JP2004187258A - 高周波伝送線路及び高周波アンテナ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】材質、曲率が異なる誘電体基盤において、容易に信号の伝送を行う高周波回路を提供する。
【解決手段】第1の誘電体基板2と、第2の誘電体基板4と、第1の誘電体基板2と第2の誘電体基板4との間に設けられている気体層7とが備えられており、第1の誘電体基板2の、気体層7とは反対側の面上にはサスペンデッドマイクロストリップ線路の信号導体1が設けられ、第2の誘電体基板4の、気体層7側の面上にはグランド導体4とスロット部5とが設けられている。
【選択図】図1
【解決手段】第1の誘電体基板2と、第2の誘電体基板4と、第1の誘電体基板2と第2の誘電体基板4との間に設けられている気体層7とが備えられており、第1の誘電体基板2の、気体層7とは反対側の面上にはサスペンデッドマイクロストリップ線路の信号導体1が設けられ、第2の誘電体基板4の、気体層7側の面上にはグランド導体4とスロット部5とが設けられている。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロ波又はミリ波等の通信に適する高周波伝送線路及び高周波アンテナ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
複数の誘電体基板間で信号を伝送する場合、電磁結合を用いて簡便に行う技術が提案されている。例えば、特許文献1によって、図2(a)(断面図)及び図2(b)(平面図)に示すとおり、第1の誘電体基板21A上には中心導体22Aが設けられ、第1の誘電体基板21Aと第2の誘電体基板21Bとの間にはグランド層23とスロット孔24とが設けられ、グランド層23とは反対側の、第2の誘電体基板21Bの面上には中心導体22Bが設けられている高周波伝送線路の結合構造が提案されている。
【0003】
特許文献1に開示されている構造は、2枚の誘電体基板が密着接合している。しかし、2枚の誘電体基板の材質が異なる場合、熱膨張係数を一致させなければならず、製作しにくい問題があった。また、2枚の誘電体基板の曲率が異なる場合、密着接合そのものができない問題があった。さらに、2枚の誘電体基板の間に部品又は部品の一部を存在させることができない問題があった。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−163713号公報(特許請求の範囲、図1)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術の有する前述の欠点を解消する高周波伝送線路の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、第1の誘電体基板と、第2の誘電体基板と、第1の誘電体基板と第2の誘電体基板との間に設けられている気体層とが備えられており、
第1の誘電体基板の、上記気体層とは反対側の面上にはサスペンデッドマイクロストリップ線路の信号導体が設けられており、
第2の誘電体基板の、上記気体層側の面上にはグランド導体とスロット部とが設けられていることを特徴とする高周波伝送線路を提供する。
【0007】
また、本発明は、第1の誘電体基板と、第2の誘電体基板と、第1の誘電体基板と第2の誘電体基板との間に設けられている気体層とが備えられており、
第1の誘電体基板の、上記気体層側の面上にはインバーテッドマイクロストリップ線路の信号導体が設けられており、
第2の誘電体基板の、上記気体層側の面上にはグランド導体とスロット部とが設けられていることを特徴とする高周波伝送線路を提供する。
【0008】
また、自動車の窓ガラス板に平面アンテナが設けられており、平面アンテナと受信機及び/又は送信機とが高周波伝送線路を介して接続されている高周波アンテナ装置であって、
誘電体基板が、該窓ガラス板に離間して設けられており、
該誘電体基板の、該窓ガラス板とは反対側の面上にはサスペンデッドマイクロストリップ線路の信号導体が設けられており、
該窓ガラス板の、該誘電体基板側の面上にはグランド導体とスロット部とが設けられており、
該平面アンテナ側と該スロット部とが接続されており、該信号導体が該受信機及び/又は送信機側と接続されていることを特徴とする高周波アンテナ装置を提供する。
【0009】
また、自動車の窓ガラス板に平面アンテナが設けられており、平面アンテナと受信機及び/又は送信機とが高周波伝送線路を介して接続されている高周波アンテナ装置であって、
誘電体基板が、該窓ガラス板に離間して設けられており、
該誘電体基板の、該窓ガラス板側の面上にはインバーテッドマイクロストリップ線路の信号導体が設けられており、
該窓ガラス板の、該誘電体基板側の面上にはグランド導体とスロット部とが設けられており、
該平面アンテナ側と該スロット部とが接続されており、該信号導体が該受信機及び/又は送信機側と接続されていることを特徴とする高周波アンテナ装置を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に従って詳細に説明する。図1は本発明の高周波伝送線路の第1の態様の一実施例を示す斜視図である。また、図5は本発明の高周波伝送線路の第2の態様の一実施例を示す斜視図である。
【0011】
図1において、1はサスペンデッドマイクロストリップ線路の信号導体、1aは信号導体1の始端部、2は第1の誘電体基板、3は第2の誘電体基板、4はグランド導体、5はスロット部、7は気体層である。なお、図3、5において、図1と同一構成要素又は同一部材については、同番号又は同符号を付して、説明を省略する。しかし、図3における番号1は、サスペンデッドマイクロストリップ線路の信号導体、又は、インバーテッドマイクロストリップ線路の信号導体を示し、図5における番号1は、インバーテッドマイクロストリップ線路の信号導体を示すものとする。また、以下の説明において、特に限定しない場合には、第1の態様と第2の態様との共通の説明とする。
