JP2005020183A - 車両用平面アンテナ - Google Patents
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Abstract
【課題】感度を向上させる車両用平面アンテナを提供する。
【解決手段】窓ガラス板2にパッチ導体4と接地導体6とが設けられており、パッチ導体4が離間して接地導体6により囲まれており、接地導体6の周縁と、該周縁に最短の車体開口縁16aとの間隔が3.0mm以上である。
【選択図】図1
【解決手段】窓ガラス板2にパッチ導体4と接地導体6とが設けられており、パッチ導体4が離間して接地導体6により囲まれており、接地導体6の周縁と、該周縁に最短の車体開口縁16aとの間隔が3.0mm以上である。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用平面アンテナに関し、特に、マイクロ波通信やミリ波通信に好適な車両用平面アンテナに関する。より具体的には、車両と車両外部の送信機及び/又は受信機に接続される車両用平面アンテナであって、例えば、車両の窓ガラス板に設けられるのに適する車両用平面アンテナに関する。
【0002】
【従来の技術】
今日、高速、大容量通信への要求から、マイクロ波やミリ波を用いて電波を送信又は受信する高周波の通信が急速に拡がっている。電波を送信又は受信するアンテナとして、例えば、円形又は方形のパッチ状の放射導体(以下、パッチ導体という)を有するマイクロストリップアンテナ(以下、MSAという)が好適に用いられている。
【0003】
MSAはプリント基板で作製でき、平面構造であるので小型薄型アンテナとして広く普及している。MSAは、一般に、誘電体基板の両面に導体薄膜等の導体層を形成し、一方の面の導体層を接地導体(グランド板又は地板とも呼ぶ)とし、他方の面の導体層にエッチング処理を施すことによって円形又は方形の放射導体を形成したものである。
【0004】
MSAの給電は、例えば、同軸ケーブルの内側導体を放射導体の所定の位置に接続し、同軸ケーブルの外側導体をMSAの放射導体と反対側の面の接地導体に接続することによって行われる。このようにMSAは、誘電体基板の両面に導体層があるため、MSAの両面の導体層への接続が給電のために必要である。
【0005】
また、従来、上記MSA以外の平面アンテナとして、誘電体基板にパッチ導体と接地導体とが設けられており、パッチ導体が離間して接地導体により囲まれている平面アンテナが報告されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この従来の平面アンテナを車両に設ける場合、どのように作用するかわかっていなかった。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−252520号公報(7頁、図2)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来知られていなかった車両用平面アンテナの提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、誘電体基板にパッチ導体と接地導体とが設けられ、該パッチ導体の一部又は全部が離間して該接地導体により囲まれており、該誘電体基板が車両に設けられている車両用平面アンテナであって、
該接地導体の周縁と、該周縁に最短の車体開口縁との間隔が3.0mm以上であることを特徴とする車両用平面アンテナを提供する。
【0009】
また、本発明は、誘電体基板にパッチ導体と接地導体とが設けられ、該パッチ導体の一部又は全部が離間して該接地導体により囲まれており、該誘電体基板が車両に設けられている車両用平面アンテナであって、
該接地導体と車体との最短距離が3.0mm以上であることを特徴とする車両用平面アンテナを提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の車両用平面アンテナについて、添付の図面に示される好適実施例を基に詳細に説明する。図1、2には、本発明の車両用平面アンテナの一実施形態が示されており、図1は、車両用平面アンテナの構成図であり、図2は図1に示す車両用平面アンテナのA−A’断面図である。以下の説明において、特記しない場合には、方向は図面上での方向をいうものとする。また、図1は車内から見た図面であり、図2では、上方が車内側である。
【0011】
本発明の車両用平面アンテナの一実施形態は、図1、2に示すように、誘電体基板である窓ガラス板2の少なくとも一方の面に形成される車両用平面アンテナであり、窓ガラス板2にパッチ導体4と接地導体6とが設けられており、パッチ導体4が離間して接地導体6により囲まれている。図1に示すとおり、パッチ導体4は接地導体6と直流的に接続されてなく、島状の導体である。図1、2の例では、パッチ導体4と接地導体6とは窓ガラス板2の片面に形成されている。
【0012】
なお、パッチ導体4を囲んでいる接地導体6の一部にスロット2a(接地導体6が設けられていない部分であって窓ガラス板2が露出している部分)があっても使用できる場合がある。図1、2において、16は車体、16aは車体開口縁、dは接地導体6の周縁と車体開口縁16aとの間隔、11は接着剤等の弾性体である。
【0013】
本発明において、車体開口縁16aとは窓ガラス板2がはめ込まれる車体の開口部の周縁であって車体アースとなるべきものをいい、例えば、金属等の導電性材料で構成されている。
【0014】
図1、2の例では、パッチ導体4の形状は長方形であるが、これに限定されず、パッチ導体4の形状は、使用できる程度の感度が得られる形状であればどのような形状であってもよい。パッチ導体4の形状としては、長方形の他に略長方形、正方形、略正方形、多角形、略多角形、円形、略円形、楕円系又は略楕円形等が考えられる。
