JP2004186267A - 電気二重層コンデンサの電極形成用顆粒、その製造方法、電極シート、分極性電極および分極性電極を用いた電気二重層コンデンサ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】活物質50〜97質量%、導電性フィラ1〜30質量%およびバインダ2〜20質量%を含む原料を混練した後に粉砕して得られた電気二重層コンデンサの電極形成用顆粒であって、電極形成用顆粒は47μm〜840μmの粒径を有する粒子から本質的になる電気二重層コンデンサの電極形成用顆粒から電気二重層コンデンサの電極シートを構成する。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気二重層コンデンサの電極形成用顆粒、その製造方法、電極シート、分極性電極および分極性電極を用いた電気二重層コンデンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
電気二重層コンデンサは、電気二重層キャパシタとも呼ばれ、そしてファラッド級の大容量を有し、充放電サイクル特性にも優れ、かつ急速充電が可能であることから、電子機器のバックアップ電源、車載のバッテリ(エネルギバッファ)などの用途に使用されている。
【0003】
電気二重層コンデンサの概略を図4を用いて説明する。
図4は、電気二重層コンデンサの基本構成を示す断面図である。
図4に示す電気二重層コンデンサ101は、容器102と、その容器102内にセパレータ103を挟んで配置される1対の炭素電極(分極性電極)104、104と一対の集電体(部材)105、105とが収納された構成を有しており、そして容器102内は、イオン導電性の電解液が導入されている。電気二重層コンデンサ101は、固体である炭素電極104、104と液体である電解液との界面で発生し、分子レベルの距離を隔てて存在する電荷(図中、+および−で示す)を通常のコンデンサにおける誘電体として用いたコンデンサである。
【0004】
電気二重層コンデンサに使用される電解液は、希硫酸に電解質を添加したいわゆる水溶系の電解液と有機溶剤に電解質を添加したいわゆる有機系電解液に大別され、目的に応じて選択される。すなわち、水溶系電解液を使用した電気二重層コンデンサは、内部抵抗が低くパワー密度の点で有利である。一方、有機系電解液は、単セル当たりの耐電圧を高くすることが可能であるのでエネルギ密度の点で有利であり、またアルミニウム等の安価で軽量な金属を使用できる。
【0005】
このような電気二重層コンデンサでは、実際には図2に示すように電極層(電極シート)eと集電箔(金属箔)11(14)とを、所望により接着層を介して積層した分極性電極9(10)が使用されている。
そして、図1(a)および図1(b)に示す通り、分極性電極シート9(10)とセパレータsを交互に積層して容器2内に封入されて電気二重層コンデンサを構成している。
図1(a)に示す電気二重層コンデンサ1は、円筒型の容器2と、その容器2内に収容され、分極性電極シートとセパレータとから構成された積層体から構成された電極捲回体3と、その容器2内に注入された電解液とから主として構成されている。
一方、図1(b)に示す電気二重層コンデンサ1は、コイン型の容器2内に収容された分極性電極シートとセパレータとから構成された積層体から主として構成され、そしてセパレータに電解液が含浸されている。
【0006】
電気二重層コンデンサに使用される分極性電極は、多孔性構造を有することが要求され、種々の形態で長時間使用するために、亀裂や破損が生じにくくかつ高い形状保持性が要求されている。
また、電極を構成する炭素等の電極材料が脱離して、電圧低下や内部抵抗が上昇するとともに脱落した電極材料が電解液中に浮遊したりあるいはセパレータ中に介在してしまい、そのため所定の電圧を長期間維持することが困難となる場合がある。
電気二重層コンデンサにおける電極成形用顆粒の脱落を防止する方法として、例えば特許文献1には、炭素微粉(活性炭)、導電性フィラとバインダ等の電極原料と液状の潤滑剤の混和物をシート状に成型し、そして潤滑剤を除去した後、成型されたシートを一軸または多軸延伸して電気二重層コンデンサ用の分極性電極を製造する分極性電極の製造方法が開示されている。