【0012】
本発明の高周波伝送線路の第1の態様は、図1に示すとおり、第1の誘電体基板2と、第2の誘電体基板3と、第1の誘電体基板2と第2の誘電体基板3との間に設けられている気体層7とを備えている。第1の誘電体基板2の、気体層7とは反対側の面上には信号導体1が設けられている。信号導体1は第1の誘電体基板2上に細長い導体層又は導体線を設けることにより構成される。
【0013】
ここで、サスペンデッドマイクロストリップ線路とは、誘電体基板に設けられている信号導体と、この誘電体基板に設けられていないグランド導体とを備えている線路であって、この誘電体基板の、このグランド導体とは反対側の面上に上記信号導体が設けられている線路をいい、同じ誘電体基板に信号導体とグランド導体とが設けられているマイクロストリップ線路とは異なる構造を有する線路である。
【0014】
本発明の高周波伝送線路の第2の態様は、図5に示すとおり、第1の誘電体基板2と、第2の誘電体基板3と、第1の誘電体基板2と第2の誘電体基板3との間に設けられている気体層7とを備えている。第1の誘電体基板2の、上記気体層側の面上には信号導体1が設けられている。信号導体1は第1の誘電体基板2上に細長い導体層又は導体線を設けることにより構成される。
【0015】
ここで、インバーテッドマイクロストリップ線路とは、誘電体基板に設けられている信号導体と、この誘電体基板に設けられていないグランド導体とを備えている線路であって、この誘電体基板の、このグランド導体側の面上に上記信号導体が設けられている線路をいう。
【0016】
本発明の高周波伝送線路の第1の態様及び第2の態様では、ともに、第2の誘電体基板3の、気体層7側の面上にはグランド導体4とスロット部5とが設けられている。スロット部5とは、第2の誘電体基板3の面であって、グランド導体4が設けられている側の面で第2の誘電体基板3の材質が剥き出しになって露出しており、スロット部5の周囲の一部又は全部がグランド導体4に接している部分で細長い領域をいう。なお、本発明の高周波伝送線路の電気的特性に影響を与えない厚さの範囲でスロット部5の上に合成樹脂層等の絶縁層が設けられていてもよい。
【0017】
図1、5の例では、信号導体1の長手方向とスロット部5の長手方向とが垂直又は略垂直であり、挿入損失をできるだけ少なくするにはこのように配することが好ましいが、これに限定されず、信号導体1の長手方向とスロット部5の長手方向との成す角度が30〜150°であれば使用できる。信号導体1の長手方向とスロット部5の長手方向との成す角度が60〜120°が好ましい範囲である。
【0018】
本発明では、スロット部5が励起され、この励起により発生した磁界により信号導体1に電流が誘導され(電磁結合)、スロット部5からサスペンデッドマイクロストリップ線路又はインバーテッドマイクロストリップ線路へ伝送波が伝播し、信号が信号導体1を伝送する。
【0019】
本発明の第1の態様では、第1の誘電体基板2の厚さは電磁結合を生じやすくするために0.1〜1.8mmが好ましい。第1の誘電体基板2の厚さを1.8mm以下が好ましいとしたのは、本発明における電磁結合では、スロット部5と信号導体1との距離が伝送特性に大きく影響し、第1の誘電体基板2の厚さを1.27mm、気体層の厚さを0.5mmとしたときには(第1の誘電体基板2の厚さと気体層の厚さとの総計1.77mm)、充分な伝送特性が得られなかったからである。第1の誘電体基板2の厚さを0.1mm以上が好ましいとしたのは、0.1mm未満の誘電体基板を製造することが生産技術上困難だからである。
【0020】
本発明の第2の態様では、第1の誘電体基板2の厚さは0.1〜6.0mmが好ましい。この厚さの範囲の誘電体基板を製造することが生産技術上容易だからである。
【0021】
第2の誘電体基板3の厚さは、電磁結合と直接関りがないため、特に限定されないが、第2の誘電体基板3としてガラス板を用いる場合には2.0〜6.0mmが好ましい。
【0022】
第1の誘電体基板2の比誘電率は2.0〜25.0が好ましい。第2誘電体基板3の比誘電率は5.0〜9.0が好ましい。この範囲内である場合にはこの範囲外である場合と比較して挿入損失が少なくなる。第2の誘電体基板3の比誘電率の値は限定されない。
【0023】
小型化を考慮する場合には、第1の誘電体基板2の比誘電率の値と第2の誘電体基板3の比誘電率の値とはともに、できるだけ大きいことが好ましく、6.5以上、特には8.0以上が好ましい。この比誘電率の値が大きければ、管内波長λg1、λg2が小さくなるため、本発明の高周波伝送線路を小型化できる。第2の誘電体基板3にガラス板を用いる場合には、ガラス板の比誘電率の値の6.0〜7.5の範囲で管内波長λg2が決定される。
【0024】
本発明の第1の態様では、第1の誘電体基板2の厚さの好ましい範囲である0.1〜1.8mmを考慮して、気体層7の厚さは0.1〜1.7mmが好ましい。この範囲内である場合にはこの範囲外である場合と比較して挿入損失が少なくなる。
【0025】
本発明の第2の態様では、気体層7の厚さは0.1〜1.7mmが好ましい。この範囲内である場合にはこの範囲外である場合と比較して挿入損失が少なくなる。
【0026】
第1の誘電体基板2と第2の誘電体基板3とは、スペーサ(不図示)を両者の間に挟み込むようにして固定してもよいし、両者を枠により固定してもよく、両者を固定する手段は問わない。付言すれば、第1の誘電体基板2と第2の誘電体基板3とが両者の間に気体層7が存在するように両者を固定すればよい。スペーサの材質、枠の材質は電磁結合に影響を与えないように誘電体物質が好ましい。気体層7は、通常コスト的に安価な空気層を用いるが、これに限定されず、窒素、アルゴン等の不活性ガスでもよい。