【0015】
図1に示す例では、インピーダンス変成器の中心導体5がパッチ導体4に付設されており、パッチ導体4の上方に伸長されている。中心導体5の上端には給電部8が付設されている。図1に示す例では、パッチ導体4、中心導体5及び給電部8の全てが接地導体6により囲まれている。また、中心導体5側又は給電部8側の、接地導体6の縁辺と、中心導体5の周縁又は給電部8の周縁とは、所定間隔で離間し、平行又は略平行となっている。ここで、インピーダンス変成器は、中心導体5と、中心導体5の周縁近傍の接地導体6の縁辺とで構成されている。
【0016】
図1に示す例では、窓ガラス板2の上側に本発明における平面アンテナが配設されている。電波の飛来する方向を考慮すると、このようにすることが好ましいが、これに限定されず、窓ガラス板2の下側に本発明の車両用平面アンテナが配設されていてもよい。窓ガラス板2の下側に本発明の車両用平面アンテナが配設される場合には、中心導体5及び給電部8はパッチ導体4の下側に設けられることが好ましい。
【0017】
給電部8は表面実装型コネクタ(不図示)を介して、窓ガラス板2の、パッチ導体4側の面で同軸ケーブル(不図示)の内側導体と接続されることが好ましい。また、接地導体6はアース接続された同軸ケーブルの外側導体と接続されて常時アース接続されていることが好ましい。
【0018】
図1に示す例において、接地導体6の上側の周縁6aと、周縁6aに最短の車体開口縁16aとの間隔dが3.0mm以上であることが必要である。間隔dが3.0mm以上であるときは、3.0mm未満であるときと比較して感度が向上する。この間隔dの好ましい範囲は5.0mm以上であり、より好ましい範囲は7.0mm以上であり、特に好ましい範囲は10.0mm以上である。図1に示す例において、パッチ導体4から給電部8が伸長されている方向、又は中心導体5の長手方向と車体開口縁16aとのなす角は、直角(90度)又は略直角(略90度)である。間隔dの範囲は、この角が−10度〜190度(この角の許容範囲)で適用される。視野の確保を考慮すると、間隔dは100mm以下、特には50mm以下が好ましい。
【0019】
図1に示す例では、本発明における平面アンテナは窓ガラス板2に設けられているが、これに限定されず、本発明における平面アンテナを誘電体基板に設け、この誘電体基板を窓ガラス板2に取付けてもよい。この場合、接地導体6と車体16との最短距離が3.0mm以上であることが必要である。この最短距離が3.0mm以上であるときは、3.0mm未満であるときと比較して感度が向上する。この最短距離の好ましい範囲は、5.0mm以上であり、より好ましい範囲は、7.0mm以上であり、特に好ましい範囲は、10.0mm以上である。この最短距離の範囲は、給電部が伸長されている方向と車体開口縁16aとのなす角が−10度〜190度で適用される。
【0020】
図3は本発明の車両用平面アンテナの感度を計算で行うために想定した一実施形態のモデルの構成図である。図3において、W1はパッチ導体の幅、W2は中心導体5の幅、W3は給電部8の幅、W4は中心導体5側又は給電部8側の接地導体6の左縁辺と、中心導体5側又は給電部8側の接地導体6の右縁辺との間隔、L1はパッチ導体4の縦長、L2は中心導体5の長さ、L3は給電部8の長さ、L4は給電部8の上端部と接地導体6の上側周縁との距離、L11は接地導体6の縦長、L12は接地導体6の幅、L13は想定された車体の縦長、L14は想定された車体の幅、G1はパッチ導体4側の、接地導体6の縁辺と、パッチ導体4の周縁との間隔である。なお、図3に示す例では、給電部8の周辺の接地導体6の縁辺と給電部8の周縁との間隔は均一である。
【0021】
図4は、図3に示す例における計算に用いる電波の飛来方向を示す。図4において、z軸はパッチ導体4に垂直な軸、y軸は車体開口縁16aに垂直な方向の軸、x軸はy軸及びz軸に垂直な軸、φはx軸及びy軸を含む面上の任意の方向とx軸とのなす角、θはφが示す方向とz軸とを含む面上の任意の方向とz軸とのなす角である。図3において、窓ガラス板2は小さく示されており、通常の自動車では、−60度≦θ≦60度が電波の飛来方向であり、最も電波の強い方向である。
【0022】
図7は、中心導体5の長手方向の軸が車体開口縁16aと平行である場合の実施例を示し、この例における計算に用いる電波の飛来方向を示す。図7において、窓ガラス板2は省略している。図7におけるdは中心導体5の長手方向に平行な接地導体6の周縁と車体開口縁16aとの間隔である。
【0023】
図5は図1に示す実施例とは別のタイプの実施例を示す構成図である。図1に示す例では、前述したとおり、通常、同軸ケーブルの内側導体を給電部8に接続して受信機及び/又は送信機と本発明の車両用平面アンテナとの信号の伝送を行うが、図4に示す例では、電磁結合により、受信機及び/又は送信機と本発明の車両用平面アンテナとの信号の伝送を行う。
【0024】
図5に示す例では、中心導体5の終端部12は接地導体6に接続されている。中心導体5の左側の周縁と、中心導体5側の接地導体6の縁辺との間に存在する溝(中心導体5及び接地導体6が設けられてなく窓ガラス板2が露出している部分)が左上方向に伸長されており、この伸長されている溝13が電磁結合に利用できる。中心導体5の右側の周縁と、中心導体5側の接地導体6の縁辺との間に存在する扇状の溝14は感度向上のために設けることが好ましい。
【0025】
なお、図5に示す構成に限定されず、電磁結合に利用する溝は、中心導体5の左側の周縁と、中心導体5側の接地導体6の縁辺との間に存在する溝から伸長されている溝、及び、中心導体5の右側の周縁と、中心導体5側の接地導体6の縁辺との間に存在する溝から伸長されている溝、の少なくとも一方であればよい。また、伸長される方向も左上方に限定されず、感度が使用できるならばどの角度方向へ伸長されていてもよい。
