュなどの溶湯保持容器3の底部開口部に設置した流量制御機構2のスライディングゲート9をスライディングゲート駆動装置52により矢印の方向にスライドさせることにより、スライディングゲートの開口部の面積を調整し、溶鋼4の流量を制御して浸漬ノズル1に流す構造となっている。
【0021】
一方、従来のストッパー方式では、溶湯流量制御機構2は、溶湯保持容器3の底部開口部に、先端部が嵌り込んで開口部を閉塞することのできるストッパー8を、溶湯保持容器の上部から載置した構造となっている。ストッパーをストッパー駆動装置51により矢印の方向に上下させることにより、ストッパー先端部と開口部との隙間の大きさを調整し、溶鋼4の流量を調整して浸漬ノズル1に流す。
【0022】
上記のスライディングゲート方式およびストッパー方式は、何れも下記の理由により、マグネシウム合金溶湯の連続鋳造には適用できない。
すなわち、スライディングゲート方式は、ゲート開口部の面積を調整することにより良好な流量制御性が得られ、開口部面積を必要最低限まで縮小させることにより、低流量の領域においても良好な制御特性が得られるが、その反面、注入初期に開口部が閉塞しやすい。
一方、ストッパー方式は、注入初期における閉塞は起こりにくいが、高温の溶湯中でストッパーロッドを保持する必要のあることから、ロッドの直径を太くせざるを得ず、制御部の断面積が大きくなり、したがって、精密な流量制御は困難である。
そこで、本発明者らは、溶湯保持容器内に上記の両方式の長所を兼ね備えた流量制御部を挿入することにより、流量制御を行う方法を想到した。以下に、溶湯保持容器の底部から容器内部に流量制御部を進入および後退させて流量制御を行う例について説明する。
【0023】
図1は、本発明のマグネシウム合金溶湯の流量制御方法および鋳型への溶湯注入時の給湯装置を示す図であり、図2は、同じく、鋳型への溶湯注入停止時の給湯装置を示す図である。また、図3は、図1におけるA1−A2部矢視方向の断面図である。
マグネシウム溶湯保持容器3の底部32の開口部の下部には、溶湯流量制御機構2のケーシング24が取り付けられ、ケーシング内には上下に作動可能な溶湯流量制御部21が組み込まれている。溶湯流量制御部21は、マグネシウム溶湯が流入するための縦長の形状を有する開口部22、管状通路25および同溶湯が浸漬ノズル1を経て鋳型に流出するための開口部23を有し、開口部23は浸漬ノズル1と連結されている。
溶湯流量制御部は、流量制御部駆動装置5により、マグネシウム溶湯保持容器底部の内壁面を通して、溶湯保持容器内に進入(上向きに作動)または後退(下向きに作動)させることができる。溶湯流量制御部が溶湯保持容器内に進入した場合には、図1に示すとおり、開口部22の上部がマグネシウム溶湯保持容器の内壁面よりも溶湯保持容器内部側(高い位置)に突出するため、開口部22が保持容器内部に露出し、マグネシウム合金溶湯4がその開口部から溶湯流量制御部内に流入する。流入したマグネシウム合金溶湯流41は、溶湯流量制御部内の管状通路25を経て開口部23に達し、マグネシウム合金溶湯の流出流42となってさらに浸漬ノズルを経て鋳型に注入される。
【0024】
溶湯流量制御部が溶湯保持容器内から後退した場合には、図2に示されるとおり、開口部22の上部がマグネシウム溶湯保持容器の内壁面よりも溶湯保持容器外部側(低い位置)に沈み込むため、保持容器内部と通じた開口部はなくなり、マグネシウム溶湯の溶湯流量制御部内への流入は停止し、鋳型への注入流は停止する。
溶湯流量の制御は、溶湯保持容器内面から容器内部への溶湯流量制御部の進入長さを制御して、溶湯保持容器内部への開口部22の露出面積を調整することにより行う。
【0025】
なお、上記の説明では、溶湯保持容器の底部から容器内部に溶湯流量制御部を挿入する例について説明したが、連続鋳造設備の形式または設備の取り合いに応じて、溶湯保持容器の側壁部から溶湯流量制御部を挿入するようにしてもよい。
【0026】
また、溶湯流量制御部を容器内部に挿入する方向は、挿入内壁面に対して略垂直とするのが好ましい。溶湯保持容器の壁面に開口部を設ける際の施工、溶湯流量制御部駆動装置の据付けおよびレイアウト、ならびに設備の操作性および維持管理の面で有利だからである。
【0027】
【実施例】
本発明の効果を確認するため、図4に示す連続鋳造装置を用いてマグネシウム合金溶湯の鋳造試験を行った。なお、図4の装置において、給湯装置の部分については、前記の図1〜3にて説明したとおりである。
【0028】