また、特許文献2には、電極を構成する炭素が電解液中に脱粒することを防止するために分極性電極の引張強度を0.13MPaに規定した電気二重層コンデンサ用の電極シートが開示されている。
【0007】
【特許文献1】
特公平7−105316号公報
【特許文献2】
特開2001−267187号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載の方法で作製された分極性電極では、電極として構成された粒子そのものの脱離はある程度解消されるものの、分極性電極作製工程時や分極性電極を容器に封入して電気二重層コンデンサを作製する際に、活物質や導電性フィラ等の微粒子が剥離や脱離して電解液中に浮遊したりセパレータ間に介在したりして電圧維持率の低下の原因となっていた。
従って、本発明の課題は活物質や導電性フィラ等の微粒子の脱離を防止して、高い電圧維持率を有する(自己放電の少ない)電気二重層コンデンサ用電極を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、分極性電極作製工程時や分極性電極を容器に封入して電気二重層コンデンサを作製する際に、炭素微粉や導電性フィラ等の微粒子が剥離や脱離の原因として、電極を構成する顆粒そのもの脱離や剥離だけでなく、電極成形用顆粒の製造の際に不可避的に発生する微粒子であることを見出した。そして、所定の粒径範囲の電気二重層コンデンサの電極形成用顆粒を出発原料として使用することにより前記課題を解決することを見出して本発明を創作するに至った。
すなわち、請求項1の発明は、活物質50〜97質量%、導電性フィラ1〜30質量%およびバインダ2〜20質量%を含む原料を混練した後に粉砕して得られた電気二重層コンデンサの電極形成用顆粒であって、前記電気二重層コンデンサの電極形成用顆粒は、47μm〜840μmの粒径を有する粒子から本質的になることを特徴とするものである。
【0010】
このように構成した電気二重層コンデンサの電極形成用顆粒を出発原料として電気二重層コンデンサ用の電極を構成すると、炭素微粉や導電性フィラ等の微粒子が剥離や脱離して電解液中に浮遊したりセパレータ間に介在することがなくなり、電圧維持率の高い電気二重層コンデンサの電極を作製することが可能となる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、電気二重層コンデンサの電極形成用顆粒の製造方法であって、
(a) 活物質50〜97質量%、導電性フィラ1〜30質量%およびバインダ2〜20質量%を含む原料を混練して、バインダ成分をフィブリル化して塊状物を形成する工程、
(b) 形成した塊状物を粉砕して粉砕物を形成する工程、
(c) 前記粉砕物を分級して840μmを超える粒径を有する粒子を除去する工程、および
(d) 前記粉砕物を分級して47μm未満の粒径を有する粒子を除去する工程を含むことを特徴とするものである。
【0012】
このように構成することによって、炭素微粉や導電性フィラ等の微粒子が剥離や脱離して電解液中に浮遊したりセパレータ間に介在することがない電気二重層コンデンサの電極を作製するための顆粒を容易に製造することが可能となる。
なお、本発明に係る電気二重層コンデンサの電極形成用顆粒の製造方法において、工程(c)と工程(d)は、いずれを先に行っても良いことを意味する。
すなわち、工程(b)で作製した破砕物から先に所定の粒径を超える顆粒を除去してから(工程(c))、微粒子を除去してもよく(工程(d))、あるいは先に微粒子を除去してから(工程(d))、所定の粒径を超える顆粒を除去してもよい(工程(c))ことを意味する。
【0013】
請求項3に記載の発明は、本発明に係る電気二重層コンデンサの電極形成用顆粒をシート状に成形した電気二重層コンデンサ用電極シートである。
このように構成することによって、炭素微粉や導電性フィラ等の微粒子が剥離や脱離して電解液中に浮遊したりセパレータ間に介在することがない、従って電圧維持率の高い、すなわち安定した性能を発揮することができる電気二重層コンデンサの電極が得られる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、集電箔の上に接着層を介してあるいは介さずに本発明に係る電気二重層コンデンサ用電極シートが積層されて構成された電気二重層コンデンサ用分極性電極である。