【0026】
図5に示すエアーブリッジ17は終端部12付近の両側の接地導体を導体線等で接続することをいい、必要に応じて設けられる。エアーブリッジ17を設けることにより感度が向上する。
【0027】
パッチ導体4が四角形である場合には、パッチ導体4の幅W1及び長さL1 は、車両用平面アンテナで送信又は受信する電波の波長によって電波が共振するように設定される。パッチ導体4の長さL1 は、送信又は受信を行う所望の周波数帯の中心周波数の波長をλM とした場合、アンテナの送信又は受信効率を向上させるために、k・(λM /4)〜k・λM (kは窓ガラス板2における波長の短縮率)の範囲にあることが好ましい。この範囲に導体長さL1 を設定することで、この範囲外に設定する場合に比べて、利得が向上する。また、パッチ導体4の幅W1は、送信又は受信を行う所望の周波数帯の最高周波数の波長をλH とし、送信又は受信を行う所望の周波数帯の最低周波数の波長をλL とするとき、k・(λH /4)〜k・λL の範囲にあることが好ましい。
【0028】
ここで、短縮率kは、窓ガラス板2の比誘電率をεr とすると、k=εr (−1/2)で表すことができる。短縮率kとは、誘電体基板上を伝搬する電波の伝搬速度に関係するもので、所望の電波の周波数においてアンテナの入力インピーダンスのリアクタンス成分が0(ゼロ)となるようにする比率をいい、アンテナが共振するように、誘電体基板に設けられるアンテナの寸法を空気中に設けられるアンテナの寸法に比べて小さくする比率をいう。中心導体5の長さL2 は、通常、k・λM /4程度である。
【0029】
接地導体6は、窓ガラス板2上の一定の領域に所定以上の面積を有するように形成される。すなわち、本発明の車両用平面アンテナは指向性が良好となるように接地導体6の面積が調整されている。このようにして、指向性を良好にすることができるのは、誘電体基板と空気界面での反射やガラス板を伝搬する表面波の指向性への影響が低減するためと考えられる。
【0030】
接地導体6はパッチ導体4の周囲を一定の距離離間して囲んでいる。すなわち、パッチ導体4側の、接地導体6の縁辺はパッチ導体4の周縁より一定の間隔で離れている。この間隔 は、車両用平面アンテナの入力インピーダンス特性が良好となるように設定され、ほぼ窓ガラス板2の厚さ近傍が好ましい。
【0031】
中心導体5と接地導体6との最短間隔、中心導体5の幅及び中心導体5の長手方向の長さは、パッチ導体4の入力インピーダンスと、高周波伝送線路で用いられる特性インピーダンス50Ωとが整合するように窓ガラス板2の比誘電率、パッチ導体4の導電率等及び接地導体6の導電率等を考慮して設定されることが好ましい。
【0032】
誘電体基板として窓ガラス板2を用い、パッチ導体4、中心導体5及び接地導体6として銀ペーストを窓ガラス板2の面上にプリントし焼付けて形成した場合には、窓ガラス板2の比誘電率や銀ペーストによる導体の導電率を考慮して各部分の形状及び寸法等の諸数値が設定される。なお、本発明においては、この形成方法に限定されず、銅等の導電性物質からなる、線状又は箔状の薄膜を、窓ガラス板2又は誘電体基板に形成してもよい。
【0033】
次に、本発明の車両用平面アンテナの動作について説明する。パッチ導体4は電波を放射する放射導体として機能する。また、中心導体5は、その両側に一定の距離を隔てて接地導体が形成される公知の伝送線路であるコブレーナウェーブガイド(CPW)を形成する。インピーダンス変成器はパッチ導体4の入力インピーダンスを通常、高周波伝送線路で用いられる特性インピーダンス50Ωと整合させるように機能することが好ましい。
【0034】
送信の際は、給電部8から電気信号を給電する。この電気信号は中心導体5を伝搬してパッチ導体4に到達しパッチ導体4が励振される。このときパッチ導体4の共振周波数で励振されれば、パッチ導体4より電波が放射される。
【0035】
上述した公知のMSAは、放射導体と地導体との間の電界により放射導体端部で磁流を生じ、その磁流を波源として電波を放射するアンテナである。これに対して、本発明の車両用平面アンテナは、パッチ導体4と、その周囲に間隔をおいて同一面に設けられた接地導体6との間の電界によりパッチ導体4の端部で磁流を生じ、その磁流を波源として、電波を放射するものと考えられる。本発明の車両用平面アンテナにおける共振周波数は、パッチ導体4の形状及び寸法、パッチ導体4と接地導体6との間隔等を用いて設定することができる。電波の受信は、送信と受信との可逆性により、上記説明と反対の動作となる。
【0036】
このように、本発明の車両用平面アンテナは、パッチ導体4及び接地導体6が設けられた窓ガラス板2の面の反対の面に導体が設けられていなくてもよく、窓ガラス板2の一面にのみ、パッチ導体4、接地導体6及び中心導体5が設けられた、同一面又は共平面(コプレーナ)構造のアンテナにできるので、平面アンテナを窓ガラス板2の片面に形成することができる。したがって、誘電体基板の両面に導体を設けなければならないMSAに比べて、生産性及び耐久性が向上する。特に本発明の車両用平面アンテナが車両用前部窓ガラス板等の窓ガラス板の車室内側に設けられた場合には、顕著に耐久性が向上する。さらに、給電部8もパッチ導体4等と同一の面側に設けることができるので、給電も容易になり、簡易でコンパクトな構成を実現することができる。
【0037】
図1、2に示す例では、一枚の窓ガラス板2上に形成されている。しかし、本発明においては、例えば、合わせガラス板や複層ガラス板等の多層誘電体基板であってもよく、この場合、合わせガラス板や複層ガラス板を構成するガラス板のどの面側に設けられてもよい。例えば、合わせガラス板の合わせ面側に形成してもよいが、この場合、ガラス板を横断してアンテナに給電するための給電手段が必要とされる。