図4において、溶湯保持容器3内のマグネシウム合金溶湯4は、溶湯流量制御機構2により流量を制御され、浸漬ノズル1を経て連続鋳造鋳型6に注入された。マグネシウム合金溶湯の流量制御は、流量制御部駆動装置5により溶湯流量制御機構2内の溶湯流量制御部21(図1〜図3にて図示)の溶湯保持容器内への進入深さを、図4中の矢印Aで示すように制御することにより行った。鋳片と鋳型との間の摩擦を軽減して焼き付きを防止するために、鋳型振動装置7により鋳型を、図4中の矢印Bに示すように上下に振動させながら合金溶湯を注入し、鋳型下部から凝固殻の部分をピンチロール10により引き抜いて鋳片を得た。
〔試験条件〕
1)マグネシウム合金:Mg−3%Al−1%Zn(融点:632℃)、
2)注湯温度(保持容器内温度):750℃、
3)雰囲気:Arガス雰囲気、
4)鋳型サイズ:幅700mm×厚さ10mm×高さ300mm、
5)鋳型材質:SUS430、
6)浸漬ノズル形状:胴部(上部)断面は直径20mmの円形、先端部(下部)断面は幅(鋳片幅方向)55mm、厚さ(鋳片厚さ方向)7mmの偏平形状。
【0029】
図5は、本発明の連続鋳造装置に用いた浸漬ノズルの形状を示す図であり、(a)は偏平面を含む面による切断面を表し、(b)は偏平面と垂直な面による切断面を表す。鋳片厚さ方向の鋳型の厚さが10mmと小さいことから、浸漬ノズル先端部の断面形状は、幅(鋳片幅方向)55mm、厚さ(鋳片厚さ方向)7mmのものを用いた。
7)浸漬ノズルの材質:SUS430、
8)浸漬ノズルの加熱温度:700℃、
9)引き抜き速度:0.5m/min、
10)引き抜き条件:連続引き抜き、
11)溶湯流量制御部の溶湯流入用開口部の形状:縦長さ30mm×横幅5mm、および縦長さ30mm×横幅7mm。
【0030】
図6は、本発明の溶湯流量制御部における溶湯流入用開口部の形状例を示す図であり、(a)は開口部の形状が、縦長さ30mm×横幅5mmの例を、(b)は縦長さ30mm×横幅7mmの例をそれぞれ表す。
【0031】
開口部の形状は、(縦長さ/横幅)の比が大きい方が、流量の制御精度は良好となるが、逆に開口部が閉塞する恐れも高くなるため、両者のバランスにより決定する必要がある。試験では、上記のとおり、縦長さが30mm、横幅が5mmの形状のもの、および縦長さが30mm、横幅が7mmの形状のものを用いた。
【0032】
試験は、本発明例であって、流量制御部の開口部形状が30mm×5mmの試験1、同じく開口部形状が30mm×7mmの試験2、流量制御に従来のストッパーを用いた試験3、および同じく従来のスライディングゲートを用いた試験4について行った。試験3および試験4は、比較例としての試験である。
表1に試験結果を示す。
【0033】
【表1】
【0034】
試験結果の評価は、流量制御機構の「開口率」および「平均湯面変動率」により評価した。
【0035】
開口率(%)とは、1週間当たりのマグネシウム合金溶湯の全鋳造チャージ数に対して、鋳型への合金溶湯注入開始時に開口できたチャージ数の割合を百分率にて表示した値である。
平均湯面変動幅(±mm)とは、1チャージ内での平均湯面変動幅を1週間当たりの全鋳造チャージについて平均した値である。
【0036】
表1に示された結果から、本発明例の試験1および試験2は、比較例の試験3および試験4に比べて、開口率が高く、また平均湯面変動幅は低く抑えられていることがわかる。したがって、本発明の実施により、連続鋳造操業の稼動率向上と操業の安定化が図られ、さらに湯面変動幅の減少により鋳片表面品質の向上も達成される。
【0037】
さらに、本発明例の試験1と試験2とを比較すると以下のとおりである。
【0038】
図7は、本発明例の試験1と試験2について、溶湯保持容器内への流量制御部開口部の進入深さと開口断面積との関係を表した図である。
【0039】
試験2では、開口部の閉塞を防止する観点から、試験1に比して、開口部の横幅を大きくすることにより開口断面積を増大させたが、開口率は、試験1の場合と差はなかった。また、試験2では、平均湯面変動幅がわずかに増大したが、流量制御の面では全く問題とならない微小な量であった。
【0040】
なお、本発明の方法および装置は、浸漬ノズルの胴部内径が10〜30mmである浸漬ノズルを用いる場合に好適である。このような内径の細い浸漬ノズルは、例えば、鋳片厚さ方向の鋳型厚さが10〜100mm程度の小断面鋳型を対象とした使用に適している。また、鋳型厚さが10mm程度と極く薄い厚さの場合は、浸漬ノズルの先端部を前記図5に示すとおり、極端な偏平形状とし、ノズル先端部の厚さを鋳型厚さよりもさらに薄くすることにより、本発明の連続鋳造方法を実施することができる。
【0041】