【0027】
気体層7の代りに接着剤又は充填材等の誘電体物質を第1の誘電体基板2と第2の誘電体基板3との間に設けてもよい。さらに、気体層7の代りに気体層と該誘電体物質層からなる複数層としてもよい。
【0028】
図3は、図1、5に示した高周波伝送線路の平面図である。図3において、5aはスロット部5の終端部、Pは図3における、信号導体1とスロット部5との見かけ上の交差点、L1は信号導体1の長さ、L5はスロット部5の長さ、LMは始端部1aと交差点Pとの距離(信号導体1のアームの長さ)、LSは終端部5aと交差点Pとの距離(スロット部5のアームの長さ)、W1は信号導体1の幅、W5はスロット部5の幅である。
【0029】
本発明の第1の態様において、動作周波数(挿入損失が最も少なくなる周波数)に対する第1の誘電体基板2における管内波長(第1の誘電体基板2内部を伝播する波長)をλg1、この動作周波数に対する第2誘電体基板3における管内波長をλg2とするとき、(0.9λg1/4)≦距離LM≦(1.1λg1/4)、(0.9λg2/4)≦距離LS≦(1.1λg2/4)を満足することが好ましい。この範囲内である場合にはこの範囲外である場合と比較して挿入損失が通常少なくなる。
【0030】
本発明の第2の態様において、(0.5λg1/4)≦距離LM≦(1.3λg1/4)、(0.5λg2/4)≦距離LS≦(1.3λg2/4)を満足することが好ましい。この範囲内である場合にはこの範囲外である場合と比較して挿入損失が通常少なくなる。
【0031】
利用する通信周波数が一定の幅を有する周波数帯である場合には、動作周波数を該当周波数帯の中心周波数として、中心周波数に対する管内波長λg1、λg2を用いて、LM、LSを設定することが好ましい。該当周波数帯域内での特性変動を抑えやすいからである。
【0032】
信号導体1の幅W1については0.1mm≦W1≦10.0mmが好ましい。スロット部5の幅W5については0.1mm≦W5≦5.0mmが好ましい。この範囲内である場合にはこの範囲外である場合と比較して挿入損失が少なくなる。なお、図1、3では、見やすくするため、W5は、実際の幅より広めに示されている。
【0033】
本発明が適用される好ましい周波数範囲は、0.8〜30GHzであり、より好ましい周波数範囲は、2.0〜30GHzであり、特に好ましい周波数範囲は、4.9〜30GHzである。この範囲内である場合にはこの範囲外である場合と比較して挿入損失が少なくなる。
【0034】
本発明において、第2の誘電体基板3に自動車用窓ガラス板を用いることにより、GPS(Global Positioning System)人工衛星のGPS信号1575.42MHz、VICS(Vehicle Information and Communication System(ヴィークルインフォメーション アンド コミュニケーション システム))、ETC通信(Electronic ノンストップ自動料金収受システム(Toll Collection System)送信周波数が5.795GHz又は5.805GHz、受信周波数が5.835GHz又は5.845GHz)、専用狭域通信(DSRC:Dedicated Short Range Communication、915MHz帯、5.8GHz帯、60GHz帯)等に応用できる。
【0035】
第2の誘電体基板3に建物の窓ガラス板を用いて、建物内における通信機器に本発明の高周波伝送線路及び本発明の高周波アンテナ装置を応用してもよい。本発明の高周波伝送線路を有する高周波アンテナ装置の例としては、第2の誘電体基板3に自動車用窓ガラス板を用い、さらに、自動車用窓ガラス板の室内側に第1の誘電体基板2を取り付けて本発明の高周波伝送線路を構成する。この自動車用窓ガラス板に設けられているアンテナ、例えば、ガラスアンテナとの信号のやりとりに、この高周波伝送線路を用いる例が挙げられる。
【0036】
次に、本発明の高周波伝送線路を自動車用窓ガラス板に設ける場合について説明する。図7に第2の誘電体基板3に自動車用窓ガラス板を用いて本発明の高周波伝送線路を構成した実施例の側面図を示す。
【0037】
図7において、6は車体(金属体)、11は接着剤等の粘着物質、W6は始端部1aに最短の車体開口縁と始端部1aとの間隔である。ここで、車体開口縁とは窓ガラス板がはめ込まれる車体の開口部の周縁であって車体アースとなるべきものをいい、例えば、金属等の導電性材料で構成されている。接地導体4が設けられている窓ガラス板(第2の誘電体基板3)の面は、自動車の室内側の面である。
【0038】
W6は100μm以上、特には、200μm以上が好ましい。W6が100μm以上であると、反射損失が小さくなって好ましい。この条件は、始端部1aが最短の車体開口縁の方を向いていれば適用でき、図7の例では上方から見た場合に信号導体1の長手方向と車体開口縁とのなす角が直角にしているが、信号導体1の長手方向と車体開口縁とのなす角が直角でなくとも適用できる。
【0039】
本発明の高周波伝送線路を利用した高周波アンテナ装置について説明する。自動車の窓ガラス板に平面アンテナを設け、平面アンテナと受信機及び/又は送信機とが本発明の高周波伝送線路を介して接続されるようにする。平面アンテナはループ状スロットアンテナ等のスロットアンテナ、マイクロストリップパッチアンテナ等のマイクロストリップアンテナ及びパッチアンテナ等が好ましい。
【0040】
これらの平面アンテナの接地導体と本発明の高周波伝送線路の接地導体とを接続する。通常、窓ガラス板にこれらの平面アンテナの接地導体と本発明の高周波伝送線路の接地導体とが設けられるので、この接続は窓ガラス板で行なう。
【0041】