【0038】
さらに、パッチ導体4及び接地導体6が設けられる誘電体基板は、ガラス板に限定されず、セラミック、ポリイミド樹脂、サファイア及びプリント配線基板等いずれであってもよい。また、アンテナの送信又は受信の効率を向上させるには低誘電損失の誘電体基板を用いるのが好ましい。また、誘電体基板は、表層に着色したプリント膜、例えば黒色プリント膜を形成したものを用いてもよい。
【0039】
窓ガラス板2の面の表層には、黒色セラミック膜が形成されてもよい。また、本発明における誘電体基板を窓ガラス板2に設けてもよい。この場合、本発明の車両用平面アンテナは車両用前部窓ガラス板等の窓ガラス板の車室内側に設けられることが好ましい。
【0040】
本発明の車両用平面アンテナが利用される周波数は通常0.8〜30.0GHzであり、2.0〜10.0GHz、特には2.0〜6.0GHzが好ましい。
【0041】
本発明の車両用平面アンテナは、例えば、車両用前部窓ガラス板等の窓ガラス板の面に形成してETC(Electronic Toll Collection System:ノンストップ自動料金収受システム、路側無線装置の送信周波数:5.795GHz又は5.805GHz、路側無線装置の受信周波数:5.835GHz又は5.845GHz)におけるアンテナとして利用される。
すなわち、車両用前部窓ガラス板を窓ガラス板2として用いる。このような車両用平面アンテナは、狭域通信(DSRC:Dedicated Short Range Communication )制御回路等とともに一体化して窓ガラス板2上に設けられてもよい。
【0042】
なお、本発明の車両用平面アンテナは、上述した5.8GHzの周波数帯を用いた無線通信を行うETCにおいて好適に用いられるが、ETCに限定されず、同様の周波数帯を用いる種々のデータ通信にも使用可能である。例えば、自動車電話用の800MHz帯(810〜960MHz)、自動車電話用の1.5GHz帯(1.429〜1.501GHz)、UHF帯(300MHz〜3GHz)、GPS人工衛星のGPS信号1575.42MHz等の電波の送信又は受信に用いることもできる。上記帯域以外にもマイクロ波の周波数の電波(1GHz〜3THz)やミリ波帯の電波(30GHz〜300GHz)の送信又は受信にも用いることができる。
【0043】
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されず、本発明の要旨を損なわない限り、各種の改良や変更も本発明に含まれる。
【0044】
「例1(実施例)」
図1に示す一実施形態において、車体開口縁16aと接地導体6の周縁6aとが近接すると、接地導体6に誘起される電流分布に変化が生じ、本発明の車両用平面アンテナの感度が劣化する。このような電流分布の変化を図3、4に示すモデルでFDTD法(Finite Difference Time Domain method)によって計算を行った。各部の寸法、定数は以下のとおりである。寸法の単位はmmとする。
【0045】
φを0.0度とし、θを−60〜60度で変化させた最小感度であって、dを0.0mm〜12.5mmの範囲で変化させた場合の感度とdとの特性を図6に示した。ここで、感度のデータとして最小感度を用いたのは、通信できない程の感度の落ち込みをなくすことができるからである。
【0046】
周波数 5.8GHz、
想定した窓ガラス板2(厚さ) 3.5、
想定した窓ガラス板2の比誘電率 7.0、
W1×L1 6.1×6.1、
W2 0.5、
W3 1.3、
W4 2.0、
L2 6.5、
L3 6.5、
L4 23、
L11×L12 45×30、
L13 100、
L14 100、
想定した車体2の厚さ 2.0、
G1 2.0。
【0047】
「例2(実施例)」
図7に示すモデルにおいて、例1と同様に電流分布の変化をFDTD法によって計算を行った。車両用平面アンテナの各部の形状及び寸法は例1と同様とした。φを90度とし、θを−60〜60度で変化させた最小感度であって、dを0.0mm〜12.5mmの範囲で変化させた場合の感度とdとの特性を図8に示した。
【0048】
【発明の効果】
本発明では、接地導体の周縁と、該周縁に最短の車体開口縁との間隔が3.0mm以上であるために、良好に通信できる感度が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の車両用平面アンテナの一実施形態の構成図。
【図2】図1に示す車両用平面アンテナのA−A’断面図。
【図3】本発明の車両用平面アンテナの感度を計算で行うために想定した一実施形態のモデルの構成図。
【図4】図3に示す例における計算に用いる電波の飛来方向を示す模式図。
【図5】図1に示す実施例とは別のタイプの実施例を示す構成図。
【図6】例1の感度とdとの特性図。
【図7】図3に示す例とは別の実施例における計算に用いる電波の飛来方向を示す模式図。
【図8】例2の感度とdとの特性図。
【符号の説明】
2:誘電体基板
4:パッチ導体
5:中心導体
6:接地導体
6a:接地導体6の周縁
8:給電部
16:車体
16a:車体開口縁
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用平面アンテナに関し、特に、マイクロ波通信やミリ波通信に好適な車両用平面アンテナに関する。より具体的には、車両と車両外部の送信機及び/又は受信機に接続される車両用平面アンテナであって、例えば、車両の窓ガラス板に設けられるのに適する車両用平面アンテナに関する。
【0002】
【従来の技術】
今日、高速、大容量通信への要求から、マイクロ波やミリ波を用いて電波を送信又は受信する高周波の通信が急速に拡がっている。電波を送信又は受信するアンテナとして、例えば、円形又は方形のパッチ状の放射導体(以下、パッチ導体という)を有するマイクロストリップアンテナ(以下、MSAという)が好適に用いられている。