このようにして構成された電気二重層コンデンサ用分極性電極は、炭素微粉や導電性フィラ等の微粒子が剥離や脱離して電解液中に浮遊したりセパレータ間に介在することがないので、電気二重層コンデンサに組み込んだ際に、高い電圧維持率を達成することができる。従って、安定した電圧を供給することが可能で耐久性の高い電気二重層コンデンサが得られる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、本発明に係る電気二重層コンデンサ用分極性電極を有することを特徴とする電気二重層コンデンサである。
このように構成することによって、高い電圧維持率を有し、耐久性の高い電気二重層コンデンサが得られる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基づいて説明する。
(電気二重層コンデンサ)
まず、本発明に係る電気二重層コンデンサの電極形成用顆粒、その製造方法、電極シート、分極性電極および分極性電極シートを適用する電気二重層コンデンサについて図1および図2を用いて説明する。
図1(a)は、本発明および従来技術の電気二重層コンデンサの一例を示す概略図であり、図1(b)は、本発明および従来技術の電気二重層コンデンサの他の示す概略図であり、そして図2は、電気二重層コンデンサの分極性電極を示す概略図である。
【0017】
図1(a)に示す電気二重層コンデンサ1は、円筒型の容器2と、その容器2内に収容され、分極性電極シートと帯状セパレータとから構成された積層体(図2参照)から構成された電極捲回体3と、その容器2内に注入された電解液とから主として構成されている。
容器2は、加工の容易性、軽量である等の理由から例えばアルミニウム(合金)から構成されている。また、容器2は有底筒形本体4と、その一端開口部を閉鎖する端子板5とよりなり、その端子板5に正、負端子6,7とが設けられている。なお、図面においては同一平面上に正、負端子6,7とを設けたが正端子6と負端子7とは反対側に設けてもよい。
【0018】
また、図2に示す通り、電極捲回体3は、正極側の第1帯状電極体9と、負極側の第2帯状電極体10とを有する。
第1帯状電極体9は、アルミ箔(集電箔)よりなる帯状集電体11の両面に,それぞれ帯状分極性電極(電極シート)eを導電性接着剤により貼付したものであり、両分極性電極eにより帯状正極(分極性電極)12が構成される。
第2帯状電極体10は、アルミ箔(集電箔)よりなる帯状集電体14の両面に,それぞれ帯状分極性電極(電極シート)eを導電性接着剤により貼付したものであり、両分極性電極eにより帯状負極(分極性電極)15が構成される。
そして、正極側の第1帯状電極体9と、負極側の第2帯状電極体10は、セパレータsにより区分されている。
すなわち、電極捲回体3は、分極性電極12、15とセパレータsとを交互に積層した構成を有している。
なお、本発明に適用可能なセパレータは、当該技術分野で通常に使用されるセパレータであれば特に限定されるものではなく、多孔質なオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン)や、セルロース、ポリエステル等の繊維を抄紙して得られる混抄紙等を使用することができる。
【0019】
また、図1(a)に示す電気二重層コンデンサに使用される電解液は、従来公知のものであれば特に限定されるものではなく、例えば過塩素酸、六フッ化リン酸、四フッ化ホウ酸、トリフルオロアルキルスルホン酸のテトラアルキルアンモニウム塩またはアミン塩およびテトラフルオロアルキルスルホン酸のテトラアルキルアンモニウム塩またはアミン塩が挙げられる。
このような、電解質は、例えばプロピレンカーボネート、γ−ブチルラクトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン、スルホラン、ニトロエタン等の極性溶剤に溶解された電解液として使用される。
【0020】
また、図1(b)に示す電気二重層コンデンサは、図1(a)に示すように分極性電極12、15を電極捲回体3の形態で電気二重層コンデンサに適用するのではなくそのまま積層体として電気二重層コンデンサに適用した代表例としてコイン型の電極二重層コンデンサに適用して例を示す。しかしながら、本発明はこのようなコイン型の電気二重層コンデンサに限定されるものではなく、分極性電極を電極捲回体の形態で電気二重層コンデンサに適用するのではなくそのまま積層体として電気二重層コンデンサに適用した電気二重層コンデンサも本発明の範囲内である。