本発明の高周波伝送線路の信号導体(サスペンデッドマイクロストリップ線路の信号導体、又は、インバーテッドマイクロストリップ線路の信号導体)は該受信機及び/又は送信機側に接続される。
【0042】
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこの実施例には限定されず、本発明の要旨を損なわない限り、各種の改良や変更も本発明に含まれる。
【0043】
(例1)
第1の誘電体基板2にガラス繊維及びセラミックス粉末含有ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用い、第2の誘電体基板3にガラス板を用い、図1、3に示すような高周波伝送線路を製作した。各部の寸法、定数は以下のとおりである。なお、寸法の単位はmmである。周波数−挿入損失(S21)特性及び周波数−反射損失(S11)特性を図4に示す。なお、図4において、縦軸は挿入損失又は反射損失である。動作周波数は4.7GHzであった。
【0044】
【0045】
(例2)
第1の誘電体基板2に、ビスマレイミド−トリアジン樹脂製の回路基板(商標名BTレジン、三菱瓦斯化学社製)を用い、第2の誘電体基板3にガラス板を用い、図3、5に示すような高周波伝送線路を製作した。各部の寸法、定数は以下のとおりである。なお、寸法の単位はmmである。周波数−挿入損失(S21)特性及び周波数−反射損失(S11)特性を図6に示す。なお、図6において、縦軸は挿入損失又は反射損失である。動作周波数は5.7GHzであった。
【0046】
【0047】
(例3)
第1の誘電体基板2に、ビスマレイミド−トリアジン樹脂製の回路基板(商標名BTレジン、三菱瓦斯化学社製)を用い、第2の誘電体基板3にガラス板を用い、図7に示すような高周波伝送線路を製作した。金属体6を車体に想定し、金属体6と接地導体4とは上方より見ると重なっており、高周波的に容量結合されている。
【0048】
各部の寸法、定数は以下のとおりである。なお、寸法の単位はmmである。W6−反射損失(S11)特性を図8に示す。なお、図8において、動作周波数は5.8GHzであり、図8はFDTD法(Finite DifferenceTime Domain method)による計算値である。図8に示されているとおり、W6が100μm以上で急激に反射損失が向上している。
ガラス板の寸法 40×48×3.5mm、
第1の誘電体基板2の寸法 40×26.2×0.8mm、
金属体6の寸法 40×21.78×0.8mm、
ガラス板の比誘電率 7.0、
第1の誘電体基板2の比誘電率 3.4、
気体層7の厚さ 0.5mm、
L1 26.2mm、
L5 22.8mm、
LM 6.2mm、
LS 2.8mm、
W1 2.9mm、
W5 1.5mm、
W6 20μm〜2.0mm(測定点20μm、50μm、0.1、0.2、0.5、1.0、2.0mm)、
始端部1aから、最短のグランド導体4の周縁までの距離 5.0mm。
【0049】
【発明の効果】
本発明では、気体層が第1の誘電体基板と第2の誘電体基板との間に設けられているため、第1の誘電体基板2と第2の誘電体基板3との材質、曲率が異なっていても、製作することが容易である。また、気体層が存在するため、第1の誘電体基板と第2の誘電体基板との間に部品又は部品の一部を存在させることができ、薄型化、小型化に寄与できる。
【0050】
第2の誘電体基板を自動車の窓ガラス板とし、第1の誘電体基板が、該窓ガラス板に離間して設けられており、第1の誘電体基板の、該窓ガラス板側の面上にはインバーテッドマイクロストリップ線路の信号導体が設けられているか、又は、第1の誘電体基板の、該窓ガラス板とは反対側の面上にはサスペンデッドマイクロストリップ線路の信号導体が設けられている場合には、インバーテッドマイクロストリップ線路の信号導体の始端部又はサスペンデッドマイクロストリップ線路の信号導体の始端部が車体開口縁から10μm以上離れていれば、反射損失が向上する効果も認められる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高周波伝送線路の第1の態様の一実施例を示す斜視図。
【図2】(a)は従来の高周波伝送線路の結合構造の断面図、(b)は従来の高周波伝送線路の結合構造の平面図。
【図3】図1、5に示した高周波伝送線路の平面図。
【図4】例1の周波数−挿入損失(S21)特性及び周波数−反射損失(S11)特性図。
【図5】本発明の高周波伝送線路の第2の態様の一実施例を示す斜視図。
【図6】例2の周波数−挿入損失(S21)特性及び周波数−反射損失(S11)特性図。
【図7】第2の誘電体基板3に自動車用窓ガラス板を用いて本発明の高周波伝送線路を構成した実施例の側面図。
【図8】W6−反射損失(S11)特性図。
【符号の説明】
1:信号導体
1a:信号導体1の始端部
2:第1の誘電体基板
3:第2の誘電体基板
4:グランド導体
5:スロット部
5a:スロット部5の終端部
7:気体層
P:交差点
LM:始端部1aと交差点Pとの距離
LS:終端部5aと交差点Pとの距離
W6:車体開口縁と始端部1aとの間隔
【発明の属する技術分野】
本発明は、マイクロ波又はミリ波等の通信に適する高周波伝送線路及び高周波アンテナ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
複数の誘電体基板間で信号を伝送する場合、電磁結合を用いて簡便に行う技術が提案されている。例えば、特許文献1によって、図2(a)(断面図)及び図2(b)(平面図)に示すとおり、第1の誘電体基板21A上には中心導体22Aが設けられ、第1の誘電体基板21Aと第2の誘電体基板21Bとの間にはグランド層23とスロット孔24とが設けられ、グランド層23とは反対側の、第2の誘電体基板21Bの面上には中心導体22Bが設けられている高周波伝送線路の結合構造が提案されている。