【0003】
MSAはプリント基板で作製でき、平面構造であるので小型薄型アンテナとして広く普及している。MSAは、一般に、誘電体基板の両面に導体薄膜等の導体層を形成し、一方の面の導体層を接地導体(グランド板又は地板とも呼ぶ)とし、他方の面の導体層にエッチング処理を施すことによって円形又は方形の放射導体を形成したものである。
【0004】
MSAの給電は、例えば、同軸ケーブルの内側導体を放射導体の所定の位置に接続し、同軸ケーブルの外側導体をMSAの放射導体と反対側の面の接地導体に接続することによって行われる。このようにMSAは、誘電体基板の両面に導体層があるため、MSAの両面の導体層への接続が給電のために必要である。
【0005】
また、従来、上記MSA以外の平面アンテナとして、誘電体基板にパッチ導体と接地導体とが設けられており、パッチ導体が離間して接地導体により囲まれている平面アンテナが報告されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この従来の平面アンテナを車両に設ける場合、どのように作用するかわかっていなかった。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−252520号公報(7頁、図2)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来知られていなかった車両用平面アンテナの提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、誘電体基板にパッチ導体と接地導体とが設けられ、該パッチ導体の一部又は全部が離間して該接地導体により囲まれており、該誘電体基板が車両に設けられている車両用平面アンテナであって、
該接地導体の周縁と、該周縁に最短の車体開口縁との間隔が3.0mm以上であることを特徴とする車両用平面アンテナを提供する。
【0009】
また、本発明は、誘電体基板にパッチ導体と接地導体とが設けられ、該パッチ導体の一部又は全部が離間して該接地導体により囲まれており、該誘電体基板が車両に設けられている車両用平面アンテナであって、
該接地導体と車体との最短距離が3.0mm以上であることを特徴とする車両用平面アンテナを提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の車両用平面アンテナについて、添付の図面に示される好適実施例を基に詳細に説明する。図1、2には、本発明の車両用平面アンテナの一実施形態が示されており、図1は、車両用平面アンテナの構成図であり、図2は図1に示す車両用平面アンテナのA−A’断面図である。以下の説明において、特記しない場合には、方向は図面上での方向をいうものとする。また、図1は車内から見た図面であり、図2では、上方が車内側である。
【0011】
本発明の車両用平面アンテナの一実施形態は、図1、2に示すように、誘電体基板である窓ガラス板2の少なくとも一方の面に形成される車両用平面アンテナであり、窓ガラス板2にパッチ導体4と接地導体6とが設けられており、パッチ導体4が離間して接地導体6により囲まれている。図1に示すとおり、パッチ導体4は接地導体6と直流的に接続されてなく、島状の導体である。図1、2の例では、パッチ導体4と接地導体6とは窓ガラス板2の片面に形成されている。
【0012】
なお、パッチ導体4を囲んでいる接地導体6の一部にスロット2a(接地導体6が設けられていない部分であって窓ガラス板2が露出している部分)があっても使用できる場合がある。図1、2において、16は車体、16aは車体開口縁、dは接地導体6の周縁と車体開口縁16aとの間隔、11は接着剤等の弾性体である。
【0013】
本発明において、車体開口縁16aとは窓ガラス板2がはめ込まれる車体の開口部の周縁であって車体アースとなるべきものをいい、例えば、金属等の導電性材料で構成されている。
【0014】
図1、2の例では、パッチ導体4の形状は長方形であるが、これに限定されず、パッチ導体4の形状は、使用できる程度の感度が得られる形状であればどのような形状であってもよい。パッチ導体4の形状としては、長方形の他に略長方形、正方形、略正方形、多角形、略多角形、円形、略円形、楕円系又は略楕円形等が考えられる。
【0015】
図1に示す例では、インピーダンス変成器の中心導体5がパッチ導体4に付設されており、パッチ導体4の上方に伸長されている。中心導体5の上端には給電部8が付設されている。図1に示す例では、パッチ導体4、中心導体5及び給電部8の全てが接地導体6により囲まれている。また、中心導体5側又は給電部8側の、接地導体6の縁辺と、中心導体5の周縁又は給電部8の周縁とは、所定間隔で離間し、平行又は略平行となっている。ここで、インピーダンス変成器は、中心導体5と、中心導体5の周縁近傍の接地導体6の縁辺とで構成されている。
【0016】
図1に示す例では、窓ガラス板2の上側に本発明における平面アンテナが配設されている。電波の飛来する方向を考慮すると、このようにすることが好ましいが、これに限定されず、窓ガラス板2の下側に本発明の車両用平面アンテナが配設されていてもよい。窓ガラス板2の下側に本発明の車両用平面アンテナが配設される場合には、中心導体5及び給電部8はパッチ導体4の下側に設けられることが好ましい。
【0017】
給電部8は表面実装型コネクタ(不図示)を介して、窓ガラス板2の、パッチ導体4側の面で同軸ケーブル(不図示)の内側導体と接続されることが好ましい。また、接地導体6はアース接続された同軸ケーブルの外側導体と接続されて常時アース接続されていることが好ましい。
【0018】