なお、図1(b)に示す電気二重層コンデンサにおいて、図1(a)と同一の部材は同一の符号を付してその説明を省略する。
図1(b)に示す電気二重層コンデンサ1は、アルミニウム等の導電性の容器2、2’内に収容された分極性電極シート9、10とセパレータsとから構成された積層体から主として構成され、そしてセパレータsに電解液が含浸されている。
正極側分極性電極シート9および負極側分極性電極10は、図1(a)に示した分極性電極と同様に、各々アルミ箔(集電箔)よりなる帯状集電箔11(14)の両面にそれぞれ電極シートを導電性接着剤(接着層)により貼付した積層体から構成される(図2も参照)。
このような正極側分極性電極12および負極側分極性電極15を電解液が含浸したセパレータsを介して容器2、2’内に収容することによりコイン型電気二重層コンデンサが形成される。なお、このような構成のコイン型電気二重層コンデンサにおいて、正極側分極性電極12と接触する上側の容器2は正極として機能し、一方負極側分極性電極15と接触する下側の容器2’は負極として機能する。
本発明は、このような電気二重層コンデンサにも適用可能である。
【0021】
(分極性電極)
次に、図2を用いて、本発明に係る分極性電極について詳細に説明する。
図2に示す通り、分極性電極は、アルミニウム箔等の集電箔上(片面または両面)に、後述する電極シートが積層された構成を有している。
集電箔は、電極シートとの密着性を向上する目的でエッチング等の表面処理を行ってもよい。
(電極シート)
本発明において電極シートは、(a)活物質50〜97質量%、(b)導電性フィラ1〜30質量%および(c)バインダ2〜20質量%を含む原料組成物をシート状に成形して構成されている。
【0022】
本発明に係る分極性電極を構成する活物質は、従来電気二重層コンデンサの電極用として使用されているものであれば特に限定されず、活性炭、炭素繊維等を使用することができる。特に静電容量の大きい電気二重層コンデンサを得る目的で電極に比表面積の大きい活性炭や活性炭繊維、好ましくは易黒鉛化材料を炭化した後アルカリ賦活して得られた活性炭、例えばメソフェーズ炭を本発明に係る電極材料として使用することができる。
【0023】
活物質の平均粒子径についても特に限定されるものではなく、例えば1μm〜50μm、好ましくは約2〜15μmの平均粒径を有する活物質が使用される。本発明に係る電極を構成する活物質の割合は、従来公知の範囲、すなわち50〜97質量%で使用される。活物質の量が上記の範囲より少ないと所望の静電容量が得られず、逆に活物質の量が上記の範囲より多いと導電性が悪くなるので好ましくない。
【0024】
導電性フィラは、電極に導電性を付与する目的で使用され、当該技術分野に通常に使用されている導電性の微粉末、例えば、カーボンブラックが使用される。本発明に係る電極を構成する導電性フィラの使用量も従来公知の量でよく、一般には1〜30質量%の範囲である。導電性フィラの使用量が上記の範囲よりも少ないと得られた電極の導電性が悪くなり、逆に導電性フィラの使用量が上記の範囲よりも多すぎると、静電容量が少なくなるので好ましくない。
【0025】
バインダとは、これらの粒子状成分を結着し、造粒するために使用されるものであり、当該技術分野に公知の種々のバインダを本発明に使用することができる。本発明に好適に使用可能なバインダの例として、限定されるものではないが例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン重合体、フッ化ビニリデン重合体、テトラフルオロエチレン−フルオロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素樹脂が挙げられる。これらのバインダのうち、耐熱性、耐薬品性等の観点からポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を本発明においてバインダとして使用することが好ましい。
本発明に係る電極を構成するバインダの使用量も従来公知の量でよく、一般には2〜20質量%の範囲である。すなわち、バインダの使用量が上記範囲より少ないとバインダとしての機能が充分果せず、一方バインダの使用量が上記範囲を超えると、得られた電極の静電容量が少なくなるので好ましくない。
【0026】