【0003】
特許文献1に開示されている構造は、2枚の誘電体基板が密着接合している。しかし、2枚の誘電体基板の材質が異なる場合、熱膨張係数を一致させなければならず、製作しにくい問題があった。また、2枚の誘電体基板の曲率が異なる場合、密着接合そのものができない問題があった。さらに、2枚の誘電体基板の間に部品又は部品の一部を存在させることができない問題があった。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−163713号公報(特許請求の範囲、図1)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術の有する前述の欠点を解消する高周波伝送線路の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、第1の誘電体基板と、第2の誘電体基板と、第1の誘電体基板と第2の誘電体基板との間に設けられている気体層とが備えられており、
第1の誘電体基板の、上記気体層とは反対側の面上にはサスペンデッドマイクロストリップ線路の信号導体が設けられており、
第2の誘電体基板の、上記気体層側の面上にはグランド導体とスロット部とが設けられていることを特徴とする高周波伝送線路を提供する。
【0007】
また、本発明は、第1の誘電体基板と、第2の誘電体基板と、第1の誘電体基板と第2の誘電体基板との間に設けられている気体層とが備えられており、
第1の誘電体基板の、上記気体層側の面上にはインバーテッドマイクロストリップ線路の信号導体が設けられており、
第2の誘電体基板の、上記気体層側の面上にはグランド導体とスロット部とが設けられていることを特徴とする高周波伝送線路を提供する。
【0008】
また、自動車の窓ガラス板に平面アンテナが設けられており、平面アンテナと受信機及び/又は送信機とが高周波伝送線路を介して接続されている高周波アンテナ装置であって、
誘電体基板が、該窓ガラス板に離間して設けられており、
該誘電体基板の、該窓ガラス板とは反対側の面上にはサスペンデッドマイクロストリップ線路の信号導体が設けられており、
該窓ガラス板の、該誘電体基板側の面上にはグランド導体とスロット部とが設けられており、
該平面アンテナ側と該スロット部とが接続されており、該信号導体が該受信機及び/又は送信機側と接続されていることを特徴とする高周波アンテナ装置を提供する。
【0009】
また、自動車の窓ガラス板に平面アンテナが設けられており、平面アンテナと受信機及び/又は送信機とが高周波伝送線路を介して接続されている高周波アンテナ装置であって、
誘電体基板が、該窓ガラス板に離間して設けられており、
該誘電体基板の、該窓ガラス板側の面上にはインバーテッドマイクロストリップ線路の信号導体が設けられており、
該窓ガラス板の、該誘電体基板側の面上にはグランド導体とスロット部とが設けられており、
該平面アンテナ側と該スロット部とが接続されており、該信号導体が該受信機及び/又は送信機側と接続されていることを特徴とする高周波アンテナ装置を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に従って詳細に説明する。図1は本発明の高周波伝送線路の第1の態様の一実施例を示す斜視図である。また、図5は本発明の高周波伝送線路の第2の態様の一実施例を示す斜視図である。
【0011】
図1において、1はサスペンデッドマイクロストリップ線路の信号導体、1aは信号導体1の始端部、2は第1の誘電体基板、3は第2の誘電体基板、4はグランド導体、5はスロット部、7は気体層である。なお、図3、5において、図1と同一構成要素又は同一部材については、同番号又は同符号を付して、説明を省略する。しかし、図3における番号1は、サスペンデッドマイクロストリップ線路の信号導体、又は、インバーテッドマイクロストリップ線路の信号導体を示し、図5における番号1は、インバーテッドマイクロストリップ線路の信号導体を示すものとする。また、以下の説明において、特に限定しない場合には、第1の態様と第2の態様との共通の説明とする。
【0012】
本発明の高周波伝送線路の第1の態様は、図1に示すとおり、第1の誘電体基板2と、第2の誘電体基板3と、第1の誘電体基板2と第2の誘電体基板3との間に設けられている気体層7とを備えている。第1の誘電体基板2の、気体層7とは反対側の面上には信号導体1が設けられている。信号導体1は第1の誘電体基板2上に細長い導体層又は導体線を設けることにより構成される。
【0013】
ここで、サスペンデッドマイクロストリップ線路とは、誘電体基板に設けられている信号導体と、この誘電体基板に設けられていないグランド導体とを備えている線路であって、この誘電体基板の、このグランド導体とは反対側の面上に上記信号導体が設けられている線路をいい、同じ誘電体基板に信号導体とグランド導体とが設けられているマイクロストリップ線路とは異なる構造を有する線路である。
【0014】
本発明の高周波伝送線路の第2の態様は、図5に示すとおり、第1の誘電体基板2と、第2の誘電体基板3と、第1の誘電体基板2と第2の誘電体基板3との間に設けられている気体層7とを備えている。第1の誘電体基板2の、上記気体層側の面上には信号導体1が設けられている。信号導体1は第1の誘電体基板2上に細長い導体層又は導体線を設けることにより構成される。
【0015】
ここで、インバーテッドマイクロストリップ線路とは、誘電体基板に設けられている信号導体と、この誘電体基板に設けられていないグランド導体とを備えている線路であって、この誘電体基板の、このグランド導体側の面上に上記信号導体が設けられている線路をいう。
【0016】