図1に示す例において、接地導体6の上側の周縁6aと、周縁6aに最短の車体開口縁16aとの間隔dが3.0mm以上であることが必要である。間隔dが3.0mm以上であるときは、3.0mm未満であるときと比較して感度が向上する。この間隔dの好ましい範囲は5.0mm以上であり、より好ましい範囲は7.0mm以上であり、特に好ましい範囲は10.0mm以上である。図1に示す例において、パッチ導体4から給電部8が伸長されている方向、又は中心導体5の長手方向と車体開口縁16aとのなす角は、直角(90度)又は略直角(略90度)である。間隔dの範囲は、この角が−10度〜190度(この角の許容範囲)で適用される。視野の確保を考慮すると、間隔dは100mm以下、特には50mm以下が好ましい。
【0019】
図1に示す例では、本発明における平面アンテナは窓ガラス板2に設けられているが、これに限定されず、本発明における平面アンテナを誘電体基板に設け、この誘電体基板を窓ガラス板2に取付けてもよい。この場合、接地導体6と車体16との最短距離が3.0mm以上であることが必要である。この最短距離が3.0mm以上であるときは、3.0mm未満であるときと比較して感度が向上する。この最短距離の好ましい範囲は、5.0mm以上であり、より好ましい範囲は、7.0mm以上であり、特に好ましい範囲は、10.0mm以上である。この最短距離の範囲は、給電部が伸長されている方向と車体開口縁16aとのなす角が−10度〜190度で適用される。
【0020】
図3は本発明の車両用平面アンテナの感度を計算で行うために想定した一実施形態のモデルの構成図である。図3において、W1はパッチ導体の幅、W2は中心導体5の幅、W3は給電部8の幅、W4は中心導体5側又は給電部8側の接地導体6の左縁辺と、中心導体5側又は給電部8側の接地導体6の右縁辺との間隔、L1はパッチ導体4の縦長、L2は中心導体5の長さ、L3は給電部8の長さ、L4は給電部8の上端部と接地導体6の上側周縁との距離、L11は接地導体6の縦長、L12は接地導体6の幅、L13は想定された車体の縦長、L14は想定された車体の幅、G1はパッチ導体4側の、接地導体6の縁辺と、パッチ導体4の周縁との間隔である。なお、図3に示す例では、給電部8の周辺の接地導体6の縁辺と給電部8の周縁との間隔は均一である。
【0021】
図4は、図3に示す例における計算に用いる電波の飛来方向を示す。図4において、z軸はパッチ導体4に垂直な軸、y軸は車体開口縁16aに垂直な方向の軸、x軸はy軸及びz軸に垂直な軸、φはx軸及びy軸を含む面上の任意の方向とx軸とのなす角、θはφが示す方向とz軸とを含む面上の任意の方向とz軸とのなす角である。図3において、窓ガラス板2は小さく示されており、通常の自動車では、−60度≦θ≦60度が電波の飛来方向であり、最も電波の強い方向である。
【0022】
図7は、中心導体5の長手方向の軸が車体開口縁16aと平行である場合の実施例を示し、この例における計算に用いる電波の飛来方向を示す。図7において、窓ガラス板2は省略している。図7におけるdは中心導体5の長手方向に平行な接地導体6の周縁と車体開口縁16aとの間隔である。
【0023】
図5は図1に示す実施例とは別のタイプの実施例を示す構成図である。図1に示す例では、前述したとおり、通常、同軸ケーブルの内側導体を給電部8に接続して受信機及び/又は送信機と本発明の車両用平面アンテナとの信号の伝送を行うが、図4に示す例では、電磁結合により、受信機及び/又は送信機と本発明の車両用平面アンテナとの信号の伝送を行う。
【0024】
図5に示す例では、中心導体5の終端部12は接地導体6に接続されている。中心導体5の左側の周縁と、中心導体5側の接地導体6の縁辺との間に存在する溝(中心導体5及び接地導体6が設けられてなく窓ガラス板2が露出している部分)が左上方向に伸長されており、この伸長されている溝13が電磁結合に利用できる。中心導体5の右側の周縁と、中心導体5側の接地導体6の縁辺との間に存在する扇状の溝14は感度向上のために設けることが好ましい。
【0025】
なお、図5に示す構成に限定されず、電磁結合に利用する溝は、中心導体5の左側の周縁と、中心導体5側の接地導体6の縁辺との間に存在する溝から伸長されている溝、及び、中心導体5の右側の周縁と、中心導体5側の接地導体6の縁辺との間に存在する溝から伸長されている溝、の少なくとも一方であればよい。また、伸長される方向も左上方に限定されず、感度が使用できるならばどの角度方向へ伸長されていてもよい。
【0026】
図5に示すエアーブリッジ17は終端部12付近の両側の接地導体を導体線等で接続することをいい、必要に応じて設けられる。エアーブリッジ17を設けることにより感度が向上する。
【0027】
パッチ導体4が四角形である場合には、パッチ導体4の幅W1及び長さL1 は、車両用平面アンテナで送信又は受信する電波の波長によって電波が共振するように設定される。パッチ導体4の長さL1 は、送信又は受信を行う所望の周波数帯の中心周波数の波長をλM とした場合、アンテナの送信又は受信効率を向上させるために、k・(λM /4)〜k・λM (kは窓ガラス板2における波長の短縮率)の範囲にあることが好ましい。この範囲に導体長さL1 を設定することで、この範囲外に設定する場合に比べて、利得が向上する。また、パッチ導体4の幅W1は、送信又は受信を行う所望の周波数帯の最高周波数の波長をλH とし、送信又は受信を行う所望の周波数帯の最低周波数の波長をλL とするとき、k・(λH /4)〜k・λL の範囲にあることが好ましい。
【0028】
ここで、短縮率kは、窓ガラス板2の比誘電率をεr とすると、k=εr (−1/2)で表すことができる。短縮率kとは、誘電体基板上を伝搬する電波の伝搬速度に関係するもので、所望の電波の周波数においてアンテナの入力インピーダンスのリアクタンス成分が0(ゼロ)となるようにする比率をいい、アンテナが共振するように、誘電体基板に設けられるアンテナの寸法を空気中に設けられるアンテナの寸法に比べて小さくする比率をいう。中心導体5の長さL2 は、通常、k・λM /4程度である。