このような電極原料を所定量混練・粉砕した後、本発明に係る電気二重層コンデンサの電極形成用顆粒が得られるが本発明に係る電気二重層コンデンサの電極形成用顆粒の粒径範囲を47μm〜840μmの範囲に規定したことを特徴とするものである。
すなわち、本発明に係る電気二重層コンデンサの電極形成用顆粒が粒径47μm未満の微細な顆粒を含むと、電極シートを形成した際に、シート表面上に粒径47μm未満の微細な顆粒が存在することになる。この表面に存在する微細な顆粒は、保存時や後工程、電気二重層コンデンサの組立て時脱離しやすい。特に、電気二重層コンデンサの組立て後、粒径47μm未満の微細な顆粒が脱離してセパレータ中に介在したり、あるいは電解質液中に浮遊することとなり、電気二重層コンデンサの電圧維持率が低下するので好ましくない。
他方、本発明に係る電気二重層コンデンサの電極形成用顆粒の上限は、作製する電極シートの厚みに応じて適宜選択されるものであり、特に自動車等の出力が要求される仕様においては、電極シートを比較的薄く成形する必要があり、この種の電極シートに使用される顆粒の上限である粒径840μmを本発明において採用した。
なお、本発明で使用される用語「粒径」とは、篩通過の径を意味するものである。
【0027】
従って、このような所定の粒径範囲を有する本発明に係る電気二重層コンデンサの電極形成用顆粒をシート状に形成して本発明の電極シートとし、次いでこれを集電箔と積層して図2に示すような本発明に係る電気二重層コンデンサ用の分極性電極を構成し、この分極性電極を図1(a)や図1(b)に示すような電気二重層コンデンサに組み込むと、粒径47μm未満の微細な顆粒が脱離してセパレータ中に介在したり、あるいは電解質液中に浮遊することがなくなるので、自己放電による電圧低下が少ない(すなわち高い電圧維持率を有する)電気二重層コンデンサを提供できるという効果を奏する。
【0028】
(製造方法)
次に、図3を用いて本発明に係る電気二重層コンデンサの電極形成用顆粒、電極シートおよび分極性電極の製造方法を説明する。図3は、電気二重層コンデンサの電極シート(分極性電極)の製造工程を示すフローチャートである。しかしながら、本発明はこのような製造方法に限定されることはない。
【0029】
(原料混合工程)
本発明において、まず工程S1として、活物質、導電性フィラ、バインダおよび所望に応じて添加されるその他の添加剤を粉末状で所定の割合で混合機に添加し、これらの混合物を均一に分散させる(例えば数千rpmの回転数で20分程度の攪拌)。
【0030】
(混練工程)
次いで、工程S1で均一に分散した原料混合物を混練機、好ましくは図3に示すような二軸混練機により加温下(例えば60〜90℃)で低回転速度(例えば、各々約10〜40rpm)にて減圧下(例えば0.2〜0.5MPa)で数分間、例えば約8分間混練を行う。このようにして混練工程で所定条件で原料混合物を所定条件で混練することによって、図3(c)に示す通り、バインダがフィブリルして活物質と導電性フィラを結着して比較的に大きい電極顆粒を形成する。
【0031】
(破砕工程および分級工程)
混練工程で作製された比較的巨大な粒子の顆粒を、工程S3において、電気二重層コンデンサの電極用粒子に適する大きさとなるように粉砕する。
粉砕工程S3で粉砕した粒子には、電極を構成するのに適さない粒子、すなわち微細粒子や巨大粒子を含んでいる。そのため、本発明においては、工程S4でこれらの粒子を除去する。例えば、目開き840μmの篩により分級して840μmを超える粒径の粒子を除去する。除去された840μmを超える粒径を有する顆粒を、再び粉砕工程S3に戻して粉砕することが好ましい。次いで、例えば目開き47μmの篩により微細粒子を除去することによって、所定の粒径範囲を有する本発明に係る電気二重層コンデンサの電極成形用顆粒を得ることが可能である。なお、除去された微粒子は、再び工程S2の混練工程に戻して顆粒化してもよい。
【0032】
また、分級の順序について、上記の例では巨大粒子を除去した後に微細粒子を除去したが、先ず微細粒子を除去し、次いで巨大粒子を除去してもよい。従って、本発明は、分級の順序に限定されるものではない。
【0033】
(一次成形工程)
本発明において、このようにして工程S1〜工程S4を介して本発明に係る電気二重層コンデンサの電極成形用顆粒を作製するが、このようにして作製された電極成形用顆粒は、次いで工程S6において予備成形して電極プレシートに成形される。