本発明の高周波伝送線路の第1の態様及び第2の態様では、ともに、第2の誘電体基板3の、気体層7側の面上にはグランド導体4とスロット部5とが設けられている。スロット部5とは、第2の誘電体基板3の面であって、グランド導体4が設けられている側の面で第2の誘電体基板3の材質が剥き出しになって露出しており、スロット部5の周囲の一部又は全部がグランド導体4に接している部分で細長い領域をいう。なお、本発明の高周波伝送線路の電気的特性に影響を与えない厚さの範囲でスロット部5の上に合成樹脂層等の絶縁層が設けられていてもよい。
【0017】
図1、5の例では、信号導体1の長手方向とスロット部5の長手方向とが垂直又は略垂直であり、挿入損失をできるだけ少なくするにはこのように配することが好ましいが、これに限定されず、信号導体1の長手方向とスロット部5の長手方向との成す角度が30〜150°であれば使用できる。信号導体1の長手方向とスロット部5の長手方向との成す角度が60〜120°が好ましい範囲である。
【0018】
本発明では、スロット部5が励起され、この励起により発生した磁界により信号導体1に電流が誘導され(電磁結合)、スロット部5からサスペンデッドマイクロストリップ線路又はインバーテッドマイクロストリップ線路へ伝送波が伝播し、信号が信号導体1を伝送する。
【0019】
本発明の第1の態様では、第1の誘電体基板2の厚さは電磁結合を生じやすくするために0.1〜1.8mmが好ましい。第1の誘電体基板2の厚さを1.8mm以下が好ましいとしたのは、本発明における電磁結合では、スロット部5と信号導体1との距離が伝送特性に大きく影響し、第1の誘電体基板2の厚さを1.27mm、気体層の厚さを0.5mmとしたときには(第1の誘電体基板2の厚さと気体層の厚さとの総計1.77mm)、充分な伝送特性が得られなかったからである。第1の誘電体基板2の厚さを0.1mm以上が好ましいとしたのは、0.1mm未満の誘電体基板を製造することが生産技術上困難だからである。
【0020】
本発明の第2の態様では、第1の誘電体基板2の厚さは0.1〜6.0mmが好ましい。この厚さの範囲の誘電体基板を製造することが生産技術上容易だからである。
【0021】
第2の誘電体基板3の厚さは、電磁結合と直接関りがないため、特に限定されないが、第2の誘電体基板3としてガラス板を用いる場合には2.0〜6.0mmが好ましい。
【0022】
第1の誘電体基板2の比誘電率は2.0〜25.0が好ましい。第2誘電体基板3の比誘電率は5.0〜9.0が好ましい。この範囲内である場合にはこの範囲外である場合と比較して挿入損失が少なくなる。第2の誘電体基板3の比誘電率の値は限定されない。
【0023】
小型化を考慮する場合には、第1の誘電体基板2の比誘電率の値と第2の誘電体基板3の比誘電率の値とはともに、できるだけ大きいことが好ましく、6.5以上、特には8.0以上が好ましい。この比誘電率の値が大きければ、管内波長λg1、λg2が小さくなるため、本発明の高周波伝送線路を小型化できる。第2の誘電体基板3にガラス板を用いる場合には、ガラス板の比誘電率の値の6.0〜7.5の範囲で管内波長λg2が決定される。
【0024】
本発明の第1の態様では、第1の誘電体基板2の厚さの好ましい範囲である0.1〜1.8mmを考慮して、気体層7の厚さは0.1〜1.7mmが好ましい。この範囲内である場合にはこの範囲外である場合と比較して挿入損失が少なくなる。
【0025】
本発明の第2の態様では、気体層7の厚さは0.1〜1.7mmが好ましい。この範囲内である場合にはこの範囲外である場合と比較して挿入損失が少なくなる。
【0026】
第1の誘電体基板2と第2の誘電体基板3とは、スペーサ(不図示)を両者の間に挟み込むようにして固定してもよいし、両者を枠により固定してもよく、両者を固定する手段は問わない。付言すれば、第1の誘電体基板2と第2の誘電体基板3とが両者の間に気体層7が存在するように両者を固定すればよい。スペーサの材質、枠の材質は電磁結合に影響を与えないように誘電体物質が好ましい。気体層7は、通常コスト的に安価な空気層を用いるが、これに限定されず、窒素、アルゴン等の不活性ガスでもよい。
【0027】
気体層7の代りに接着剤又は充填材等の誘電体物質を第1の誘電体基板2と第2の誘電体基板3との間に設けてもよい。さらに、気体層7の代りに気体層と該誘電体物質層からなる複数層としてもよい。
【0028】
図3は、図1、5に示した高周波伝送線路の平面図である。図3において、5aはスロット部5の終端部、Pは図3における、信号導体1とスロット部5との見かけ上の交差点、L1は信号導体1の長さ、L5はスロット部5の長さ、LMは始端部1aと交差点Pとの距離(信号導体1のアームの長さ)、LSは終端部5aと交差点Pとの距離(スロット部5のアームの長さ)、W1は信号導体1の幅、W5はスロット部5の幅である。
【0029】
本発明の第1の態様において、動作周波数(挿入損失が最も少なくなる周波数)に対する第1の誘電体基板2における管内波長(第1の誘電体基板2内部を伝播する波長)をλg1、この動作周波数に対する第2誘電体基板3における管内波長をλg2とするとき、(0.9λg1/4)≦距離LM≦(1.1λg1/4)、(0.9λg2/4)≦距離LS≦(1.1λg2/4)を満足することが好ましい。この範囲内である場合にはこの範囲外である場合と比較して挿入損失が通常少なくなる。
【0030】
本発明の第2の態様において、(0.5λg1/4)≦距離LM≦(1.3λg1/4)、(0.5λg2/4)≦距離LS≦(1.3λg2/4)を満足することが好ましい。この範囲内である場合にはこの範囲外である場合と比較して挿入損失が通常少なくなる。
【0031】
利用する通信周波数が一定の幅を有する周波数帯である場合には、動作周波数を該当周波数帯の中心周波数として、中心周波数に対する管内波長λg1、λg2を用いて、LM、LSを設定することが好ましい。該当周波数帯域内での特性変動を抑えやすいからである。