【0029】
接地導体6は、窓ガラス板2上の一定の領域に所定以上の面積を有するように形成される。すなわち、本発明の車両用平面アンテナは指向性が良好となるように接地導体6の面積が調整されている。このようにして、指向性を良好にすることができるのは、誘電体基板と空気界面での反射やガラス板を伝搬する表面波の指向性への影響が低減するためと考えられる。
【0030】
接地導体6はパッチ導体4の周囲を一定の距離離間して囲んでいる。すなわち、パッチ導体4側の、接地導体6の縁辺はパッチ導体4の周縁より一定の間隔で離れている。この間隔 は、車両用平面アンテナの入力インピーダンス特性が良好となるように設定され、ほぼ窓ガラス板2の厚さ近傍が好ましい。
【0031】
中心導体5と接地導体6との最短間隔、中心導体5の幅及び中心導体5の長手方向の長さは、パッチ導体4の入力インピーダンスと、高周波伝送線路で用いられる特性インピーダンス50Ωとが整合するように窓ガラス板2の比誘電率、パッチ導体4の導電率等及び接地導体6の導電率等を考慮して設定されることが好ましい。
【0032】
誘電体基板として窓ガラス板2を用い、パッチ導体4、中心導体5及び接地導体6として銀ペーストを窓ガラス板2の面上にプリントし焼付けて形成した場合には、窓ガラス板2の比誘電率や銀ペーストによる導体の導電率を考慮して各部分の形状及び寸法等の諸数値が設定される。なお、本発明においては、この形成方法に限定されず、銅等の導電性物質からなる、線状又は箔状の薄膜を、窓ガラス板2又は誘電体基板に形成してもよい。
【0033】
次に、本発明の車両用平面アンテナの動作について説明する。パッチ導体4は電波を放射する放射導体として機能する。また、中心導体5は、その両側に一定の距離を隔てて接地導体が形成される公知の伝送線路であるコブレーナウェーブガイド(CPW)を形成する。インピーダンス変成器はパッチ導体4の入力インピーダンスを通常、高周波伝送線路で用いられる特性インピーダンス50Ωと整合させるように機能することが好ましい。
【0034】
送信の際は、給電部8から電気信号を給電する。この電気信号は中心導体5を伝搬してパッチ導体4に到達しパッチ導体4が励振される。このときパッチ導体4の共振周波数で励振されれば、パッチ導体4より電波が放射される。
【0035】
上述した公知のMSAは、放射導体と地導体との間の電界により放射導体端部で磁流を生じ、その磁流を波源として電波を放射するアンテナである。これに対して、本発明の車両用平面アンテナは、パッチ導体4と、その周囲に間隔をおいて同一面に設けられた接地導体6との間の電界によりパッチ導体4の端部で磁流を生じ、その磁流を波源として、電波を放射するものと考えられる。本発明の車両用平面アンテナにおける共振周波数は、パッチ導体4の形状及び寸法、パッチ導体4と接地導体6との間隔等を用いて設定することができる。電波の受信は、送信と受信との可逆性により、上記説明と反対の動作となる。
【0036】
このように、本発明の車両用平面アンテナは、パッチ導体4及び接地導体6が設けられた窓ガラス板2の面の反対の面に導体が設けられていなくてもよく、窓ガラス板2の一面にのみ、パッチ導体4、接地導体6及び中心導体5が設けられた、同一面又は共平面(コプレーナ)構造のアンテナにできるので、平面アンテナを窓ガラス板2の片面に形成することができる。したがって、誘電体基板の両面に導体を設けなければならないMSAに比べて、生産性及び耐久性が向上する。特に本発明の車両用平面アンテナが車両用前部窓ガラス板等の窓ガラス板の車室内側に設けられた場合には、顕著に耐久性が向上する。さらに、給電部8もパッチ導体4等と同一の面側に設けることができるので、給電も容易になり、簡易でコンパクトな構成を実現することができる。
【0037】
図1、2に示す例では、一枚の窓ガラス板2上に形成されている。しかし、本発明においては、例えば、合わせガラス板や複層ガラス板等の多層誘電体基板であってもよく、この場合、合わせガラス板や複層ガラス板を構成するガラス板のどの面側に設けられてもよい。例えば、合わせガラス板の合わせ面側に形成してもよいが、この場合、ガラス板を横断してアンテナに給電するための給電手段が必要とされる。
【0038】
さらに、パッチ導体4及び接地導体6が設けられる誘電体基板は、ガラス板に限定されず、セラミック、ポリイミド樹脂、サファイア及びプリント配線基板等いずれであってもよい。また、アンテナの送信又は受信の効率を向上させるには低誘電損失の誘電体基板を用いるのが好ましい。また、誘電体基板は、表層に着色したプリント膜、例えば黒色プリント膜を形成したものを用いてもよい。
【0039】
窓ガラス板2の面の表層には、黒色セラミック膜が形成されてもよい。また、本発明における誘電体基板を窓ガラス板2に設けてもよい。この場合、本発明の車両用平面アンテナは車両用前部窓ガラス板等の窓ガラス板の車室内側に設けられることが好ましい。
【0040】
本発明の車両用平面アンテナが利用される周波数は通常0.8〜30.0GHzであり、2.0〜10.0GHz、特には2.0〜6.0GHzが好ましい。
【0041】
本発明の車両用平面アンテナは、例えば、車両用前部窓ガラス板等の窓ガラス板の面に形成してETC(Electronic Toll Collection System:ノンストップ自動料金収受システム、路側無線装置の送信周波数:5.795GHz又は5.805GHz、路側無線装置の受信周波数:5.835GHz又は5.845GHz)におけるアンテナとして利用される。
すなわち、車両用前部窓ガラス板を窓ガラス板2として用いる。このような車両用平面アンテナは、狭域通信(DSRC:Dedicated Short Range Communication )制御回路等とともに一体化して窓ガラス板2上に設けられてもよい。