電極プレシートは、従来公知の方法、例えば本発明に係る電気二重層コンデンサの電極成形用顆粒と溶剤、例えばイソプロパーノールとともに所定の空隙を有する一対のローラを通過させることによって成形することが可能である。
【0034】
(圧延工程)
次いで、工程S7において、電極プレシートを所定の厚みを有する電極シートに成形する。電極シートを作製するに当たって、従来公知の方法に従って、電極プレシートをロール間に通過させることによって所定の厚みを有する電極シートに成形する。例えば、図3に示す通り、シート厚130〜160μmの電極シートが所望の場合、例えばロール間隙が異なる3対のロール(下流側のロールの方が上流側のロールより間隙が狭い)を通過させることによって徐々にシート厚を薄くしていく。このようにして段階的にシート厚を薄くすることによって電極シートの厚さ方向に一度に急激な負荷がかからないので、シートの割れ等の欠損を防ぐことが可能となる。
なお、本発明における圧延工程は、複数対のロールに連続して通過させて、電極シートを形成したが、各1対のロールに別個に通過させて電極シートを形成することも勿論本発明の範囲内である。
【0035】
このようにして作製された本発明に係る電極シートは、微細な粒子および巨大粒子が除去された所定の粒径範囲を有する本発明に係る電気二重層コンデンサの電極形成用顆粒を用いて製造されているので、電極シート表面に微粒子が存在することがない。
【0036】
(貼り合せ工程(接着工程))
次いで、工程S8において例えば電極シートをアルミニウム箔等の集電箔と貼り合せて本発明の分極性電極を形成する。この際に、図3に示す通り、先ず、接着剤が収納された容器内から所定の厚みの接着剤を集電箔に塗布するように構成された第一のロールと前記第一のロールにより所定の厚みの接着剤が塗布された集電箔と電極シートとを圧着するための第二のロールから構成された接着ラインにより貼り合せを行う。
なお、集電箔の両面に電極シートを積層して本発明に係る分極性電極を作製する場合には、工程6を片面づつ両面行うことによって対応可能である。
このようにして集電箔の片面または両面に電極シートが貼り合わされた本発明に係る分極性電極は常法に従い乾燥して最終製品となる。
なお、上記の説明において導電性接着剤を使用して集電箔と電極シートとの積層体である分極性電極を作製したが、集電箔と電極シートとは接着剤を介さずに単に圧着して分極性電極を構成してもよい。
【0037】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
活物質として活性炭を用い、これに導電性フィラとしてのアセチレンブラックおよびバインダとしてのテフロン(登録商標)を混合した。組成比は84:8:8とした。この混合物にイソプロパノールを加え加圧混練し、テフロン(登録商標)のフィブリル化を行って、混練物を得た。得られた混練物を粉砕して、平均粒径が約0.5mm程度の粉砕粉を得た。
【0038】
この粉砕粉をメッシュにて篩分けを行い、75μm未満の微粉を除去した。これにさらにイソプロピルアルコールを加え、カレンダ処理にてシート状の成形物を得た。さらに圧延を加え、電極シートを作製した。これをアルミ集電体に貼り合わせることで電極体を作製した。接着にはノーテープ工業(株)社製G−5780Aを用いた。
【0039】
得られた電極体を所定の長さに切断し、50μm程度のセパレータを2枚用いて捲回し、テスト用セル内に封入した後、160℃の真空乾燥を72時間行った。四級アンモニウム塩1.8mol/L濃度のプロピレンカーボネート溶液を電解液として注入し、セルを作製した。
得られたセルを60℃で含浸し、所定のエージング処理を行い脱泡した後、2.5Vまで充電を行い、312時間後の電圧を測定した。その時の電圧から、電圧維持率を測定した。結果を表2に示す。
【0040】
(実施例2)
上記のコンデンサ作製工程において、53μm未満の粒子を除去し、その他の工程を同一としてセルの作製を行い、同様な試験を行った。結果を表2に示す。
【0041】
(比較例1)
上記コンデンサ作製工程において、38μm未満の粒子を除去し、その他の工程を同一としてセルの作製を行い、同様な試験を行った。結果を表2に示す。
【0042】
(比較例2)