【0032】
信号導体1の幅W1については0.1mm≦W1≦10.0mmが好ましい。スロット部5の幅W5については0.1mm≦W5≦5.0mmが好ましい。この範囲内である場合にはこの範囲外である場合と比較して挿入損失が少なくなる。なお、図1、3では、見やすくするため、W5は、実際の幅より広めに示されている。
【0033】
本発明が適用される好ましい周波数範囲は、0.8〜30GHzであり、より好ましい周波数範囲は、2.0〜30GHzであり、特に好ましい周波数範囲は、4.9〜30GHzである。この範囲内である場合にはこの範囲外である場合と比較して挿入損失が少なくなる。
【0034】
本発明において、第2の誘電体基板3に自動車用窓ガラス板を用いることにより、GPS(Global Positioning System)人工衛星のGPS信号1575.42MHz、VICS(Vehicle Information and Communication System(ヴィークルインフォメーション アンド コミュニケーション システム))、ETC通信(Electronic ノンストップ自動料金収受システム(Toll Collection System)送信周波数が5.795GHz又は5.805GHz、受信周波数が5.835GHz又は5.845GHz)、専用狭域通信(DSRC:Dedicated Short Range Communication、915MHz帯、5.8GHz帯、60GHz帯)等に応用できる。
【0035】
第2の誘電体基板3に建物の窓ガラス板を用いて、建物内における通信機器に本発明の高周波伝送線路及び本発明の高周波アンテナ装置を応用してもよい。本発明の高周波伝送線路を有する高周波アンテナ装置の例としては、第2の誘電体基板3に自動車用窓ガラス板を用い、さらに、自動車用窓ガラス板の室内側に第1の誘電体基板2を取り付けて本発明の高周波伝送線路を構成する。この自動車用窓ガラス板に設けられているアンテナ、例えば、ガラスアンテナとの信号のやりとりに、この高周波伝送線路を用いる例が挙げられる。
【0036】
次に、本発明の高周波伝送線路を自動車用窓ガラス板に設ける場合について説明する。図7に第2の誘電体基板3に自動車用窓ガラス板を用いて本発明の高周波伝送線路を構成した実施例の側面図を示す。
【0037】
図7において、6は車体(金属体)、11は接着剤等の粘着物質、W6は始端部1aに最短の車体開口縁と始端部1aとの間隔である。ここで、車体開口縁とは窓ガラス板がはめ込まれる車体の開口部の周縁であって車体アースとなるべきものをいい、例えば、金属等の導電性材料で構成されている。接地導体4が設けられている窓ガラス板(第2の誘電体基板3)の面は、自動車の室内側の面である。
【0038】
W6は100μm以上、特には、200μm以上が好ましい。W6が100μm以上であると、反射損失が小さくなって好ましい。この条件は、始端部1aが最短の車体開口縁の方を向いていれば適用でき、図7の例では上方から見た場合に信号導体1の長手方向と車体開口縁とのなす角が直角にしているが、信号導体1の長手方向と車体開口縁とのなす角が直角でなくとも適用できる。
【0039】
本発明の高周波伝送線路を利用した高周波アンテナ装置について説明する。自動車の窓ガラス板に平面アンテナを設け、平面アンテナと受信機及び/又は送信機とが本発明の高周波伝送線路を介して接続されるようにする。平面アンテナはループ状スロットアンテナ等のスロットアンテナ、マイクロストリップパッチアンテナ等のマイクロストリップアンテナ及びパッチアンテナ等が好ましい。
【0040】
これらの平面アンテナの接地導体と本発明の高周波伝送線路の接地導体とを接続する。通常、窓ガラス板にこれらの平面アンテナの接地導体と本発明の高周波伝送線路の接地導体とが設けられるので、この接続は窓ガラス板で行なう。
【0041】
本発明の高周波伝送線路の信号導体(サスペンデッドマイクロストリップ線路の信号導体、又は、インバーテッドマイクロストリップ線路の信号導体)は該受信機及び/又は送信機側に接続される。
【0042】
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこの実施例には限定されず、本発明の要旨を損なわない限り、各種の改良や変更も本発明に含まれる。
【0043】
(例1)
第1の誘電体基板2にガラス繊維及びセラミックス粉末含有ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用い、第2の誘電体基板3にガラス板を用い、図1、3に示すような高周波伝送線路を製作した。各部の寸法、定数は以下のとおりである。なお、寸法の単位はmmである。周波数−挿入損失(S21)特性及び周波数−反射損失(S11)特性を図4に示す。なお、図4において、縦軸は挿入損失又は反射損失である。動作周波数は4.7GHzであった。
【0044】
【0045】
(例2)
第1の誘電体基板2に、ビスマレイミド−トリアジン樹脂製の回路基板(商標名BTレジン、三菱瓦斯化学社製)を用い、第2の誘電体基板3にガラス板を用い、図3、5に示すような高周波伝送線路を製作した。各部の寸法、定数は以下のとおりである。なお、寸法の単位はmmである。周波数−挿入損失(S21)特性及び周波数−反射損失(S11)特性を図6に示す。なお、図6において、縦軸は挿入損失又は反射損失である。動作周波数は5.7GHzであった。
【0046】
【0047】
(例3)
第1の誘電体基板2に、ビスマレイミド−トリアジン樹脂製の回路基板(商標名BTレジン、三菱瓦斯化学社製)を用い、第2の誘電体基板3にガラス板を用い、図7に示すような高周波伝送線路を製作した。金属体6を車体に想定し、金属体6と接地導体4とは上方より見ると重なっており、高周波的に容量結合されている。