【0042】
なお、本発明の車両用平面アンテナは、上述した5.8GHzの周波数帯を用いた無線通信を行うETCにおいて好適に用いられるが、ETCに限定されず、同様の周波数帯を用いる種々のデータ通信にも使用可能である。例えば、自動車電話用の800MHz帯(810〜960MHz)、自動車電話用の1.5GHz帯(1.429〜1.501GHz)、UHF帯(300MHz〜3GHz)、GPS人工衛星のGPS信号1575.42MHz等の電波の送信又は受信に用いることもできる。上記帯域以外にもマイクロ波の周波数の電波(1GHz〜3THz)やミリ波帯の電波(30GHz〜300GHz)の送信又は受信にも用いることができる。
【0043】
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されず、本発明の要旨を損なわない限り、各種の改良や変更も本発明に含まれる。
【0044】
「例1(実施例)」
図1に示す一実施形態において、車体開口縁16aと接地導体6の周縁6aとが近接すると、接地導体6に誘起される電流分布に変化が生じ、本発明の車両用平面アンテナの感度が劣化する。このような電流分布の変化を図3、4に示すモデルでFDTD法(Finite Difference Time Domain method)によって計算を行った。各部の寸法、定数は以下のとおりである。寸法の単位はmmとする。
【0045】
φを0.0度とし、θを−60〜60度で変化させた最小感度であって、dを0.0mm〜12.5mmの範囲で変化させた場合の感度とdとの特性を図6に示した。ここで、感度のデータとして最小感度を用いたのは、通信できない程の感度の落ち込みをなくすことができるからである。
【0046】
周波数 5.8GHz、
想定した窓ガラス板2(厚さ) 3.5、
想定した窓ガラス板2の比誘電率 7.0、
W1×L1 6.1×6.1、
W2 0.5、
W3 1.3、
W4 2.0、
L2 6.5、
L3 6.5、
L4 23、
L11×L12 45×30、
L13 100、
L14 100、
想定した車体2の厚さ 2.0、
G1 2.0。
【0047】
「例2(実施例)」
図7に示すモデルにおいて、例1と同様に電流分布の変化をFDTD法によって計算を行った。車両用平面アンテナの各部の形状及び寸法は例1と同様とした。φを90度とし、θを−60〜60度で変化させた最小感度であって、dを0.0mm〜12.5mmの範囲で変化させた場合の感度とdとの特性を図8に示した。
【0048】
【発明の効果】
本発明では、接地導体の周縁と、該周縁に最短の車体開口縁との間隔が3.0mm以上であるために、良好に通信できる感度が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の車両用平面アンテナの一実施形態の構成図。
【図2】図1に示す車両用平面アンテナのA−A’断面図。
【図3】本発明の車両用平面アンテナの感度を計算で行うために想定した一実施形態のモデルの構成図。
【図4】図3に示す例における計算に用いる電波の飛来方向を示す模式図。
【図5】図1に示す実施例とは別のタイプの実施例を示す構成図。
【図6】例1の感度とdとの特性図。
【図7】図3に示す例とは別の実施例における計算に用いる電波の飛来方向を示す模式図。
【図8】例2の感度とdとの特性図。
【符号の説明】
2:誘電体基板
4:パッチ導体
5:中心導体
6:接地導体
6a:接地導体6の周縁
8:給電部
16:車体
16a:車体開口縁
Claims (6)
- 誘電体基板にパッチ導体と接地導体とが設けられ、該パッチ導体の一部又は全部が離間して該接地導体により囲まれており、該誘電体基板が車両に設けられている車両用平面アンテナであって、
該接地導体の周縁と、該周縁に最短の車体開口縁との間隔が3.0mm以上であることを特徴とする車両用平面アンテナ。 - 誘電体基板にパッチ導体と接地導体とが設けられ、該パッチ導体の一部又は全部が離間して該接地導体により囲まれており、該誘電体基板が車両に設けられている車両用平面アンテナであって、
該接地導体と車体との最短距離が3.0mm以上であることを特徴とする車両用平面アンテナ。 - 前記パッチ導体と前記接地導体とが前記誘電体基板の同一面に設けられている請求項1又は2に記載の車両用平面アンテナ。
- 前記誘電体基板が車両の窓ガラス板である請求項1、2又は3に記載の車両用平面アンテナ。
- 前記誘電体基板が車両の窓ガラス板に取付けられている請求項1、2、3又は4に記載の車両用平面アンテナ。
- パッチ導体に給電部が設けられており、給電部が伸長されている方向と前記車体開口縁とのなす角が−10度〜190度である請求項1に記載の車両用平面アンテナ。
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Cited By (2)
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---|---|---|---|---|
JP2015064396A (ja) * | 2013-09-24 | 2015-04-09 | 日本精機株式会社 | 車両用表示装置 |
JP2015077409A (ja) * | 2013-10-14 | 2015-04-23 | 三星電子株式会社Samsung Electronics Co.,Ltd. | 人体センサ及びこれを含むセンシングシステム |
-
2003
- 2003-06-24 JP JP2003179782A patent/JP2005020183A/ja active Pending
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