上記コンデンサ作製工程において、微粉を除去せず、その他の工程を同一としてセルの作製を行い、同様な試験を行った。結果を表2に示す。
なお、予備実験として、造粒後の粉砕粉を47μm未満、47〜100μm、100μm以上の粉末に分けて成形後の物性を測定した。
【0043】
【表1】
【0044】
この結果、47μm未満の粉砕粉で作製した電極シートは強度が極端に低下し、密度も低下していた。これより47未満μm未満の粉砕粉は結合力が弱く、成形性に悪影響を与える可能性が強いばかりか、脱落したり電解液に浮遊しやすいことが判った。
【0045】
【表2】
【0046】
実施例1および実施例2によれば、47μm未満の微粉を除去することで、脱落する粒子が低減されるために高い電圧維持率が得られること(自己放電特性を改善できること)が判った。これに対して、38μm未満の微粒子を除去した(38μm以上の微粒子が存在する)比較例1および微粒子を除去しない比較例2では312時間後の電圧維持率が著しく低下している。
【0047】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明は次ぎの優れた効果を奏する。
請求項1によると、炭素微粉や導電性フィラ等の微粒子が剥離や脱離して電解液中に浮遊したりセパレータ間に介在することがなくなり、電圧維持率の高い電気二重層コンデンサの電極を作製することが可能となる。
請求項2によると、炭素微粉や導電性フィラ等の微粒子が剥離や脱離して電解液中に浮遊したりセパレータ間に介在することがない電気二重層コンデンサの電極を作製するための顆粒を容易に製造することが可能となる。
【0048】
請求項3によると、炭素微粉や導電性フィラ等の微粒子が剥離や脱離して電解液中に浮遊したりセパレータ間に介在することがない電圧維持率の高い、すなわち安定した性能を発揮することができる電気二重層コンデンサの電極が得られる。
請求項4によると、炭素微粉や導電性フィラ等の微粒子が剥離や脱離して電解液中に浮遊したりセパレータ間に介在することがないので、電気二重層コンデンサに組み込んだ際に、高い電圧維持率を達成することができる。従って、安定した電圧を供給することが可能で耐久性の高い電気二重層コンデンサが得られる。
請求項5によると、高い電圧維持率を有し、耐久性の高い電気二重層コンデンサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は、本発明および従来技術の電気二重層コンデンサの一例を示す概略図であり、図1(b)は、本発明および従来技術の電気二重層コンデンサの他の示す概略図である。
【図2】電気二重層コンデンサの分極性電極を示す概略図である。
【図3】電気二重層コンデンサの分極性電極の製造工程を示すフローチャートである。
【図4】電気二重層コンデンサの基本構成を示す断面図である。
【符号の説明】
1 電気二重層コンデンサ
2 容器
3 電極捲回体
9、10 分極性電極
11、14 集電箔
e 電極シート
s、s セパレータ
Claims (5)
- 活物質50〜97質量%、導電性フィラ1〜30質量%およびバインダ2〜20質量%を含む原料を混練した後に粉砕して得られた電気二重層コンデンサの電極形成用顆粒であって、
電極形成用顆粒は47μm〜840μmの粒径を有する粒子から本質的になることを特徴とする電気二重層コンデンサの電極形成用顆粒。 - 下記工程:
(a) 活物質50〜97質量%、導電性フィラ1〜30質量%およびバインダ2〜20質量%を含む原料を混練して、バインダ成分をフィブリル化して塊状物を形成する工程、
(b) 形成した塊状物を粉砕して粉砕物を形成する工程、
(c) 前記粉砕物を分級して840μmを超える粒径を有する粒子を除去する工程、および
(d) 前記粉砕物を分級して47μm未満の粒径を有する粒子を除去する工程を含むことを特徴とする電気二重層コンデンサの電極形成用顆粒の製造方法。 - 請求項1に記載の電気二重層コンデンサの電極形成用顆粒をシート状に成形した電気二重層コンデンサ用電極シート。
- 電極箔の上に接着層を介してあるいは介さずに請求項3に記載の電気二重層コンデンサ用電極シートが積層されて構成された電気二重層コンデンサ用分極性電極。
- 請求項4に記載の電気二重層コンデンサ用分極性電極を有することを特徴とする電気二重層コンデンサ。
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