【0048】
各部の寸法、定数は以下のとおりである。なお、寸法の単位はmmである。W6−反射損失(S11)特性を図8に示す。なお、図8において、動作周波数は5.8GHzであり、図8はFDTD法(Finite DifferenceTime Domain method)による計算値である。図8に示されているとおり、W6が100μm以上で急激に反射損失が向上している。
ガラス板の寸法 40×48×3.5mm、
第1の誘電体基板2の寸法 40×26.2×0.8mm、
金属体6の寸法 40×21.78×0.8mm、
ガラス板の比誘電率 7.0、
第1の誘電体基板2の比誘電率 3.4、
気体層7の厚さ 0.5mm、
L1 26.2mm、
L5 22.8mm、
LM 6.2mm、
LS 2.8mm、
W1 2.9mm、
W5 1.5mm、
W6 20μm〜2.0mm(測定点20μm、50μm、0.1、0.2、0.5、1.0、2.0mm)、
始端部1aから、最短のグランド導体4の周縁までの距離 5.0mm。
【0049】
【発明の効果】
本発明では、気体層が第1の誘電体基板と第2の誘電体基板との間に設けられているため、第1の誘電体基板2と第2の誘電体基板3との材質、曲率が異なっていても、製作することが容易である。また、気体層が存在するため、第1の誘電体基板と第2の誘電体基板との間に部品又は部品の一部を存在させることができ、薄型化、小型化に寄与できる。
【0050】
第2の誘電体基板を自動車の窓ガラス板とし、第1の誘電体基板が、該窓ガラス板に離間して設けられており、第1の誘電体基板の、該窓ガラス板側の面上にはインバーテッドマイクロストリップ線路の信号導体が設けられているか、又は、第1の誘電体基板の、該窓ガラス板とは反対側の面上にはサスペンデッドマイクロストリップ線路の信号導体が設けられている場合には、インバーテッドマイクロストリップ線路の信号導体の始端部又はサスペンデッドマイクロストリップ線路の信号導体の始端部が車体開口縁から10μm以上離れていれば、反射損失が向上する効果も認められる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高周波伝送線路の第1の態様の一実施例を示す斜視図。
【図2】(a)は従来の高周波伝送線路の結合構造の断面図、(b)は従来の高周波伝送線路の結合構造の平面図。
【図3】図1、5に示した高周波伝送線路の平面図。
【図4】例1の周波数−挿入損失(S21)特性及び周波数−反射損失(S11)特性図。
【図5】本発明の高周波伝送線路の第2の態様の一実施例を示す斜視図。
【図6】例2の周波数−挿入損失(S21)特性及び周波数−反射損失(S11)特性図。
【図7】第2の誘電体基板3に自動車用窓ガラス板を用いて本発明の高周波伝送線路を構成した実施例の側面図。
【図8】W6−反射損失(S11)特性図。
【符号の説明】
1:信号導体
1a:信号導体1の始端部
2:第1の誘電体基板
3:第2の誘電体基板
4:グランド導体
5:スロット部
5a:スロット部5の終端部
7:気体層
P:交差点
LM:始端部1aと交差点Pとの距離
LS:終端部5aと交差点Pとの距離
W6:車体開口縁と始端部1aとの間隔
Claims (7)
- 第1の誘電体基板と、第2の誘電体基板と、第1の誘電体基板と第2の誘電体基板との間に設けられている気体層とが備えられており、
第1の誘電体基板の、上記気体層とは反対側の面上にはサスペンデッドマイクロストリップ線路の信号導体が設けられており、
第2の誘電体基板の、上記気体層側の面上にはグランド導体とスロット部とが設けられていることを特徴とする高周波伝送線路。 - 第1の誘電体基板と、第2の誘電体基板と、第1の誘電体基板と第2の誘電体基板との間に設けられている気体層とが備えられており、
第1の誘電体基板の、上記気体層側の面上にはインバーテッドマイクロストリップ線路の信号導体が設けられており、
第2の誘電体基板の、上記気体層側の面上にはグランド導体とスロット部とが設けられていることを特徴とする高周波伝送線路。 - 前記第2の誘電体基板が自動車の窓ガラス板であり、前記信号導体の始端部が車体開口縁から100μm以上離れている請求項1又は2に記載の高周波伝送線路。
- 請求項1、2又は3に記載の高周波伝送線路を有する高周波アンテナ装置。
- 自動車の窓ガラス板に平面アンテナが設けられており、平面アンテナと受信機及び/又は送信機とが高周波伝送線路を介して接続されている高周波アンテナ装置であって、
誘電体基板が、該窓ガラス板に離間して設けられており、
該誘電体基板の、該窓ガラス板とは反対側の面上にはサスペンデッドマイクロストリップ線路の信号導体が設けられており、
該窓ガラス板の、該誘電体基板側の面上にはグランド導体とスロット部とが設けられており、
該平面アンテナ側と該スロット部とが接続されており、該信号導体が該受信機及び/又は送信機側と接続されていることを特徴とする高周波アンテナ装置。 - 自動車の窓ガラス板に平面アンテナが設けられており、平面アンテナと受信機及び/又は送信機とが高周波伝送線路を介して接続されている高周波アンテナ装置であって、
誘電体基板が、該窓ガラス板に離間して設けられており、
該誘電体基板の、該窓ガラス板側の面上にはインバーテッドマイクロストリップ線路の信号導体が設けられており、
該窓ガラス板の、該誘電体基板側の面上にはグランド導体とスロット部とが設けられており、
該平面アンテナ側と該スロット部とが接続されており、該信号導体が該受信機及び/又は送信機側と接続されていることを特徴とする高周波アンテナ装置。 - 信号導体の始端部が車体開口縁から100μm以上離れている請求項5又は6に記載の高周波アンテナ装置。
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