【発明の効果】
本発明の連続鋳造方法によれば、マグネシウム合金溶湯を、閉塞を起こさずに良好な流量制御性のもとに、小断面の鋳型に注入することができるので、低コストで高品質のマグネシウム合金鋳片を製造できる。また、本発明の流量制御装置を備えた連続鋳造装置は、上記の鋳造方法を実施するのに好適であり、本発明の方法および装置は、マグネシウム合金鋳片の製造分野の発展に大きく寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のマグネシウム合金溶湯の流量制御方法および鋳型への溶湯注入時の給湯装置を示す図である。
【図2】
本発明のマグネシウム合金溶湯の流量制御方法および鋳型への溶湯注入停止時
の給湯装置を示す図である。
【図3】
図1におけるA1−A2部矢視方向の断面図である。
【図4】
本発明の連続鋳造装置の全体構成を示す概念図である。
【図5】
本発明の連続鋳造装置に用いる浸漬ノズルの形状を示す図であり、(a)は偏
平面を含む面による切断面を表し、(b)は偏平面と垂直な面による切断面を表
す。
【図6】
本発明の溶湯流量制御部における溶湯流入用開口部の形状例を示す図であり、
(a)は開口部の形状が、縦長さ30mm×横幅5mmの例を表し、(b)は縦
長さ30mm×横幅7mmの例を表す。
【図7】
溶湯保持容器内への本発明の流量制御部開口部の進入深さと開口断面積との関
係を表す図である。
【図8】
従来のスライディングゲートを用いた給湯装置の概念図である。
【図9】
従来のストッパーを用いた給湯装置の概念図である。
【符号の説明】
1:浸漬ノズル、
2:溶湯流量制御機構、
21:溶湯流量制御部、
22:開口部、
23:開口部、
24:溶湯流量制御機構のケーシング、
25:管状通路、
3:溶湯保持容器、
31:溶湯保持容器側壁部、
32:溶湯保持容器底部、
4:マグネシウム合金溶湯、溶鋼、
41:溶湯流量制御部へのマグネシウム合金溶湯の流入流、
42:溶湯流量制御部からのマグネシウム合金溶湯の流出流、
5:流量制御部駆動装置、
51:ストッパー駆動装置、
52:スライディングゲート駆動装置、
6:連続鋳造鋳型、
7:鋳型振動装置、
8:ストッパー、
9:スライディングゲート、
10:ピンチロール。
Claims (2)
- マグネシウム合金溶湯を溶湯保持容器を経て鋳型内に供給して鋳片とする連続鋳造方法であって、前記溶湯保持容器内の溶湯が溶湯流量制御部内に流入するための開口部および流入した溶湯が前記鋳型に流出するための開口部を有する溶湯流量制御部を、前記溶湯保持容器の内壁面を通して、溶湯保持容器内に進入または後退させることにより、前記鋳型内に供給する溶湯流量を制御することを特徴とするマグネシウム合金溶湯の連続鋳造方法。
- 溶湯保持容器と、溶湯流量制御部と、鋳型とを有するマグネシウム合金溶湯の連続鋳造装置であって、前記溶湯流量制御部は、前記溶湯保持容器内の溶湯が溶湯流量制御部に流入するための開口部および流入した溶湯が前記鋳型に流出するための開口部を有し、前記溶湯保持容器の内壁面を通して容器内に進入および後退可能なように設置されたことを特徴とするマグネシウム合金溶湯の連続鋳造装置。
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JP2002355324A JP2004188420A (ja) | 2002-12-06 | 2002-12-06 | マグネシウム合金溶湯の連続鋳造方法および連続鋳造装置 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2006123434A1 (ja) * | 2005-05-19 | 2006-11-23 | Seiko Idea Center Co., Ltd. | 金属スラリー製造方法、金属スラリー製造装置、鋳塊製造方法および鋳塊製造装置 |
KR100830006B1 (ko) * | 2006-04-06 | 2008-05-15 | 세이코 아이디어 센터 가부시키가이샤 | 금속 슬러리 제조방법, 금속 슬러리 제조장치, 주괴제조방법 및 주괴 제조장치 |
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2002
- 2002-12-06 JP JP2002355324A patent/JP2004188420A/ja not_active Withdrawn
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